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道路交通安全対策へのプローブデータの利活用
国土交通省国土技術政策総合研究所
道路交通研究部道路研究室
研究官 尾崎 悠太
インフラ・イノベーション研究会
平成28年 8月18日(木)
1
本日の発表内容
2
1. はじめに
2. 道路交通安全対策の概要
3. プローブデータとその進化
4. 道路交通安全対策への利活用1) 危険箇所の抽出2) 交通状況分析・要因分析(対策立案)3) 効果評価
本日の発表内容
3
1. はじめに
2. 道路交通安全対策の概要
3. プローブデータとその進化
4. 道路交通安全対策への利活用1) 危険箇所の抽出2) 交通状況分析・要因分析(対策立案)3) 効果評価
1.はじめに
4
0
200,000
400,000
600,000
800,000
1,000,000
1,200,000
1,400,000
1,600,000
1,800,000
2,000,000
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
14,000
16,000
18,000
20,000
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015
事故件数 24時間死者数 30日以内死者数 死傷者数
死者
数(人
)
事故
件数
(件
),死傷
者数
(人
)
16,765人(1970)
過去 多
1,183,120人(2004)
過去 多
670,140 人(2015)
4,859 人(2015)
4,117人(2015)
◆現在、死者数、死傷者数、死傷事故件数は減少傾向にあるものの、死者数は減少傾向は低くなってきている(2015年は、前年より微増)
◆世界一安全な道路交通を目指し、交通事故の削減に向けた更なる努力が必要
【交通事故の推移】
本日の発表内容
5
1. はじめに
2. 道路交通安全対策の概要
3. プローブデータとその進化
4. 道路交通安全対策への利活用1) 危険箇所の抽出2) 交通状況分析・要因分析(対策立案)3) 効果評価
2. 道路交通安全対策の概要
6
【交通安全対策の進め方】
●危険箇所の抽出(対策箇所の選定)
Plan 計画
(効果分析のための事前調査)●対策の実施
Do 実行
(効果分析のための事後調査)●対策の効果分析
Check 評価
●追加対策の必要性の検討
Action 改善
●対策立案
道路交通安全対策のPDCAサイクル
↑住民アンケートにより作成したヒヤリハット(危険事象)のマップ。ヒヤリハットの件数や重要度から危険箇所を抽出。
2. 道路交通安全対策の概要
7
【危険箇所の抽出】事故や危険事象の発生量・分布に基づき、地域全体から抽出
↑ 幹線道路を交差点と単路区間に分割。
各箇所の事故の頻度が高い箇所を危険箇所として抽出
危険箇所
(事故データに基づく危険箇所抽出) (危険事象に基づく危険箇所抽出)
事故の偶発性を補うため、事故には至らないまでも事故に繋がる危険な事象に基づき、危険箇所を抽出
→ メッシュ毎の事故件数等
から対策が必要な地域(エリア)を抽出。
(出典)船橋市資料
2. 道路交通安全対策の概要
8
【対策立案(交差点・単路)】事故や危険事象の発生状況、道路構造、交通状況から事故要因を分析し、対策立案
↑ 危険箇所で発生した事故の、当事者や形態、衝突位置等を地図上に発生した事故発生状況図。
Ⅰ. 事故発生状況 Ⅱ.交通状況※定常状態と危険運転・錯綜※現地での目視観測やビデオ観測により実施
Ⅲ.道路構造・沿道状況※現地確認や図面・航空写真等
これらのデータから事故の要因を分析。要因を緩和・除去する対策を立案
2. 道路交通安全対策の概要
9
【対策立案(エリア対策)】通過交通経路・量や走行速度の面的分布から、対策検討
●生活道路の交通安全対策の方法
① エリア対策 Ⅰ.交通量の抑制(ゾーン対策) Ⅱ.速度の抑制
Ⅲ.路上駐車対策Ⅳ.歩行環境の改善
② 個別箇所における交通安全対策
※通過交通割合=路線毎の通過交通
地区全体の通過交通
【通過交通の把握】○通過交通が多い区間を把握し、交通量の抑制をする区間を検討する。
凡例
幹線道路
通過交通多い
通過交通やや多い
通過交通少ない
【道路区間毎の走行速度の把握】
国道・県道
平均速度
速度データなし
25km/h未満
25~30km/h
30~35km/h
35~40km/h
40km/h以上
○走行速度が高い区間を把握し、速度抑制対策を実施する区間を検討する。
走行速度が高い区間
通過交通が多い区間
凡例
人対車両
車両相互
車両単独・その他
【事故が多発している箇所・区間の把握】
○事故の発生状況を確認し、エリア対策の内容、個別箇所における対策の必要性を検討
2. 道路交通安全対策の概要
10
【効果分析】
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
対策前 頻度(%)対策後 頻度(%)対策前 累積頻度(%)対策後 累積頻度(%)
頻度
累積
頻度
速度(km/h)
←対策前後の事故
件数の比較による分析
→対策前後の速度分布の変化
による分析
4.道路交通安全対策への利活用
11
使用する情報 利用場面 利用方法
事故・危険事象
危険箇所の抽出 地域全体で発生量・分布を分析
対策立案 発生状況の確認
効果評価 対策前後で発生件数や発生状況の比較
通過交通 対策立案 ゾーン内での経路と量の確認
効果評価 対策前後での経路と量の比較
速度 対策立案 単路・交差点での速度分布の確認ゾーン内での速い速度で走行する箇所の確認
効果評価 対策前後で速度分布や面的分布の比較
○交通安全対策におけるデータ利用ニーズ
本日の発表内容
12
1. はじめに
2. 道路交通安全対策の概要
3. プローブデータとその進化
4. 道路交通安全対策への利活用1) 危険箇所の抽出2) 交通状況分析・要因分析(対策立案)3) 効果評価
3.プローブデータとその進化
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【プローブデータ】・プローブデータ:プローブカーから収集されるデータ
・プローブカー:車両をセンサーとしてとらえ、走行速度情報、位置情報等を収集することにより、交通流動等の道路交通情報を生成するシステム(国土交通省 道路局ホームページ “ITS関連用語集”より)
※これまでに道路行政での利用例 : 道路交通センサスにおいて旅行時間(旅行速度)を計測するため、プローブカーによる走行時間を計測
個別車両の位置や経路、速度、加速度等、車両に搭載する計測機器により、多種多様で正確なデータの収集が可能
計測技術・情報通信技術の発達によりビッグデータへ多数の車両から地域・時間帯を問わずデータ収集が可能に
以下が可能に(容易に)広い地域での分布・面的な分布の把握、時間帯による変化の把握、経年変化等のモニタリング“量”の把握バラツキ・稀な現象(定常ではない現象)の把握 等々
14
【ETC2.0】
ETC2.0プローブデータの蓄積
GPSカーナビ
路車間通信
ETC2.0 サービス情報の提供とプローブ情報の収集
○料金所における自動料金収受だけではなく、路側無線装置と走行車両が双方向で
情報通信を行うことにより、多様なサービス・多様なデータの収集を可能とする
新たなシステムである。
【サービスの例】
・カーナビと連携し広域的な渋滞情報や経路別の料金を踏まえた最適なルート選択
・道路構造物への影響が大きい大型車について、適正なルートへの確実な誘導 等
3.プローブデータとその進化
3.プローブデータとその進化
15
【ETC2.0普及状況】
77,642
274,861
568,054
841,530
0
100,000
200,000
300,000
400,000
500,000
600,000
700,000
800,000
900,000
2012年度末 2013年度末 2014年度末 2015年11月
累積
新規
セットアップ件
数(件
)
●2015年11月末現在で、ETC2.0の新規セットアップ件数が、約84万台となっている。2013年度
以降に普及が加速しており、今後更なる普及が期待される。
【ETC2.0の累積新規セットアップ件数の推移】
出典)一般財団法人ITSサービス高度化機構資料より作成
3.プローブデータとその進化
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【データ収集概要】 データ収集の流れ
1) データ計測
2) データ記録
3) データ送信
4) データ蓄積
車載の計測器(GPS、加速度計、ジャイロセンサー等)により、常時データ計測 ※センシング周期は(0.1~1秒)
次ページ記載のデータ記録タイミングの際の瞬間値を車載器に記録
路側器を通過時に、2)で記録されたデータを送信【路側器】・ITSスポット(主に高速道路や道の駅に設置)・経路情報収集装置(主に直轄国道に設置)
路側器からデータセンターにデータが送信、全国一括管理
3.プローブデータとその進化
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【収集データの概要】
データ記録タイミング 収集データ 計測機器(方法)
走行履歴データ
前にデータ記録してから200m進行時又は進行方向が45度変化した瞬間
緯度経度 GPS速度 GPS
進行方向 GPS(高度) ※任意 GPSその他収集される情報:車載器情報、日付・時刻
挙動履歴データ
下記の閾値を超過した瞬間
・前後加速度±0.25G・左右加速度±0.25G・ヨー角速度8.5deg/秒
緯度経度 GPS前後加速度 加速度計、GPS速度の差 等
※メーカー・機種による
左右加速度 加速度計、GPS速度+ジャイロセンサー 等※メーカー・機種による
ヨー角速度 ジャイロセンサー 等※メーカー・機種による
進行方向 GPSその他収集される情報:車載器情報、日付・時刻、速度
本日の発表内容
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1. はじめに
2. 道路交通安全対策の概要
3. プローブデータとその進化
4. 道路交通安全対策への利活用1) 危険箇所の抽出2) 交通状況把握・要因分析(対策立案)3) 効果分析
4.道路交通安全対策への利活用
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多種多様で正確なデータを用いて、以下が可能に①広い地域での分布・面的な分布の把握、②時間帯による変化の把握、 ③経年変化等のモニタリング④“量”の把握 ⑤バラツキ・稀な現象(定常ではない現象)の把握
○交通安全対策におけるデータ利用ニーズ
○ビッグデータとなったプローブデータの特徴
使用する情報 利用場面 利用方法
事故・危険事象
危険箇所の抽出 地域全体で発生量・分布を分析
対策立案 発生状況の確認
効果評価 対策前後で発生件数や発生状況の比較
通過交通 対策立案 ゾーン内での経路と量の確認
効果評価 対策前後での経路と量の比較
速度 対策立案 単路・交差点での速度分布の確認ゾーン内での速い速度で走行する箇所の確認
効果評価 対策前後で速度分布や面的分布の比較
20
【利活用例】 急減速等発生状況に基づく危険箇所の抽出
4.1)危険箇所の抽出
○高速道路ネットワーク全体で、急減速等の発生状況(区間毎の件数)を確認
○事故データと併せて分析し、潜在的危険箇所を含めた危険箇所の抽出
○大きい左右加速度の多発箇所
⇒施設等接触事故等の危険性が高いと考えられる
○急減速の多発箇所
⇒追突事故等の危険性が高いと考えられる
(ETC2.0)
急減速(-0.3G以下の前後加速度)の発生件数 ±0.25G超の左右加速度の発生件数
4.2)交通状況把握・要因分析
21
【利活用例】交差点における急減速発生要因の分析
進行方向別の急減速発生状況 進行方向別の急減速発生件数
○急減速発生車両の交差点での進行方向を分析
○急減速が発生した際の状況を把握し、要因分析に利用
※挙動履歴データで急減速が観測された車両について、走行履歴データから進行方向の確認
(現地状況)・停止線間距離が長い
・黄・赤信号時に、無理に交差点に進入する対向直進車が多い
要因分析
○右折車と対向直進車の錯綜を回避するための急減速と考えられる
○信号切り替わり時に、対向直進車が停止すると想定し右折を開始したが、黄・赤信号で交差点に進入してきた対向直進車に気づき急減速(又はその逆)
(ETC2.0)
4.2)交通状況把握・要因分析
22
【利活用例】単路区間の走行速度の把握
○速度超過等による逸脱事故が発生している区間において、走行速度を分析
○速度が上昇する区間を把握し、要因分析・対策立案に活用
区間別の平均走行速度
トンネル通過後、下り坂をカーブ直前まで加速
カーブの途中で大きく減速
○トンネル通過後は、下り坂が続くので、速度が上昇しやすい
⇒減速路面表示や注意喚起看板等による速度抑制
○カーブ直前まで十分な減速を開始せず、カーブ中に大きく減速
⇒カーブの形状を事前に適切に把握できていない可能性がある
⇒カーブ形状の適切な表示(標識・表示による明示、視線誘導標)
(ETC2.0)
4.2)交通状況把握・要因分析
23
【利活用例】エリア内の通過交通の経路・速度の面的把握
○エリア内の通過交通経路・台数、速度分布を、面的に把握
○通過交通が多い区間、速度の高い区間等を対象に対策立案
分析エリア 幹線道路
通過交通経路と台数
分析エリア 幹線道路
30km/h以上で走行する車両の割合
○通過交通の多い経路
○速い速度で走行する車両が多い区間
(ETC2.0)
4.2)交通状況把握・要因分析
24
【利活用例】通過交通の要因分析
○通過交通経路の交通量、周辺幹線道路の所要時間を確認
○エリア内の通過交通が生じる要因を分析
(ETC2.0)
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
0-3時 3-6時 6-9時 9-12時 12-15時 15-18時 18-21時 21-24時
通過台数(比較対象経路)通過台数(①経路)平均所要時間(比較対象経路)平均所要時間(①経路)
通過
車両
の台
数(台
)
時間帯
平均
所要
時間
(分)
○幹線道路の平均所要時間が長い時間帯で、エリア内の通過台数が急激に増加
⇒周辺幹線道路の混雑が通過交通の大きな要因と考えられる
通過台数と所要時間
4.3)効果分析
25
【利活用例】急減速発生状況の前後比較による対策効果分析
○対策実施箇所における急減速発生状況を、対策前後で比較
○危険事象の削減状況の確認による対策の効果分析
(ETC2.0)
対策前後の急減速発生状況
○対策を実施したカーブ区間における、対策前後の急減速発生状況を比較
⇒カーブ区間では、急減速発生頻度が大きく減少し、対策の効果が見られる
4.3)効果分析
26
【利活用例】速度分布の前後比較による対策効果分析
○速度抑制対策実施箇所における速度分布を、対策前後で比較
○交通挙動の改善状況の確認による対策の効果分析
(ETC2.0)
対策前後の対策区間の速度分布
(対策前) (対策後)
50km/h以上8.7%
40~50km/h17.4%
30~40km/h26.1%
20~30km/h21.7%
20km/h未満26.1%
40~50km/h16.1%
30~40km/h16.1%
20~30km/h22.6%
20km/h未満45.2%
○ハンプの設置区間において、30km/以上で走行する車両の割合が減少
⇒ハンプ設置区間での速度抑制効果を確認
まとめ
27
多種多様で正確なデータを用いて、以下が可能に①広い地域での分布・面的な分布の把握、②時間帯による変化の把握、 ③経年変化等のモニタリング④“量”の把握 ⑤バラツキ・稀な現象(定常ではない現象)の把握
○交通安全対策におけるデータ利用場面
○ビッグデータとなったプローブデータの特徴
使用する情報 利用場面 利用方法
事故・危険事象
危険箇所の抽出 地域全体で発生量・分布を分析
対策立案 発生状況の確認
効果評価 対策前後で発生件数や発生状況の比較
通過交通 対策立案 ゾーン内での経路と量の確認
効果評価 対策前後での経路と量の比較
速度 対策立案 単路・交差点での速度分布の確認ゾーン内での速い速度で走行する箇所の確認
効果評価 対策前後で速度分布や面的分布の比較