7
18 寒地土木研究所月報 №809 2020年9月 1.はじめに 寒地土木研究所で開発した衝撃加速度を用いた盛土 の品質管理方法は専用の衝撃加速度測定装置(以降測 定装置と称する)を用いて品質管理を行うものであり、 建設工事等における土工の品質管理方法の1つとして 国土交通省北海道開発局で採用されている 1) 。しかし 品質管理の対象は路体や路床等の盛土であり、路盤へ の適用は対象外である。寒地土木研究所では、路盤へ の適用拡大に向けて研究を行っており、過年度までの 研究で、路盤においても路体・路床と同様に衝撃加速 度による品質管理が行える可能性があることを確認し ている。しかし様々な課題等があり具体的な適用まで は至っていない 2) 。そこで、現在までの研究で明らか になった課題等を整理し、路盤の品質管理への適用に ついて検討したので報告する。 2.衝撃加速度を用いた盛土の品質管理 衝撃加速度とは、図-1に示すように物体を地面に 自由落下させたとき、地面に衝突してから静止するま でに物体に働く負の加速度である。支持力が小さく軟 弱な地盤では、物体が地面に接地してから静止するま での時間が長いため衝撃加速度は小さくなり、支持力 が大きく強固な地盤では、物体が地面に接地してから 静止するまでの時間が短いため衝撃加速度は大きくな る。衝撃加速度による品質管理方法はこの考え方を利 用したものであり、あらかじめ室内試験において現場 の基準である締固め度に対応する衝撃加速度を求め現 場で測定した衝撃加速度により品質管理するものであ 1) 寒地土木研究所では図-2示すように軽量、簡易、 迅速に衝撃加速度を測定できる測定装置を開発した。 この測定装置は高さ40㎝より重さ4.5㎏の重錘(以降 ランマと称する)を自由落下させることにより、衝撃 加速度を求めることができ、この装置を用いて衝撃加 速度から密度や一軸圧縮強さを推定できる。この方法 は、国土交通省北海道開発局の盛土の品質管理方法の 一つとして実際の現場に適用されている 1) 3.路盤材を対象とした試験施工と測定装置の改良 路盤を対象として北海道内の13箇所の工事現場で衝 撃加速度を用いた試験施工を行った結果、砂置換法に おける密度試験(以降砂置換試験と称する)では、締 固め度93%を十分に満たし品質管理基準を満たす結果 となった(図-3)。しかし同じ箇所で実施した衝撃加 速度は、室内試験で求めた締固め度93%を満たす基準 となる衝撃加速度を半数の現場で得ることが出来なか った。このことから、室内試験で測定した衝撃加速度 に、何らかの問題があったと推測される 2) 。そこで、 技術資料 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 樋口 侯太郎  畠山 乃  佐藤 厚子 抵抗力小 衝撃加速度小 抵抗力大 衝撃加速度大 締固め良好な 地盤 締固め不足な 地盤 自由落下 速度Vで 接地( 0度0で 止(t) 図-1 衝撃加速度の原理 図-2 衝撃加速度想定装置

衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

18 寒地土木研究所月報 №809 2020年9月

1.はじめに

寒地土木研究所で開発した衝撃加速度を用いた盛土の品質管理方法は専用の衝撃加速度測定装置(以降測定装置と称する)を用いて品質管理を行うものであり、建設工事等における土工の品質管理方法の1つとして国土交通省北海道開発局で採用されている1)。しかし品質管理の対象は路体や路床等の盛土であり、路盤への適用は対象外である。寒地土木研究所では、路盤への適用拡大に向けて研究を行っており、過年度までの研究で、路盤においても路体・路床と同様に衝撃加速度による品質管理が行える可能性があることを確認している。しかし様々な課題等があり具体的な適用までは至っていない2)。そこで、現在までの研究で明らかになった課題等を整理し、路盤の品質管理への適用について検討したので報告する。

2.衝撃加速度を用いた盛土の品質管理

衝撃加速度とは、図-1に示すように物体を地面に自由落下させたとき、地面に衝突してから静止するまでに物体に働く負の加速度である。支持力が小さく軟弱な地盤では、物体が地面に接地してから静止するまでの時間が長いため衝撃加速度は小さくなり、支持力が大きく強固な地盤では、物体が地面に接地してから静止するまでの時間が短いため衝撃加速度は大きくなる。衝撃加速度による品質管理方法はこの考え方を利用したものであり、あらかじめ室内試験において現場の基準である締固め度に対応する衝撃加速度を求め現場で測定した衝撃加速度により品質管理するものである1)。寒地土木研究所では図-2示すように軽量、簡易、迅速に衝撃加速度を測定できる測定装置を開発した。この測定装置は高さ40㎝より重さ4.5㎏の重錘(以降ランマと称する)を自由落下させることにより、衝撃加速度を求めることができ、この装置を用いて衝撃加速度から密度や一軸圧縮強さを推定できる。この方法は、国土交通省北海道開発局の盛土の品質管理方法の

一つとして実際の現場に適用されている1)。

3.路盤材を対象とした試験施工と測定装置の改良

路盤を対象として北海道内の13箇所の工事現場で衝撃加速度を用いた試験施工を行った結果、砂置換法における密度試験(以降砂置換試験と称する)では、締固め度93%を十分に満たし品質管理基準を満たす結果となった(図-3)。しかし同じ箇所で実施した衝撃加速度は、室内試験で求めた締固め度93%を満たす基準となる衝撃加速度を半数の現場で得ることが出来なかった。このことから、室内試験で測定した衝撃加速度に、何らかの問題があったと推測される2)。そこで、

技術資料

衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討

樋口 侯太郎  畠山 乃  佐藤 厚子

抵抗力小衝撃加速度小

抵抗力大衝撃加速度大

締固め良好な地盤

締固め不足な地盤

自由落下

速度Vで接地( 0)

速度0で静止(t)

図-1 衝撃加速度の原理

図-2 衝撃加速度想定装置

Page 2: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

寒地土木研究所月報 №809 2020年9月 � 19

その要因を室内試験におけるバラツキと考え、室内試験で測定した衝撃加速度について盛土材と路盤材の変動係数を確認した結果を図-4に示す。この図から、盛土材は0から0.2の間で集中しているのに対し、路盤材は0から0.7の間で分布しているのがわかる。このことは、盛土材に比べ路盤材のバラツキが大きく、測定した衝撃加速度の精度に問題が生じる可能性があることを示唆している。このことが室内試験と現場試験の測定値の差が生じる要因ではないかと考えた。また、バラツキの原因は、ランマ落下時の衝突が路盤材のような礫質土に対して、礫の方向・強度などの影響を受けると考えられる。そこで、ランマ落下時に測定対象(試料)との衝突面を平準化することで、室内試験時における測定値のバラツキを低減できると考え、図-

5のように衝突板(写真-1)を装置底面と固定金具の間にビスで固定できるよう測定装置を改良し、室内試験を行った。その結果、図-6のとおり測定値のバラツキを減少させることができた3)。本検討では、改良した測定装置を用いて同じ路盤材による室内試験及び現場試験を行い、測定値に差が生じる問題について解消されたか確認を行った。

ウレタンゴムネオプレンゴム

鋼板

鋼板 t=1.2㎜

φ180

φ70

φ160φ85

衝突板固定金具

φ100

φ40

衝突板

図-5 衝撃加速度測定装置の改良イメージ 写真-1 衝突板

y = 0.0016x + 1.7066

1.6

1.7

1.8

1.9

2

2.1

2.2

2.3

2.4

80 100 120 140 160 180 200 220

乾燥

密度(g/㎝

3)

衝撃加速度(G)

室内試験

現場試験

締固め度93%

図-3 �室内試験から推定した締固め度93%に相当す

る衝撃加速度と現場試験の関係

0

10

20

30

40

50

データ件数

変動係数

盛土材

路盤材測定値のバラツキ

盛土材では小

路盤材では大

図-4 測定値のバラツキ

Page 3: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

20 寒地土木研究所月報 №809 2020年9月

4.試験方法

4.1 室内試験

改良した測定装置を用いて、室内および現場で乾燥密度と衝撃加速度を求めた。試験の対象とした路盤材の物性値を表-1に示す。室内試験の内容を表-2に示す。衝撃加速度試験の供試体は4.5㎏ランマを用い供試体ごとに1層あたりの突固め回数を17、42、67、92回で3層突固め4供試体作製する。供試体ごとに4点の衝撃加速度を測定し単純平均で測定値を求める。これを既存の測定装置および表-3に示す10種類の衝突板ごとに改良した測定装置へ装着し試験を行った。表-

3中のショアA70、90、95とはゴムの硬さを表しており数値が大きいほど硬い。

4.2 �現場試験

現場試験は、実際の施工と同様に建設機械を用い6回転圧し路盤を施工した後、砂置換試験(JIS�A�1214)と衝撃加速度試験を行った。砂置換試験による密度は1カ所あたり3回測定した単純平均である。また衝撃加速度は砂置換試験の測定箇所の直近で、北海道開発局道路河川仕様書に基づき10点測定し上下限値からそれぞれ2点ずつの4点を除いた6点の平均値である。これを既存の測定装置および表-3に示す10種類の衝突板を改良した測定装置へ装着し試験を行った。

5.実験結果及び考察

5.1 衝突板によるバラツキの低減

室内試験における測定値のバラツキを評価するため、各モールドで測定した4点の衝撃加速度の平均値と変動係数を図-7に示す。確認済みの結果3)と同じく衝突板なしに比べ衝突板ありでは変動係数が小さくバラツキが低減されていた。同様に現場試験の衝突加速度と変動係数を図-8に示す。室内試験の結果と同じく衝突板なしに比べ衝突板ありの変動係数は小さくバラツキが低減されることが確認された。このことから室内試験と同じく現場試験においても衝突板を用いることで測定値のバラツキを低減することが可能であると示唆された。

測定装置改良後 測定装置改良前

図-6 測定装置の改良前と改良後の測定値のバラツキ

試験項目 適用基準 供試体作製方法 供試体サイズ

締固め試験JIS_A_1210-2009 E-c法

4.5㎏ランマ 落下高さ45㎝3層 92回締固め

CBRモールド(φ15㎝)

衝撃加速度試験

北海道開発局4.5㎏ランマ 落下高さ45㎝3層 17、42、67、92回締固め

CBRモールド(φ15㎝)

表-1 基本物性値

表-2 室内試験内容

表-3 衝突板一覧表

ゴム硬度 ゴム厚さ 大きさ ゴム厚さ 大きさ 鋼板厚さ 大きさmm2.3mm41mm2.3mm72mm5.4mm43mm5.4mm74mm2.3mm45mm2.3mm76mm5.4mm47mm5.4mm78mm2.3mm79mm2.3mm401

ウレタンゴム ネオプレンゴム 鋼板

ショアA70

φ40㎜ショアA90

ショアA95

φ40㎜ 1.0mm φ100㎜

つくば

2.681

4.7

2㎜以上(%) 84.32㎜から75μm(%) 9.775μm(%) 6.0

液性限界w L(%) N.P.

塑性限界w P(%) N.P.

G-FS

4.3

2.184最大乾燥密度ρ dmax(g/㎝3)

採取地

粒度特性

土粒子の密度ρ s(g/㎝3)

自然含水比w n(%)

地盤材料の分類記号

最適含水w opt(%)

コンシステンシー

Page 4: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

寒地土木研究所月報 №809 2020年9月 � 21

次に室内の締固め試験により図-9に示す締固め曲線の図を作成し最大乾燥密度ρdmaxを求め、基準となる締固め度を算出する。本試料は路盤であり所要の締固め度は93%(以降基準値と称する)である。本試料において作図した締固め曲線を図-10に示す。図-10より算出した基準値は2.031g/㎝3である。

5.2 衝突板の違いによる衝撃加速度と乾燥密度の

関係

室内試験の乾燥密度と衝撃加速度の関係と、現場試験の乾燥密度と衝撃加速度の関係を比較した結果を衝突板ごとに図-11に示す。図中の点線(横)は基準値、点線(縦)は基準値に対する衝撃加速度を表している。室内試験で求めた基準値に対する衝突板ごとに測定した衝撃加速度は120G~150Gの間となり衝突板の種類ごとに異なっている。現場試験において、砂置換試験による乾燥密度は基準値を満足する結果となったが、衝突板ごとに測定した衝撃加速度は、室内試験で求めた基準値に対する値より小さく70G~120Gの間となった。このことから、現場試験の衝撃加速度が室内試験で求めた基準値より小さくなる問題について、測定値のバラツキが低減されても解消されないことが確認された。そこでゴムの硬さ、ゴムの厚さ、鋼板の厚さの違いが衝撃加速度に与える影響を確認するため、まとめたものを図-12に示す。なお、比較条件をそろえるため

(a)のゴムの硬さを比較した場合は、ゴムの厚さを4㎜、鋼板の厚さを3.2㎜とし、(b)のゴムの厚さを比較した場合は、ゴムの硬さをショアA90、鋼板の厚さを3.2㎜、(c)の鋼板の厚さを比較した場合は、ゴムの硬さをショアA90�、ゴムの厚さを4㎜とした。図-

12(a)より、室内試験ではゴムの硬さによる衝撃加速度の差はほとんどなかった。また現場試験では、ゴムの硬さが硬くなると同じ乾燥密度のときの衝撃加速度は大きくなった。図-12(b)より、室内試験および現場試験ともにゴムの厚さによる衝撃加速度の差はほとんどなかった。図-12(c)より、室内試験では鋼板の厚さによる衝撃加速度の差はほとんどなかった。また現場試験では鋼板の厚さが厚くなると同じ乾燥密度のときの衝撃加速度が小さくなった。

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

変動

係数

衝撃加速度測定値(G)

衝突板あり

衝突板なしバラツキが減少

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

変動

係数

衝撃加速度測定値(G)

衝突板あり

衝突板なし

バラツキが減少

図-7 衝撃加速度-変動係数(室内試験) 図-8 衝撃加速度-変動係数(現場試験)

衝撃加速度

乾燥

密度

含水比

締固め曲線

基準衝撃加速度

基準締固め度

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

0 2 4 6 8 10

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

含水比(%)

乾燥密度-含水比曲線

最大乾燥密度ρdmax=2.184g/㎝3

最適含水比wopt=4.3%

基準締固め度93%=2.031g/㎝3

締固め度93%

ρdmax

wopt

図-9 基準衝撃加速度の算出イメージ

図-10 締固め曲線

Page 5: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

22 寒地土木研究所月報 №809 2020年9月

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.1(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.2(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.3(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.6(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.5(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.4(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.7(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.8(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.9(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板No.10(室内)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

衝突板なし(室内)

衝突板No.1(現場)

衝突板No.4(現場)

衝突板No.7(現場)

衝突板No.10(現場)

衝突板No.2(現場)

衝突板No.5(現場)

衝突板No.8(現場)

衝突板No.3(現場)

衝突板No.6(現場)

衝突板No.9(現場)

衝突板なし(現場)

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

衝撃加速度測定値(G)

ショアA90ショアA95ショアA70

着色なし:室内試験

着色あり:現場試験

ゴム厚さ:4㎜

鋼板厚さ:3.2㎜

ショアA70ショアA90 ショアA95

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥

密度

(g/㎝

3 )

衝撃加速度測定値(G)

鋼板厚さ3.2㎜鋼板厚さ4.5㎜

着色なし:室内試験

着色あり:現場試験

ゴム硬さ:ショアA90

ゴム厚さ:4㎜

鋼板厚さ3.2㎜鋼板厚さ4.5㎜

1.90

1.95

2.00

2.05

2.10

2.15

2.20

2.25

2.30

40 60 80 100 120 140 160 180 200

乾燥密

度(g

/㎝3 )

衝撃加速度測定値(G)

ゴム厚さ4㎜ゴム厚さ7㎜

着色なし:室内試験

着色あり:現場試験

ゴム硬さ:ショアA90

鋼板厚さ:3.2㎜

ゴム厚さ4㎜ゴム厚さ7㎜

(a)ゴムの硬さ (b)ゴムの厚さ (c)鋼板の厚さ

図-11 乾燥密度-衝撃加速度の関係(衝突板ごと)

図-12 乾燥密度-衝撃加速度の関係(ゴムの硬さ、ゴムの厚さ、鋼板の厚さごと)

Page 6: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

寒地土木研究所月報 №809 2020年9月 � 23

次に室内試験の衝突板ごとに平均した変動係数と現場試験の衝突板ごとの変動係数を図-13に示す。図中点線(縦)は現場試験の平均であり、点線(横)は室内試験の平均である。これより、室内試験および現場試験ともに変動係数が平均値より小さいのはNo.2、6、7、8、10であり、うちショアA90の衝突板が3つ、ショアA70およびショアA95の衝突板はそれぞれ1つであった。これらの結果より、衝撃加速度および変動係数は、衝突板のゴムの硬さと厚さに影響を受けると考えられ、ランマ衝突時のゴム板による衝撃力の緩衝度合いがゴムの硬さや厚さで変化し、衝撃加速度および変動係数に影響を与えているのではないかと推測される。また、図-11より衝突板ごとの乾燥密度と衝撃加速度には相関関係があり、変動係数の小さい衝突板を使用することで、測定値のバラツキが低減され、路盤の測定精度の向上が可能であると考える。今後は測定値に差が生じる問題について室内試験と現場試験の条件の違いを再度見直し、原因を特定し、その解消に向けて検討・検証を行う。

6.まとめ

本稿では、衝撃加速度を用いた路盤の品質管理方法について、路盤材での衝撃加速度における測定値のバラツキ低減方法を検討した。その結果、以下のことがわかった。・衝突板を用いることにより、室内試験だけでなく現場試験においても、測定値のバラツキを低減することが可能であることが確認された。・現場試験で測定された衝撃加速度は、衝突板を用いて測定値のバラツキを低減した状態でも、室内試験で測定された、基準値に対する衝撃加速度を満たさないことが確認された。このことから、測定値のバラツキを低減させることと、室内試験と現場試験の測定値に差が生じる問題についての関係性は無いことが確認された。・衝突板のゴムの硬さ、ゴムの厚さ、鋼板の厚さによる衝撃加速度の影響について、室内試験ではほとんど影響がないことを確認した。また、現場試験ではゴムの硬さが硬くなれば、衝撃加速度は大きくなり、ゴムの厚さによる影響はなく、鋼板の厚さが厚くなると衝撃加速度は小さくなることを確認した。なお、変動係数が室内試験および現場試験ともに平均値より小さかったのは、ゴムの硬さがショアA90を用いた衝突板であることを確認した。

参考文献

1)� 国土交通省北海度開発局:道路河川共通仕様書(平成31年度版),2019.

2)� 久慈直之、林 憲裕、佐藤厚子:衝撃加速度を用いた路盤の品質管理方法の検討について、第52回地盤工学研究発表会、pp.1093-1094、2017.

3)� 樋口侯太郎、畠山 乃、佐藤厚子:衝撃加速度を用いた路盤の品質管理方法の検討について~測定値のバラツキを軽減する方法について~、第60回地盤工学会北海道支部年次技術報告会、pp.17-22、2018.

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

0.18

0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 0.14 0.16 0.18

変動

係数

(室内

試験

変動係数(現場試験)No.1 No.2 No.3 No.4No.5 No.6 No.7 No.8No.9 No.10 衝突板なし

図-13 室内試験と現場試験の変動係数

(衝突板ごと)

Page 7: 衝撃加速度を用いた路盤の品質管理に関係する検討 - ceri.go.jp...-2009 E-c法 4.5 ランマ 落下高さ45 3層 92回締固め CBRモールド (φ15 ) 衝撃加速度

24 寒地土木研究所月報 №809 2020年9月

樋口 侯太郎HIGUCHI�Kotaro

寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ寒地地盤チーム研究員

佐藤 厚子SATO�Astuko

寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ寒地地盤チーム主任研究員博士(工学)技術士(建設・総合技術管理)APECエンジニア(Civil)

畠山 乃HATAKEYAMA�Osamu

寒地土木研究所寒地基礎技術研究グループ寒地地盤チーム上席研究員