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1 マイクロ波処理および熱風乾燥による 新規ドライフルーツ 三重県工業研究所 食と医薬品研究課 主幹研究員 藤原 孝之

新規ドライフルーツ - JST1 マイクロ波処理および熱風乾燥による 新規ドライフルーツ 三重県工業研究所 食と医薬品研究課 主幹研究員

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Page 1: 新規ドライフルーツ - JST1 マイクロ波処理および熱風乾燥による 新規ドライフルーツ 三重県工業研究所 食と医薬品研究課 主幹研究員

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マイクロ波処理および熱風乾燥による

新規ドライフルーツ

三重県工業研究所

食と医薬品研究課

主幹研究員 藤原 孝之

Page 2: 新規ドライフルーツ - JST1 マイクロ波処理および熱風乾燥による 新規ドライフルーツ 三重県工業研究所 食と医薬品研究課 主幹研究員

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1 研究の背景(1)ドライフルーツの研究需要

• 健康志向や食の簡便化・多様化により、果実加工品の需要が増している。ドライフルーツは、主要な果実加工品のひとつである。

• しかし、国内で流通するドライフルーツは、大半が輸入品であり、糖や油脂等を多く使用した商品が多い。

• 国産果実を利用し、無添加で生産された国産ドライフルーツ製品もあるが、製法や製品品質の向上が望まれる。

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1 研究の背景(2)本研究の目的

ドライフルーツの一般的な製造手法である熱風乾燥法の欠点を克服し、下記の製品が得られる手法を開発した。

1. 糖類、油脂、ビタミンCなど副資材や添加物を用いない

2. 色彩や食感が良好

3. 製造に特殊な機器を要しない

4. 需要が増加しているセミドライフルーツの製造に向く

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2 従来技術とその問題点(1)ドライフルーツの主な製造法とその短所

熱風乾燥•変色する•特に表面が硬化

砂糖使用•甘すぎる•健康指向に合わない

真空凍結乾燥(フリーズドライ)•コストがかかる•セミドライタイプが作れない

フライ•かたい•健康指向に合わない

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2 従来技術とその問題点(2)一般的な手法=熱風乾燥によるドライフルーツ製造の問題点

1.乾燥が不均一

果実片

加熱

表層が乾燥・硬化

内部の水が表層に移動しにくい

・乾燥が遅い・製品水分が不均一・食感が悪い・表面にしわができる

2.色彩変化

・色調が暗いポリフェノールが酸化

酵素により褐変

(例:ニホンナシ)

2.色彩変化

ポリフェノールが酸化酵素により褐変

2.色彩変化

・色調が暗いポリフェノールが酸化

酵素により褐変

2.色彩変化

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3 新技術の特徴・従来技術との比較(1)製造方法(例:ニホンナシ)

・酸化酵素が失活・果肉組織が破壊

製品

熱風乾燥50~70℃,1~2日間

切断・剥皮・除芯

十分時間マイクロ波で加熱

従来法

特許法

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3 新技術の特徴・従来技術との比較(2)長所その1:乾燥効率 (例:ニホンナシ)

20 

40 

60 

80 

100 

0 24 48 72 96

水分

(%)

乾燥時間(h)

無処理

3分間マイクロ波処理

5分間

10分間

セミドライフルーツの水分帯(10-17%)

セミドライフルーツ作製の所要期間マイクロ波5~10分処理:2日間

前処理なし:3日間

マイクロ波処理:350g果実片熱風乾燥:50℃

マイクロ波3分処理:3日間

<一定時間以上のマイクロ波処理>・乾燥時間が約2/3から半分に短縮される・均一に乾燥するため、間断乾燥や

手で揉む処理が不要

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3 新技術の特徴・従来技術との比較(3)長所その2:製品品質 (例:ニホンナシ)

市販の梨ドライフルーツ(他県産)当所での試作品(熱風乾燥による)

従来法 特許法

【外観】暗い色調、しわが寄る【食感】表面が硬く、食感が悪い

【外観】鮮やかで透明感のある色調、表面が滑らか【食感】均一に軟らかい

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3 新技術の特徴・従来技術との比較(4)長所その3:嗜好性 (例:ニホンナシ)

0% 20% 40% 60% 80% 100%

総合

食感

甘さ

香り

外観

マイクロ波処理 無処理

***

ns

*

**

**

***

110名の消費者が2点嗜好法により好ましい方を選択

明らかに優る

同等

甘く感じる

良い特許法 従来法

特許法による製品は,外観・食感が良くなるとともに,甘く感じるため,総合評価が高い.

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4 想定される用途(1)加工対象果実

適用可能

• リンゴ• モモ• セイヨウナシ• ビワ• ブドウ(品種による)• カキ(甘柿に限る)

あまり適さない

(形が崩れる、食味が悪い)

• かんきつ• イチジク• キウイフルーツ• マンゴー• イチゴ• トマト

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4 想定される用途(2)製品種類

セミドライタイプのドライフルーツ

ドライフルーツを用いた洋菓子・和菓子

商品化第1号(2014年10月)<ドライ梨のチョコレートがけ> ㈱桔梗屋織居様(伊賀市)

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5 実用化に向けた課題(1)問題点

• 原料の果実類のコスト

• 果実の非可食部除去や乾燥減量の結果、製品歩留まりが極めて低い(セミドライフルーツで10%前後)

• 特に、果実調製に手間を要するため、人件費がかかる

• 大量生産が難しい

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5 実用化に向けた課題(2)対応策

• 青果として流通できない規格外果実を原料に用いる

• 果実調製に機械を導入する(剥皮機など)

• 大量生産に向く製造機器を導入・開発する

• 付加価値の高い商品開発・販売法

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5 実用化に向けた課題(3)三重県内の企業事情

• 農商工連携による果実加工を望む農業生産者・団体や、ドライフルーツを原料に使いたい製菓業者はある。

• 農産物加工を業務とする企業が比較的少ない。

• 果実の前処理-乾燥-包装といった一連の作業を全て行える企業が少ない。

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6 企業への期待(1)一次加工業者の探索

本特許製法は、一般的な機器で実施可能であるため、小規模事業者でも導入しやすい

各段階の事業者がドライフルーツを生産可能

一次加工業者

(果実の調製・前処理・乾燥・小袋詰めが可能)

果樹の生産者生産者団体

(規格外果実の利用を期待)

製菓業者等

(ドライフルーツを原料として食品加

工)

一次加工業者

(果実の調製・前処理・乾燥・小袋詰めが可能)

果樹の生産者生産者団体

(規格外果実の利用を期待)

製菓業者等

(ドライフルーツを原料として食品加工)

果樹の生産者生産者団体

(規格外果実の利用を期待)

しかしながら、特に一次加工業者による取り組みが望まれる(受託加工を含め)

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6 企業への期待(2)共同研究

• 製造方法の効率化・機械化に関する技術開発

• 製造法未確立の果実種類(リンゴ等)に関する商品開発

• 以上のような課題解決のために、企業・公設試等との共同研究が望まれる。

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7 本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :ドライフルーツ、及びその

製造方法

• 特許番号 :特許第5358772号

• 特許権者 :三重県

• 発明者 :藤原孝之、久保智子

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8 産学連携の経歴(1)開発経緯(特許取得まで)

• 2012年度~ 県事業により、伊賀地域で商品開発の研究会(特産農産物の利活用)を実施(メンバー:JA、大山田農林業公社、上野商工会議所、三重県伊賀農林事務所、三重県農業研究所など)

• 2012年7月 研究会において、特産梨のドライフルーツ加工が話題になる

• 2012年8月 工業研究所において製造法開発実験、基本製法確立

• 2013年1月17日 特許出願• 2月14日 早期審査請求• 9月13日 特許登録

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8 産学連携の経歴(2)開発経緯(外部資金を利用した商品化支援)

公益財団法人中央果実協会 果実加工需要対応産地育成事業(新需要開発型)に採択

• 2013年度 「ニホンナシの新しいドライフルーツ作製と省力栽培技術の確立」

• 2014年度 「特許製法を応用したブドウのドライフルーツ作製と省力栽培技術の確立」

内容1. 実規模による製造法の確立

2. ドライフルーツおよび菓子類の試作(普及が見込まれる事業者に依頼)

3. 製品の保存性の検討

4. 製品の成分分析

5. 試作品をイベントに出展、アンケート調査

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8 産学連携の経歴(3)JST事業を利用した研究・普及活動

JST 地域産学官共同研究拠点整備事業

「みえ“食発・地域イノベーション”創造拠点」

• 送風定温乾燥機など、2010年度に導入された機器を有効に用いて、試作や品質評価を行った。

• 拠点主催イベントや会員ネットワークにより、研究成果を普及してきた。

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9 本日のブース発表

産学官連携ゾーン H-19 みえ産学官研究交流フォーラム内「みえ“食発・地域イノベーション”創造拠点」ブースにて、

試作品の展示・相談対応をいたします。

本会場

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10 お問い合わせ先

三重県工業研究所

食と医薬品研究課 藤原 孝之

TEL 059-234 -8462

FAX 059-234 -3982

e-mail [email protected]