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表1 膵液瘻の定義 持続日数 1日ドレーン 排液量 排液アミラーゼ値 膵液瘻の 頻度 著者 10日以上 50ml以上 血清の3倍以上 14% Yeo 1 (1997) 10日以上 30ml以上 5000U/L 2.1% Büchler 11 (2000) 7日以上 30ml以上 定義なし 9.2% Balcom 5 (2001) 6日以上 定義なし 血清の3倍以上 9% Adam 6 (2001) 7日以上 50ml以上 血清の3倍以上 9.3% Tani 7 (2001) 5日以上 定義なし 血清の5倍以上 13% Munoz 12 (2004) 10日以上 50ml以上 血清の2倍以上 14% Tran 13 (2004) 7日以上 30ml以上 定義なし 4.5% Heslin 14 (1997) 定義なし 定義なし 1000U/L 15% Sato 15 (1998) 10日以上 50ml以上 血清の3倍以上 8.5% Grobmyer 16 (2000) 3日以上 定義なし 血清の2.5倍以上 9% Pister 17 (2001) 3日以上 定義なし 血清の5倍以上 10.8% Choi 18 (2004) 固形食開始後 50ml以上 血清の3倍以上 16% Aranha 19 (2006) 5日以上 30ml以上 血清の5倍以上 14% Shinchi 20 (2006) 5日以上 30ml以上 血清の5倍以上 28% Sarr 21 (2003) 3日以上 定義なし 血清の3倍以上 Bassi 22 (2005) 膵頭十二指腸切除術の術後合併症 ―予防と対策― 和歌山県立医科大学第 2 外科 山上裕機,谷 眞至,川井 はじめに 膵頭十二指腸切除術は膵頭部領域の良性および 悪性疾患に対して施行される術式であり,消化器 手術の中で最も難度が高い手術のひとつである. 近年の手術手技および周術期管理の発達により手 術関連死亡は5%未満となってきているが,術後合 併症の発生率は30~65%と他の消化器手術に比較 していまだ高率である 1)~10) 膵頭十二指腸切除術後合併症として膵液瘻,腹 腔内出血,腹腔内膿瘍,胃排泄遅延,胆汁漏,胆 管炎,消化管潰瘍,消化管出血などが考えられる. 術後管理上,最も注意すべき合併症は膵液瘻およ び膵液瘻出によって惹起される腹腔内出血や腹腔 内膿瘍であり,これらは手術関連死亡につながる 重篤な合併症である.また術後QOLの低下,在院 期間の延長の原因となる胃排泄遅延は膵頭部切除 術後,とくに幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後の 合併症として頻度が高く,外科臨床上,重要であ る. さらに膵頭十二指腸切除術後のドレーン留置は 多くの功罪が議論されており,術後合併症の予 防・対策からみたドレーンの至適抜去時期につい ても言及する. 1.膵液瘻 膵液瘻を合併すると膵液中に不活性型として存 在する蛋白融解酵素であるトリプシノーゲンがエ ンテロキナーゼ活性を有する腸液や胆汁の存在下 で活性型のトリプシンとなり,他の蛋白融解酵素 を活性化し,さらに自己消化により周囲組織障害 を引き起こす.このため組織融解による血管破綻 に起因する腹腔内出血を併発したり,感染性膵液 67

膵頭十二指腸切除術の術後合併症 ―予防と対策―表1 膵液瘻の定義 持続日数 1日ドレーン 排液量 排液アミラーゼ値 膵液瘻の 頻度 著者

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表1 膵液瘻の定義

持続日数1日ドレーン排液量排液アミラーゼ値膵液瘻の

頻度著者

10日以上50ml以上血清の3倍以上14%Yeo1(1997)10日以上30ml以上5000U/L 2.1%Büchler11(2000) 7日以上30ml以上定義なし 9.2%Balcom5(2001) 6日以上定義なし血清の3倍以上 9%Adam6(2001) 7日以上50ml以上血清の3倍以上 9.3%Tani7(2001) 5日以上定義なし血清の5倍以上13%Munoz12(2004)10日以上50ml以上血清の2倍以上14%Tran13(2004) 7日以上30ml以上定義なし 4.5%Heslin14(1997)定義なし定義なし1000U/L15%Sato15(1998)10日以上50ml以上血清の3倍以上 8.5%Grobmyer16(2000) 3日以上定義なし血清の2.5倍以上 9%Pister17(2001) 3日以上定義なし血清の5倍以上 10.8%Choi18(2004)固形食開始後50ml以上血清の3倍以上16%Aranha19(2006) 5日以上30ml以上血清の5倍以上14%Shinchi20(2006) 5日以上30ml以上血清の5倍以上28%Sarr21(2003) 3日以上定義なし血清の3倍以上―Bassi22(2005)

膵頭十二指腸切除術の術後合併症―予防と対策―

和歌山県立医科大学第 2 外科 山上裕機,谷 眞至,川井 学

はじめに膵頭十二指腸切除術は膵頭部領域の良性および

悪性疾患に対して施行される術式であり,消化器手術の中で最も難度が高い手術のひとつである.近年の手術手技および周術期管理の発達により手術関連死亡は5%未満となってきているが,術後合併症の発生率は30~65%と他の消化器手術に比較していまだ高率である1)~10).

膵頭十二指腸切除術後合併症として膵液瘻,腹腔内出血,腹腔内膿瘍,胃排泄遅延,胆汁漏,胆管炎,消化管潰瘍,消化管出血などが考えられる.術後管理上,最も注意すべき合併症は膵液瘻および膵液瘻出によって惹起される腹腔内出血や腹腔内膿瘍であり,これらは手術関連死亡につながる重篤な合併症である.また術後 QOL の低下,在院期間の延長の原因となる胃排泄遅延は膵頭部切除

術後,とくに幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後の合併症として頻度が高く,外科臨床上,重要である.

さらに膵頭十二指腸切除術後のドレーン留置は多くの功罪が議論されており,術後合併症の予防・対策からみたドレーンの至適抜去時期についても言及する.

1.膵液瘻膵液瘻を合併すると膵液中に不活性型として存

在する蛋白融解酵素であるトリプシノーゲンがエンテロキナーゼ活性を有する腸液や胆汁の存在下で活性型のトリプシンとなり,他の蛋白融解酵素を活性化し,さらに自己消化により周囲組織障害を引き起こす.このため組織融解による血管破綻に起因する腹腔内出血を併発したり,感染性膵液

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による腹腔内膿瘍や敗血症に起因する多臓器不全をきたす可能性がある.

膵頭十二指腸切除術に伴う膵液瘻の発生率は5~20%と報告されているが4)~12),1)ドレーン排液中のアミラーゼ値,2)排液量,3)それらの持続する日数が診断基準のパラメーターとして用いられている.しかし膵液瘻の定義は表 1 に示すように施設間で様々である1)5)~7)11)~22).そこで,2005年に International study group of postoperativepancreatic fistula(ISGPF)による膵液瘻の定義として,『ドレーン排液量にかかわらず血清アミラーゼ値の 3 倍以上の排液アミラーゼ値が術後 3 日以上持続する』と定義した22).さらに,この定義に当てはまるが症状がなく,臨床的に問題ない症例が多くあるという観点から,臨床症状によって膵液瘻を Grade A(臨床症状なし),Grade B(感染徴候はあるが保存的加療が可能),Grade C(腹腔内出血や敗血症を併発するなど重篤な膵液瘻でありICU 管理や再手術を要する)の三つのカテゴリーに分類した.施設間で膵液瘻の定義が異なるのではなく,今後は国際的に膵液瘻の定義が統一されることが望ましい.

膵液瘻の危険因子として年齢,術前黄疸,正常膵,主膵管径,膵外分泌機能,手術時間,術中出血量,輸血量,ドレーン留置期間などが報告されている10)~12)23)24).また最近は high-volume centerは膵液瘻を始めとする合併症や motality が有意に低いという報告が多い25)~27).事実,第32回日本膵切研究会アンケートでも(平成17年今泉俊秀教授主催),5年間で70例以上の膵頭十二指腸切除術がある施設の合併症率が低いことが報告されている.

再建法では,従来,膵腸吻合に比べて膵胃吻合の安全性が報告されてきたが,Randomized con-trolled trial(以下 RCT)によって膵胃吻合と膵腸吻合では膵液瘻の発生率は同等であると報告されている28)29).また,膵腸吻合の方法として,粘膜・粘膜(膵管上皮・空腸粘膜)吻合法(duct-to-mucosa anastomosis)と陥入法(invagination ordunking method)がある.以前は陥入法が多く行

われていたが,最近では膵管上皮・空腸粘膜吻合法を行う施設が多い.膵管上皮・空腸粘膜縫合法の特徴として,①縫合不全率が低い,②残膵の膵管の長期にわたる開存性が高いことがあげられる.われわれは一貫して膵管上皮・空腸粘膜吻合術を行い,膵液瘻の減少を認めているので,本法が膵液瘻の予防として有効と考えられる8)~10).しかし,厳密な RCT はいまだないので,残膵機能の温存などに関してどちらの術式が優れているか不明である.

膵液瘻とくに膵消化管縫合不全が診断された場合には,絶食・高カロリー輸液を行い,適切なドレナージ,抗菌薬投与,プロテアーゼ阻害薬の投与を行い,膵液瘻から二次的に腹腔内膿瘍と腹腔内出血が発症しないように注意する.しかしドレーン留置に関しては surgical site infection の観点から臨床症状のない膵液瘻であれば無用に長期留置するべきではない(ドレーン管理の項を参照).ドレーン長期留置により逆に膵液瘻が感染し,臨床症状が増悪することを念頭におかなければならない.ソマトスタチンやソマトスタチン類似体であるオクトレオチドなどの膵外分泌抑制作用のある薬剤が膵液瘻の予防と治療に用いられている場合もあるが,その有効性に関しては多くのRCT によっても意見が分かれており30)~33),有用性は明らかではない.

2.腹腔内膿瘍膵頭十二指腸切除術に伴う腹腔内膿瘍の発生率

は1.2~14%と報告され,大部分が膵液瘻19)や胆汁漏が原因となる.Aranha らは膵液瘻非合併例の腹腔内膿瘍発生率は1.8%であるのに対して膵液瘻合併例では31%と報告している19).また術前胆管ドレナージが術後腹腔内膿瘍の危険因子であるとの報告があり3)17),注意を要する.教室で施行した膵頭十二指腸切除術104例の術後に発生した腹腔内膿瘍と諸因子との関連を腹腔内膿瘍合併群

(n=24)と腹腔内膿瘍非合併群(n=80)で比較した10).その結果,手術時間(7時間未満 vs. 7時間以上,p=0.025),術中出血量(1,500ml 未満 vs. 1,500

膵頭十二指腸切除術の術後合併症―予防と対策―

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表2 腹腔内膿瘍の危険因子

腹腔内膿瘍腹腔内膿瘍p value(-)(n=80)(+)(n=24)

年齢5618 ≦75

0.827924 6 >75糖尿病

17 4 有り0.77576320 無し

術前減黄3610 有り

0.95694414 無し血清アルブミン値(g/dl)

21 8 ≦3.80.67515916 >3.8

病理診断19 4 良性

0.65066120 悪性手術時間(min)

5811 ≦4200.02532213 >420

術中出血量(ml)6715 ≦1500

0.043113 9 >1500輸血(unit)

5013 有り0.48393011 無し

主膵管拡張4510 有り

0.24803514 無し膵硬度

3813 Soft0.64464211 Hard

ドレーン挿入期間48 4 POD 4

0.00033220 POD 8

文献10より改変

ml 以上,p=0.043),ドレーン挿入期間(4日間 vs.8日間,p=0.0003)に有意差を認めた(表2).

術中出血量を減少させることが腹腔内感染性合併症の予防につながるので,われわれは術前にMD-CT から腹腔内動脈を3D 構築し,下膵十二指腸動脈(IPDA)の分岐形態を個々の症例で確認している.すなわち,上腸間膜動脈(SMA)根部から IPDA 分岐までの距離を術前 CT 画像から測定し,術中にまず IPDA を先行結紮するようにしている(CLIP method:CT-image guided ligation ofIPDA,図1).その手技で48例に膵頭十二指腸切除

術を行ったところ,手術時間が386±64分から365±80分に短縮し,術中出血量は1,210±776mlから996±748ml に減少し,輸血を行う率も56%から27%に減少した(Kawai et al,submitted).とくにドレーン挿入期間は多変量解析において腹腔内膿瘍発生の独立した危険因子であった(ドレーン管理の項を参照).

3.腹腔内出血膵頭十二指腸切除術後の腹腔内出血の発生率は

2~8%であるが18)34)~36),膵液瘻を合併した場合の

2006年(平成18年)度後期日本消化器外科学会教育集会

胆・膵2

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発生率は6~26%と上昇する19)34)35)37).膵頭部切除術後の mortality は5%未満であるが,腹腔内出血が発症した場合の motality は18~38%と高い致死率となるため厳重な注意が必要である18)34)~36).術後24時間以内の早期出血は術中の止血操作が不完全なことによるものであり再開腹止血を行うべきである.晩期出血の原因としては消化管吻合部出血と仮性動脈瘤の破裂による出血がある.これらは,膵液瘻や縫合不全を合併し膵液と腸液,胆汁が混じり膵液が活性化されることによって吻合部周辺の血管が破綻するため出血する場合や腹腔内膿瘍合併による炎症の波及による出血の場合などがある34).晩期出血に対する再開腹は,癒着や線維化,組織の脆弱化のため剥離や止血が困難であると考えられ,血管造影による出血部位の確認と interventional radiology(IVR)が第一選択となることが一般的である.しかし腹腔内出血に対する処置として IVR と手術のどちらが有効であるかというエビデンレベルの高い比較試験はないが,膵頭部切除術後の腹腔内出血に対しては IVRが first choice であろう.しかし,IVR による止血術が不十分であれば躊躇なく手術を行うことが述べられている34)36).

腹腔内出血においてはその1~2日前に起こる予兆出血いわゆる sentinel bleeding に注意しなければならない36)38)39).Castro らは腹腔内出血を合併

した45例中40例(89%)に sentinel bleeding を認めたと報告している36).ドレーンの性状に注意し,ドレーン排液に微量な出血を認めた場合は厳重な管理が必要である. IVR による止血術では,仮性動脈瘤の末梢側と中枢側の両方をサンドイッチ式にコイリングすることが重要である.しかし,この手技により肝血流障害が惹起され,引き続いて起こる肝梗塞や肝膿瘍に注意が必要である38).IVR 後,遷延する発熱や炎症反応を認めたならば超音波や CT にて肝膿瘍の検索を行わなければならない.もし肝膿瘍が認められたなら抗菌薬静脈投与・肝動注,経皮的膿瘍穿刺ドレナージを速やかに行う.したがって,最近では,コイリングではなく,仮性動脈瘤に対してステント留置して

(wall-stent),肝血流を温存する試みが始まった.

4.胃排泄遅延(delayed gastric emp-ty:DGE)

術後の胃排泄遅延の発生によって,胃管長期留置,経口摂取開始時期の遅延,在院日数の延長などの弊害が生じる.胃排泄遅延の原因として消化管ホルモンであるモチリンの欠如40),胃幽門付近の虚血41),腹腔内膿瘍などの合併症に付随する二次的な胃運動障害42)などがある.胃内容排泄遅延

(DGE)の定義は,1)一日500ml 以上の胃管からの排液が10日以上持続する,2)胃管の再留置が必

膵頭十二指腸切除術の術後合併症―予防と対策―

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図1 術前MD-CTによる下膵十二指腸動脈(IPDA)の描出矢印がIPDAで上腸間膜動脈根部からの距離が実測できる

要,3)術後14日までに固形食摂取不能とされている43)~47).DGE の頻度について幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と膵頭十二指腸切除術で発生率に違いがあるので48)~53),詳細は後述する.

5.胆汁漏術直後あるいは術翌日にドレーンからの胆汁排

出を認めることがあるが,通常は腸蠕動の改善とともに胆汁の排出量は減少していく.ドレーンから胆汁漏出が術後 4 日以上持続した場合を胆汁漏と定義しているが,ドレナージが良好で感染症状や腹膜炎症状がなければ絶飲食による中心静脈栄養管理や抗生剤投与の必要性は無い.ドレナージ不良例やドレーン抜去後の胆汁漏による胆汁性嚢胞(biloma)形成に対しては超音波あるいは CTガイド下の穿刺ドレナージが適応となる.

6.ドレーン管理Center for Disease Control and Prevention

(CDC)における surgical site infection 予防のガイドラインではドレーンは,1)もし必要なら,2)閉鎖式ドレーンを使用し,3)できるだけ早期に抜去することと述べている54).『もし必要なら』ということに関しては,消化器手術後のドレーン留置に関しては RCT により胃切除,大腸切除,肝切除,胆嚢摘出術では,術後ドレーン留置は必要がないという報告が数多くなされている55)~59).膵頭十二指腸切除術179例のドレーン留置に関する RCTにおいて『腹腔内ドレナージによる合併症・死亡率の減少を証明できなかった』という報告がある60).しかしドレーンの性状,色調の観察や排液アミラーゼ値・ビリルビン値を測定することにより膵液瘻,胆汁漏および腹腔内出血の早期診断をすることが可能であり20)37)61),膵頭部切除の合併症が他の消化器手術と比較しても30~65%という高い発生率であることを考えるとドレーンを留置することが現実的であると考える.事実,国内外のほとんどの膵臓外科 high volume center でもドレーンを必ず留置している.

ドレーン留置の問題点は消化管由来の腸球菌や

緑濃菌などがドレーンに付着しバイオフィルム(Bio-film)を形成するという内因性感染62)と,ドレーン長期留置によるドレーンからの逆行性感染という外因性感染がある.つまり術後早期の腹腔内の情報を得るためのドレーンそのものが感染を媒体あるいは助長しうるということである.このため『3)できるだけ早期に抜去する』ということが一番の問題となる.ではいつ(when)抜去するのか? ドレーン抜去の適正時期はいまだ多くの議論が残るが,一般的に国内外の high volumecenter であっても術後 7 日前後ドレーンを留置している1)13)35).われわれは,膵空腸吻合部近傍に閉鎖式ドレーンを 1 本留置しており,排液の色調,性状と量を毎日観察するとともに,排液アミラーゼ値およびビリルビン値を術後第1,第 4 日目に測定し,術後 4 日目に必ず抜去している.ドレーン抜去時期に関しては教室で行った膵頭十二指腸切除術104例の Prospective study によって術後 4日目ドレーン抜去群と術後 8 日目ドレーン抜去群を比較したところ,腹腔内感染の発生頻度は術後8 日目抜去群では38%,術後 4 日目抜去群では7.7%であり(p=0.0003),膵液瘻の発生頻度は術後8 日目抜去群では23%,術後 4 日目抜去群では3.6%である(p=0.0038)という術後長期(8日目)のドレーン留置は術後合併症の危険因子であるという結果に基づく19).明らかな膵液瘻,胆汁漏,腹腔内膿瘍などの合併症が無ければドレーンを不用意に長期留置することは慎まねばならない.もしドレーン抜去後,遅発性に発熱や腹痛などの臨床症状が出現した場合や,白血球増多や CRP 上昇などの感染徴候を認めた場合(ISGPS 国際基準:Grade B 以上),超音波あるいは CT を行う.腹腔内に液体貯留を確認したならば経皮的穿刺ドレナージを速やかに行う.

7.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と膵頭十二指腸切除術の比較

膵 頭 十 二 指 腸 切 除 術 Pancreaticoduodenec-tomy(PD)は1912年に Kaush が報告したのが始まりである63).その後に Whipple がその手技を改

2006年(平成18年)度後期日本消化器外科学会教育集会

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表3 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)と膵頭十二指腸切除術(PD)におけるRandomized controlled trialの結果

(PpPD/PD)

Lin et al.18Seiler et al.17Tran et al.16Seiler et al.15Lin et al.14報告者

361301707731患者数18/18 64/6687/8337/4916/15PpPD/PD症例数221/271 382/449300/200404/476215/237手術時間(min)446/12121196/15002000/20001453/2096451/687出血量(ml)7/5 2/313/143/2 0/13膵液瘻(%)0/43*31/4522/2337/4538/7 胃排泄遅延(%)7/11 2/33/73/57/0手術死亡(%)N.A.20/2118/2025/24N.A.在院日数(日)N.A.9/21(R1 + 2%)26/17N.A.N.A.断端陽性率(%)N.A.有意差なし有意差なしN.A.N.A.体重減少

有意差なしN.A.N.A.N.A.N.A.Quality of life有意差なし有意差なし有意差なし有意差なしN.A.生存期間中央値

ca.:cancer,N.A.:not available*:P<0.05

変し,Vater 乳頭部癌患者に施行して以来64),一般的な術式として認知されるようになった.一方,幽 門 輪 温 存 膵 頭 十 二 指 腸 切 除 術 Pylorus-preserving pancreaticoduodenectomy(PpPD)はWatson が Vater 乳頭部癌に対し施行したのが始まりであったが65),Traverso と Longmire が慢性膵炎患者に施行した報告以降66),広く世界中で行われるようになった.

PpPD の適応は,一般的な PD の適応に加え,1)胃または十二指腸第 I 部への直接浸潤がないこと,2)胃幽門周囲のリンパ節である 5 番と 6 番のリンパ節に転移がないこと,3)術中所見で温存した十二指腸の血流が維持されていること,4)瘢痕狭窄などを伴う十二指腸潰瘍などの既往のないことである.浸潤性膵管癌はリンパ節転移を伴いやすい癌であり,日本膵癌取扱い規約第 5 版では 5番リンパ節が 3 群,6番リンパ節は 2 群に分類され,それぞれの転移頻度は1.5%,6.1%と極めて低いが67),念のために,術中凍結病理組織学的検査で確認し,複数個のリンパ節転移が認められた場合は,PpPD を断念し,通常の PD に変更しなければならない.

本項では,PD ならびに PpPD についてそれらの術後合併症の比較について述べる.

腫瘍学的検証のないまま,浸潤性膵管癌を含めた膵頭部領域の悪性腫瘍にも PpPD が臨床応用された.悪性腫瘍に対する手術で 2 つの術式間に予後の差があるか否かが最も重要である.Retro-spective な研究では Roder らの報告を除き68),PpPD と PD と の 間 に は 予 後 に 差 を 認 めず47)69)~72),膵頭切除術における胃の合併切除は予後の改善に寄与しないことがわかった.術後のmortality に関して,2つの術式間で差を認めなかった47)68)~72).すなわち,膵液瘻などの胃内容排泄遅延以外の合併症の発生率には差がないことが報告されている47)68)70)73)74).術後の scale of socialactivity には差があるものの71),QOL には両者の間には差は認めなかった42)72)73).消化吸収機能の改善を期待して幽門輪を温存するが,術後の体重減少は幽門輪温存膵頭十二指腸切除術のほうが少ないという報告と47)70)71),2つの術式間で差がないという報告があり73),retrospective study では一定の見解が得られなかった.

以上のように,エビデンスレベルの低い retro-spective study では PpPD と PD には大きな差を認めないが,Randomized controlled trial(RCT)の成績ではどうであろうか? PpPD と PD を比較した RCT は表 3 に示すように,現在までに 3 施

膵頭十二指腸切除術の術後合併症―予防と対策―

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設から 5 つの報告があるに過ぎない13)50)75)~77).対象疾患が若干異なり,対象症例数が31例と少ないものもあるが,すべてに共通するのは,PpPD とPD の間に,生存期間や胃内容排泄遅延を除く合併症・手術死亡には差が認められないことである.また,Seiler らは QOL を検討しているが,長期の QOL に 2 つの術式間で有意差はなく,体重の変化も同じであったが,術後6カ月での就労可能率は PpPD で77%であるのに対し,PD で56%と有意に低値であった75)76).今後,QOL 等の詳細な検討が必要と考える.

しかし,Lin らの報告あるように,PpPD で術後胃内容排泄遅延が多くなる傾向があり50),対象疾患を膵癌に限定すれば有意に術後胃内容排泄遅延が増加することから77),PpPD の術後管理においては,胃内容排泄遅延が最も重要な合併症といえる.

8.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)におけるDelayed gastricemptying(DGE)

膵頭部切除術のなかで胃内容排泄遅延(De-layed gastric emptying:DGE)は生命に直接の影響は与えないものの,嘔吐・嘔気・食欲不振などの消化器症状や,長期の経鼻胃管留置の必要性などで患者とその家族,ならびに医療従事者に不快な感情を抱かせるものであり,在院日数の延長など,医療経済の面からも望ましくない合併症である.PpPD と PD を比較した 5 つの RCT のうち,1つの報告を除き,DGE の発生率に差はなかったが,PpPD の DGE 発生率は22~38%という高いものであり,さらに,日本の多施設研究で PpPDを施行した1,066例のうち,46%に術後 DGE がみられ78),対策が必要である.

DGE の原因としては,1)十二指腸切除に伴う胃の運動を促す消化管ホルモンの欠損,2)血管処理による胃幽門付近の虚血,3)迷走神経切離,4)術後の幽門輪の攣縮,5)術後合併症による胃ならびに腸管の麻痺,6)術後の胃の形態の変化など,さまざまな原因が考えられるが,確立されたものは

ない.手術時に愛護的に操作し,十二指腸空腸吻合も狭窄など起こらないように慎重に行うことはいうまでもない.

DGE に対する対策として,以下があげられる.

(1)薬剤

胃の運動を促進する消化管ホルモンである mo-tilin は消化管 migrating motor complex(MMC)を刺激するが79),十二指腸の全切除に伴い,mo-tilin が欠損することが胃排泄遅延の一因と考えられる.しかし,motilin 受容体 agonist を用いた研究では有意な胃排泄遅延の改善は認められなかった.

マクロライド系抗菌薬である erythromycinは,通常の抗菌薬として使用する濃度より低濃度で,胃の MMC を刺激し胃相第 III 相を誘導し消化管運動亢進が期待できる.3つの RCT が行われ,その結果,DGE の発生頻度を有意に改善することが判明した40)53)80).Yeo らは118例の PpPD 施行患者に対する RCT の結果,DGE が erythromy-cin により30%から19%まで減少することを報告した40).しかし,erythromycin を 1 週間以上投与することは,耐性菌の誘導など他の問題も含んでおり,日常臨床への応用は困難である.

Cisapride はセロトニン受容体5HT1をブロックして5HT4を刺激することで強い消化管運動機能改善効果が報告されているが81),QT 延長・重篤な心室性不整脈・喘息発作などの副作用のため,残念ながら平成12年に日本での販売が中止されたので,現在 Cisapride は使用できない.さらに,RCT の結果から,経腸栄養を持続で行うより間欠的に cyclic で行うほうが,通常の食事が早期に開始でき,在院日数も短くなったが,DGE の発生率には影響がなかったことが報告された82).

(2)手術手技

再建方法(図2)と DGE に関しては,関連があるとい う 報 告(Traverso 法:32%,今 永 法:76%)44)と,関 連 が な い と い う 報 告 が あ る

(Traverso 法:23%,今永法:39%)9)が,どちらも

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図2 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)における再建法左: PpPD-I I,Traverso法,右: PpPD-I I Ia,今永法

図3 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)における再建ルート結腸前ルート(左)と結腸後ルート(右)で胃内容排泄遅延に関するRCTを行った.

retrospective study であり,エビデンスレベルは低いので,再建方法による DGE 発生率は差がないと考えられる.

Traverso 法(PpPD-II)における再建経路として,retrospective study では結腸前での十二指腸空腸吻合で DGE の発生率が低いことが報告された42)83)84).しかし,エビデンスレベルの高い RCTの報告はなく,結腸前再建か結腸後再建か常に議論になってきた.そこで,われわれは,PpPD の再建を結腸前と結腸後で DGE を含めた合併症に差があるか否かに関する RCT を行った(図3).その結果,結腸前での再建における DGE が5%である

のに対し,結腸後では50%と著しく高い結果であり(表4),DGE の発生率に大きな差を認めた.以上より,PpPD では結腸後ルートで再建すべきことが明らかになった52).

膵液瘻などの術後合併症が DGE の頻度に影響を及ぼすことが報告されている.PpPD 術後のDGE が術後の他の合併症により1.8~2.9倍にまで増加することから42)82)83)85),膵液瘻などの感染性合併症を予防することが DGE を減らすためには肝要である.さらに PpPD においては,十二指腸断端の血流が重要である.しかし,PpPD では通常,右胃大網動脈および右胃動脈が切離されるた

膵頭十二指腸切除術の術後合併症―予防と対策―

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表4 再建経路と胃排泄遅延発生率・術後在院日数

P value結腸後結腸前(n=20)(n=20)

P<0.00510(50)1(5)DGE(no.[%])P<0.0518.9±36.04.2±4.0経鼻胃管留置期間(日) 1P<0.05800±564389±505経鼻胃管最大排液量(ml) 1, 2NS19.7±34.38.1±1.6固形食開始日(日) 1

P<0.0019/1920/20固形食経口摂取可能患者数(第14病日)P<0.00527.1±27.352.5±20.2%固形食摂取量(第14病日)P<0.0547.7±37.728.7±5.7 術後在院日数(日) 1

1 Mean±SD.NS:not significant.文献52から改変

め,温存した幽門部や十二指腸の血流維持に努めなければならない.また,静脈還流も血流維持には重要であることから,左胃冠状静脈の温存した症例の方が経鼻胃管が早く抜去できたことが報告されているが86),左胃冠状静脈の DGE 予防に対する効果は明らかではない.

以上より,DGE の予防として,Traverso 法(PpPD-II)では結腸前ルートでの再建が有効である52).今後,温存した幽門輪がどのような機能を有するのか科学的検証が必要である.

おわりに膵頭十二指腸切除術は高難度の手術であり,消

化器外科医の登竜門でもある.最も重要な合併症は膵液瘻と考えるが,膵管上皮・空腸粘膜吻合術をはじめとする手術手技の向上により発生頻度を減少させることができる.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術では胃内容排泄遅延が問題になるが,これも再建法の工夫により予防することが可能になった.

さらに,一定数以上の膵頭十二指腸切除術を施行している High volume center に症例を集めることが合併症対策として有用である.

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