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研究発表 1.まえがき 日本をはじめ世界各国で次世代放送システムの検討 が進められている )~。現在のデジタル放送システム の多くは1990年代初頭までに開発されたもので,世界 の多くの地域のアナログ放送がそのシステムを使って デジタル放送へ移行した。アナログ放送では主に映像 と音声だけのテレビ番組を提供していたが,デジタル 放送では映像や音声だけの番組の他にデータも容易に 提供することができるようになった。現在のデジタル 放送システムが開発されてから20年近くが経過し,放 送を取り巻くコンテンツ配信の環境は大きく変化した。 その1つが,デジタル信号処理技術の進歩に伴うコ ンテンツの多様化である。以前は映像と音声だけのテ レビのコンテンツがほとんどで,解像度やフレームレー ABSTRACT The environment surrounding content delivery has significantly changed since the early 1990s when today’s broadcasting systems were developed;content, client terminals, and delivery networks have diversified. Today, the content is more varied, audio and video signals have different qualities, and various data signals are used. Moreover, there is a wide variety of fixed and mobile client terminals displaying multi-format signals. There are client terminals that can use of different types of delivery networks. To respond effectively to this increasing diversity, it is required that broadcast and broadband networks cooperatively deliver content in a way that maximizes the benefits of their one-to-many delivery and one-to-one delivery characteristics. The existing media transport technologies do not allow such cooperation, meaning that new media transport technologies that make use of various delivery networks are needed in order to efficiently deliver content. This article presents a functional comparison of MMT, a new media transport method being developed in MPEG, with MPEG-2 TS and RTP that are used in conventional broadcasting systems. This comparison shows that MMT is the most effective media transport method for next generation broadcasting systems. How to implement MMT in broadcasting systems is also studied. This study shows that an IP multiplexing scheme in broadcasting systems is the most efficient way to carry IP packets containing MMT Packets. The MMT and IP multiplexing schemes are for efficient content delivery in which broadcast and broadband networks cooperatively deliver content. With them, it is possible for users to make use of content more effectively without being aware of its delivery channels. 次世代放送システムの メディアトランスポート技術 青木秀一 Media Transport Technologies for Next Generation Broadcasting Systems Shuichi AOKI NHK技研 R&D/No.140/2013.7 22

次世代放送システムの メディアトランスポート技術研究発表 1.まえがき 日本をはじめ世界各国で次世代放送システムの検討 が進められている1)~4)。現在のデジタル放送システム

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Page 1: 次世代放送システムの メディアトランスポート技術研究発表 1.まえがき 日本をはじめ世界各国で次世代放送システムの検討 が進められている1)~4)。現在のデジタル放送システム

研究発表

1.まえがき日本をはじめ世界各国で次世代放送システムの検討

が進められている1)~4)。現在のデジタル放送システムの多くは1990年代初頭までに開発されたもので,世界の多くの地域のアナログ放送がそのシステムを使ってデジタル放送へ移行した。アナログ放送では主に映像と音声だけのテレビ番組を提供していたが,デジタル

放送では映像や音声だけの番組の他にデータも容易に提供することができるようになった。現在のデジタル放送システムが開発されてから20年近くが経過し,放送を取り巻くコンテンツ配信の環境は大きく変化した。その1つが,デジタル信号処理技術の進歩に伴うコ

ンテンツの多様化である。以前は映像と音声だけのテレビのコンテンツがほとんどで,解像度やフレームレー

ABSTRACT The environment surrounding content delivery has significantly changed since the early 1990swhen today’s broadcasting systems were developed;content, client terminals, and deliverynetworks have diversified. Today, the content is more varied, audio and video signals havedifferent qualities, and various data signals are used. Moreover, there is a wide variety of fixedand mobile client terminals displaying multi-format signals. There are client terminals that canuse of different types of delivery networks. To respond effectively to this increasing diversity, itis required that broadcast and broadband networks cooperatively deliver content in a way thatmaximizes the benefits of their one-to-many delivery and one-to-one delivery characteristics.The existing media transport technologies do not allow such cooperation, meaning that newmedia transport technologies that make use of various delivery networks are needed in order toefficiently deliver content. This article presents a functional comparison of MMT, a new mediatransport method being developed in MPEG, with MPEG-2 TS and RTP that are used inconventional broadcasting systems. This comparison shows that MMT is the most effectivemedia transport method for next generation broadcasting systems. How to implement MMT inbroadcasting systems is also studied. This study shows that an IP multiplexing scheme inbroadcasting systems is the most efficient way to carry IP packets containing MMT Packets.The MMT and IP multiplexing schemes are for efficient content delivery in which broadcast andbroadband networks cooperatively deliver content. With them, it is possible for users to makeuse of content more effectively without being aware of its delivery channels.

次世代放送システムのメディアトランスポート技術青木秀一

Media Transport Technologies for Next GenerationBroadcasting Systems

Shuichi AOKI

NHK技研 R&D/No.140/2013.722

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映像方式・音響方式

映像符号化・音響符号化 アプリケーションフォーマット

DRM※・暗号化

メディアトランスポート

伝送路符号化・変調

通信回線 放送伝送路

コンテンツのレイヤー

ネットワークのレイヤー ※ Digital Rights Management(デジタル著作権管理)。

トなどの映像フォーマットは数種類だけであったが,ブラウザーで見ることのできるマルチメディアコンテンツが増加し,さまざまな映像フォーマットでコンテンツが利用されるようになってきている。映像フォーマットの多様化に対応して,コンテンツ

を利用する端末も多様化している。アナログ放送の時代には単一フォーマットの信号しか表示できないテレビ受信機が一般的であったが,現在では複数フォーマットの信号を表示できるディスプレーが広く普及している。ハイビジョンを超える高解像度のディスプレーも利用可能になり,据え置き型から携帯型まで多種多様な形態の端末が利用されている。また,以前は磁気テープに録画するビデオテープレコーダーが主流であったが,現在はハードディスクや不揮発性メモリーなど大容量の蓄積メディアに録画するレコーダーや端末が一般的となり,タイムシフト再生や蓄積利用などコンテンツを利用する環境も多様化している。また,ネットワーク技術も進歩し,コンテンツを配

信する伝送路が多様化した。アナログ放送の時代の主な伝送路は放送波だけであったが,現在では放送波の他にインターネットや携帯電話網など高速な通信回線が手軽に利用できるようになっている。放送と通信の複数の伝送路に同時に接続できる端末も増えている。このように,1990年代までと比較して,多様なコン

テンツが多様なネットワークで配信され,多様な端末で利用されるようになってきている。コンテンツ配信の多様化は今後もいっそう進むであろう。放送は多数の利用者に同時に安定してコンテンツを

伝送できるという特徴がある。しかし,一方向にしか伝送できないという制約もある。これに対して,通信回線は双方向の伝送が可能であり,利用者の個別の要求に応じたコンテンツを伝送できるという特徴がある。しかし,送信設備やネットワークが混雑した場合にはサービスの品質が低下する可能性がある。放送と通信にはそれぞれ異なる特徴があるので,放送と通信を組み合わせてコンテンツを配信することで,より利便性の高いサービスを実現することができると期待される5)~8)。そのため,次世代放送システムでは,現在の放送システムのように放送単独の配信システムではなく,必要に応じて通信も配信システムとして利用できることが求められるようになる。一方,利用者にとってはコンテンツの伝送路よりもコンテンツ自体が重要であり,良質なコンテンツを手軽に利用できることが必要である。そのため,利用者が伝送路の違いを意識しないでコンテンツを利用することのできる,放送と

通信が協調してコンテンツを配信する仕組みが必要になる。1図に示すように放送システムには多くの技術領域

がある。放送システムと通信システムを協調させるためには,コンテンツのレイヤーとネットワークのレイヤーを接続するメディアトランスポートレイヤーの機能が重要である。メディアトランスポートレイヤーはコンテンツを構成する映像や音声などのコンポーネントを伝送や利用に適した形に変換する機能を提供するものである。現在の放送システムで広く用いられているメディア

トランスポート方式はMPEG-2 TS(Moving PictureExperts Group-2 Transport Stream)方式9)とRTP(Real-time Transport Protocol)方式10)である。これらの方式で放送と通信の協調を行う際にはさまざまな限界があるので,MPEGで多様なネットワークを用いることを想定した新たなメディアトランスポート方式MMT(MPEG Media Transport)の標準化を進めている11)12)。本研究発表では,MMTとMPEG-2 TSおよびRTP

の機能を比較し,次世代放送システムのメディアトランスポート方式としてMMTが適していることを述べるとともに,放送システムにおいてMMTを伝送する方法を述べる。

2.次世代放送システムのサービスと機能2.1 次世代放送システムのサービス次世代放送システムでは,スーパーハイビジョンの

ように現在のデジタル放送と比較して高精細の映像や多チャンネルの音声を放送するサービスだけでなく,

1図 放送システムに必要な技術領域とメディアトランスポート技術の関係

NHK技研 R&D/No.140/2013.7 23

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放送と通信を協調させて,利用者が情報をより便利に利用することのできる以下のような新たなサービスが可能である。(1)ウィジェット*1などのアプリケーションを使った情報表示ウィジェットなどのアプリケーションが通信回線を

利用してサーバーと接続し,放送番組の関連情報や為替情報,地域ごとの天気予報や気象情報などを取得し,それらの情報を放送番組と同じ画面に同時に表示する(2図)。この機能は放送番組の映像に重ならないように表示できる高解像度のディスプレーを使うことでその効果をより高くすることができる。(2)追加や差し替え用の映像・音声の利用放送では多くの視聴者を対象とした映像や音声を伝

送し,通信では放送の映像とは異なるアングルの映像や異なる言語,別の解説音声あるいは個別の利用者に特化した差し替え用の映像・音声を伝送する。クライアント端末で,それらを合成したり差し替えたりすることで,個別のニーズに合った情報を表示することができる。(3)利用可能な伝送路を用いて受信した情報を状況に応じて表示放送や通信など複数の伝送路で同一の情報を伝送し,クライアント端末は利用可能な伝送路を用いて受信した情報を表示する。地震速報のような緊急性の高い情報を複数の伝送路で伝送し,最初に受信した情報を速やかに表示することで,より早く情報を表示することができる。また,衛星放送では降雨の影響を受けて受信品質が低下することがあるが,そのような場合においても通信で伝送する情報に切り替えることで,ある程度の情報を表示し続けることが可能になる。災害時には伝送路が遮断されることも想定され,必要な情報

を可能な限り表示することが重要である(3図)。(4)蓄積した高品質コンテンツの利用コンテンツの受信と再生をリアルタイムで行うスト

リーミングサービスとは異なり,コンテンツを蓄積することを前提としたサービスでは伝送時のビットレートと再生時のビットレートを一致させる必要がない。そのため,伝送ビットレートを上回る高ビットレートで符号化した高品質コンテンツを利用することができる。2.2 次世代放送システムに必要な機能次世代放送システムのサービスを実現するためには

以下の機能が必要である。(1)コンテンツのハイブリッド配信機能デジタル放送など現在のコンテンツ配信では,映像

や音声などのコンポーネントを1つにまとめたものを1つのコンテンツとして,伝送路の品質やクライアント端末の種類に合わせて配信している(4図(a))。そのため,一部の利用者にとっては不必要なコンポーネントまでも受信することになる。逆に,別の利用者にとっては必要なコンポーネント,例えば,所望の言語の音声などが含まれないこともあり,多様化する環境に対応できないことが想定される。一方,コンポーネントを別々に配信し,利用者の好

みやクライアント端末の能力に応じて必要なものを選択して受信する方法にすることで,コンテンツやクライアント端末の多様化に容易に対応することができる(4図(b))。多様化するコンテンツ配信に対応するために放送と通信回線を使用する次世代放送システムでは,コンテンツをコンポーネントのままで複数の伝送路で配信するハイブリッド配信の機能を備える必要がある。ハイブリッド配信では,多数の利用者が利用すると

思われるコンポーネントを放送で提供し,少数の利用者しか利用しないと思われるコンポーネントを個別に*1 時計や気象情報などを表示するプログラム。

3図 利用可能な伝送路を用いて受信した情報を状況に応じて表示2図 ウィジェットなどのアプリケーションを使った情報表示

研究発表 1

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本編映像

本編音声

解説音声

アプリケーション

本編映像

解説音声

本編音声

アプリケーション

(a)コンポーネントを1つにまとめて配信する形態 (b)コンポーネントを別々に配信し, クライアント 端末が必要なコンポーネントを選択する形態

… …

… …

PMT

組み合わせ可能

放送で伝送するTS

通信で伝送する別のTS

組み合わせ不可能

映像 映像 映像 音声 音声

音声 音声映像 映像 映像 PAT

PAT※

※Program Association Table。

※PMT

通信で提供するなどコンポーネントの需要の大きさに応じて伝送路を使い分ける方法が有効である。通信だけで全てのサービスを提供する場合と比較して,ハイブリッド配信では回線の負荷や装置の負荷を低減することができる。(2)蓄積型コンテンツの配信機能高品質なコンテンツや多様なフォーマットのコンテ

ンツを提供するためには,コンテンツをファイルとして提供する機能が必要である。ファイルをクライアント端末に蓄積した後で利用するので,伝送路の伝送ビットレートの影響を受けることがない。

3.現在のトランスポート方式とその課題3.1 MPEG-2 TSとその課題現在のデジタル放送の多くは,メディアトランスポート方式としてMPEG-2 TSを利用している。MPEG-2TSは放送で用いるのには適したメディアトランスポート方式であるが,通信回線など多様なネットワークを用いて多様なクライアント端末にコンテンツを配信するのには適していない。その理由の1つがMPEG-2 TSの多重機能である。

MPEG-2 TSでは番組を構成するコンポーネントの他に,番組の構成を記述するPMT(Program Map Table)などの制御信号(PSI/SI:Program Specific Information /Service Information)やエンコーダーに供給するSTC

(System Time Clock)をサンプルしたPCR(ProgramClock Reference)を同じTSに多重して伝送する必要がある。PMTは多重されたTSのコンポーネントだけを参照することができ,他のTSのコンポーネントを参照することができない。また,TSに多重されたコンポーネントにはSTCに基づくタイムスタンプが付加される。MPEG-2 TSでは,コンテンツを構成する要素を1つに多重する必要があり,放送のTSに多重したコンポーネントと通信のTSに多重したコンポーネントなど,異なるTSのコンポーネントを組み合わせて番組を構成することができない(5図)。また,制御信号を通信で伝送し,その制御信号を用いて放送で伝送するコンポーネントを利用することもできない。更に,エンコーダー間のSTCを同期する仕組みがないことも課題である。同一番組であっても地域によってSTCが異なることが一般的であり(6図),複数のSTCが混在する放送と通信のコンポーネントを同期再生することは難しい。MPEG-2 TSは伝送時の取り扱いが容易でないことも多様なネットワークでの利用を妨げる要因の1つである。TSパケットを多重して1つのストリームを構成した場合には,TSパケットのストリーム上の位置で再生時刻が決まるので,TSパケットの間隔と位置を一定に保って伝送する必要がある。そのため,TSを加工しないで利用するのは容易であるが,別のTSパケットを挿入したり特定のTSパケットを抜き出したりした場合に

4図 コンテンツ配信の形態

5図 MPEG-2 TSにおけるコンポーネントの組み合わせ

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サーバー

放送局A 放送局B

通信回線STC_A STC_B

STC_C STC_D

は再生時刻を合わせるのが困難である。更に,蓄積型コンテンツについても課題がある。

MPEG-2 TSでは制御信号(PSI/SI)やデータ放送のコンテンツなどをファイルデータとしてデータカルーセル方式*2で伝送している。このデータカルーセル伝送方式は高品質コンテンツなどの大容量データを高ビットレートで伝送する用途には適していない。3.2 RTPとその課題DVB-H(Digital Video Broadcasting - Handheld)

やATSC -M / H(Advanced Television SystemsCommittee - Mobile / Handheld)などのようにメディアトランスポート方式としてRTPを用いているデジタル放送もある。「TS over IP(Internet Protocol)*3」の場合とは異なり,RTPではコンポーネントを個別に伝送でき,それらのコンポーネントを組み合わせてコンテンツを構成することができる。RTPを通信回線で用いる場合には問題はないが,RTPを放送で用いる場合には以下のような課題がある。(1)ファイルの多重・伝送機能がないRTPではファイルを伝送する方式を別途用意し,別

のIPデータフローとして伝送する必要がある。(2)RTCP(RTP Control Protocol)やSDP(SessionDescription Protocol)などの制御信号を多重する機能がないコンポーネントと制御信号を別々のIPデータフロー

で伝送する必要がある。(3)IPデータフローの数が多くなる映像または音声など同じメディアであっても異なる

エンコーダーで符号化したコンポーネントを1つのIPデータフローに多重することを想定していない。また,同じメディアであってもコンポーネントを伝送するフ

ローの他に,制御信号を伝送するフローや品質を確保するための冗長データのフローなど多数のデータフローが必要である。放送では配信したコンテンツの品質を管理すること

も重要で,同じIPデータフローで管理できる必要がある。このようなRTPの多重機能の不足はRTPを放送で用いる場合に課題となる。

4.MMTの概要4.1 MMT標準化の背景と当所における取り組み1994年のMPEG-2 Systemsの標準化から20年近くが

経過し,コンテンツ配信の環境は大きく変化した。MPEG-2 TSやISO Base Media File Format13)は,それらが標準化されたときには想定されていなかった用途で用いられている。これらの既存の方式ではSVC(Scalable Video Coding)やMVC(Multiview VideoCoding)などのマルチレイヤー符号*4を複数伝送路で伝送することが困難であったので,既存のメディアトランスポート方式の課題と新たなメディアトランスポート方式の必要性を議論するワークショップがMPEGにおいて開催された。2009年7月のMPEGロンドン会合では,既存のメディアトランスポート方式の課題と応用事例などの検討が行われ,MPEG-2 TSのコードポイント*5が不足気味であること,PES(Packetized Elementary Stream)やTSパ ケ ッ ト の 大 き さ がUHDTV(Ultra-HighDefinition Television)などの新たなアプリケーションに適していないことなどが指摘された14)。2010年1月のMPEG京都会合では,放送と通信を含むハイブリッド配信の観点から新たなメディアトランスポート方式の必要性などが議論された15)。この2回のワークショップにおける議論の結果,放送や通信などの多様なネットワークを用いてマルチメディアコンテンツを伝送するための新たなメディアトランスポート方式であるMMTの標準化が開始された16)。その後,MMTはHEVC(HighEfficiency Video Coding)と3D Audioを組み合わせた新たな標準規格であるMPEG-Hのシステム部分となり,ISO/IEC 23008-1として標準化が進められている。当所では,次世代放送システムで放送・通信連携サービスを実現するために,放送や通信など複数の伝送路

*2 同じデータを繰り返し送信する伝送方式。*3 TSパケットをIPパケットに乗せて伝送する伝送方式。*4 映像信号を複数の階層で符号化したり複数のビュー(表示画面)で

符号化したりするなど,複数のレイヤーを用いて符号化した符号。*5 特定の情報を一意に示すために割り当てる値。

6図 複数のSTCが混在

研究発表 1

NHK技研 R&D/No.140/2013.726

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レガシーメディア ファイル アクセスユニット NAL※1ユニット

Media Fragment Unit(MFU)

Media Processing Unit(MPU)

(連結,分割)

(連結)

・テーブル・記述子

制御メッセージ

アセット※2

パッケージ

コンテンツの構造

MMTペイロード

MMTパケット RTPやHTTP

UDPやTCP

IPパケット

配信形式

※1 Network Abstraction Layer。※2 同じAsset IDを持つ1つ以上のMPUの集合。

を用いるコンテンツ配信に適したメディアトランスポート技術の研究を既に進めていたので,MMTの標準化を開始したときからそれに参画した。京都でのワークショップでは,高度広帯域衛星デジタル放送におけるIP(Internet Protocol)の導入と放送・通信連携型ダウンロードシステムの標準化や開発の状況を報告した。その結果,放送・通信連携サービスのユースケースや要件がMMTのCfP(Call for Proposals)文書に記載された。また,CfPに対応した技術提案を行い,制御信号やパケットフォーマット,ハイブリッド配信の仕組みなどにその技術が採用された。更に,標準化作業にあたっては2つのコア実験グループのコーディネーターを担当した他,ISO/IEC 23008-1のプロジェクトエディターを担当するなど標準化に貢献した。4.2 MMTの仕組みと機能MMTのプロトコルスタック*6を7図に示す。MMTでは配信のための形式としてMMTパケットとMMTペイロード*7を規定するとともに,コンテンツの論理的な構成としてパッケージを規定している。MMTパケットは,IP層の上の層のUDP(User

Datagram Protocol)やTCP(Transmission ControlProtocol)などのプロトコルで伝送するパケットである。IPパケットでの伝送に適するように可変長となっており,その大きさは下位レイヤーで指定される。1つのMMTパケットには1つのMMTペイロードが格納される。MMTペイロードには同じメディアのデータだけを格納することができ,異なるメディアのデータや制御信号を混載することはできない。しかし,異なるメディアのデータを格納した複数のMMTパケット

を同じIPデータフローに多重して伝送することが可能である。ハイブリッド配信において,コンポーネントを同期

し て 再 生 す る た め に,MPU(Media ProcessingUnit)*8の先頭のアクセスユニット*9の表示時刻を制御信号に記述する。また,MPUヘッダーにはMPU内のアクセスユニットの表示期間を記述する。クライアント端末は制御信号を解析してコンテンツを構成するMPUとその表示時刻を特定し,MPUの内部を解析してアクセスユニットごとの表示期間を特定する。このようにすることで,異なる伝送路で伝送するMPUを同期して利用することができる(8図)。一方,伝送時に発生したパケットロスを回復する手

段として,AL-FEC(Application Layer - ForwardError Correction ) と ARQ ( Automatic RepeatRequest)を用いることができる。これらの仕組みによって伝送品質が確保されていないネットワークを使用して伝送した場合においても,コンポーネントの再生品質の劣下を抑制することができる。4.3 MMTとMPEG-2 TS,RTPの機能の比較MMTとMPEG-2 TS,RTPのレイヤー構造の比較を9図に示す。映像や音声の信号(符号)はMMTではMFU(Media Fragment Unit)*10/ MPUに,MPEG-

*6 データの送受信などの機能を持つ一連のプロトコルをまとめた階層構造。

*7 情報を格納する領域。*8 MMTにおけるデータの処理単位。*9 同一の表示時刻を持つ符号の単位。*10 MMTにおけるMPUより小さいデータの処理単位。

7図 MMTのプロトコルスタック(青色の領域がMMTの規定範囲)

NHK技研 R&D/No.140/2013.7 27

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MPU MPU MPU

MPU MPU

AU AU※… AU AU※… AU AU※

AU※ AU※

… 伝送路1

伝送路 2

制御メッセージ・MPUの取得先・MPUの表示時刻

……………………

ビデオ1

オーディオ1

クライアント端末

※ Access Unit。

MFU/MPU

MMTペイロード

MMTパケット

PES※1・セクション※2

TSペイロード

TSパケット

MPEG-2 TS

RTPペイロードの フォーマット

RTPパケット

MMT RTP

※1 時間情報を持つ符号を格納する領域。※2 ファイルデータを格納する領域。

2 TSではPESに,RTPではRTPペイロードに格納される。MMTを伝送するときには,MPUの連結やMFUの分割を行い,伝送に適した大きさのMMTペイロードにする。一方,MPEG-2 TSではPESを固定長のTSパケットのペイロードに格納する。また,RTPでは伝送時の大きさをあらかじめ想定してRTPペイロードのフォーマットにする。MMTでは伝送に関与せずにメディアの符号をカプセル化*11するレイヤーと,メディアの符号に関わらず伝送に適した構造を提供するMMTペイロードのレイヤーがあるので,多様なネットワークでの伝送に対応できる。次に,MMTとMPEG-2 TS,RTPの機能の比較を

1表に示す。既に述べたように,MPEG-2 TSは,デジタル放送には適した方式であるが,ハイブリッド配信を行って,コンポーネントを組み合わせたりコンテンツをファイルとして伝送したりするのには機能が不足している。RTPは複数の伝送路のコンポーネントを組み合わせることはできるが,異なるエンコーダーで符号化したコンポーネントを多重する機能やコンポーネントと制御信号の多重機能,ファイルの伝送機能が不足している。また,RTPでは蓄積用フォーマットが存在しないことも課題である。

*11 あるデータにヘッダーなどの情報を付加して,パケットなど別のデータ形式にすること。

機能 MMT MPEG-2 TS RTP

ファイル伝送 対応(MFU/MPUにカプセル化)

小容量のファイルだけに対応(セクションに格納)

外付け(FLUTE※などを利用)

コンポーネント・制御信号の多重伝送

対応(MMTパケットとして多重)

対応(TSパケットとして多重) 推奨されない・対応していない

コンポーネント・制御信号の独立伝送 対応 対応していない 対応

他ネットワーク上のコンポーネントの組み合わせ

対応 対応していない 対応

伝送品質確保 対応(ARQ・AL-FECを規定)

対応していない(TSパケットのロス検出は可能)

外付け(FEC FRAMEWORKを利用)

蓄積用フォーマット 対応(○) 対応(△) 対応していない※ File Delivery over Unidirectional Transport:一方向のIP伝送路のファイル伝送プロトコル。

8図 制御メッセージによるMPUの取得と表示

9図 MMTとMPEG-2 TS,RTPのレイヤー構造の比較

1表 MMTとMPEG-2 TS,RTPの機能比較

研究発表 1

NHK技研 R&D/No.140/2013.728

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これに対して,MMTではMPEG-2 TSやRTPの不足する機能を解消することができる。コンポーネントや制御信号をMMTパケットとして多重し,1つのIPデータフローで伝送することができる。また,MFU/MPUにファイルを格納できるので,ファイル型コンテンツを伝送するだけでなく,アプリケーションなどをファイルとして伝送することも可能である。また,コンポーネントの再生時刻とIPマルチキャストの配信情報*12

を制御信号に記載することで,複数の伝送路で伝送するコンポーネントを同期して再生することも可能である。これらの特徴は放送だけで用いる際にも,また,放送と通信で用いる際にも必要な機能であり,次世代デジタル放送のメディアトランスポート方式としてMMTが最も適している。

5.放送システムにおけるMMTの伝送方法放送システムにおけるMMTの伝送方法を2表に示す。方法①はMMTパケットを放送の伝送スロット*13に直接格納して伝送する方法である。現在のデジタル放送はMPEG-2 TSパケットを伝送路符号化の対象としているが,方法①ではMMTパケットを伝送路符号化の対象としている。方法②はMMTパケットをTSパケットにカプセル化して伝送する方法で,現在のデジタル放送の伝送方式を使ってそのまま伝送することができる。現時点では,

MMTパケットをTSパケットにカプセル化する方法は規定されてないが,既に提案されている,IPパケットをTSパケットにカプセル化する方法などを拡張することで対応できる。これらの方法としてはMPE(MultiProtocol Encapsulation ), ULE ( UnidirectionalLightweight Encapsulation)などがある17)~ 19)。方法③はMMTパケットを乗せたIPパケットをTSパ

ケットにカプセル化して伝送する方法である。方法④はMMTパケットを乗せたIPパケットを,IP

パケットの多重化方式20)*14を用いて放送伝送路に多重する方法である。方法①および方法②ではMMTパケットをIPパケットにしないので,放送だけでコンテンツを配信するときに有効な方法である。放送で伝送するコンポーネントを特定するために,放送に特化したロケーション情報*15

が必要であり,放送と通信を区別して処理することになる。一方,方法③および方法④では,MMTパケットをIPパケットにするので,放送と通信のインターフェースをIPで共通にすることができ,送信装置やクライアント端末は2つの伝送路を共通に使用することができ

*12 IPアドレスやポート番号など,コンポーネントを伝送するIPパケットを受信するために必要な情報。

*13 伝送路符号化の単位。固定長。*14 IPパケットを放送伝送路で伝送するための多重化方式。*15 コンポーネントを伝送するネットワークやパケットの情報など。

方法① 方法② 方法③ 方法④

構成

MMTパケット

MMTパケット IPパケットMMTパケット

TSパケット TSパケット IPパケットMMTパケット TLVパケット

伝送路符号化・変調 伝送路符号化・変調 伝送路符号化・変調 伝送路符号化・変調

•放送の伝送スロットにMMTパケットを直接格納して伝送。

•MMTパケットをMPEG-2 TSにカプセル化して伝送。

•MMTパケットを乗せたIPパケットをMPEG-2 TSにカプセル化して伝送。

•MMTパケットを乗せたIPパケットをIPパケットの多重化方式を用いて伝送。

特徴

•MPEG-2 TSパケットと同様にMMTパケットに対して伝送路符号化処理を行う。

•TSパケットが伝送路符号化処理の対象となるので,既存のデジタル放送でもMMTへの対応が可能。

•放送および通信のインターフェースをIPで共通化できるので,ロケーション情報を含むMMTの機能を活用可能。•TSパケットが伝送路符号化処理の対象となるので,既存のデジタル放送でもMMTへの対応が可能。

•放送および通信のインターフェースをIPで共通化できるため,ロケーション情報を含むMMTの機能を活用可能。•IPパケットの多重化方式によって,効率のよい多重が可能。

課題

•伝送スロットレイヤーでMMTパケットの境界を識別する情報を送る必要がある。•放送ネットワークを識別するためのロケーション情報を規定する必要がある。

•MMTをMPEG-2 TSにカプセル化する方式を新たに規定する必要がある。•MPEG-2 TSがオーバーヘッドとなる。

•MPEG-2 TSがオーバーヘッドとなる。

•放送システムをIPパケットの多重化方式に対応させる必要がある。

2表 放送におけるMMTパケットの伝送方法の比較

NHK技研 R&D/No.140/2013.7 29

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放送波

通信回線

IPパケット,AMT※1TLV-NIT※2

MLD※3 / IGMP※4

IP パケット

放送チューナー

ルーター

必要なIPデータフローを通知

MLD※3 / IGMP※4

IP パケットアプリケーション

必要なIPパケットの受信

※1 Address Map Table。 ※2 TLV-Network Information Table。 ※3 Multicast Listener Discovery。 ※4 Internet Group Management Protocol。

る。ハイブリッド配信に対応させる次世代放送システムでは方法③または方法④が適していると言える。更に,方法④では,IPパケットの多重化方式を用いることでオーバーヘッドを小さくすることができる。方法④は方法③よりも効率の高い伝送が可能であり,有利である。また,方法④のTLV(Type Length Value)多重化

方式では,クライアント端末が必要なIPパケットをIPアドレスで選択することができ,放送波に多重したIPパケットの中から必要なIPパケットを分離することができる(10図)。通信の受信と同じ仕組みで放送のIPパケットを受信するので,放送に多重されたIPパケットと通信で伝送されたIPパケットを区別して受信する必要はない。方法④では,放送システムをIPパケットの多重化方式に対応させることが課題となるが,高度広 帯 域 衛 星 デ ジ タ ル 放 送 やDVB-T2(DVB -Terrestrial - Second generation),DVB-S2(DVB -Satellite - Second generation),ATSC-M/Hなど,近年開発されたデジタル放送システムはIPパケットの多重化方式を備えているので,次世代放送システムの開発においては大きな問題にはならない。以上のことから,放送システムにおけるMMTの伝送方法としては,MMTパケットを乗せたIPパケットをIPパケットの多重化方式を用いて放送伝送路に多重する

方法④が最適であると言える。

6.むすび次世代放送システムのメディアトランスポート技術

について述べた。現在のデジタル放送が開発された約20年前と比較して,コンテンツ,クライアント端末,配信ネットワークが多様化した。このような環境では,一対多の配信を効果的に行うことができる放送と,一対一の配信を効果的に行うことができる通信を組み合わせたコンテンツ配信が重要であることを述べ,次世代放送システムにおけるハイブリッド配信の必要性を明確にした。また,現在のメディアトランスポート方式では,放送と通信を組み合わせたコンテンツ配信に課題があることを述べ,新たなメディアトランスポート方式であるMMTの特徴を述べた。更に,MMTの機能と現在のメディアトランスポート方式を比較して,次世代放送システムではMMTが適していることを述べた。最後に,デジタル放送でのMMTの伝送方法について検討し,放送と通信の共通利用および伝送効率の観点から,IPパケットを放送伝送路で伝送する方法が最適であることを述べた。これらの検討を基に,スーパーハイビジョンをハイ

ブリッド配信することを目指して,送受信装置の開発を進め機能の検証を行う予定である。

参考文献1) M. Richer:“Overview of ATSC 3.0,”MPEG-H 3D Audio Workshop(2012)

2) W. Zhang:“Latest Activities of Technical Committee and Key Technologies for Next Generation BroadcastTelevision,”International Broadcasting Convention(2012)

3) L. Vermaele:“FOBTV:The Future of Broadcast TV,”International Broadcasting Convention(2012)

4) L. Fay, J. Kutzner, S. Pizzi and J. Whitaker:“Progress in“ATSC 3.0”the Next Generation Broadcast TelevisionSystem,”IEEE Annual Broadcast Symposium(2012)

10図 放送および通信のIPパケットを受信するアプリケーション

研究発表 1

NHK技研 R&D/No.140/2013.730

Page 10: 次世代放送システムの メディアトランスポート技術研究発表 1.まえがき 日本をはじめ世界各国で次世代放送システムの検討 が進められている1)~4)。現在のデジタル放送システム

5) C. Concolato, S. Thomas, R. Bouqueau and J. L. Feuvre:“Synchronized Delivery of Multimedia Content overUncoordinated Broadcast Broadband Networks,”MMSys’12 Proc. of the 3rd Multimedia Systems Conference,ACM Digital Library, pp.227-232(2012)

6) H. -T. Chiao, C. -T. Tseng, J. -W. Jiang and H. -A. Hou:“Hybrid Streaming Delivery over DVB-H Broadcast andWiMAX Mobile Networks,”IEEE 6th International Conference on Wireless and Mobile Computing, Networkingand Communications(2010)

7) C. Heuck:“An Analytical Approach for Performance Evaluation of Hybrid(Broadcast/Mobile)Networks,”IEEETrans. Broadcast., Vol.56, No.1, pp.9-18(2010)

8) Y. Liu, S. Yu and Junzhou:“A New Hybrid Delivery Scheme for Efficient Video-on-Demand Services,”IEEE 7thWorkshop on Multimedia Signal Processing(2005)

9) Rec. ITU-T H.222.0 | ISO/IEC 13818-1,“Information Technology-Generic Coding of Moving Pictures andAssociated Audio Information:Systems”(2006)

10)H. Schulzrinne, S. Casner, R. Frederick and V. Jacobson:“RTP:A Transport Protocol for Real -TimeApplications,”IETF RFC 3550(2003)

11)Y. Lim:“IP-Friendly MPEG Media Delivery Standards for Next Generation Broadcasting,”IEEE InternationalSymposium on Broadband Multimedia Systems and Broadcasting(2012)

12)Y. Lim, K. Park, J. Lee, S. Aoki and G. Fernando:“MMT:An Emerging MPEG Standard for Multimedia Deliveryover the Internet,”IEEE Multimedia Mag., Vol.20, No.1, pp.80-85(2013)

13)ISO/IEC 14496-12,“Information Technology-Coding of Audio-visual Objects-Part 12:ISO base media fileformat”(2008)

14)L. Chiariglione:“Presentations of MMT Workshop in London 2009,”ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 Doc. N10853(2009)

15)L. Chiariglione:“Presentations of MMT Workshop in Kyoto 2010,”ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 Doc. N11200(2010)

16)ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 Doc. N11539,“Call for Proposals on MPEG Media Transport(MMT)”(2010)

17)ETSI EN 301 192,“Digital Video Broadcasting(DVB);DVB Specification for Data Broadcasting”(2004)

18)ATSC Doc. A/90,“ATSC Data Broadcast Standard”(2000)

19)G. Fairhurst and B. C. Nocker:“Unidirectional Lightweight Encapsulation(ULE)for Transmission of IPDatagrams over an MPEG-2 Transport Stream(TS),”IETF RFC 4326(2005)

20)Rec. ITU-R BT.1869,“Multiplexing Scheme for Variable-length Packets in Digital Broadcasting Systems”(2010)

あお きしゅういち

青木秀一

2003年入局。以来,放送技術研究所においてIP技術を用いる放送システムの研究に従事。現在,放送技術研究所伝送システム研究部に所属。博士(情報理工学)。

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