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早稲田大学マニフェスト研究所
議会改革調査部会
2017/12/7早稲田大学マニフェスト研究所
住民参加の視点から、意見交換会や議会報告会など「議会が住民と直接対話する場」を設ける議会が増えています。しかし一方で、参加者の伸び悩みや固定化など、課題も山積みです。現状と先進事例をみながら、これからの対話の場のあり方を考えます。
住民と直接対話する場とその展開
議会改革度調査2016
早稲田大学マニフェスト研究所 2
「議会が住民と直接対話する場」 の意義早稲田大学マニフェスト研究所では、議会が住民と直接対話することについて、次の理由から重視しています。
■執行部は公正公平にルールに基づき事務を執行することが役割だが、そのルールの網の目から漏れてしまう現実の課題もある。議会自らが地域に出向き住民と直接対話することにより、地域の課題解決につながる機会となる。
■ 人口減少による行政サービスの縮減、社会資本の老朽化など将来の財政状況を見据え厳しい課題に対し持続可能な地域を想像していくためには、不都合な真実を住民と情報共有しながら『納得ある決定』に向け努力を重ねなければならない。数十年後のまちの姿を想像しシミュレーションしながら、住民と向き合う場をもち議決する必要がある。
■議会が持つ最大の権限といえる『議決権の行使』は、住民福祉の向上が目的である。その目的を達成するため、適切に税を徴収し配分することを議論し決定するには、多様な情報が必要であり、直接の受益者である住民の意見を聴くことが基礎となる。
早稲田大学マニフェスト研究所 3
議会が住民と直接対話する場の開催状況
意見交換会や議会報告会(※)などの「議会が住民と直接対話する場」を開催している議会は、昨年より増加。調査開始後、初めて半数を超えた。
※「意見交換会」等、名称は何でもよいが「議会が住民と直接対話する場」であり
かつ議員個人や会派ではなく「議会として実施しているもの」が該当する
N=1337議会
19% 21%
30%
44%47.9% 47.4%
54%
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
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「議会が住民と直接対話する場」を開催していなくても、今後の実施が決定している議会や開催を検討している議会も1割存在する。
N=1337議会
53%
1%9%
37%
開催している
開催していない(今後の実施が決定)
開催していない(開催を検討中)
開催していない(実施予定なし)
議会が住民と直接対話する場の開催予備軍
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市(政令市と中核市をのぞく)は61%、町は50%で、5割を超えている。一方、政令市は20%、東京23区は21%と、2割程度にとどまっている。
自治体区分別の開催状況
※N=都道府県46議会,政令市20議会,中核市48議会,市697議会,区23議会,町437議会,村66議会
41%
20%
44%
61%
21%
50%
33%
都道府県
政令市
中核市
市
区
町
村
早稲田大学マニフェスト研究所
年間開催数、参加人数
6
年間の開催数は、1回が65%で最も多い。参加人数は30人以内が7割以上を占めている。
N=712議会
65%
20%
5% 5% 5%
15%
40%
18%
10%
6%3%
1%
6%
N=706議会
<年間の開催数> <平均参加人数(1会場あたり)>
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住民意見を政策につなげる仕組み
「議会が住民と直接対話する場」で出た住民の意見を政策につなげる仕組み(※)がある議会は3割を超え、昨年より増加した。
2015年 N=662議会、2016年 N=727議会
29%
33%
2015 2016
※政策提言につなげる仕組みがある(意見の内容を検討する会議があるなど)議会が該当する
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参加者を増やすための工夫 <テーマ設定>
住民全体に関心が高いテーマや世代別・団体別のテーマ設定をする議会は4割程度あるほか、今後議会で扱うテーマを設定する議会は1割程度ある。いずれも昨年より増加している。
2015年 N=663議会、2016年 N=729議会
40%
10% 9%
43%
13% 11%
住民全体に関心がありそうなテーマ
世代別や団体別のテーマ
これから議会で扱うテーマ
2015 2016 2015 2016 2015 2016
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意見交換を充実する取り組み <形式>
意見を出しやすいように円卓・車座、グループワーク、ワールドカフェなどの形式をとる議会は昨年より増加しているものの、全体からみると少数にとどまっている。
2015年 N=662議会、2016年 N=727議会
12%
8%
2%
16%13%
4%
円卓・車座 グループワーク ワールドカフェ
2015 2016 2015 2016 2015 2016
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意見交換を充実する取り組み <ファシリテーター>
議員がファシリテーターを担当する議会は4割近くあるが、第三者がファシリテーターを担当する議会は2%とごくわずか。
2015年 N=663議会、2016年 N=729議会
35%
1%
39%
2%
議員が担当 第三者が担当
2015 2016 2015 2016
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第三者がファシリテーターをつとめた議会
埼玉県所沢市議会 パートナーシップ協定を締結している大学教授(早稲田大学人間科学学術院)
神奈川県藤沢市議会 大学講師(関東学院大学・法政大学大学院)
長野県諏訪市議会 意見交換会の申し入れがあった団体
静岡県焼津市議会 市民(自治基本条例に基づく市民集会と一緒に議会報告会を開催した)
大阪府箕面市議会 地域のNPO法人
兵庫県丹波市議会 一般市民
鳥取県境港市議会 大学准教授(島根大学)
徳島県小松島市議会 大学客員教授(徳島大学)
愛媛県新居浜市議会 市と提携している大学の教授(愛媛大学)
福岡県田川市議会 民間の専門ファシリテーター
青森県六戸町議会 大学准教授(青森中央学院大学)
宮城県柴田町議会 大学准教授(青森中央学院大学)
東京都瑞穂町議会 サポーター制度を提携している大学研究機関(早稲田大学マニフェスト研究所)
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意見交換を充実する取り組み <その他>
質問や意見交換の時間をとる議会は9割程度で多い。意見の整理等のために、ホワイトボードを活用している議会も1割程度ある。
2015年 N=663議会、2016年 N=729議会
90%
86%
18%
18%
10%
6%
2%
参加者が質問できる時間を設定している
参加者や議員が意見交換する時間がある
議員個人の意見も言うことができる
お茶やお菓子を出している
ホワイトボードを活用している
子供連れでも参加しやすい工夫をしている
話しやすい雰囲気づくり(ゆるキャラ等)
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事例) 品川区議会
※出典:品川区議会サイト「第2回 品川区議会議会報告会 報告書」http://gikai.city.shinagawa.tokyo.jp/wp-content/themes/shinagawakugikai/pdf/reports/290615gikai.pdf
区民に『より身近な区議会』であることを目指し、報告会を開催。第1部で委員会報告を行った後、第2部で「身近な防災」をテーマに意見交換会を実施。地震発生時の対処や防災行政無線の音楽など、三択クイズを取り入れ参加者の関心を高める工夫も。
各テーブルに議員を2~3名配置。ポストイットに意見を出してもらう。
クイズは「地震発生時にペットを避難所に連れていけるのか」などの問題も。
アンケートでは「よかった」と回答した割合が9割を超えた。
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事例) 東村山市議会
年4回開催し、試行錯誤と進化を続けている。毎回「課題と成果」をホームページで公開していることも特徴的。「防災・減災」をテーマにした際は、災害時の自助・共助について知恵出しや意見交換を行うとともに、外部の専門家を招き「ツイッターの#(ハッシュタグ機能)を活用した情報共有」について市民と学ぶ機会を設けた。
議員はキャラクターが描かれたおそろいのジャンパーを着用。
議員全員が冒頭に、自ら学んだ手話で自己紹介。
会場後方にはキッズスペースがあり絵本などがならぶ。
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事例) 取手市議会
※出典:取手市議会サイト 「議会報告会」https://www.city.toride.ibaraki.jp/shise/shicho/shigikai/shigikaikatsudo/hokokukai/index.html
参加者との『意見交換を重視』した報告会を開催。車座になって参加者と意見交換する場面も。住民からの意見は各委員会にて閉会中に調査し、七つの重点項目を「市政要望書」として市長に届けている。さらに、市長からの回答もホームページに掲載している。
車座になって参加者と意見交換。 「市政要望書」をまとめ市長に提出。
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事例) 所沢市議会
※出典:所沢市議会サイト 「所沢市議会ワールドカフェ「みみ丸カフェ2016」を開催しました!」http://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shigikai/minasanto/mimimarucafe.html
広聴機能強化の一環として、ワールドカフェスタイルによる「みみ丸カフェ2016」を開催。無作為抽出による一般市民、大学生、広聴広報委員が参加した。3ラウンドの意見交換を終えた後の個人の意見を、参加者それぞれが付箋に記入し模造紙に貼り出した。
パートナーシップ協定を締結した大学から、教授が参加しファシリテーターをつとめた。
模造紙に木のモチーフが描かれており、意見が書かれた付箋が枝葉のように広がった。
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事例) 富津市議会
※出典:富津市議会サイト 「市民と議会の情報交換広場 富津市議会報告会2016」http://www.futtsu-gikai.jp/voices/GikaiDoc/attach/Oshirase/Oshi77_houkokusho0404.pdf
開催中、各グループの模造紙を貼り出し自由に閲覧できるようにする工夫も。
各グループに2名ずつの議員が進行サポートを務める。
第1部で委員会と地方創生研究会・財政問題に関する報告を行い、第2部で「住みやすいまちづくり~気になること・困ったこと」をテーマに「自分たちで出来ること」「議会・行政にお願いしたいこと」をまとめ発表した。
参加者アンケートでは「大変よかった」「よかった」が75%程度となった。
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事例) 新居浜市議会
※出典:新居浜市議会サイト「市民との意見交換会」http://www.city.niihama.lg.jp/site/gikai/ikenkokankai.html
市政や市議会について市民と意見交換を行い、市政に反映させるため議会フォーラムを開催。コーディネーターは大学教授がつとめ進行した。委員会ごとに「保育園の課題」「ごみの減量」「消防団の処遇改善」「若年層の市外への流出対策」など身近なテーマを取り上げた。
ホームページで詳細な報告書を掲載。ホワイトボードも記録として残す。
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事例) 瑞穂町議会
常任委員会ごとにテーマを決め(総務産業建設委員会・厚生文教委員会)、「みずほまちなか会議」を開催。ワークショップで出た意見等を参考に協議し、提言書をまとめ町長へ手渡した。議員ではなく、第三者がファシリテーターを担当した。
※出典:瑞穂町議会サイト平成28年度 まちなか会議
http://www.town.mizuho.tokyo.jp/gikai/report/004/p003653.html
正副委員長より町長へ提言書を手渡した。
第三者(大学研究機関)のファシリテーターは、蝶ネクタイを着用し意見が出やすい雰囲気づくりも。
黒板やポストイットを活用して意見をまとめる。
議会に関心が無い知らない
報告を聞くだけ請願や陳情のみ
地域課題を自分ごととして認識
住民自身が地域の課題解決に取り組む(困難な際に議会へ)
参加してもらい知ってもらうこと
住民の意見を引き出すこと
意見交換を通じ課題解決へ
住民自治の成熟
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「住民主体」へのステップ意見交換会の目的は住民主体度の段階によって異なる。
住民主体度
高< 議会と住民の関係 に応じた目標設計のイメージ >
参加(消極的)
参加(積極的)
無関心議会と住民の関係
住民主体
住民の状態
目的
→ 住民が主体議会が主導 ←
低
20
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提言
(1)『聴く』・『対話する』を大事にする議論ではなく対話、広報の以前に広聴の機会を大切にする。
(2)開催目的を明確にする「何のため」に開催するのか目的を明確にすること。『報告会』という表現は目的に合わせて変えること。
(3)未来のテーマを扱う議会での決定事項を報告するだけでなく「これからの地域における課題と解決策」について対話する場をもつ。
(4)ファシリテーション技術を習得する意見交換会が充実するよう、議員がファシリテーション技術を学ぶことも必要。また、第三者を入れることも検討する。
地方創生時代には、住民への説明責任を果たすこと、住民がより納得する状況を創造することが肝心である。議会は、住民が議場へ気軽に足を運べる環境を整えるだけでなく、自ら外に出て住民がより参加しやすい形で直接対話する機会をもつことが重要である。
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ご案内
調査結果に関しては、下記サイトにて随時公開していきます。
早稲田大学マニフェスト研究所
議会改革調査部会ページ
http://www.waseda-manifesto.jp/gikaikaikaku
※「議会改革度調査2016」は、2016年度の取り組みを対象にしています。
調査概要はサイト内にてご参照ください。
早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会 担当:永尾、青木
〒103-0027 東京都中央区日本橋1-7-12国土施設ビル3F
Mail:[email protected]:03-6214-1315 fax:03-6214-1186
http://www.waseda-manifesto.jp/gikaikaikaku