1

共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

日耳鼻 95-71

共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究

広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室(主 任:原 田康夫教授)

益 田 慎

ROLE OF THE MAXILLARY SINUS AS A RESONANT CAVITY

SHIN MASUDA, M. D.

Department of Otolaryngology, Hiroshima University , School of Medicine, Hiroshima

Patients with a paranasal disorder often manifest voice change . Yet, computer simulation of

these nasal sounds is difficult using a nasal tract model without any branching cavity . In other words, acoustic property of the nasal tract is influenced by a coupling with the paranasal sinuses .

If the transfer function of the sinus acts as a Helmholtz resonator, the resonance frequency , or "zero" point

, of the sinus would be present on the acoustic spectrum of the nasal cavity. This

study was designed to prove the validity of this hypothesis.

The sweep tone was given from the subjects' epipharyngeal space. The tone passed through

their nasal space and radiated from the anterior nostrils. In 13 cases without nasal or paranasal

disorders, the tones obtained at the nostrils were analyzed with Fast Fourier Transformation

(FFT) and were compared between two conditions of the ostia of the maxillary sinuses, obstructed

and opened with epinephrine.

The resonance frequencies of the maxillary sinuses ranged from 1 to 2kHz and varied consider-

ably among individuals. This variation may be due to a difference in the maxillary sinus volume

and in the diameter and length of the natural maxillary ostium. In past reports, in which the

resonance frequency of the sinus was measured using a compound model or computed simulation,

the maxillary sinus resonated below 1kHz. In these reports the ostium of the maxillary sinus was

regarded as a straight pipe. However, the examination of 29 cadavers revealed that the radius of

the ostium differes according to its depth. The radius in the depth halfway from the edge was

narrower than that of the edge. The way of evaluating a shape of the ostium is different between

the present and the past studies, thus possibly resulted in discrepancy of the resonance frequency.

Key words:上 顎 洞,共 鳴,音 響特 性,ヘ ルム ホル ツの

レ ゾネ ー ターA95-0071-33080

は じ め に

鼻腔 が音 声 に影響 を及 ぼ す こ とは,鼻 炎 や副 鼻腔 炎

で声質が 変化 す るこ とか ら容 易に想像 で きるが,こ の

現象 は必 ず しも通鼻 音 に限 られ た もので はな く,音 声

と鼻副 鼻 腔 との 関 係 を示 唆 して い る もの と考 え られ

る.

古 くか ら歌 唱 にお い ては 「鼻腔 共鳴 」 は重要視 され

てきた.多 くの 指導 書 には 「鼻 に声 を感 じて」 「声 を前

に出 して」「声 を頭 で保持 して」な ど経 験 上「鼻腔 共 鳴」

を強調 して いる.特 に イタ リア歌 唱法 であ るベル カ ン

ト唱法 は頬 に 「声 を響 かせ た」 「鼻腔 共鳴 」を強 調 した

歌唱 方法 と言 え る1)~6).

実験 的 に鼻腔共 鳴 の問題 を追及 す る試 みは古 くか ら

あ り,す で に,Bruckeが1856年 に母音 発 声時頭 蓋 に共

鳴を起 こす ことを報告 し,Hopman, Zimmermann,

Sternら に よ り相 つ いで体壁 振 動 と共 鳴 との 関係 が 報

Page 2: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

95-72 益 田=共 鳴 腔 として の上顎 洞 1992

告 され る に至 っ た7).こ れ らの報 告 は触 覚や 聴覚 に依

存 す るもので あ ったが,颯 田7),野 村8),颯 田 ら9)が 小

型地 震計 を用 い て振 動 を測定 す るに至 って初 めて科 学

的 な測 定 が な さ れ た.ほ ぼ 同 様 の 実 験 を前 田10),

Stevens11),大 山12),橋 本13),谷 口14),夜 陣15)等 が行 い,

同様 の結果 を報 告 した.い ずれの報 告 も発 声 時の顔 面

骨の振 動 を振動 ピ ックア ップを用 いて記 録 し(以 後,

骨 導音 声 とす る),そ の大 きさを発 声音 の強 さ と比 較 す

るこ とで鼻音 の程度 を客観 的 に表 わす ことが 目的 であ

った.こ こで注 意 すべ きは,骨 導音 声 は発 声 に伴 う顔

面骨 の振動 で あ り,音 声 そ の もの の共鳴 現象 では ない

点で あ る.こ の こ とについ て,す でに颯 田は 「附属管

腔 の みが音 声の 共鳴器 な り」7)と言明 して お り,さ らに

野村 は 「発 声 に伴 う体 壁 の共振 が 口裂 よ り出づ る音 声

に対 して 影 響 す る程 度 は微 小 で,第 二 義 的 に過 ぎな

い」8)と結論 づ けてお り,共 鳴 と顔 面骨 の振 動 を明 確 に

分離 した.

これ らに対 し,Fletcher16)17)が 行 った測 定方法 は骨

導音 声の代 わ りに,発 声時,前 鼻 孔 か ら放射 され る音

を口唇 か ら放 射 され る音 と分離 して記 録 し,そ の振 幅

の大 きさを比 較 す る ことに よ り口蓋裂 な どの疾患 で音

声の鼻 音化 の程度 を評価 す るもので あった.

音声 あ るい は骨 導音 声の スペ ク トラムか ら鼻腔 が関

与 す る成 分 を抽 出 し よ う とす る試 み は 増 田18)や 堀

口19)が行 つてお り,通 鼻音発 声時 に おいて鼻 腔が共 鳴

器 と し て 作 用 し て い る こ と を 実 験 的 に 認 め た.

Fujimura20)は,鼻 腔が 音響学 的 に音声 に及 ぼす際 の特

徴 は,理 論的 に は鼻腔,口 腔,咽 頭 の3つ の音 響管 が

1点 で交 叉 す る こ とで 生 ず る零 点 と極 点 にあ る と し

た.さ らにFujimuraら21)は 既知 のサ イ ン波 か らな る

Sweep-toneを 喉頭 よ り経 皮的 に放 射 し,口 唇 お よび

鼻孔 か ら再 放射 され る音 を採取 し,伝 達 関数 を求 め る

こ とで声道 の音 響学 的特 性 を把 握 しよう と試 み,鼻 音

化母音 や通 鼻音 におけ る極点 ・零点 を実験 的 に証 明 し

た.以 後,鼻 音 化母音 や鼻 子音 にお け る極 点 ・零点 の

分析 を 目的 と した報 告22)~29)や,鼻 咽腔 閉 鎖不 全 や鼻

副 鼻腔 疾患 に おけ る声 質 の特 徴 を音 声の零 点で評 価 す

る報告30)~33)が多数 み られ,鼻 腔が 音声 に影響 を及 ぼ

す際の音 声 の スペ ク トル の変 化 が論 じられて きた.

解 剖学 的 に は鼻腔 の側 壁 に は副 鼻腔(上 顎 洞,篩 骨

洞,蝶 形 骨洞,前 頭 洞)の 多数 の空洞 が存在 し,そ の

ほ とん どが 中鼻道 に開 口 して いる.し か しなが ら,こ

れ までの 報告 で は,鼻 音 の音響 学 的特性 に この副 鼻腔

の存在 を考慮 に いれた もの は極 めて少 ない.

図1 ヘ ル ム ホ ル ツの レ ゾ ネ ー タ ー

そ こで副鼻 腔 を考慮 した上で,鼻 腔 が音 声 に及 ぼす

影 響 を考 える にあた り,音 響管 としての鼻 腔 に対 して

副 鼻腔 が どの ような音響 特性 を もって連結 しているか

を実験 的 に考 察 した.

モ デ ル

分析 対象 は上顎 洞 に限定 した.上 顎 洞 は中鼻道 自然

孔 を通 じて鼻腔 に連絡 してお り,そ の構造 はヘルムホ

ル ツの レ ゾネ ーター に類似 してい る.上 顎 洞が ヘルム

ホルツの レゾネー ター として作 用 す る とすれ ば,鼻 腔

を通 過す る音 は特定 の周波 数 で吸音 され,ス ペ ク トル

上,上 顎 洞 に起 因 す る零 点が 出現 す る.

ヘ ル ムホ ルツの レ ゾネー ター(共 鳴器)と は,図1

の よ うな細 い管 と太 い管 を組 み合 わせ た容器 であ り,

細 い管 を首 と よび太 い管 を胴 と呼 ぶ.そ の共鳴 周波数

fは 次式 に よ り表わ され る34)35)

1=lo+ar (3)

式(1)に お いてcは 音速 であ る.Sは 連 結管 と断 面積で

あ り,連 結管 断 面 を仮 に正 円 とす る と,そ の 半径rを 用

い て式(2)を 導 くことが で きる.loは 連結 管 の 実際 の

長 さであ るが,式(1)・ 式(2)で 用 い られ る連 結管 の長 さ

1は,式(3)に よ り開 口端補 正 を行 う(aは 開 口端 補正

値).ま た,胴 はそ の容積Vの み が関係 す るの で形状は

問 われ な い.今 回の実験 で は,鼻 腔 ・副鼻 腔 をモ デル

化 して,こ の ヘ ルム ホル ツの レ ゾネー ター に上 顎洞の

構造 が近 似 す るもの として,連 結 管 を 自然孔 に,胴 を

上顎 洞 に置 き換 え,Sに 自然孔 の断面 積 を,loに 自然孔

Page 3: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

益田=共 鳴腔 としての上顎洞 95-73

図2 実験音の測定方法

実験に使用した機器

図3 試験 音 の校正(シ ステ ム)

が位置 す る と思 わ れ る鼻 腔側 壁 の厚 さ を,Vに 上顎 洞

の容積 を代 入 し,以 下 に述 べ る方法 で各 実験値 を測定

した.

実 験 方 法

1. 対 象

19歳 か ら29歳 までの成 人13名(う ち女性2名)を 被

験 者 と した.い ず れ も視 診 お よびX線 診断上 鼻 副鼻腔

に病 変 を認 めな か った.

2. 実 験音 採取 方 法

気 管 カニ ュー 顎を加 工 し,シ リコン ラバ ー製 の チ ュ

ーブス ピー カ を自作 した .こ の先端 が被 験者 の上 咽頭

に開放 す るよ うに直 視下 に経 口的 に留置 し,先 端 が 固

定 され る よ う固 く保持 する よ うに指 示 し,呼 吸 を停止

した状 態 で試験 音 を放 射 した.前 鼻 孔 か ら再 放射 され

る音 を 自作 の コ ンデ ンサ ーマ イ クを介 して左 右別 々 に

テー プ レ コー ダ(SONY社 製TCD-D10)に 録 音 した.

左右 の 隔壁 は厚 は さ約5mmの 段 ボー ル紙 で作 製 し,

前 鼻 孔端 か ら約5mmの 位 置 に マイ クを固定 した(図

2).採 取 され た 音 を実験 音 と し,こ れ にFFT分 析

(RION社 製SA-74A)を 加 えパ ワー スペ ク トル を算出

した.な お,Sweep-sine波 を コ ンピュー タにて作 成 し

(A/Dお よびD/Aコ ンパ ー タは16ビ ッ トの もの を用

い,Sampling Timeは0.4msec(25kHz)と した),

あ らか じめ 実際 に使用 す る機 器 を用 い て校 正 し(図

3),な るべ くスペ ク トル上 周波数 に対 して平坦 にな る

ように調整 した.こ のSweep-sine波 を連続 出力 し,試

験 音 として用 いた.試 験 音 のス ピー カ-マ イ ク特性 を図

4に 示す.

図4 試 験音 の校正(ス ペ ク トル)

3. 実験音 の 測定方 法

環境 雑音 の混 入 を避 けるた めに,病 院外来 業務 終了

後 の聴 力検査 用 防音室 で測定 を行 った.被 験 者 全員両

側 の鼻腔 に鼻 処置 を施 し中鼻道 を拡大 後,軟 性 フ ァイ

バー ス コープ を用い て上 顎 洞 自然孔 を確認,こ れ を覆

うよ うに水 分(ボ ス ミンRと キシ ロカイ ンR)を 十 分 に

含 ん だ小綿球 を中鼻道 に留 置 した.小 綿球 は中鼻 道 を

越 えて総鼻道 に突出 し鼻道 内の 気流状 態 を変 える こ と

が な い よ うに,必 要最 小限 の大 きさに とどめ るよ うに

配 慮 した.

まず,上 顎 洞 自然孔 を閉鎖 した状 態 で実験 音 を採取

した(実 験 音1).続 い て 自然 孔 を覆 う小綿球 を除 去 し,

自然孔 を開放 した状 態 で さ らに実験 音 を採取 した(実

験音2).実 験 音1と 実験 音2の パ ワー スペ ク トル を比

較 し,実 験音1の スペ ク トル には見 られ ない実 験音2

の スペ ク トルの 谷 を共鳴 周 波数,す なわ ち上顎 洞 に起

Page 4: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

95-74 益 田=共 鳴腔 として の上顎 洞 1992

表1 上 顎洞 の容積 と鼻腔 側壁 の厚 さ

(lt):左 側(rt):右 側

因す る零点 と した.

4. 各変 数 の測定

被験 者 全員 に顔 面 前額面 断層X線 写真(TOSHIBA

社 製LGU-I型:断 層厚5mm)を 前 方 よ り5mmお き

に撮影 した.こ の画 像 よ り上顎 洞 の陰影 を1mm方 眼

紙 に トレー ス して面 積 を算 出 し,既 知 の拡大 率 を用 い

て補正 した後合 計 した.こ れ に5mmを 乗 じた もの を

上 顎 洞の容 積 とした.さ らに自然孔が 開 口 して い る と

思わ れ る鼻 腔側 壁の 厚み を断層 写真 にて測定 し,や は

り拡大 率 を用 いて補正 した もの を連 結管の長 さ とした.

可能 な被 験者 に対 し,中 鼻道 に色素(ゲ ンチアナバ

イオ レッ ト)を 塗布 し,自 然孔 の開 口 に短冊 上 の濾紙

を押 し当 て開 口の型 を スタ ンプ し,こ れ を計測 して 自

然孔 の開 口面積 を測定 した.こ の結果 を連 結管 の断面

積 として利 用 した.

5. 実験 結果 の検 討方法

(1) 開 口端補 正値 の推定 のた め に,各 測 定値 よ り自

然孔 断面 が正 円で あ ると仮 定 した場 合の半 径 を,開 口

端補 正 値 を変化 させ て算 出 した.そ れ ぞれの開 口端補

正値 につ いて,自 然 孔断面 の半 径基 準値 と算 出 した半

径 を共 鳴周 波数 と比較 した.な お,今 回用 い た自然孔

断面の 半径 の基準 値 とは,広 島 大学 医学 部で平成 元年

度 に行 わ れた系統 解 剖実 習 におい て,献 体29体58側 の

うち生 前鼻 疾患 が ない と思わ れた44側 の 自然孔 断面 を

実測 し,同 面 積 の正 円の 半径 に置 き換 えた もの であ る.

平 均2.22mm,標 準 偏 差0.70mm,最 大 値3.66mm,

最 小 値0.94mmで あ り,1.52mmか ら2.92mmを 基 準

範 囲 と し た.

表2 上顎洞開口部の実測値

(2) 自然孔 開 口の測 定 を行 い得 た被 験 者 にお いて,

各 測定 値 よ り開 口端補 正値 を算 出 し,共 鳴周 波数 と比

較 した.

結 果

被検 者13名26側 の 鼻腔 の うち,2名2側 は強度 の鼻

中隔弯 曲症 を認 め上顎 洞 開 口 を確認 で きなか った.こ

の2側 を除 く24側 の 鼻腔 を実験 対 象 と した.そ の上顎

洞容積 な らび に鼻 腔側 壁 の厚 さを表1に 示 す.ま た,

上 顎 洞の鼻腔 側 開 口 を実 測 で きた 鼻腔 は4名5側 に限

られ た.こ の5側 につ いて,そ の 長径 と短径 の実測値

お よび測 定 した開 口部 の面積 と同面 積 の正 円 の半径 を

表2に 示 す.

Page 5: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

日耳鼻  益田=共 鳴腔としての上顎洞 95-75

図5No. 9の 実 験 音 の スペ ク トラ ム

No. 9の 鼻腔 にお け る実験 音 の スペ ク トル を図5に

示 す.実 験音1に は見 られ ない実験 音2の スペ ク トル

の谷 に ↓を記 した.こ の鼻腔 で は,725Hz, 1487Hz,

2600Hzお よび3887Hzの4カ 所 に スペ ク トル の谷 が

見 られ,こ れ らを 自然 孔 を開放 す るこ とによ り出現 し

た共鳴周 波数 と した.他 の実験 音 につ い て も同様 の 分

析 を行 っ が,こ の場 合,自 然孔 開放時 に出現 す るス

ペ ク トルの谷 の みな らず,閉 鎖 時 に出現 す る山 も共鳴

周波数 と考 え,24側 の 鼻腔 か ら117個 の共 鳴 周波数(零

点)と 思 われ る周 波数 を得 た.

考 案

本 実験 のモ デル は副鼻 腔 がヘ ル ムホル ツの レゾネ タ

ー として鼻 腔 に連結 して いる と考 えた もので あ り,鼻

腔の音響 特 性 に副鼻 腔 に よる零点 が付 加 され る こ とを

予想 して,考 案 した もので あ る.音 声 の音 響特 性 に関

して副鼻 腔 を考 慮 し,実 験 的 に確 認 を試 みた報 告 は著

者が調べ 得 た限 り以 下の4つ で あ る.

小山36)は モ デ ル を用 い た実 験 か ら上顎 洞 に よ る零

点 を400~1000Hzに,蝶 形 洞 に よ る 零 点 を500~

1200Hzに 予 測 した.氏 は さ らに生 体 を対 象 に 自然孔

を様 々な 方法 で閉 塞 し,そ の 前後 で発 声 され た通 鼻音

をソナ グ ラム に よる解 析 と聴覚 印 象 に よる評 価 を行 っ

てい る.そ れ によれ ば8名 中3名 に ソナ グ ラム上400

~1000Hzに スペ ク トルの谷 を認 めた が,他 の5名 に

は一致 した傾 向 を認 めなか った としてい る.そ の他 に

もスペ ク トルに副鼻 腔 に よる谷 が 出現す るこ とを理 論

的 に推論 してお り,副 鼻 腔 は 「付属 的 な音声器 官 とし

て音 声の 共鳴 に影響 を及 ぼ し得 て,特 に音 色 に美的 及

び量 的 な要素 を付加 す る効果 を有 す る」と結 んで い る.

Lindqvistら37)は,チ ュー ブス ピー カ を前鼻 孔 か ら

鼻腔 に挿 入 し,軟 口蓋 を挙 上 した状 態で ス ピー カを通

じて音 を放射 し,前 鼻乳 か ら再 放射 され る音 の スペ ク

トル を検 討 した.ス ピー カの先 端 を移動 させ る こ とで

副鼻 腔の 音響特 性 の特 定 を試 み たが,明 確 な結 論 を得

て いない.さ らに,氏 はモデ ル を用 い て検 討 を加 え,

上顎 洞 に よ るスペ ク トル の谷 は200~800Hz,前 頭 洞

に よる谷 は500~2000Hzに 出現 す る と して い る.

竹 内 ら36)は鼻 音 化 母 音 やnasal  murmur発 声 時 の

音 声 の 鼻 腔 出 力 と口腔 出力 を別 々 に スペ ク トル 分 析

し,固 有 鼻腔 の み を考 慮 した場 合に生 じる理論 的 な矛

盾 を副 鼻腔 の影響 とした.さ らに,そ の 妥 当性 につ い

て コン ピュー タシ ミュレー シ ョンにて検討 してい る.

この報 告 によれ ば,300~400Hzに 出現 す る零 点 を上

顎 洞 の影 響 に よる もの と し,1000~1500Hzに 出現 す

る個人差 の大 きな零点 を前 頭洞 あ るい は蝶 形骨 洞 の影

Page 6: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

95-76 益 田=共 鳴腔 としての上顎 洞 1992

響 に よる もの と した.さ らに2504Hz以 上 の高周波数領

域 の スペ ク トルに は副 鼻腔 は影響 を及 ぼ さな い とした.

Maeda39)は コ ンピ ュー タ シ ミュレー シ ョ ンを用 い

て,副 鼻腔 をモ デル に した一 定の 共鳴 周波数(446Hz)

を有 す るヘ ル ム ホ ル ツの レ ゾネー ター を鼻 腔 に付加

し,様 々 な鼻音 化母 音 を合成 した.レ ゾネ ータ ーを付

加 しな い場合 と比較 し音質 上 はるか に満足 のい く結果

が得 られ た と報 告 し,副 鼻腔 が鼻 音化 母音 に及 ぼす影

響 は その 結合 に よ り第1お よび第2フ ォルマ ン トを高

周波 数域 にシ フ トさせ るこ とにあ る とした.

さて,副 鼻 腔 と鼻腔 の解 剖学 的な構 造 を考 える と,

中鼻道 に は上顎 洞の他 に篩 骨洞 ・前頭 洞 ・蝶形骨 洞 の

一部 も半 月裂孔 とい う狭 い区域 に集 中 して連絡 してい

る.篩 骨 洞 は単一 の 空洞 では な く蜂巣 を形 成 してお り,

レ ゾネー ター として作 用 す る際 の空 洞 の個 数や そ の容

積 を評 価 す る ことは困難 で ある。前頭 洞 は その形状 か

らレ ゾネ ー ターの胴 と首 の部 分 を区別 す る ことは難 し

く,ま た 前額部 に前額 面 に広 く矢状 方 向に短 く位置 し

てい るた め今 回の トモ グ ラフ ィー で はその容積 を評価

す る ことは困難 で あ った.一 部 の蝶 形骨 洞 は篩 骨洞 を

介 して 中鼻道 と連絡 してい るが,多 くは上 鼻道 に開口

してお り,今 回 の実 験 で蝶形骨 洞単 独 の作用 に よる零

点が 表 出 され て いる とは限 らな い.し たが って,今 回

の実 験で は上顎 洞 のみ を検討対 象 とした.

本 実験 で は呼 吸 を停止 した状 態 で測定 したた め,ヘ

ル ム ホル ツの公式 に代入 す る変数 の うち,音 速 は温 度

の影 響 のみ を考慮 した.前 山 ら42)はモデ ルを用 いた副

鼻腔 の気 流動 態 に関す る実験 で 片側 の 前鼻孔 での 流量

が304ml/secの 時 の上 顎 洞 自然孔 で の流 量 を報 告 し

て い る.こ の報 告 に よれば,自 然孔 径が6.4mmの 場 合

の 自然 孔 流量 は0.256ml/sec, 13.5mmの 場 合1.704

ml/secで あ る.こ れ を流速 に換 算す る と8.0×10-3m/

secお よび1.39×10-2m/secで あ り,音 速 に対 して十

分 小 さ く,発 声 時 の 呼 気 流 率 が 通 常 状 態 で あ れ ば

300ml/secを 越 えな い こ とを考 えあ わせ る と,通 鼻音

発 声時 で あって も上顎 洞 の共鳴 周波数 に対 す る呼 吸 の

影響 は大 き くない と考 え られ る.

前 述 の四報 告 と本 実験 で 用い たデー タ を表3で 比 較

してみ る と,上 顎 洞 の容 積 に大 きな差 異 はないが,連

結管 の長 さや連 結 管断 面積 の評価,す なわ ち 自然 孔の

評価 が諸 家 に よ りまち まちで あ る.そ こで上顎 洞 をヘ

ル ム ホル ツの レゾネ ー ターに置 き換 え るにあた り,そ

の 形状,と くに連結 管 として扱 う上 顎洞 の 自然 孔 につ

いて検 討 を加 えた.屍 体 にお け る上 顎洞 の 自然 孔 の形

状 や 径 の 測 定 に つ い てZuckerkandl, Oppikofer,

Schaeffer, Meyrsonら は報 告してい る40).こ れ らによ

る と,最 低 では径1mm,最 高 は長径 で22mm(形 状の

詳 細不 明だ が短径 の最 高値 は6mm)で あ り,個 体 によ

る差が大 きい として い る.日 本 人 に関 して は三上41)が

同様 の観察 を行 い,径 の計測 は行 ってい ないが,「 自然

孔 は上 顎洞 と中鼻 道 の間 を軽度 に弯 曲 しなが ら走 る管

腔 」 で ある こ とを強調 して いる.著 者 は平成 元年 に実

施 され た系統解 剖学 の解剖 実 習 に参加 す る機 会 を得,

複数 の上顎 洞 自然孔 を観 察 した.こ の 際,中 甲介 を除

去 し,露 出 した 中鼻道外側 壁 にシ リコ ンラバ ーを注入

し,上 顎 洞開 口部 の鋳型 を作 製 した.諸 家 の報 告の ご

とく,そ の形 状 は個体差 が大 き く一概 に述 べ る こ とは

困難 で あ り,上 顎洞 の開 口 として明 らか にそ の長 さを

計測 で きる もの もあ るが,多 くの場 合 半月裂 孔 の凹み

と連続 してお り管腔 と しての 鼻腔側 断端 を特 定 す る こ

表3

図6  自然孔の長軸断面(模 式図)

Page 7: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

日耳鼻 益田=共 鳴腔 としての上顎洞 95-77

a=-1.0 a=-0.5

a=0.0 a=0.5

a=1.0 a=1.5

図7 各補正値における適合する共鳴周波数

Page 8: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

95-78 益 田=共 鳴腔 としての上 顎洞 1992

とは困難 で あ った.ま た,半 月裂孔 の形 状や大 きさに

も個体 差 が大 き く,一 定 の傾 向は認 め られな か った.

この こ とよ り推 察 す る と,レ ゾネー ター としての上顎

洞 の鼻 腔 に対 す る連 結管 は,個 体毎 の形状 に より半 月

裂 孔 を含 ん だ もの と含 まな い もの あ るいは一部 含 む も

の とが ある と思わ れ,鼻 腔所 見か らこれ を判定 す る こ

とは困難 で あ る.し たが って,本 実験 で は顔 面断 層X

線写 真 か ら対 象毎 の鼻腔 側壁 の厚 み を測 定 し,こ れ を

連 結 管の 長 さ として利用 した.な お,採 取 した鋳型 か

ら上顎 洞 開 口部の最 狭 部の径 を測定 し,前 述 の上顎洞

断面 積 の基準範 囲 として用 いた.

一 方,前 述 の四報 告 で は上顎 洞 の 自然 孔 を長 軸断面

形状 が直 線状 の 円筒 に置 き換 えてい るが,実 際 に上顎

洞 自然孔 の長軸 断 面 を観 察す ると図6の 模 式 図の よ う

に両端 を ラ ッパ状 に開 い た鼓 の よ うな形 をしてい る.

Panton43),功 能 ら44)に よる と,こ の よ うな形状 の連結

管 を有 す るレ ゾネー ターで は,実 際 の共 鳴周波 数 は理

論値 よ りも高 くな る.連 結管 での複 雑 な音響伝 播 を予

想 して い る ものの,こ の現象 を理論 的 に説明 す るこ と

は 困難 であ る と してお り,実 効 断面 積の実 測 も不可能

で あ る.そ こで,本 実験 で はみか け上 の 開口端補 正値

が減 少す る もの として取 り扱 うもの とした.し たが っ

て,実 際 の上顎 洞 では,前 述 の四報 告 におい て推 察 さ

れ た周 波 数 よ り高 い 共鳴 周 波数 を有 して い る と思 わ

れ,本 実験 で は他 の報 告 よ り小 さい開 口端 補正 値aが

得 られ る もの と予想 され る.こ の特徴 的 な開 口端補 正

値aを 指 標 に して以下 の検討 を加 えた.

本 実験 で は24側 の上 顎洞 に おいて レゾネ ーター作用

を発 現 して出 現 した と思 わ れ る共 鳴 周波 数 は117個 で

あった.ヘ ルム ホル ツの レ ゾネー ターで は1個 の レゾ

ネー ター に対 す る共 鳴周 波数 は各 々1個 で あ る.上 顎

洞 をヘル ム ホル ツの レゾネ ーター に置 き換 え た仮 定に

基づ いて考 慮 すれ ば,明 らか に過 剰な共鳴周 波数 を一

緒 に抽 出 した こ とにな る.そ の理 由 と して,中 鼻道 を

閉鎖 す る際 に上顎 洞以 外 の副鼻 腔 自然孔 も閉 鎖 し,こ

図8 開口端補正値の変化に伴う基準範囲に含

まれた共鳴周波数の数および上顎洞の数

の変化

図9 開 口 端 補 正 値 の 算 出

た だ し,□ はNo. 5,〓 はNo .6,△ はNo. 9,× はNo. 10お よ び ○ はNo. 14を 示 す もの とす る .

Page 9: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

益 田=共 鳴腔 として の上顎 洞 95-79

れ らの零点 も一 緒 に 出現 した可 能性 が考 え られ る.そ

こで,得 られ た117個 の周波 数の うち上顎 洞 に起因 す る

零点 に一致 す る もの と,上 顎洞 に起 因 しな い もの とを

区別す るた めの検 討 を行 った.

開 口端 補 正値aを 変 化 させ て上 顎 洞 自然 孔 の 半 径

を得 られた デー タ と個 々 の周波 数 か ら逆 算 す る と,図

7の ごと く,半 径 の基 準範 囲(図 の斜線 部分)に 含 ま

れる周 波数 の個 数 あ るい は周波 数分 布 は変化 す る.前

述 の ごと く上顎 洞 の容 積 あ るいは 自然孔 の断 面積 ・長

さは個体 差が大 き く,上 顎 洞の 共鳴 周波 数 も個体 差が

大 きい もの と予想 され るが,他 の副 鼻腔 との間 に基本

的な構 造上 の相 違 点が あ るた め,上 顎 洞 以外 の共 鳴周

波数 と比 較 すれ ば上顎 洞 の共鳴 周波 数 としての一 定の

傾向 を有 してい る と思 われ る.そ こで,aの 値 を-2か

ら2ま での範 囲 で0.5ず つ変 化 させ た 時 の基 準範 囲 に

含 まれる周波 数 の数 とこれ に対 応 す る上顎 洞 の数 の変

化 を図8に 示 す.上 顎 洞 の 数 はaが-0.5の 時 を最 高

とし,aが これ よ り小 さ くて も大 き くて も減 少 す る.し

たがって,今 回の 実験 で上 顎洞 に起 因 す る零 点が 必 ず

出現 した とすれ ば,aは-0.5付 近 の値 が最適 値 とな る

ことが示唆 され る.一 方,一 つ の へル ムホ ルツ の レゾ

ネー ター によ り出 現す る零 点 は一 つで あ る ことを考慮

する と,aが-0.5以 下 で は周波 数 の数 が上 顎 洞 の数の

2倍 以上存在 し,平 均 して一 つの上 顎洞 に対 して二 つ

以上 の零点が得 られた こ とにな り不適 当で あ る.以 上

の ことよ り,開 口端補 正値aは0近 傍 の値 であ る こ と

が諸 条件 を最 も充足 す る.

つ ぎに鼻 腔側 開 口端 の径 が測 定 で きた4被 検者5側

について検 討 を加 えた.5側 で測 定 され た共 鳴周 波数

(零点)と これ に対応 す る開 口端 補 正値 の関係 を図9(a)

に示す.先 の24側 にお け る検 討 を踏 まえて開 口端 補 正

値 を0を 中心 に-0.5か ら0.5の 間 に限 る と,図9(b)に

示す ごと くNo. 5・9・10・14の4側 につ い ては共鳴 周

波数 を一つ ずつ に絞 る ことが で きる.ま た988Hz(No.

5)か ら1975Hz(No. 6)の 周 波数 範囲 に開 口端補 正値

が-0.17,-0.26,-0.34,-0.26と 集 中 してお り,上顎

洞がヘ ルム ホル ツの レ ゾネ ータ ー と して作 用 す る際 の

構造 が極 め て類似 して いる ことを示唆 して い る.

以上 の こ とよ り,本 実験 では鼻腔 の 音響特 性 上,上

顎洞 に起 因 す る零点 の存 在領 域 は個体 差 が大 きい もの

の1000~2000Hzを 中心 と した周 波 数帯 域 に存 在 し,

また鼻腔 側壁 の 厚 さ を連 結管 の長 さ とす れば 開 口端 補

正値 は0近 傍 の値 を とる こ とが示 唆 され た.

結 語

副 鼻 腔 が 音 声 に 及 ぼ す 影 響 を考 慮 す る上 で,上 顎 洞

を 鼻 腔 と い う音 響 管 に 対 す るヘ ル ム ホ ル ツ の レ ゾ ネ ー

タ ー に置 き換 え,そ の 妥 当性 に つ い て 実 験 的 に 考 察 し

た.今 回 の 実 験 に よ り,個 人 差 あ る い は 個 人 内 で も左

右 差 を認 め る も,上 顎 洞 は へ ル ム ホ ル ツ の レ ゾ ネ ー タ

ー と し て 作 用 し1000~2000Hzの 周 波 数 域 を 中 心 と す

る帯 域 に 共 鳴 周 波 数 が 存 在 す る と考 え られ た.ま た,

この 場 合 鼻 腔 側 壁 の 厚 さ を レ ゾ ネ ー タ ー の連 結 管 の 長

さ とす れ ばヘ ル ム ホル ツ の公 式 に お け る開 口 端 補 正 値

は0近 傍 の 値 を と る もの と予 想 さ れ た.

文 献

1) 森 山俊 雄:発 声 と共 鳴 の 原理.音 楽 之 友社,東 京,1963,

69-72頁.

2) 加藤 友 康:こ えの知 識.鳩 の森 書 房,東 京,1977,205-

206頁.

3) 林 義 雄:こ え と こ とばの科 学(第5版).鳳 鳴 堂 書店,

東京,1979,52-54頁.

4) 石丼 末 之助:声 の し くみ.音 楽 之 友 社,東 京,1983,

101-127頁.

5) 酒井 弘:発 声 の技 巧 とそ の活 用 法.音 楽 之 友 社,東

京,1987,86-89頁.

6) Procter DF(原 田康 夫訳):呼 吸 ・発 声 ・歌唱.西 村 書

店,新 潟,1987,101-105頁.

7) 颯 田 琴 次:発 声 機 構 及 び 語 音 調 節 に 就 て.大 日耳 鼻

45:1590-1687,1939.

8) 野村 新 太郎:発 声 に伴 う体 壁 共 振 の実 験 的 研 究.大 日

耳鼻48:64-87,1941.

9) 颯 田 琴次,菅 原 淳 夫,小 橋 豊:ピ エ ゾ ピ ックア ップに

よ る発 声時 の体 壁 共振 の測 定 に就 て(特 に鼻 腔 共 鳴 に

関す る問題).音 響 会誌8:97-103,1952.

10) 前 田 秀夫:Nasality Meterに 関 す る研 究.耳 鼻 臨 床

67:895-912,1974.

11) Stevens KN: A miniature acceletometer for detec-

tive glottal waveforms and nasalization. J Speech

and Hearing Reseach 18:594-599,1975.

12) 大 山 勝,三 吉康 郎,荘 司邦 夫,山 本真 平,谷 口知 恵 子

他:頭 蓋 振動(骨 導音 声)の 音 響 学 的分 析.日 耳 鼻79:

963-972,1976.

13) 橋本 真 実:副 鼻 腔 炎(音 響学 的 分析).耳 鼻咽 喉 科 ・頭

頸 部 外科MOOK 1:151-161,1986.

14) 谷 口知 恵 子:骨 導 音 声 の音 響学 的 分 析 に 関 す る研 究-

臨床 応 用 を中心 と してー.耳 鼻臨 床74:1110-1125,

1980.

15) 夜陣 紘 治:共 鳴 腔 と しての 鼻 ・副 鼻腔 機 能.日 本鼻 科 学

Page 10: 共鳴腔としての上顎洞の役割に関する実験的研究 - …...Sternら により相ついで体壁振動と共鳴との関係が報 95-72 益田=共 鳴腔としての上顎洞

95-80 益田=共 鳴腔 と しての上顎 洞 1992

会会 誌28:276-281,1990.

16) Fletcher SG: Theory and instrumentation for quan-

titative measurement of nasality. Cleft Palate J

7:601-609,1970.

17) Fletcher SG: "Nasalance" v.s. listner judgements

of nasality. Cleft Palate J 13:31-44,1976 .18) 増 田胤 次,颯 田 琴 次:邦 語鼻音 「ン」の発 音 に関 す る実

験 的 研 究.大 日耳鼻41:2102-2106,1935.

19) 堀 口申作:鼻 音 附 属管 腔 共鳴 に関 す る実 験 的研 究 .大

日耳 鼻49:551-575.1942.

20) Fujimura O: Analysis of nasal consonants. J

Acoust Soc Am 34:1865-1875,1962.

21) Fujimura O, Lindqvist J: Sweep-tone measure-

ments of vocal-tract characteristics. J Acoust Soc

Am 49:541-558,1970.

22) 鈴 木 隆雄,小 田川 欣 市:作 り声 の音 声 スペ ク トロ グ ラ

ムー 鼻孔 を閉 じて発 声 され た音声 一.科 警研 報 告29:

189-201,1976.

23) 野 田 秀樹,谷 本益 巳:作 り声 の話 者 照合.科 警 研 報 告

35:27-31,1982.

24) 石 崎 俊:鼻 音 生 成過 程 の 推 定 お よ び特 徴 抽 出.電 子

技 術 総合 研 究 所彙 報47:26-38,1983.

25) Kurowski K, Blumstein SE: Perceptual integration

of the murmur and formant transitions for place of

articulation in nasal consonants. J Acoust Soc

Am 76:383-390,1984.

26) Hawkins S, Stevens KN: Acoustic and perceptual

correlates of the non-nasal-nasal distinction for

vowels. J Acoust Soc Am 77:1560-1575,1985.

27) 坂 口博 己,南 沢 清志,中 島隆行:鼻 音 ・子 音 分析 に 適 す

る構 造 ア ナ ロ グ形 音 声 合 成 分 析 系.信 学 技 報EA86-

41:33-40,1986.

28) 塚 田 聡,柳 田益 造,角 所 収:零 点周 波 数推 定 の 高精

度 化.信 学 技 報EA87-81:41-48,1987.

29) 坂 口博 己,小 林俊 一:鼻 子 音 の調 音 運 動 姿 態 と音 響 物

理 量 との関 係.信 学 技 報EA88-55:27-32,1988.

30) 橋 本 真 実,大 山 勝,溝 井 一敏,小 幡悦 朗,大 堀 八州 一

他:顔 面頭 蓋 振 動 の 新 し い 音 響 学 的 分 析 法.日 耳 鼻

86:1308,1983.

31) 今井 徹,中 村 進 治,平 原達 也,伊 福 部 達:口 蓋裂 音

声 の 鼻 音 性 の 定 量 的 評 価.音 響 会 誌41:69-76,

1985.

32) 今井 徹,中 村 進治,平 原達 也,伊 福 部 連:合 成 音 声

を利 用 した 口蓋 裂音 声 の 鼻 音性の 評価 一 各種 音 響 パ ラ

メ ー タの比 較 検 討一.音 響会 誌42:685-689,1986.

33) 阿 部 雅子:鼻 咽腔 構 音(い わゆ る鼻腔 構音)の 病態 一 音

の分 析 と構 音動 態 の 観 察 一.音 声 言 語28:239-250,

1987.

34) 小 橋 豊;音 と音 波,裳 華 房,東 京,1969,107-111頁.

35) 牧 田康 男:現 代 音 響学(第2版).オ ー ム社,東 京1986,

218-219頁.

36) 小 山高 司:副 鼻 腔 共 鳴 に関 す る実 験 的 研 究.日 耳 鼻

69:1177-1191,1966.

37) Lindqvist JG, Sundberg J: Acoustic properties of

nasal tract. Phonetica 33:161-168,1976.

38) 竹 内章 司,粕 谷英 樹,城 戸 健 一:鼻 音 の スペ ク トル に及

ぼ す 鼻副鼻 腔 の 影響.音 響 会 誌33:163-172,1977.

39) Maeda S: The role of the sinus cavities in the

production nasal vowels. Proc. ICASSP-82, Paris,

911-914,1982.

40) 前 山拓夫,渡 部 荘郁,原 口兼明,岩 渕 康 則,鰺 坂 孝 二 他:

副 鼻腔 の気 流動 態 に関 す る実験 的 研 究 ー エ ア ロ ゾル療

法 の基 礎 的 検討 一.日 耳 鼻92:1070-1076,1989.

41) Myerson MC: The natural orifice of the maxillary

sinus. Arch Otolaryng 15:80-91,1932.

42) 三 上喜 久:上 顎 洞 自然孔 部 の臨 床 的 並 び に病 理組 織 学

的 研究.耳 展 補3:497-528,1976.

43) Panton RL: Excitation of Helmholz resonators by

turbulent boundary layers; the effect of orifice

geometry. AIAA-88-0181, Nevada, 1988.

44) 功 能郁 生,深 野 徹:ヘ ル ム ホ ル ツ共 鳴 器 に よる減音

(減音 特 性 に及 ぼす の ど部 形状 の影 響).福 岡 工 業大学

エ レク トロニ ク ス研究 所 所 報6:137-141 ,1989.

稿を終えるにあた り,ご指導,ご校閲を賜 りました原田康夫

教授 に心よ りお礼申し上 げます.ま た,常 に示唆 に富 むご

助 言,ご指導 を戴 きました広島総合病院耳鼻咽喉科夜陣紘治

博士,第 一解剖学教室安田峯生教授,マ ツダ病院中野豊道副

院長 に深 く感謝致 します.さ らに,終 始懇切な ご助 言,ご協

力 をくださった村尾元技官,マ ツダ株式会社角田鎮男氏を

はじめ,耳 鼻咽喉科学教室,第 一解剖学教室の諸先生方なら

びにマツダ株式会社車両研究部の各位 に感謝の意 を表 しま

す.

本論文の要 旨は34回 ならびに第35回 日本音声言語医学

会総会において発表 した.

なお,本 研究は平成元年度文部省臨床研究特別経 費およ

び平成2年 度財団法人サウン ド技術振興財団研究助成金の

補助 を受 けた.

(1991年7月15日 受稿 1991年10月17日 受理 急載)

別刷請求先 〒734広 島市南区霞1-2-3

広島大学医学部耳鼻咽喉科学教室 益 田 慎