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合併症を中心に
骨折と脱臼の基礎知識
平成26年 12月12日 救急部カンファレンス
整形外科 土川 雄司
はじめに
骨折(fracture)
骨が自身の強度を超える大きさの直接的または間接的な外力を受けることによって、その解剖学的連続性を断たれた状態
定義
脱臼(dislocation)
強い外力によって関節が生理的可動域を超えて動いた結果、関節包の損傷や弛緩が生じて関節面の相対関係が乱れ、関節面相互間に持続的逸脱が生じた状態
定義
分類
①原因による分類
外傷性骨折・・・強い外力による、正常な強度の骨の骨折
病的骨折 ・・・骨の強度が低下している場合に比較的弱い外力で
(悪性腫瘍の骨転移、骨軟部腫瘍、骨軟化症、骨粗鬆症)
疲労骨折 ・・・軽微な外力が繰り返し加わることによって生じる
骨折の分類
②部位による分類 ③形状などによる分類
骨折の分類
④外部との交通の有無による分類
皮下骨折(closed fracture)→単純骨折
骨折部に創がない
or あっても骨折部と直接つながっていないもの
開放骨折(open fracture) →複雑骨折
皮膚に創があって、骨折部と直接交通があるもの
出血量が多い、感染の危険が高い、
偽関節になりやすい
→軟部組織損傷の評価(Gastilo分類)
でもその前に。。
骨折の分類
まずは全身評価!!
①程度による分類
完全脱臼
亜脱臼
②原因による分類
外傷性脱臼
病的脱臼
③関節面の相対位置による分類
前方脱臼、後方脱臼、上方脱臼、下方脱臼等
④時期による分類
先天性脱臼
後天性脱臼
脱臼の分類
合併症
①出血
骨折部から推定される出血量
骨折の合併症
部位 出血量
上腕骨骨折 350ml
脛骨骨折 500ml
大腿骨骨折 500〜1000ml
1000〜5000ml 骨盤骨折
標準整形外科学 第9版
出血性ショックに注意
②血管(動脈)損傷
骨折の合併症
・不全損傷 spasmや圧挫
骨折や脱臼に伴うものが多い
・完全損傷 動脈の一部または全周にわたって連続性が断たれているもの
局所症状
開放性
➡創部からの動脈性出血
閉鎖性
➡内出血による高度腫脹
末梢症状
“6Ps”
pulseless(脈拍消失)
pallor(蒼白)
pain(疼痛
paresthesia(知覚障害)
paralysis(運動障害)
polkilothermia(冷感)
動脈損傷の症状
早期診断が重要
まずは全身管理を優先
出血創があれば圧迫止血、輸血路を確保し輸液、呼吸管理
血行再建
下肢の主幹動脈が損傷されると末梢が壊死に陥る危険性大!!
(膝関節脱臼に伴う膝窩動脈損傷は有名)
➡全身麻酔下に損傷血管の修復・血行再建(血管外科)
阻血時間が重要
“Golden Period は6〜8時間”
Emergency!!
動脈損傷の治療
③末梢神経損傷
小児の上腕骨顆上骨折での橈骨・正中・尺骨神経麻痺
上腕骨骨幹部骨折における橈骨神経麻痺など
橈骨神経麻痺・・・手関節の背屈、指のMP関節の伸展不可
正中神経麻痺・・・握りこぶしを完全に作れない
尺骨神経麻痺・・・MP関節が過伸展し、IP関節が屈曲している
骨折の合併症
わしゃ、 とうとう垂れて、正に猿
(鷲 尺) (橈)
下垂手
猿手
鷲手
④コンパートメント症候群
筋膜などに包まれた隔壁内(コンパートメント)の圧が上昇し、循環障害が生じて、隔壁内の筋、神経組織に障害をきたすこと。
・下腿前面で生じやすい
・前腕屈筋群に生じた場合、Volkman拘縮
(小児の上腕骨顆上骨折に最も頻度が高い)
pulseless(脈拍消失)
pallor(蒼白)
pain(疼痛)
paresthesia(知覚障害)
paralysis(運動障害)
骨折の合併症
早期診断・治療が重要
⑤脂肪塞栓症候群(fat embolism)
重篤な全身性合併症。発熱、頻脈、呼吸困難、昏睡、
錯乱、皮下の点状出血。多発外傷で発生率が上がる
⑥深部静脈血栓症(DVT)
骨折治療中のベッド上安静や外固定のために静脈環流不全が生じ、深部静脈に血栓を形成
➡肺塞栓症に移行することも。。。
骨折の合併症
骨折
脱臼に関節周囲の骨折が合併することは多い 脱臼骨折
骨幹部の骨折を合併することもある
Monteggia骨折(尺骨骨幹部骨折+橈骨頭脱臼)
Galeazzi骨折(橈骨骨幹部骨折+尺骨遠位脱臼)
軟部損傷
股関節脱臼➡坐骨神経麻痺
肩関節脱臼➡腕神経叢麻痺
脱臼の合併症
Emergency!!
検査と診断
問診
現病歴(特に○○)、既往歴、合併症
脱臼が疑われた場合は過去の脱臼歴
理学所見
局所の腫脹、疼痛、圧痛点
骨折では変形
脱臼では独特の肢位をとることが多い
検査
まずはX線2方向、本気なら4方向
CT、MRI、超音波検査
検査・診断
循環障害がないか意識して
治療(症例)
①整復(reduction)
A)徒手整復(透視下に行う 盲目的に行うと危険)
B)牽引(介達牽引、直達牽引)
C)観血的整復(手術)
②固定(fixation)
a)外固定(三角巾、シーネ、ギプス包帯など)
b)創外固定
c)内固定(プレートや髄内釘)
③
骨折、脱臼の治療の3原則
機能回復訓練(rehabilitation)
膝関節脱臼骨折
山岡先生、大峰先生にコンサルト
Dopplerで足背動脈、後脛骨動脈のflowなし
脱臼骨折による膝窩動脈損傷の疑い
左下腿切迫壊死 ➡ Emergency!!
外傷性股関節脱臼
➡ Emergency!!
今回の症例
全身麻酔下に脱臼整復
やばい😱。。
透視下に愛護的に整復した
徒手整復
徒手整復
創外固定
脱臼骨折整復後、足部の色調は改善した(Dopplerでのflowも確認)
ただ、骨折部は不安定性が強いため、
可及的に創外固定を行った
ひとまず安心。。
①整復(reduction)
A)徒手整復
B)牽引
C)観血的整復(手術)➡ 週明けに予定
②固定(fixation)
a)外固定(三角巾、シーネ、ギプス包帯など)
b)創外固定
c)内固定(プレート等)
③機能回復訓練(rehabilitation)
今後の治療の流れ
外傷治療では、全身管理が優先される
骨折や脱臼があった場合、合併症を意識して
(特に循環障害)
緊急性が高いと思ったら、人を集める
TAKE-HOME MESSAGES
外傷治療に少しでも興味のある研修医の先生へ
是非、当科で研修してみてください。
きっと、楽しいはずです!!
整形外科医局 一同
ご静聴ありがとうございました