49
伊丹市自転車等対策審議会答申書(案) 2014/11/21 審議会委員 意見反映分 平成 26 年 12 月 日 平成26年11月27日 第4回伊丹市自転車等対策審議会 資料4-③

伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)

2014/11/21 審議会委員 意見反映分

平成 26年 12月 日

平成26年11月27日第4回伊丹市自転車等対策審議会 資料4-③

Page 2: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198
Page 3: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

目次

1.はじめに ...................................................................................................... 1 2.伊丹市における自転車利用の現状 .............................................................. 2

Ⅰ.自転車の利用状況 .................................................................................... 2 (1)自転車防犯登録台数 ......................................................................... 2 (2)自転車分担率 .................................................................................... 3 (3)自転車の利用頻度 ............................................................................. 4

Ⅱ.自転車事故等の状況 ................................................................................ 5 (1)交通事故件数の推移 ......................................................................... 5 (2)自転車関連事故件数の推移 .............................................................. 6

Ⅲ.放置自転車等の状況 ................................................................................ 7 (1)駅周辺の放置自転車等の状況 ........................................................... 7 (2)自転車駐車場の設置状況 .................................................................. 7 (3)自転車等利用台数及び駐輪場利用率 ................................................ 9 (4)自転車利用者への街頭アンケート結果........................................... 10

3.自転車の安全な利用の促進に向けて .......................................................... 11 Ⅰ.自転車利用者の自律を促すための啓発 .................................................. 13

(1)自転車交通安全教室の充実 ............................................................ 13 (2)交通安全指導員の設置.................................................................... 15 (3)損害賠償保険の加入推奨 ................................................................ 16

Ⅱ.ハード整備............................................................................................. 18 (1)交差点等の改良 及び(2)ピクトサイン等での注意喚起 ............ 18 (3)自転車レーン等の整備.................................................................... 19

Ⅲ.規制強化 ................................................................................................ 20 (1)警察による指導強化 ....................................................................... 20 (2)押し歩き区間の設定 ....................................................................... 22

<社会実験> .................................................................................................... 23 4.自転車等の放置の防止に向けて ................................................................ 24

Ⅰ.駐輪場整備............................................................................................. 25 (1)既存駐輪場の再整備 ....................................................................... 26 (2)機械式路上駐輪場(路上駐輪ラック)の設置 ................................ 27 (3)地下(地上)ハイテク駐輪施設の整備........................................... 28

Ⅱ.自転車利用者の自律を促すための啓発 .................................................. 30 (1)自転車交通安全教室の充実(再掲) .............................................. 30 (2)駐輪指導員の充実 ........................................................................... 31

Page 4: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

(3)路上サインの充実 ........................................................................... 32 Ⅲ.規制強化 ................................................................................................ 33

(1)撤去手数料の適正化 ....................................................................... 33 (2)撤去時間の延長・ランダム化 ......................................................... 34 (3)押し歩き区間の設定(再掲) ......................................................... 35 (4)自転車利用者の自律を促す料金政策 .............................................. 35

<社会実験> .................................................................................................... 36 5.市民・事業者等との協働による推進 ......................................................... 37 6.提言 ........................................................................................................... 39 7.おわりに .................................................................................................... 41

Page 5: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198
Page 6: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198
Page 7: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

1

1.はじめに

自転車は環境や家計にやさしく、また健康的な交通手段として、その利用が注

目されていますが、一方で自転車に関わる事故や違法駐輪などの問題がその利

用の増加に伴い累増しており、これらへの対策が社会的な課題となっています。

伊丹市においても、平坦でコンパクトな地形から、自転車利用が多く、交通事故に

占める自転車事故の割合は他市に比べ、非常に高く、また、駅周辺を中心に多く

の自転車が放置されている等、様々な問題が生じています。

このような現状を鑑み、伊丹市では、自転車の安全な利用の促進と放置の防止

に係る施策を総合的に推進することにより、自転車交通の安全並びに駅周辺等

の災害時の機能の確保及び、まちの美観の維持を図り、市民の安全で良好な生

活環境を形成するため、平成 26 年 4 月 1 日より「伊丹市自転車の安全利用の促

進及び自転車等の駐車対策の推進に関する条例」を施行し、目的の達成に向け

て取組を進められています。

自転車の安全な利用の促進と放置の防止に係る施策を総合的に推進するため

には、市、自転車利用者、学校、事業者、自転車小売業者、警察等の関係者が

各々の責務を認識し、それぞれの立場から連携して課題解決を図る必要がありま

す。また、高齢者、障がい者等のいわゆる交通弱者と言われる方々の意見を取り

入れ、各々の立場や考えを尊重した課題解決が求められます。このため、条例に

より設置された「伊丹市自転車等対策審議会」に、市長からの諮問を受け、平成

26 年 5 月 29 日から平成 26 年 12 月●日まで 5 回に渡る議論を重ね、自転車の

安全利用の促進に関する事項及び自転車等の駐車対策に関する事項について

審議してきました。その結果、本答申をとりまとめました。

平成 26 年 12 月

伊丹市自転車等対策審議会

会長 秋 山 孝 正

Page 8: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

2

2.伊丹市における自転車利用の現状

伊丹市は、おおよそ 5km 四方のコンパクトな市域で、起伏が少なく自転車利用

に適した平坦な地形であること等から、その利用は近隣市に比較しても非常に多

いと言えます。その為、自転車が関連した交通事故や放置自転車といった全国的

な課題が伊丹市に顕著に現れています。これらの社会問題に対応し、効果的な

自転車利用の環境整備を進めるためは、自転車の持つメリットを活用し、デメリット

を補う取組を合わせて行うことが重要です。

Ⅰ.自転車の利用状況

(1)自転車防犯登録台数

自転車の防犯登録台数は、市民 100 人当りの登録台数が、近隣 6 市で平均

6.6 台であるのに対し、伊丹市では 10.55 台であることから、伊丹市では自転車を

所有している市民が多いと考えられます。

図 1 自転車の特性

Page 9: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

3

市 防犯登録台数

/

市民100人

伊丹市 10.55

近隣 6 市平均 6.60

尼崎市 12.00

西宮市 8.38

芦屋市 3.32

宝塚市 5.86

川西市 4.90

三田市 5.16

(2)自転車分担率

伊丹市における自転車分担率(代表交通手段として自転車を利用している人

の割合)は、29.0%であり、これは各国の主要都市と比較して高い数値を示して

います。伊丹市は、鉄道空白地域が市域西部・北部に広がっており、市バスがあ

るものの、自転車を利用されている市民が多いと考えられます。

9.84 9.8510.52 10.60 10.55

5.97 6.27 6.56 6.63 6.60

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 H24年度

(単位:台)

図 2 市民 100 人当たり自転車防犯登録台数推移

表 1 平成 24 年度の市民 100 人当たり 自転車防犯登録台数(阪神間)

伊丹市における自転車の自転車分担率は,

29.0%

【伊丹市の交通手段分担率】(平成22年度)

12.4% 23.5% 29.0% 26.5%3.5% 4.8% 0.2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

伊丹市

鉄道 バス 自動車 自動二輪・原付 自転車 徒歩 その他

図 3 伊丹市の自転車分担率とその海外比較 出典:国道交通省資料

出典:平成 22 年第 5 回近畿圏パーソン

トリップ調査より伊丹市が独自集計

伊丹市

近隣6市平均

Page 10: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

4

※平成 26 年 5 月実施の伊丹市自転車利用に関するアンケート調査

(3)自転車の利用頻度

市民の自転車利用頻度は、ほぼ毎日利用される方が最も多く 39%となっており、

ほぼ毎日と、週に数日利用される方を合わせると 66%の方が自転車を利用される

状況となっています。

図 4 市民の自転車の利用頻度(中段は回答者数)

Page 11: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

5

Ⅱ.自転車事故等の状況

(1)交通事故件数の推移

兵庫県、伊丹市ともに交通事故発生件数は減少傾向にあり、伊丹市における

人口1万人当りの発生件数については、概ね県下の平均発生件数と類似してい

ます。

平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年

伊 丹 市

発生件数 (件) 1,421 1,238 1,176

人口1万人当り発生件数 (件) 72.1 62.7 59.4

死者数 (人) 7 5 6

負傷者数 (人) 1,690 1,471 1,388

兵 庫 県

発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734

人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7

死者数 (人) 198 179 187

負傷者数 (人) 44,100 42,073 40,273

表 2 伊丹市及び兵庫県交通事故件数等の推移(出典:兵庫県警資料)

Page 12: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

6

(2)自転車関連事故件数の推移

兵庫県、伊丹市ともに近年は、自転車事故発生件数については減少傾向にあ

りますが、伊丹市における人身事故総数に占める自転車関連事故の割合は、約

40%であり、県下平均の約2倍となり、非常に高い割合といえます。

また、人口 1 万人あたりの自転車関連交通事故件数は23.99件(平成25年

度)で、県下ワースト1となっています。

平成 23 年 平成 24 年 平成 25 年

伊 丹 市

交通事故発生件数 a (件) 1,421 1,238 1,176

自転車関連事故件数 b (件) 581 500 473

自転車関連事故割合 b/a (%) 40.9 40.4 40.2

兵 庫 県

交通事故発生件数 a (件) 36,195 34,056 32,734

自転車関連事故件数 b (件) 8,485 7,794 7,400

自転車関連事故割合 b/a (%) 23.4 22.9 22.6

表 3 伊丹市及び兵庫県自転車関連事故件数等の推移(出典:兵庫県警資料)

兵庫県下人口1万人あたりの自転車関連事故件数

人口 件数人口1万人あたり件数

人口 件数人口1万人あたり件数

人口 件数人口1万人あたり件数

1 伊丹市 196,336 581 29.59 196,845 500 25.40 197,160 473 23.99 26.332 尼崎市 451,935 1,131 25.03 450,182 1,042 23.15 449,236 1,043 23.22 23.803 高砂市 93,445 246 26.33 92,860 227 24.45 92,114 189 20.52 23.764 姫路市 535,945 1,274 23.77 535,837 1,240 23.14 535,448 1,158 21.63 22.855 加古川市 267,148 637 23.84 268,038 556 20.74 268,001 567 21.16 21.91

※ 人口は、各年4月1日現在の推計人口

H23 H24 H25

順位 市町名3年間の平均

表 4 兵庫県下人口 1 万人あたりの自転車関連事故件数(ワースト5)(出典:兵庫県)

Page 13: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

7

Ⅲ.放置自転車等の状況

(1)駅周辺の放置自転車等の状況

伊丹市の自転車等の放置は、市内鉄道5駅周辺の自転車等放置禁止区域を

中心に常態化しています。平成 25 年度の鉄道5駅周辺の放置自転車等の台数

は 1,159 台であり、過去 5 年間で、平成 23 年度(1,411 台)をピークに減少してい

るものの、依然 1,000 台を超える自転車が放置されています。放置自転車等の台

数は、阪急伊丹駅前周辺が特に集中しています。

(2)自転車駐車場の設置状況

阪急伊丹駅、阪急新伊丹駅、JR伊丹駅、JR北伊丹駅の4駅周辺に9箇所の自

転車駐車場を整備し、市民の利便性向上、放置自転車等の防止が図られていま

す。

収容台数は合計約9,500台になります。

自転車 単車 合計

阪急伊丹駅 874 126 1,000

阪急新伊丹駅 36 4 40

阪急稲野駅 50 4 54

JR伊丹駅 55 5 60

JR北伊丹駅 4 1 5

合計 1,019 140 1,159

【放置自転車等台数の推移】(伊丹市自転車等放置禁止区域)

1017 994

12211093

1019

203 180

190

126140

0

500

1000

1500

H21 H22 H23 H24 H25

単車

自転車(台)

表 5 平成 25 年度駅別放置自転車等台数(単位:台) 図 5

Page 14: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

8

●市営・民営自転車駐車場

図 6 伊丹市内の駅周辺における市営・民営自転車駐車場

Page 15: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

9

(3)自転車等利用台数及び駐輪場利用率

駅周辺における自転車等利用台数(駐輪場利用台数+放置自転車等台数)は

「阪急伊丹駅」が 4,148 台と最も多く、次いで「JR 伊丹駅」が 2,930 台となっていま

す。

駐輪場の利用率は「JR伊丹駅」が約 78%と最も高く、ついで「阪急伊丹駅」で約

68%であり、駅周辺全体の利用率は約 63%です。

また、仮に放置自転車等台数も含め、全ての自転車等利用台数を駐輪場に収

容した場合の利用率は、「阪急伊丹駅」は約 90%と最も高く、次いで「JR伊丹駅」

で約 78%であり、駅周辺全体の利用率は約 73%となります。

このことから、伊丹市では、駅周辺における駐輪場の供給量(収容可能台数)は、

充足している状態であるといえますが、駐輪場が十分に利用されていない状況で

す。

特に、阪急伊丹駅については、駐輪場に空きがあるにもかかわらず、放置自転

車等があふれるというギャップが大きい状態であり、駐輪場が活用されていないと

いうことになり、駐輪場の利用促進や利用者ニーズに合致した駐輪場の整備等が

求められます。

図 7 平成 25 年度 伊丹市の駅周辺における自転車等利用台数及び利用率等

Page 16: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

10

(4)自転車利用者への街頭アンケート結果

平成 26 年 9 月●日に、阪急伊丹駅前で、自転車を放置する利用者や、駐輪場

へ適正に止める利用者へ、街頭アンケートを実施した結果、以下のようになりまし

た。

Page 17: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

11

3.自転車の安全な利用の促進に向けて

伊丹市の自転車関連事故を軽減するためには、「自転車利用者の自律」「ハー

ド整備」「規制強化」がバランスよく効果を発揮することが重要です。規制強化だけ

を行っても、市民の理解は得られず、効果を上げることは出来ません。ハード整備

だけしても、規制強化なしでは期待した効果は得られません。最終的には、自転

車利用者が自律して、自ら安全な運転を心掛けてもらうことが重要であり、自律を

促すための啓発を行っていく必要があります。

3つの要素がバランスよく効果を発揮するような施策の実施を求めます。

図 8 自転車の安全利用に向けた対策のイメージ

Page 18: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

12

※平成 26 年 5 月実施の伊丹市自転車利用に関するアンケート調査

<市民アンケートの結果より>期待する安全対策 市民アンケートで「安全対策に必要と思うこと」という質問に対する回答では、

「学校での交通安全教育」から「マナー向上啓発活動」までの教育・啓発と答えた

回答を合わせると 37%と最も期待が高くなっています。中でも学校での交通安全

教育の実施を要望される割合が高く、早い時期からの交通マナー教育への期待

と、若い世代のマナー違反に対する批判があるのではないかと考えられます。一

方、家庭におけるマナー教育の割合は 5%と少ない結果となっています。

次に自転車レーンなどの「走行環境の整備」、次いで「警察による取締強化」が

期待されています。「警察による取締強化」から「押し歩き区域」までの規制強化を

合わせると 37%となり、必要な安全対策は、「教育・啓発」「規制強化」が重要で、

「ハード整備」も合わせて実施する必要があるとの方向性が伺えます。

走行環境整備

95122%

安全教育(学校)

74317%

啓発活動

3177%

安全教育(市民)

2826%

安全教育

(家庭)2325%

安全教育(従業員)

832%

警察取締強化

55113%

反則金

3789%

街頭指導

47811%

押し歩き区域

1524%

定期点検・整備

852%

その他

481%

無回答

361%

教育・啓発

165737%

必要な安全対策

図 9 市民アンケートにおける「安全対策に必要と思うこと」

Page 19: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

13

Ⅰ.自転車利用者の自律を促すための啓発

自転車利用者が自律して、自ら自転車の安全な利用を心掛けてもらえるよう、

今後の行動につなげていただくことが最も重要です。そのためには、個人のみの

考えだけでなく、家庭で、親子で話し合うことや、地域ぐるみで交通安全について

話し合うことなどが重要です。

自律を促すための啓発では、「自転車安全教室の充実」、「交通安全指導員の

設置」、「損害賠償保険の加入推奨」を柱として検討しました。

(1)自転車交通安全教室の充実

<現状>

これまで、市は自転車の安全利用に向けて、以下のような啓発活動を実施して

きました。(開催回数と参加人数は平成 25 年度実績)

①幼児交通安全教室(うさちゃんクラブ)

対象 開催回数 参加人数 内容

保育所 7 回 1,121 人 交通ルール・マナー学習、歩行訓練等

幼稚園 16 回 511 人

②小中学校自転車安全教室

対象 開催回数 参加人数 内容

小学校 16 回 1,606 人 交通ルール・マナー学習、トラック死角実験

自転車実車訓練(一部実施) 中学校 7回 2,556 人

③成人向け自転車安全教室

対象 開催回数 参加人数 内容

一般 9 回 157 人 交通ルール・マナー学習、自転車実車訓練等

④まちづくり出前講座(交通安全講習:自転車)

対象 開催回数 参加人数 内容

一般 6 回 495 人 交通ルール・マナー学習

表 6 平成 25 年度の自転車交通安全教室実績

この他にも、交通安全フェスタinいたみの開催や、春と秋の交通安全パレードな

ど伊丹警察署をはじめとする関係団体との協働による交通安全啓発運動を実施

しています。

Page 20: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

14

<課題>

自転車交通安全教室の中で、平成 25 年度より始めた「成人向け自転車安全教

室」の受講者の伸び悩み(受講者数157名/9回)が課題です。

<対策>

受講者数を伸ばすには、受講に対するインセンティブを与える必要があります。

インセンティブの手法として、受講者証=免許証の発行が考えられます。

受講者証の活用策として、受講者証による TS マーク割引(TS マーク補助制度、

自転車整備補助制度)や、商店街等とタイアップし、受講者証による割引、市営施

設の使用料割引などが有効な活用策となります。

更に、市内の自動車教習所等とタイアップし、定期的な開催や、スケアード・スト

レイト方式と呼ばれる、スタントマンの実演による危険性を実感する内容にするな

どの工夫が必要となります。

市内の高校生に対しては、毎年学校を通じて「成人向け自転車教室」の案内を

することで継続的な受講を促します。

また、例えば市内の小中学校で行われている土曜学習の時間を利用し、地域

団体と連携して交通安全教室を開催することで、受講を促すことや地域での交通

安全活動へつなげること、当日の資料を工夫することで、家庭で話し合うきっかけ

になるような工夫も重要です。

受講者に反射シールなどの啓発グッズや交通安全グッズを用意していますが、

生徒などの若者には、「カッコイイ」と思えることが重要で、そう思ってもらえば、自

然と使ってもらえることから、更に工夫を検討すべきです。受講した児童・生徒自

身が講師として下級生に教えることなどにより、児童・生徒自身が主体となって啓

発する機会とし、その取組を校内新聞や広報誌等に取り上げることで、「ほめる」こ

とに加え、ルールを守ることは「カッコイイ」という意識を育てることが有効であると

思われるので検討が必要です。

一方、市では、公募型協働事業提案制度を開始されておりますが、市が直接安

全教室を実施するだけでなく、市民団体による PRや教室運営なども検討すべきと

考えます。

写真 1 交通安全教室の様子

Page 21: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

15

(2)交通安全指導員の設置

危険な交差点や、通勤・通学時にスピードを出しているような危険な道路に、交

通安全を指導する人員を配置することで、日々の自転車利用において指導・啓発

を受ける効果が期待できます。

<現状>

ボランティアの方が交差点等による指導を自発的に実施されています。

<課題>

位置づけが不明確で、指導された対象者から「なぜあなたに指導されるのか」と

反論されるとお聞きします。加えて、ボランティアの指導員不足が課題となってい

ます。

<対策>

条例により、指導員の役割を明確化することで、指導員に公的な位置づけを行

い、活動を支援するべきです。また、自転車利用者から視覚的にわかるよう、伊丹

市から統一したスタッフジャンパーや腕章などを提供することで、活動しやすい環

境をつくることが必要です。また、指導員のノウハウや成功事例などを共有し、レ

ベルアップを図るために、連絡会議等の組織化も必要です。更に、指導員向け交

通安全教室も定期的に開催すべきです。

また、指導員だけで活動するだけでなく、交通安全週間等には、警察と共同で

の一斉指導にあたることで、より市民に理解が深まると思われます。指導員のボラ

ンティア人材については、自治会連合会、老人クラブ連合会等の地域組織を通じ、

地域に精通した指導員の候補者の選出を依頼することも有効な手段と思われま

す。

【委員意見】※議論として出されたが、法令等の制約等で検討が必要とされたもの

反則切符は警察でなければきれないだろうが、指導票のようなものを発行し、枚数

が一定になれば、交通安全教室を受講してもらったり、駐輪場を使えなくしたり一定の

制約をかけてはどうか。

<課題>

個人情報の関係や、自転車利用者とのトラブルなどを考慮すると実現は難しいの

ではないか。警察との連携した指導が重要。

写真 2 千葉県浦安市公式ブログより

浦安市、警察署、交通安全協会、

安全利用推進隊による合同キャンペーンの様子

Page 22: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

16

※平成 26 年 5 月実施の伊丹市自転車利用に関するアンケート調査

(3)損害賠償保険の加入推奨

一般に自転車を利用される方は、これまでは、事故の被害者になりやすく、また、

被害者としてのイメージが浮かびますが、昨今、自転車が関連する事故による加

害者として、歩行者等への高額な損害賠償責任を負う判例が出されており、社会

問題化しています。市民アンケートではいずれの損害賠償保険にも加入されてい

ない方が 29%と、意外と少ない結果となっていますが、保険の内容は理解しにくく、

本市の交通災害等共済に加入したり、防犯登録をするなどで加入しているものと

誤解されている方も多いのではないかと考えます。全ての方に損害賠償保険の加

入を推奨することが必要であると考えます。

<現状>

損害賠償保険については、約 3 割の方が未加入の状態です。加入されていな

い理由は、「知らなかった」・「加入方法がわからない」等が「加入していない」方の

22.3%を占めています。

<課題>

自転車事故においても、事故の内容により重い民事責任が追及されるといった

ことが意識されにくい一方、高額な損害賠償の判例がでています。自転車を利用

することの危険性や責任の重さを理解されずに、他人へ損害を与えてしまった場

合、賠償額を支払うことが出来ず、加害者の市民生活が破綻したり、被害者が賠

償を受けられないことなどが想定されます。

<対策>

兵庫県や大阪府等でアンケート調査した結果では、自転車に関する損害賠償

保険加入者は 30%程度であるのに対して、伊丹市では、70%程度となっていま

図 10 損害賠償保険の加入状況

Page 23: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

17

す。「一般の方は傷害保険と賠償責任保険の違いを理解されている方が少ない

のではないかと思う。」と議論がありましたが、伊丹市の市民アンケート結果に関わ

らず、損害賠償保険についての啓発や情報提供が重要です。

損害賠償保険には、自転車安全整備店で点検整備を受け、それを証明する TS

マークに付帯する個人賠償責任保険や、自動車の任意保険に特約で付帯する

個人賠償責任保険など様々な商品が存在します。伊丹市が広報誌等で TS マー

クなどの必要性を啓発する一方、自転車販売店による販売時の加入促進や啓

発・情報提供も重要です。賠償責任保険への加入方法がわからない方や手続が

面倒な方へは、自転車関連団体と共同で、イベント会場等で自転車の点検整備

及びTSマークの貼付を行うことや、法的な制約はあるものの自転車交通安全教

室で斡旋することも有効な方策です。加えて、伊丹市としてTSマークなどの損害

賠償保険加入への補助を実施することは、加入促進が図られるだけでなく、情報

発信することで、市民が自身の損害賠償保険加入の有無について考える機会と

なることから、効果的と考えられます。

また、伊丹市には、交通災害等共済制度があり、本人の傷害や死亡は補償対

象ですが、他人への損害賠償は補償対象となっていないにもかかわらず、交通災

害等共済に加入していることで、損害賠償保険に加入していると誤解されているこ

とが想定され、加えて、損害賠償は補償対象外と知っていても、複数の保険に加

入する金銭的な負担や煩わしさが想定されることから、結果、この共済制度が市

民の損害賠償保険加入への加入を阻害していることも考えられ、共済制度のあり

方そのものを検討すべきと考えます。

一方、兵庫県では伊丹市同様に自転車の安全な利用などに関する検討委員会

を設置されており、その中で、損害賠償保険加入を義務化する条例を検討されて

おります。兵庫県の動向も注視していく必要があります。

表 7 TS マークの種類と付帯保険の補償内容

Page 24: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

18

Ⅱ.ハード整備

ハード整備では、交差点等の改良、ピクトサイン等での注意喚起、自転車レー

ン等の整備を柱として検討しました。

(1)交差点等の改良 及び(2)ピクトサイン等での注意喚起

伊丹市では、自転車関連事故の発生場所を地図に落とし、事故が起こりやすい

交差点等の把握に努められており、これまで随時、優先順位をつけて交差点等の

改良を行っています。

図 11 平成 25 年 1 月 1 日~平成 26 年 3 月 31 日の自転車事故発生箇所

<現状>

自転車関連事故は交差点等の危険箇所、交差点事故の多発箇所が存在し、

市内のあらゆる箇所に点在しています。

<課題>

交差点等の危険箇所での減速・一旦停止・左右確認が出来ていないことや、交

差点等の見通しの悪さや段差の解消ができていないなどのハード的な課題があり

ます。

<対策>

Page 25: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

19

事故発生箇所に優先順位をつけ、順次、交差点等の点検・改良に着手するとと

もに、県道等については、関係機関と連携し対応を図ることが必要です。また、自

転車利用者に向けた、自転車の一旦停止を示す法定外の路面表示(ピクトサイ

ン)等による注意喚起も有効な手段と考えます。

(3)自転車レーン等の整備

市民アンケートでは、市内の道路幅員が狭く、自転車が安全に走行できる環境

にないとの意見が多く、市民は、普通自転車通行指定部分や自転車専用通行帯

(自転車レーン)、自転車道などの自転車の安全な通行環境の整備を望まれてい

ると考えられます。

<現状>

自転車と歩行者、自動車の混在による事故が発生しています。

<課題>

幅員の不足により自転車レーン等のネットワーク化が実現できていません。

<対策>

市道と県道等と連携した自転車レーン等のネットワークを実現するためには、県

や警察等関係機関との連携を密にした調整が必要です。

また、幅員の確保については、街路樹や植樹帯のあり方を見直すことも検討す

べきです。特に、西台中央線については、市民アンケートによる自由意見におい

ても、幅員が狭く自転車が相互通行するのは危険であることが訴えられており、加

えて、放置自転車が多く発生していることなどから、限られた幅員を有効に活用す

る方策として、モデル的に街路樹や植栽を伐採し、歩行者や自転車の通行空間と

して有効活用するとともに、路上駐輪ラックの設置スペースとして活用することも検

討すべきです。

なお、街路樹を伐採して自転車の通行空間を整備する際には、スピードを出し

やすくなる自転車が、歩行者や他の自転車と交錯することを防ぐ方策を検討すべ

きです。

写真 3 街路樹や放置自転車により幅員の狭い西台中央線

Page 26: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

20

Ⅲ.規制強化

市民アンケートでは、自転車利用者のマナーを批判する市民の記述が多く見受

けられます。市民は、違反者にもっと厳しい罰則を適用することを望んでおられま

すが、伊丹市では、罰則を強化する権限がないことから、権限のある警察との指

導強化が必要です。

(1)警察による指導強化

市民アンケートでは、警察による危険運転の取り締まり強化を求める声が多く、

市民の 69%の方が、携帯電話や傘さし運転などの自転車の片手運転は危険であ

ると認識されています。

図 12 市民アンケートにおける「安全対策に必要と思うこと」

<現状>

自転車利用者がルールに違反しているという認識があるにも関わらず、危険な

運転を行うケースがあります。

<課題>

自転車で違反行為を行っていても指導される機会が少ないため、自転車での

違反は許されると考えています。

Page 27: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

21

<対策>

伊丹市としては、規制を強化する権限がないことから、権限のある警察と共同で

の指導強化が必要であり、実際に他市で検挙されたケースを紹介するなど、今後、

警察と連携しながら、市民の意識改革につながるように共同で自転車等の危険な

運転に対する指導や、指導に従わない等悪質なケースには、警察による検挙を

行う必要があります。

また、市民アンケートでは学校での交通安全教育が期待されており、生徒の自

転車マナーを問題視する声が多かったため、警察独自で実施している集中的な

取締り活動を継続していただくことに加え、市、学校関係者と共同で生徒に指導

を行うことも有効であると考えます。

写真 4 警察による自転車取締の様子(大阪府警 HP より)

Page 28: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

22

(2)押し歩き区間の設定

駅前の混雑区間における歩行者と自転車の接触事故を防ぐ必要があります。

<現状>

駅前混雑区間においても自転車に乗車して通行する自転車利用者が大半であ

ることから、歩行者との接触事故を起こしたり、ヒヤリハットを引き起こしている。

<課題>

自転車利用者への周知と理解が必要です。

<対策>

法律による規制ではなく、条例により押し歩き区間(努力義務)を設定し、看板

やのぼり等での広報・啓発と、駐輪指導員による自転車利用者に対する協力依頼

の方法について検討し、社会実験として実施した「押し歩き区間の設定」と「押し

歩きの推進」では、思うような結果が得られませんでした。

強制力のない中での押し歩きの実施には限界があり、条例による努力義務が効

果的かどうか、再度検討することが必要です。

写真 5 阪急伊丹駅周辺社会実験時の押し歩きの様子

Page 29: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

23

<社会実験>

審議会で議論のあった対策の有効性、市民の反応などを確認・検証するため、

審議会開催中である平成 26 年 9 月 30 日~10 月 29 日までの 1 ヵ月間、社会実

験を実施しました。

●実験内容(自転車の安全利用を目指した内容)

①自転車専用走行空間未整備道路から整備済み道路への誘導

②誘導経路である歩道のない狭隘な生活道路における右側通行の徹底

③自転車専用通行帯(自転車レーン)設置を目的とした自転車の車道通行のお願い

④路上駐輪ラック設置箇所やオープンカフェ・イベント実施箇所における押し歩きのお

願い

●実験結果

●考察

Page 30: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

24

※平成 26 年 5 月実施の伊丹市自転車利用に関するアンケート調査

4.自転車等の放置の防止に向けて

伊丹市の放置自転車問題を解決するためには、「駐輪場整備」「自転車利用者

の自律」「規制強化」をバランスよく実施することが重要です。駐輪環境を整備し、

利用者ニーズに沿った駐輪設備・環境を再構築し、環境が整った上で自転車利

用者の自律を促すための教育・啓発を充実することで、駐輪マナー向上に向けた

取組が有効性を帯びてきます。理想とするのは利用者自身が自ら考え、自律した

利用者となることです。これらの取組を行ったにもかかわらず、なおかつ自転車を

放置する利用者には厳しい対応が必要であると考えます。このようなことから、以

下のように 3 つの観点から整理し、それぞれのバランスをとりながら実施することを

求めます。

<市民アンケートの結果より>利用目的について 利用目的は、「買い物・飲食」が最も多く 38%、次いで「通勤・通学」24%となっ

ています。買い物・飲食目的の方の自転車利用者への対策が重点的に必要と考

えられます。

買い物・飲食

63938%

通勤・通学

40024%

余暇

16510%

業務・仕事

795%

その他

734%

子どもの

送迎453%

無回答

26616%

利用目的

図 14 自転車の利用目的

図 13 自転車の放置の防止に向けた対策のイメージ

Page 31: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

25

※平成 26 年 5 月実施の伊丹市自転車利用に関するアンケート調査

<市民アンケートの結果より>期待する放置自転車対策 市民アンケートで「放置自転車対策として効果的と思われること」という質問に対

する回答では、「施設の付置義務」「駐輪場新設」「過料・罰則等」「撤去強化」の

順となっています。市民は、「施設や店舗は、自らの責任と負担でお客様用駐輪

場を整備すべきで、なお不足する分を市が整備すべき。それでも放置する人には

厳しい対処が必要である。」との方向性が伺えます。

反面、「駐輪指導員充実」が4%と少ないのは、施設が整い、規制を適正にすれ

ば指導員がいなくとも効果が上がるという意見ではないかと思われます。

「啓発強化」の効果はあまり期待されていません。

Ⅰ.駐輪場整備

伊丹市の駐輪設備は総量的には充足していますが、なおかつ放置自転車が路

上にあふれている状態です。この放置自転車問題は、利用者ニーズにあった駐

輪設備を提供できていないという現われであると考えられます。

市民アンケートからも、利用者の多くは、「買い物・飲食」を目的として利用して

おり、「ちょっとした買い物で地下に止めるのは不便」という意見が多数あり、これ

が本音であると思われます。この利用者ニーズにあった駐輪環境を整えることが

重要です。

駐輪場整備では、「既存駐輪場の再整備」、「機械式路上駐輪場(路上駐輪ラッ

ク)の設置」、「地下(地上)ハイテク駐輪施設の導入」を柱として検討しました。

図 15 市民アンケートにおける「安全対策に必要と思うこと」

Page 32: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

26

(1)既存駐輪場の再整備

市民アンケートでは、阪急伊丹駅前地下自転車駐車場に対する意見として、地

下に下ろすために時間がかかることや 2 段式ラックについて不便と感じる人が多く、

これらの不満を解消する必要があります。

<現状>

収容台数は公営・私営合わせ概ね充足していますが、利用率が低くなっていま

す。

<課題>

阪急伊丹駅前地下自転車駐車場の地下へ下ろすことと、2 段式ラックの不評が

多くなっています。

西台自転車駐車場の高層階の利用が少なくなっています。

阪急伊丹駅前は、地下自転車駐車場を一時利用を中心とし、定期利用は西台

自転車駐車場や船原自転車駐車場へ振り向ける料金政策を試行しましたが、放

置自転車は減少せず、阪急伊丹駅前地下自転車駐車場の利用率を落として見

込んだ効果が上がっていないという結果となっています。

阪急稲野駅については、収容台数が不足しています。

JR 伊丹駅前駐輪場は、収容台数が不足気味なのと、老朽化したラックの更新と

屋根の設置に関する要望が多くなっています。

<対策>

阪急伊丹駅前地下自転車駐車場は地下と 2 段式ラックという 2 重苦を解消し、2

段式ラックを撤去し、平置き化が望ましいと思われます。

また、平置き化した場合に、収容台数が減少しますが、その対応として、駅前広

場の路上に駐輪ラックを設置したり、阪急伊丹駅の利用の少ないペデストリアンデ

ッキを活用して、駐輪場として活用することも有効であると思われます。

西台自転車駐車場は料金政策を見直すことで、活用を促すことが必要です。

阪急稲野駅は、路上駐輪ラックを設置することで収容台数増加の検討が必要で

す。

JR 伊丹駅前は、ラックの更新にあわせ、収容台数を増やす検討が必要です。

更に、レンタサイクルは、1 台の自転車を複数人でシェアして利用するので、駐

輪設備の活用策として、有効と考えられます。

阪急伊丹駅地下自転車駐車場については、地下に下ろすという煩雑さを解消

するため、地下への入り口で係員に自転車を預けて代わりに駐車してもらえるよう

Page 33: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

27

にすることで、放置自転車対策だけでなく、若者など多世代の雇用対策となる、多

目的な施策に対する意見もありました。

(2)機械式路上駐輪場(路上駐輪ラック)の設置

放置自転車対策では、放置自転車が多く存在するところが、自転車利用者が止

めたい場所であり、止めたい場所に駐輪環境を整備することなど、利用者ニーズ

に合致した取組が必要です。目的地直近まで行けるという自転車の特性からも、

駐輪施設を駅前広場を中心として路上へ設置することが、最大の効果が図られる

と思われます。

平成 20 年前後から、近隣の商店会からの路上駐輪ラック設置の要望により、検

討を重ねた結果、伊丹市の判断により見送っています。その結果、商店の周辺に

放置自転車が多いことや、自転車が気軽に置けないということになり、中心市街地

の活性化を阻害していると思われます。

アンケート結果からも、市民は阪急塚口駅前のような路上駐輪ラックの設置を望

んでおり、自転車を利用しない市民においても、整備すべきという意見が多くを占

めています。

<現状>

路上駐輪ラックの設置はなく、駅前広場を中心とした路上に放置自転車があふ

れています。特に、阪急伊丹駅付近は 1,000 台を超える放置自転車があります。

<課題>

阪急伊丹駅前は歩道の幅員が限られており、安全に設置できる箇所が限定さ

れます。

阪急伊丹駅は全国に誇る福祉駅として、これまで路上駐輪ラックを設置すべき

でなく、料金政策や啓発により放置自転車のない駅前広場にするのが、市の方針

でありましたが、効果が見られません。

写真 7 駐輪場としての活用も考えられるペデストリアンデッキ 写真 6 2段式ラック

Page 34: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

28

<対策>

放置自転車が多い箇所に路上駐輪ラックを設置することは、乱雑におかれた放

置自転車であふれている状態を解消し、自転車が整然と並ぶことによって歩行空

間を確保することになります。歩行者の通行環境が改善されるだけでなく、車いす

利用者が通行しやすく、点字ブロック上の放置自転車が解消されることにより、障

がい者の方も通行しやすくなります。適切な箇所を選定し、必要な数の路上駐輪

ラックを設置することが必要ですが、設置箇所・設置角度については県警本部と

の協議が必要です。

料金については、短時間の買い物や金融機関等へ立ち寄る時間などでは無料

となることが必要です。また、路上駐輪ラックの利用促進のために近隣店舗からの

助成で無料になる方式の検討も考えられます。このような官民連携した取組により、

中心市街地に人々が集まりやすくすることで、活性化が図れるものと思われます。

(3)地下(地上)ハイテク駐輪施設の整備

駐輪施設の技術革新が進んでおり、10 秒程度で入出庫可能なハイテク駐輪場

を地下に埋め込んだり、地上のタワーのように整備する先進事例があります。

メリット

わずかなスペースで一定の収容台数が確保できる。

地下に埋め込むことで、地上の有効活用が図れる。

利用者は、上下移動がなくて手軽に駐輪できる。

自転車盗難等の防止ができる。

景観上、自転車が見えないので都市景観を阻害しない。

デメリット

整備費用に多額の費用が必要。

維持管理コストに一定の費用が必要。

設置スペースが小さくとも、工事に相当な面積が必要。

初回利用時には、自転車のサイズを測り、利用可能な自転車にはICタグをつけ

る必要がある。

写真 8 阪急伊丹駅周辺道路社会実験で

駅前に設置された路上駐輪ラック

Page 35: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

29

阪急伊丹駅での検討

阪急伊丹駅前で工事ヤードを確保するには、市バス停留所の移設や、道路の

通行規制が必要で、直接経費以外に相当な費用が必要となることや、市民に不

便をかけることとなります。そのため、まずは、ハイテク駐輪場以外の対策を行い、

それでもなお、駅直近に利用者ニーズに合った収容台数が不足するようであれば、

次の対策として検討すべきと考えます。

JR伊丹駅での検討

JR伊丹駅前は自転車駐車場の利用率が高く、収容台数が不足しがちな状況で

す。駅周辺の開発が進み、人口も増加し、駅乗降者数も年々伸びています。

一方、JR伊丹駅前には、他に駐輪場を整備可能な空地もなく、ハイテク駐輪場

の導入は効果があるものと思われます。しかしながら、当該地は埋蔵文化財包蔵

地であり、地下式を導入しようと思えば、発掘調査を必要とする可能性があり、計

画的に工事が進まない可能性が高いと思われます。そのため、地上式を検討す

べきと思われます。

設置可能箇所としては、市バス回転場所が有効であり、もともと伊丹市としては、

高層の利用が課題であるとのことです。市バス回転場所の高層利用の開発に併

せて、ハイテク駐輪場を費用対効果を十分考慮し、検討すべきです。

【委員意見】※議論として出されたが、整備費用等で検討が必要とされたもの

阪急伊丹駅前は市の顔であるから、費用がいくらかかろうがハイテク駐輪場を整備

し、放置自転車対策のシンボルとするべき。

<課題>

自転車を放置する利用者は、駐輪に対して対価を払いたくないと思っている一方、

整備費用が多額なハイテク駐輪場の経費負担について、受益者負担の原則で利用

料金を設定すると、非常に高額となり現実的ではなくなります。その為、税で負担する

ことになり、結果、市民全体で負担することになります。自転車の駐輪にはコストがか

かることの市民のコンセンサスを得てから実施する必要があるのではないか。

写真 9 地上の有効活用が図れるハイテク駐輪場(吹田市 HP より)

Page 36: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

30

Ⅱ.自転車利用者の自律を促すための啓発

自転車利用者が自律して、自ら駐輪場に止めるよう、今後の行動につなげてい

ただくことが最も重要です。

伊丹市では、ここ数十年来、多くの市民が 15 時以降は、自転車を駅前に放置し

てきました。今では、市民の生活様式・文化となっていると思われます。これまで、

市として様々な啓発活動をしてこられましたが、文化を変えるには至っていませ

ん。

今後は、啓発活動を単体で実施するのではなく、他の対策と合わせた啓発活動

を効果的に実施し、市民の間で、話題となるようにしなければなりません。

啓発では、「自転車安全教室の充実」、「駐輪指導員の充実」、「路上サインの充

実」を柱として検討しました。

(1)自転車交通安全教室の充実(再掲)

<現状>

幼児を対象とした交通安全教室うさちゃんくらぶや、小中学校で毎年実施、地

域では、要望に応じてまちづくり出前講座として、交通安全教室を実施されていま

す。

平成 25 年度からは、全中学校区で高校生以上の成人向け自転車安全教室を

実施されました。

この他にも、交通安全フェスタinいたみの開催や、春と秋の交通安全パレードな

ど伊丹警察署をはじめとする関係団体との協働による交通安全啓発運動を実施

しています。

<課題>

平成 25 年度より始めた「成人向け自転車安全教室」の受講者の伸び悩みに加

え、自転車交通安全教室の内容が交通安全に特化されており、放置自転車対策

の啓発内容が含まれていないことや、今後増加してくる高齢者に向けた内容が含

まれていないことが課題です。

<対策>

先述の受講者確保策に加え、せっかくの啓発の機会に、放置自転車対策の内

容を含め、当日資料を持ち帰ることにより、家庭や地域で話し合うきっかけとなるよ

うに工夫する必要があります。

Page 37: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

31

(2)駐輪指導員の充実

駐輪指導員については、市民アンケートの結果を見る限りでは効果が期待され

ていませんでしたが、実態としては、駐輪指導員が指導する間の放置自転車は少

なく、駐輪指導員の配置がなくなる時間帯以降、放置自転車が激増していること

から、その効果は大きいと判断できます。

<現状>

7時から 15 時まで(休日は8時から)街頭指導しており、指導時間には放置自転

車は少ないですが、指導時間が市民に周知されており、15 時以降に一気に放置

自転車が発生しています。

<課題>

駐輪指導を行う時間帯が固定しているため、自転車利用者も指導されない時間

帯を把握しており、その結果、駐輪指導員がいない時間帯は、自転車を路上に駐

輪することが可能と思っています。

これまで、周辺店舗への配慮から駐輪指導時間の延長は行っていなかったよう

です。

<対策>

路上駐輪ラックの設置等により、買い物客等への利便性向上を図ることが出来

ることから、放置自転車が見られなくなるまでの一定の期間は、駐輪指導員の体

制を強化し、指導時間を夕方まで延長するべきです。

ただし、指導区域の外へ放置自転車を追いやることにならないよう、他の取組と

併せて放置自転車をなくすようにしなければなりません。

写真 10 駐輪指導員による指導の様子

Page 38: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

32

(3)路上サインの充実

駅前地域には、条例により放置禁止区域が設定されており、当該地には放置禁

止区域を示すサインは設置してあるものの、放置自転車があふれる現在の状態と

なっています。今一度、放置禁止区域を周知するため、これまでにないような目に

留まるような路上サインが必要です。

<現状>

放置禁止区域内にも関わらず放置される自転車が多く、自転車利用者も駐輪

可能な場所と考えています。

<課題>

放置禁止区域の認知度が低く、撤去後に放置禁止区域であることを認識する

(自分の自転車が撤去されるまで認識する機会がない。)ことがあります。

<対策>

社会実験として、市内の中学生から募集した放置自転車に関するポスターを啓

発サインとして路面に設置したものの、思うような結果が得られませんでした。

近隣市で実施している事例についても、効果が挙がっているとは言い難い状態

であり、放置禁止区域及び周辺の自転車駐車場の周知を図る表示を、これまでに

ないような手法で、目立つように表示することが必要です。

写真 11 阪急伊丹駅周辺道路社会実験で設置された路上サイン

Page 39: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

33

Ⅲ.規制強化

市民アンケートでは、自転車利用者のマナーを批判する市民の意見が多く見受

けられます。駐輪環境を整備してもなお、放置する自転車利用者にはより厳しい

罰則を適用することを望みます。

規制強化では、「撤去手数料の適正化」、「撤去時間の延長・ランダム化」、「押

し歩き区間の設定」を柱に検討しました。

また、規制強化を行う一方で、自転車利用者を「既存の自転車駐車場へ誘導す

る料金政策」についても検討しました。

(1)撤去手数料の適正化

アンケートでは、撤去手数料(返還手数料)の額は、現在の額が妥当という意見

が半数を占めているものの、なんらかの値上げをすべきという意見も 42%を占め

ています。

一方で、駐輪環境の整備をしてもなお、放置する自転車利用者には厳しい対応

を望む声が多く見られます。

<現状>

自転車を撤去するには、1 台あたり約 1 万 4,000 円の経費が必要(平成 25 年度

決算)ですが、返還手数料は 2,500 円となっています。

<課題>

放置された自転車を撤去する費用を広く税で補っていることになり、自転車利用

者のうち、駐輪場を利用される方や、自転車を利用されない市民も負担をしてい

ることになります。負担の公平性の観点から課題があります。

<対策>

撤去手数料の適正化が必要です。

図 16 放置自転車の撤去に必要な経費

(『伊丹市の財政ほんまに大丈夫?!やさし

い財政のおはなし(平成25年度決算版)』

より)

Page 40: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

34

(2)撤去時間の延長・ランダム化

駐輪環境の整備をしてもなお、放置する自転車利用者には、厳しい対応が必

要であり、最終的には放置自転車を撤去する必要があります。

<現状>

撤去時間が特定の曜日の9時~12時と固定化していることから、撤去時間を過

ぎると放置が激増します。

<課題>

撤去の実施が特定の曜日の午前中限定のため、自転車利用者も撤去されない

日時を把握しており、その結果、それ以外は駐輪可能と思っています。

<対策>

駐輪環境の整備を実施したにもかかわらず、なお放置されている自転車に対し

ては、撤去を強化して対応するため、撤去を実施する時間を延長したり、午後から

の撤去や、撤去を実施する曜日のランダム化を検討する必要があります。

ただし、撤去を強化したとしても放置自転車の保管所のスペースには限りがあり、

また市職員が直接撤去するにも限界があるため、条例を改正し、撤去を民間に委

託し、駐輪場の空いているスペースに収容することが考えられます。

その際、立体駐輪場の高層階まで放置自転車を運ぶのは困難であるため、路

上に設置された駐輪ラックに収容するのが効率的です。保管所よりは安価な手数

料を設定し、自動精算機等で手数料を払えるようにすることなども、併せて検討す

べきです。

写真 12 撤去作業の様子

Page 41: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

35

(3)押し歩き区間の設定(再掲)

駅前の混雑区間に路上ラックを設置すると、通行空間が狭隘化することになり、

歩行者と自転車の接触事故を防ぐ必要があります。

<対策>

法律による規制ではなく、条例により押し歩き区間(努力義務)を設定し、看板

やのぼり等での広報・啓発と、駐輪指導員による自転車利用者に対する協力依頼

の方法について検討し、社会実験として実施した「押し歩き区間の設定」と「押し

歩きの推進」では、思うような結果が得られませんでした。

強制力のない中での押し歩きの実施には限界があり、条例による努力義務が効

果的かどうか、再度検討することが必要です。

(4)自転車利用者の自律を促す料金政策

上記(1)~(3)の規制強化を行う一方で、自転車利用者が自ら進んで

自転車駐車場を利用するよう自律を促す必要があります。 <対策>

自転車利用者の自律を促すためには、返還手数料の適正化や撤去の強化とい

う「北風政策」を行いつつ、市民や近隣商業者が自律的に取組む仕組みとして、

利用率の低い駐輪場については、高層階の料金の値下げを行うなどの料金政策

に加え、適正に駐輪場を利用した場合には料金の一部をポイントでお返しする

「地域通貨制度」等の「太陽政策」を行い、インセンティブを与えることが有効であ

ると考えます。

Page 42: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

36

<社会実験>

審議会で議論した対策の有効性、市民の反応などを確認するため、審議会開

催中である平成 26 年 9 月 30 日~10 月 29 日までの 1 ヵ月間、社会実験を実施し

ました。

●実験内容(放置自転車対策を目指した内容)

①駅前と西台中央線への路上駐輪ラックの設置

②周知が不十分な西台自転車駐車場への誘導看板の設置

③放置自転車多発場所の路上への啓発ポスターの設置

④放置自転車がなくなったオープンスペースを活用したオープンカフェ・イベントの実

⑤路上駐輪ラック設置箇所やオープンカフェ・イベント実施箇所における押し歩きのお

願い

●実験結果

●考察

Page 43: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

37

5.市民・事業者等との協働による推進

伊丹市だけで対策を推進しても、その効果には限界があります。自転車利用を

しているのは市民自身であり、また、駅前や中心市街地の放置自転車対策に伴う

駐輪環境の整備は、自転車で行きやすい環境を作ることに他なりません。そのた

め、市民や駅前等の商店、鉄道事業者、警察との市民の利便性に主眼を置いた

協働による対策の推進や、キャンペーン実施など、地域全体での継続的な取組と

することが必要となります。

「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の推進に関する条例」で

は、以下のように役割を規定しています。

市の責務

国,兵庫県,関係団体及び事業者との連携を図りながら,自転車の安全利

用の促進及び自転車等の駐車対策の推進に関する施策を,総合的かつ計画的

に実施する。

自転車利用者の責務

自転車が車両(道路交通法第2条第1項第8号に規定する車両をいう。)

であることを認識して,同法その他関係法令を遵守し,歩行者等に危害を及

ぼさないようにする等,自転車の安全利用に努めなければならない。

自転車の点検及び整備を定期的に行うよう努めなければならない。

自転車事故に係る損害賠償責任保険への加入に努めなければならない。

自転車等の放置が,歩行者等の通行及び災害時の避難等の支障となり,か

つ,まちの美観の維持を損なうものであることを認識するとともに,自転車

等の放置により,良好な生活環境を悪化させてはならない。

保護者の責務

保護する子に対し,自転車の安全利用に関する指導を行い,安全利用に必

要な知識及び技能を習得させるよう努めなければならない。

保護する子の利用する自転車の点検及び整備を定期的に行うよう努めな

ければならない。

保護する子(13 歳未満の者に限る。)を自転車に乗車させるときは,当該

子に乗車用ヘルメットを着用させるよう努めなければならない。

保護する子の自転車事故に係る損害賠償責任保険への加入に努めなけれ

ばならない。

学校の責務

市内の学校(学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第1条に規定する小

Page 44: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

38

学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校をいう。)は,児

童及び生徒に対し,当該学校における教育活動として,自転車の安全利用に

関する教育及び指導を行うよう努めなければならない。

事業者の責務

通勤のため自転車を利用する従業員及びその事業活動において自転車を

利用する従業員に対し,自転車の安全利用に関する啓発及び指導を行うよう

努めなければならない。

自転車小売業者の責務

自転車の販売又は点検整備を行うに当たっては,顧客に対し,自転車の取

扱い方法並びに防犯登録,点検整備及び損害賠償責任保険への加入等,自転

車の安全利用等に関する情報を提供するよう努めるとともに,これらの行為

の勧奨に努めなければならない。

鉄道事業者の責務

鉄道の駅の周辺における自転車等駐車場の設置が円滑に行われるよう,市

との協力体制の整備に努めるとともに,市から自転車等駐車場の設置に協力

を求められたときは,その事業との調整に努め,市の施策に積極的に協力し

なければならない。

施設の設置者の責務

官公署,学校その他の公益的施設の設置者及び大型店舗等(百貨店,スー

パーマーケット,銀行,遊技場その他自転車等の大量の駐車需要を生じさせ

る施設をいう。)の設置者は,周辺の土地利用を勘案し,その施設の利用者

のために必要な自転車等駐車場を設置するよう努めるとともに,市の施策に

積極的に協力しなければならない。

条例の趣旨を真に実現するため、各々が、役割と責任を認識し自律して、協働

につながるよう、行政はコーディネーター役として、積極的な情報提供に努めると

ともに、各々の責務を担うよう促す取組が必要です。

そのために、行政、自転車利用者、鉄道事業者、近隣商業者、警察、地元自治

会等で構成された(仮称)駅周辺駐輪対策協議会を設け、今後、路上駐輪ラック

の設置箇所の検討や啓発・指導活動の検討など放置自転車対策について協議

することにより、自転車利用環境向上のため、継続した取組を行っていくことが重

要です。

Page 45: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

39

6.提言

当審議会では、平成 26 年 5 月、市長からの「自転車利用における安全利用の

促進と放置自転車対策について」の諮問に応じ、伊丹市の自転車利用の特性に

合わせた具体的な対策について、安全利用の促進については、啓発、ハード整

備、規制強化を柱に、放置自転車対策については、駐輪場整備、啓発、規制強

化を柱にして、審議を重ねました。

これらの審議結果を踏まえ、以下のとおり提言します。

Ⅰ.自転車の安全な利用の促進に向けて

(1)啓発

①自転車交通安全教室の充実

受講に対するインセンティブを与える工夫

②交通安全指導員の設置

条例による指導員の位置づけの明確化

③損害賠償保険の加入推奨

損害賠償保険への加入の必要性の啓発と、補助金の検討

交通災害等共済のあり方について検討

(2)ハード整備

①交差点等の改良

②ピクトサイン等での注意喚起

事故発生箇所の分析に基づく改良や自転車利用者に対する路面表示の工夫

③自転車レーン等の整備

市道と県道等の連携した自転車レーン等のネットワーク化

(3)規制強化

①警察による指導強化

規制権限を持った警察との共同による指導強化

②押し歩き区間の設定

路上駐輪ラック設置箇所での接触事故防止のため押し歩き区間の設定

Ⅱ.自転車等の放置の防止に向けて

(1)駐輪場整備

①既存駐輪場の再整備

2 段式ラックに平置き化や、ペデストリアンデッキの駐輪場への転用による利用し

やすいよう再整備

②機械式路上駐輪場(路上駐輪ラック)の設置

Page 46: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

40

自転車が放置される路上に路上駐輪ラックを設置

③地下(地上)ハイテク駐輪施設の整備

阪急伊丹駅については慎重に、JR 伊丹駅については導入を検討

(2)啓発

①自転車交通安全教室の充実(再掲)

放置自転車対策の啓発内容を含める

②駐輪指導員の充実

指導時間の延長

③路上サインの充実

周知を図ることが出来る新たなサイン

(3)規制強化

①撤去手数料の適正化

撤去手数料の見直し

②撤去時間の延長・ランダム化

午後の撤去や、曜日のランダム化

③押し歩き区間の設定(再掲)

④自転車利用者の自律を促す料金政策

Ⅲ.市民・事業者等との協働による推進に向けて

(1)協働の場の設置

①(仮称)駅周辺駐輪対策協議会の開催

また、これらの対策の実施にあたっては、行政(市)、警察等だけでなく、自転車

利用者、保護者、学校、事業者、自転車小売事業者、鉄道事業者、施設の設置

者等が各々の責務を果たしながら、協働して安全で快適な自転車利用の実現に

向けて取り組まなくてはなりません。

Page 47: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

41

7.おわりに

当審議会では、伊丹市における自転車の安全な利用の促進と放置の防止につ

いて、現状の分析や市民のアンケート、社会実験結果等を踏まえ、その課題や対

策について審議を行ってきました。各委員からこれまで提案された意見を整理し、

ここに答申します。

今回の答申が活かされ、自転車利用者が改善状況を実感できるようになること

で、啓発事業も本来の役割を発揮でき、自転車利用者が自律して適正な自転車

利用を実践することができるようになると考えており、その実現を望むものです。

自転車の安全な利用の促進と放置の防止に向けて、答申の内容が伊丹市にお

ける自転車等対策施策に反映されることを期待しています。

また、今回は、自転車に起因する課題について、自転車に限って審議してきま

した。本来、数ある交通手段の一つである自転車利用を市としてどのように位置づ

けるのか、総合交通としてのバランスの観点からのアプローチが必要です。平成2

7年度に策定が予定されている総合交通計画において、他の交通手段とともに自

転車の位置づけを明確にし、自転車利用が推進されることを願います。

Page 48: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

Ⅰ自転車利用者の自律 Ⅱハード整備 Ⅲ規制強化上記3つの観点から整理し、それぞれのバランスをとりながら実施できる項目について検討

伊丹市自転車等対策審議会における検討

自転車の安全な利用の促進に向けた取組

【取組項目】【スケジュール】

平成27年度平成28年度

以降

自転車利用者の自律

(1)自転車交通安全教室の充実

受講者証に付加価値をつけることにより、受講に対するインセンティブを与える。

地域団体や学校と連携した教室を開催し、受講を促すとともに、地域活動として行う。児童・生徒を講師とする開催方法も検討。

(2)交通安全指導委員の設置

条例により指導員を設置し、役割を明確化。

警察と共同での指導の実施。

(3)損害賠償保険の加入促進

自転車関連団体と共同でイベント会場等での加入促進活動。継続

交通災害等共済制度の見直しとTSマークに対する補助の検討。

ハード整備

(1)交差点の改良及び(2)ピクトサイン等での注意喚起

事故発生箇所に優先順位をつけ、交差点の点検・改良を継続して行う。継続

法定外ピクトサイン等による啓発の検討。継続

(3)自転車レーン等の整備

県や警察との連携を密にしたうえで、市道と県道等が連携した自転車ネットワークの実現。 継続

街路樹等により幅員が狭い自歩道においては、通行空間を確保するため伐採も検討。

規制強化

(1)警察による指導強化

警察と共同での指導強化。

市、警察に加え学校関係者と共同で生徒に指導を行う。

(2)押し歩き区間の設定

条例により押し歩き区間を努力義務として設定し、駅前等の混雑する区間における接触事故を回避 検討

安全利用の促進 今後の取組予定

42

Page 49: 伊丹市自転車等対策審議会答申書(案)...発生件数 (件) 36,195 34,056 32,734 人口1万人当り発生件数 (件) 64.8 61.1 58.7 死者数 (人) 198

伊丹市自転車等対策審議会における検討

【駅名等】 【取組項目】【スケジュール】

平成27年度平成28年度

以降

阪急伊丹駅

路上駐輪ラック設置

阪急伊丹駅デッキ 自転車駐車場化

地下自転車駐車場平置き化

西台自転車駐車場 壁面表示設置

阪急新伊丹駅 平松自転車駐車場 平置き化

阪急稲野駅 路上駐輪ラック設置

JR伊丹駅 アリオ前周辺 路上駐輪ラック設置

ソフト事業の取組

地域通貨制度の導入

放置自転車の路上駐輪ラックへの撤去駅前広場のみ 順次拡大

各自転車駐車場の料金政策

駐輪指導時間延長・撤去強化駅前広場のみ 順次拡大

Ⅰ駐輪場の整備 Ⅱ自転車利用者の自律 Ⅲ規制強化上記3つの観点から整理し、それぞれのバランスをとりながら実施できる項目について検討

自転車等の放置の防止に向けた取組

駅別等自転車駐車場の整備・放置自転車対策 今後の取組予定

43