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農薬製品の製造における コンタミネーション予防 ガイドラインとベストプラクティス

農薬製品の製造における コンタミネーション予防...農薬製品の製造における コンタミネーション予防 ガイドラインとベストプラクティス

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Page 1: 農薬製品の製造における コンタミネーション予防...農薬製品の製造における コンタミネーション予防 ガイドラインとベストプラクティス

農薬製品の製造におけるコンタミネーション予防

ガイドラインとベストプラクティス

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表紙の写真

「高活性」穀類除草剤の用量反応試験は、この化合物が、穀類への安全な施用量の1000分の1で、アブラナ (キャノーラTM) に重大な作物被害をもたらしていることを示している。この除草剤から別の選択性除草剤の製造への切り替えには、非常に低い残存レベルと組み合わせた徹底的な清浄が必要である(第6章を参照)。

© Copyright 2014 CropLife International 全著作権所有

本文書の内容あるいはデータは、クロップライフ・インターナショナル(CLI)の所有する著作権により保護されている。

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農薬製品の製造におけるコンタミネーション予防

ガイドラインとベストプラクティス

免責事項

この小冊子に含まれている情報は、クロップライフ・インターナショナル(CLI)運営委員会が知り得る限り正確であるが、クロップライフ・インターナショナル(CLI)およびそのメンバー企業は、この情報の使用、あるいはここに含まれる助言に関するいかなる責任も負わない。この小冊子のすべての内容は、運営委員会が推奨するベストプラクティスである。コンタミネーション予防対策は、外部製造業者と共同で、クロップライフ・インターナショナル(CLI)に加盟の個々のメンバー企業の責任において実施されるべきものである。

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謝辞

クロップライフ・インターナショナル(CLI)運営委員会は、この小冊子の貢献者に感謝を表したい。

Dr. Marten Snel (コンサルタントPIT)、 Dr. Christian Müller (シンジェンタ クロップ プロテクション AG), Simon Lee (ダウ・アグロサイエンス LLC)、 Dipl.-Ing.Heiko Wolf (BASF SE)、 Dr. Wolfgang Schäfer (BASF SE)、 Dr. Jürgen Henneböle (バイエル クロップサイエンス AG)、 John Olsen (デュポン クロップ プロテクション)、 Ir.Gunther Baert (モンサント社)、 Ir.Eric Rochedix (住友化学アグロ ヨーロッパ (株))、Linda Bagley (ダウ・アグロサイエンス LLC)、 Dr. Lennart Weltje (BASF SE)、Dr. Urs Stutz (シンジェンタ クロップ プロテクション AG).

運営委員会は日本語版翻訳の校正を行った上土井智数氏(ダウケミカル日本株式会社)に感謝を表したい。

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はじめに

2014年春

読者の皆様へ

農薬業界全体の「レスポンシブル ケア ®」(Responsible Care® )へのコミットメントは周知の事実である。したがってコンタミネーション予防に関する情報を更新し、コンタミネーション予防に関する最新のベストプラクティスを共有する必要性があることは当然のことである。

読者の方々は、小冊子「コンタミネーション予防の実施」(Implementing Contamination Prevention)について熟知されているものと思う。この小冊子は、2004 年に出版され、その後第2版が2008 年に出版されたが、業界全体でのコンタミネーション予防の基準を高めるために役立った。この小冊子は、クロップライフ・インターナショナル(CLI)加盟企業にとって、そしてまた外部の製造業者(請負業者)においても、改善された、より効果的なコンタミネーション予防策の開発に関する幅広く利用できる情報源であった。この小冊子の世界的な重要性は、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ、ロシア、韓国、中国語の7か国語に翻訳されているという事実に表れている。  

クロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業の専門家チームがこの第3版を作成した。私たちは、この小冊子のタイトルを「農薬製品の製造におけるコンタミネーション予防 - ガイドラインとベストプラクティス」に変更することにしたが、これは、このタイトルが、業界に対して最適なコンタミネーション予防の実施を支援するガイドラインを提供しようとする私たちのコミットメントをよりよく表しているからだ。

コンタミネーション事故は、製造コストの増加、製品のリコール、環境負荷を伴う可能性のある製品の廃棄そして評判の損失といった、重大な結果を生む。信頼性に対する悪影響は、事件が最初に発生した企業に限らず、私たちの業界全体に大きな影響を与える。

私たちは、農業において、ラベルに記載されている内容に基づき、いかなる有害な副作用もなく(例えば非標的生物または作物被害)、すべての規制基準に準拠した、高品質の製品提供を義務と考えている。

つまり、信頼できる製品を届けることである。これは、私たちの業界が、適切なコンタミネーション予防管理体制を有する場合にのみ実現できるものだ。

では、コンタミネーション事故を確実に防止するための黄金律はあるのか?

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いくつかの提案をしたい (この冊子の中で多くの提案がなされている)。

· どのような組織でも、またいかなる生産現場でも、すべての人が経営陣が 提唱するコンタミネーション予防の理念を信じる必要がある。

· 私たちは定期的な訓練を通じて、コンタミネーション予防の重要性を絶え ず心に銘記しておく必要がある。また自己満足に陥ってはならない。

· 注文に応じるという緊急時であっても、「一回限り」だといって洗浄プログラ ムの手順を絶対に短縮してはならない。

· 明確なチェック リストを用意しておく必要がある。

· 新しい設備を設置する、あるいは古い設備を更新する場合は、必ず「コンタ ミネーション予防」について考慮し、重要なチャンスとして捉えることだ。

私たちの専門家は常に、コンタミネーション予防のすべての局面において、生産・品質保証・計画(生産計画)のあらゆる工程における洗浄レベルの決定とその実施において適切な指図を与えることを要請されてきた。

私は皆さんが、この非常に有益な小冊子の内容を注意深く検討し、ガイドラインを頻繁に基準として参照しながら、実際に適用されるものと確信している。当グループは、密接に関連したトピックに関する「水性農薬製剤中の微生物増殖の管理と予防」というの他の文書の出版も支援している。もし水性製剤を製造する場合は、微生物の増殖防止を最適化するために、この文書に記載されているベストプラクティスを採用されるよう提案するものである。

ジョージ・L・ポー

クロップライフ・インターナショナル(CLI)運営委員会会長

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目次

謝辞 4

序文 5

1. はじめに  11

2. 目的と範囲 11

3. 事故の事歴と学習経験 13 3.1 事例 1:不適切な洗浄工程 133.2 事例 2:間違った洗浄レベル 143.3 事例 3:間違った洗浄方法 153.4 事例 4:環境毒性リスクの不十分な認識 163.5 事例 5:製品移動における間違いに関する報告の失敗 163.6 事例 6:同定の失敗 173.7 事例 7:不適切な使用とラベリング 183.8 事例 8:共通ラインの共有ユーティリティ 193.9 事例 9:2つの製剤ユニットの不十分な分離 203.10 事例 10:コンタミネーションされたラボ設備 213.11 事例 11:不適切な試料のリサイクル 213.12 事例 12:有効成分(AI)のドラムのラベルの欠損 223.13 事例 13:不適切なラベル 233.14 事例 14:サードパーティ購入の有効成分(AI) 243.15 事例 15:不適切なリサイクル 25

4. コンタミネーション予防の要件 26 4.1 コンタミネーション予防ポリシー 264.2 一般的な要件 264.3 管理者の責任 274.4 有効成分および製剤の外部製造 274.4.1 情報交換 274.4.2 外部製造業者に対する最小要件 28 4.5 有効成分の調達/購買 29

5. コンタミネーションリスク評価の要素 31 5.1 生産ユニットの分離 315.2 コンタミネーションリスク評価の主な要因 33 5.3 洗浄能力の評価 33

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6. 洗浄レベルの決定 35 6.1 原則 366.2 除草剤洗浄レベル 376.2.1 除草剤のNOELデータ 38 6.2.2 安全率 386.2.3 散布量 386.2.4 外部製造業者による製造 396.2.5 除草剤の洗浄レベルの計算式 396.2.6 除草剤の洗浄レベルの計算 406.2.7 除草剤ユニットのクリーニングマトリックスの例 416.2.8 製品スケジュールへのクリーニングマトリックスの影響 436.2.9 特別な注意を必要とする要因 44 6.3 殺虫剤洗浄レベル 446.3.1 葉面散布における洗浄レベルの計算... 456.3.2 種子処理における洗浄レベルの計算... 476.4 殺菌剤洗浄レベル 486.4.1 葉面散布における殺菌剤の洗浄レベル 486.4.2 種子処理における洗浄レベル... 486.5 後続の製品における洗浄レベル 48

7 製造実務 49 7.1 施設への搬入物品の同定 497.2 変更とリリースに関する文書 497.3  適切な材料搬入のためのコントロール 497.4 共有する携帯/互換機器 507.4.1 有効成分との直接的接触 507.4.2 有効成分との直接的でない接触 507.4.3 ツール 507.5 可動式詰め替え容器 507.5.1 専用詰め替え容器 517.5.2 非専用詰め替え容器 517.5.3 詰め替え容器のラベリング 517.6 保管 527.6.1 保管タンク 527.6.2 化学原料貯蔵 537.7 再加工、混合、再利用 537.8 ラベリング 547.9 材料のトレーサビリティ 54

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7.10 製造ユニット/設備の変更 547.11 自己評価 55

8 製造ユニットの洗浄 56 8.1 生産スケジュール 568.2 一般的洗浄方法 568.3 目視検査 578.4 湿式洗浄 608.5 固体、不活性成分による乾式洗浄 628.6 実証クリーンアウト能力 628.7 使用済洗浄媒体のリサイクル 63

9.残留不純物の分析 64 9.1 製品中と洗浄水中の残留不純物分析 649.2 試料採取 649.3 残留不純物の分析法の開発 65

10.用語集 66

付録A - 機器の設計 75 A.1 改善された洗浄効率のための機器の設計 75A.2 生産ユニット図... 76A.2.1 液体製剤 77A.2.1.1 SLとEC製剤 77A.2.1.2 湿式(液体)粉砕、SC製剤 79A.2.1.3 液体製品の包装/再パッケージ/リフィル 81A.2.1.4 製品のラベリング 83A.2.2 乾式(固体)製剤 83A.2.2.1 乾式粉砕 - WP製剤    粒剤 83A.2.2.2 押出造粒 85A.2.2.3 流動層造粒 86A.2.2.4 噴霧乾燥 - 粒剤 87A.2.2.5 固体製品の補充/再パッケージ 88

付録B - チェックリスト/自己評価 90

付録C - 農薬規制(PR)通知96-8 118

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1. はじめに農薬業界は、合成、製剤、および製品の包装用に多目的設備を利用している。慎重な管理を怠ると、設備内に以前に存在した活性成分等、残留不純物の混入が発生し、処理された感受性の高い作物あるいは、または非標的種への悪影響を誘発し、規制問題(例えば規制不適合)を引き起こす可能性がある。

顧客は、製造業者が害虫や雑草から作物を保護する製品を供給することを期待しており、もしコンタミネーション事故が発生すれば、望ましくない生物学的影響(例えば、薬害)を引き起こす可能性があり、また業界全体の評判やイメージを傷つける可能性がある。 この冊子は、農薬製品を製造するすべての企業のために作成されており、コンタミネーション予防運用基準およびツールに関するベストプラクティスの例を提供し、コンタミネーション予防のリスク管理を目的とする。

2. 目的と範囲この冊子の目的は、農薬製品のすべての製造業者に、コンタミネーション管理およびそのリスクを最小限に抑制するためのガイダンスを提供することである。これは、農薬製品の合成、製剤ならびに(再)パッケージにおけるすべてのコンタミネーション予防に適用可能である。

これらのガイドラインは、すべてのクロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業に対して、そしてまた現在のおよび潜在的な将来の外部の製造業者にグローバルに適用することができる。本文書は、可能な限り最高品質の製品を確保するために、製造契約および外部製造業者との契約において、あるべき最低限のコンタミネーション予防基準について説明および提案する。

この冊子を通じて採用されている表現上の基準について言えば、「しなければならない」(MUST)は必要条件を示している。クロップライフ・インターナショナル加盟企業の経験に基づいた推奨事項とベストプラクティスに関連するものは、その他の表現として例えば「可能性がある」(COULD)、「すべきである」(SHOULD)などが使用される。次のような農薬化学製品は、有効成分として、製剤製品として、またはこれらの合成に使用されるプロセスの中間体として、この冊子の範囲に該当する。 · 除草剤(用途として作物と非作物の区別なく、また適用方法に無関係に)。· セーフナー。· 殺菌剤、植物生長調整剤(PGR)、植物活性化剤、殺虫剤、殺ダニ剤、フェロモン、軟体 動物駆除剤、殺線虫剤、燻蒸剤及び硝化抑制剤(これらの製品は、葉面散布、粒剤、種 子処理として、あるいはあらゆる方法の土壌処理として使用することができる)。· 殺鼠剤 (餌として適用)。

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· 農業用噴霧タンク洗浄剤、作物油、そして葉面施肥のための補助剤。

以下は、この文書の範囲から除外:· 農場での作業に固有なコンタミネーション予防(例えばタンク洗浄)。 · バイオテクノロジーと種子、例えば種子生産時のGMO /非GMOコンタミネーションに 関するコンタミネーション予防関連の問題· 販売代理店およびディーラーにおける、最終製品バルクの配送および貯蔵。 バルク での最終製品の取扱いにおけるコンタミネーション予防対策の実施ガイドライン は、個々のメンバー会員企業と各地域の農薬団体の責務と考えられている。· 以下のコンタミネーション予防: a. 非作物害虫防除の公衆衛生製品 (例えば蚊帳の処理)。コンタミネーション物質に 人間が暴露される可能性がある。 b. 外部寄生虫防除のための動物薬製品。これらは医薬品の基準(GMP)の下で製造 され、動物がコンタミネーション物質にさらされる可能性がある。

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3.事故事歴と学習経験

首尾よくコンタミネーション予防を実施する基本は、効果的なリスク管理である。このリスク管理のための基本を成す「ガイドライン」は、理論からのみ展開されるものではなく、実際の事故から得られた知識に基づいている。これらの実際に起こった事歴と学習経験を研究することにより、これらの「ガイドライン」の理由をより容易に理解することができるであろう。また、コンタミネーション予防に関する研修スタッフである場合、この冊子の事歴を説明すれば、純粋に理論的な展開よりも実際の経験に根差して説明できるので、より容易に聴衆の注意を惹くことができる。

3.1 事歴 1:不適切な洗浄工程複数の生産者が、雑草の防除のための土壌除草剤での処理後、鉢植えのバラの葉の斑点を示す重度の白化(=非常に著しい、白)を訴えた。これは鉢植え植物の商品価値を大きく損ない、外観を向上させるために剪定せざるを得ず、余分な労力を必要とすることになった。懸濁(SC)製剤の土壌除草剤は、広葉雑草に最初の症状として白化を引き起こす高活性の広葉用除草成分を含む穀類除草剤を製造した後のフロアブル剤の工場で製造された。穀類除草の活性成分についての土壌処理除草剤の分析は、これが87 ppmのレベルで存在することを示した。これはバラに対する残留不純物の最大無作用量

(NOEL)をはるかに上回っている。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 装置は2つのシフトによって洗浄が行われた。通常は、1つのシフトが設備の洗浄を 行うことになっている。文書による洗浄手順は無視され、設備は誤った順序で洗浄さ れた。· 規定の手順であるホッパーの洗浄をまず行うかわりに、最初のシフトは、製剤化用の 容器及びビーズミルを洗浄した。 最後のすすぎ液のサンプル(容器およびビーズミ ルの洗浄の代表的レベル)を収集して分析した結果、残留不純物の濃度は要求され ている洗浄レベル以下であった。· 第2のシフトが、ホッパーを洗浄しなければならなかった。ドライクリーニング後、ホ ッパーは水ですすがれ、乾燥のため翌朝まで放置させられた。 すすぎ液が、次の製品(SC)のスラリーが調製される予定であった第1の製剤化用の 容器に収集された。洗浄のガイドラインが無視され、スラリー容器の中身は排出され なかった。· 次のシフトには、スラリー容器がコンタミネーションされたすすぎ液を含んでいるこ とが伝えられず、製品の調合プロセスが開始された。

この事故は、7つのバラ生産者からの高額なクレームと長期間に及ぶ再加工をもたらした。

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この事例から何を学ぶべきなのか?· 設備洗浄すべてのステップと実施の順序が記されているチェックリスト付きの洗浄手順の 文書を保持する。記載された手順は、試験を行って洗浄の有効性を確認する必要が ある。· すべてのステップがバッチカードに記入され、ステップの実施者のイニシャルおよび 実施日時が記入されていることを確認する。 空欄があるステップについては調査し なければならない。· 十分な数のすすぎ液および/または次の製品のサンプルを採取・分析し、洗浄が有効 であることを確認する。

3.2 事歴 2:間違った洗浄レベル数千ヘクタールで、大豆が発芽しなかった。すべての大豆の種子は、土壌病害から保護するために殺菌剤のコーティングが施されていた。殺菌剤製剤工場は、大豆殺菌剤製造のための急な注文を2つ受けた。ひとつはアゾール類の葉面散布殺菌剤で、もう一つは種子処理殺菌剤である。種子処理殺菌剤には強力な色素が含まれている。洗浄工程が非常に困難であり、長時間を要する(染料が機器の壁面に固着する傾向がある)。色素が設備から完全に除去されておらず、微量でも残っている場合、ほぼ白色の葉面散布殺菌剤を着色してしまい、品質問題を引き起こす。したがって、葉面散布殺菌剤の製剤は、種子処理製品の調製前に予定されていた。製造ライン上で、ひとつの殺菌剤の後に別の殺菌剤を続けるのであるから、1000ppm未満というEPA認承の清浄レベルが適用されるだろうと考えられた。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 葉面散布殺菌剤の生産に続く洗浄後に、残留不純物の濃度(つまり、葉面散布殺菌剤 の有効成分の濃度)が、分析機器の故障により決定できなかった。 しかしながら、 種子処理殺菌剤の生産が、分析機器の故障の修理を待たずに直ちに開始された。· この決定は管理職の合意を得ずに行われた。これらが急ぎの注文であり、できるだ け洗浄サイクル数を少なくするためと,両製品が同じ大豆に適用されるという理由から だった。· 分析の結果、実際の種子処理殺菌剤における(前製品からの)アゾールコンタミネー ション物質のレベルが6000ppm以上であったことが明らかになり、種子処理殺菌剤 全体の商品ストックは隔離された。· 現地のフィールドステーションで簡単な試験が行われ、大豆の種子処理としてのアゾ ールの安全レベルが2000 ppmであることが判明した。· 市場の圧力に対処するために、製品は再加工(ブレンド)され、アゾールのレベルを 2000ppmにして農家に納品された。 · 温室におけるその後の研究で、アゾール類殺菌剤の大豆種子処理殺菌剤への実際 の安全レベルはその10分の1 (200 ppm) であることが判明した。

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処理大豆の発芽不良は、一連の高価なクレームという結果に終わった。この事例から何を学ぶべきなのか?· 取引上でいかなる緊急事態であろうとも、洗浄手順を短縮してはならない。コンタミ ネーション事故のリスクを犯すことになり,それは簡単にビジネス上のより大きな混乱 につながる。· たとえ2000 ppm の洗浄レベルが過去において安全なはずであったとしても、決し て1000 ppm 以上の洗浄レベルを適用しないことである。これは EPA によって許可 されているレベルを侵害するだけでなく (1000 ppm未満、EPA 農薬規制に関する通 告 96-8、付録 C)、「0.1 %w/w未満」 または 「1000 ppm未満」のリスト外の成分に関す る、法的拘束力をもつ規制をも侵害する。· ひとつの殺菌剤から別の殺菌剤に生産が切り替わる場合に適用される、1000ppmと いうデフォルトのEPA洗浄レベルが、葉面散布殺菌剤から種子処理殺菌剤や殺虫剤 への切り替えにおいて (常に) 適用されるとは限らない(第6章)。これは、装置内の直 前の殺菌剤がアゾール類に属している場合は特に危険であり、しばしば、ある濃度に おいて生長調整物質としての効果 (発芽抑制など) を示す。

3.3 事歴 3:間違った洗浄方法ある製剤工場において,除草剤の乳剤 (EC) は顕著な黄色を示した。通常この製品は金色がかった薄茶色を呈している。このため製品は規格外となった。化学分析の結果、5週間前に製造された有効成分 (AI) によるコンタミネーションが認められた。その成分は濃い黄色だった。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 両方の有効成分(AI)は室温で固体であり、乳剤(EC)に製剤化する前に融解する必 要がある。· 融解した有効成分(AI)は、70~80℃まで加熱した製剤容器で製剤化される。この容 器が、他の液体除草剤の製剤化にも使用される。· 加熱された製剤のみが、熱交換器を通過し、充填ラインのヘッダータンクへ移送され る。しかしながら、他のすべての製品は直接ヘッダータンクへ行き、熱交換器のルー プは通過しない。· 黄色の製品を製剤後、ループへの弁が閉鎖され、直接の配管だけが洗浄された。· 5週間後高い融点をもつ次の製品が製剤化された時、熱交換器ループが開かれた。· 熱交換器は洗浄されていなかったので、残膜からなる黄色い沈殿物が壁面に形成さ れ、次の製品がループを通過する際に溶解した。

最初のバッチ (20000リットル) を完全に破棄しなくてはならなかった。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 製造ラインの洗浄は生産後できるだけ早く、生産プロセスと同じ設備構成の状態で 行われるべきである。このプロセスは、洗浄手順に非常に明確に記載される必要が ある。

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· 内壁に膜となって乾燥・付着すると沈殿物となり次の製品をコンタミネーションする ので、これを許してはならない。

3.4 事歴 4:環境毒性リスクの不十分な認識温室では、キュウリにつくアブラムシ対策に寄生バチが通常使用される。しかし、カビの抑制を目的とする新殺菌剤の適用後、これらの生物学的防除のハチの大量死が観察された。殺菌剤は、事実上、非標的節足動物に対する副作用のないことで知られていたので、このような結果は完全に予想外だった。数々の栽培業者において試料が採取された。すべてのサンプルは、残留量の非常に強力な殺虫剤が同じ程度に含まれていた。栽培業者に対して、殺菌剤のすべてのパッケージを返品し、原因が解明されて代替品が利用できようになるまで、別の製品を使用するように要請がなされた。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 殺菌剤の前にパッケージされた製品が問題の殺虫剤であり、これがこの殺菌剤中に 濃度 600 ppm で検出された。· 洗浄レベル決定のためのガイドラインとして使用される、米国 EPA の農薬規制(PR) 通知96-8 は、次の値を使用している。PRN 96-8 では、殺菌剤における殺虫剤からの 切り替えの洗浄レベルとして 1000 ppm 未満を認めている。· 慎重に管理され、十分に記載された洗浄手順が実施されていた。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 製造業者が、洗浄レベルに関する法的要件を順守していても、場合によっては、残留 殺虫剤が捕食性ハチの大量死のような悪影響をを引き起こすことがあり得る。· 米国 EPA の農薬規制(PR)通知96-8 で与えられる値は、越えてはならない法的な最 大値を示しているが、製造業者はより低濃度を適用することができる。· 殺虫剤から、他の殺菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤だけでなく、また別の殺虫剤に切り替 える時、慎重なアプローチが必要となる。(第6.3章を参照)。· 殺虫剤の生物学的特性に基づく洗浄レベルは、PRN 96-8 で与えられた値だけに基 づくのではなく、適切に計算する必要がある。

3.5 事歴 5:製品移動における報告の欠陥今日では、生産者は、パプリカ、ナス、トマト、ピーマンの温室栽培で十分な受粉を行うために、マルハナバチとその他の有益な昆虫を温室に導入している (総合害虫管理)。毛虫を抑制するために、ハチに対しては非常に低毒性である殺虫剤を適用したのであるが、それにも関わらず温室内でマルハナバチと他の有益な節足動物の高い死亡率が観察された。過去において、この生産者は、この殺虫剤と花粉媒介者の同時導入を行って良い実績を得ていたので、このような状況に驚いた。政府の諮問サービスに依頼し、この事象の理由を解明しようとした。

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被害を受けた農家の使用した製品と同じバッチ番号の容器から、試料が採取された。試料は、ミツバチに対して非常に高い毒性を持っていることが知られている殺虫成分 AI にコンタミネーションされていた。その結果、有益な昆虫が殺されたのだった。この殺虫剤は、処理された作物のいずれにも登録されていなかった。この事実が、事件の発生した国および周辺諸国の食品安全機関に報告された。これが契機になって、製造業者がコンタミネーション予防のためにどのような措置を講じているのか当局が調査を行った。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 生産工程中に、オペレーターが接続を誤ったことが原因で、既に毛虫抑制の殺虫剤 の充填された容器に、コンタミネーション源である有効成分を含む製剤の容器から 少量の物質が移送されてしまった。(クロスコンタミネーションの可能性に対する品 質管理分析はすでに実施済であった。したがって製剤はすでにリリースされ、パッケ ージへの準備ができた状態であり、実際にコンタミネーションがあったのはその後 であった)。· オペレーターは、誰も気が付かないだろうと、このミスを報告しなかった。

この事件に関連するコストは莫大なものになった。何千リットルもの製剤製品は廃棄され、その処分に高い費用がかかった。すでに納入された製品はリコールされ、焼却しなければならなかった。

生産者に対して、収量や品質低下の補償金が支払われた。補償には製品の交換に比べると 20 倍の費用がかかった。 この事例から何を学ぶべきなのか?· 製剤化容器のバルブは閉鎖状態で維持されなくてはならない。容器間で接続して、 製品を移送する必要がある場合、二重のチェック・許可システムによって承認を得た 後に行われなければならない。· 生産区域には、現在の生産に関連する原材料しか存在しないようにすることが非常 に重要である。これにより、取り違えの可能性が大幅に減少される。· 報告内容が厄介なものであっても、ミスは直ちに報告する義務がある。作業者がミス (人的ミス)を心理的な抵抗なく報告できるような職場の環境作りが大切である。こ れにより、コンタミネーションされた物質すぐに隔離され製造工場の範囲内にとどま るので、コンタミネーションの経済的な被害を大きく低減することができる。· このような事故は、当局やメディアからの不必要な注意を引き、製品所有者の評判だ けでなく、業界全体にとって非常に大きな損害を与える。

3.6事歴 6:原料の一つの同定の欠如除草剤有効成分が、その酸とn-ヘキサノールとのエステル化により、n-ヘキシルエステルが形成されることで合成された。 製剤化のために有効成分をリリースする前に、有

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効成分のバッチから試料が採取され、QC検査室に送られた。ガスクロマトグラム試験は、n-ヘキシルエステル以外に、不明成分のピークの存在を明らかに。その後それは除草剤活性成分のn-プロピルエステルに対応するものと同定された。

根本的原因の調査の結果は以下である。· アルコール n-ヘキサノールは、外部製造業者により供給され、タンクローリー車で搬 入された。 · 搬入物品の品質管理(QC)は、アルコールの搬入を許可し、それは4万リットルの専用 バルクタンクにポンプ輸送された。このバルクタンクにはまだn-ヘキサノールが約2 万リットル含まれていた。· アルコールは、専用の配管を介してバルクタンクからポンプ移送され、合成プラント に搬送された。· 専用のn-ヘキサノールバルクタンクからの試料検査が、タンクには n-ヘキサノールと n-プロパノールの混合物が含まれていることを明らかにした。· この工場では、原材料の受付手順におけるバルク製品の標準的な品質チェックは、 それぞれの出荷と共にアルコールの生産者が提出する検査成績書(CoA)のチェック である。 検査成績書(CoA)が期待されていた情報を与えたので、材料がリリースさ れた。 世界的に、この除草剤の n-ヘキシルエステルのみが登録されていたので、この有効成分は規制に適合しておらず、廃棄(焼却)しなくてはならなかった。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 追加分析をせず、入荷する原料の検査成績書(CoA)をチェックすることは費用効率 は高いが、供給業者の品質システムの信頼性に大きく依存せざるを得ないという状 況を生む。その上に、供給業者により出荷中に行われたミスが、原料を処理する前に 検出できない。そのため、正しいコンタミネーション予防と填充手続きに重点を置い た供給業者の施設評価を行うことが必要になってくる。· 入荷する商品に関して、屈折率、色、pH、粘度あるいはその他の迅速なQCチェックな どの同定試験を検討する。· 合成においては、原料の取り違えが単なるコンタミネーションではなく安全上の問題 でもあるので、 搬入される物質の適切な同定は「必須事項」である。

3.7事歴 7:交換可能な部品の不適切な使用とラベリング大規模栽培を行う業者が、特別に高価な花の球根を10ヘクタール栽培するという、急ぎの大きな契約を獲得した。その業者は、特別な「球根処理」の殺菌剤を製造業者に大急ぎで発注したが、製品の納期が短く、球根を植えるまで1週間以下だった。処理された作物は完全にだめになってしまった。

根本的原因の調査の結果は以下である。

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· 製品は、専用の殺菌剤の製剤容器で製剤された。通常はフレキシホースと専用の殺 菌剤用のポンプを使用して、殺菌剤充填ラインの圧力調整槽に材料を移送する。オ ペレーターは、所定の場所に殺菌剤専用のフレキシホースを見つけることができず、 隣の部屋にあったフレキシホース(除草剤専用の充填ルーム)を使用した。· このフレキシホースは、最後にEC製剤の除草剤の移送に使用され、翌朝、同じ目的 で再び使用予定だった。 したがって洗浄されておらず、残留の除草剤がホース内に 残っていた。フレキシホースには、洗浄状態に関する情報のラベルが添付されてい なかった。· 残留量の除草剤が殺菌剤をコンタミネーションし、花の球根作物は完全にだめにな ってしまった。 この事例から何を学ぶべきなのか?· できる限り、フレキシホースのような交換部品の使用を避ける。固定された専用の配 管が常に最も安全なソリューションである。· ベストプラクティスとして、交換可能な部品は、製造期間中、製品および生産ラインに 専用にする必要があり、またその使用(製品またはライン)を明示するラベルを添付 する必要がある。交換可能な部品が製造ラインから切り離された時点で、それが他 の製品に使用されるかどうかに関わらず、完全に排出してすぐに洗浄してから保管し ておく。· 交換可能な部品が、たとえあるクラスの製品専用であったとしても、適切なラベリング により、最終使用の製品、洗浄方法とそのレベルなど、その使用履歴の追跡が可能に なるようにする。

3.8事歴 8:個別の設備で使用する共有ライン用ユーティリティ液体トウモロコシ用除草剤が製剤され、分析され、パッケージ施設の品質管理室によりリリースが許可された。 工場は製品をパッケージし始めた。2万リットルをパッケージした後、オペレーターのひとりが、製品の異常な色に気づいた。そこでパッケージ作業を停止し、タンクから再度サンプリングした。

根本的原因の調査の結果は以下である。· その後の分析により、予想外の活性成分が残留不純物レベルを超える濃度で存在す ることが判明した。· 検査を行ったところ、最初の1万5000リットルは、規格範囲内だった。· この製剤および包装ラインは、圧縮窒素のパージラインを別の設備と共有している。 梱包時に、誰かが、他の設備に別の製品バッチを移送した。窒素のパージラインが開 かれ、トウモロコシの除草剤タンク内に別の製品が吸引されて混入した。

オペレーターの迅速な対応により、さらなる材料コンタミネーションが防がれた。このミスが早期に明るみに出たので、いかなる製品も製造工場から搬出されておらず、そ

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れ以上の費用もなく、望ましくない悪評にもつながらなかった。 この事例から何を学ぶべきなのか?· パージライン、換気またはユーティリティ配管(蒸気、圧縮空気、等)などを介しての、 異なった設備間の相互接続を避ける。· 共通のラインと設備には、効果的な逆流防止機能が必要である。 · オペレーターのトレーニングと意識向上が予防の主要な要因である。· 通常と異なる点を必ず報告する (色、香り、粘稠度など)。

3.9事歴 9:2つの製剤ユニットの不十分な分離2つの製剤ユニットが、壁で区切られた別々の部屋で同時に作動していた。1つのユニットは殺虫剤を製剤し、他方のユニットは除草剤だった。顧客は、殺虫剤を使用したとき、農作物に被害がでたと訴えた。その後の分析試験により、除草剤による製品の低レベルコンタミネーションが明らかになった。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 工場の2つの部屋の間の壁は、実際には完全に密封されたものではなかった。もと もと配管のためのいくつかの小さな穴があった。· 殺虫剤ダストからの作業員の保護のために、殺虫剤製造のユニットには、大型の排 気送風機が取り付けられていた。そのため、殺虫剤の部屋の大気圧が除草剤の部屋 より低くなり、その結果、除草剤のダストが穴を通過して殺虫剤集塵装置に吸引され た。集塵装置に集められた微粉のリサイクルにより、除草剤が殺虫剤に紛れ込んだ。 製品の品質への多大なる懸念が発生した他、隔離済みの完成品、リサンプリング、再試験などが行われ、その間、顧客への製品の納品は見合わされた。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 天井までカバーする「強固な」壁で仕切られた場合でも、同時に製造している2つの 製品間のコンタミネーションが発生する可能性がある。· 配管の追加や送風機増加、ドアや窓の追加などといった設計変更は、それがもたら す、コンタミネーションのリスクを含めたあらゆる結果を考慮することなくして実施して はならない。· 壁が完全無欠のバリアであるということを期待してはいけない。すべての穴を密閉す ることは困難である。 · 製品間の非互換性が増大すれば、製造ユニット間のより完全な分離を必要とする。 場合によっては建物を別棟にする必要がある。通常のレベルの除草剤と殺虫剤の間 には、しっかりとした気密性の壁と個別空調システムを必要とするが、殺虫剤と高活 性除草剤の間では、別々の建物における分離が必要となる。

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3.10事歴 10:コンタミネーションされた試験所設備残留量の高活性除草剤が、殺虫剤製剤内に発見された。繰り返しのサンプリングと分析を行ったが、すべてのサンプルでこの残留量の除草剤が見られた。この除草剤の値は、全て一貫して低ppmの範囲 (5 ppm未満)であったが、それはこの場合ARIL (許容残留不純物レベル) である1ppmを大きく越えていることを意味した。この除草剤の残留レベルでは、殺虫剤の使用が認めらた作物においてほぼ確実に薬害を発生することが明らかだったため,この殺虫剤はリリースできなかった。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 高活性除草剤と殺虫剤の有効成分は、3 km以上離れた別々の建物で合成された。· この工場では、除草剤の製剤化と、非除草剤の製剤化は、常に完全に分離されて行 われてきた。· この殺虫剤中の残留除草剤の分析に使用された液体クロマトグラフィー/質量分析 (LC/MS)は、過去において、問題の除草剤の製造に由来する不純物の分析に使用さ れていた。

この新たな発見の結果、機器の重要部品の交換と同時に、LC/MS の集中的な洗浄が実施された。この計測器は1週間以上利用できなかった。

この間、分析データが決定的に信頼できるものであるという証明がなされるまで、数々の製品のリリースが保留された。当初からコンタミネーションの疑いもたれていた殺虫剤は、すべて規格内であることが分かった。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 根本的な原因分析を実施する場合、調査対象から分析ラボを自動的に除外しない。· コンタミネーション発生を示す分析データが、実際には「偽陽性」である可能性もある。

3.11 事歴 11:不適切な試料のリサイクル殺虫剤の使用により、8000本以上のカンキツ樹の苗が枯れた。殺虫剤の一つの販売パッケージ (1ドラム)に、低薬量除草剤が高レベルで含まれていることが判明した。他のすべてのドラムも分析調査したが、除草剤の痕跡は発見できなかった。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 除草剤生産は、殺虫剤/殺菌剤生産から完全に分離されている建物で行われた。また コンタミネーションされた殺虫剤のバッチは、保持しているサンプルからは検出され なかった。· 標準的な方法として、生産ラインに関係なく、2~3 kg のすべての製品のサンプルが、 同じ白いバケツに採集されて品質管理 (QC) の実験室に運び込まれる。QC分析後、 すべてのサンプルは生産ラインに戻されてリサイクルされる。

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· 白いバケツのラベリングには一貫性がなく様々な種類が存在する。分析の後、ラボの 担当者は、同じ場所に、除草剤と殺虫剤も一緒に、また採取されたバケツも生産ライ ンに戻るバケツも同じ場所に置かれている。· この時点で作業ミスにより、低薬量除草剤の入ったバケツが、殺虫剤のドラム分注工 程に戻され、あるドラムの内容物に追加された。 製造業者は、苗の不可逆的に損害に対して補償を行ったが、更に、製造業者としての評判に大きな汚点を残した。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 製品を入れてある容器には、常に明確かつ一貫したラベルが添付されなくてはなら ない。· 工場におけるラベルに関するポリシーを定義し、すべての人が理解し、一貫して適用 する必要がある。· リリース サンプルは、工程内に戻して追加してはならない。· したがって、原則として、実験室サンプルおよび保持サンプルのリサイクルは極力回 避する。廃棄量を減らすために、少量の代表試料を採取する。· 既存のリサイクル プロセスをレビュー (リスク評価) して、それが適切であり、適切に コントロールされていることを確認する。· 容器の内容物をコンテナーや別の容器に戻したり、追加したりする際に十分に注意 が必要であることを、工場の作業員に認識させる。さまざまな種類の容器を使用し( サイズ、色)、また互換性のない物 (除草剤、殺菌剤/殺虫剤) のラベルを区別する。

3.12 事歴 12:有効成分(AI)のドラム上のラベルの欠如 契約製造業者は、殺虫剤や除草剤ECを同時に製剤する必要があった。工場の施設内では、除草剤と非除草剤は、ほぼ100%が分離されていた。両方の有効成分(AI)は、室温で固体であり、湯浴により融解させなければならなかった。湯浴は同時に200リットル入りドラムを10本保持できた。これは施設内で唯一、除草剤と非除草剤が共有して使用する場所であった。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 5本づつの各有効成分(AI)のドラムが、次の朝に製剤処理できるように湯浴に一晩 置かれた。· フォーク リフトの作業員は、ドラムのラベルが剥げてなくなっていることに気が付い たが、殺虫剤有効成分(AI)と、除草剤有効成分(AI)のドラムを、正確にどこに置いた かを覚えていると確信していた。· ドラムは、ステージング ステーションに搬送され、製剤化用の容器に入れられた。· QCラボは、殺虫剤が除草剤によりコンタミネーションされ、また逆に除草剤が殺虫 剤によりコンタミネーションされていることに気づいた。

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コンタミネーションされた製剤の仕立て直しは不可能だった。両方の製剤を破棄せざるを得ず、有効成分の損失、余分な労力とコスト損失という結果になった。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 工場で1つの湯浴 (または蒸気キャビネット)が利用できる場合、一時期に1つの有 効成分(AI)のドラムだけを溶解するようにし、特定の生産専用とする。· 湯浴にドラムを入れる前に、消えることのない仕方でマークされていることを確認す る。· 万一ドラムのラベルが紛失して「内容不明」になった場合は、そのドラムを隔離し、サ ンプリングして、QCが内容物を同定するまでリリースしてはならない。· 絶対にステージング エリアにラベルのないドラムを搬入してはならない。· ドラムまたはビッグバッグのラベルの検証なしに、反応器に充填してはならない。

3.13事歴 13:不適切なラベルある包装工場では、同じ除草剤有効成分(AI)を使用し、リットル当たりの有効成分90gおよび360gという二つの異なるEC製剤を1リットルボトルに充填していた。日勤は、有効成分90gの製剤を充填し、夜勤は360gの製品を担当していた。ボトルは色も形も同一だった。ある販売業者が、ボックス上のラベルとボトル上のラベルが一致しないことに気付き、すぐに現地の営業所に連絡した。 根本的原因の調査の結果は以下である。· 夜勤のオペレータの一人が病気だった。夜勤の仕事を軽減するために、日勤のチー ムは、360gの有効成分用のラベルのスプールを倉庫から運び出してラベル貼機の隣 に置いた。· このスプールが誤ってラベル貼機に充填され、有効成分90gの500本のボトルに、4 倍の高濃度の360gの有効成分のラベルが貼られた。· この間違いは外見的に見分けることができなかった。ボトルは同じであり、商標とラ ベルの色も同じだった。· ラベルが貼られた製品は、事前に印刷された段ボール箱に入れられた。 外箱のラベ ル(90 g AI/L)は正しいラベルであり、海外の販売店に出荷された。 国レベルのリコールが行われた。ほぼすべての不良製品が識別され、製造工場に戻され、容器から出されて分析され、適切に再ラベルを貼り付けることができた。この種の事件は、常に市場に望ましくない不安を引き起こす。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 生産現場には、現在実際に生産中の製品のラベルおよび段ボール箱だけを搬入で きるようにすべきである。· 処理された作物に関する、より広範な残留試験が開始され、基準値以上の残留濃度 を示したすべての作物は破棄されなければならなかった。製剤の製造業者は、登録 に違反した製品を販売したために罰金を科された。

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3.14事歴 14:サードパーティ購入有効成分(AI)特許権のある殺虫製剤を製造するために、ある有効成分(AI)を、サードパーティの製造業者(この有効成分(AI)の登録ホルダーでもあった)から購入した。この製造業者からLetter of Access(情報参照権)が、顧客の製剤登録のために準備されたが、有効成分

(AI)の規格に関する情報交換は同意されなかった。

政府の食品検査官が、この購入された有効成分を含有する製剤で処理された農産物のサンプルを採集したが、残留分析において、その作物には登録の無いひとつの殺虫剤が同定された。

根本的原因の調査の結果は以下である。· サードパーティのサプライヤーは、この有効成分を、化学的に密接に関連した殺虫剤 の製品と共有する生産ラインで製造したが、顧客にその旨を通知しなかった。· いくつかの国では、この第2の殺虫有効成分(AI)は、顧客により製品が登録された のと同じ作物では登録されていなかった。作物に関する政府機関によるランダムサ ンプリングの結果、多くの場合において、非登録殺虫剤の残留量が許容レベルをえ ていることが判明した。· 処理された作物に対するより広範な残留試験が開始され、基準値以上の残留量を示 したすべての作物は破棄されなければならなかった。製剤の製造業者は、登録に違 反した製品を販売したために罰金を科された。· 購入有効成分の保持サンプルを検査した結果、非登録の有効成分の残留不純物の 含有量が許容値よりもかなり高いことが判明した。 いくつかのバッチの原体は、基準 外であった。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 法的観点から言えば、すべての有効成分(AI)は、副産物の制限を含め、独自の登録 規格を持っている。· サプライヤーは、製剤業者が分析的な検証を実施することができるように、すべての 潜在的不純物のリストを提供する必要がある。サプライヤーがLetter of Access(情報 参照権)のみを提供したのであれば、サプライヤーのみが、規格に記載されているす べてのパラメータを満足させる責任を負う。· 原体の購買契約を準備する場合、購入品中の残留不純物に関する法的事項が明確 に定義されていることが不可欠であると同時に、原体から製剤化された製品が登録 される地域での法的要件を満たしていることが重要である。· サプライヤーは、これらの要件を満たすことに同意しなければならない。· 適切なリスク評価を可能にするために、サプライヤーがどのようなコンタミネーショ ン予防システムを実施しているのかを示すことが望まれる。

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3.15 事歴 15:不適切なリサイクル農薬化学品会社が、250gの水溶性バッグ入りの新規殺菌粒剤の製剤およびパッケージングを外部に委託した。押出成形顆粒の製剤は、ストロー(わら)色だった。包装作業の初日、半日ほど経過してから、外部製造業者の作業員のひとりが、製剤の中に奇妙な暗褐色の顆粒が含まれていることに気が付いた。包装作業はすぐに停止された。

根本的原因の調査の結果は以下である。· 完全密閉式の包装ユニットは、当初より、非除草剤製品の包装専用に使用されてい た。生産記録もこの事実を裏付けた。· 新しい粒剤の生産ユニットは、生産前に切替製造のガイドラインにしたがって洗浄 された。直前の有効成分に対して達成された製剤化ユニットの洗浄レベルは、 25 ppm未満だった。· 茶色の顆粒が単離され、新しい製剤の直前に包装された殺虫剤の有効成分が含ま れていることが分かった。· サンプリングされた殺菌剤バッグに含まれている殺虫剤有効成分のコンタミネーシ ョンレベルは、25~1200 ppmの間で変動した。 · 包装ユニットは無塵包装を行い、顆粒が敗れた水溶性バッグから出た場合にはすぐ にバキュームで吸引する。· 真空掃除機は、この特定のパッケージブース専用であり、外部の粉塵が混入すること はない。 · 真空掃除機のタンクがいっぱいになったら、収集された物質は産業廃棄物として処 分される代わりにホッパーに戻される。· 外部委託製造業者の前回の顧客はこのリサイクル手順を承認していた。前回の生産 は、二ヶ月以上も続いていた。したがって、作業員は、これは業界全体の通常のやりか ただと考えた。

クライアントの書面による承認を得た後、時間をかけて手直しが成功裏に行われたが、この製品と次の製品の納品が遅れた。事故は製品を出荷する前に工場内で発見されたので、金銭的な損害は限られた。

この事例から何を学ぶべきなのか?· 物のリサイクルに関しては本質的にリスクが存在する。· クライアントと外部委託製造業者は、契約/合意文書において、リサイクルが許可され ているかどうか、どのような手順をとる必要があるのかについての書面での同意が 必要である。· 後続のクライアントには、直前の製品製造時にリサイクルが適用され、どの手順で行 われたかを通知する必要がある。· 切替製造手順において、真空掃除機は、次の製品が製造される場所でそれが使用さ れる前に、完全に無塵(内部的にも)であることを規定する必要がある。

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4.コンタミネーション予防の要件

多品種製造工場における農薬製品の同時製造は、一般的であるが、しかし、クロスコンタミネーションの危険が生まれる。本章の目的は、多品種施設における製品製造に関連するリスクを低減する、業界全体に適用可能な要件を提供することである。

すべてのクロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業および外部製造業者は、本章のポリシーと要件にコミットする必要がある。

4.1コンタミネーション予防ポリシー· 加盟企業は、市場での自社製品が、製品規格で定義されていない、有効成分とし ての残留不純物を、安全性および有効性を損なうレベルまたは規制要件を満た していないレベルで含まないことを保証する。個々の加盟企業は、適切な書面に よるリスク評価にしたがって、自社製品における限度を設定すべきである。· 米国 EPA の農薬規制(PR)通知96-8などの法的要件(付録Cを参照)、および現地 の法基準に従う必要がある。· 外部製造業者を使用する会社は、外部製造業者の後続のクライアントが適切な リスクアセスメントを実施し残留不純物の制限を設定することができるよう に、利用可能な最大限の知識情報を提供することが必要である。外部製造業者 は、データ、もしくは最低限、他のクライアントの連絡先の情報を提供することで、情 報交換を保証する。

4.2一般的な要件· 文書化されたコンタミネーションリスク評価を作成する必要がある。· 洗浄レベルを定義する必要がある。· 非除草剤は、除草剤と同じ設備で製造されてはならない。つまり、製造設備間の 分離を保証する必要がある。これは、合成、製剤、充填及び包装のすべての作業 内容に適用される。この規則に対して唯一例外が認められるのは、洗浄レベルの 厳格な検証が確認されている場合、そして経営陣から文書による承認があるとき に限られる。· 除草剤および非除草剤に共通の原材料を使用することのリスクを最小限にする ために、原材料の取り扱いを評価する必要がある。· 可動機器、携帯機器 (真空掃除機、フレキシホース、ポンプ、ツールなど) は、除草 剤あるいは非除草剤の区域に専用にしなくてはならない (事歴 3.7 を参照)。 · 詰め替え可能な容器 (IBC、ISO、ビッグバッグ、レールトラック等) は、製品と接触す る化学設備と同様に扱う必要がある。· リサイクルおよび仕立て直しは、クロスコンタミネーションのリスクを最小限にす るように管理する必要がある。

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· すべての材料は解りやすく適正なラベル表示を行う必要がある。以下のような表 示が考えられるがそれに限定されるものではない:原料、中間体、バルク製剤、完 成品、再加工、リサイクル、廃棄 (3.12 の事歴を参照)。· 効果的な洗浄手順と分析方法が利用でき、洗浄液 (すすぎ液) の残留物および/ま たは後続製品の分析が可能である。· 生産の停止後にできるだけ早く洗浄作業が行われる必要がある。これは別の製 品への変更時だけでなく、装置をアイドル状態で放置する場合にも適用される( 事歴 3.1、3.3 を参照)。これは、合成、製剤、充填及び包装のすべての設備に適用 される。

4.3 管理者責任すべてのクロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業および外部製造業者の経営陣は、次の責任・要件がカバーされ実施されていることを確認する必要がある。

· コンタミネーション予防に関するすべての事項について会社の代表として正式 に対応できる担当者を任命する。· 交換された情報の機密性を保護する。· コンタミネーション予防のすべての局面に対して必要なリソースを提供する。· この冊子で提示されている要件とベストプラクティスを適用する。· 継続的なトレーニングおよび意識向上。· 適切な物的管理。

この包括的な要件に対する例外措置は、経営陣から文書による承認を必要とする。

4.4 有効成分および製剤の外部製造

4.4.1 情報交換外部製造業者は、時宜を得た方法で、後続のクライアントに次の情報を提供する必要がある。· 生産・貯蔵設備の場所で扱われたすべての有効成分について。もしこの情報が秘 密保持契約で制限されている場合は、それらの製品のクライアント側の担当者名 を知らせる。· 製品が合成、製剤および/または充填された生産ユニットの配置構成。使用され る配置構成が、必要な洗浄レベルで洗浄されていることを保証する(事歴 3.3 を 参照)。· コンタミネーション予防に影響を与える可能性がある施設の物理的なレイアウト (事歴3.9を参照)。· 並行して行われる作業。特に、分離の度合い、共有される設備(工具、掃除機など

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の補助機器を含む)および作業者についての情報。· 生産設備の正確な位置(例えば、GPS座標)。 直前のクライアント*は、請求があり利用可能な場合は,後続のクライアントに対 して、直前の製品について以下の情報を提供しなくてはならない。· 製品に含まれる有効成分を確認する。· 少なくとも、後続の製品の登録作物上への、最大無作用量(NOEL)、ED5 および/ またはED10 を提供する。· 当該作物に関するNOEL情報が欠けている場合には、同様の関連作物に関する 情報を提供する。 · EPA 農薬規制に関する通告 96-8に従った製品の分類。これは最悪のシナリオに 基づくべきである。言い換えると、もし製品が(製剤に無関係に)低および通常薬 量の除草剤である場合には、「低薬量の除草剤」と表示されるべきである。· 不足している最大無作用量(NOEL)を得るための試験に必要な製品サンプル。

直前のクライアントは、請求があり利用可能な場合、外部製造業者に対して直前 の製品について以下のものを提供しなくてはならない。· 分析標準品。· 後続のクライアントが必要とする洗浄レベルを決定するうえで必要な分析方法。 これらの方法を提供することができる場合、外部製造業者は、これらの方法を自 分の実験室で実施することができることを確認する必要がある。· 洗浄方法。これらの方法を提供することができる場合、外部製造業者は、これらの 洗浄方法を、自分の工場・設備・配置構成において有効であることを確認する必 要がある。

4.4.2 外部製造における最小要件上記の詳細ガイドラインに加えて、以下の項目に関する内容が、クライアントと外部製造業者間の契約/合意書に組み込まれていることが期待される。クライアントと外部製造業者間で追加で特別な事項についての合意がされるかもしれない。

クライアントは以下の内容に関する責任を負う。· 洗浄レベルの達成が、後続の製品内での達成なのか、あるいは洗浄液(すすぎ 液)内での達成なのかを規定する。いずれの場合において、最終製品は、合意さ れた清浄レベルを満たす必要がある。· 詳細な工場監査や他のデューデリジェンス活動 (洗浄工程とその結果を含む)を 展開、および必要な場合には外部製造業者を支援する。· 直前の製品のクライアントから取得した情報はコンタミネーション予防の目的に 限って使用する。 · 外部製造業者に対して、当業者の工場に搬入された製品に関連付けられるリスク

(例えば高活性除草剤)について通知する。

*直前のクライアント、後続のクライアントとは、外部委託製造業者における生産順序を示す。

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· 外部製造業者との間に交わされた既存の契約および/または合意文書を確認し、 必要に応じて、この文書内で概略が説明されているベストプラクティスを含める ために更新する。· 同じ製造設備で製造される製品の、後続のクライアントに対して、求めに応じて 入手可能な情報を提供する。

外部製造業者は以下の内容に関して責任を負う。· コンタミネーション予防のための技術監査に協力する。· 材料をトレースし、クライアントが規定するすべての記録を保持しておき、トレー サビリティを可能にする。 · 外部製造業者の工場におけるコンタミネーション予防ガイドラインの実施責任 者を任命する。· クライアントのリスク評価結果に基づいて、同時操業の分離を行う。· 洗浄レベルに関してのクライアント要件を満たすために必要な、適切な分析能力 を有していることを確認する。分析施設は、社内施設か、あるいはクライアントの 合意・承認のあった機関(委託試験機関あるいはクライアントの分析室)のいず れかである。委託試験機関が関与する場合には、分析データは、少なくとも外部 製造業者の施設で保持されるべきである。· 洗浄手順、実行すべきチェックリストを含む、文書による切替製造の手順が存在 すること。· 従業員および新入社員を対象とした、定期的なコンタミネーション予防訓練を実 施する(製造工程内で実際に作業を行う前に)、そして訓練に関する記録を恒久 的に保持する。 · すべての設備機器(補助装置を含む)、原料、「工程内」の半製品、「最終」製品の容 器と廃棄物容器の、恒久的なラベル貼付を確認する。· コンタミネーションの危険性に影響を与える可能性のある変更を行う前に、クラ イアントからの承認を得る。· サンプルがリサイクルされていないことを確認する。すなわちサンプルは、クライ アントの承認なしに、工程に戻すことはできない。 · すべての仕立て直し(混合、リサイクル)が、クライアントによって承認されている ことを確認する(事歴3.15を参照)。· 適切な物的管理の習慣を維持する。· クライアントによって指定されている、サンプルの保持時間および貯蔵条件を確 認する。

4.5 有効成分の調達/購買 有効成分のサプライヤーもまた、規制遵守、コンタミネーション予防管理を必要とする。 もし、有効成分(AI)がAIの登録所有者であるサプライヤーから購入された場合、製剤業者が登録を提出できるように、Letter of Access(情報参照権 LoA)を提出しなければならない。しかしながら、Letter of Access(情報参照権 LoA)それ自体

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は、法的要件の遵守を評価するのに十分な情報を提供しておらず、また、製品が、クライアントのコンタミネーション予防基準を満たしているという保証を与えるわけではない(事歴3.14を参照)。

サプライヤーによって製造される有効成分の場合、「コンタミネーション予防のためのガイドライン」に記載されたすべての原則が適用される、例えば、設備における直前の製造製品に関する情報交換などである。顧客の施設における品質管理を可能にする適切な情報が提供されるような検査成績書の必要情報に同意することが必須である。

サプライヤーの知的財産の保護が重要であることには変わりない。そのために、秘密保持契約を締結することが望まれる。業務提携先は、本冊子に記載されているすべての要件を実施することを目的とした契約に同意する必要がある。

少なくとも以下の事項に関しては供給契約でカバーされている必要がある。· 「クロスコンタミネーション」と「コンタミネーション予防」の定義(用語集を参照。· 製品は、すべての規制要件を満たさなければならない。· 以下の合意がなされたこと

a. 供給されている製品内のすべてのリスト外の化合物は1000ppm未満でなくて はならず、生物学的活性の場合、もし作物、使用者および環境への悪影響があ る場合は、より低レベルでなくてはならない。

または

b. 同じ生産・包装ラインで製造される他の活性成分の場合には情報交換がなさ れ、そして同時に、(顧客によって提供された)クリーニング マトリックスが実施 され、(サプライヤーによって)洗浄限度が達成していること。

· 法的基準を含む詳細な販売規格。· 化学分析(分析方法を含む)および合意された化学物質一覧(検査成績書上で開 示される必要がある)。 · 必要な場合、プロセスの変更の通知。

理想的には監査の指示に従って、コンタミネーション予防の自己評価チェックリストの作成が推薦される。

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5.コンタミネーションリスク評価の要素

コンタミネーションリスク評価は、生産ユニットとそこで製造されるすべての製品に対して行われる。このようなリスク評価には、全製品レビュー、製造工場及びその生産ユニットの設計、分離、洗浄要件と能力、製造と分析業務が含まれる。これらのいずれかが変更された場合は、コンタミネーションリスクの再評価を行わなくてはならない。

リスク評価において考慮すべき洗浄レベルの計算には、5つの主なカテゴリがある(詳細は第6章を参照)。

1. 製品カテゴリ(低薬量除草剤、除草剤、殺虫剤、その他)および分離。 2. 地域(法的要件、例えば、米国EPA PRN 96-8)。 3. 非標的生物に対する毒性。 4. 施用量。 5. 安全係数。

製造ユニットの設計とレイアウト(付録Aを参照)製造ユニットの設計とレイアウトは、製造ユニットの洗浄を容易にする大きな要因である。洗浄に関するすべての局面は、リスク評価に含まれるべきである。

5.1 製造ユニットの分離製造ユニットの分離は、コンタミネーション予防の重要な要素である。「製造ユニット」とは、製品の製造に使用される設備の組み合わせである。これは、連続する複数の製品に対して使用することもできる。製造工場は、複数の生産ユニットから構成される場合もある。 「分離」というのは、ひとつの製造ユニットから別のユニットへ、製品の計画外の移送を引き起こすおそれのある共有機器が存在しないことを意味する(例えば、換気ダクトと通気ヘッダー)。反応容器間のバルブは安全な分離形態ではないかもしれない。なぜなら、バルブが閉鎖されていると示されている場合でも、小さな漏れが発生する可能性があるためである。分離を実現するための効果的な方法は、別々の建物を利用すること、重要な製品を他の生産ユニット、あるいは同じ建物内の専用製造ラインへ移転することである。

いくつかの施設内の設備、例えば、真空ライン、蒸気ライン、圧縮空気及び窒素などは共有せざるを得ないことがあるかもしれない。特に、真空ラインの場合、 一方向(逆流防止)バルブが逆流に対する防止手段として取り付けられている必要がある。(事歴 3.8参照)クロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業は、コンタミネーション予防に重要な最初のステップとして、共用の製造設備でのコンタミネーションリスクを最小限にするために(また同時に、洗浄コストとダウンタイムの削減のために)、次のような分離規則の実施を必要とする。

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· 「除草剤」と「非除草剤」とを分離する この分離は、「除草剤」または「非除草剤」のいずれかに完全に専用化される製造 ユニットによって達成される。(4.2章を参照) クロップライフ・インターナショナル(CLI)の加盟企業で使用される「非除草剤」の 定義は、植物成長調節剤(PGR)を除いて、米国EPA PRN 96-8で使用されている定 義に従っている。· 「除草剤」は以下のものを含む。すべての除草剤(作物および非作物、 使用方法に は無関係)、枯葉剤、乾燥剤。· 「非除草剤」は以下のものを含む。全ての殺菌剤と殺虫剤、殺ダニ剤、 軟体動物 駆除剤、殺線虫剤、フェロモン、植物活性化剤、除草剤セーフナー、殺鼠剤、作物油 および補助剤、噴霧タンク洗浄剤、肥料、燻蒸剤、植物成長調節剤(PGR)と硝化抑 制剤。 · レスポンシブル ケアの考慮事項に加えて、以下の製品群のいずれかが農薬製品 と同じ工場で製造された場合に、追加の分離要件を実施する必要がある。 a. 経口的に、局所的に、または注射剤として投与される、ヒトおよび動物医薬品。 b. パーソナルケアおよび他のヘルスケア製品。 c. 食品や飼料(ビタミンを含む)。

様々な要件は、適正製造(GM)ガイドラインと、各製品グループに特異的な基準に基づいている。これらの個々の要件は、必要な分離の度合いを決定するために、生産を開始する前に詳細に検討する必要がある。 以下、さらにコンタミネーションリスクを軽減するための推奨事項である。· 除草剤が異なる作物に登録されている場合は、「通常および低薬量除草剤」と「高 活性除草剤」を分離させる。通常薬量除草剤と高活性除草剤の施用量の違いを 考慮すると、通常薬量除草剤がコンタミネーションされると、非標的作物に悪影 響を及ぼす可能性がある。同じ生産ユニットにおける同じ作物に登録された除 草剤を組み合わせることで、例えば、すべてのイネの除草剤、あるいは穀物の除 草剤、コンタミネーションのリスクを低減することができるが、常に洗浄の限度を 計算することが推奨される(第6章を参照)。· 植物成長調節剤(PGR)の「殺虫剤」製造ラインでの製造。米国 EPA PRN 96-8は、 植物成長調節剤(PGR)を、通常薬量除草剤に分類している(付録Cを参照)。 しか し、PGRは、除草剤製造ユニットで生産を共有するよりも、専用の非除草剤の設備 で製剤/製造することが推奨される。この方法はすでにクロップライフ・インター ナショナル(CLI)加盟企業によって実施され、殺虫剤製造ユニットにおけるPGRの コンタミネーションの危険性が大きく低下したことが示された。· 現在知られているPGRで、登録された散布量で除草剤活を示しているものはな い。これは、PGRが1000 ppm 未満の量で残留不純物として存在する場合、後続で 製造される製品には農作物被害を引き起こさないことを意味する。PGRの有効量 (ED) 評価は、薬害が低いため事実上不可能であり、NOELは現時点では利用でき ない。

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コンタミネーションリスクが増大する生産の計画がなされた場合は、常に、追加でリスク評価を実施し、上級経営陣およびマーケティング責任者の承認を得ることが推奨される。このような事例は、明確な期限付きでの例外と見なす必要がある。

5.2 コンタミネーションリスク評価の主な要因 次の項目が、製造ユニットのコンタミネーションリスク評価で評価される必要がある。· 製造ユニットの設計 (洗浄並びに分解が容易で、分離に適しているなど)。· 製造サイトで、その他どのようなの活性成分または製品を扱い、それはどの製造 ユニットなのか?· 低洗浄レベルを避けるための生産スケジュール プラン(6.2.8章を参照)。· 実施中および更新された洗浄の最新レベル(事歴3.2を参照)。· 利用可能な洗浄方法の確認。· 再加工/リサイクルと混合に関する作業(事歴3.15を参照)。· 生産計画で後続となる製品中の残留不純物を低レベルに抑える実証された洗浄 能力。· 理想的には社内のあるいは良く知られた委託試験機関により、残留不純物の痕 跡量を化学的および物理的に分析するための適切な機器・設備。· すべての作業において技能と訓練を受けた作業員、およびトレーニングの記録。· 隣接するサイトあるいは同じ工場サイトからの浮遊粒子によるコンタミネーショ ンリスク。高活性除草剤が隣接する製造ユニットで製造されている場合、この点 が特に重要になる。通常の風向、吸気位置、換気、窓やダストフィルタの配置とい った局面を考慮する必要がある。特に、分離された生産ユニットが同じ建物内で 区画化されている場合、壁が密閉されており、生産中には生産区域へのアクセス が不可能であることが特に重要である(事歴3.9を参照)。· 1つの生産ユニットから別のユニットへの、靴、衣類、携帯機器などを介した残留 物の移動を防止するシステム。これは、高活性除草剤を扱う工場では特に重要で ある。· 変更プロセス、洗浄方法および製品リリースの管理に関しての手順書が、十分に 一貫して理解され、実施されていること。· すべての製造サイトを評価するのために実施される、全体的に一貫性をもったリ スク評価。

5.3 洗浄能力の評価特定の製造シーケンスを扱う生産ユニットの適合性を評価するために、以下の二つの基準を評価する必要がある。· 製造ユニットの設計 • 製造ユニットにおける最も高いコンタミネーションリスクは、デッドスペースか ら生まれる。 これは、特に固体製品に当てはまるが、液体製品(活性成分及び

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製剤の両方)においても同様である。デッドスペースでは、コンタミネーション につながる材料の付着が発生する。「取り残された」物質は、場合によっては直 前の生産からだけではなく、それ以前に生産された製品に由来する場合もあ る。このような物質が突如リリースされ、その後の製品の複数のバッチをコンタミネーションする可能性がある。したがって、コンタミネーションリスクを評価する際に、生産ユニットの設計を吟味し、潜在的なデッドスペースがないか確認することが重要になる。 · 適切な洗浄方法。重要な4つの要素: a. 正しい洗浄レベル(第6章を参照)。 b. 洗浄方法(第8章を参照)。 c. 分析能力(第9章を参照)。 d. 文書化(記録保存、試料保持)(第4および7章を参照)。

製造ユニットで製品の切替製造が正常に実行されているかどうかを判断するためには、洗浄能力の履歴データを確認することである。次のような洗浄レベルの結果を一貫して示す必要がある。

· 有効成分の合成:50 ppm未満。通常、機器の溶剤によるすすぎ、パイプとポンプ の部分的な解体後に達成される (表 5 参照)。· 液体製品の製剤とパッケージング:100 ppm未満。通常、機器の洗浄剤による最大 3回のすすぎ後に達成される (表 5 参照)。· 固体製品の製剤とパッケージング:200 ppm未満。通常、機器のドライクリーニン グとそれに続く「湿式洗浄」あるいは「水洗」後に達成される (表 6 参照)。

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6.洗浄レベルの決定

製品の切替製造に必要な洗浄レベルは、製品の切替製造に関わるリスクの主要な指標である。言い換えると、洗浄レベルが低ければそれだけ、洗浄プロセス欠陥の場合にコンタミネーション事故の危険性が高くなる。さらに、必要な低洗浄レベルを達成するために、より多くの労働力、中断時間、費用のかかる洗浄、廃棄物の増加が避けられない。生産順序を最適化するには、残留不純物レベルに基づく、クリーニングマトリックスの作成を推奨する。6.2 章に除草剤パッケージングユニットの例が示されている。連続する葉面散布製品と種子処理製品内のコンタミネーション物質として、殺虫・殺菌活性成分に対する洗浄レベル要件について、6.3 章、6.4 章で詳細が説明されている。

g AI/ha: 0 0.3 1.0 3.0 10 30 90

図 1: ブドウ殺菌剤へのコンタミネーション物質としての穀物用除草剤の用量反応試験が、非対象作物に適用されたときには有効成分が低施用量であっても被害の原因となり得ることを示している。ブドウの木は、増加する濃度(白い数値)の除草剤でコンタミネーションされた 、登録量の殺菌剤で処理された。ブドウの木に対する、除草剤の最大無作用量(NOEL)は、0.3 g AI/haであり、これは、穀物への登録された薬量の 1.7% に対応する。

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6.1 原則 多品種製造設備の洗浄レベル設定の目的は、製品の切替製造時の洗浄作業後、後続製品が、直前の製品からの残留不純物によって引き起こされる悪影響のリスクなしで、登録されたすべての作物に安全に使用できることを確保することである。これは、後続製品の登録承認された用途にのみ適用される。登録外の使用は、このガイドラインの適用外である。洗浄レベルのすべての計算は、文書化され、製品寿命中にわたって保持する必要がある。洗浄レベルは時とともに変わりうる。操業では常に最新バージョンを使用する必要がある(バージョン管理)。

洗浄レベルの計算には、以下の事項を必要とする。· 低薬量除草剤: 有効成分の最大無作用量(NOEL)。· 後続の製品の登録対象作物への施用量、およびシーズンあたりの散布回数。· 農薬規制 (PR) 1996年10月31日通告96-8 に記載されているカテゴリ別分類 (米 国 EPA PRN 96-8)1。· 殺虫剤: LD50(ミツバチ) 、および法的要件をカバーするため、製品が使用されて いる地域。

後続製品が、大きな作付面積で「感受性が低い」作物上に散布されるものであるかいかんに関わらず、最低のNOEL(後続の作物中で有効成分に最も感受性の高いものに対しての、直前の有効成分のNOEL)が常に使用されるべきである。

洗浄レベルを計算する場合には、常に、以下のガイドラインを参考にすること:農薬規制に関する通告 96-8、1996年10月31日(米国環境保護庁EPAにより発行)に記載の、直前の製品の「毒性的許容濃度」(TSLC)。この文書の完全版が付録 A で利用可能である。農薬規制 (PR) に関する通告 96-8は、製造製品、輸入製品、および/または米国で使用される製品に適用される。

つまり、米国を最終目的の市場とする製品の洗浄レベルは、様々な範疇でリストに記載されているTSLC値を越えてはならないということを意味する。しかしながら、生物学的効果についての適切な考慮なしでのEPAガイドラインの実施は、依然として深刻なコンタミネーション事故につながる可能性がある。なぜなら、TSLCは、このような事故防止に必要な「生物学的な安全性マージン」をカバーするにはレベルが高すぎるからである。生物学に基づく洗浄レベルが規制値より低い場合には、生物学ベースのレベルを使用する必要がある。

1農薬規制 (PR) に関する通告 96-8内で言及されている最も高いTSLCである1000 ppmの値は、2004年8月に発行されたEPA, 40 CFR – 第I章、パート159により変更された。リスト外の外部由来成分(残留不純物)の限度は、1000 ppm未満に設定されたが、これは「Manual on the development and use of FAO and WHO specifications for pesticides/農薬に関するFAO 及び WHO の開発・使用マニュアル 」、(FAO Plant Produc-tion and Protection Paper FAO /作物生産と保護に関する報告書、第173号、第1版 2002年)に整合した値である。(リスト外の外部由来成分の規制値は1.0 g/kg 未満である( 0.10 [%; w/w]あるいは1000 ppm未満))

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米国以外のほとんどの国では、政府機関は一般的に、使用されている洗浄レベルの限度が農薬規制の値を侵害していない限り、農薬業界のための具体的な洗浄レベルを定義していない。しかし、米国 EPA PRN 96-8は、カナダで、そして現在ではメキシコでも同様に実施されていることが知られている。

6.2 除草剤洗浄レベル 生物学ベースの清浄レベルを計算するには、NOELデータを含むデータベースを有することが必要である。生物学ベースの洗浄レベルにより、それらが、EPAのデフォルト値より大きいか小さいかを見極めることができる。コンタミネーション物質がどのカテゴリに属するのかを確認後に見極める必要がある。ほとんどの場合、直前の製品には、特許権を有する一つまたは複数の有効成分が含まれていおり、そのNOELデータは、企業の独自のデータベースに入っている。各企業は、製造および規制担当の同僚と協力して洗浄レベルの計算を担当する専門家(例えば、生物学者または農学者)を任命することが推奨される。

g AI/ha: 1.0 3.0 10 30 90

図 2: :ブドウの木の苗(上)とテンサイ(下)における、クロマゾンの用量反応試験。洗浄レベルの計算には、後続の製品が使用される、最も感受性の高い作物に対する残留不純物のNOELを使用する必要がある。ブドウの木の苗は明らかにテンサイよりも感受性が高い。テンサイに対するクロマゾンのNOELは、3.0 g AI/haで、ブドウの木に対しては1.0 g AI/ha未満である。

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6.2.1 除草剤のNOELデータ 除草剤のNOELデータは、科学文献では容易に入手できず、一般的にその有効成分を発見した会社の温室にて取得される。これは、これらのNOELデータが、特許権を有する有効成分に適用されるもので、必ずしもこの分子の一般的な形態に適用されるものではないことを意味する。

NOELは、作物上の障害が視覚的に測定される温室において行われる用量/反応試験を使用して開発される。しきい値は、ED0(0%の悪影響を与える有効量)と、ED10

(10%の悪影響を与える有効量)の間で、個々の企業のリスク評価方針に基づいて設定される。 このED値は、清浄レベルの算出にNOELとして使用される。 ED5 またはED10 値が、多くの場合、清浄レベルの計算のための出発点として使用される。 一部の企業は、計算にED0 だけを使用するところもある。 AIが非常に低い施用量で(ED10未満)顕著な視覚的症状(白化斑点のような被害)を引き起こす場合には、常に低いED値に基づくNOELに立ち戻ることが賢明である。

「高活性除草剤」の洗浄レベルを計算する時には特別な注意が必要となる。 「高活性除草剤」 の施用量は、50 g AI/ha未満であり、それに対して、非対象作物に対するNOELが10 mg AI/ha未満であることは普通にある。

6.2.2 安全係数安全係数(SF)は、さらなる潜在的コンタミネーション事故を軽減するために、清浄レベルの計算に適用される。各加盟企業は、その企業の最善のリスク管理戦略に基づいて安全係数のレベルを決定する。2 ~10 が典型的な範囲である。 SFを適用する理由:· 用量反応試験は、温室で、昼と夜の温度、湿度、光の状況を一定にして行う。 · フィールド条件下で農薬化学物質を施用した場合、しばしば重複が避けられず、 その結果、処理区域の特定の部分の散布量が2倍となってしまう。 · 試験下の植物は、最適条件下で維持され、フィールドで遭遇する可能性のある、 湿気、気温、およびに光のストレスはない。 · 試験下の植物は、多くの場合にフィールドで処理したものよりも小さい。すなわち 植物当たりの噴霧溶液を受ける量が少ない。· 近代的な農家で使用される散布量は、多くの場合、温室で使用される散布量より かなり少ない。その結果、潜在的なコンタミネーション物質の高濃度の噴霧溶液 になる。

6.2.3 施用量 施用量は、洗浄の限度計算の一部として必要となる。各作物における製剤の施用量を知ることが必要であるが、多くの製品は、シーズン中に複数回の散布があることを考慮する必要がある。洗浄の限度計算には、企業固有のリスク評価に基づいて、後続製品の登録作物への一回の最大の施用量あるいはシーズンあたりの最大施用量が使用される。

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106 x NOEL

SF x AR

6.2.4 外部製造者による製造 後続のクライアントが、直前のクライアントに連絡して、できるだけ多くの作物種に関するNOELデータを要求することが通例である。後続のクライアントは、CL2を計算するためにこれらのデータを使用し、それを外部製造業者に、製品の生産前に提供する。外部製造業者は、後続のクライアントのための清浄レベルを算出することは期待されていない。これは後続のクライアントの組織内での「RI-専門家」によって行われるのが最善である。製品の完全性のための最終的な責任は、後続のクライアントにある。外部製造業者は、受理した製造ガイドラインに正確に従い、クライアントが満たすべき品質基準を保証する。

6.2.5 除草剤の洗浄レベルの計算式 生物学ベースの洗浄レベルは、以下の式を用いて計算される。

洗浄レベル [ppm] =

定義:AR: ヘクタールあたりのグラムまたはミリリットル単位(製剤として)での後続の 製品の施用量。「1 g = 1 ml」として計算される。NOEL: 有効成分の最大無作用量(NOEL)のことで、後続の登録製品の最も感受性 の高い作物に対する、直前の製品の有効成分のヘクタールあたりのグラム AI で表す。SF: 安全係数(Safety Factor)で、通常は2~10の範囲である。各製品の所有者 は、その会社のリスク管理方針に基づいて、SF値を決定する。 EPAベースの洗浄レベルに関する情報は、付録Cも参照のこと。

2クロップライフ・インターナショナル(CLI)加盟企業は、「CL]の同義語の略字として「ACL」、「ARIL]、「RIL]、「TCAL」を使用してもよいが、これらはすべて、この章に記載された方法を用いて算出される。

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6.2.6 除草剤洗浄レベル計算 : 直前の製品が2つ以上の有効成分を含有する場合直前の除草剤製剤が二つ以上の有効成分を含んでいる場合、全ての残留AIのための洗浄レベルを計算する必要がある。

切替製造え時にすべての残留不純物においてCLが達成されたことを確認する分析確認が必要になる。AIの一つ成分の洗浄レベルが達成された場合でも、すべてのRIの洗浄レベルが達成されたと仮定することはできない。化学物質は異なった溶解度特性を有しているので、それらが同じ速度で洗浄媒体により除去されないことがある。言い換えると、一つの化学物質が既にCL未満に除去されているのに、その段階で他のRIの一部が部分的にしか除去されていない可能性があることを意味する。

複数の潜在的なコンタミネーション物質が存在する場合、それぞれ別々に洗浄レベルを算出し、分析する必要がある。コンタミネーション物質は非標的作物に対して相乗効果を発揮することも考慮すべきである。それらのAIの組み合わせた洗浄レベルは、除草剤の最低の洗浄レベル以上であってはならない。 6.2.7 除草剤ユ

g AI/ha: 0 0.03 0.1 0.3 0.9

図 3: 非標的作物アブラナにおける、実験的な高活性穀物除草剤(広葉雑草種の制御を目的)の用量反応試験。アブラナのNOELは、0.03 g AI/ha未満である。このタイプの除草剤の後続製品がアブラナで使用された場合に必要な洗浄レベルは非常に低く、しばしば2 ppm未満、あるいはppb(10億分の1)の範囲になることもある。

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6.2.7 除草剤ユニットのクリーニングマトリックスの例 この例は、特定の除草剤の製造ユニットのクリーニングマトリックスを開発する方法を示す。3つの除草剤が、交替で製造されている。合成、製剤およびパッケージングユニットのクリーニングマトリックスの開発方法は同一である。

これらの有効成分の作物に対するNOELは、対応するAIの列に示されている。NOELの赤い数値は、RIL の計算で使用される。

免責事項:NOELの数値および施用量は架空のものであり、クリーニングマトリックスの開発の原理を説明する目的で使用したもので、その他の目的で使用すべきものではない。クロップライフ・インターナショナル(CLI)およびその加盟企業は、これらのデータの不適切な使用についての一切の責任を負わない。

表 1:除草剤のクリーニングマトリックスの開発例で使用されている、4つの除草有効成分の、生物学的情報並びに米国 EPA PRN 96-8 による分類

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表 2: 除草剤生産ユニットのクリーニングマトリックスの例。これらのARILの計算に使用されるNOELは表1に示す。この例で使用されている SF は表2に示す。

4 もしARIL値が法的に認められた値よりも高い場合、この値は、規定値の1000 ppm未満とされる。

5生物学的考察が、EPA PRN 98-8 に記載されている洗浄レベルに基づいてのARILに優先するが、決定され たARILがEPA 値より低い場合に限って、これらを使用してコンタミネーション事故を防止することが 必要である。

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表 3: このクリーニングマトリックスに基づいて可能な生産順序 (この例ではすべての可能な順序が表示されているわけではない)

6.2.8 製品スケジュールへのクリーニングマトリックスの影響表 3 に示される生産順序の分析は、明らかに好ましいオプションがあることを示している。したがって、生産順序の慎重な選択により、コンタミネーションリスクを低減し、[洗浄] 時間を短縮し (停止時間の短縮) 、廃棄物削減 (環境負荷と処分費用の削減)を可能にする。

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3 つの製品の完全なサイクルにおいて、順序 1 (A -> B -> C -> A)は、 非常に低い洗浄レベル C -> Bを回避する。 米国 EPA PRN 96-8 を実施する国では、1 と 3 の順序において、EPA ベースの低CLが3つすべての切替製造えで必要となる。順序 2 (A -> C -> B -> A) は、「A -> C」 は5 ppm、「C -> B」は1 ppmという非常に低い洗浄レベルを必要とする (EPA PRN 96-8 によるARILの場合、両方の順序ともこれらの低洗浄レベルが適用される。上記の脚注4を参照)。

6.2.9 生産順序のスケジュール時に十分な注意を必要とする要因生産スケジュール時には、次のような追加の重要な生産順序を考慮する必要がある。· 高度に着色された有効成分、例えばジニトロ化合物、あるいは着色された製剤は (一般に種子処理製剤)、しばしば、後続製品の着色基準を満たすために、生物学 的ベースで決定した洗浄レベルよりも十分に低い洗浄レベルを必要とする。· 水溶液製剤から有機溶剤製剤への切り替え、またはその逆の場合、前の製品の製 剤化に使用した溶媒の完全な除去が必要となる。この問題を解決するための1 つのオプションとして、水と有機溶剤の両方に混和性の溶剤を使用して設備を追 加洗浄することがある。この問題を避けるためは、EC 製剤後 に別のEC 製剤の製 造をスケジュールすることで、洗浄時間と溶剤の消費量を低減できる。· 一部のアゾール類殺菌剤は、米国 EPA PRN 96-8 に示す値以下の洗浄レベルで 種子処理殺菌剤および殺虫剤をコンタミネーションした場合に、種子に薬害ある いは発芽不良をもたらす(事歴3.2を参照)。

6.3 殺虫剤洗浄レベル 洗浄レベルの計算に関するこのセクションでは、他の製品をコンタミネーションする場合の殺虫剤の生態毒性学的リスクについて取り上げる。殺虫剤の洗浄レベルの目的は、次に製造される製品の作物への安全性、つまり植物の生長阻害の被害防止のためではなく、ハチのような、処理対象の作物を訪れる非標的生物の安全性を確保することである。米国環境保護庁(EPA)は、しきい値として 1000 ppm 未満を設定しているが、これは、製造設備に残る殺虫剤の有効成分の残留物が、 後続の製品内に現れる場合のしきい値である (米国 EPA 殺虫剤 (PR) 規制に関する通知 96-8 、付録 C を参照)。植物保護製品規制 1107/2009/EC においても、未確認の不純物に対して同じしきい値レベルが提案されている。

非作物状況においての節足動物を駆除する殺虫剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、土壌燻蒸剤、枯葉剤、乾燥剤については、殺虫剤有効成分を1000 ppm未満とするレベルの洗浄は、施用方法から考えて発生する悪影響はないものとして許容される。しかしながら、次に製造されるのが殺菌剤、殺ダニ剤(miticides)、他の殺虫剤、及び葉面散布として適用される植物生長調節剤の時に、殺虫剤有効成分の規定の洗

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浄レベルが1000 ppm未満という設定は、非標的生物へ予想外の副作用につながる結果を招くことがある(事歴3.4参照)。

6.3.1 葉面散布の適用における洗浄レベルの計算殺虫剤の場合、計算は ミツバチのLD50値に基づく。ミツバチ LD50(経口および接触) の値はすべての有効成分で通常利用可能である。これらのデータを使用する利点は、ミツバチはほとんどの殺虫剤に感受性が高いこと、データが安全性試験実施基準(GLP)により作成され、簡単に手に入り、高度に標準化されていることである (つまり OECD TG 213/214に準拠して作成)。もし急性経口と接触の両方の LD50 の値が利用可能である場合、洗浄レベルを計算するには最も低い値を使用することが推奨される。これにより、(接触および摂餌を経路として) 両方の暴露経路がカバーされる。

したがって、葉面散布施用での殺虫剤の計算は以下のようになる:

定義:LD50 = ミツバチの 50% の死亡率につながる殺虫剤の投与量で「μg AI/ミツバ チ」の単位で表される。HQ = ハザード比アプローチ(Hazard Quotient)から派生したHQ 基準値(trigger value)(Sanco, 2002)。 50 を使用するように推奨されているが、この値はミ ツバチでの事故の予防に使用されている検証された値である (EPPO エネ ルギー省 2010年6, 2003年7)、(トンプソン他, 2009年8)106 = 変換係数。 SF = 安全係数(既定値は 1 ).    追加的な安全係数、例えばIPM (総合害虫管理) 使用の場合、は洗浄レベルの 計算に責任をもつ個々の会社の判断によるものである。例えば、SF の値 は、単一製剤に関して利用可能な非標的節足動物 (NTA) データに基づくこ とができる。AR = 後続製品の最大の単一散布量を次の単位で表したものMAF = 多回施用係数(既定値は 1 )。葉面散布の半減期、散布回数、散布の間隔に 応じて、値は増加する(Candolfi他による、20019 )。

洗浄レベル [ppm] =106 x LD50 x HQ

SF x AR x MAF

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典型的な洗浄レベルの例は表4に示されている。

表 4: MAFとSFのデフォルト値を用いて、上記の式に従って計算した洗浄レベルの例(PPM)。もし計算値が1000ppmと同等かそれ以上の値の場合は、デフォルトの法的基準値1000ppm未満の値が挿入される。

6 EPPO(2010)植物保護剤の環境リスク評価スキーム(Environmental risk assessment scheme for plant protection products)。第11章:Honeybees.EPPO紀要40、323-331。

7 OEPP / EPPO(2003)EPPO規格 - 植物保護製品の環境リスク評価スキーム(Environmental risk assess-ment scheme for plant protection products) - PP 3/10(2)第10章: Honeybees.紀要 OEPP / EPPO紀要 33(1):141-145.

8 Thompson HM and Thorbahn D (2009) 欧州におけるミツバチの中毒事件の検討 - リスク評価の暴露マージンアプローチの評価(Review of honeybee poisoning incidents in Europe – evaluation of the hazard quotient approach for risk assessment)。 Julius-Kühn-Archiv 423, 160 p.

9 Candolfi MR, Barrett KL,Cambell P, Forster R, Grandy N, Huet MC, Lewis G, Oomen PA, Schmuck R and Vogt H (2001) 非標的節足動物と植物保護製品に対する規制試験とリスク評価手順に関するガイダンス文書(Guidance document on regulatory testing and risk assessment procedures for plant protection products with non-target arthropods)。 Report of the SETAC/ESCORT2 Workshop.Wageningen, the Netherlands, SETAC Europe, Brussels, Belgium.

殺虫剤の後続の製品が、総合的害虫管理(IPM)で使用される場合に、つまり生産者が害虫駆除のための寄生性節足動物や捕食性節足動物を使用することがある場合に、特別な注意が払われるべきである。

寄生性節足動物や捕食節足動物の殺虫剤の毒性に対するデータは、ミツバチに関するほど容易には入手できず、有効成分でのデータは手に入らず、標準化されていない。そのため、ミツバチのための毒性データを使用することがより現実的である。

ある殺虫剤のミツバチのLD50 が「0.1 μg AI/bee以上」の場合、洗浄レベルを算出するためにミツバチ毒性データを使用することが適切か否かは、例えば利用可能な単一製剤でのNTAデータによりチェックする必要がある。同様に、OECD TG 213/214に準拠した急性ミツバチ試験で毒性を示していない昆虫成長制御物質

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(IGR)の場合、NTAデータをチェックする必要がある。別の例は殺ダニ剤であるが、多くの場合、ミツバチに対しては低毒性であるがダニに対しては毒性をもつ。捕食性ダニが、後続作物にIPM種として使用されている場合は、洗浄レベルは、これらの種に影響を与えないレベルで設定する必要がある。

6.3.2 種子処理の施用における洗浄レベルの計算... 場合によっては、後続製品が種子処理製品として使用される場合、1000ppm未満(カテゴリー1)という米国 ECA PRN 96-8デフォルト値を使用する代わりに、殺虫剤のための洗浄レベルを算出することが好ましい場合がある。これは、特に、殺虫剤有効成分が浸透性農薬である場合にいえる。 潜在的な浸透性農薬効果の指標としてlogKowを使用することができる。基準値となる3以下では、洗浄レベルを計算すべきである。 ARは、処理を施した種子の播種率および、100kgの種子をコーティングする(種子処理適用量loading application rate)に使用される製剤製品量(FP)に基づく。

kg seedsha

kg seedsha

g FP100 kg seeds

g FP100 kg seeds

x SLARAR = SWR

SWR = Seeding rate

SLAR = Seed loading application rate

播種率

(種子処理適用量)

したがって、種子処理製品における、殺虫剤製品の洗浄レベルを計算するには以下の方程式が考えられる。

種子処理製剤の洗浄レベルの式では、変換係数は 108 である。

種子処理は典型的には一回しか施用しないため、MAFはここでは省略されている。安全係数の値は、直前の殺虫剤の所有者によって提供された詳細情報に基づいて、後続製品の所有者によって決定されなければならない。SF値の大きさは、除草剤の洗浄レベルの計算に使用されるSF値よりもかなり高くなる。

108 x LD x HQSF x SWR x SLAR洗浄レベル [ppm]=

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6.4 殺菌剤洗浄レベルこのセクションでは、種子処理製品の潜在的なコンタミネーション物質としての殺菌剤の洗浄レベルの計算を扱う。

6.4.1 葉面散布施用における殺菌剤の洗浄レベルの計算... 葉面殺菌剤は、典型的には、しばしば異なる植物科に属する幅広い種の多数の作物に登録されている。これはまた、浸透性の葉面殺菌剤の場合にも当てはまり、登録薬量で施用された場合、葉面殺菌剤は高度に選択的であることを明示している。ほとんどの場合、米国EPA PRN 96-8のカテゴリー1にリストされている1000ppm未満でのデフォルト値を使用することが安全と考えらる。なぜなら、[茎葉]殺菌活性成分の残留不純物が繰り返し施用されても、後続製品の製品ラベルの記載に従って葉面散布として施用されるのであれば、通常、後続製品での薬害を起こさない。しかしながら、多くの殺菌剤(特にアゾール類殺菌剤)が植物生長調節活性を示すことが知られている。したがって、直前の殺菌剤がこの化学物質ファミリーに属している場合、洗浄レベルを決定する前に、通常殺菌剤と殺虫剤で処理されているおおくの作物における選択性を確認しておくことが推奨される。また、非標的作物上で、他の殺菌剤有効成分が、生長調節活性を示す場合があるかもしれない。 6.4.2 種子処理の施用における殺菌剤の洗浄レベルの計算種子処理(FS)として施用した場合も、アゾール系殺菌剤が、植物生長調節活性を示すことが知られている(事歴3.2を参照)。したがって、種子処理製品に先行する場合、これらの殺菌剤の洗浄レベルを定義することが慎重なアプローチとなろう。種子処理製品に先行する上記の殺菌剤は、50ppmでの洗浄レベルが推奨される。

6.5 「1g AI/kg」未満のAI濃度の後続製品の洗浄レベルベイト剤製品およびアマチュア市場向けの製品(例えば家庭・庭園向け製品)のAI含有量は、多くの場合1 g未満である。米EA PRN 96-8では、これらの製品は、個別に記載されていない。したがって理論的には、EPA PRN 96-8 TSLC値を、CL計算に使用できるが、これは残留不純物の含有量がAI含有用より高くなることがありえることを意味する。このような理由から、ARILが、AIの含有量の10分の1を超えないことが推奨される。この勧告は数多くのクロップライフ・インターナショナル(CLI)加盟企業によって実施されている。

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7.製造実務

この章の目的は、適切なコンタミネーション予防管理のために、考慮すべき製造実務のすべての重要事項を説明することである。サンプリングの詳細については第9.2章を参照。

7.1 施設への搬入物品の同定· 発注書と納品書を突き合わせて確認する。· 仕様に対して、検査成績書をチェックする。· 材料を製造ユニットにリリースする前に、搬入物質を同定、あるいは品質管理(例えば、化学的および物理的分析、目視検査)を実施する(事歴3.6を参照)。

7.2 切替製造とリリースに関する文書 · 製造ユニットが洗浄済みであり、その状態に対応する記録が存在することを、生 産開始に先立って確認する。· 製造ユニットの、個々の具体的な切替製造えの記録は、メーカー、クライアントお よび/または現地の法律によって規定された期間にわたって保管する必要があ る。記載された記録には、以下の事項を含んでいる必要があるが、これに限定さ れるものではない。 a. 直前の生産日および洗浄作業の日付。 b. 洗浄手順の各ステップの完了の確認(詳細は9.1.1を参照)(日付と作業員のイ ニシャル)。 c. 残留不純物の濃度が、承認された清浄レベル以下であることを明らかにする分 析的証拠(第6章を参照)。 d. 管理者のような独立した人物による清掃状態、目視検査およびサインオフを含 む洗浄記録の完全性のチェック。 e. 次の製品製造のために、洗浄済みの設備全体の使用を許可する正式な「リリー ス」認可の記述。

7.3 納入場所・製造に適切な材料搬入の確認· 搬入場所の分離。例えば、除草剤活性物質及び原材料は、殺菌剤の有効成分と原 料から分離されて保管されていなくてはならない。· 倉庫担当者が、材料の搬出にあたって、材料の名前とバッチ番号を確認する(事 歴3.12を参照)。 · 製造要員は、製造場所で倉庫から受け取った材料の製品名と、最終製品のバッチ カードの名前を比較して確認する。· これらの作業実行者の署名が必要になる。· バーコードの適用(使用されている場合)。

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7.4 共有する携帯/互換機器複数の活性成分を取り扱う施設では、ポンプ、モーター、フレキシブルホース、フィルター、ツールなどといった携帯機器をすべての場所で使用する必要性が出てくる。これらの携帯機器は、ひとつの区域から別の区域に移動する際に、コンタミネーションが発生しないように慎重に管理する必要がある。共用設備の使用についいて手順文書を作成する必要がある。

除草剤と接触した携帯機器を非除草剤領域内で使用することは、洗浄結果の確認がない限り許可されない。(事歴3.7を参照)

7.4.1 有効成分との直接的接触 携帯機器が有効成分を含む材料と接触する前に、この機器が適切に洗浄されていることを検証する必要がある。清潔であることの検証は、使用前に行わなければならない。

有効成分と直接接触した携帯機器は、コンタミネーションされた化学設備として扱われ、施設洗浄手続きにしたがって洗浄しなければならない。

透過性、多孔性あるいは洗浄の困難な携帯機器は、特定の有効成分専用でなくてはならない(例えば濾過布、ゴムホース、シールなど)。

7.4.2 有効成分との直接的でない接触 通常の使用において、有効成分と接触しない携帯機器(例えば、機械的なガード、電気モーター)は、異なった有効成分が使用/製造される施設間で移動することができる。このような設備機器は清潔で、視覚的に化学残留物やゴミが存在しないことを確認するためにチェックしなければならない。このような装置が除草剤施設から非除草剤施設に移動する場合は、機器共有のリスク評価を実施し、有効成分との接触がないようにするための手順を実施する必要がある。 7.4.3 ツール複数の有効成分を生産する施設間でのツールの共有は(例えば、ブラシ、レンチ、ドリル、ナイフ、サンプリング器具)許可されているが、それらの器具が清潔で、残留物や物質が存在しないことを確認するために視覚的に検査する必要がある。ツールは、使用後はできるだけ早く、徹底的に洗浄しなければならない。固体製品の生産ユニットでは、掃除機は各ユニット専用にする必要がある。

7.5 可動式詰め替え容器 詰め替え容器 (例えば、軌道車両、コンテナー、タンクローリー、IBC など) を使用、再使用、あるいはそれらが複数の製品に使用される場合に、潜在的にクロスコンタミ

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ネーションのリスクがある。原則としてこれらのタイプのコンテナーは、製品と直接的に接触する化学容器と同じように扱う必要がある。

7.5.1 専用詰め替え容器 少なくとも以下の事項を記載した、コンテナー管理システムの文書化が必要である。· 容器の状態、内容物、場所を追跡できるプロセスと、以下を含む履歴: a. 一意の識別子 (シリアル番号など)。 b. 適正なラベル。· 戻ってきた詰め替え容器を使用する前にチェックするための、製造施設での検査 手順の実施。最低限として、戻ってきた容器内に「残留物質」がないことを確認す るために容器を開いて確認することが必要である。· 詰め替えの作業の間で洗浄を必要としない専用コンテナーが、逆流を防止するよ うな仕方で(すなわち一方向弁、逆流止め吸い上げメカニズム、トップローディン グなど) 移送が行われ、開放中にクロスコンタミネーションが発生しないようにす る。

7.5.2 非専用詰め替え容器 少なくとも以下の事項を記載した、コンテナー管理システムの文書化が必要である。· 容器の状態、内容物、場所を追跡できるプロセスと、以下を含む履歴: a. 一意の識別子 (シリアル番号など)。 b. 適正なラベル。 c. 直前の製品名 d. 洗浄日· 他の農薬製品用に詰め替え容器として使用した容器は、十分な検証された洗浄 なくして絶対に使用してはならない。製造施設内で行われる詰め替え容器の洗浄 のために、文書による洗浄手順書が利用可能でなくてはならない。· 洗浄が外部業者に委託されている場合 (例えば、 ISOタンク・コンテナー洗浄ステ ーション)、コンテナーの清浄度が記述され、例えば洗浄証明書の発行により洗浄 業者により証明されている必要がある。このような施設は、業界標準である監査プ ログラム (例えばNTTC、SQAS など) またはそれと同等の監査プログラムに合格し なければならない。· 戻ってきた洗浄済みの詰め替え容器を使用前にチェックするための、製造施設で の検査手順の実施。戻ってきた容器内に「残留物質」がないことを確認するため に容器を開いて確認することが最低限必要である。· 直前に除草剤用に使用した容器は、清浄度の厳格な検証が確認されない限り、非 除草剤用に使用してはならない。· 空の詰め替え容器を識別し、その履歴をチェックするために求められるベストプ ラクティスは、以下の情報確認である: a. 洗浄の状態 (洗浄済/未洗浄)

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b. 最終の清浄の日付 c. 最初に詰め替え容器が使用された日付と詰め替え回数。

7.5.3 詰め替え容器のラベリングすべての詰め替え容器には適性なラベルが貼付されている必要がある。法的要件に加えて、ラベルには最低条件として以下の内容を含める必要がある。· 原材料名· 製品コード· バッチ番号· 製造日· 量

7.6 保管材料の貯蔵にはリスクがあるとは考えられてはいないかもしれないが、混同によりコンタミネーションが発生しないように注意する必要がある。完成品の保管における通常の業界基準が適用されていれば、さまざまな製品の保管のために特別な要件は必要とされない。しかし原材料に関しては、いくつかの追加の手順を必要とする。 7.6.1 保管タンク 共通の不活性の原料ソースからの供給は、逆流による潜在的なクロスコンタミネーションのリスクが存在する。原料供給ラインを通じて、潜在的に、様々な機器を直接的に相互接続できる。このタイプの配管が存在する場合、設計上、プロセス容器から共通の原料ソースへの逆流と、同時に、ひとつのプロセス容器から別のプロセス容器へのクロス移送が回避されなくてはならない。配管は、複数のプロセス間において、少なくとも2つの分離された階層をもつ設計が必要である。配管設計の許容基準として次のような配管の内容を含めることができる。· 直列の複数の隔離弁。· 複数の閉止フランジ。· 分離バルブと閉止フランジ。· 配管内で物理的な中断を伴う隔離弁。

その上に、操作手順および/または機械的/ソフトウェア連動システムが装備されており、プロセスには同時に供給がなされないことが必要である。許容される確認方法として、以下の内容を含めることができる。· 複数の直列隔離弁のロック アウト/タグ アウト手順。· 複数の直列隔離弁の正しい位置に対する第2レベルのサインオフ(承認)· 複数の隔離弁の連動ソフトウェア

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7.6.2 化学原料貯蔵 除草剤および非除草剤の作業で使用される化学原料は次の要件のもとで、共通の倉庫に保管することができる。· パッケージされた材料の外側の洗浄度を確認する。· 除草剤と非除草剤の有効成分は、倉庫内で物理的に仕切って分離する必要があ る。· 非除草剤の不活性原料は、倉庫内で除草剤有効成分から物理的に分離する必要 がある。

· 倉庫内の分離は、明確にマーキングで示す。· すべての材料は内容を明記したラベルを貼付する。· 部分的に使用された材料は適切な保管場所の、防塵容器あるいはフィルム収縮 包装した容器に戻す必要がある。

完全に電子制御で管理された倉庫システムでは、必ずしもは要件 (2) と (3) は適用されない。

7.7 再加工、混合、再利用 以下の実践がコンタミネーションリスクを最小限に抑制する。· 設備あるいは加工エリア外から採集された材料は破棄し、例えば漏れた材料や掃 除機の内容物などを製造回路に戻してはならない。· 返品された製品は、再加工/リサイクルを行う前に、オリジナル シールに損傷のな いことをチェックする。シールに損傷などがある場合は、製品を破棄する。それ以 外の場合、詳細なリスク評価を実施する必要がある。· 製品のリリース サンプルは、工程内に戻して追加してはならず、破棄する。· 再加工用に保管されている有効成分を含む材料は、別の有効成分を含む他のパ ッケージ材料から分離し、隔離する必要がある。これらの異なる材料を同じパレッ ト上に保存してはならない。再加工にあたっては、有効成分を含む他の原料に対 するのと同等の管理が必要である。· 固体の加工(粉砕、ふるい等) から採集された微粉および/または過大・過小の粒 子は、 取り違えやコンタミネーション予防に関する通常の予防措置がとられてい れば、製造工程に戻すことができる。· 生産または抽出装置から外に出てきた粉塵は廃棄し、リサイクルしてはならな い。· すすぎ液は、その他の有効成分または原料ととして取り扱われ、混同が発生しな いように適切なチェックが実施されていることを条件に、リサイクル可能であ る。水性のすすぎ液は、微生物コンタミネーションの可能性を評価する必要があ る。詳細については、別の小冊子「水性農薬製剤での微生物増殖予防および制 御」(Prevention and Control of Microbial Growth in Water-based Crop Protection Formulations)を参照。

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· 規格外製品や前回の生産からの規定期間を過ぎたバッチの再加工は(混合を含 む)、文書による認可手続きなくしては認められない。外部製造業者での再加工 は、クライアントからの書面による承認なしでは行うことはできない(事歴3.15を 参照)。· 規格外製品はすべて、その旨を明確にマークする必要がある。· 使用済洗浄媒体のリサイクルに関してはセクション 8.8を参照。

7.8 ラベリング 必要な最小要件はセクション7.5.3に記載されており、すべての包装品に適用される。仮のラベルは(正式な最終的ラベルが使用できない場合)、少なくとも製品名および/または製品コード、バッチ番号およびパッケージあたりの製品数が含まれている場合、許容される。 追加措置として、電子識別システム(例えば、バーコード、RFID)を適用することができる。混同を避けるために、ラベル管理を実施する必要がある(事歴3.13を参照)。

7.9 材料のトレーサビリティ 材料のトレーサビリティ(包装材を除く)は、充填および包装作業を含むすべての生産工程で実施する必要がある。各製造バッチの製造記録(バッチカード)は、以下の事項を記載する必要がある。· バッチ/ロット番号と数量を含む、構成成分。· 製造条件。· 製造されたバッチ/ロットのバッチ/ロット番号、その数量、日付、名前、および材料 の充填と検証担当作業員のイニシャル。

7.10 製造ユニット/設備の変更 製造ユニットの変更は、変更された機器の設計に起因するコンタミネーションリスクに影響を与える可能性がある。製造ユニットを修正/更新する必要がある場合、次のことを確認する。· 修正手順の管理は、コンタミネーション予防面も考慮してある。 · 設計上の修正は、製造ユニットの洗浄性を向上させる (例えば、小半径曲線を避 ける配管、表面が滑らかなパイプ、容器およびタンクの材料、容易な解体)付録 A も参照。· 修正が完了後に、洗浄手順を検証する。· 設備の初回使用前に、適切に洗浄されていることを確認する。

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7.11 自己評価 「自己評価」は、添付のアンケート 「コンタミネーション予防の自己評価チェックリスト」 (付録B)を使用して行うことが推奨される。 完全なチェックリストには、製造現場におけるすべての製造ユニットについて、コンタミネーション予防管理のベストプラクティスの水準に関する、最新の画像を提示している。これは、リスク評価と継続的改善のための第一ステップとして使用することができる。

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8.製造ユニットの洗浄

製造ユニットの洗浄は、効果的なコンタミネーション予防のために必須である。最適化された生産順序は、コンタミネーションのリスクを軽減し、廃棄物を削減する。洗浄手順は、作業のタイプ(合成、製剤、あるいは液体または固体のパッケージング)、生産ユニットの構成、特定の生産順序を考慮し、残留不純物の含有量が洗浄レベル以下であることを確認する。本章では、数々の推奨されるベストプラクティスについて検討する。

8.1 生産スケジュール6.2.8章に、生産順序の一例が示されている。以下の製造に関する留意点を考慮すべきである。· 「高活性」製品を、より好ましい製品の組合せの生産ユニットへ移動する。 · 専用ラインを使用する。 · 互換性のある作物に対して使用する「高活性」製品を、1つの生産ユニットに集中させる。

8.2 一般的洗浄方法一般的な洗浄方法について、表5で液体製品の合成・製剤・パッケージングに関して、また表6で固体製品の製剤およびパッケージングに関して記載する。洗浄方法は、常に検証し、文書化(7.2)しなければならない。文書化された洗浄手順は以下の内容を記載する必要がある。· 使用される洗浄媒体(例えば、有機溶媒、水、 洗剤、 漂白剤、 苛性ソーダ、ベントナ イト、カオリン、砂、シリカ、砂糖、タルク)。 · 製造ラインの個々の部品の洗浄される順序。 · 洗浄媒体の設備への追加、例えば回転スプレーヘッドあるいは高圧洗浄機の使 用によるもの。 · 適用される洗い流しの回数 (液体または固体)および、1回の洗い流しの洗浄媒体 の最低量。· 設備の(部分的)解体と、洗浄媒体を使用して部品の手動での洗浄(必要な場合)。 · 洗い流しサンプルのサンプリング位置の説明(7.2参照)。 · 内部表面を乾燥させる方法(必要な場合)。加熱あるいは、窒素または圧縮空気で 機器をパージする。 · 使用済の洗浄媒体の廃棄/リサイクル手順。

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8.3 目視検査目視検査は、洗浄ステップの有効性を評価するための、必要不可欠で、安く、迅速かつ効果的な方法である。残留物質の痕跡が機器上に観察できる場合、洗浄ステップを繰り返す必要がある。鏡や光ファイバカメラは、機器内のデッドスペースの検査、例えばフランジ内部、配管等の点検のための貴重なツールである。

図 4: 反応器内部の目視検査により、不要な物質が依然として残っており、従ってさらに洗浄が必要であることが観察される。

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1) 記載の洗浄レベルは、単なるガイダンスとして与えられている。達成可能な清浄レベルを評価するため に、洗浄方法を検証しなければならない(8.7を参照)。2) 100 ppm未満の洗浄レベルについては、複数の湿式洗浄サイクルを適用。N/A:非適用

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1) 記載の洗浄レベルは、単なるガイダンスとして与えられている。達成可能な清浄レベルを評価するため に、洗浄方法を検証しなければならない(8.7を参照)。2) いずれかの洗浄順序を適用することができる。順序の選択は、装置の設計、乾燥の能力、廃棄物処理など になどに依存する。N/A:非適用

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8.4 湿式洗浄 湿式洗浄は、典型的には液体製品の製造ラインに適用されるが、多くの場合、固体製品の製造ラインの洗浄にも使用されることがある。湿式洗浄は、すすぎ液の収集が困難あるいは不可能な設備の場合 (例えばタブレット成形機、流動層乾燥機) 適していない。

図 5: 混合機の内部を回転スプレーヘッドを使って湿式洗浄を行う前と、洗浄と乾燥後。

図 6: 反応容器とタンク洗浄の携帯式スプレー ヘッド。フリーフランジ上に取り付け、高圧水源に接続する。スプレー ヘッドはパイプの軸まわりに、垂直方向と水平方向に回転する。

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図 7: 小型の解体された機器部品の機械式、手動による洗浄(ブラッシング)の作業場所。

図 8: お湯による高圧洗浄機による反応器の洗浄。パイプ洗浄ノズルは前方に噴霧 (1 回) と後方に噴霧 (3 回)し、垂直方向でもパイプ内においてフレキシブル ホースを進行方向に引っ張る。高温高圧水の飛散から身を保護するためにオペレーターは個人保護具を使用する。

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図 9: 部分的に解体したパッケージング機から、粉じんを制御するためのHEPAフィルターを備えた特殊産業用真空掃除機を使って顆粒を清掃。

8.5 固体、不活性成分による乾式洗浄固体の洗い流し物質は、有効成分なしの不活性物質からなり、純粋なキャリアあるいはキャリアと界面活性剤の組み合わせから構成される。固体の洗い流しは、先行および後続製品の成分組成を考慮した目的に適していなくてはならない。

固形堆積物(粉末・顆粒) は、装置の(部分的)解体後にブラシをかけ内部を掃除機で掃除することにより、製造ラインから除去される。

8.6 洗浄能力の実証 洗浄能力の実証は、文書化された洗浄手順に従って、必要な洗浄レベルを達成することにより行われる。これは 後続の製品内の直接的な分析においてではなく、洗浄剤(すすぎ液/洗い流しの物質) 内の残留不純物 (RI) の分析を行う場合により重要である (9.1 を参照)。清掃能力を実証するには、次のような内容を考慮する必要がある。· 洗浄に影響を与える以下のような重要なパラメーターを定義する。 a. 機器の設計、デッド スポット b. 物理化学的性質 (例えば製品の洗浄媒体中への溶解) c. 作業条件 (例えば滞留時間、温度、攪拌、質量/体積流量)。 · 低洗浄レベルを必要とする、および/あるいは洗浄が困難な製品についての (つま り、粘着性有効成分、粘着性の製剤、強い着色 AI や染料などを含む製品など)、製 品の切替製造(さまざまな製品の組合せで)を選択する。· プロセスの再現性を確保するために、洗浄手順を厳密に順守する。

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· 残留不純物に関して、いくつかの洗浄サイクルを分析する。これにより、最大の効 率で、要求された洗浄レベルを達成するための最適な洗浄サイクルを決定でき る。· 直前の製品の RI について実際の後続製品の分析を行い、その結果を使用済みの 洗浄媒体内に見られるRI 濃度と比較する。異なった切替製造において同じ洗浄 手順を適切な回数だけ繰り返し、再現性を立証する。· 重要なパラメーターに変更があった場合 (上記参照) 、洗浄能力を再評価する必 要がある。· 適切な数のサンプルについて統計的手法を用い、洗浄能力および有害な傾向を チェックする。

毎回、洗浄の結果がまさに予測通りの結果であるようにするには、リストのすべてのステップと条件を正確に順守する必要がある。つまり、これは設備構成が、洗浄手順に記載されているものと常に同一でなくてはならないことを意味する。

オペレーターが洗浄手順を厳密に順守するように、トレーニングを実施する。たとえば、洗浄媒体あるいはその濃度の変更、その分量を増減、すすぎサイクルの時間の増減、手動洗浄ステップの削除などを行うと、洗浄ステップは失敗する。

8.7 使用済洗浄媒体のリサイクル使用済洗浄媒体のリサイクルに関する決定は、リスク/利益評価のバランスの問題であり、以下の点を考慮する必要がある。

· 使用済洗浄媒体の保存における混同あるいは誤ったラベル貼りによるコンタミ ネーションリスク。· 保存された使用済洗浄媒体の劣化による品質リスク(化学的、細菌/真菌)。· 使用済洗浄媒体の再利用によって達成できる節約。· 廃棄物の削減による生態学的利点。

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9. 残留不純物の分析

製造された製品は、残留不純物の濃度が、生物学、毒性学、生態学的に望ましくない影響または規制上の問題が発生する可能性があるレベルに達していないことを確認してからでなければリリースしてはならない。これは、各切替製造に要求される規定の洗浄レベルのほかに、実証された試料採取方法、分析方法、分析を必要とする。

本章で取り上げる試料採取および分析手順の実施は、製品が社内で製造されていようと、外部製造業者(EM) によるものであろうと、同様に重要である。

社外委託の場合、製品所有者の責任において、洗浄レベル、分析方法、最適な分析機器の提案を行わなくてはならない。外部製造業者(EM)と後続製品のクライアントが協力しあって、特定の施設における微量分析と試料採取システムを設計する必要がある。

9.1 製品と洗浄水内における残留不純物分析 洗浄レベルは、後続製品中における直前の製品の有効成分の残留濃度として定義され、洗い流し液の中における濃度ではない。したがって、RI は後続の製品内で分析が行われるが、洗い流し液中で分析することもあり得る。洗い流し液中の残留不純物の決定は、たとえ規定値以下という結果であったとしても、後続製品中の残留不純物が規定値以下であることを常に保証するとは限らないことを強調しておく。

9.2 試料採取 各施設は、すべての設備が洗浄後にRIL (残留不純物レベル) 以下であることが確実になるように、工程内の適切なポイントで試料が間違いなく採取されるような、文書化されたサンプリング手順を持っていなくてはならない。サンプルポイントの例は次のとおりである。· 包装開始前の製剤あるいは合成容器から採取する製品。· 後続製品のRI レベルを分析する場合には、ライン上の最初の/初期のいくつかの パッケージングされたボトル。· 洗浄媒体で設備を洗い流した後の最後のすすぎ液。 サンプリング ボトルは再使用ではないことが望まれる (事歴3.11を参照)。どのサンプルを保持すべきか、その期間、保管条件を決定する。洗浄媒体のサンプルは必須ではない。完成製品および洗浄媒体については、生データを含む分析記録を保持しなくてはならない。

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9.3 残留不純物の分析法の開発 後続製品および/または最後の水洗液における RI を決定する分析方法を開発する必要がある。また、分析ラボ自体でコンタミネーションが発生する可能性があることを考慮すべきである。したがって適切なシステムを構築する必要がある。例えば、常に清潔なガラス器具を使用し、可能な場合は使い捨てのバイアル、試験管、ピペット チップ使用する。分析機器の適切な洗浄が必須となる。順守を怠ると、偽陽性につながる (事歴 3.10 参照)。

RI 分析のための技術を一例として挙げる。

· 水ベースの水洗材料を分析する場合、可能な分析方法の1つは、TOC (全有機 炭素) の決定である。洗浄レベル 50 ppm 以上は、通常、標準の分析技術 (GC- FID、 HPLC 、UPLC) により分析できる。· 50 ppm 未満の RILの分析には、より高感度な特別な分析技術、HPLC-MS、GC-MS, GC-ECD を必要とする。

すべての分析手法はバリデートされる必要がある。バリデーションには、関連する以下の点を考慮する必要がある。· 方法の特異性 - AI の信号を他の成分から分離する能力。· 回収-正確にAI の量を定量できる能力 (例えば、添加回収) 。· 再現性-複数回、異なる分量、異なる分析者が同じサンプルを分析した場合に、同 じ結果が得られるという能力。· 直線性-幅広い含量範囲にわたって、成分を確実に定量化できるる能力。

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10. 用語集AI Active Ingredient/有効成分ACL Acceptable Concentration Level/許容濃度 レベル。 洗浄レベルと同義語。Acaricide/ダニ駆除剤 ダニを駆除するために使用されるすべての 製品(ダニ駆除剤 「殺ダニ剤」とも呼ばれる)。Analytical capability/分析能力 利用できる分析機器、方法、 およびノウハウ の組み合わせ。一連の残留不純物の分析に よって実証される。ARIL Acceptable Residual Impurity Level/許容残 留不純物レベル。洗浄レベルと同義語。Batch Record バッチ記録/ バッチの履歴を提供する文書Batch Card バッチカード 使用される原材料と分量から、/Log Sheetログシート 製造工程およびインプロセスおよび最終検 査までを記録。バッチ記録は、オペレーター を識別する必要がある。Beads/ビーズ ビーズミル(湿式微粒化装置)に用いられる ガラスまたは酸化ジルコニウムのビーズ(ボ ールミル)。Changeover/切替製造  ひとつの製品から別の製品に、製造ラインや 設備を替えるプロセス。Certificate of Analysis/検査成績書 バッチの分析結果レポート。 Chemical Raw Materials/化学原材料 AI以外の製剤に含まれるすべての化学物質。 Clean-in-place(CIP)/定置洗浄(CIP) 分解することなし生産ユニットを洗浄する 技術で、例えば内蔵スプレーノズルなど。Cleaning capability/洗浄能力 手順、ノウハウ、適切な分析機器の組み合わ せにより、確実に所定の洗浄レベルを達成す る能力。Cleaning level (CL)/洗浄レベル(CL) それ未満であれば、後続の製品に有害な、生 物学的な毒性学的または生態学的影響や規 制の問題は発生しない有効成分あるいはそ の他の成分の濃度(ppm単位)を示す。 同じ意味を持つ様々な略語が使用されてい る(「ガイドライン」を参照)。

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Cleaning matrix/ 切替製造時に必要な洗浄レベルを示す表 クリーニング マトリックス (ppm単位)。行と列のヘッダー部分に、生産 ユニットの潜在的な製品で、直前(例えば行), そして後続(例えば列)として考えられるもの を示し、セル内には洗浄レベルが示されてい る。Cleaning methodology/ 生産ユニットの洗浄方法の組み合わせが示 クリーニング方法 されており、単一の洗浄ステップとして、水と 洗剤を上からかけてすべての部品をすすぐ、 分解と手動での洗浄、ポンプや粉砕ビーズの ような専用部品の交換、目視検査といった内 容を含んでいる。Cleaning procedure/洗浄方法 必要な洗浄レベルおよび分析検査に対応す るクリーニング方法、生産ユニットの放出の 組織および全ステップの文 書を含む。Client/クライアント 外部製造業者と製品の製造契約を結んでい る会社Configuration of a production 構成には、生産ユニットのどの部分が所定の unit/生産ユニットの構成 製品工程に使用されるかを特定されている。Contamination in a product/ 製品仕様に定義されていない望ましくない製品のコンタミネーション 成分の混入があり、その混入のレベルでは 安全性および/または有効性を損なわれる か、あるいは規制要件を満たさないもの(「ガ イドライン」を参照)。Contamination Prevention それが組織的であれ技術的あれ、/コンタミネーション予防 コンタミネーション事故の発生を防止する措 置。Contamination risk assessment/ コンタミネーションリスクに関与する可能性コンタミネーションリスク評価 を持つ任意の要因の評価。CropLife International/ 農薬会社の世界的な連合組織、および各地 クロップライフ・インターナショナル(CLI) 域の業界団体。Cross Contamination/ 「製品のコンタミネーション」を参照。クロスコンタミネーションDead space/デッドスペース 生産ユニット内部の空間で、 材料(製品および/または洗浄媒体)の正常 な流れを受けず製品を保持している可能性 がある空間で、設計/構築時に避けるべきで ある。

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Desiccant/乾燥剤 人工的に植物の組織の乾燥を促進するため のすべての製品例えばジャガイモの収穫前)。Design/設計 様々な部分、設備および生産ユニットの繋が りの配置。Documentation/文書 文書化された情報で、手順、洗浄、 記録、バッチカード、分析結果、保持サンプル 等に関する内容。文書を資料として保管する 必要がある期間についてガイドラインがあ る。Dry formulation/乾燥製剤 固形製剤(solid formulation)と同義語。 EC /乳剤 (溶剤ベースの製剤タイプ)。ED10 (effective dose10%有効量) AIの投与量で、一定の試験期間後に10%の 生物学的効果を引き起こすのに必要な量。 例えば、適用後3週間で植物の茎が10%の短 縮した場合。EPA 米国の環境保護庁(Environmental Protecti on Agency)。External Manufacturer/ 契約に基づき、農薬企業向けの製品を製造 外部製造業者 する会社。 クライアントは、登録所有者であ る。委託製造業者、請負業者、委託製造(toll manufacturer)、委託製造会社(Toller)と同 義。Extrusion/押し出し成形 造粒プロセス。乾燥工程に続き、小径孔 を有するスクリーンを通して湿潤製剤を押し 出すことによって形成される。Flexi hose/フレキシホース 固定された配管が存在しない場合に材料移 送に使用するフレキシブルホースで、コンタ ミネーションの防止に特別な注意が必要で ある。Flowable/フロアブル 製剤の種類、SCと同義語。 Fluidized bed/流動床粒剤 製剤および/または乾燥のための方法Formulation/製剤 活性成分および「不活性」 化学物質(添加剤) の調剤であり、活性成分の作用に必要であ る。Formulation unit/製剤ユニット 製剤の生産ユニット。

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FS 種子処理のために使用されるフロアブル(流 動性の)製剤。 Fungicide/殺菌剤 病原性真菌を規制するために使用される製 品(植物病害の規制)。Granulation/造粒 液体から顆粒を形成する工程。 種々の技術が利用されるが、例えば、押出造 粒、流動層造粒などがある。HEPA 高効率微粒子エアフィルター (High Efficiency Particulate Air filter)。 一般 的な用語としては、 浮遊粒子のための高効率フィルター、 0.3ミ クロン以上(ミクロン、マイクロメートル)。 粒 子数に基づくHEPAフィルターの効率は99.97 %である。Herbicide/除草剤 植物(特に雑草)を破壊するために使用され るすべての製品、またはその成長をコントロ ールするもの。Highly active herbicide/高活性除草剤 一般的に50g AI/ha未満の適用率で、例えば スルホニル尿素、イミダゾリノン、トリアゾロ ピリミジン・スルホンアニリド。これは完全な リストではなく、このカテゴリーに入る他の 除草剤が数々ある。IBC 中容量コンテナIntermediate Bulk Container: 可動コンテナで液体または固体に使用 し、600リットルから1000リットルの間の 容量。Totesとも呼ばれる。乾燥して流動性の ある製品の保管や輸送に使用されるInter- mediate Bulk ContainerはFIBC(Flexible IBC)、バルクバック、ビックバック、Super Sack と呼ばれる。Information Exchange / 情報交換 クロスコンタミネーション関連情報の交換 ( 例えば薬害、NOEL、分析方法等) で、クロップ ライフ・インターナショナル(CLI)加盟企業お よび/または外部製造業者および/またはサ プライヤーとの間で交換される。Insecticide/殺虫剤 潜在的に有害な害虫を殺すために使用され るすべての製品

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総合的害虫管理(Integrated 統合害虫駆除管理システムで、殺虫剤および Pest Management - IPM) 生物学的制御システムを使用する。人の健康 と環境へのリスクを低減または最小限に抑 制することを目指している。IPMは、農業生態 系への最小限に抑制される弊害と、健全な作 物の成長を助長する自然な有害生物防除機 システムを奨励する。 ISOタンクコンテナー、ISOタンク 液体搬送用のISO標準コンテナーで、 5m3から25m3 の容量のタイプがあり、道路、 鉄道や船で輸送することができる。 Letter of Access(情報参照権 LoA) サプライヤー第三者にが提供するドキュメン トで、サプライヤの有効成分による製品の共 同マーケティングに使用する。第三者による 登録申請に必要となる。 LD50/LC50 (半数致死量、 試験ガイドラインに従って特定の時間後に、 半数致死濃度) 試験集団の50%を死滅させるのに必要な分 量。Limit of detection/検出限界 分析的に間違いなく検出することができる最 低の残留不純物濃度で、 その信号の検出は、残留不純物によるもので あり、機器のノイズなど他の原因ではない検 出である。Limit of quantification/定量限界 許容可能な精度で、再現性を決定することが できる最低の残留不純物濃度。Low application rate herbicide/ EPA分類:薬量 0.5lb. AI/acre未満で、560 g 低薬量の除草剤 AI/ha未満に相当する。Manufacturing製造 製造作業のすべてのステップを含み、合成、 および/または製剤、および/または 包装(充填、ラベル貼りなど)、および/または 再包装など。Manufacturing site/製造工場 同じ建物または別の建物内に、複数の生産 ユニットから構成される場合もある。MSCSG Manufacturing & Supply クロップライフ・インターナショナル(CLI)運 Chain Steering Group/製造&サプ 営委員会の以前の名称。ライチェーン運営グループ、Nematicide/殺線虫剤 植物に寄生する線虫類(線虫)を制御するた めに使用されるすべての製品

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Nitrification inhibitor/硝化抑制剤 アンモニウム化合物の、亜硝酸塩及び硝酸 塩への酸化の化学的阻害剤。

NOEL No Observable Effect ヘクタールあたりの有効成分の最大薬量(g) Level/最大無作用量。 で、試験された種に対して影響が観察されな かった量。 Non-Crop pest control 非農業昆虫、および他の無脊椎動物、雑草や 非作物害虫駆除 菌類の駆除・抑制で、工業地域、鉄道、住宅 地、スポーツ余暇エリア、および建築材料(木 材処理)などに関係する。Operations Committee/運営委員会 クロップライフ・インターナショナル(CLI)運 営委員会は、業界に影響を与える製造および サプライチェーンの課題を取り扱う。 Packaging /repackaging/ この冊子では、「パッケージ」と「再パッケー 包装/再包装 ジ」(包装/再包装)は同じ意味に使用されて いる。いずれも製品を封入し、保管、流通、販 売および最終用途のために製品を保護する プロセスである。Packaging unit/包装ユニット 製剤の包装ユニット。 農薬規制 (PR) に関する通告 96-8 1996年10 月31日に発行された米国EPAの文書。 米国で販売または製造されている製品製造 時の製品変更に関する法定洗浄レベルを指 定する。例えば、殺虫剤から植物成長調節剤 への変更など。Pheromone/フェロモン 昆虫のような動物により外部分泌される生 化学物質で、同種の他の動物の行動に影響 を与える。これらの物質は、非常に低用量で 効果が大きい。Phytotoxicity/薬害 植物へのすべての予定外または意図的な損 害。 例えばトータルキル、枯葉、白化、発育不 全、発芽欠如、発芽遅延など。Preceding /succeeding client/ 後続のクライアントと同じ生産ユニットでこ 直前/後続クライアント れらのクライアントの製品が前後で生産され る。(合成、製剤、包装、再包装にも同様に適 用される)。Product/製品 中間体、活性成分、技術的濃縮、活性成分の プレミックス、製剤製品(バルク、または仮の あるいは最終的販売用包装)。

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Product scheduling/ 異なる製品の生産順序の計画。製品スケジュール 製品順序が異なると、洗浄レベルに大きな影 響を及ぼす。Production record/生産記録 個々のバッチの生産データ(例えばバッチカ ード)。Raw materials/原材料 中間体および有効成分の合成および製剤製 造に使用される化学物質。中間体は原材料と して分類されないことに注意。Release limit/リリース限度 クリーニングレベルの同義語。 Release procedure/リリース手順 生産ユニットで製品または切替製造後、後 続製品を開始前に順守しなくてはいけない 手順。Residual impurity (RI)/ 同じ生産ユニットで製造された後続製品中 残留不純物(RI) に存在する直前の製品の、特に、活性成分( 複数可)の残留物。Retain sample/保管サンプル 後の品質検査のために保存しておく生産バ ッチのサンプル。Rework/リワーク 必要な仕様を満たすまで、製品を化学的又 は物理的に加工しなおすこと。RI 残留不純物(residual impurity)の略語。 直前に処理した製品の有効成分の残留を意 味する。RIL 残留不純物レベル(Residual impurity level) 、洗浄レベルと同義語。Rinsate/すすぎ液 使用済みの液体洗浄媒体 (水 + 洗剤)、 または、生産ユニットから残留製品を洗浄す るのに使用した溶剤。

Rodenticide/殺鼠剤 ラットやマウスなど齧歯類から保護する製 品。Safener/セーフナー 農薬に追加される化学成分で、 農薬の特定の作物に対する、植物生育阻害 の効果を削除または緩和する。典型的な例と しては、作物に安全をもたらすために、除草 剤として穀物やトウモロコシに散布される製 剤に使用される。

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Safety data sheet/安全データ シート 化学物質安全データ シート (MSDS): 作業者の保護および暴露のための処理を保 証するために政府が要求するデータ。Safety factor/安全係数 この係数は洗浄レベルの計算時に安全マー ジンを増強するために使用する。各会社は、 独自の安全率を設定する責任がある。除草剤 の安全率は通常 2 から 10 の間の範囲で設 定される。Sampling/サンプリング サンプリングは、認可された以下に記述され るプランに従う必要がある。どのような方法 で、何を、どの時点で、どのサンプルポイント から、その量は(サンプル サイズ)、保存の場 所方法、サンプル保持の期間が必要になる。SC (Suspension Concentrate)/ AIが、連続水性相に固体粒子として分散して (懸濁製剤) いる農薬錠剤。 しばしば「フロアブル」と呼 ばれる。SE (Suspo-emulsion)/SE 固体粒子および細かい顆粒状のAIが水相に (サスポエマルション) 安定分散した不均一液体製剤。Seed Treatment/種子処理 虫や病気に対して種子を保護するための、殺 菌剤や殺虫剤による種子コーティングプロセ ス。発芽中の種子はすでに成長した植物に 比べて農薬に対してより敏感であるかもしれ ない。Separation of materials/材料の分離 原材料と製品、除草剤/非除草剤を分離して 保管する。Solid formulation/固形製剤 乾燥製剤全体の名称。通常固形製剤中のAI は、高融点を持ち、指定された粒径に粉砕さ れている。例: 水和剤粉末、顆粒剤、粉剤。Solid Flush Material/ 固体の不活性物質で、残留物質を生産ユニ 固体の洗い流し物質 ットから除去するために使用する。例えばベ ントナイト、カオリン、砂、シリカ、砂糖、タルク など。Sulfonylureas/ 高活性除草剤。スルホニルウレア誘導体

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Supplier of AIs or A formulated サプライヤーの名前で登録されているAIお products/AIまたは よび/または製剤の販売会社で、販売先の会 製剤のサプライヤー 社は、その製品をそのまま製品として、あるい は自身のポートフォリオからの1つまたは複 数のAIを含む製剤として販売する。

Systemic/浸透性 有機体または身体システム全体に影響を及 ぼす化合物。例えば、昆虫の神経系に影響を 与える毒素など。Systemic Pesticides/浸透性農薬 このグループの殺虫剤は、植物の組織に吸 収されたあと、その植物のなかで、散布後に 成長した(あらたに成長した新芽など)他の 植物の組織に入り外部に対して保護をする 農薬である。TCAL トレース コンポーネント アクション レベル - 洗浄レベルと同義語。TSLC-毒性的許容濃度 米国 EPA が一般的に毒性的に有害であると (Toxicologically Significant 判断する交差汚染物質(クロスコンタミネー Levels of Contaminants) ションを起こす物質)レベル。 米国EPA PRN 98-8 (付録 C)参照。Temporary label/仮ラベル 最終的な製品レベルが使用される前に、梱 包された製品を識別するために使用する仮 のラベル。Toller, toll manufacturer/ 外部製造業者を参照。受託製造者 Used cleaning medium/ 「すすぎ液」;「固体の洗い流し物質」の総称。使用済洗浄媒体 Vacuum cleaner/掃除機 設備、床、壁から粉塵を除去するポータブル 機器。一部の掃除機は、こぼれた液体の回収 用に設計されている。WP (水和剤粉末) 水に分散し懸濁液として使用される粉末調 製剤。

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付録A - 機器の設計

設備設計は、生産ユニットの洗浄能力の容易性を決定する上で重要な役割を果たす。容易に洗浄できる装置への投資や潜在的なクロスコンタミネーションの危険を回避することは、洗浄サイクルを最適化し製造時間短縮に起因するコスト削減につながる。生産ユニットにおける重要部品についての知識があると、適切なリスク評価と洗浄手順を実施することができる。

A.1 改善された洗浄効率の機器の設計 コンタミネーション防止の要件は、新しい生産ユニットの設計または既存の生産ユニットの変更において、考慮すべき重要な内容を含んでいる。洗浄効率の向上のために、以下の設計上のアイデアを検討することが望まれる。· 潜在的なコンタミネーションのリスクを削減するために最先端技術を導入:クリ ーン・イン・プレイス (CIP) 技術、例えば、タンク、インライン分析装置内の回転スプ レーヘッドなど。· プロセス コントロール システムを備えたオンラインの洗浄手順の自動化の検討。· 洗浄タイプは設計において考慮されなくてはならない。湿式洗浄の場合、設備は 密閉系であり、機器の内部表面は製品が引っかからないように耐食性で滑らかで なくてはならない。一部のプラスチック部品 (パイプなどに使用) は、有効成分と溶 剤を吸収する可能性があり、正しく洗浄できない場合がある。非吸収性の材料の 使用が推奨される。· 設備内部の適切な目視点検を可能にし、洗浄機器への容易なアクセスのために、 設備の洗浄用のアクセスパネルを増やす。· 配管内の最も低いポイントにバルブを取り付け、排水を容易にする。· 生産ユニットの周囲に十分なスペースを設け、洗浄を容易にする論理的な分解 ポイントを設計する。迅速な分解と点検を可能にする、機器のクイック接続を検討 する。· 配管に傾斜を設けて最大限に排水できるようにする。配管の曲げ(特に、停滞の 起因となる小半径)は、できるだけ少なくする。U字型のパイプを避ける。· 設備の選択時に(反応器、バルブなど)、「ゼロデッドスペース」(容器内に直角の 隅、停滞領域がない)により、物質の捕捉のリスクを最小限にして容易な排出を可 能にする。 · 工程中にサンプリング装置を取り付け、洗浄後の分析とトラブルシューティングを 補助する。サンプリング装置の設計において常に容易な洗浄を心がける。· 「粉末製品」は、プレフィルター付きの閉鎖されたアンロード設備および包装設 備を考案する。 · 生産ユニット内に「洗浄ルーム / ワークステーション」(図7参照)を設けて、機器の 解体時の小さな部品洗浄に利用する。 · 生産エリアにおいて床に格子を使用することは推奨できない。流出した液は、穴 の開いていない床の方が保持しやすい。· 壁は洗浄可能で漏れ止め、あるいは端部で裂け目などがなくて密封されたものを 建てる。

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凡例:

モーター ファン ロータリーバルブ フィー

ダー

固体/液体

フィルター

ポンプ 集塵機/エアフィル

ター

シフターふるい

スクリーナー

M F

A.2 重要な洗浄部品の実用的な提案を含む、生産ユニット図認証された洗浄レベル以下に生産ユニットを清掃することが、適切なコンタミネーション防止のための重要な要因となる。この章では、製剤・包装ユニットの様々なタイプにおいて、重要で、洗浄の困難な部分に特に注意が払われる。コンタミネーション防止管理において中間体または活性成分の生産ユニットの効果的な洗浄が同様に重要であるが、合成プロセスは、製剤・包装ユニット以外の広範囲な機器構成に及ぶので、この図で提供されていない。合成ユニットにおける重要な区域は、遠心分離機、フィルター、乾燥機、および最終的な合成物(例えば、中間体または最終活性成分)が、バルク コンテナー、ドラム缶などに移送される設備である。

様々な製剤ユニットの図面は概略的であり、製造装置によって変化する。しかし、それぞれの製造ユニットには類似する重要な部分が存在し、これらの領域は赤い丸で囲まれている。特定の重要な部分が図の中に初めて表示された場合には、注意をするように拡大kyouが描かれており、関連するコメントが付けられている。この重要部分が異なった生産ユニット内で再び表示された場合、図中で強調されているが、同一のコメントは繰り返されない。

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A.2.1.1 SLとEC製剤

A.2.1 液体製剤

活性成分溶剤添加剤

排出

固体充填

完成品の充填ライン

最低点での排出

この装置の説明は次ページを参照)

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コメント:1. バルクタンクからのラインは、信頼できる逆流防止を備えており、またその定期点 検が必要である。溶剤や添加剤(例えば、界面活性剤)が、他の生産ユニットへも 供給するバルクタンクから来ている場合、特に重要になる。容器または充填ライ ンが、異なる有効成分、製剤または原料を含む複数のバルクタンクから供給され るように設計されている場合、使用されていないラインは、間違った材料が、手違 いや機械的な故障によって充填されないように、ブランクオフ、切断しておく必要 がある。2. 固体の充填部分では、2つの点を十分注意して管理する必要がある。 · 間違いのない固形成分のみをプロセスへ追加する。 · 塵埃の発生には特別な注意が必要となる。それは製造プロセスの間における のみならず (コンタミネーション防止と衛生工学)、後続製品への変更時にも注 意が必要となる。 これは物的管理に特別な注意を支払わなければならない区域 になる。· 収集された粉塵はどちらかといえば廃棄すべきである。収集塵のリサイクルを考 える場合、承認された手順を厳密に順守し、貯蔵中の収集塵との混同、および後 続製品内へのリサイクルを避ける必要がある。決して床や壁から収集された塵埃 をプロセス内にリサイクルしないこと!3. ディップ パイプは沈殿が形成され、製剤容器の他の部分よりもより長時間の洗浄 を必要とする。定置洗浄の行動規範に従っているときは、ディップ パイプの清浄 度を、理想的には目視検査でチェックする必要がある。4. ポンプは常に洗浄が困難で、理想的には切り離して洗浄することが望まれる。5. 後続製品の製剤を開始する前にフィルター バッグを交換することが必須である。

固体充填

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A.2.1.2 湿式(液体)粉砕、SC製剤

M

M

F

M M

M

M F

1

2

排出

処理すべきプレミル(粉砕)された製品

固体充填

スラリー調製

コロイドミル

固体投入

増粘剤調製

完成品

この装置の説明は次ページを参照)

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コメント:一つの製品の製造が終了した時点で、後続製品がどのような製品であるか決定されていない場合でも、洗浄を行うことが強く推奨される。フロアブル製剤の生産ユニットの場合すぐに洗浄することがさらに重要となる。有効成分、増粘剤等を含んだフロアブルの固体粒子の膜が、いったん乾燥すれば除去するのにさらに困難になるためである。この薄い膜がクリーニング時に完全に除去されていない場合、後続製品の中に溶解し、コンタミネーションの原因となる可能性がある (事歴 3.3 参照)。1. コロイド ミルは洗浄プロセスにおいてさらに注意が必要である。なぜなら、その ユニットに固有の設計およびその高せん断速度により、固体の膜が掃除しにくい 場所に蓄積するからである。機器を開いての洗浄及び清浄後の検査を行う必要 がある。2. ビーズミルで製造される各有効成分には、専用ビーズを使用することを推奨す る。製造以外の時は、ビーズを洗浄し、そのビーズが使用される有効成分の名前 を明確に記載したラベルを付けて保管する。

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A.2.1.3 液体製品の包装/再パッケージ/リフィル

完成品

ピストン フィーダ

充填ランス

スクラバー

圧力調整槽バレル ポンプ

この装置の説明は次ページを参照)

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コメント:この図は、液体製品(液体の有効成分または製剤)の充填に関するもので、バルク容器から(ドラム、バルクコンテナー、ISOタンク・コンテナー、IBC)、より小さいエンドユーザー パックへの包装を扱っている。バルク容器の材料が、エンドユーザー容器のラベルに対応していることの確認が不可欠である。これらのコメントは、ドラムまたは同様のパックへの液体成分の梱包の場合にも同様に適用される。1. 携帯または固定バレルポンプ、またバルク コンテナーを充填ユニットのヘッダー タンクへ接続するフレキシ ホースまたは固体配管の、洗浄履歴および洗浄達成 のレベルを知っておく必要がある。この機器を使用する前に、リリース手順が必 要となる。除草剤と非除草剤用専用のポンプそしてフレキシ ホースを区別して用 意する必要がある。ポンプは常に洗浄が困難で、理想的には切り離して洗浄する ことが望まれる。2. 充填ランスは充填後、製品残留物の乾燥を避けるために、その内側と外側をでき るだけ早く洗浄する必要がある。3. 一部のプラスチック部品は有効成分を吸収する可能性があるので正しく洗浄で きない。そのようなプラスチックを含む機器は特定の製品専用にすべきである。 非専用の部分は非吸収材料、例えばステンレス鋼から製造されている必要があ る。

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コメント:1. 容器への不適切なラベルは、作物への損傷および/またはユーザーへの安全上 のリスクを生み出す可能性がある。さらに、農薬取締法違反の対象となる可能性 がある。2. 外箱、またパレットの不適切なラベルによっても同様の問題を引き起こす可能性 がある。この種の事象は、製品のリコールにつながり、ケースおよび/またはコン テナーのラベル貼りをやり直す必要がある。 これらのコメントはもちろん、固形製剤の包装の場合にも適用される。

A.2.2 乾式(固体)製剤 A.2.2.1 乾式粉砕 - WP製剤 顆粒製剤 この装置の説明は次ページを参照)固形製剤の製造において一般的に発生する問題は、設備から発生する粉塵があちこちに拡散されることだ。物的管理は常にあらゆるタイプの農薬製品の製造において非常に重要であるが、固体の製品を製造する場合には、さらに重要となる。

A.2.1.4 製品のラベリング

Label Label

1

2

2,465 kg

充填機から シーリング ラベリング/コーディング

カートンにボトルを詰めラベル/コードを貼る

ャッピング

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コメント· 固体材料の「ケーキング」(固化)が起こ りやすいのは、壁の上 スクリューコン ベアの可動部、ロータリーバルブ(フィ ーダとミキサー)であり、それを回避す ることは困難である。なぜなら、それは しばしば使用される固形物の物理的特 性に関係しているからである。洗浄の 場合、最も効果的な方法は、スクリュー コンベア、ロータリーバルブ、ミキサー を(部分的に)分解した後、機械的にま ず固体堆積物を除去することだ。その 後、加圧水による洗浄を行う。· エアジェットミル(または機械的ミル)を 開いて、湿式洗浄で清掃する必要があ る。ふき取りテスト(綿棒テストも参照) は、設備の壁に付着した直前の製品の 有効成分の残留を検出するのに非常 に優れた方法である。場合によっては、 これらの残渣は目に見えないかもしれ ないが、高活性製品の場合には、後続 製品にコンタミネーションする可能性 がある。· フィルターと集塵装置内に収集された 「粉塵」は、「塊」を形成し、後続の製品 の中にリリースされてしまう可能性が あるので、これらの部分は徹底した洗 浄を必要とする。 製品に専用のフィル ターチューブ/バッグの使用が推奨され る。専用フィルターバッグの包装、ラベ リング、および保管の管理を十分に行 い、その後の製造に再利用しないよう に十分な注意が必要である。

M

1

3

2

M

M

添加物

ミキサー

スクリューコンベア

不活性ガス

排出

エアジェットミル+ 分類

完成品

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A.2.2.2 押出造粒

M

M

M

1

23

コメント:1. 押出機のスクリーンは取り外して槽の中で適切な洗剤を使って洗 浄する。その上に、特定の活性成分に専用のものとすることが望 ましい。押出機の他の部分も、スクリューコンベアなどと同様に、 洗浄において特別の注意が必要である。2. 乾燥機の設計がいかなるものであれ、生成物が壁にある程度付 着し、洗浄作業において特別な注意を必要とする。3. シフターのスクリーンを除去して手動での洗浄し、続いて目視検 査を行う必要がある。

完成品

エアー / N2

押出機

ミキサー

スクリューコンベア

液体結合剤

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M

M

M

1

2

3

コメント:1. 造粒ユニットでは、特にフィルターに固体材料の付着する傾向がある。切り換え 製造時に、本ユニットの解体および専用フィルターチューブの交換/使用が推奨 される。また、流動床乾燥機のように、空気入口プレートに特別な注意が必要と なる。2. バケットコンベアーは、洗浄が困難なのでまったく推奨できない。エレベーター は、洗浄の観点から非常に重要になるデッドスペースができる可能性が高い。後 続製品の製造開始前に、目視検査の必要があり、清浄度を確認するためにふき 取りテストが役立つ。3. ローラーミルは分解し、手動で洗浄後に、目視検査を行う必要がある。

A.2.2.3 流動層造粒

完成品

液体プレミックス供給口

排出

粉末プレミックス供給口

熱風 エレベーター

スクリューコンベア

ローラーミル

Page 87: 農薬製品の製造における コンタミネーション予防...農薬製品の製造における コンタミネーション予防 ガイドラインとベストプラクティス

87

M

M

1

2

A.2.2.4 噴霧乾燥 - 顆粒製剤

コメント:1. 噴霧乾燥プロセスの間に、固体材料の被膜が、噴霧 乾燥装置の壁上に形成される。洗浄は、このフィルム の機械的除去からまず開始する必要がある。2. 流動床乾燥機では、空気入口プレートが特別の洗浄 工程を必要とする。

完成品

ローラーミル

熱風

排出

熱風

噴霧乾燥機

流動床乾燥機

工程に戻す前に再調整

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88

M

2,465 kg

1

2

A.2.2.5 固体製品の補充/再パッケージ

完成品

重量コントロール

はかり

スクリューフィーダー

吸引装置

排出

この装置の説明は次ページを参照)

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コメント:同様の原則が充填や液体製品の再梱包に適用されるが、以下、言及すべきいくつかの相違点がある。1. ベストプラクティスとして、各充填ラインは、独自のフィルターおよび排気システ ムを使用する必要がある。排気システムが他の充填ラインまたは製剤ユニットと 共有されている場合は、使用されていないライン/ユニットは、ブランクオフ(固定 配管の場合)、あるいは切断(フレキシブル配管の場合)する必要がある。プレフィ ルター(可動機器にも適用)を、排気装置の例えば粉末ドラム充填などの高ダスト 負荷の場所に取り付け、発生源で集塵を行う。プレフィルターは、ライン/ユニット で低薬量除草剤を処理する場合、また、共有する排気システムを介して他のライ ン/ユニットに塵埃が潜在的に移動されコンタミネーションの危険がある場合大 変重要になる。2. 粉塵をリサイクルする場合、 a. それぞれの包装ライン専用のフィルターシステムを有することが必要 b. 各製品の切り替え時にフィルターバッグを交換ラベリングに関する要件は、 交換可能な部品の場合と同様である。フィルターバッグが後で再利用される場 合、適切な保管基準が適用される。

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付録B - チェックリスト/自己評価

この自己評価は、外部製造業者が、重要なコンタミネーション防止基準及びそのスタッフの能力により、その製造プロセスおよび技術的な装置の適合性を評価する場合に役立つ。説明的な内容を除いて、チェックリストに対する否定的な返答の場合、対応するアクションプラン、または改善が必要とされない理由を説明する必要がある。

このチェックリストは、クライアントの外部製造業者の監査における、コンタミネーション防止確認に使用することができる。

自己評価/外部製造業者の監査の頻度は、各クライアントおよび外部製造業者によって、個々に独自のコンタミネーション防止リスク評価に基づき、またコンタミネーション予防策に影響を与える事象がある場合その対応策に基づいて決定される必要がある。

以下の場合は、頻繁な監査を必要とする。· 多品種製造施設における製品ミックスに変更があった場合、あるいは新規の活 性成分が外部製造業者の製造品目に追加された場合。· コンタミネーション防止基準に適合しない問題が発生し、修正措置が取られた 後。

実績のある信頼性の高いコンタミネーション防止能力が実証されており、設備や製造品目に変更がない場合は、外部製造業者の施設の監査は低頻度でもよい。コンタミネーション防止自己評価の場合並びに外部製造業者の監査の両方においては、主任監査員は、外部の専門家であることが望まれる(例えば、同じ会社の別の工場のQCマネージャー、また は独立したコンタミネーション防止専門コンサルタント)。

目次1. 経営責任2. 情報交換3. 製造タイプ4. 製品グループの分離5. 製品の切り替え6. ドキュメンテーション7. 材料識別とトレーサビリティ8. 改善された洗浄効率の機器の設計9. コンタミネーション防止手法

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1. 経営責任 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案1.1基準 あなたの施設では、コンタミネー ション防止目的の基準/ガイドラ イン/ポリシーがあるか?

クロップライフ・インターナショ ナル(CLI)の「コンタミネーショ ン防止のためのガイドライン 」基準が実施されているか?

他の場合、説明が必要である。

1.2責任者 会社内に、コンタミネーション 防止プログラムの実施および 管理の責任者がいるか?

名前:

役職開始日:(日付)

1.3 トレ 定期的にコンタミネーション防止ーニング に関する意識向上の研修を提供 しているか?

既存の従業員に?

一時就業者を含む新入社員に?

職務は?

頻度は?

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1. 経営責任 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案1.3    正式なコンタミネーション防止ト レーニングモジュールがあるか? 研修記録は 保持されているか? • 正社員の場合のみ? · 正社員と臨時社員も? 記録保存の期間は?

1.4 意識向上 その他の意識向上に関する活 動を説明する。

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2. 情報交換 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案2.1 連絡窓口 クライアントに対する社内の情 報交換に関する相談窓口は誰か? 名前:

2.2 顧客 クライアントとの契約で、次のク情報の ライアントに対して直前の製品と守秘義 その有効成分の名前を開示する務 許可について合意しているか?

そうでない場合、既存の秘密保 持契約が存在するか:直前の製 品のクライアントは、その会社名 とコンタミネーション防止担当者 の名前を、後続のクライアントへ 開示することを許可しているか?

2.3有効成分 あなたはすべての有効成分のリ ストを生産ユニットごとにクライ アントに提供するか?

新しい有効成分が製造品目に追 加された場合、このリストの更 新をクライアントに提供するか?

「はい」の場合、その頻度は?

更新内容をすぐに報告するか

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2. 情報交換 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案2.4 あなたは設備の構成について、プラント 製品を初めて製造する場合にクラ構成 イアントに説明するか?

生産ユニットが異なる部分から 組み合わせることができる場合 は、これらの部品を最後に使用 した有効成分について、クライア ントに通知するか?

例:製剤容器を以前の製品に使 用したが、その装入ホッパーが 異なった活性成分を含有する製 品に使用される場合。

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3. 事業タイプと製品ミックス はい いいえ コメント/ アクションプランの提案3.1 製造施設は:製造タ ・ 合成?イプ 製剤は     ・ 固体?     ・ 液体?    パッケージは     ・ 固体?     ・ 液体?

3.2 製造施設は、以下のものを製造、製品ミ 製剤、包装しているか?ックス   農薬       ・ 低薬量除草剤(EPA定義: ≤ 560 g AI/ha)?    ・ 高活性除草剤 (≤ 50 g AI/ha)? ・ 通常薬量除草剤? ・ 植物成長調節剤? ・ 葉面または土壌用途の殺虫剤/ 殺菌剤? ・ 種子処理のための殺虫剤/ 殺菌剤?

・ 葉面用の殺虫剤用途?

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3. 事業タイプと製品ミックス はい いいえ コメント/ アクションプランの提案

3.2 ・ ネオニコチノイド系に属する 殺虫剤? ・ 殺鼠剤?

・ 非作物害虫駆除?

3.3農業以 製造施設は、以下の製品を製造、外の化 製剤、包装しますか:学製品ミックス ・ 食品や飼料(ビタミンを含む)。

・ 経口的に、局所的に、または注 射剤として投与される、ヒト用 の医薬品?

・ 経口的に、局所的に、または注 射剤として投与される、獣医医 薬品?

・ パーソナルケアおよび他のヘル スケア製品?

3.4 生産ユニットで処理するすべての 有効成分のリストを提出する。

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案3.2で記載の製品グループの複数を処理する製造サイトの場合、第4章のすべての質問に答える。

4.1 除草 生産ユニットは、以下のように、剤と殺 完全に区切られているか(蒸気、虫剤/ 窒素、圧縮空気ラインを除く) 。殺菌剤 ・ 別々の建物である? ・ 同じ建物にあるが、以下のよう に完全に仕切られている。 ・ 共有する換気システムまた はその他の潜在的なクロス フローはない ・ 補助装置(例えば、真空掃除 機、エアフィルター、ツール、 使用済スペアパーツ) は、 除草剤または除草剤以外の 製品に専用化され、それに 応じてマークされている? ・ オペレーターは、除草剤区域か ら殺虫剤/殺菌剤の区域へ移動 する場合に、履物・作業服を着 替える?

4.2高活性 生産ユニットは、他の製品グル除草剤 ープ(他の除草剤を含む)から、 以下のように、完全に区切られ ているか(蒸気、窒素、圧縮空気 ラインを除く) 。 ・ 別々の建物である?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.2 ・ 同じ建物にあるが、以下のよ うに完全に仕切られている。 ・ 共有する換気システムまた はその他の潜在的なクロス フローはない ・ 補助装置 (例えば、真空掃除機、エアフィ ルター、ツール、使用済スペア パーツ) は、高活性除草剤ま たは他の製品グループに専 用化され、それに応じてマー クされている? ・ オペレーター、保守作業員およ びビジターは、 高活性除草剤エリアから他のエ リアに移動するとき、靴(またはオ ーバーシューズ)、保護具、作業着/ 上着を替える必要がある? ・ フィルター処理なしのエアー が外部に漏れないように対策 を講じてあるか? つまり開か れた窓はなく、ドアはロックされ ているか? ・ 部屋は陰圧であり、それは定期 的に監視されているか?

4.3 PGRの製造は、以下の製品と共有植物成長調節 ・ 除草剤?剤(PGR) ・ 殺虫剤/ 殺菌剤?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.4 生産ユニットは、他の製品グルー殺鼠剤 プから、以下のように、完全に区と非作 切られているか(蒸気、窒素、物害虫 圧縮空気ラインを除く) 。駆除製 ・ 別々の建物である?品: ・ 同じ建物にあるが、完全に仕 切られている?

4.5 農薬 生産ユニットは、以下のように、・非農薬 完全に区切られているか(蒸気、(3.3 を 窒素、圧縮空気ラインを除く) 。参照) ・ 別々の建物である?

4.6不完全 完全に分離されていないとしな分離 た場合、除草剤と殺虫剤/殺菌 剤は、以下の機器の共有するか。 固定設備: ・ タンク集合地域内のバ ルクタンク: ・ 原材料用/ 中間体用? ・ 最終製品? ・ コンテナーのロード/ アンロ ード用のステーション? ・ マニホルド付きの移送ライン (パイプライン) ? ・ 共通の換気システム? ・ 移動式装置: ・ 中間体/製品用のコンテナー?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.6 ・ ポンプ? ・ フレキシブル ホース?フィル ター? ・ 装填装置、例えば、じょうご、 吸引パイプ? ・ 真空掃除機 ・ ツール、例えばシャベル、スプー ン、サンプリング装置? ・ その他?リストを提出。

4.7 固定設備

4.7.1 一方向弁または逆流防止対構成成 策が取られている?分用の共通バ これらの共通のバルクタンクは、ルク保 除草剤と殺虫剤/殺菌剤の構成管 (「タ 成分を同時に供給する? ンク集合地域」)

4.7.2 移送ラインをセットアップ時に、移送ライ どのように正しいコネクタを識別ンを接続 するのか?するマニ ホールド 

(該当の 製造中にマニホールドに接続?場合) 移送ラインとマニホールドでの コネクターの洗浄方法は? 記述すること。

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.8 移動式装置

4.8:1 すべて移動式装置は記載され ている(例えば、ポンプ、フレキシ ブル ホース、掃除機、工具キット、 詰め替え容器等)。 ・ 除草剤あるいは殺虫剤/殺菌剤 専用の生産ユニットである? または: ・ 特定の製品に割り当てられて おり、製造キャンペーンを通じ てラインから離れず、切り替え 部品と同じように洗浄される?

4.8:2 移動式装置の使用について、 手順がある?

4.8:3 この移動式装置は、専用であるこ とを示すラベル、あるいはカラー コードが適切につけられている?

装置の交換可能な部分のための、 ログブックまたはタグ付けシステ ムが存在する?

記録には次の事項を含む: ・ この装置で製造された最後 の製品 ・ 最後の使用日 ・ 装置が洗浄された日付は? ・ 使用されたクリーニング法は? ・ クリーニングステータスは?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.8.4 モバイル コンテナーは(例えば IBC、ISOタンク・コンテナー、ビッ グバッグ、道路/鉄道用タンクロー リー、廃棄物容器) 、製造キャンペ ーン全体で、1つの製品の製造 に割り当てられている?

それらは、専用、一時ストレージ として使用: ・ 不活性成分? ・ 材料を含む、有効成分 (プレミッ クス、梱包前の最終製品)? ・ 廃棄物 (例えばリサイクルす べき使用済みクリーニング媒体)

このようなコンテナーは、製造キャ ンペーン後、同一製品に専用と割 り当てられるか?

4.8:5 これらバルク容器は、製品の明確 な識別を可能にするラベルが貼 られているか? ・ ラベルの貼り付けは適切か? ・ これらのコンテナーは追跡可 能で履歴が明確であるか、例え ば最後の製品? ・ 洗浄ステータスは表示され ている?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.8:6 すべての種類のバルクコンテナー は社内で除染? ・ そうでない場合、例外をリスト する。 社内で除染の場合、認証済みの 洗浄手順は文書化されているか? バルクコンテナーの除染は外部 に委託? 「はい」の場合、 ・ 委託業者は、どのような洗浄基 準を順守しているのか? ・ バルクコンテナーの清浄度の 確認はどのようにして?

4.9   ドラム内 もしドラムを熱湯、あるいは熱の融解 風オーブンに入れて有効成分を製品 融解させる場合、あるいは界面活 性剤の粘度を下げる場合:

・ 例えばドラムの上部に永続的 な防水塗料で製品名を記載す るなど、ラベルが紛失/破壊に よりトレーサビリティの消滅を 防ぐ適切な対策が講じられて いるか?

・ 熱湯、または熱風オーブンは、 単一の製品のための製造に専 用化されているか? 例えば、そ の他の原料や有効成分が熱湯、 または熱風オーブンを同時に 使用しないか?

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4. 製品グループの分離 はい いいえ コメント/ アクションプランの提案4.10 除草剤と非除草剤の共通の原料 の取り扱い/倉庫での保管

4.10.1 溶剤、界面活性剤などのように、– 取り 除草剤と非除草剤などの両方に扱い 共通する原料はあるか?

共通材料のコンテナーが除草剤 エリアにおいて部分的に使用さ れた場合、非除草剤エリアに絶 対に運び込まれないか?

このようなコンテナーには「除草 剤のみに使用」のラベルが記載 され、除草剤成分エリアで保存さ れているか?

4.10.2 除草剤と非除草剤成分あるいは 材料は、その後の処理のために、 以下のような状態で分離されて 保存されているか。倉庫    ・ 分離された建物? ・ 個別の仕切られた区画または 同じ建物で、明瞭にマークされ た専用エリアで保管。つまり、 床や壁へのマーキングおよび/ または記号や色分けマーキン グがあるか?

・ 個別の保管ルームで視覚的な マーキング?

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.1 製品の切り替え管理および洗浄 レベル

5.1.1 次の製造キャンペーンに、サイ製品の ンオフをも含めて、洗浄された切り替 装置のリリース認証を与える責え管理 任者が割り当てられているか?

5.1 生産直後に、設備が洗浄されたこ洗浄レ とを確認するシステムが導入さベル れているか?   各ユニットの生産シーケンスに 対して使用可能な洗浄レベルが 最新のものであるか? (6.2.7 参照)

洗浄レベルには、生産ユニット で扱われているすべての有効成 分を含んでいるか?

共有される生産ユニットで、製品 ミックスまたは生産シーケンスが 変更されるたびに洗浄レベルが 更新されていることを確認する 手順はあるか? クライアントにすぐに通知するか?

クライアントは、必要な洗浄レベ ルを提供しているか?そうでない 場合は、洗浄レベルを決定する方 法は?

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.2:1 クライアントによって要求される 洗浄レベル以下の、残留不純物 の決定に利用可能な分析能力 はあるのか? ・ すすぎ液内のクロスコンタミ ネーション物質」の分析? ・ 「後続製品内のクロスコンタミ ネーション物質」の分析?

5.2:2 残留不純物の微量分析の実施場 所は? ・ 施設内の、分析検査室で? ・ 外部契約の検査施設で? ・ 会社名は? 会社名: ・ クライアントの分析検査室で?

5.2:3 残留不純物分析法は、ターゲッ トの洗浄レベル範囲内で認証? ・ 直線性は? ・ 回収率は?

5.2:4 残留不純物決定は: ・ 後続の製品内で?

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.2:4 「はい」の場合、 ・ 通常、何バッチが分析されるか? ・ サンプルは調剤釜から採取? ・ 最初のパック充填容器からサン プル採取? または: ・ 最後のすすぎ液内から?

製品の全ての切り換え時に洗浄 レベルの分析をするか? ・ そうでない場合は、説明:

5.2:5 分析用サンプル、検査室サンプル および/または保管サンプル(保 管期限の終わり) に関して、 ・ 加工プロセスへ戻されての、 リサイクル防止措置は?

・ 破棄?

5.3 清掃手順

5.3:1 文書化され認証を得た洗浄手 順が現場で利用可能か?

洗浄の認証はどのように行われ るか?記述すること。

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.3:2 洗浄手順は以下を特定してい るか? ・ 使用すべき洗浄媒体は?

・ 使用すべき洗浄装置は?

・ 使用すべき洗浄条件は (例えば、 温度、時間)?

・ 製造ラインの個々の部品の洗浄 される順序は?

・ 洗浄媒体を装置に充填する方 法は?

・ 洗浄サイクル数、各洗浄サイク ルの長さ、すすぎに使用する洗 浄媒体の最低量は?

・ 解体と手動での洗浄がどの部分 で必要?

・ サンプリング場所?

5.4 使用済み洗浄媒体はプロセスに使用済 リサイクルされるか?洗浄媒 「はい」の場合、説明を記入。体のリサイクル クライアントは洗浄に使用され る媒体が製品にリサイクルされ ることに同意しているか?

洗浄に使用された媒体がリサイ クルされる場合、洗浄が完了し、 媒体は収集した容器にはすぐに 適切にラベルが貼付されるか?

洗浄媒体に使用する前の容器は 洗浄されているか?

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.5 製造ユニットの設備が洗浄された 場合のリリース手順

5.51 次の製造を開始する前に、洗浄さリリー れた装置のリリース手順は存在ス手順 するか? その手順は、以下の項目を含ん でいるか?

・ 十分な清浄がなされたかどう かの視覚的確認?

・ 洗浄のトレーサビリティを可能 にする洗浄完了記録の確認は? ・ 設備および共有装置 (ポンプ、 フレキシ ホース等) に、直前の 有効成分と達成された洗浄レ ベルを含むラベルが付けられ ているかを検証?

・ 残留不純物分析結果が 特定の洗浄限度を満たしてい るか、確認する? (実質的な洗浄の確認)

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5. 製品の切り替え はい いいえ コメント/ アクションプランの提案5.5:2 次の製品のための装置の準備を設備洗 行うオペレーターが、設備洗浄の浄の完 完了時に署名し、各洗浄ステップ了をチ の完了時間を記入しているか?ェック 万一、設備の清掃手順のステッ プが実施されていない場合、簡 単な説明が記録されているか?

設備リリースの責任者が設備の 洗浄を検査し、適切なドキュメン トに署名するまで、次の製造を開 始できないことが保証されてい るか?

5.6 切り替え後の製品リリース手順

5.6:1 製品リリース手順は、以下の項目 を含んでいるか?

・ 製品リリースを承認する権限は 誰にあるのか?

・ 不適合製品のリリースに対して、 クライアントの同意を得る手順

・ 製品の切り替え後に製造された 製品を、最初のバッチが正式に リリースされるまで隔離してい るか?

・ 合意の清浄度が達成されてい ることを保証する、残留不純物 分析に基づいてリリース決定さ れているか?

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6. ドキュメンテーション はい いいえ コメント/ アクションプランの提案

6.1 記録は保存されているか?記録 以下の文書をどのくらいの期間保存 保存しているか?

        ・ 洗浄に関する記録: ______ 年。 ・ 製造記録: ______ 年。 ・ クロマトグラムを含む残留不 純物レベルの分析結果:

______ 年。

6.2 保管サンプルを保持しているか?最終 ・ 「はい」の場合、どのくらいの期 間保持されているか?   製品サンプルの保持期間

サンプルの保存条件は定義され ているのか? これらのサンプルは施錠下に保 管されているのか?

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7. 材料識別とトレーサビリティ はい いいえ コメント/ アクションプランの提案7.1 搬入される資材の識別は?原材料 ・ 名称、材料コード(「ID番号」) と納の識別 品書に記載されているバッチ 番号? ・ 物質確認するための化学的/ 物 理的分析? ・ 品質を確認するための化学的/ 物理的分析?

7.2 使用可否判定された材料が、倉生産 庫から生産ユニットに搬送され、 工程に投入されたことを保証す る確認手順は? 具体的に方法を説明すること:

7.3材料の 製造記録/バッチカードは、完全トレーサ に記入され、個々の製造バッチビリティ ごとに保管されているか? 記録は、次の詳細を箇条書きで 記録しているか: ・ バッチ番号と、プロセスに投入 された正確な原料の分量? ・ バッチ番号と各バッチの生 産量? ・ 各ステップにおける、オペレー ター名は記録されているか? ・ 残留不純物分析結果? ・ QC 結果?

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7. 材料識別とトレーサビリティ はい いいえ コメント/ アクションプランの提案7.4 ラベル 正しいラベルのみが製品に使用 されることを検証する手順があ るのか?

(これには仮のラベルも含まれる)

具体的に方法を記述すること。

最終的なラベル貼付前に、仮の ラベル表示が必要とされる場合、 これらのラベルには(最小限)、 以下の情報を含んでいるか:

・ 製品名と製品コード?

・ バッチ番号と製造日?

・ 量 (バルクコンテナーのみ)?

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8. 改善された洗浄効率の機器 はい いいえ コメント/ の設計 アクションプランの提案8.1   配管 技術的設備は、最上階から最下 階まで直線的に並び、 製造ラインで、原材料が滞留する 可能性のあるU字管はないか?

配管は、容易な排水を可能にする ために傾斜されているか?

配管には、容易な排水を可能にす るために、最低位置にバルブが 取り付けてあるか?

(特に固体、フロアブル剤の生産 ユニットにおいて)材料の詰まり をなくすために、配管の曲げには 小半径の角度はないか?

配管は、洗浄装置と簡単な目視 検査のために、簡単にアクセス できる場所があるか?

8.2  技術的 錠剤と包装ラインは、設備   クリーン・イン・プレイス (CIP) 技術が導入されているか?

洗浄工程は、プロセス制御シス テムによって制御される自動化 システムを適用しているか?

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8. 改善された洗浄効率の機器 はい いいえ コメント/ の設計 アクションプランの提案8.2 荷降ろし及び包装ステーションは、 (コンパートメント内で)閉鎖さ れているか、そして、粉末の場合 において、専用のプレフィルター を搭載しているか?

技術的な設備 (反応容器、ミル、乾燥機など) は以下の機能を備えているか? ・ 洗浄装置および洗浄結果の目 視検査を容易にするのに十分 な確認場所はあるか? ・ 機器の内部表面は製品が引っ かからないように耐食性で滑 らかであるか? ・ 十分な周囲の空間があるか?  また、論理的な分解ポイント に、迅速な分解と点検を可能に する、機器のクイック接続を備 えているか?

8.3   設備構 生産ユニットにおける設備構成成の変 が変更になった場合更  

(例えば、新しい装置、異なった 容器[例えば、大きいか小さいか ]、配管のジオメトリの変更など)、 以下の手順が取られているか?

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8. 改善された洗浄効率の機器 はい いいえ コメント/ の設計 アクションプランの提案8.3 ・ 設備構成の変更について、クラ イアントに文書で通知するか?

・ 必要に応じて、洗浄手順を再検 証し、必要に応じて調整してい るか?

9. コンタミネーション防止の はい いいえ コメント/ その他の項目 アクションプランの提案9.1 漏えいした原材料は、プロセスに 戻されるか?

9.2 物質が最終製品の仕様に適合 しない場合、再加工または混合 がオプションとして考えられる場 合、クライアントに通知されるか?

9.3 規格外の原材料の再加工は、 クライアントによって承認された 手順に従って、また、書面による 許可を得て行われているか?

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農薬規制(PR)通知96-8

1996年10月31日

農薬規制(PR)通知96-8

農薬製品の製造業者、配合者、生産者と登録者への通知

注意:農薬製品の登録責任者

件名: 農薬有効成分の毒性的有意レベル

本通知は、農薬活性成分である農薬製品中のクロスコンタミネーション物質に適用される、「毒性的有意」という用語の、環境保護庁(EPA)解釈を提示している。この通知は、毒性学的に一般に有意であるとみなされるクロスコンタミネーション物質のリスクベースの濃度レベルを提供する。これらの濃度は、コンタミネーションされた農薬の種類、およびクロスコンタミネーション物質の農薬のカテゴリに応じて定義されている。規制が示すように、登録者は、毒性学的に有意なレベルを超えるEPAコンタミネーションを報告しなければならない。本通知は、このようなコンタミネーションを報告するための手順を定めている。

以下のようなコンタミネーションシナリオは、この通知内容から除外されている。

(1) クロスコンタミネーション物質および/またはコンタミネーションされた製品と しての殺鼠剤

(2) 発酵槽で製造され、そして有効な微生物農薬成分によってコンタミネーション された微生物および生化学農薬

(3) 他の植物農薬有効成分でコンタミネーションされている植物農薬 毒性学的に有意なレベルの不純物(これは有効成分にも適用される)に対するEPAの以前の立場は、この通知では除外されている農薬にも適用されるとしている。つまり言い換えると、これらの3つの除外されているカテゴリー中のクロスコンタミネーション物質はあらゆるレベルで、潜在的に毒性学的に有意であるとみなされ、EPAに報告しなければならない。

付録C - 農薬規制(PR)通知96-8

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I. 背景EPAは、毒性学的有意のすべての不純物に関して、報告され、製品登録の一部として受理されること(40 CFR 158.167)を要求している。EPAはまた、登録者が、テクニカル グレードの有効成分または統合システムによって製造された製品での、毒性学的有意の不純物に関して認定された上限(40 CFR 158.175)を提案することを要求し、また、他の不純物についても認定された上限を要求する可能性がある。当時、EPAは、不純物が毒性学的に有意であるかどうかを決定するための定量的基準を設定していない規制を公布した。むしろ、EPAは、他の製品中の不純物やクロスコンタミネーション物質である有効成分のあらゆるレベルが潜在的に毒性学的に有意であり、EPAに報告しなければならないという立場をとっていた。このような不純物の報告を怠ると、FIFRAセクション12(a)(1)(C)(登録の組成と異なる製品組成)に違反する。

EPAは、その現在のレポート規則を公布時に、毒性学的に有意という用語の解釈は、不純物に関する新たな情報がEPAにより提供されるまで、さらなる改善が加えられる可能性があることを表明していた。この通知の作成中に行われた分析に基づいて、EPAは、特定の農薬(下記のセクションIVを参照)において、活性成分でもあるクロスコンタミネーション物質の毒性学的有意レベルを決定するために、一般的に適用可能な定量的基準を確立できるという決定を下した。このような理由から、EPAは、今日もさらに、「毒性学的に有意」の用語の解釈を改善中である。

本通知のセクションIVで、EPAは、クロスコンタミネーション物質である活性成分が、「毒性学的に有意」と一般的に考慮されうるリスクベースのレベルを設定している。本通知の目的においては、クロスコンタミネーション物質は、厳密には、製剤製品の機密的記述には記載されていない活性成分、あるいは不純物の議論対象としての活性成分として定義される。この通知では、有効成分である不純物のみを扱い、EPAの他の不純物に関する立場には変更ない。

また、本通知においては、1977年7月11日付で作成そして1991年3月4日に改訂された、「バルク農薬実施方針 Bulk Pesticides Enforcement Policy」(バルクポリシー)に概説された条件を変更するものではない。バルクポリシーは、充填/再パッケージ工場(多くの場合、小売販売店)における基準、バルク農薬 40 CFRパート158の適用における重要な部分を成している。具体的には、バルク・ポリシーが定めるように、両当事者(登録者と再パッケージ者)が製品全体に責任を有する、というEPAの立場には変わりはない。

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II.目的· EPAは、クロスコンタミネーションに関するこの解釈が、以下の事項を満たすこと を決定した。

· クロスコンタミネーションは現実であるが、すべてのクロスコンタミネーションが 問題なのではないと認識する

· EPA /各州および規制業界が容易に適用可能な、明確な基準を設定する

· 許容されるクロスコンタミネーションが、過度な有害結果をもたらさないことを 保証する

· EPAと登録者のための事務処理の負担を最小限に抑える

· 登録者からエンドユーザーに至る製品に対する説明責任を維持する

· 発生する問題の修正のために、市場/プライベートの解決策を排除しない

III.アプローチEPAは、リスクベースのアプローチが、これらの目標達成に最も適しているという決定を下した。EPAは、複数のエンドポイントでのリスク、つまり人の健康、コンタミネーション食品、地下水のコンタミネーション、生態への影響を考慮したが、それは、どのエンドポイントがクロスコンタミネーションに最も敏感であるか、またクロスコンタミネーションのどのようなレベルまでが許容され、人間の健康および環境の一般的な保護でありえるかを決定するためであった。各エンドポイントに対して、分析が行われ、合理的な最悪のシナリオまたは潜在的なシナリオの範囲を評価し、全体的な、そして一般的保護クロスコンタミネーション物質の濃度を決定することができるかどうかを確認した。

EPAは、さまざまなカテゴリーに、クロスコンタミネーション物質や農薬をグループ化し (セクションIV の表を参照) 、毒性的有意濃度のスキームを作成した。次のエンドポイントが考慮された。ほとんどの場合、対象の植物に対する薬害が最も敏感なエンドポイントであり、したがって、毒性学的有意を決定する上での制限要因であった。

人の健康への影響:特定の AIによって引き起こされるクロスコンタミネーションは、おそらく断続的な事象であり、短期暴露の可能性が高い。したがって、EPAは、コンタ

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ミネーション製品を取り扱う人への潜在的なリスクに焦点を当てた。これらの人間の健康上のリスクの分析は、クロスコンタミネーションレベルでの人間への急性リスクは無視できることを示していた。断続的なコンタミネーションが、クロスコンタミネーションの最も可能性の高いシナリオではあるが、同一のAIが長期間にわたって特定の農薬製品内にクロスコンタミネーションする可能性も示された。EPA の分析は、クロスコンタミネーションへの慢性暴露は人間の健康に過度のリスクを与える可能性がないことを示した。EPAは、人体に適用する殺虫剤 (忌避剤など)のクロスコンタミネーションを検討し、この通知内で殺虫剤に対して設定されているレベルでのクロスコンタミネーションからのリスクは、無視できると結論付けた。

コンタミネーション食品:理論的には、残留基準が確立されていないか、あるいはそれを超過する量のクロスコンタミネーション物質が食品あるいは飼料に残留することになる。この場合、食品あるいは飼料は米国連邦食品・医薬品・化粧品法(FDCA)ではコンタミネーション食品である。EPA の分析では、非常に低い発生率であることを示している。また、EPA は、特定の AI とのクロスコンタミネーションは断続的に低レベルで発生するために、この通知下で報告されていないクロスコンタミネーション物質の残留による潜在的な暴露や摂取によるリスクは無視できるであろうと考えている。

地下水:地下水のコンタミネーションの可能性は、浅い帯水層と砂質土の場所で潜在的な懸念となる。フロリダ州の農務省と消費者サービス (DAC) は、浸出性、農薬半減期および製品薬量に関して保守的な仮定の上に、予備的な地下水モデリングの実習を行った。EPA は、フロリダ州の DACの結論を受け入れた。つまり、地下水のコンタミネーションの可能性はあるが、この通知によって許可されるレベルでのクロスコンタミネーション物質としての農薬 AI が、人間の健康に重大なリスクをもたらす濃度で、地下水に浸透することはあまり考えられないため、それは最小の懸念と考えられる。 生物学的効果/植物毒性:クロスコンタミネーションによる潜在的な生態学的影響についての予備審査に基づき(例えば鳥、水生生物、植物へのリスク) 、EPA は、対象クロスコンタミネーション物質の比較的低い濃度を考えると、植物毒性や薬害が最も敏感なエンドポイントであると考えている。EPA は、植物毒性の弊害が生態学に与える影響が潜在的に最も重要だと考えている。EPA の植物毒性解析は、陸生植物へのコンタミネーションされた製品の直接の散布に焦点を当てている。なぜなら、このシナリオが、流出や想定外のドリフトなどといった他の暴露経路よりも、より高い暴露レベルを表しているからである。

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EPA は、毒物の適切な有意レベルを決定するために、懸念のエンドポイントとして植物毒性に基づいたいくつかのリスク分析を実施した。これらの分析は、テクニカル サポート ドキュメント (詳細情報取得方法に関するセクション VIIを参照) に掲載されている。

特定の生化学的・微生物農薬および植物殺虫剤を含んでいないことの理論的根拠:多くの微生物や特定の生化学的な殺虫剤は、発酵槽で製造されている。これらの農薬製品のコンタミネーションの考えられる原因は、発酵槽が異なる微生物・農薬有効成分の生産にも使われている場合に発生する。定量的な基準は、微生物農薬の有効成分が毒性的に意味を持つクロスコンタミネーション物質であるかどうかを決定するためには適切ではない。これは、微生物が環境中、特に標的害虫のホストとの関係で、繁殖するからである。「毒性的許容濃度」としての20 ppm から1000 ppm の基準 (セクション IV) は、 微生物農薬有効成分に適用された場合に、グラムまたは農薬製品 1 ミリリットルあたり、10億のコンタミネーション微生物の存在を可能にする。このようなコンタミネーションレベルが、特に非標的生物に対して、有意でない毒性とは考えられない。EPA は、植物農薬の監視基準方針を策定中である。これには、監視スコープの定義も含まれている。したがって、植物農薬の基準が確定されれた後に、植物農薬に適用される毒性学的有意の定量的基準を作成するかどうかの判断を行う必要がある。出願者/登録者が自ら EPA 規制のために植物農薬を提出する場合、この通知のセクションV で説明された報告は、規制変更がない限り適用される。

IV.毒性的許容濃度次の表は、EPA が、毒性学的に有意なレベルと考えるクロスコンタミネーション物質レベルを定義している。具体的には、表に示される基準を超える濃度のクロスコンタミネーション物質の存在が、一般的に毒性的許容濃度と考えられる。それぞれのクロスコンタミネーション物質は、個別に検討する必要がある。この毒性的許容濃度は、配布または販売されているすべて登録された製品に適用され、それは詰め替え不可(すなわち、「小分け製品」)、あるいは詰め替え可能(すなわち、「バルク製品」)であるかに無関係である。毒性的許容濃度は、エンドユーザーの使用設備内のタンク混合液等のような、配布または販売されていない製品には適用されない。

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TSLC-毒性的許容濃度(1,2)

カテゴリー クロスコンタミネーション物質の種類

コンタミネーションされた農薬

の種類

毒性的許容濃度(3)

(ppm) (4)

1 殺虫剤(5)、殺菌剤、軟

体動物駆除剤、または殺

線虫剤

殺虫剤、殺菌剤、軟体

動物駆除剤、殺線虫

剤、除草剤、植物成長

調整剤、枯葉剤、または

乾燥剤

1000

2 除草剤、植物成長調

整剤、枯葉剤、または

乾燥剤

使用するすべての場所

で、そのクロスコンタミネー

ションが許容される農薬

(6)

1000

3 低散布除草剤(7)

以外の農薬(6)

抗菌性農薬 1000

4 通常の薬量の除草剤

(8)、植物成長調整剤、

枯葉剤、または乾燥剤

除草剤、植物成長調整

剤、枯葉剤、または乾燥

250

5 任意の農薬(6) 人体に適用の農薬(6) 100

6 通常の薬量の除草

剤、植物成長調整

剤、枯葉剤、または乾

燥剤を含む

殺虫剤、殺菌剤、軟

体動物駆除剤、また

は殺線虫剤

100

7 低薬量の除草剤 低薬量の除草剤 定量化のレベル(9)

または100 ppmのいずれか

高い方

8 低薬量の除草剤 通常の薬量の除草剤、

植物成長調整剤、枯葉

剤、または乾燥剤

定量化のレベル(9)

または20 ppmのいずれか高

い方

9 低薬量の除草剤 通常の薬量の除草

剤、植物成長調整

剤、枯葉剤、乾燥剤を

除く農薬(6)

定量化のレベル(9)

または1 ppmのいずれか高

い方

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注記:

(1) 本通知でクロスコンタミネーション物質は、厳密には、製剤製品の機密的記述 には記載されていないAI、あるいは不純物の議論対象として定義される。(2) 以下のようなコンタミネーションシナリオは、この通知内容から除外されてい る。 a) クロスコンタミネーション物質および/またはコンタミネーションされた製品 としての殺鼠剤 b) 発酵槽で製造され、微生物農薬成分によってコンタミネーションされた微生 物および生化学農薬 c) 他の植物農薬有効成分でコンタミネーションされている植物農薬 EPAは、不純物としてのAIの許容濃度の保護庁の以前の立場は、この通知で は除外されている農薬にも適用されるとしている。つまり言い換えると、これ らの3つの除外されているシナリオ中のクロスコンタミネーション物質はあ らゆるレベルで、潜在的に毒性学的に有意であるとみなされ、EPAに報告し なければならないであろう。(3) この表は、毒素的に有意な許容濃度を示す。言い換えると、この基準と同等ある いはそれ以上の濃度の場合にEPA が、毒素的に有意と考慮するコンタミネーシ ョンレベルである。(4) 濃度は ppm 単位で、製剤の重量に対するクロスコンタミネーション物質の重 量比で計算される。(5) FIFRA 定義には、科学的な名称で「昆虫」に分類されないダニおよび他の節足 動物が含まれる。FIFRA セクション 2(o) を参照。(6) 「すべて農薬」、「ひとつの農薬」という用語は、前述の注 2 で説明したように、本 通知から除外される農薬は含まれていない。(7) 本通知では、低薬量除草剤は、ラベルに記載のAI散布最大量が、0.5 ポンド AI/ エーカーと同等かそれ以下の除草剤として定義される。この定義は、アミノ酸阻 害剤または ALS 阻害剤AIの製品を含めるものであり、これには、スルホニルウ レアやイミダゾリノン、トリアゾロピリミジンが含まれれるがそれらに限定され るものではない。(8) 本通知では、通常薬量除草剤は、ラベルに記載のAI散布最大量が、0.5 ポンド AI/エーカー以上の除草剤として定義される。(9) 本通知では、定量化のレベルは、EPAまたはその指定代理人 (州の主導機関) に より達成可能なレベルであり、施行時に目的に適した定量化分析法によって行 われるものである。 7、8、9 のカテゴリーについては、定量化のレベルは表に含まれている。なぜなら、EPA は現在のところ、他の製品においてこれらの AI を、カテゴリー 7について100 ppm (カテゴリー8、9についてはより低いレベル)の低濃度で定量分析方法を持たないためである。EPA は、適用できない基準設定は欲していない。逆に、EPA は、常に時間とともに変更される分析方法により、絶えず変更を必要とする基準は設定し

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ない。したがって、カテゴリ 7 の基準は、定量下限値が 100 ppm を下回るまでの間の定量化のレベルである。したがって、基準は 100 ppmで、これは毒性学的な有意レベルに基づく制限である。本通知では、定量化のレベルは、EPAまたはその指定代理人 (州の主導機関) により達成可能なレベルであり、施行時に目的に適した定量分析法によって行われるものである。

表のレベルを選択ことにより、EPA は、効率的な保護とコスト負担との最適なバランスを見つけようとしている。将来の実験で、これらの値が十分に保護を行っていないことが判明した場合、EPA は毒性学的な許容濃度を変更することがありえる。

EPA は、表内の値が、一般的に、ほとんどのクロスコンタミネーション物質/製品の組み合わせにおいて有効に機能していると考えている。すべての潜在的なクロスコンタミネーション物質/製品の組み合わせを考慮することは不可能であるからだが、しかし、コンタミネーションが表内の濃度未満である場合に、有害な事象が発生する可能性はある。

EPA は、これらの基準が、すべての悪影響の発生を回避可能にするものではないことは認識している。リスクなしの基準ではない。例えば、EPAは、通常薬量の除草剤が、100 ppm 以下のレベル(カテゴリー6に設定) で殺虫剤をコンタミネーションした場合に、植物への被害が発生した事象を確認している。EPAは、FIFRA のセクション 6(a)(2) を含むその他の規制ツールを使用して、このような状況に対処しようとしている。

したがって、この通知は、出願者あるいは登録者が、FIFRA のセクション 6(a)(2)および40 CFR 152.50(f)(3)の EPA 規制における、農薬の過度な被害に関する事実に基づく情報を、EPAに提出しなくてはならないという要件を免除するものではない。請願者または登録者が、製品内のクロスコンタミネーション物質が上記の表で規定されている濃度未満で、人の健康あるいは環境に危険をもたらす可能性があることを示す、EPAへの未報告の事実に基づく情報を所有している場合、情報を EPA に提出する必要がある。このような 適時の情報提出を怠った場合、FIFRAのセクション12の12(a)(2)(B)(ii) および12(a)(2)(N)に違反する。また、本通知内で同定されたレベルを超えている未報告クロスコンタミネーション物質を含む製品の配布または販売は、FIFRAのセクション12(a)(1)(C)(異なる組成)に違反する。

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V. 登録者がなすべきことA. 毒素的許容濃度と同等あるいはそれ以上のクロスコンタミネーション物質レベル出願者あるいは登録者が、EPAが毒性学的に有意である水準(例えば、この表の適切な水準と同等あるいはそれ以上の有効成分の濃度)とみなすクロスコンタミネーション物質が存在することを知っている、またはそうであると信じる根拠がある場合、その人は、クロスコンタミネーション物質の混入の可能性について、また40 CFR 158.167(C)に従って存在する可能性がある分量に関して、幅広く考察する必要がある。EPAは、その後、FIFRAのもとで、製品の販売と流通を可能にするために、登録を認可するか、または修正案を必要とするか、規制上の決定を下す。登録、修正のEPAの認可前に、毒性学的に有意な水準と同等あるいはそれ以上混入した農薬の販売や配布は違反になる。生産・流通のどの過程でコンタミネーションの発生が予想されるかに関係なく、報告が必要である。規制の40 CFR 158.167の前文で記述されているように、登録された原材料を利用する農薬製造者は、製品中の不純物の同定または水準に関する情報は要求されない。EPAはそのような情報は、農薬製造者には知らされていないものと認識している。

40 CFR 158.167(C)にしたがって、更なる議論を提出したい申請者または登録者は、EPAに対して、(1) クロスコンタミネーション物質の識別内容と、(2) 存在している可能性のある濃度を報告する必要がある。情報は、次のような形 でEPAに送信する必要がある。

米国の郵便で提出の場合:Document Processing Desk (PM Team #) Office of Pesticide Programs (7504C) U.S. Environmental Protection Agency 401 M Street, S.W.Washington, D.C. 20460-0001

宅配便による配達:Document Processing Desk (PM Team #) Office of Pesticide Programs (7504C) U.S. Environmental Protection Agency Room 266A, Crystal Mall 2 1921 Jefferson Davis Highway Arlington, VA 22202-4501.

B.毒素的許容濃度未満のクロスコンタミネーション物質レベル申請者あるいは登録者は、クロスコンタミネーション物質がEPAの許容濃度未満、またはそうであると信じる根拠がある場合、EPAにこの情報を報告する必要はない。製品が、毒性学的に有意なレベルと同等あるいはそれ以上のコンタミネーション状態で配布・販売されている場合、登録者が認識していたかどうかにかかわらずFIFRAに違反している点に注意を喚起する。

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しかし、本通知に記載された「毒性学的に有意な」濃度未満でも有害影響が発生する可能性がある。登録者は、FIFRAセクション6(a)(2)の下に、有害影響を報告する責任があることに留意されたい。特に、申請者または登録者が、製品内のクロスコンタミネーション物質が上記の表で規定されている濃度未満で、人の健康あるいは環境に危険をもたらす可能性があることを示す、EPAへの未報告の事実に基づく情報を所有している場合、情報を EPA に提出する必要がある。適時の情報提出を怠った場合、FIFRAのセクション12の12(a)(2)(B)(ii) および12(a)(2)(N)に違反する。

この通知は、クロスコンタミネーション物質によって引き起こされる損害から生じる州法の下の責任から、登録者を免除するためのものではない。

上述したように、本通知は、EPAが40 CFRパート158の規定を実施する際に適用しようとしている、「毒性学的に有意なレベル」という用語の解釈について、登録者に情報を提供することを意図している。これは、米国との訴訟上において、任意の者によるいかなる強制的な権利を生み出すために意図されたものでも、依拠されるべきものでもない。EPAの職員が、この通知に記載されたものとは異なるレベルで、クロスコンタミネーション物質が毒性学的に有意である状況においては、このガイダンスと矛盾した対応をとる可能性がある。EPAは、製品内のコンタミネーション物質のレベルが人の健康や環境に対して過度の悪影響を引き起こさないために、必要なあらゆる規制措置を取る。

VI. 施行日この通知は即時に有効なものとする。

VII. 追記提案された解釈についての一般からの意見、本通知に対するコメントの概要および応答、技術サポート文書は、パブリック ドケットの文書番号「OPP-00424」の下に利用可能である。パブリック ドケットの住所:Public Docket and Freedom of In-formation Section, Field Operations Division, Office of Pesticide Programs, U.S. Environmental Protection Agency (7506C), Room 1132, Crystal Mall #2, 1921 Jef-ferson Davis Highway, Arlington, Virginia, 22202.

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