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考える筋電図
神戸市立医療センター 中央市民病院神経内科
幸 原 伸 夫
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１個の前角細胞とそれに支配される筋線維群
筋収縮の最小機能単位
運動単位 Motor Unit
神経支配比
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これらを覗きこむ半径１mmの「窓」
白：同一の運動単位の筋線維
約15MUs
+
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針電極個々の筋線維の電位運動単位電位
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１２
３
1 mm
1 2 3
筋線維から遠く離れるとどのように記録されるか？
距離は電位振幅に大きく影響
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運動単位電位（ＭＵＰ）
電位のたし算
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1
2
3 (duration)
MUP
運動単位電位の構成成分
１２
３
1 mm
1 2 3
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Large motor unit とは？
long duration
high amplitude
10ms
1mV
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１２
３
1 mm
1
2
MUP
筋線維の密度が高い！
large motor unit
10ms
1mV
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脱神経後、再支配慢性期の運動単位電位
large MUP
postpolioTA
密度が高く同期が良い
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18ms0.2mV
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同期が悪いときは多相性
unstable
未熟な軸索は髄鞘が不完全一部神経伝導が遅く不安定
＊
＊
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これは？
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5ms
500μV
●
●
●
●●
●●
○○
○
○ ○○
○○
■
■
■ ■
■
□
□□
□
□
＊
＊ ＊
＊
＊ ＊
スパイク状の高振幅電位
●○密度が低く高振幅なＭＵＰ□■小さなＭＵＰ
＊小さく多相性のＭＵＰEraly recruitment
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MUP
振幅が大きいが、密度が低くスパイク状のＭＵＰ
注意！ミオパチーでもしばしば高振幅電位が出現する
10ms
0.5mV
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（１）自発放電
（２）運動単位電位
針筋電図では具体的に何をみるか？
100μV/10ms
500μV/10ms
いつも同じ条件から始めること！
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針筋電図のステップ（１）
• 針電極刺入に伴う活動電位（刺入電位）
• 完全に力を抜いた筋の安静時電位
自発放電の有無
自発放電にはどんなものがあるか？
針が動くことで誘発、持続、あるいは自然に生じる異常興奮
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筋線維そのものの異常興奮
末梢神経末端の異常興奮
自発放電
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自発放電(1) 筋線維の異常興奮
単一筋線維の放電線維自発電位 fibrillation potential陽性鋭波 positive sharp
waveミオトニー放電 myotonic discharge
複数の筋線維の放電複合反復放電 complex repetitive discharge
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単一筋線維の放電線維自発電位 fibrillation potential陽性鋭波 positive sharp
waveミオトニー放電 myotonic discharge
複数の筋線維の放電複合反復放電 complex repetitive discharge
自発放電(1) 筋線維の異常興奮
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単発の放電筋線維束放電 Fasciculation potential
連続・群化した放電ミオキミア放電 Ｍｙｏｋｙｍｉｃ ｐｏｔｅｎｔｉａｌ
自発放電(2) 末梢神経の異常興奮
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自発放電(3) 正常でもみられるもの
終板棘波 Endplate spike
終板雑音 Endplate noise
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Insertion Potential である。これは何か？
本態は？
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VGC
CSynaptic vesicles
AChR
AChE
Mitochondria
Schwann cell
MEPPend-plate nise
安静時
神経末端
筋線維
MEPP：Miniature end plate potential微小終板電位
量子 quantum
Endplate noise
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Insertion Potential である。これは何か？
発火の特徴は？
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では形態の特徴は？100μV
10ms
ランダムで速い
病的意義はない正常でみられる
End plate spike
10ms, 100μV
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筋線維活動電位
単一筋線維活動電位はどのように記録されるか
初期陽性の三相性波形が基本
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23 1
陰性等電位線
陽性等電位線
神経軸索
陽性等電位線
基準電極陽性ー陰性ー陽性の三相性活動電位が記録される
１：incoming positivity
２：action potential
３：outgoing positivity
（基準電極：電流が流れていない遠方）
(0 mV)
探査電極
（橋本修治 電気回路による臨床電気生理学入門より）
active sinkpassive source
1
2
3
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筋線維活動電位
神経筋接合部では？
初期陽性の三相性 初期陰性の二相性
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Endplate spike が三相性になることもある
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ではこれは何か？発射パターンの特徴は？
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定常パターン
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遅延パターン促迫パターン
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Fib-Pの形態は？ なぜ？
100μV
100μV
10ms
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筋線維活動電位
三相性 二相性
Fib-Pでは確率的に三相性が多いが二相性もある
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筋線維活動電位
Positive sharp wave も同様の自発放電
損傷
PSW
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Fib-P, PSW の臨床的意義は？
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chronic or inactive
active 電極に近接する部位に変性しつつあるfiberが存在する確率に依存
正常筋線維変性しつつある筋線維
現在の変性の速さ・活動性を反映する
FP,PSW
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ALSや活動性の筋炎、進行の速い
筋ジストロフィの変性しつつある筋では、FP・PSWが必ずある
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安静時記録 これは何か、起源は？
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興奮部
Fasciculation potential
多くは神経末端に起源をもち，ランダムな発射パターンを示す発射ごとに形も変わることが多いミオパチーでは見られない
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糖尿病性筋萎縮患者の記録所見は？
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複合反復放電のメカニズム
接触伝導1
2
3
45
6
2113 4
5
712
3 45
62
7
##の伝導が途絶すると急に波形が変わる
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この安静時記録は何か？その特徴は？
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CRD 複数のfiberでサーキットを構成
Myotonic Discharge 減衰する複数のfiberが次々と現れる
基本周波数は同じ
個々のfiberでは周期も振幅も減衰してゆく
たくさんのバイク！
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この記録は何か？
上腕2頭筋安静時記録
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70ms 190ms
運動単位電位はある幅の中で変動する
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これは何か？
原因不明のポリニューロパチーの患者FDI
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Myokymic potential
多くは神経末端に起源をもち，ランダムな発射パターンを示す発射ごとに形も変わることが多いミオパチーでは見られない
接触伝導
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→運動単位の構築と機能の異常
・軽い随意収縮による運動単位電位の形態の観察
・筋収縮を強めて最大収縮する過程での運動単位電位数の増加パターン
（recruitment）の観察
針筋電図のステップ（２）
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正常の運動単位電位BA
A B
EMG
複数の運動単位がモザイク状に配置
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運動単位電位の形態
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MUP
Ｘ
Ｘ
W38
軸索変性初期、あるいは再生初期
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BA
軸索変性→脱神経
A
EMG
Wunitloss
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脱神経後、健常なAの軸索からの再支配＊（初期）
unstable
未熟な軸索は髄鞘が不完全一部神経伝導が遅く不安定
A
＊
＊
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脱神経後、再支配後期の運動単位電位
stable
polyphasic再支配が安定する末端の伝導時間も短縮
A
W40
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脱神経後、再支配慢性期の運動単位電位
large MUP再支配した筋線維の記録部位での線維密度が高い
A
postpolioTA
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消失
密度の低下→小さな運動単位電位となる
ミオパチー 運動単位内の大部分の筋線維の変性（高度な障害のある運動単位）
unstable
W42
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ミオパチー 筋線維の大小不同・変性太い筋線維→大きな活動電位、伝導速度は速い細い筋線維→小さな活動電位、伝導速度は遅い
消失
筋線維ごとの伝導のばらつきが大きくなる軽症では持続時間は決して短くない！
大小不同
変性W44
軸索の変性・再生
軸索末端の変性・再生
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18ms0.2mV
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MUP
神経末端の変性・再生
神経末端の変性・再生
筋線維の変性・再生
ここまでは共通
MUP波形の多相化 desynchronizationはなぜ生じるか？
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筋線維1
筋線維2
tm1
tm2
tn1
tn2
軸索の分岐点
運動ニューロン軸索末端
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１）神経末端の距離と軸索末端の伝導速度の差
50m/s, 50m/s, 4cmの距離の差で0.8 msecの潜時差
2cm 40m/s
6cm 40m/s
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50m/s, 10m/s, 4cmの距離の差で3.2msecの潜時差
2cm 50m/s
6cm 10m/s
2）神経末端の距離と軸索末端の伝導速度の差
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5m/sec
１m/sec
筋線維伝導速度が 5m/sと１m/sの場合、終板から2cm離れた部位では16msecの潜時差
3）筋の太さ（伝導速度）と記録部位の影響
2 cm
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Mitochondrial myopathy Biceps
Small MUP and polyphasic, unstable MUPs
500μV
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運動単位の動員 recruitment pattern
力を入れるとは？
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MU4
MU3
MU2
MU1
力を入れる
１）運動単位の発射頻度増大２）新しい運動単位の動員(recruitment)
運動ニューロンの発火力を入れる
動員
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運動単位の動員(recruitment)
（１）正常
加重（力）筋（運動単位）
力を加えると、それの大きさに比例して運動単位の数が増加する
運動単位の動員 recruitment発火頻度も少し上昇
W35
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運動単位の動員・漸増(recruitment)
（2）筋疾患
加重（力）筋（運動単位）
一つ一つの運動単位の力が弱く同じ力を出すのに必要な運動単位の数が多くなる（early recruitment)
W44W42
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運動単位の動員・漸増(recruitment)
（3）慢性期の末梢神経障害
加重（力）筋（運動単位）
一つ一つの運動単位が大きく、同じ力を出すのに必要な運動単位の数が少ない（late recruitment)
それでも足りない分は発火頻度上昇で代償
W49
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確認問題
Endplate spikeとFibrillation potential の鑑別点で正しいものを１つ選べ
A endplate spikeはfibrillation potentialよりも低振幅であるB endplate
spikeのリズムは不規則であるがfibrillation potentialは規則的であるC endplate
spikeの持続時間はpositive sharp waveより短いD endplate
spikeの多くは三相性だがfibrillation potentialは二相性E endplate
spikeは神経筋接合部疾患で認められる
