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岩国医療センターだより 2014.4 5 臓器移植とは、薬剤や機械での治療方法に限界があり、健康な臓器と交換することが唯一の根治治療で ある患者さまの命を救う医療です。 現在は、生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合に加え、本人の臓器提供の意思が不明な 場合も、家族の承諾があれば臓器提供ができるようになりました。そして、15 歳未満の方からの脳死後の 臓器提供も可能になりました(表 1 参照)。 臓器提供シミュレーションを実施して 臓器提供シミュレーションを実施して 記 院内 CCU/ICU 副看護師長 院内移植コーディネーター 吉村 一徳 提供可能な臓器 生体から摘出 肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸 脳死下 心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球 心停止下 腎臓・膵臓・眼球 改正前 改正後 親族優先提供 当面見合わせる 臓器の提供先を認める 法的脳死判定と 臓器提供の要件 本人の書面意思および家族が 拒否しない、または家族がいない 本人の意思不明の場合(拒否の意思表示がない)、 家族の書面承諾で提供可能 小児の取り扱い 15 歳以上の意思表示が有効 年齢に関わりなし 被虐待児への対応 規定なし 虐待を受けて死亡した児童から臓器が提供され ることのないように適切に対応 当院では 1998 年 7 月に「岩国医療センター臓器提供マニュアル」を作成し、臓器提供を希望する方やその ご家族の意向に沿った、適切な対応ができるように努めています。 当院は、脳死下による臓器提供が行える施設です。そのため、症例が発生したときに、円滑に臓器提供が 行われる体制を整える必要があります。そこでこの度、山口県移植コーディネーターの方々にご協力を頂き、 「脳死下における臓器提供シミュレーション」を開催しました。 シミュレーションでは、シナリオに沿って院内関係者の役割や連絡体制・手続きな どを確認しながら、レシピエント(移植を受ける方)のもとへ搬送されるまでの“脳死 判定時間”、“摘出手術の時間経過”を確認しました。脳死下臓器提供は、透明性を確保 するために情報公開が義務付けられています。患者さまのプライバシー保護にも配慮 が必要であるため、ご家族の待機場所や患者さまの移動経路なども検討していきました。 今 回 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 通 し て 、 主 治 医 を は じ め 、 病 院 内 の 各 部 署・院 内 コ ー デ ィ ネーターが綿密に連携し、臓器提供が行われていくことがイメージできました。シミュ レーションを進めるなか、山口県移植コーディネーターの解説が加わり、参加者から の活発な意見交換がはかれ、様々な疑問が解決できました。 今後、当院で臓器提供を希望する方が発生した場合は、今回のシミュレーションを 参考に、院内コーディネーターとしての役割を果たしていきたいと思います。 【表 1】臓器移植法改定前後の比較 【提供可能な臓器】 【臓器提供意思表示カード】 臓器移植とは 臓器提供シュミレーション 腎 臓

臓器提供シミュレーションを実施して · 2019-04-25 · 臓器提供シミュレーションを実施して 記 院内ccu/icu 副看護師長 院内移植コーディネーター

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Page 1: 臓器提供シミュレーションを実施して · 2019-04-25 · 臓器提供シミュレーションを実施して 記 院内ccu/icu 副看護師長 院内移植コーディネーター

岩国医療センターだより 2014.4

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 臓器移植とは、薬剤や機械での治療方法に限界があり、健康な臓器と交換することが唯一の根治治療である患者さまの命を救う医療です。 現在は、生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合に加え、本人の臓器提供の意思が不明な場合も、家族の承諾があれば臓器提供ができるようになりました。そして、15 歳未満の方からの脳死後の臓器提供も可能になりました(表 1 参照)。

臓器提供シミュレーションを実施して臓器提供シミュレーションを実施して記 院内 CCU/ICU 副看護師長  院内移植コーディネーター 吉村 一徳

提供可能な臓器 生体から摘出 肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸 脳死下 心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球 心停止下 腎臓・膵臓・眼球

改正前 改正後 親族優先提供 当面見合わせる 臓器の提供先を認める

法的脳死判定と 臓器提供の要件

本人の書面意思および家族が 拒否しない、または家族がいない

本人の意思不明の場合(拒否の意思表示がない)、 家族の書面承諾で提供可能

小児の取り扱い 15 歳以上の意思表示が有効 年齢に関わりなし

被虐待児への対応 規定なし 虐待を受けて死亡した児童から臓器が提供され ることのないように適切に対応

 当院では 1998 年 7 月に「岩国医療センター臓器提供マニュアル」を作成し、臓器提供を希望する方やそのご家族の意向に沿った、適切な対応ができるように努めています。 当院は、脳死下による臓器提供が行える施設です。そのため、症例が発生したときに、円滑に臓器提供が行われる体制を整える必要があります。そこでこの度、山口県移植コーディネーターの方々にご協力を頂き、「脳死下における臓器提供シミュレーション」を開催しました。

 シミュレーションでは、シナリオに沿って院内関係者の役割や連絡体制・手続きなどを確認しながら、レシピエント(移植を受ける方)のもとへ搬送されるまでの“脳死判定時間”、“摘出手術の時間経過”を確認しました。脳死下臓器提供は、透明性を確保するために情報公開が義務付けられています。患者さまのプライバシー保護にも配慮が必要であるため、ご家族の待機場所や患者さまの移動経路なども検討していきました。

 今回のシミュレーションを通して、主治医をはじめ、病院内の各部署・院内コーディネーターが綿密に連携し、臓器提供が行われていくことがイメージできました。シミュレーションを進めるなか、山口県移植コーディネーターの解説が加わり、参加者からの活発な意見交換がはかれ、様々な疑問が解決できました。 今後、当院で臓器提供を希望する方が発生した場合は、今回のシミュレーションを参考に、院内コーディネーターとしての役割を果たしていきたいと思います。

【表 1】臓器移植法改定前後の比較

【提供可能な臓器】 【臓器提供意思表示カード】

 今回のシミュレーションを通して、主治医をはじめ、病院内の各部署・院内コーディネーターが綿密に連携し、臓器提供が行われていくことがイメージできました。シミュ

の活発な意見交換がはかれ、様々な疑問が解決できました。 今後、当院で臓器提供を希望する方が発生した場合は、今回のシミュレーションを 今後、当院で臓器提供を希望する方が発生した場合は、今回のシミュレーションを参考に、院内コーディネーターとしての役割を果たしていきたいと思います。

臓器移植とは

臓器提供シュミレーション

腎 臓