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101 ナノテク・材料 ゲート - ソース間に電圧印加することで、無色透明絶縁体⇔濃青 色金属を可逆的に変化させることができます。 北海道大学電子科学研究所 薄膜機能材料研究分野 研究室ホームページ:http://functfilm.es.hokudai.ac.jp/ 色と導電性の変化で 情報表示・記憶する半導体素子 ─窓ガラスや鏡がメモリーに?─ 電子科学研究所 太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta 博士(工学) 「電子カーテン」として注目を浴びているエレクトロクロミック材料を、 薄膜トランジスタに組み込み、無色透明⇔黒色の色変化と、絶縁体⇔ 金属の導電性変化を利用する新しい情報表示・記憶装置を開発しまし た。窓ガラスや鏡に情報を表示・記憶できます。 ■研究の内容 IoT 普及に伴い、パソコンだけでなく、様々な機器がインターネットに接続されたことにより、 収集・保存しなければならない情報量が増加し続けています。現在の情報記憶素子は半導体の 電気抵抗変化のみを利用していますが、本研究では、電気抵抗変化に加えて、色変化を情報表示・ 記憶に利用できる素子を開発しまし た。ガラスやプラスティックなどの基 板上に、アモルファスWO 3 薄膜(膜 厚 100nm)/ ナ ノ 多 孔 質 ガ ラ ス 薄 膜 (300nm)/ 多 結 晶 NiO 薄 膜(50nm) の積層膜と、透明電極ITO薄膜(20nm) からなるソース、ドレイン、ゲート電 極を備えた、三端子の全固体薄膜トラ ンジスタ構造を作製し、ゲート - ソース 間に数ボルトの正電圧を印加すると WO 3 薄膜が濃青色に変化すると同時に 金属になり、負電圧を印加すると無色 透明な絶縁体に戻ります。 ■応用例 夜になると自動で透過率を下げる電子 カーテンで、朝になると天気予報など の情報をインターネット経由で情報取 得し、表示・記憶する窓ガラスや、気温・ UV 指数などを表示する鏡など、窓ガラ スや鏡を IoT 化できると考えています。 ■産業界へのアピールポイント 鏡や窓ガラスに文字や絵などの情報を表示・記憶 することができます。室温下で製造することができ るので、熱に弱いプラスティックなどの上にも作製 可能です。大面積化が可能なことから、安価に情報 表示・記憶装置が製造可能です。また、情報を書き 込んだ後は待機電力がゼロなので、省エネです。 ■本研究に関連する知的財産 PCT/JP2016/050206 「半導体装置」 ※お問い合わせは 北海道大学 産学 ・ 地域協働推進機構まで(最終ページ参照) N

色と導電性の変化で 情報表示・記憶する半導体素子functfilm.es.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/...PCT/JP2016/050206 「半導体装置」 ※お問い合わせは

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ナノテク・材料

ゲート - ソース間に電圧印加することで、無色透明絶縁体⇔濃青色金属を可逆的に変化させることができます。

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北海道大学電子科学研究所 薄膜機能材料研究分野研究室ホームページ:http://functfilm.es.hokudai.ac.jp/

色と導電性の変化で 情報表示・記憶する半導体素子─窓ガラスや鏡がメモリーに?─

電子科学研究所

太田 裕道 教授 Hiromichi Ohta 博士(工学)

「電子カーテン」として注目を浴びているエレクトロクロミック材料を、薄膜トランジスタに組み込み、無色透明⇔黒色の色変化と、絶縁体⇔金属の導電性変化を利用する新しい情報表示・記憶装置を開発しました。窓ガラスや鏡に情報を表示・記憶できます。

■研究の内容

 IoT普及に伴い、パソコンだけでなく、様々な機器がインターネットに接続されたことにより、収集・保存しなければならない情報量が増加し続けています。現在の情報記憶素子は半導体の電気抵抗変化のみを利用していますが、本研究では、電気抵抗変化に加えて、色変化を情報表示・記憶に利用できる素子を開発しました。ガラスやプラスティックなどの基板上に、アモルファスWO3 薄膜(膜厚 100nm)/ ナノ多孔質ガラス薄膜(300nm)/ 多 結晶 NiO 薄 膜(50nm)の積層膜と、透明電極 ITO薄膜(20nm)からなるソース、ドレイン、ゲート電極を備えた、三端子の全固体薄膜トランジスタ構造を作製し、ゲート-ソース間に数ボルトの正電圧を印加するとWO3 薄膜が濃青色に変化すると同時に金属になり、負電圧を印加すると無色透明な絶縁体に戻ります。

■応用例

・�夜になると自動で透過率を下げる電子カーテンで、朝になると天気予報などの情報をインターネット経由で情報取得し、表示・記憶する窓ガラスや、気温・UV指数などを表示する鏡など、窓ガラスや鏡を IoT化できると考えています。

■産業界へのアピールポイント

 鏡や窓ガラスに文字や絵などの情報を表示・記憶することができます。室温下で製造することができるので、熱に弱いプラスティックなどの上にも作製可能です。大面積化が可能なことから、安価に情報表示・記憶装置が製造可能です。また、情報を書き込んだ後は待機電力がゼロなので、省エネです。

■本研究に関連する知的財産

PCT/JP2016/050206 「半導体装置」

※お問い合わせは 北海道大学 産学 ・ 地域協働推進機構まで(最終ページ参照)

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308_ 太田 裕道先生