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平成23・24年度 やまぐち総合教育支援センター共同研究 中間発表 思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導 に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した授業実践を通して- 教育支援部

思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導 に関する研究 · 2017-04-03 · 思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究

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平成23・24年度 やまぐち総合教育支援センター共同研究 中間発表

思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導

に関する研究

-小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した授業実践を通して-

教 育 支 援 部

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目 次

Ⅰ 研究の意図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1 研究の背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 研究の仮説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ 研究の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1 研究の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(1) 思考力・判断力・表現力の明確化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

ア 社会科における思考力・判断力・表現力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

イ 理科における思考力・判断力・表現力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

(2) 思考力・判断力・表現力を育てる授業の展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

ア 問題解決的な学習過程の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

イ 協働的な学びの場面の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

(3) ICTの活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

Ⅲ 研究の実際 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

1 調査研究協力員による授業実践 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

(1) 小学校第6学年社会科「わたしたちの願いと政治のはたらき-元気な町づくりをめ

ざして-」における実践

(2) 小学校第4学年社会科「山口県のようす-つながる、広がる交通網-」における実践

(3) 小学校第6学年理科「われら、水溶液なんでも鑑定団」における実践

(4) 小学校第6学年理科「生物どうしのつながり」における実践

(5) 中学校第2学年社会科(歴史的分野)「風刺画を基にした近代日本と国際情勢につい

ての考察」における実践

(6) 中学校第2学年社会科(地理的分野)「自然環境の特色をとらえよう」における実践

(7) 中学校第2学年理科「前線の通過と天気の変化」における実践

(8) 中学校第1学年理科「いろいろな気体とその性質」における実践

Ⅳ 研究のまとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

1 研究の成果と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

(1) 問題解決的な学習過程への協働的な学びの場面の導入 ・・・・・・・・・・・・ 4

(2) 協働的な学びの場面でのICT活用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

2 来年度の取組に向けて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

注 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

調査研究協力員・担当者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

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思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した実践を通して-

- 1 -

Ⅰ 研究の意図

1 研究の背景

OECD の PISA 調査等の各種調査から、我が国の児童生徒については、思考力・判断力・表現力

を問う問題、知識・技能を活用する問題等に課題が見られることが指摘されている。これを受け、

新学習指導要領においても、知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・

表現力等を育むことが明記された。

また、文部科学省が発表した『ICTを活用した指導の効果の調査結果について-「確かな学

力」の向上につながるICT活用-』(平成 19 年)では、教科指導においてICTを活用した場

合は、活用しない場合に比べ、高い学習効果を得られることが報告された。さらに、今年度発表

された『教育の情報化ビジョン』(平成 23 年)では、分かりやすく深まる授業の実現のため、

ICTを活用して、一斉学習に加え、個別学習や協働学習(子ども同士が教え合い学び合う協働

的な学び)を推進することを求めている。

以上のことを踏まえ、日々の授業実践に生かせる学習指導に関する研究を行うこととし、次の

ような研究の仮説を立てた。

2 研究の仮説

思考力・判断力・表現力は、基礎的・基本的な知識・技能を活用し、主体的に課題を解決して

いこうとする過程において養われる。その中で、ICTを効果的に活用し、子ども同士がお互い

の考えを伝え合い、高め合う協働的な学びの場面を設定することで、思考力・判断力・表現力は

より高まる。

Ⅱ 研究の概要

本研究は、研究期間を平成 23・24 年度の2年間とし、4人の小学校教諭(社会科担当・理科担

当各2人)及び4人の中学校教諭(社会科担当・理科担当各2人)を調査研究協力員として、実

践的・実証的な研究を行うこととした。

1 研究の内容

(1) 思考力・判断力・表現力の明確化

本研究においては、まず、教科別に思考力・判断力・表現力を以下のように捉えた。

ア 社会科における思考力・判断力・表現力

・ 課題に対して、既習の知識や調べたことの中から、最適な情報を選ぶ力

・ 選んだ情報を、比較・関連付けて、多面的・多角的に考察し、公正に判断する力

・ 考えたことを、根拠を明確にして説明する力、また他者の考えを受け止める力

イ 理科における思考力・判断力・表現力

・ 課題に対して、既習の知識・技能を活用して、仮説(予想)を立てる力

・ 仮説(予想)を基に観察や実験を計画する力

・ 仮説(予想)と観察・実験の結果とを比較・分類・関係付けて考察する力

・ 考えたことを、科学的な根拠を明確にして説明する力、また他者の考えを受け止める力

このように、本研究での思考力・判断力・表現力を明らかにし、調査研究協力員との共通理

解を図った上で、研究を進めた。

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思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した実践を通して-

- 2 -

(2) 思考力・判断力・表現力を育てる授業の展開

前述のような思考力・判断力・表現力を育てる授業とは、実際にどのような授業であろうか。

ICTを活用すれば高い学習効果が得られると実証されていても、授業の根幹を成す授業構

成・内容・形態等が適切でなければ、学力が向上するとは考えにくい。そこで、次の2点を必

須の条件として、授業を実施することとした。

ア 問題解決的な学習過程の設定

問題解決的な学習過程とは、一般的に、次の①~④のような段階*1がある。これらの段階

を踏んでいく授業を構成する。

① 課題を発見・把握する(つかむ)段階

児童生徒の頭の中に「なぜだろう」、「どうしてだろう」と主体的に考えたくなるような

問いができるようにすること

② 仮説を設定する(見通す)段階

その問いに対して、既習の知識・技能を活用して仮説を設定できるようにすること

③ 仮説を検証する(追求する)段階

その仮説について、既習の知識や調べたこと(観察・実験したこと)の中から、必要な

情報を比較・分類・関連付けて考察できるようにすること

④ 結論を導き出す(まとめる)段階

その考察を基に結論を導き出し、分かりやすく説明できるようにすること

このような問題解決的な学習過程を設定し展開することで、思考力・判断力・表現力が養わ

れると考えた。なぜならば、本研究で捉えた二つの教科の思考力・判断力・表現力は、問題解

決的な学習過程を通して児童生徒が身に付ける力と重なる点が多いからである。問題解決的な

学習を繰り返し行い、その学習方法を身に付けさせれば、思考力・判断力・表現力をより高め

ることができると考える。

イ 協働的な学びの場面の設定

児童生徒の思考をより高めていくため、

協働的な学びの場面を問題解決的な学習過

程のそれぞれの段階又は全てに取り入れる

ことにした(図1)。本研究では、協働的な

学びを、「共通の課題を追究する過程におい

て、自分の考えを伝え、他者の考えを受け

止めることにより、自分の考えを見直しな

がら、集団としての考えを高めていく学習

活動」と捉えた。

協働的な学びの効果については、以下の

点などが挙げられている。

(ア) 多様な考えを伝え合うことで、自分の

考えを再確認したり、修正したりして、

考えが深まる。

(イ) 自分の考えが認められることで、自尊感情が養われる。

図1 問題解決的な学習過程と協働的な学び

問題解決的な学習過程

④ 結論の導出

① 課題の発見・把握

② 仮説の設定

③ 仮説の検証

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思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した実践を通して-

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(ウ) 子ども同士の信頼関係を築くことができる。

また、協働的な学びを取り入れることは、学習指導要領で重視されている言語活動を充実

させることにもつながるものである。

(3) ICTの活用

本研究では、上記(2)ア・イの2点を備えた授業を展開した上で、協働的な学びを充実・活性

化するための手段として、ICTを活用することにした。その際、ICTの有用性、特に、即

時性・共有性・保存性を生かした活用方法を考えた。表1に、今回の授業実践で活用した方法

を具体的に示す。

表1 ICTの有用性と活用方法

有用性 活用方法 主なICT機器

即時性

児童生徒が書いた

ものを、クラス全体に

すぐに拡大して提示す

る。

デジタルカメラ・無線

通信機能付きSDカー

ド・PC・プロジェクタ又

は電子黒板

2 実物投影機・PC・プロ

ジェクタ又は電子黒板

学校に招くことが難

しいゲストティーチャー

の意見を教室ですぐ

に聞く。

3 電話・アンプ・スピー

カー

4 インターネット電話・P

C・Webカメラ

共有性

個人や各グループ

で考えた意見や図等

を重ね合わせ、それぞ

れの考えを比較、分

類、関連付ける。

実物投影機・PC・プロ

ジェクタ又は電子黒

板、OHPシート

6 PC・電子黒板

保存性

調べたことや学習し

てきたことを保存して

おき、比較、分類、関

連付け、検証のための

根拠として活用する。

7 PC・デジタルノート*2

・電子黒板

以上のことを踏まえ、調査研究協力員による仮説検証のための授業実践を行った。

Ⅲ 研究の実際

1 調査研究協力員による授業実践

調査研究協力員による授業実践の概要を表2にまとめた。ICTの活用は、表1中の番号と対

応している。それぞれの実践の具体的な内容、成果及び課題については、別にまとめる(表2中

の「単元名」からハイパーリンクにより指導案等が表示されるので参照されたい)。

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思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した実践を通して-

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表3 アンケート集計結果

表2 授業実践の概要

Ⅳ 研究のまとめ

1 研究の成果と課題

授業実践を基に、明らかになった研究の成果と課題を以下に述べる。その際、児童生徒アンケー

ト*3、授業参観者アンケート*3、児童生徒のワークシートの記述の三つを研究の主な検証材料

とした。アンケートの集計結果を表3に示す。

(1) 問題解決的な学習過程への協働的な学びの場面の導入

児童生徒アンケートの結果

(表3)やそのアンケートの

自由記述欄に「他の人の意見

を聞いて気付くことが多

かった」、「自分とは違う方法

を考えていた」などの記述が

見られたことから、協働的な

学びを取り入れることに

よって、お互いの考えを伝え

合い、他者の考えを受け止め

た様子がうかがえた。また、

ワークシートの記述からも、

他班との考えの違いに気付

き、自分たちの考えを見直し

ていったことが読み取れた。

このように、考えを見直す

ことによって、児童生徒の思

考が高まっていったと考え

校種 教科 単 元 名 主な協働的な学びの場面 ICT活用

小学校

社会科

わたしたちの願いと政治のはた

らき-元気な町づくりをめざして-

町が地域交流館をつくった理由を、

農家の人の思いから考える場面 4

山口県のようす

-つながる、広がる交通網-

山陽自動車道がそこにつくられた理

由を、複数の地図を基に考える場面 3・5

われら、水溶液なんでも鑑定団 自分たちが考えた方法で水溶液を

見分ける場面 7

生物どうしのつながり 生物の「食う食われる」の関係を図に

整理する場面 6

中学校

社会科

風刺画を基にした近代日本と国

際情勢についての考察

風刺画から、日本を取り囲む国際情

勢の変化について考える場面 5

自然環境の特色をとらえよう 世界(6か所)の衣食住の写真の組

み合わせを考える場面 1

前線の通過と天気の変化 虹ができる条件を図を基にして考え

る場面 2

いろいろな気体とその性質 未知の気体を同定するために効率

のよい実験の手順を考える場面 1

児童生徒アンケート(139 名) 評 価

興味をもって学習に取り組むことができた。 3.8

班で話し合うことで、考えを深めることができた。 3.7

クラス全体で話し合った後に、自分たちの意見を振り返

り、考えを深めることができた。 3.8

プロジェクタを使うことで、自分たちの班の考えをうま

く伝えることができた。 3.8

プロジェクタを使うことで、各班の考えをよく理解する

ことができた。 3.9

授業参観者アンケート(111 名) 評 価

子どもたちは、本時の学習課題に意欲的に取り組んでい

た。 3.8

子どもたちの思考力・判断力・表現力を高めるために、

協働的な学びの場面が効果的に取り入れられていた。 3.3

子どもたちがお互いの考えを伝え合い、高め合うため

に、ICTが効果的に取り入れられていた。 3.1

今日の授業は、子どもの思考力・判断力・表現力を高め

ることにつながった。 3.1

授業の目標は達成できていた。 3.2

※ 表3中の数値は、以下の4段階の評価を平均した値である。

4 そう思う、3 ややそう思う、2 あまりそう思わない、1 思わない

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る。しかし、これらの成果が得られた反面、実際の授業実践から、幾つかの課題も見付かった。

1点目は、協働的な学びの場面が、問題解決的な学習過程の「仮説の検証」の段階に集中し

たことである。協働的な学びの場面を別の段階や複数の段階に取り入れることで、思考がより

高まるのではないかと考える。

2点目は、ペア学習やグループ学習等の話合いの機会が、クラスにおいてまだ十分にもてて

いないことである。研究に関わる授業実践だけに協働的な学びを取り入れても、思考力・判断

力・表現力が高まるとは考えにくいため、日々の授業においても話合いなどの活動を積極的に

取り入れ、よりよい考えを導き出す体験を積ませていく必要がある。

3点目は、集団としての考えをより高めていく授業には、まだ十分には到達していないこと

である。もちろん、個人の考えを集約し班の考えとしてまとめ、クラス全体に発表することで、

他班との考えの違いに気付くところまでは、どの授業においても達成できていた。しかし、そ

の後、自分たちの考えをもう一度見直すこと

が不十分で、思考の高まりに欠けることが

あった。このような点は、授業参観者も感じ

ており、アンケート結果にも表れていた(表

3)。思考をより高めていく授業にするために、

図3のように、クラス全体から班、班から個人へともう一度考えを見直す学習活動を仕組む必

要がある。その際、他者の考えをそのまま受け入れて見直すのではなく、他者の考えを反証的

に吟味することが、思考を高めていくために必要である。

(2) 協働的な学びの場面でのICT活用

児童生徒アンケートの結果(表3)やそのアンケートの自由記述欄に「自分たちの意見が分

かってもらえた」、「いつもよりよく分かった」などの記述が見られたことから、ICTを取り

入れたことで、お互いの考えを効果的に伝え合うことができた様子がうかがえた。

また、インターネット電話等を活用して外部の意見を取り入れることで、児童生徒同士の思

考を広げることができ、クラスとしての考えの高まりにつながった。このように電話やインター

ネット電話は、教室にゲストティーチャーを呼ぶことができないときなどに効果を発揮する。

さらに、協働的な学びの場面でのICT活用は、保存性を生かした活用が特に効果的である

ことが分かった。学習してきたことをデジタルノートに保存することで、誰でもそれを見たり、

付け加えて書いたりすることができる。つまり、児童生徒は、必要に応じて、複数の考えをい

つでも参考にでき、その中から必要な情報を主体的に選択し、学習課題に取り組むことができ

る。また、保存することは教師にとっても有用である。学習してきたことが保存してあるため、

簡単にポートフォリオを作成することができ、そこから学習者の変容を読み取り、評価や指導

にも役立てることができる。

このような成果が得られた反面、課題も見られた。「それはICTでなければできないのか」

つまりICT活用の必然性があるのかという批判である。確かに、授業の導入場面で児童生徒

の興味・関心を高め、理解を助けるためのICT活用とは異なり、協働的な学びの場面での

ICT活用は、そのよさを直接には感じにくい。このような点が、授業参観者のアンケート結

果に表れていると考える(表3)。ICT活用の必然性を考え、ICTを使うところと使わない

ところを明確にする必要がある。

個 人 班 クラス

さらに必要な手立て さらに必要な手立て

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思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導に関する研究 -小・中学校社会科・理科におけるICTを活用した実践を通して-

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今回の実践を通してICT活用について再確認できたことを2点ほど述べておきたい。1点

目は、協働的な学びの場面以外での活用では、ICTでなければできないことが多くあったと

いうことである。教科書・資料集のみでは足りない情報を補えること、動画を見せること、グ

ラフなどの変化を動的に見せること、時間がかかる変化などを短縮して見せることなどは、児

童生徒の興味・関心や理解につながるものであった。2点目は、少人数学級における電子黒板

活用の有効性である。少人数の場合、全員が画面を直接触って操作することができる。各自が

課題について考えたことを電子黒板上に映し、それを全員で比較・分類・関係付けることがで

き、電子黒板を介して協働的な学びを実現できた。このことから、小グループに1台のタブレッ

トPCがあれば、35 人学級においても同じように実践が可能であると考える。

2 来年度の取組に向けて

以上のことから、来年度の取組として次の3点を進めていきたい。

1点目は、協働的な学びの場面を問題解決過程の各段階に取り入れ、それぞれの段階での協働

的な学びの有効性を探りたい。さらに、協働的な学びの回数を増やすことによって協働的な学び

の定着化を図り、思考力・判断力・表現力を高めたい。

2点目は、協働的な学びの場面のうち、児童生徒が自分の考えを見直していく段階(図3)に

より重点を置き、授業を実践していきたい。その際、他者の考えを反証的に吟味する手だてを積

極的に講じることで、より深まりのある授業になると考える。

3点目は、ICT活用の汎用性を考慮し、どの学校でも誰でも簡単にICTを活用できる教材

の工夫や条件等についても考えていきたい。

【注】

*1 ①~④の段階の( )内の表記は、当センター調査研究「学習したことが実生活に生きる指導に関する研究-算数

科や理科における問題解決的な学習を通して-」(平成 19・20 年度)における問題解決過程の捉え方

*2 手書き文字や静止画・動画等のデジタルデータを収集・整理等ができるコンピュータソフトウェア(今回の研究で使用

したソフトウェアは、マイクロソフト社の OneNote)

*3 児童生徒 139 名によるアンケートと全 8 回分の研究授業参観者 111 名によるアンケート

【参考文献】

・文部科学省、『ICTを活用した指導の効果の調査結果について-「確かな学力」の向上につながるICT活用-』、2007

・文部科学省、『教育の情報化ビジョン』、2011

・池田玲子・舘岡洋子『ピア・ラーニング入門』、ひつじ書房、2007

調 査 研 究 協 力 員 やまぐち総合教育支援センター教育支援部

柳井市立柳井小学校 教諭 岡原 恵子

田布施町立麻郷小学校 教諭 山根 基秀

宇部市立小野小学校 教諭 藤村 和美

山陽小野田市立厚狭小学校 教諭 長谷川裕司

光市立島田中学校 教諭 四元 努

周南市立熊毛中学校 教諭 藤本 英治

山口市立大殿中学校 教諭 村上 知治

美祢市立美東中学校 教諭 丸谷 友克

部 長 石田 真也

主 査 古谷 修一

主 査 深井 保司

研究指導主事 古屋 伸浩

研究指導主事 西村 淳

研究指導主事 平林 徹

研究指導主事 森田 成寿