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1 電子回路の計算機シミュレーション 目的 電子回路シミュレータを用いて、電子回路の理解を深める。バイアスポイント解析、DC 解析、AC 解析を行い、それらの違いを確認する。 1.LTspice LTspice とは、リニアテクノロジー社による電子回路シミュレータの名称であり、元は 1973 年にカルフォルニア大学バークレー校で開発された Spice(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)である。現在は、この Spice の系統に属する計算機シミュレータが数多く開 発されており、アナログ回路分野で広く使われている。このシミュレータは、アナログ電 子回路のシミュレーションを得意とする。オリジナルの Spice において、回路図入力はテキ ストデータによるネットリストが用いられていたが、現在では、 GUI (Graphical User Interface)によるものが大半である。しかし、 GUI を通してテキスト形式のネットリストファ イルを生成し、回路解析プログラムに渡すようになっているものが多い。 2.バイアスポイント計算(LTspice の基本的な使い方) 実験室のパーソナルコンピュータに LTspice が既にインストールされている。本シミュレ ータは、フリーウェア[1]であるから、各自ダウンロードして自由に利用することができる (付録 1 参照)。ここでは、分圧回路の計算機シミュレーションを通して、LTspice の使い方 を説明する。 説明のために、図 2.1 に示す回路のシミュレーションを行う。5V の直流電圧源 V 1 が、抵 抗器 R 1 , R 2 よりなる分圧回路に接続されている。同図より、出力電圧 V OUT は、次のように なる。 V 2 V 5 2 3 2 2 1 2 E R R R V OUT (1.1) 以上の理論を、LTspice を使って確かめよう。 2.1 分圧回路

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1

電子回路の計算機シミュレーション

目的

電子回路シミュレータを用いて、電子回路の理解を深める。バイアスポイント解析、DC

解析、AC解析を行い、それらの違いを確認する。

1.LTspice

LTspiceとは、リニアテクノロジー社による電子回路シミュレータの名称であり、元は 1973

年にカルフォルニア大学バークレー校で開発された Spice(Simulation Program with Integrated

Circuit Emphasis)である。現在は、この Spiceの系統に属する計算機シミュレータが数多く開

発されており、アナログ回路分野で広く使われている。このシミュレータは、アナログ電

子回路のシミュレーションを得意とする。オリジナルの Spiceにおいて、回路図入力はテキ

ストデータによるネットリストが用いられていたが、現在では、GUI (Graphical User

Interface)によるものが大半である。しかし、GUIを通してテキスト形式のネットリストファ

イルを生成し、回路解析プログラムに渡すようになっているものが多い。

2.バイアスポイント計算(LTspiceの基本的な使い方)

実験室のパーソナルコンピュータに LTspice が既にインストールされている。本シミュレ

ータは、フリーウェア[1]であるから、各自ダウンロードして自由に利用することができる

(付録 1 参照)。ここでは、分圧回路の計算機シミュレーションを通して、LTspice の使い方

を説明する。

説明のために、図 2.1に示す回路のシミュレーションを行う。5V の直流電圧源 V1が、抵

抗器 R1, R2よりなる分圧回路に接続されている。同図より、出力電圧 VOUTは、次のように

なる。

V2V523

2

21

2

E

RR

RVOUT (1.1)

以上の理論を、LTspiceを使って確かめよう。

図 2.1 分圧回路

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2

図 2.2 LTspice のアイコン

図 2.3 File→New Schematic

図 2.4 部品の選択(Componentアイコン)

図 2.5 Select Component Symbol

図 2.6 部品の配置

ステップ1 回路の作成

① 図 2.2のアイコンをダブルクリックすると、LTspiceが起動する。

② 図 2.3ように、File→New Schematic選ぶ。

③ 部品を配置する。部品の選択は、図 2.4の Componentアイコンをクリック(ショートカッ

ト:F2)すると、図 2.5 の”Select Component Symbol”ウィンドウが開く。直流電圧源

は”voltage”、抵抗器は”res”(ショートカットは R)である。図 2.6のように部品を配置する。

(ア) 部品の回転は Ctrl+R

(イ) フリップ(左右反転)は Ctrl+E (図 2.6中の R2は、左右反転して配置している)

(ウ) 部品の移動(Drag)は、Edit→Drag または、F8キーを押しマウスの左ボタンを押しな

がら希望部品を囲み、左ボタンを離すと、好きな位置に移動できる。

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3

図 2.9 Wire

図 2.8 GND の設置

図 2.7 Ground

図 2.10 配線が済んだ様子

④ 回路図中に、グラウンド(接地の意味)を配置する。図 2.7の Ground アイコンをクリック

(ショートカット:G)し、図 2.8のようにグラウンド(GND)を置く。これは、基準電位を

与えるものである。これを忘れると、計算機に基準電位を指定できないため、エラーと

なる。今後、どのような回路であっても、GNDを忘れないようにする。

⑤ 各素子を配線する。図 2.9のようにWireアイコンを左クリック(ショートカット:F3)する

と、配線することができる。図 2.10のように配線する。

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4

図 2.11 Enter new Value for R1

図 2.12 素子値の設定

図 2.13電圧源の設定

図 2.14 素子値の設定が完了した様子

図 2.15 Run アイコン

⑥ 素子値を入力する。例えば、抵抗器 R1の”R”の位置で右クリックすると、図 2.11の Enter

new Value for R1 ウィンドウが現れる。図 2.12のように、一番下のテキストボックスに 3

を入力する。物理単位”Ω”を表す表記はohmであるが、省略しても良い。k (103), Meg (10

6),

G (109), T (10

12)の他に、m (10

-3 (Megと混同しないように注意する))、u (10

-6)、n (10

-9)、

p (10-12

)などが入力可能であるので、適宜利用する。LTspiceでは、大文字と小文字の区

別はない。

⑦ 電源を設定する。電圧源の近くで右クリックすると、図 2.13の Voltage Source – V1が開

くので、図のように設定する。図の Series Resistance は、電圧源の内部抵抗を意味して

いる。今回は理想電圧源を用いるので、0としている。

⑧ 以上で部品の配置と素子値の入力は完了である。図 2.14のようになるはずである。

ステップ2 シミュレーション

① 図 2.15の Runアイコンをクリックする。

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5

図 2.16 Edit Simulation Command

図 2.17 DC op pnt

図 2.18 解析結果

図 2.19 ノード番号の確認

図 2.20 ノード情報

② 図 2.16の Edit Simulation Command ウィンドウが現れる。このウィンドウで、何をシミ

ュレーションするのかを指定する。LTspice では、(1)Transient(過渡)解析、(2)AC 解析、

(3)DC 解析、(4)ノイズ解析、(5)DC 伝達解析、(6)バイアスポイント解析が可能である。

今回は、バイアスポイント解析を行うので、DC op pntタブをクリックする。

③ 図 2.17 のようになる。このウィンドウの OK ボタンをクリックすると、図 2.18 のよう

に解析結果が表示される。

④ この解析結果は、たとえば、V(n001)は、ノード n001の節点電圧を意味している。ノー

ドとは、回路の節点を意味している。また、I(R1)は、抵抗器 R1に流れる電流を意味し

ている。ノード番号は計算機によって自動的に与えられる。ノードの確認は、図 2.19

のように、View→Spice Netlistを選択すると、図 2.20が表示され。ここから、n001は電

圧源の電圧であり、n002が出力電圧であるということがわかる。

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6

図 2.21 Label Net

図 2.22 Net Name

図 2.23 出力ノードに OUTPUTと名付けた

図 2.24 解析結果

⑤ ノード番号は、ラベルを付けることで、わかりやすくすることができる。図 2.21のよう

に、Label Netアイコンをクリック(ショートカット F4)する。

⑥ 図 2.22の Net Name ウィンドウが開く。テキストボックスに、希望するノード名を書き

込む。この例は OUTPUTとしている。OKボタンをクリックする。

⑦ 回路図画面で、希望するノードにカーソルを持っていき、左クリックすると、図 2.23

のようになる。

⑧ ここまでできたら、再度、Run ボタン(図 2.15)をクリックするとシミュレーションが実

行され、図 2.24の結果が表示される。

なお、バイアスポイント解析を行うことを一度指定(図 2.17)すれば、Run ボタンを

押すと即座に解析結果が表示される。もし、例えば 3 章以降の他の解析を行う場

合、図 2.23 における”.op”を削除した後、Run ボタンをクリックする。

⑨ 同図から、V(output)が 2V となり、調べたい電圧を簡単に見つけることができることが

わかる。

⑩ 以上の結果を、TA または技術職員に確認してもらう。

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7

図 3.1 RC 回路

図 3.3 Voltage Source – V1

図 3.2 入力した回路

課題1 バイアスポイント解析

回路図とそのシミュレーション結果を示し、分かったことを述べよ。

3.過渡解析

3.1 RC回路の過渡応答

図 3.1 に示す RC 回路において、キャパシタの初

期電荷がないものとする。t = +0でスイッチ S を閉

じたときの出力電圧 v ( t )を求めよう。このような

解析を、過渡解析と呼ぶ。

ラプラス変換を使うと、出力 V (s )は、

1

11

1

1

1

ss

sssV

(3.1)

となるので、出力電圧 v (t ) は、次のようになる。

0 1 tetv t (3.2)

以上の理論を、計算機シミュレーションによって確認しよう。

ステップ1 回路図の入力

① 図 3.2のように回路を入力する。LTspiceにおいてスイッチは電圧源に含められるので入

力しない。キャパシタの部品名は capである。出力ノードを OUTPUT としている。

② 電圧源V1を右クリックすると、図 3.3のVoltage Source – V1が現れる。何も入力せずに、

Advancedボタンをクリックする。

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8

図 3.4 Voltage Source – V1

図 3.5 パルス電源の設定

図 3.6 パラメータの対応

③ 図 3.4の Independent Voltage Source – V1が開く。今回はスイッチを伴ったステップ入力

なので、上から2番目の PULSE(V1 V2 Tdelay Trise Tfall Ton Period Ncycles)を選ぶ。

④ 図 3.5 のようにテキストボックスが現れるので、図の数値を入力する。これは、理想的

なステップ入力を指定することができないためである。各数値との関連を、図 3.6に示

す。OKボタンをクリックする。図 3.7のように、電圧源に情報が表示される。

⑤ Runボタン(図 2.15)をクリックすると、図 3.8の Edit Simulation Command ウィンドウ

が現れる。今回は Transient解析を行うので、このタブにおいて、テキストボックスに図

の数値を入力する。ボックス内の単位は秒[s]である。Stop Time はシミュレーション終

了時刻、Time to Start Saving Dataはデータを記録開始するまでの時間、Maximum Timestep

は、過渡解析における最大ステップ時間(ステップ時間幅はシミュレータが自動的に設

定するが、その上限時間を指定する)である。ウィンドウ下のテキストボックスに、上

記の値によって自動的に Spice 用の命令が生成される。OK ボタンをクリックすると、

シミュレーションが開始される。

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9

図 3.10 マウスカーソルの変化

図 3.7 電圧源の設定を変更した回路

図 3.9 シミュレーション終了直後

図 3.8 Edit Simulation Command

ステップ2 シミュレーション

① シミュレーションが終わると、図 3.9のようになる。この状態で、まだ出力波形は表示

されない。図 3.9の回路図ウィンドウの出力信号付近にマウスカーソルを持っていくと、

図 3.10 のようにマウスカーソルが変化する。このとき左クリックすると、図 3.11 のよ

うに、シミュレーション結果が表示される。

ここまででシミュレーション結果が波形として表示されたわけであるが、式(3.2)の仮説が

正しいかどうか、もう少し詳しく検証することにしよう。

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10

図 3.11 OUTPUT 端子の波形

図 3.12 マウスカーソルの変化

図 3.13

図 3.14 マウスカーソルの変化

図 3.15

② 図 3.12 のように、波形ビューアの V(output)付近にマウスカーソルを持っていくと、図

3.13 のようにマウスカーソルが変化する。ここで左クリックすると、図 3.13のウィンド

ウが新たに開く。これは、カーソルの位置の時間と電圧を示している。

③ マウスカーソルを波形の上で動かすと、図 3.14 のようにマウスカーソルが”1”の形に変

化する。マウスの左ボタンを押したまま、1s の所にカーソルを移動させると、図 3.15

のように、時刻 1s における電圧が表示される。

例えば、式(3.2)から v(1.00414)≒633.604mV であるが、図 3.15の結果と若干異なる。

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図 3.16 RC 回路

図 3.17 入力した回路

課題2 過渡解析

(1) t = 0, 1, 2, 3, 4, 5付近(正確にこの値でなくとも良い)のときについて、理論値と計算機シ

ミュレーションの結果を調べて比較せよ。このとき、①理論値の桁数は、計算機シミュ

レーションの結果と合わせること。多くの桁を書いても無意味である。今後の実験で同

様に配慮せよ。また、②V や mV の単位も揃えること。例えば、シミュレーションは

mV 単位であるのに、理論値が V 単位など、異なる形の表記はナンセンスである。(こ

のことは、実験全般に言えることである)

(2) 図 3.8のMaximum Timestep を 1msに設定しなおし、①と同様のことを行え。その結果、

どういった違いがあるか。

(3) 出力電圧が約 0.9V となる tを手計算で求めよ。そして、計算機シミュレーションでその

妥当性を示せ。

3.2 RC回路の過渡応答②

図 3.16 に示す RC 回路において、キャパシタの初期電

荷がないものとする。t = +0 でスイッチ Sを閉じたときの

出力電圧 v ( t )を求めよう。

ラプラス変換を使うと、出力 V (s )は、

1

1

15

5/1

15

26

1

1

1

15

1

22

2

ss

s

s

sssV

(3.3)

となるので、出力電圧 v (t) は、次のようになる。

0 sincos5526

1 5/ tttetv t (3.4)

以上の仮説を、計算機シミュレーションによって確認しよう。

ステップ1 回路図の入力

① 図 3.17のように回路を入力する。

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図 3.19 電圧源を設定した回路

図 3.18 Independent Voltage Source – V1

図 3.20 電圧源を変更した回路

図 3.21 シミュレーション結果

② 電圧源を右クリックすると、Voltage Source – V1 が現れる(図 3.3)。何も入力せずに、

Advancedをクリックする。

③ 図 3.4の Independent Voltage Source – V1が開く。今回はスイッチを伴った正弦波入力な

ので、図 3.18のように、上から3番目の SINE(Voffset Vamp Freq Td Theta Phi Ncycles)を

選び、同図のように数値を入力する。その結果、図 3.19 のようになる。Freq 欄の単位

は[Hz]である。1rad/sにしたいので Freq [Hz] を 0.1591(≒1/2π)としている。

ステップ2 シミュレーション

① 3.1節のステップ2と同様にシミュレーションを行う。解析の設定は、図 3.20のよう

にせよ。

② シミュレーション結果を図 3.21に示す。

③ 3.1節では、t = 0, 1, 2, …,5 の場合について値を検証したわけであるが、今回は、式(3.4)

の理論値と、シミュレーション結果を同一のグラフに重ね合わせることにする。シミュ

レーション結果の出力方法を、次のステップ3に示す。

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図 3.24 Select Traces to Export

図 3.23 File→Export

図 3.25 Ngraphによる出力(epsファ

イルを貼り付けたもの)

図 3.22波形ビューアのタイトルバーを左クリック

ステップ3 シミュレーション結果のエクスポート

① 図 3.22 のように、解析結果が表示されているウィンドウをアクティブにする。(波形ビ

ューアのタイトルバーを左クリックする。)

② 図 3.23のように、File→Exportをクリックする。

③ 図 3.24の Select Traces to Exportウィンドウが現れるので、ファイル名及び、出力したい

信号を選び、OK ボタンをクリックすると、シミュレーション結果がテキスト形式で出

力される。このファイルをグラフ表示ソフトに取り込み、計算した理論値と重ねること

によって、両者の比較を行うことができる。

④ 本実験ではグラフ表示ソフトウェアに、フリーソフトの Ngraph[4]または gnuplotを用い

る。Ngraphは、実験室のパーソナルコンピュータにインストールしてある。このソフト

ウェアは、研究開発の現場で広く用いられているソフトウェアの一つである。使い方は

特に記さないので各自利用法を調べて利用せよ。理論値のデータは、Microsoft Excelや、

プログラムを自作するなどして生成する。理論値のデータ生成方法について、情報科学

類の学生諸君には、もはや説明の必要はないであろう。図 3.25 に、Ngraph で生成した

図の例を示す。

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図 3.26 課題3の LCR 回路

課題3 LCR回路のシミュレーション

図 3.26 に示す回路において、キャパシタの初期電荷はなく、インダクタの初期電流もな

いものとする。t = +0でスイッチ S を閉じたときの出力電圧 v ( t )は、ラプラス変換を使う

と、次のようになる。

3

3

2

3

2

1

2

3

2

3

2

1

2

1

1

1

11

1

1

1

2222

2

2

ss

s

s

ss

s

s

ssssV

(3.5)

従って、出力電圧 v (t) は、次のようになる。

0 2

3sin

3

3

2

3cos1 2/

tttetv t (3.6)

以上の結果を、計算機シミュレーションによって検証せよ。インダクタの部品名は indであ

る。上式と計算機シミュレーションの結果を、Ngraph または gnuplotを用いて図示せよ。

4.DC解析

4.1 ダイオード

図 4.1に示すダイオードに流れる電圧 Vと流れる電流 Iの関係は、次のようになる。

)1(/

TVVS eII (4.1)

ここで、ISは飽和電流と呼ばれ、小信号用ダイオードであれば nAオーダの値を持つ。VTは

熱電圧(kT / q)で、qは素電荷(1.6×10-19

C)、Kはボルツマン定数(1.38×10-23

J/K)、T は絶対温

度(室温 27℃として、T = 300K)である。室温で VT ≒ 26mV となる。ダイオードの特性例

を、図 4.2に示す。

上式の特性は、V >>VTのとき、次のようになる。

TVVSeII

/ (4.2)

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図 4.1 ダイオード

図 4.2 ダイオードの I –V特性例

(VZはブレークダウン電圧)

図 4.3 入力した回路

図 4.4 部品名の設定

図 4.5 部品名の設定

図 4.6 電圧源の設定

また、V<<VTのとき、次のようになる。

SII (4.3)

図 4.2に、ダイオードの I –V 特性例を示す。このような特性を静特性と呼ぶ。以上の特性を

計算機シミュレータで確認しよう。このような解析は、DC解析を用いる。

ステップ1 回路の入力

① 図 4.3 のように回路を入力する。ダイオードの部品名は diode である。同図の D を右ク

リックして、図 4.4 のように、部品型番として、D1S1588(メーカー型番は 1S1588であ

る)とする。

② 電圧源の記号付近で右クリックすると、図 4.5の Voltage Source-V1ウィンドウが現れる

ので、図のように設定し、OKをクリックする。図 4.6のようになるはずである。

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16

図 4.9 Edit Simulation Command

図 4.7 Spice Directive

図 4.8 Edit Text on the Schematic

③ ダイオードのデバイスパラメータを設定する。図 4.7 の Spice Directive アイコンを左ク

リックする。

④ 図 4.8 の Edit Text on the Schematic ウィンドウが開くので、テキストボックス

に、” .include K6¥K6parts.lib”と入力し、OKボタンをクリックする。これは、

本実験で利用する部品のデバイスパラメータ(部品の性質を示すもの)のパスを指定す

るものである。このファイルは、c:¥Program Files¥LTC¥LTspiceIV¥lib¥sub¥K6

に収められており、この記述によって、K6parts.libが読み込まれる。

ステップ2 シミュレーション

① Runボタン(図 2.15)をクリックすると、Edit Simulation Command ウィンドウが現れる。

DC sweep タブをクリックすると、図 4.9のようになり、DC解析の横軸に相当するパラ

メータを指定する。この設定で 0V~1Vまでを 0.01V刻みで解析することを指定してい

る。OKボタンをクリックする。

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17

図 4.10 マウスカーソルの変化

図 4.11 電流測定用カーソル

図 4.12 シミュレーション結果(1S1588の静特性)

② シミュレーション結果は、まだ表示されていないはずである。今回は、電圧でなく、電

流を調べるので、図 4.10のように、マウスカーソルを、ダイオード付近に移動させると、

図 4.11のように、クランプメータ(電流測定器の一つ)の形に変化する(図 3.9のプロ

ーブ状の形状でないことに注意)。ここで左クリックすると、図 4.12 のようにダイオー

ドの静特性が表示される。

③ 縦軸は、最大電流が表示されるように、自動的に設定される。例えば、グラフの上限を

100mA に変更する場合、図 4.13 のように、マウスカーソルを縦軸の数値の上に移動さ

せると、マウスカーソルが定規のようになる。ここで左クリックすると、図4.14のVertical

Axisウィンドウが現れる。図のように設定して、OKボタンをクリックする。

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18

図 4.14 Vertical Axis

図 4.13 マウスカーソルの変化

図 4.15 シミュレーション結果(縦軸が 100mA になっている)

図 4.16 Vertical Axis

④ 図 4.15のように、縦軸の最大値が設定通り 100mAとなっていることを確認する。

⑤ ダイオードの電流は、順方向バイアスの時、式(4.2)のように V の指数関数で増加するか

ら、縦軸を対数目盛で表すと直線になるはずである。LTspice のシミュレーション結果

を、対数表示させることにしよう。③と同様に、図 4.16に示す Vertical Axis ウィンドウ

を表示させ、ウィンドウ下の Logarithmic チェックボックスにチェックを入れ、Top に

10mA、Bottomに 1uAを入力し、OKをクリックする。

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19

図 4.17 シミュレーション結果(縦軸が対数目盛になっている)

⑥ 図 4.17のように、縦軸が対数目盛となる。

⑦ ここまでで、TAか技術職員に結果を確認してもらう。

課題4 ダイオードの特性比較

小信号用ダイオード 1S1588と電源用整流ダイオード 1N4001の V – I特性を計算機シミュ

レータで調べ、NGraph または gnuplot を用いて同一のグラフ上に示せ。なお、グラフの y

軸の最大値を 0.1A とせよ。両者を実線と点線などで区別して表示せよ。両者にどのような

違いが認められるか。なお、1N4001のデバイスパラメータは、1S1588 と同一の場所に格納

されており、登録部品名は D1N4001である。

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20

図 5.1 RC ローパスフィルタ

図 5.2 周波数特性

5.AC解析

5.1 RC回路の周波数特性

図 5.1の回路に、正弦波信号が入力されている。信号を印加した直後は、3.章で調べた

過渡現象が現れるが、時間が十分に経過したとき、ある一定の振幅および位相をもつ正弦

波信号に落ち着く。電気・電子回路において、過渡的な現象が重視される場合もあるが、

十分に時間が経過してからの応答が重要な場合も非常に多い。本章では、正弦波信号を入

力し、十分に時間が経過したときの応答を扱う。

図 5.1の回路は、1次の RC ローパスフィルタと呼ばれる。この回路の伝達関数 jT は、

CRj

jT

1

1 (5.1)

となる。振幅特性および位相特性は、次のようになる。

振幅特性 : 21

1

CRjT

(5.2)

位相特性 : CRjT 1tan (5.3)

上式は、入力信号の振幅が jT 倍になり、位相が入力信号に対して jT だけ進むこと

を意味している。このようにして得られる結果は、横軸が周波数で、縦軸が振幅もしくは

位相のグラフになる。上記のような特性を、周波数特性と呼ぶ。

このような特性を調べる場合は、図 5.2のように、正弦波発生器と電圧計や位相計などを

用いて測定する。正弦波発生器の周波数を少しずつ変えながら、計器の指示を記録するこ

とで周波数特性を知ることができる。この実験は、次の「能動 RCフィルタ」で詳しく行う。

計算機シミュレータで周波数特性を知る場合、AC解析を用いる。

ステップ1 回路図の入力

① 図 5.3のように、回路を入力する。

② 電圧源 V1を右クリックすると、図 5.4の Voltage Source – V1ウィンドウが現れる。

③ 何も入力せずに、Advancedボタンをクリックすると、図 5.5の Independence Voltage Source

– V1ウィンドウが現れる。今回は AC 解析なので、同図の Small signal AC analysis(AC)

のテキストボックスに、図の数値を入力する。今後本実験において、AC Amplitude は常

に 1V、AC Phase は 0でよい。図のように入力し、OKボタンをクリックする。

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21

図 5.3 回路図の入力

図 5.4Voltage Source – V1

図 5.5 Independence Voltage Source – V1

④ Runボタン(図 2.15)をクリックすると、Edit Simulation Command ウィンドウが現れる。

AC Analysis タブをクリックすると、図 5.6 のようになり、AC 解析の横軸に相当するパ

ラメータを指定する。

(ア) Type of Sweep は、横軸(周波数)をリニアスイープ(周波数のステップが等差数

列になる)にするかログスイープ(等比数列)にするかの選択である。Octave, Decade

はログスイープ、Linearはリニアスイープである。フィルタの特性を調べる場合は、

ログスイープを使うことが多い。ここでは Octave を選ぶ。

(イ) Number of points per octave は、オクターブあたり、つまり周波数が 2倍になるまで

に解析する周波数点の数である。ここでは 101なので、たとえば 1Hz~2Hzで 101

個の点を取ることになる。

(ウ) Start Frequencyと Stop Frequencyは、開始および終了周波数で、その単位は[Hz]で

ある。角周波数[rad/s]でないことに注意する。

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22

図 5.6 Edit Simulation Command

図 5.7 シミュレーション結果

ステップ2 シミュレーション A (横軸 Hz)

① 図 5.6 で OK ボタンをクリックすると、図 5.7 のようにシミュレーション結果が表示さ

れる。実線が振幅特性で、破線が位相特性である。

② 式(5.2)で予想される具体的な結果として、ω=1 rad/s のときの振幅と位相を調べよう。

理論値は、次のようになる。

(ア) 振幅: 2

11 jT (5.4)

(イ) 位相: 451 jT (5.5)

図 3.11のようにカーソルを使って、ω=1 rad/sの振幅と位相を調べる。シミュレーシ

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23

図 5.8 カーソルによって調べた 0.1591Hz付近の振幅と位相

ョン結果の横軸は周波数[Hz]であることに注意する。 Hz1591.02/ f である。つ

まり、ここでのシミュレーション結果で、周波数 0.1591Hz における振幅と位相を調べ

なければならない。このときの様子を、図 5.8に示す。なお、マウスカーソルを移動さ

せると、周波数が大きく動いてしまう。←や→のカーソルキーを使うと、細かい移動

が可能になる。

③ 図 5.8の結果のうち、位相が-45°付近となり、式(5.5)で予想される位相にかなり近くな

っていることがわかる。この違いは、ω=1 に相当する周波数からやや外れていること

による。もし、ここを正確に合わせるには、図 5.6の Number of points per octave を大き

くする。ただ、むやみに大きくすると、計算時間を浪費してしまう。ω=1 付近の特性

がわかればよいのであるから、このような場合は、適宜 Start Frequencyと Stop Frequency

を変更するのが合理的である。

④ 図 5.8の結果のうち、振幅はMagで表示されており、その結果は dBで表示されている。

dB は、次式で定義される。式(5.5)の理論値の 2/1 は、約-3dB であるから、シミュレー

ション結果と理論値がよく一致していると言える。

20/)dB(10 での値jT (5.6)

jT10log20)dB( での値 (5.7)

ステップ3 シミュレーション B (横軸 rad/s)

① シミュレーション結果を、角周波数に変更する方法を説明する。これまでに入力した回

路は、図 5.9のようになっているはずである。

② 図 5.9の .ac の付近で右クリックすると、図 5.10の Edit Simulation Command ウィンド

ウが現れる。下のテキストボックスを、

.ac list {w/(2*pi)}

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24

図 5.9 変更前

図 5.10 Edit Simulation Command

図 5.11 Edit text on the Schematic

に変更する。このように変更すると、Type of Sweep が、自動的に”list”に変更される。

OKボタンをクリックする。

③ .op アイコン(Spice Directive)アイコン(図 4.7)を右クリックすると、図 5.11の Edit Text on

the Schematicウィンドウが開く。テキストボックスに、

.step dec param w 0.01 10 11

と入力し、OK ボタンをクリックする。この設定により、0.01~10rad/s でログスイープ

され、ディケード、つまり周波数が 10 倍毎に、11 個の周波数ポイントでスイープされ

る。

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25

図 5.12 変更後

図 5.13 シミュレーション結果

図 5.14 シミュレーション結果(横軸対数)

図 5.15 カーソルによって調べる

④ 回路図は、図 5.12のようになっているはずである。Runボタン(図 2.15)をクリックする

と、シミュレーションが実行される。出力端子の信号を表示すると、図 5.13のように結

果が表示される。

⑤ 最後に、図 5.13の横軸を対数目盛に変更(要領は図 4.16と同様)すると、図 5.14のよ

うになる。カーソルを使うと、1rad/sのとき、振幅-3.0103dB、位相-45°となり、理論通

りの結果であることが分かる。

⑥ 以上の結果を、TA または技術職員に確認してもらう。

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26

図 5.16 2次のバタワースローパス

フィルタ

図 5.17 3次のバタワースローパス

フィルタ

図 5.19 5次のバタワースローパスフィ

ルタ

図 5.18 4次のバタワースローパスフィ

ルタ

課題5 バタワースローパスフィルタ

図 5.16~5.19の回路は、2次~4次までのバタワース形ローパスフィルタである。振幅が

-9dB となる周波数はいずれも 1rad/s となるようになっている。計算機シミュレーションに

よって振幅特性を調べよ。横軸は rad/sとせよ。理論値との比較は不要とする。NGraphまた

は gnuplotを使って同一のグラフに示し、比較せよ。フィルタの次数によって、何が違って

くるか。

6.オペアンプ(AC解析)

6.1 理想オペアンプ

図 6.1 に、オペアンプの回路記号を示す。同図に示

すように、オペアンプの出力電圧 voは、

vvAvo (6.1)

で表される。ここで、図 6.2 に示す反転増幅器の出力

電圧 v2を導出しよう。重ねの理を用いると、

21

1221

RR

vRvRv

(6.2)

が得られる。 0v および式(6.2)を式(6.1)に代入し、

v2について解くと、

1

121

22 v

ARRR

ARv

(6.3)

となる。実際のオペアンプの解放利得 A は 105~10

6

と大変大きい。そこで、上式において、A→∞とすると、

(a) オペアンプ

(b) 等価回路

図 6.1 オペアンプ

図 6.2 反転増幅器

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27

図 6.3 回路図の入力

図 6.4 Select Component Symbol(イ)

図 6.5 Select Component Symbol(ウ)

1

1

22 v

R

Rv (6.4)

が得られる。これは、伝達利得(v2 / v1)がオペアンプの解放利得 A に依存しないことを意味

している。Aが十分に大きく、正しく負帰還が掛かっている場合、オペアンプの+、-入力

端子の電圧は互いに等しくなるようにオペアンプの出力電圧が決まることになる。すなわ

ち、オペアンプを利用した回路では、v+ = v–が成立する。これを仮想短絡という。

仮想短絡の考えを使って出力電圧を求める場合について述べる。まず式(6.2)が成立する。

次に、v+ = 0であるので、同式から、

21

12210RR

vRvR

(6.5)

となり、式(6.4)で与えられる結果が直ちに得られることがわかる。例えば、R1 = 1kΩ、R2 =

10kΩとすると、式(6.4)から、回路の利得は–10 となる。以上の結果を、AC 解析により確認

しよう。オペアンプとして、LF356 を用いることにする。

ステップ1 回路の入力

① 図 6.3のように回路を入力する。オペアンプの設置にあたっては、次のようにする。

(ア) Componentアイコン(図 2.4)をクリックする。

(イ) 図 6.4のように Select Component Symbolで、[Opamps]をダブルクリックする。

(ウ) 図 6.5のように、Select Component Symbolで、[opamp2]をダブルクリックする。

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28

図 6.6 AC 解析の設定

図 6.7 シミュレーション結果

図 6.8 1kHzにおける利得

② オペアンプの部品名を、LF356に変更する。

③ AC 電源の振幅は 1V、位相は 0°とせよ(図 5.5)。

④ オペアンプに供給するための直流電源(V2 と V3)の直流電圧を設定する。部品名はこれ

まで通り voltage である。両者の電圧を 15V とせよ。

⑤ 直流電源とオペアンプの間は、wireで配線しても良いが、ここでは label(図 2.21)を使っ

ている。このように、同一の名前を付けたノードは、明示的に配線されていなくても、

全て結線されたことになる。大規模な回路で、直流電源を配線しようとすると回路図入

力が煩雑となるばかりでなく、回路図が読みにくくなってしまう。このように、ラベル

を効果的に使うのが良い。また、グラウンドも、全てが結線される。なお、ラベル名に

大文字と小文字の区別はない。

ステップ2 シミュレーション

① AC 解析を実施する。図 6.6のように設定する。Type of Sweepは Decade, Number of points

per decadeは 101, Start Frequencyは 100Hz, Stop Frequencyは 100MHz とせよ。

② OKボタンをクリックし、出力電圧を観測すると、図 6.7及び図 6.8のように結果が表示

される。

③ シミュレーション結果から、十分に周波数が低い領域(この例では 1kHz)で、利得が

20dB(つまり 10 倍)となっていることがわかる。また、位相が–180°なので、位相が反

転していることがわかる。以上から、式(6.4)で予想した通り、–10 倍の利得を持つ増幅

器を構成できていることがわかる。

④ ここまでできたら、TA または技術職員に確認してもらう。

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29

図 6.9 LF356 の解放利得 A(シミュレーション結果)

6.2 現実的なオペアンプモデル

前節で確かめたように、十分に低い周波数領域において、理論通りの増幅器を構成でき

ることが分かった。しかしながら、周波数が上がってくると、利得が下がってくる。この

問題について、もう少し深く考察することにする。

現実的なオペアンプをモデル化するために、解放利得 A を次のようにする。

j

GBA (6.6)

上式において、GBは GB積(Gain Bandwidth Product:利得帯域幅積)と呼ばれ、オペアンプ

によって決まる定数である。この数値は、オペアンプのデータシートに必ず記載されてい

る。データシートによれば、LF356 の GB 積は 5MHzとなっているが、これは公称値であっ

て、現実的なものは若干前後する。本実験で用いている LF356 のモデルパラメータによる

オペアンプ GB積は、約 6.4MHzである。図 6.9 に、LF356 の解放利得 Aを示す。

式(6.6)を式(6.3)に代入して整理すると、次のようになる。

1/1

1

121

22

GB

RRj

R

Rv

(6.7)

上式から、ω=0 のとき、利得は式(6.4)と同一となることがわかる。また、利得が 3dB 下が

る周波数ωLは、上式から、次のようになる。

12 /1 RR

GBL

(6.8)

上式から、R2 / R1を大きくすると、ωLが下がることがわかる。つまり高い利得をもつ増幅

器を構成しようとするほど、高域特性が悪化する。6.1節の場合、R1 = 1kΩ、R2 = 10kΩと

しているので、次のようになる。

kHz580)101/(MHz4.6 Lf (6.9)

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30

図 6.10 シミュレーション結果

図 6.11 カーソルを使った-3dB 帯域の取得

ステップ1 計算機シミュレーションによる確認

① 図 6.10のように、カーソルを二つ使い、利得が 3dB 下がる周波数を調べる。カーソル 1

を 100Hzや 1kHz などの十分に低い周波数領域に置き、カーソル 2を、約 3dB 低くなる

周波数に置いている。

② 図 6.11のカーソル 2の周波数から、利得が 3dB 下がる周波数は、約 610kHz(理論値に対

して+5.1%)であることがわかる。

③ 以上の結果を、TA または技術職員に確認してもらう。

課題6 利得が–100倍の反転増幅器

R1 = 1kΩ、R2 = 100kΩとする。オペアンプが理想的であるとした場合の利得はいくらか。

また、GB 積が 6.4MHz のときの fLはいくらか。さらに、これらの妥当性を、計算機シミュ

レータを使って示せ。シミュレーション結果を、NGraph または gnuplot を用いて示せ。

(LTspiceのシミュレーション結果の貼り付けは評価しない)

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31

7.バイポーラトランジスタ

図 7.1 にバイポーラトランジスタを示す。図(a)は pnp トランジスタの構造で、図(b)(c)に

回路記号を示す。図(d)のように、BC 接合間が逆バイアスとなるように電圧を印加すると、

pn 接合ダイオードの場合と同様に、微小な電流が流れる。この電流は、通常 ICO として表

され、シリコンダイオードの飽和電流 ISに相当する。図(e)のように、BE 接合間が順方向

バイアスとなるように電圧を印加すると、エミッタに電流が流れ込む。エミッタから流れ

込んだ電流は、殆どコレクタに流れ込む。IEと IC の関係は、

IC =α0IE + ICO (7.1)

となる。α0はベース接地電流増幅率と呼ばれ、その大きさは 0.98~0.999 程度である。ベ

ースから流れ出す電流 IB は、キルヒホッフの電流則から、次式で与えられる。

IE = IC + IB (7.2)

式(7.1)及び式(7.2)から、IEを消去し、ICについて解くと、次式が得られる。

COBFE

COBC

IIh

III

0

000

0

1

1

1

1

1

(7.3)

ここで、hFE =α 0 /(1-α 0 )で、hFEはエミッタ接地電流増幅率と呼ばれ、hFE = 50~1000程度

の値である。通常、シリコントランジスタにおいて、ICO は、無視できるほど小さいので、

これを無視すれば、式(7.3)は、

BFEC IhI ≒ (7.4)

となる。pnp トランジスタと npn トランジスタでは、電流の向きが逆になる。図 7.2 に npn

トランジスタの静特性の例を示す。

(a) pnp トランジスタ (b) pnpトランジスタ (c)npn トランジスタ

(d)BC間に逆方向バイアスをかける (e) EB 間に順方向バイアスをかける

図 7.1 バイポーラトランジスタ

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32

図 7.2 バイポーラトランジスタの静特性

7.1 シミュレーションによる静特性の取得

バイポーラトランジスタ 2SC1815の IC-VCE特性を調べよう。

ステップ1 回路図の入力とシミュレーション

① 図 7.3のように回路を入力する。トランジスタの設置にあたっては、次のようにする。

(ア) Componentアイコン(図 2.4)をクリックする。

(イ) Select Component Symbol で、npnをクリックし、トランジスタを配置する。

(a) VBE - IB特性 (b) IC - IB特性

(c) IC - VCE特性 (d) IC - VCB特性

図 7.2 npnトランジスタ 2SC1815の静特性(実測により得られた特性)

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33

(ウ) 部品名 NPNを Q2SC1815に変更する。

(エ) ライブラリのパス名を.include文で指定する。

② IB=10μA となるように I1 の値を設定する。電流源の部品名は、current である。電圧源

V2の電圧は任意である。

③ DC 解析を行う。VCEの範囲を 0~20V、Increment は 0.1Vとせよ。

④ シミュレーションを実行し、コレクタ電流 ICを観測すると、図 7.4のような結果が得ら

れる。これは IB =10μAのときのコレクタ電流 ICである。

ステップ2 パラメトリック解析

① 図 7.2(c)のような IB =0~50μA の範囲、10μA刻みでシミュレーションを行う場合につ

いて説明する。このようなシミュレーションを、パラメットリック解析と呼ぶ。

② 図 7.5 のように、赤で囲った DC 解析の記述部付近で右クリックすると、図 7.6 のウィ

ンドウが現れる。

図 7.3 回路図

図 7.4 シミュレーション結果(IB=10μA)

図 7.5 回路図

図 7.6 Edit Simulation Command

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34

③ 図 7.6において、2nd Sourceタブをクリックすると、図 7.7のようになる。同図のように

設定し、OKをクリックする。これは電流源 I1を 0~50μA, 10μAステップで繰り返し

特性を測定することを意味する。

④ 再度シミュレーションを実行すると、図 7.8 の結果が得られる。同図の結果は、縦軸を

0~10mA, 1mAステップとなるように設定している。

⑤ 以上の結果を、TA または技術職員に確認してもらう。

図 7.7 2nd Sourceの設定

図 7.8 パラメトリック解析の結果

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課題7 バイポーラトランジスタの IC - VCB特性

図 7.2(d)のような 2SC1815 の IC - VCB特性を得るには、どのような回路にすれば良いか。

回路図を示すと共に、シミュレーション結果を、NGraphまたは gnuplotを用いて示せ。

7.2 バイアス回路の温度特性

npn トランジスタの直流等価回路を図 7.9 に示す。rbはベース広がり抵抗と呼ばれ、50~

500Ω程度の値を持つ。

トランジスタに線形増幅させる場合、トランジスタを活性領域になるように直流バイア

スを加える。図 7.10 は、固定バイアス回路である。コレクタ電流 ICは、

FE

bB

EBCCC h

rR

VVI

' (7.5)

となる。ただし、シリコントランジスタの場合、ICO は非常に小さいので、その影響を無視

している。

VB'Eは室温(27℃)で約 0.6Vであるが、温度特性(-2mV/℃)を持つ。また、hFEも 25℃~100℃

で 50%程度増加し、さらにこの値は製造ばらつきが大きい。そのため、バイアス回路は温

度や特性ばらつきに対してなるべく安定であることが求められる。そこで、温度特性のシ

ミュレーションを行うことにしよう。このような解析では、DC解析を行う。

ステップ1 シミュレーション

① 図 7.11 のように回路を入力する。RB=1.5MΩ、RC=5.1kΩ、VCC=15V とする。トランジ

スタは 2SC1815 を用いることとする。VB'E=0.6V, rb=50Ω, hFE=150 とすれば、理論値は

式(7.5)から、IC=1.43mAとなる。

② Runボタン(図 2.15)をクリックすると、Edit Simulation Command ウィンドウが現れる。

図 7.12のように DC sweep タブをクリックする。温度をスイープするためには、Name of

1st Source to Sweep欄に、温度を意味する Temp を書き込む。単位は[℃]である。

図 7.9 npnトランジスタの直流等価回路

図 7.10 固定バイアス回路

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36

③ 図 7.13 にシミュレーション結果を示す。横軸の刻み幅を 1℃に変更してある。カーソ

ルにより、室温(27℃)でのコレクタ電流は 1.44mA となっており、ほぼ理論通りの結果

であることがわかる。

図 7.11 回路図

図 7.12 温度特性の解析方法(DC 解析)

図 7.13 固定バイアス回路の温度特性

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37

課題8 電流帰還バイアス回路の温度特性

図 7.14 に示す回路は、電流帰還バイアス回路と呼ばれる回路である。この回路のコレク

タ電流 ICは、次のようになる。

21

21

2

'

//',

)1('

)(

RRRVRR

RV

RhrR

VVhI

BCCBB

EFEbB

EBBBFEC

ただし、

(7.6)

① この回路のコレクタ電流 IC - 温度特性を計算機シミュレーションにより調べよ。室温

(27℃)におけるコレクタ電流 ICの理論値はいくらになるか。ただし、VB'E=0.6V, rb=50Ω,

hFE=150 とする。その妥当性をシミュレーション結果から示せ。

② 図 7.12の固定バイアス回路と、図 7.14に示す電流帰還バイアス回路のコレクタ電流を

NGraph または gnuplot を使って同一グラフ上に示し、両者の特性を比較せよ。その結

果、どのようなことが分かるか考察せよ。

7.3 エミッタ接地増幅回路

図 7.9 のダイオードを線形近似すると図 7.14 のエミッタ接地近似小信号等価回路が得ら

れる。低周波領域において、β≒hFE と考えてよい。re はエミッタ端子の直流バイアス電流

IEを用いて、次のようになる。

]mA[

26][

E

eI

r ≒ (室温) (7.7)

式(7.2)及び(7.4)から、エミッタ電流 IEはコレクタ電流 ICを使って、次のようになる。

図 7.14 電流帰還バイアス回路

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38

C

FE

FEE I

h

hI

1 (7.8)

図 7.15 に示す回路はエミッタ接地増幅回路である。この回路は、電流帰還バイアス回路

を用いている。C1, C2, CEが十分大きいとき、それらは信号分に対して短絡と見なすことが

できる。このとき、小信号等価回路は図 7.16のようになる。この回路の電圧利得 AVは、次

のようになる。

ie

LCV

r

RR

v

vA

//

1

2 (7.8)

rieは、次式で与えられる。

ebie rrr 1 (7.9)

課題9 エミッタ接地増幅回路

① 図 7.15 の回路のバイアス回路は、課題8のものと同一である。課題8①のコレクタ電

流 ICの理論値を使って、エミッタ電流 IEの理論値を求めよ。VB'E=0.6V, rb=50Ω, hFE=β

=150 とする。

図 7.14 エミッタ接地近似等価回路

図 7.15 エミッタ接地増幅回路

図 7.16 小信号等価回路

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② 電圧利得 AVの理論値を求めよ。

③ 計算機シミュレーション(過渡解析)により、この回路の動作を調べよ。入力信号は

1kHz, 1mV の正弦波とする。シミュレーション結果(NGraph または gnuplotによるもの

でなくても良い)を示した上で、電圧利得 AVを調べよ。理論値と比較せよ。

④ 入力信号を 1kHz, 100mV の正弦波として③と同様のことを行え。③と比較して、どの

ような違いがあるか。このような状態で、正しく AVを求めることができるか?過渡解

析によって利得を調べる場合、どのようなことに注意しなければならないと言える

か?

⑤ 計算機シミュレーション(AC解析)により、この回路の周波数特性を調べよ。入力信

号の振幅を 1V とする。シミュレーション結果(NGraph または gnuplot によるものでな

くても良い)を示せ。1kHz付近の電圧利得 AVを調べよ。理論値と比較せよ。

⑥ 入力信号の振幅を 1mVとし、⑤と同様のことを行え。

研究課題1 過渡現象

図 3.26の回路から、式(3.5)及び式(3.6)を導出せよ。テキストの丸写しは全く評価しない。

重視するポイント:

① L, C, R 素子のインピーダンスはラプラス変換でどのようになるか。

② 部分分数展開ができているか。

③ 逆ラプラス変換表などを用いて正しく v(t)に戻せるか。

もし、ラプラス変換を使いたくない場合、微分方程式を使って最終結果を導いても良い。

研究課題2 シミュレーション結果との相違

p.28ステップ2において、利得が 20dB より僅かに小さい理由として、どのようなことが

考えられるか。

研究課題3 GB積の影響①

増幅器の利得を高くするほど、オペアンプの GB積の影響により、使用可能な上限周波数

が下がってくる。この影響を少なくするためには、どのようにすれば良いか。答えは一つ

ではない。一つ答えられれば可。

研究課題4 GB積の影響②

図 8.1の回路は、オペアンプを使った正相増幅回路である。オペアンプが理想的であると

した場合の利得を手計算により求めよ。次に、式(6.6)のように GB 積を考慮した場合の利得

を手計算により求めよ。

同じ利得(符号は考えない)の反転増幅回路・正相増幅回路を構成したとき、どちらの

周波数特性が良好であると考えられるか。

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図 8.1 正相増幅回路

8.報告書に含まれるべき事項

実験報告書には、以下の内容が含まれていなければならない。これはあくまでも最低限

「含まれるべき内容」を示したものなので、演習などにおける設問ではない。実験報告書

は、読み手が、その報告書を読んで実験を再現できることが必要とされる。2年生の「論理

回路実験」で学んだように、読み手にわかりやすいように執筆せよ。手書きでもよいし、

ワードプロセッサを使っても構わない。考察は実験報告書の中で最も重要視される。実験

結果の羅列だけの実験報告書は受け取らない。

テキストの図表のコピー&ペーストは不可

・実験の目的

・実験装置

・図・表に番号をつけ、本文中で図表番号を使って参照する。

・課題1のシミュレーションした回路と、そのシミュレーション結果。わかったことを文

章で記述。

・課題2(1), (2), (3)で指定された事項。

・課題3 回路図、NGraph または gnuplotの出力結果と、その考察。

・課題4 比較したダイオードの型番、NGraphまたは gnuplotの出力結果と、その考察。

・課題5 回路図、NGraph または gnuplotの出力結果。違いの考察。

・課題6 理論値および NGraphまたは gnuplotによるシミュレーション結果。結果に対する

考察。

・研究課題

9.参考文献

[1]LTspice http://www.linear-tech.co.jp/designtools/software/

[2]神崎康宏,”電子回路シミュレータ LTspice入門編,” CQ出版社, 2009年 3月

[3]遠坂俊昭,”電子回路シミュレータ LTspice実践入門,”CQ 出版社, 2012年 4月

[4]Ngraph http://www2e.biglobe.ne.jp/~isizaka/download.htm

[5]石橋幸男,”アナログ電子回路,”培風館, 1990年

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図 A.1 Tools→Control Panel

図 A.1 Control Panel

付録1 LTSpiceの設定

LTSpiceをインストールした際、10-6を示す”u”が正しく表示されないことがある。そのよ

うな場合、下記の方法で設定を変更する。

① 図 A.1のように、Tools→Control Panelを開く。

② 図 A.2の Control Panelウィンドウが開く。Netlist Oprionsタブをクリックする。

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図 A.3 Cpnvert ‘μ’ to ‘u’をチェックする

③ 図 A.3のようになるので、Convert ‘μ’ to ‘u’にチェックを入れ、OKボタンをクリックす

る。

④ 以上で設定は完了である。

©庄野和宏 2013