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関西の E!(いい)情報をお届けします! 6 < 特集 > ダイバーシティ経営企業100選・ ・・・・・・・・・・・・・・・ 2ページ ~多様な人材を活かしたイノベーションと価値創造に向けて~ < 連載 > クリエイティブ企業事例紹介 「ロングセラー日用品(1)」 ・・・・ 10ページ 近畿の伝統的工芸品産業 「紀州へら竿」 ・・・・・・・・・・・・ 12ページ 知的資産経営活用のすすめ 「但陽信用金庫の取組」 ・・・・・・・ 14ページ

関西のE!(いい)情報をお届けします! · e!kansai 2013年6月号 3 特 ・・集 シティ経営企業100選」事業を平成24年度から開始しました。

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関西の E!(いい)情報をお届けします!

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< 特集 >ダイバーシティ経営企業100選・・・・・・・・・・・・・・・・ 2ページ~多様な人材を活かしたイノベーションと価値創造に向けて~

< 連載 >クリエイティブ企業事例紹介 「ロングセラー日用品 (1)」・ ・・・・ 10ページ近畿の伝統的工芸品産業 「紀州へら竿」・・・・・・・・・・・・・ 12ページ知的資産経営活用のすすめ 「但陽信用金庫の取組」・・・・・・・・ 14ページ

2 E!KANSAI 2013 年 6月号

ダイバーシティ経営企業100選~多様な人材を活かしたイノベーションと価値創造に向けて~                   

担当課室:産業人材政策課

◇ 背景・事業の目的

 現在の日本経済は、中長期的には人口減少や少子高齢化によって我が国の潜在成長力が低

下する中で、縮小の連鎖が継続する「やせ我慢」の経済となっています。これを打開すべく、

昨年6月、経済産業省産業構造審議会新産業構造部会「人を活かす社会ビジョン」において、

価値創造社会への転換を実現するために、女性、若者、高齢者、障がい者等の一人一人が置

かれた環境と能力に応じて価値創造に参画し、多様な人材の能力を引き出し、競争力を強化

していく経営(ダイバーシティ経営)の推進が必要であると提言されています。

 しかしながら、多くの日本企業では多様な人材の積極的な活用への動きは鈍いのが現状で

あり、ダイバーシティ経営に向けた各社の自立的な取組を後押しし、加速化させることが必

要です。

【平成24年6月産業構造審議会新産業構造部会報告書より抜粋】

◇ ダイバーシティ経営企業100選とは

 経済産業省では「多様な人材の能力を最大限発揮させることにより、イノベーションの創出、

生産性向上等の成果を上げている企業(=ダイバーシティ経営企業)」を表彰する「ダイバー

3E!KANSAI 2013 年 6月号

シティ経営企業100選」事業を平成24年度から開始しました。

 本事業では「優れたダイバーシティ経営企業」を選定・表彰し、ベストプラクティス集を作成・

公表することにより各企業の取組内容を広く紹介し、多様な人材の積極的な活用に向けた動

きの加速化を図ります。なお、本事業では、平成24年度からの3年間で約100社の「ダ

イバーシティ経営企業」を選定していく予定です。

■経済産業省本件紹介URL:

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen.html

◇ ダイバーシティ経営とは

 「多様な人材※1を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベー

ションを生み出し、価値創造につなげている経営※2」を指します。これからの日本企業が

競争力を高めていくために、必要かつ有効な戦略といえます。

※1多様な人材とは

性別、年齢、国籍、障害の有無などだけでなく、キャリアやライフスタイルなどの

多様性も含みます。

※2イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営とは

いきいきと働くことの出来る環境を整えることによって、「自由な発想」が生まれ、

新しい商品やサービスなどの開発につながります。

◇ 平成24年度ダイバーシティ経営企業100選について

 昨年9月24日から公募を開始し、11月2日に締め切られましたが、全国で160を超

える応募があり、外部委員による書面審査、ヒアリング審査を経て、全国で43社(大企業

21社、中小企業22社)が選定されました。また、「100選」に併せて、企業の「ダイバー

シティ経営」をコンサルティング等を通じてサポートする事業を実施している企業を表彰す

る「ダイバーシティ促進事業表彰」6社も選定されました。

評価のポイント

①取組内容

○実践性:制度導入などの形式的な取組にとどまらず、人材活用の取組が現場レベルで

実践されていること

○革新性・先進性:従来とは異なる新たな取組を進めていたり、あるいは同業・同規模

他社に先がけて取組を開始したりするなど、「モデル」として他企業の参考になること

○トップのリーダーシップ:経営トップの明確な意志が表明され、現場まで浸透してい

ること

②成果:多様な人材の能力発揮により、イノベーションの創出、生産性向上等の成果を上げ

ていること

4 E!KANSAI 2013 年 6月号

・ 近畿管内ではコクヨ株式会社(大阪府)、サラヤ株式会社(大阪府)、株式会社天彦産業(大

阪府)、株式会社りそな銀行(大阪府)、株式会社エス・アイ(兵庫県)、ウインナック株式会

社(和歌山県)の6社が100選に選定されました。100選各社の概要は以下のとおりです。

 なお、選定企業における取組の詳細については本ウェブマガジンE!KANSAIの次号

以降に順次掲載していく予定です。

コクヨ株式会社 評価対象:障がい者

<< 特例子会社を活用して、障がい者の適正に見合った業務創出で収益性の向上を実現 >>

<企業概要>

本 社 大阪市東成区大今里南6-1-1設 立 1905年資 本 金 15, 800百万円従業員数 363名(単体)事業概要 持ち株会社H P http://www.kokuyo.co.jp/

5E!KANSAI 2013 年 6月号

サラヤ株式会社 評価対象:女性、外国人、障がい者、高齢者、キャリア・スキル・経験の多様な人材活用

<< 事業の多角化や海外展開等により、人材の多様化が不回避となり、女性専門職の

キャリア継続支援、外国人の積極的な採用・登用を行っている >>

<企業概要>

株式会社天彦産業 評価対象:女性、高齢者

<< 女性の高い語学力を十分活用するため、海外販売強化に向けた女性中心のウェブ販

売サービス(TWS:Tenhiko Web Sales )チームを立ち上げ、新規の収益源を獲得 >>

<企業概要>

株式会社りそな銀行 評価対象:女性

<< 女性のキャリアアップと両立支援を行うことで女性が働きやすい職場環境を整備

し、「女性に指示される銀行№1」を目指す >>

<企業概要>

本 社 大阪市東住吉区湯里2-2-8 設 立 1959年資 本 金 45百万円従業員数 1,102名

事業概要石鹸・洗剤・消毒剤等予防衛生商品と衛生機器及び食品・

化粧品等の開発・製造・サービスH P http://www.saraya.com/

本 社 大阪市住之江区南港南5-5-26設 立 1944年資 本 金 20. 8百万円従業員数 35名事業概要 特殊鋼加工・素材販売H P http://www.tenhiko.co.jp/

本 社 大阪市中央区備後町2-2-1設 立 1918年資 本 金 279,900百万円従業員数 15,190名事業概要 預金業務、貸出業務、商品有価証券売買業務等H P http://www.resona-gr.co.jp/resonabank/index.html

6 E!KANSAI 2013 年 6月号

株式会社エス・アイ 評価対象:女性、外国人、障がい者、高齢者、キャリア・スキル・経験の多様な人材活用

<< 自由出勤制度とワークシェアを支える独自の評価・賃金体系構築により、多様な

働き方を実現 >>

<企業概要>

ウィンナック株式会社 評価対象:障がい者

<< 障がい者に安心して働けるように相談員を配置するなど安定雇用の実現と継続的

な所得収入の確保を実現 >>

<企業概要>

◇ 平成24年度表彰式・シンポジウム

 平成25年3月22日、東京のイイノホールにて表彰式・シンポジウムが開催されました。

表彰式では100選に選定された43社の方々とともに促進事業の6社も合わせて表彰され

ました。

 400名にも上る方々が来場され、国際通貨基金(IMF)ラガルド専務理事のビデオメッ

セージ、選定委員会の委員、マスコミの関係者、現役の大学生も交えてのパネルディスカッショ

ンで、大いに盛り上がりました。

本 社 姫路市石倉26番地の3設 立 1991年資 本 金 10百万円従業員数 64名

事業概要情報処理・データ入力・加工業務、各種アウトソーシング、

ホームページ作成・保守、WEBサイト運営H P http://si-himeji.co.jp/

本 社 和歌山市雑賀崎2017-3設 立 1994年資 本 金 80百万円従業員数 52名

事業概要ダイカスト鋳造、グラビティ鋳造、金型製造、

各種金属製品のバリ取り等加工、リサイクルトナー製造H P http://www.winnac.co.jp/

7E!KANSAI 2013 年 6月号

◇ ロゴマークについて

 株式会社 IRIS のご協力により、「ダイバーシティ経営企業100選」のロゴマークを作成

いたしました。

 一つ一つの丸を人材に見立て、多様な人材の活用によって、右肩上がりに成長していくイ

表彰式には佐藤政務官が出席 シンポジウムの様子

8 E!KANSAI 2013 年 6月号

メージで、吹き出しにより新たなオピニオンが生まれることを表しています。「新しい価値を

生み出し、創造する企業」のシンボルとして、今回選定された企業に活用いただくとともに、

認知が広がることを期待しています。

◇ ベストプラクティス集を取りまとめました

 ベストプラクティス集には、100選企業各社のダイバーシティ経営に対する取組事例の

概要版、うちモデル事業となる19社の詳細版、促進事業表彰6社の概要、受賞企業各社の

取組事例から共通的な要素を抽出し、「競争優位を築くための人材活用戦略」としてのダイバー

シティ経営の基本的な考え方と進め方をまとめた「価値創造のためのダイバーシティ経営に

向けて」(ガイドライン)を収録しております。これらを参考としつつ、事業目的や市場規模

等に応じて、自社にとって有効な「ダイバーシティ経営」のあり方を創出し、各社において、

競争力強化につなげていただくことを期待しています。

ベストプラクティス集URL:

http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/pdf/130515_bestpractice.pdf

◇ ダイバーシティ経営の効果

 ダイバーシティ経営は、社員の多様性を高めること自体が目的ではありません。また、福

利厚生や企業の社会的責任(CSR)の観点のみを直接的な目的とするものでもありません。

経営戦略を実現するうえで不可欠な多様な人材を確保し、そうした人材が意欲的に仕事に取

り組める職場風土や働き方の仕組みを整備することを通じて、適材適所を実現し、その能力

を発揮させることにより「経営上の成果」につなげることを目的としています。「経営上の成

果」は、以下の4つに分けて考えることができます。

①プロダクト・イノベーション

対価を得る製品・サービス自体を新たに開発したり、改良を加えたりするもの(多様な

人材が異なる分野の知識、経験、価値観を持ち寄ることで「新しい発想」が生まれます。)

②プロセス・イノベーション

製品・サービスを開発、製造、販売するための手段を新たに開発したり、改良を加えた

りするもの(管理部門の効率化を含む)(多様な人材が能力を発揮できる働き方を追求す

ることで、効率性や創造性が高まります。)

③外的評価の向上

顧客満足度の向上、社会的認知度の向上など・(多様な人材を活用していること、及びそ

こから生まれる成果によって、顧客や市場などからの評価が高まります。)

④職場内の効果

従業員のモチベーション向上や職場環境の改善など・(自身の能力を発揮できる環境が整備

されることでモチベーションが高まり、また、働きがいのある職場に変化していきます。)

9E!KANSAI 2013 年 6月号

 このうち、①と②は、企業の収益・業績に直結しうる「直接的効果」をもたらし、③と④は、

企業の収益・業績に「間接的効果」をもたらすものです。ダイバーシティ経営には、多様な

人材の確保、定着、能力発揮などのために様々な取組が含まれ、その過程で①~④の成果が

複合的に現れてきます。

◇ ダイバーシティ経営の基本的な考え方と進め方

 経済産業省ではベストプラクティス集の中で、ダイバーシティ経営推進のために必要な事

項や進め方についてきめ細かく掲載しております。詳細についてはベストプラクティス集の

「競争優位を築くための人材活用戦略」(ガイドライン)をご覧ください。

(参考)

■近畿経済産業局本件紹介URL:

http://www.kansai.meti.go.jp/2sangyokikaku/koyou/diversitykigyo100sen_2013bestp

ractice.html

■経済産業省本件紹介URL:

http://www.meti.go.jp/press/2013/05/20130516001/20130516001.html

◇ 今後のスケジュール

 近畿経済産業局では、平成24年度に100選に選定された近畿管内の企業のご協力を得

て、7月中旬に大阪で各社の取組事例を紹介するフォーラムを開催する予定です。ダイバー

シティ経営を活用して企業の競争力強化を目指す経営者、担当者の皆様やダイバーシティ経

営に関心をお持ちの経営者の皆様、大学関係者、地方自治体の担当部署の皆様方のご来場を

お待ちしております。

 また、経済産業省では今年度も昨年度と同様に100選の公募を7月~9月にかけて行い、

書面審査、ヒアリング審査を経て、平成25年2月には表彰企業を選定、3月に表彰式を開

催する予定です。すでにダイバーシティ経営に取り組んでいる企業の皆様は奮ってご応募い

ただきますようよろしくお願いします。

問い合わせ先 近畿経済産業局地域経済部産業人材政策課 

電 話 06-6966-6013

10 E!KANSAI 2013 年 6月号

クリエイティブ

企業事例紹介

 同社は明治28年に糊の製造を開始した120年近くの歴史を持つ老舗企業です。どうぶ

つ糊のキャラクター「フエキくん」で多くのファンに親しまれています。徹底した品質管理

と安全性に優れた同社の製品は、保育園、幼稚園で圧倒的なシェアを誇っています。また、「フ

エキくん」ブランドを活かした新たな商品展開にも取り組んでいます。

■安全性の高いホルマリン無添加の糊        

 食品と同じく腐るものであったでんぷん糊に、他社に先駆けてホルマリンを添加し、日本

初の腐らない「フエキ糊」を明治28年に開発しました。昭和40年代にホルマリンの発が

ん性が指摘されると、約17年もの歳月をかけて研究を重ね、ホルマリンを添加せずとも腐

らない新フエキ糊の開発に成功しました。とうもろこし由来のデンプンを100%原料とし、

子供が食べてしまっても問題ない安全性の高い商品として、保育園、幼稚園からの信頼を得

ています。

■フエキくんのキャラクター展開

 昭和50年に販売したどうぶつ糊の、帽子を被ったぱっち

りした目が特徴の犬のキャラクター「フエキくん」。幼少期

に「フエキくん」に慣れ親しんだ世代による熱圧的なファン

がいることに気づき、新たなキャラクタービジネスを展開し

ています。ライセンス契約を結び、時計やポーチ、ボールペン、

入浴剤といった分野に進出し、50種類以上のグッズが生み

出されています。

■安全から生まれた化粧品への展開

 長年、安全性の高いでんぷん糊を提供していた同社は、糊

の研究で培った技術を基に平成20年から化粧品事業に参

入しました。安全性の高い商品イメージと「フエキくん」の

キャラクターが融合した「フエキなかよしハンドクリーム」

が大ヒット商品となっています。

法 人 名 不易糊工業株式会社所 在 地 大阪府八尾市竹渕東 2-62社 員 数 90名設 立 年 明治19年(1886年)資 本 金 3000万円U R L http://www.fueki.co.jp

当局では平成24年度に「近畿地域のクリエイティブ産業実態調査」として様々なクリエイティブ企業の事例を収集しており、本稿ではその中で調査した企業の事例を紹介させていただきます。

天然デンプン100%のフエキ糊

フエキなかよしハンドクリーム

連載:クリエイティブ企業事例紹介 第 1 回 「ロングセラー日用品 (1)」 担当課室:クリエイティブ産業ユニット

不易糊工業 株式会社~徹底した品質管理による安全性に優れた糊 “フエキ糊 ” の挑戦~                   

11E!KANSAI 2013 年 6月号

クリエイティブ

企業事例紹介

 同社は家庭用灯油ポンプとして日本で最初に製品化された「トーヨーポンプ」を製造販売

しています。製品の品質改善、自社独自の製造技術の開発を実施し、高い品質によって他社

製品との差別化に成功しました。商品価格の下落に対応するために早い時期から海外生産に

移行するとともに、ホームセンターや100円ショップ等での販売にも対応しています。国

内シェア4割を占め、業界トップの座を揺るぎないものとしています。

■8割を占める自社ブランド製品

 1971年から「トーヨーポンプ」ブランドのポンプを製造販売しています。ポンプ製品

の製造販売額が全売上高の70%、うち自社ブランド製品が80%を占めています。また、

高い製造技術を背景として、灯油ストーブメーカー等とタイアップしたOEM商品の生産も

行っています。

■独自の成型品製造技術

 生産当初の品質のバラつき、繋ぎ目の破損、空気漏れなど

を防ぐため、原料配合の見直しなどによる品質改善を繰り

返した結果、素材開発で安定した製造技術を確立しました。

さらに、長年に渡る顧客のクレームから学んだ経験を活か

し、同社独自のブロー成型品・射出成型品製造技術により、

他社製品との差別化に成功しています。

■既存概念から脱却した海外市場開拓

 原材料高や商品価格の大幅な下落という困難な状況下に対応す

るため、時代から求められる価格に製品価格をマッチさせるべく

早い段階から中国に生産拠点を移し、東南アジアを中心とした海

外市場の開拓を行ってきました。

 また、国内市場においては、ホームセンター等の量販店にとど

まらず、コンビニエンスストアや 100 円ショップ等でも販売

し、時代のニーズに合わせた販売戦略を展開しています。

三宅化学 株式会社~家庭用灯油ポンプのパイオニア・“ トーヨーポンプ ”~

法 人 名 三宅化学株式会社所 在 地 奈良県磯城郡田原本町八尾 44-1社 員 数 30名設 立 年 昭和52年(1977年)資 本 金 1000万円U R L http://tp-miyake.co.jp/

家庭用灯油ポンプ「トーヨーポンプ」

満タンで自動停止のセンサーが

ついた電動ポンプ

12 E!KANSAI 2013 年 6月号

近畿の伝統的

工芸品産業

 平成25年3月8日、経済産業省は、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に定める伝統

的工芸品として、和歌山県の 「紀州へら竿」 を新たに指定しました。「伝統的工芸品」 とは、

日常生活で使用される工芸品で、主な製造過程は手作り、伝統的な技術・技法、原材料で製

造され、一定の地域にて産業を形成している等様々な要件を満たし経済産業大臣の指定を受

けた伝統的工芸品です。近畿では16年ぶり、44品目目の伝統的工芸品となった 「紀州へ

ら竿」。紀州製竿組合 田中 和仁組合長に、伝統ある紀州へら竿の歴史、指定までの道のり、

今後の取り組みについてお話を伺いました。

■紀州へら竿の歴史

 紀州へら竿の歴史は明治15年、初代竿正が大阪にて創

業したのが始まりになります。大正に入ると、初代竿正の

弟子達はより良い材料を模索し、和歌山県伊都地域に生育

する高野竹を使用するようになり、現在の主な製造地域で

ある橋本市にへら竿作りが根付きました。

 昭和に入ってからは、全国的にへら鮒釣りブームが起こ

り、へら竿師も増加、昭和34年には紀州製竿組合が結成

されました。

 現在でも、紀州へら竿は、竹製のへら竿として全国一位

の生産量を誇り、日本全国のへら鮒釣り愛好者に使用され

ています。

 一方で、現在では安価なカーボン竿の普及による需要低迷、竿師の高齢化、後継者の確保

等他の伝統産業と同様の課題を抱えています。

■伝統的工芸品指定への道のり

 このように多くの課題を抱え、竿師の高齢化が進んでいく中で、伝統的工芸品の中では珍

しく、全ての工程を一人の竿師が行う紀州へら竿を後世に受け継がせるべく、昭和55年頃

から国の伝統的工芸品指定に向けた取り組みが始まりました。

 しかし、指定要件の決定的な証明ができないなど、指定への道のりは決して容易ではあり

ませんでした。田中組合長によると、当時は永年にわたり収集した膨大な文献と資料に頭を

抱える日々が続いたそうです。

 そんな中、和歌山県庁や橋本市役所の職員の方も一緒になって、系譜や他の竿産地との違

い等懸命に資料を探しました。

 そんな試行錯誤の中、指定の決め手となったのが 「鑑定」 です。組合に保管されていた初

連載:近畿の伝統的工芸品産業 第 1 回 「紀州へら竿」

近畿で16年ぶりに経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されました

紀州へら竿を日本の文化へ~釣り文化の伝統師、新たな挑戦~                   

担当課室:製造産業課

多くのへら鮒釣りファンに愛さ

れる紀州へら竿

13E!KANSAI 2013 年 6月号

近畿の伝統的

工芸品産業

組 合 名 紀州製竿組合U R L http://www4.ocn.ne.jp/~herazao/所 在 地 和歌山県橋本市清水220-4電 話 番 号 0736-32-8150

代竿正の釣り竿が初代竿正のものと鑑定により証明され、現在の技術・技法、原材料が初代

竿正の時代のものと同じであることを客観的に証明できたのです。 

■日本を代表する文化に

 こうして、長い年月と熱い思いが実を結び、「紀州へら竿」は伝統的工芸品に指定されました。

今後は、後継者育成学校 (仮称 )を開校し、後継者の育成、技術の伝承に努める予定です。また、

紀州へら竿展やへら鮒釣り大会、へら鮒釣り教室等を開催して新たな顧客を開拓し、需要獲

得を目指しています。

 平成21年に組合長に就任した田中氏は、かつて大手電機メーカーでエンジニアをされて

いました。しかし、へら鮒釣りの魅力にとりつかれ、へら竿を作る側に転身。この業界では

異例の経歴です。

 伝統的工芸品に指定され、組合長の中でも心境の変化がありました。「指定を受けてから、

ただ今まで通り紀州へら竿を作るだけでなく、日本の文化を創っていくんだという強い意識

に変わった。」 「へら鮒釣りだけでなく、釣りをしてほしい、アウトドアをもっと多くの人に

楽しんでほしい。」 など気軽にへら竿を持てる環境作りに産地全体で知恵を絞っていくとのこ

とです。

 これからも 「釣り文化の伝統師」 田中組合長、紀州製竿組合の取り組みに是非ご期待下さい。

◀ 紀州製竿組合 田中組合長

紀州製竿組合で運営している ▶へら竿の研修所 「隠れ谷」

14 E!KANSAI 2013 年 6月号

知的資産経営活用

のすすめ

 “知的資産 ” という言葉をご存じでしょうか。

 知的資産とは、特許や商標などの知的財産と同

義ではなく、それらを一部に含み、さらに組織力、

人材、技術、技能、経営理念、顧客とのネットワー

クなど、財務諸表に表れてこない目に見えにくい

経営資源の総称を指します。企業競争力の源泉と

なり得る自社の見えない強み(=「知的資産」)を

しっかりと把握し、活用することで業績の向上や、

会社の価値向上に結びつけることを「知的資産経

営」と言います。

 経済産業省では、知的資産経営の活用を推進しており、今回は、地域の企業を対象に、この

知的資産経営の活用支援を積極的に進められている但陽信用金庫の取組についてご紹介します。

■但陽信用金庫について

 兵庫県加古川市にある但陽信用金庫は、1926年(大

正15年)6月に創業。現在では「地域の “ よろず相談

所 ”」として、加古川市、高砂市、姫路市等の区域を対象

に33店舗にて営業を展開しています。

 同庫が独自に進められている知的資産経営支援の取組に

ついて、常務理事である藤後秀喜氏にお話を伺いました。

 「(公財)ひょうご産業活性化センター開催の知的資産

経営報告書の発表会に参加したことがきっかけで、平成

21年度から取組を始めています。企業が知的資産経営

報告書を作成することによって自社の先行き、方向性と

ともに、強み・弱みを第三者的な観点から把握すること

ができます。我々としては、それらをお手伝いすること

により、財務面だけではない企業価値を見つめ直すこと

ができるツールと考えています。」

■但陽信用金庫の知的資産に係る取組

 平成21年度以降、毎年開催されているセミナーは年々参加者が増え、平成24年度のセミナーでは76社111名の参加がありました。 知的資産経営への支援は三段階に分けて行われています(次頁図参照)。第一段階は、「知的資産経営とは何か」を学ぶセミナーの開催。第二段階での経営レポート作成ではワークショップ形式で企業に対して研修を行います。その後、経営レポートを作成した企業を対象に、

連載:知的資産経営活用のすすめ

第1回 但陽信用金庫の取組担当課室:産業技術課

<知的資産イメージ>

<但陽信用金庫>

15E!KANSAI 2013 年 6月号

知的資産経営活用

のすすめ

機 関 名 但陽信用金庫U R L http://www.tanyo-shinkin.co.jp/所 在 地 兵庫県加古川市加古川町溝之口539番地電 話 番 号 0120-200-707(フリーダイヤル)

 ※知的資産に関するお問合せ先は融資推進部(079-422-7721)まで

作成支援専門家が企業を訪問し、知的資産経営報告書作成の支援を進めています。 「企業経営者にとっては、自社の経営について時間を取って考える良い機会になっているのではないでしょうか。」 主体となって報告書を作成するのは、もちろん企業経営者自身ですが、各社の強み・弱みの洗い出しを行うワークショップには同庫の職員も参加します。 「当庫には知的資産を知らない職員はおりません。取組を通じてその有効性を充分に認識しているからこそ、実体験として企業経営者に知的資産経営をお勧めすることができます。ワークショップに参加しているときは本業を離れ、『どうすればこの企業が良くなるか』というスタンスで接しています。」

■金融機関が知的資産経営活用支援に取り組むメリット

 最後に、金融機関が知的資産経営活用支援に取り組むメリットについてお聞きしました。 「報告書の作成に経営者と一緒になって取り組むことで、その企業に金庫職員が深く入り込むことができ、企業の本質的なところが把握できます。その結果として、財務上の数字とは違う答えが見つかることもあります。当庫では、企業の強みもさることながら知的資産経営を活用することで浮かび上がってきた個々の課題をどのように解決していくか、どのように支援に結びつけていくかが重要だと思っています。」 また、地域企業の活性化だけではなく、金庫職員の目利き能力のレベルアップもメリットとしてあげられるとのことです。その一方で、金融機関が知的資産経営活用支援に取り組むことの難しさも指摘されました。 「この支援事業は、即成果に結び付かない面もあります。 一部の部署だけで手がけるには、たいへん難しい事業です。金融機関としては、経営判断により、組織全体で知的資産経営の活用支援にあたることが必要であるといえます。」 企業の見えざる価値・強みを表す “知的資産 ”。企業が勝ち残るための競争力の源泉を確保するための有効なツールとして活用する取組が始まっています。同庫の取組を通じて、元気な中小企業が増えることを期待します。

【第一段階】知的資産経営セミナー金庫職員及び顧客企業の経営層に対し「知的資産経営

とは何か」について支援専門家等から講演、作成企業から効果等の発表

【第二段階】経営レポートの作成支援グループワーク形式による経営レポート(サマリー版)を

作成(金庫職員同席)

【第三段階】報告書本格版作成支援希望企業に、より詳細な知的資産経営報告書を個別に

作成(金庫職員同席)

<藤後秀喜常務理事>

*当局ウェブサイトの以下のページでは、管内の知的資産経営報告書作成・開示企業   一覧など知的資産経営に係る各種情報を掲載しておりますので、是非ご覧下さい。 http://www.kansai.meti.go.jp/2giki/network/vbnet_ic.html

当電子ブックのタイトルである「E!KANSAI」は「いいかんさい」と読み、文字通り今後の関西

が良い地域に発展してほしいとの願いを込めています。

また、「E」は「ECONOMY」、「ENERGY」や「ECOLOGY」などの頭文字であり、今後当局とし

て重点的に取り組むべき大きなテーマを包含しています。

http://www.kansai.meti.go.jp/E_Kansai/

この冊子に対するご意見・ご要望は下記までご連絡下さい。

近畿経済産業局 広報・情報システム室

Tel : 06-6966-6009(直通) Fax : 06-6966-6071 E-mail : [email protected]

今月の表紙:平成24年度 ダイバーシティ経営企業100選 表彰式・シンポジウム

~ 近畿経済産業局からの各種ご案内~

■・今夏も節電にご協力をお願いします→

■・近畿経済産業局施策集をご活用ください!→

■・補助金等の公募のご案内はこちらです↓

 ・http://www.kansai.meti.go.jp/koubo.html