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公認会計士 渡辺講師と池邉講師が論文対策を斬る! LECの会計学はココが違う 池邉講師レジュメ ES16970 0 000519 169700

渡辺講師と池邉講師が論文対策を斬る! LECの会計学はココ …...つまり,論文式試験の合格に必要な知識は短答式試験のそれよりも狭く,

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公認会計士

渡辺講師と池邉講師が論文対策を斬る!

「LECの会計学はココが違う!」

池邉講師レジュメ

ES16970

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管理会計論レジュメ ● 1

目 次

1 論文式試験の傾向

2 計算の対策について

3 理論の対策について

1 論文式試験の傾向

⑴ 出題形式

第1問では主として原価計算論点から★1,第2問では管理会計論点から出

題され,それぞれが2つの中問から構成されている。新試験制度移行後の出

題実績(主に計算)は次の通りである★2。

年度 第1問 第2問

総合原価計算 グループ経営と分権組織の管理会計 18

標準原価計算 設備投資の経済性計算

部門別個別原価計算 予算管理 19

原価管理・短期利益計画 設備投資の経済性計算

短期利益計画のための管理会計 原価管理 20

総合原価計算・活動基準原価計算 設備投資の経済性計算

総合原価計算 差額原価収益分析 21

標準原価計算・活動基準原価計算 グループ経営と分権組織の管理会計

総合原価計算 原価管理 22

短期利益計画・活動基準原価計算 設備投資の経済性計算

部門別個別原価計算 資金管理 23

標準原価計算 差額原価収益分析

標準原価計算 設備投資の経済性計算 24

予算管理 グループ経営と分権組織の管理会計

部門別個別原価計算 設備投資の経済性計算 25

総合原価計算(MFCA) グループ経営と分権組織の管理会計

総合原価計算・標準原価計算 差額原価収益分析 26

活動基準原価計算 予算管理・資金管理

部門別計算・総合原価計算 資金管理 27

標準原価計算 予算管理・分権組織の管理会計

⑵ 配点と合格ライン

大問1問当たりの配点は50点であり,全体で100点満点となる。また,計

算と理論の双方から出題され,配点は計算が約60点,理論が40点であり★3,

合格ライン(得点比率52)は素点ベースで40点程度と考えられる。

計算:60点

理論:40点

合格ライン:40点

★1 第1問では主として原価計

算論点から出題されるが,平成

19年,22年,24年のように,管

理会計論点からも出題される。

★2 大きな特徴として,①第1

問において個別原価計算と総合

原価計算のいずれかが問われる

(平成23年除く),②第2問にお

いて差額原価収益分析(業務的

意思決定)と設備投資の経済性

計算(戦略的意思決定)のいずれ

かが問われる(平成27年除く),

という2点を挙げることができ

る。

★3 今年度の平成27年試験にお

いては、計算と理論の配点が

半々かやや理論の方が高かった

と思われる。この傾向が今後も

続くかどうかは分からないが、

過去の実績を踏まえれば、例外

的に捉えておくのが無難であろ

う。

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2 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

2 計算の対策について

⑴ まずは計算対策という意識を持つ

管理会計論の計算に苦手意識を持つ受験生は多いが,だからといって理論

の勉強に逃げてはいけない。配点は計算問題の方が高いのであるから,まず

は計算対策をしっかりと行う必要がある。

特に計算に苦手意識を持つ受験生は,「管理会計論は基本的に計算科目で

あり,まずは計算対策が重要」という意識を持つべきである。

⑵ 新たな知識の習得は不要

公認会計士・監査審査会から公表されている「出題範囲の要旨」では,各

科目について出題項目の例が列挙されている★1。短答式試験はその全体から

出題することとされているが,論文式試験は網掛け部分から重点的に出題す

ることとされている★2。

つまり,論文式試験の合格に必要な知識は短答式試験のそれよりも狭く,

論文式試験の対策として新たな知識を習得する必要は特にない。

計 算

60点

理 論

40点

★1 平成28年試験から管理会計

論の出題範囲に大幅な変更があ

り,出題項目の例からBSC,

LCC,生産・在庫管理(JIT,

TOC,MFCA),品質管理,

ABBが削除された。

★2 あくまでも「重点的に」で

あり,網掛け外の論点からの出

題可能性がないわけではない。

たとえば,平成20年には直接原

価計算に関する理論が出題され

ている。

網掛け外の論点

連産品,副産物,直接原価計算,財務情報分析など

網掛け論点

<出題項目の例>

重点的に出題

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管理会計論レジュメ ● 3

⑶ 原価計算論点は原価の流れを意識する

短答式試験の計算問題(原価計算)は,費目別,部門別,製品別の個々の計

算を切り取って問う傾向が強いのに対し,論文式試験ではそれらの全体を問

う傾向が強い。

したがって,改めて「原価の流れ」や「各計算論点のつながり」を意識す

る必要がある★3。

⑷ 管理会計論点は業績管理と意思決定の関係を理解する

短答式試験の計算問題(管理会計)は,業績管理と意思決定を別々に問う傾

向が強いのに対し,論文式試験では業績管理が意思決定に与える影響を問う

傾向が強い★4。

したがって,「業績管理を通じて組織構成員を適切な意思決定行動へと誘

導し,戦略の実行を支援する」というマネジメント・コントロールのプロセ

スを理解すべきである。

⑸ 時間配分と小問の取捨選択を意識する

短答式試験を突破した受験生にあっては,管理会計論の計算問題を解く力

に大きな差は見られない。差が見られるのは2時間という時間制約の使い方

であり,実質的にはそれが論文式試験において得点差をもたらす 大の要因

であるといえる。

具体的には,「4つの中問間の時間配分★5」,「各中問における小問の取捨選

択★6」を意識する必要があり,2時間答練を通じてその感覚をしっかりと養

うことが求められる。重要なことは得点の 大化であり,短答式試験と同様

に,すべての計算問題を解く必要はないことに注意する。

費目別

部門別

製品別

財務会計財務会計

短答式 短答式 短答式

論文式

★3 たとえば,費目別計算がで

きなくても,短答式試験では1

問(7~8点)を落とすのみであ

るが,論文式試験では,費目別

→部門別→製品別の流れを問う

問題であれば,1つの中問の計

算(約15点)のすべてを落とす可

能性すらある。

上位者

下位者 意思決定

業績管理

間接的コントロール

(目標整合性の確保)

権限

(責任)

報酬制度

★4 たとえば,事業部長の業績

評価尺度や内部振替価格などの

論点である。

★5 得点比率は大問ごとに出て

くるため,4つの中問を万遍な

く解くことが求められる。ただ

し,30分ずつに区切る必要はな

く,解ける問題により多くの時

間を割くべきことは言うまでも

ない。

★6 たとえば,差額利益や正味

現在価値などの 終数値のみが

問われている場合には,不正解

となる可能性が相対的高いた

め,これを端から捨てるという

のも立派な戦術である。

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4 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

3 理論の対策について

⑴ 理論で計算を助けるという意識を持つ

配点上,計算対策がまず重要であることは既述の通りであるが,約40点の

配点が見込まれる以上,理論対策を疎かにすることは妥当でない。また,計

算の場合はミスが生じうるが,記述に関しては誤字脱字を除けばミスは考え

られないため,論点さえ把握できれば,確実に得点を期待できる。

以上より,「計算の出来が悪くても理論で守ることができる」という意識

を持つべきである★1。

⑵ 典型論点を潰す(増やす)・論点を意識する

論文式試験における理論問題は,「知識吐き出し型」と「現場対応型」に

区別され,典型論点と非典型論点の双方が問われる。このうち解答し易いの

は知識吐き出し型で典型論点を問う問題であるから,「典型論点を徹底して

潰すとともに,一般に非典型とされる論点であっても,自分なりに典型論点

へと引き上げていく」ことが重要となる。

また,現場対応型の問題であっても,典型論点が問われている場合には,

論点に気付きさえすれば容易に解答できるため,やはり,「典型論点を潰す

(増やす)」ことが重要となる。さらに,現場対応型の問題に対して,論点の

当てはめ作業が出来るように,常日頃から「各範囲にどのような論点がある

のかを意識する」のが有効である★2。

知識吐き出し型

現場対応型

典型論点

非典型論点

典型論点

非典型論点

←典型論点を増やす

←典型論点を増やす

←典型論点を潰す

←典型論点を潰す・論点を意識する

計算問題

配点:60点

理論問題

配点:40点

合格ライン

40点

大失敗

(10点)

カバー

(30点)

★1 たとえば計算で大失敗して

得点が10点にとどまったとして

も,理論で30点を確保すれば合

格ラインには乗る。

★2 論点を押さえる(整理する)

ためには,いわゆる目次学習が

有効である。

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管理会計論レジュメ ● 5

⑶ 理解が暗記を助けるという意識を持つ

漠然とした理解があってもキーワードを暗記できていなければ論述はで

きないし,キーワードを自然に暗記できるほどテキストを読み込まなければ,

本当の意味での理解は得られない。

そこで,「理解が暗記を助ける」という認識のもとに,理解重視でテキス

トの読み込みを心掛け, 終的にキーワードを自然に暗記できるようになる

のが望ましい★3。

理解重視でテキストの読み込み

キーワードを自然に暗記

論述が可能

★3 キーワードの暗記は必須で

あるが,テキストをしっかりと

読み込んでいけば,キーワード

も自ずと頭の中に入ってくるは

ずである。ただし,直前期にお

いてキーワードが頭に入ってい

ない論点に関しては,純粋な暗

記作業が必要となる。

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6 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

MEMO

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管理会計論レジュメ ● 7

■ 原価計算方法の選択基準について

論 点

問題2-6 相互配賦法の適用

問題3-6 非度外視法を採用する意義

問題4-8 個別原価計算と組別総合原価計算の比較

問題4-10 組別総合原価計算と等級別総合原価計算の選択

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8 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

問題2-6 相互配賦法の適用

問 題

コンピューター技術の発展により,現代的には計算に手間がかかるという

問題は完全に克服されており,補助部門費の配賦方法としては, も正確か

つ理論的な相互配賦法を用いるのが原則であるとする見解がある★1。そこで,

この見解の妥当性について,あなたの意見を述べなさい。

解 答

計算に手間がかからないことと計算に必要なデータを容易に入手できる

こととは別問題であり,現実には,補助部門間の用役授受の事実を測定する

システムを持たないケースや,費用対効果の観点からこれを測定することが

合理的でないケースも存在する。したがって,相互配賦法の適用は,補助部

門間の用役授受の事実を経済合理的に測定できるケースに限って考慮され

るべきであり,その適用が原則であるとする見解は妥当でない。

Logical Flow

コンピューター技術の発展

計算に手間がかかるという問題は完全に克服されている

↑↓

計算に必要なデータを容易に入手できるとは限らない

補助部門間の用役授受の事実を測定するシステムの有無

システムあり

経済合理的な測定可能性

(相互配賦法実施の費用対効果)

可能

(費用★2<効果)

相互配賦法

不可能

(費用★2>効果)

直接配賦法

システムなし

直接配賦法

相互配賦法の適用が原則であるとする見解は妥当でない

Key Word

補助部門間の用役授受の事実,費用対効果

典型度

A 重要度

★1 「原価計算基準」において

は,直接配賦法,階梯式配賦法,

相互配賦法の選択が認められて

いる。

「原価計算基準」一八(二)参照。

★2 ここでの費用とは,補助部

門間の用役授受の事実の測定に

要する手間とコストであり,相

互配賦法による計算自体にかか

る手間とコストではない。

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管理会計論レジュメ ● 9

解 説

補助部門を複数設定しており,補助部門間に用役授受の事実が認められる

場合,配賦計算上これをどの程度考慮するかにより,補助部門費の配賦方法

は,直接配賦法,階梯式配賦法,相互配賦法に大別される(図表2-8)。

このうち,相互配賦法の適用に当たっては,従来は計算に手間がかかると

いう問題があったため,直接配賦法や階梯式配賦法といった簡便法の適用に

も合理性が認められた。しかしながら,現代的には,表計算ソフトにデータ

を入力しさえすれば,後はコンピューターが自動的に計算を行ってくれるた

め,計算に手間がかかるという問題は完全に克服されている。したがって,

入力するデータの存在を所与とすれば, も正確かつ理論的な相互配賦法

(連続配賦法★3)を適用すべきということになる。

ただし,そもそも補助部門間の用役授受の事実を測定するシステムがなけ

れば直接配賦法によらざるをえないし,システムがあったとしても,経済合

理的に入手できるとは限らない。すなわち,補助部門間の用役授受の事実の

測定に要するコストと,相互配賦法の採用によって配賦額を改善することで

得られる追加的情報の価値とを比較考慮し,前者が後者を上回る(つまり,

直接配賦法と相互配賦法で計算結果に大差がない)のであれば,直接配賦法

で足りるということになる。

なお,本問の議論からすれば,現代的には直接配賦法と相互配賦法の二者

択一の問題となり,階梯式配賦法の存在意義は殆どないことに注意する★4。

図表2-8 補助部門費の配賦方法

階梯式配賦法

直接配賦法

相互配賦法

簡便法

純粋法

連続配賦法

連立方程式法

配賦方法

★3 受験上は手計算によるた

め,相互配賦法といえば連立方

程式法を指すのが通常である。

ただし,実務的には表計算ソフ

トを利用して簡単に連続的な相

互配賦が可能であることから,

ここでの相互配賦法とは連続配

賦法を指す。

★4 階梯式配賦法を採用する場

合であっても,補助部門間の用

役授受の事実を測定する必要が

あるが,同じ手間とコストをか

けるのであれば,より正確かつ

理論的な相互配賦法を採用すべ

きだからである。

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10 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

問題3-6 非度外視法を採用する意義

問 題

総合原価計算において,仕損費の計算処理に非度外視法を採用する意義に

ついて,正確な製品原価の計算と原価管理の観点から説明しなさい。

解 答

正確な製品原価の計算の観点からすれば,非度外視法を採用する意義は殆

どないといってよい。なぜなら,非度外視法によって仕損費の正確な負担計

算が可能になるとしても,度外視法と非度外視法の計算結果には大差がなく,

仕損の発生状況の把握に要する手間とコストは,非度外視法の採用による追

加的情報の価値を上回るのが通常だからである。

一方,原価管理の観点からすれば,非度外視法を採用する意義は大いにあ

る。なぜなら,仕損の発生に対する問題意識や仕損を削減しようというモ

ティベーションは,仕損費を明示することによってはじめて喚起することが

できると考えられるからである。

Logical Flow

正確な製品原価の計算の観点

度外視法による

計算結果と大差はない

費用★1>効果

採用する意義は殆どない★2

原価管理の観点

仕損削減のモティベーション

を喚起する必要

仕損費を明示するのが効果的

採用する意義あり

Key Word

計算結果,費用対効果,仕損削減,モティベーション,仕損費,明示

典型度

B 重要度

★1 ここでの費用とは,仕損の

発生状況の把握に要する手間と

コストであり,非度外視法によ

る計算自体にかかる手間とコス

トではない。

★2 「原価計算基準」では,正

確な製品原価の計算に基づく財

務諸表作成を も重要な原価計

算目的として捉えているため,

あえて非度外視法を採用する意

義は希薄であり,より簡便的な

度外視法を予定したものと解さ

れる。「原価計算基準」二七,問

題3-3参照。

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管理会計論レジュメ ● 11

解 説

非度外視法を採用することによるメリットとしては,一般に,①仕損や減

損の発生態様を考慮した正確な負担計算が可能であるという点(正確な製品

原価の計算)と,②仕損費という写像を媒介として仕損削減のモティベー

ションを喚起できるという点(原価管理ないし品質管理)が挙げられる。

ただし,仕損費の負担計算の精度が完成品原価等に与える影響は微々たる

ものであるため★3,非度外視法を採用する意義は,実質的には,②原価管理

の観点においてのみ認められるといえる。別言すれば,非度外視法の 大の

特徴は,度外視しない(仕損費を明示する)点にあるといえる(図表3-7)。

なお,非度外視法に類似の目的,計算構造を有する原価計算手法として,

近年,MFCAが提唱されているが,両者では仕損費等の可視化の程度が異

なることに注意する★4。

図表3-7 非度外視法における仕損費の可視化

★3 そもそも仕損費や減損費の

発生額がそれほど多額に上るわ

けではないし,完成品と比べれ

ば月末仕掛品の数量は圧倒的に

少ないからである。

★4 非度外視法とMFCAの比

較(問題3-7)

投入

1,200個

仕損品

200個

良品

1,000個

200,000円

1,200,000円 1,000,000円

可視化により問題意識

とモティベーションの

喚起が可能 分離計算

投入

1,200個

仕損品

200個

良品

1,000個

200,000円

1,200,000円 1,200,000円

仕損費を可視化

できない

度外視

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12 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

問題4-8 個別原価計算と組別総合原価計算の比較

問 題

個別原価計算と組別総合原価計算の類似点と相違点を説明しなさい★1。

解 答

個別原価計算と組別総合原価計算は,いずれも製造原価を(組)直接費と

(組)間接費とに分類し,前者は各製造指図書ないし各組製品に直課し,後者

は各製造指図書ないし各組製品に配賦するというように,原価の集計方法に

おいて類似する。

ただし,個別原価計算では製造指図書別に原価を集計するのに対し,組別

総合原価計算では各組製品の期間生産量に原価を集計するというように,原

価の集計単位において相違する。

Logical Flow

個別原価計算

直接費:各指図書に直課

間接費:各指図書に配賦

組別総合原価計算

組直接費:各組製品に直課

組間接費:各組製品に配賦

原価の集計方法は類似

↑↓

原価の集計単位は相違

製造指図書別に原価を集計

各組製品の

期間生産量に原価を集計

Key Word

(組)直接費,(組)間接費,直課,配賦,製造指図書,期間生産量

解 説

組別総合原価計算は,個別原価計算に も近い総合原価計算の形態であり,

製品との関連における分類を基礎として,複数の原価計算対象に原価を集計

するという点で個別原価計算に類似する。

ただし,総合原価計算の一形態である以上,個別原価計算のように製造指

図書そのものを原価集計単位とするわけではない。総合原価計算では,標準

製品が量産されているために,同じ種類で同じ期間に生産された製品である

限り,製造原価を製造指図書別に区別する必要がない。したがって,当該期

典型度

A 重要度

★1 「原価計算基準」二三,

二四,三一

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管理会計論レジュメ ● 13

間に発行された継続製造指図書★2に基づいて各組製品の期間生産量を把握し,

これに原価を集計すれば足りるのである。

以上の内容は,製造指図書の機能という観点からも説明することができる。

例えば,ある工場において,製品Xと製品Yの2種類の製品を製造しており,

製品Xの製造指図書番号は100番台,製品Yの製造指図書番号は200番台であ

るものとしよう(図表4-10)。この場合,個別原価計算と組別総合原価計算

のいずれにおいても,(組)直接費の識別と集計に製造指図書が利用される。

すなわち,出庫票や作業時間票に製造指図書番号の記載があれば(組)直接費

であり,これを拠り所として(組)直接費を集計するのである★3。ただし,個

別原価計算においては#101,#102といった製造指図書別に直接費を集計す

るのに対し,組別総合原価計算においては#101~#105と#201~#205と

いった括りで製品全体に組直接費を集計するのであって,各組製品の期間生

産量を構成する個々の製造指図書に原価集計単位としての機能はないので

ある。

なお,個別原価計算を採用する場合には,製造指図書別の直接材料消費量

や直接作業時間を測定する必要があるが,組別総合原価計算を採用する場合

には,製品別のそれが分かれば足りる。したがって,個別原価計算と組別総

合原価計算の選択に際しては,製造指図書別の直接材料消費量や直接作業時

間の測定に要する手間とコスト★4と,個別原価計算を実施することによって

得られる追加的情報の価値を比較考慮し,前者が大きければ組別総合原価計

算を,後者が大きければ個別原価計算を選択すべきである。

図表4-10 製造指図書の機能の比較

★3 組別総合原価計算であれ

ば,製造指図書番号が 100 番台

であれば製品Xの組直接費,200

番台であれば製品Yの組直接費

といった具合に識別し,集計に

利用する。

組別総合原価計算 個別原価計算

組直接費

#101

#102

#103

#201

#202

#203

#101

#102

#103

#201

#202

#203

直接費

組直接費の識別と

集計に製造指図書

を利用

直接費の識別と集

計に製造指図書を

利用

組製品全体に

直接費を集計

製造指図書別に

直接費を集計

★2 継続製造指図書

継続的に生産される標準製品の

生産を指示する製造指図書であ

り,単純総合原価計算,等級別

総合原価計算,組別総合原価計

算を採用する場合に発行される

製造指図書の総称である。当該

指図書の生産が完了すれば効力

が自動的に消滅する特定製造指

図書に対して,反復連続生産を

行うがために効力が長期間継続

するという特徴がある。

★4 個別原価計算による製造指

図書別の原価集計自体にかかる

手間とコストではない。

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14 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

問題4-10 組別総合原価計算と等級別総合原価計算の選択

問 題

複数種類の製品を量産する場合において,組別総合原価計算と等級別総合

原価計算の選択が問題となる条件を指摘し,その条件下における両原価計算

の選択基準について説明しなさい。

解 答

組別総合原価計算と等級別総合原価計算の選択が問題となるのは,より正

確な組別総合原価計算を適用可能な条件下においてである。すなわち,組別

総合原価計算を実施するためには,製品別の直接材料費消費量や直接作業時

間を測定する必要があるため,それらの測定が可能であれば,両原価計算の

選択が問題となる。

両原価計算の選択に当たっては,製品別の直接材料費消費量や直接作業時

間の測定にかかる手間とコストと,組別総合原価計算を実施することによっ

て得られる追加的情報の価値とを比較考慮する。その結果,前者が後者を上

回るのであれば等級別総合原価計算を,逆の場合には組別総合原価計算を選

択すべきである。

Logical Flow

複数種類の製品を量産する場合

製品別の直接材料消費量や直接作業時間の測定可能性

可能

組別総合原価計算の適用が可能

組別総合原価計算と

等級別総合原価計算の選択が問題となる

経済合理的な測定可能性

(組別総合原価計算実施の費用対効果)

不可能

組別の適用は不可能

組別と等級別の

選択は問題とならない

可能

(費用★1<効果)

組別総合原価計算

不可能

(費用★1>効果)

等級別総合原価計算

典型度

B 重要度

★1 ここでの費用とは,製品別

の直接材料消費量や直接作業時

間の測定に要する手間とコスト

であり,組別総合原価計算自体

にかかる手間とコストではな

い。

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管理会計論レジュメ ● 15

Key Word

製品別の直接材料消費量,製品別の直接作業時間,費用対効果

解 説

等級別総合原価計算においては,直接費であっても等価係数に基づいて各

等級製品全体に配賦するのに対し,組別総合原価計算にあっては,直接費は

各組製品全体に直課する(図表4-12)。したがって,組別総合原価計算を実

施するためには,製品別の直接材料消費量や直接作業時間の測定が必須とな

り,それらを測定可能な場合において,組別総合原価計算と等級別総合原価

計算の選択が問題となる。

いずれの原価計算を選択すべきかは,費用対効果の問題である。例えば,

等価係数がインプット基準で合理的に設定されており,簡便的な等級別総合

原価計算によったとしてもより厳密な組別総合原価計算を実施した場合と

計算結果が殆ど変わらないような場合には,わざわざ手間とコストをかけて

製品別の直接材料消費量や直接作業時間を測定することに大きな意義は見

出し難い。したがって,そのようなケースにおいては,等級別総合原価計算

で足りるということになろう。

なお,等級別総合原価計算が適用されるような生産形態においては,一般

に,手間とコストをかけさえすれば組別総合原価計算を適用しうるとされる。

ただし,直接材料の投入が製品別に行われていないケースや,複数種類の製

品を1個流しで生産しているケース★2のように,製品別の直接材料消費量や

直接作業時間の測定が不可能(困難)なケースもある。したがって,そのよう

なケースにおいては,そもそも組別総合原価計算を適用することは不可能

(困難)であり★3,等級別総合原価計算との選択も問題とならないことに注意

する。

項 目 等級製品 組製品

生産工程 同一工程★4 限定なし★4

製品種類 同種製品★5 異種製品★5

直 接 費 製品全体に配賦 製品全体に直課

間 接 費 製品全体に配賦 製品全体に配賦

図表4-12 等級製品と組製品の比較

★2 製品Xを 100 個→製品Yを

100 個といった具合にロット流

しで生産を行う場合には,生産

ラインに複数種類の製品が同時

にのることは殆どないため,製

品別の直接作業時間の測定は比

較的容易であるといえる。しか

し,X→Y→Z→X→Z→Xと

いった具合に1個流しで生産を

行う場合には,生産ラインに複

数種類の製品が常に同時にのる

ことになるため,製品別の直接

作業時間の測定にはかなりの手

間とコストを要する。

★3 近年は顧客ニーズの多様化

を受けて小ロットないし1個流

しでの生産が増加しているた

め,組別総合原価計算の適用に

限界が生じているといえる。

★4 「原価計算基準」によれば,

等級製品については「同一工程

において」連続生産されること

になっているが,組製品につい

てそのような限定はない。これ

は,異なる工程で異種製品を連

続生産する生産形態を想定した

ものであると解されている。「原

価計算基準」二二,二三参照。

★5 額面上は,等級製品=同種

製品,組製品=異種製品という

ことになるが,現実問題として

は,等級製品と組製品の区別は

曖昧であり,等級別総合原価計

算を適用する製品を(たとえ異

種製品であっても)等級製品,組

別総合原価計算を適用する製品

を(たとえ同種製品であっても)

組製品と称することになる。

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16 ● 2016 論文グレードアップ講座ガイダンス

まとめ

論点 ①費用 ②効果 選択

直接配賦法と相

互配賦法の選択

補助部門間の用

役授受の事実の

測定に要する費

相互配賦法の採

用(計算結果の改

善)によって得ら

れる追加的情報

の価値

①>②:直接配賦

①<②:相互配賦

度外視法と非度

外視法の選択

仕損や減損の発

生状況の把握に

要する費用

非度外視法の採

用(計算結果の改

善)によって得ら

れる追加的情報

の価値

①>②:度外視法

(原価管理の見地

から非度外視法

を採用する意義

はある)

①<②:非度外視

組別総合原価計

算と個別原価計

算の選択

指図書別の直接

材料消費量や直

接作業時間の測

定に要する費用

個別原価計算の

採用(計算結果の

改善)によって得

られる追加的情

報の価値

①>②:組別総合

原価計算

①<②:個別原価

計算

等級別総合原価

計算と組別総合

原価計算の選択

製品別の直接材

料消費量や直接

作業時間の測定

に要する費用

組別総合原価計

算の採用(計算結

果の改善)によっ

て得られる追加

的情報の価値

①>②:等級別総

合原価計算

①<②:組別総合

原価計算

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