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26 シャープ技報 第79号・2001年4月 枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術 Recycling Technologies Used at Hirakata Plant Kazuaki Minato Naoyuki Harada リサイクル マテリアル株 リサイ クルシステムズ株 し,大 にリ サイクルプラントを した。こ プラント サイクル に対 した する。 体を した フロー リサイクル をする。 また, マテリアル株 する多 リサイクル して, する。 Sharp jointly established Kansai Recycling Systems Corporation KRSC with Mitsubishi Material Corporation and built a recycling plant in Hirakata Osaka The plant aims to recycle household appliances in compliance with the Designated Household Appliance Recycling Law This report explains the recycling technologies used at the plant and the actual recycling process where manual dismantling plays an important role It also outlines copper refinement technology as an example of numerous material recycling technologies owned by Mitsubishi Material まえがき から リサイクル 1) け, リサイクル システムズ株 して大 にプラン トを し, めてきた。 ある マテリアル株 他に ,ソニー株 ,株 ,株 ゼネラル, けて,大 けられた各 ちこまれた を委 するこ っている。 ,対 テレ ,エアコン あり,それぞれに対し められている。ここ いう にリサイクルされているか うか く, また (ただ) しうる 態にするこ っている。 したがって, (お って) られたプラスチックが されて して された して され い。 プラント %以 に対して みをたてている。 プラスチック マテリアルリサイクル 2) されているポリプロピレン(PP) リサイクル にした によるが, された メーカ から する しく, 体テスト がかかりすぎたり, しきれ いケースがまだ多 い。 により する に, フィードバックにより,リサイクルし すい していきたい。 1. 枚方リサイクルプラントの概要 リサイクル あるが, プ ラント )を した ある。 した をさらに して リサイクルする ある マテリア ル株 じめ する インフ ラを活 しよう している。 リサイクルプラント 表1に, 図1す。 表1 関西リサイクルシステムズ概要 Table 1 Summary of Kansai Recycling Systems Co. 281( 域) m m(延 m) エアコン,テレ ,蔵 42

枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術 · ル株式会社をはじめとする専門事業者の技術とインフ ラを活用しようとしている。

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シャープ技 報 第79号・2001年4月

枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術

Recycling Technologies Used at Hirakata Plant

湊  和 明* 原 田 直 幸*Kazuaki Minato Naoyuki Harada

* 環境安全本部 リサイクル事業企画部

要  旨

当社は三菱マテリアル株式会社と共同で関西リサイクルシステムズ株式会社を設立し,大阪府枚方市にリサイクルプラントを建設した。このプラントで家電リサイクル法に対応した再商品化等を実施する。本報では,手解体を主体とした再商品化処理フロー

やリサイクル技術の説明をする。また,三菱マテリアル株式会社が所有する多数の素

材リサイクル技術の一例として,銅精錬技術の概要を紹介する。

Sharp jointly established Kansai Recycling SystemsCorporation (KRSC) with Mitsubishi Material Corporationand built a recycling plant in Hirakata, Osaka. The plantaims to recycle household appliances in compliance withthe Designated Household Appliance Recycling Law.This report explains the recycling technologies used at

the plant, and the actual recycling process where manualdismantling plays an important role. It also outlines copperrefinement technology as an example of numerous materialrecycling technologies owned by Mitsubishi Material.

まえがき

本年4月からの特定家庭用機器再商品化法(通称:家電リサイクル法)施行1)に向け,関西リサイクルシステムズ株式会社を設立して大阪府枚方市にプラントを建設し,準備を進めてきた。

この会社には共同事業者である三菱マテリアル株式会社の他に三洋電機株式会社,ソニー株式会社,株式会社日立製作所,株式会社富士通ゼネラル,三菱電機株式会社の同業各社の出資を受けて,大阪府,京都府,奈良県,和歌山県に設けられた各社共同の指定引取場所に持ちこまれた廃家電の再商品化を委託することになっている。

現在,対象となる廃家電品はテレビ,冷蔵庫,洗濯機,エアコンの4品目であり,それぞれに対し達成すべき再商品化率が定められている。ここでいう再商品化とは単にリサイクルされているかどうかではなく,有償または無償(ただ)で譲渡しうる状態にすることが条件となっている。したがって,例えば逆有償(お金を支払って)で引

き取られたプラスチックが再生されて材料として使用されたとしても再商品化とはみなされない。当プラントでは洗濯機の再商品化基準(50%以上)

に対して70%の見込みをたてている。「廃プラスチックのマテリアルリサイクル技術」2)

に紹介されているポリプロピレン(PP)のリサイクルを可能にした技術と仕組みの開発によるが,長期間使用された種々のメーカの廃洗濯機から必要な素材を分解,回収する事は難しく,現状の解体テストでは時間がかかりすぎたり,回収しきれないケースがまだ多い。今後の実証的な研究により改善すると共に,設計面へのフィードバックにより,リサイクルしやすい商品開発に寄与していきたい。

1 . 枚方リサイクルプラントの概要

リサイクル技術は幅広い技術の集積であるが,当プラントは組立ての逆(分解と分別)を主体とした工場である。回収した部品や素材をさらに加工,処理してリサイクルする工程は共同事業者である三菱マテリアル株式会社をはじめとする専門事業者の技術とインフラを活用しようとしている。

枚方家電リサイクルプラントの概要を表1に,外観写真を図1に示す。

表1 関西リサイクルシステムズ概要

Table 1 Summary of Kansai Recycling Systems Co.

場  所�

面  積��

対象機器�処理台数�時  期�

大阪府枚方市春日北町2丁目28番1号(工業専用地域)�敷地面積 約8,700m2�建設面積 約2,900m2(延べ面積 約5,200m2)�エアコン,テレビ,冷蔵庫,洗濯機の4品目�上記使用済み家電製品を年間60万台�2001年4月2日操業開始�

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枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術

図1 枚方リサイクルプラントの外観

Fig. 1 Outside of Recycleing Plant in Hirakata.

リサイクルの流れ(フロー)を図2に示す。当プラントの特長は手解体を重視した,廃家電のリサイクル方法を採用したことである。廃家電品を丸ごと炉の中に入れてプラスチックを溶

かし,金属を回収する方法や,粗破砕機で大まかに解体して,同時にフロンを回収したり,コンプレッサや熱交換器などの有価物を回収する方法等の人手を省く方法もあるが,今まで生産してきた商品を単に効率良くリサイクルするだけでは,大量生産,大量消費,大量リサイクルから抜け出すことは出来ない。当プラントの場合は以下の考え方から,ある程度事

前解体をした後に破砕・選別を行う方法とした。

① いきなり破砕してから分別する方法では解体性の向上を目指す設計の改善は必要無くなり,リユースやリデュースにつながって行かない。② リサイクル技術およびインフラはどんどん進んでおり,今後のために新技術導入の余地を残しておく必要がある。③ 手解体は当初時間がかかるが,作業の習熟やノウハウの蓄積,治工具や装置の工夫でどんどん改善されていく可能性がある。

2 . リサイクル技術の概要

2・1 当プラントにおけるライン構成意図

現在のリサイクル業界では,自動化及び破砕選別技術の向上を主眼とした開発が盛んに行われている。特に破砕選別後の回収物をさらに選別し,個別の素材として回収・再利用(マテリアルリサイクル)しようとする技術が多方面で検討されている。しかし,実際にリサイクルプラントに搬入される廃家電品は,メーカ・機種だけでなく構造や材質が多岐に渡っており,上記のように破砕選別後の回収物から改めて個々の素材を回収しようとすると,回収物の品位の低下やコスト高を招く傾向がある。例えば,ハーネスや基板は破砕機に投入すると大部

分が混合プラスチックとして選別され,鉛等の有害物や銅,ガラスエポキシ樹脂等により混合プラスチックの品位が低下する。また,当プラントにおいて回収す

図2 リサイクルフロー

Fig. 2 Overall recycling process.

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シャープ技 報 第79号・2001年4月

る洗濯機の水槽についても同様で,手解体することによって回収可能であるにも係らず,混合プラスチックとして選別されてから素材回収するのでは効率が悪い。仮に回収したとしても,事前に回収されたものと比較して品位の低下が懸念される。そこで当プラントでは上記課題の克服を目的とし

て,手解体を主眼としたラインを構成し,破砕選別処理の前に有価物回収及び有害物除去を積極的に行う。

2・2手解体による素材回収(1)テレビ図3に処理フローを示す。全ての回収物を個別に処

理できるライン構成となっている。また,キャビネットには難燃剤が含まれているため,他品目と混合破砕する大型破砕機への投入はせず,テレビキャビ専用破砕機にて減容化処理する。大型破砕機で選別される混合プラスチックの難燃剤含有率を抑えると,混合プラスチックの用途に自由度を持たせることができる。

(2)冷蔵庫図4に処理フローを示す。事前処理として塩ビ製の

ドアパッキン・ガラス棚等を回収した後,冷媒フロン及び冷凍機油を回収する。コンプレッサは一般工具では取り外しが困難なため,油圧工具を用いて固定ボルトを破断して本体から分離する。基板等を回収後,冷蔵庫専用破砕機へ投入される。

(3)洗濯機図5に処理フローを示す。解体工程では破砕選別工

程で悪影響を及ぼす塩水・コンデンサの他,モータ・基板・ハーネスを回収する。また,当初の廃洗濯機に含まれる量は少ないがステンレス製脱水槽も回収する。解体工程にて回収物を取り外した後,洗濯機は大型破砕機へ投入され,金属類等が破砕選別される。

図3 テレビの処理フロー

Fig. 3 Television recycling process flow.

図4 冷蔵庫の処理フロー

Fig. 4 Refrigerator recycling process flow.

図5 洗濯機の処理フロー

Fig. 5 Washing-machine recycling process flow.

当プラント独自の取り組みとして,クローズド型マテリアルリサイクルを目的とした水槽の回収を行う。水槽にはメーカを問わずポリプロピレン(PP)を使用しており,樹脂グレードもほぼ同等であることが知られている。また,水槽はキャビネットによって紫外線から守られているため劣化も少なく,外観部品ではないため再生品を利用しても色調等が問題になることはない。つまり,洗濯機の水槽はクローズド型マテリアルリサイクルに適した部品といえる。我々は生産技術開発推進本部及び電化システム事業

本部と連携を取り,これまで再生PP樹脂の需要供給バランス・物性の安定化・事業性の確保等の検証を進めてきた。この程,業界初のクローズド型リサイクルシステムに目処が立ち,2001年8月実用化に向けて現在調整を行っている。なお,我々の検証では日立及び三菱製洗濯機は脱水槽底板と回転軸の分離が極めて困難なため,2000年4月の稼動時点ではシャープ及び三洋製洗濯機に絞って水槽を回収する予定にしている。早期に日立及び三菱製洗濯機の解体方法を確立し,全メーカの水槽回収を目指している。水槽回収は,他プラントと同レベルの作業をする場

合と比較して約2倍の解体作業時間(15分程度)を要する。今後,工程レイアウト及び治工具の改良により解体作業時間の短縮を達成に取り組む。この他,脱水槽,パルセータ及びシャープ製洗濯機

に見られるプラスチックキャビネットも当プラントでは回収対象としており,プラスチック専用破砕機にて減容化する。これらのPP樹脂もカスケード型ながらマテリアルリサイクルを行う。

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枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術

(4)エアコン図6に処理フローを示す。事前処理として排水ホー

ス・配管等を回収した後,室外機は冷媒フロン及び冷凍機油を回収する。室内機はそのまま解体工程に送られる。解体工程で熱交換器・コンプレッサ・モータ・基板等を回収後,エアコンのキャビネットは大型破砕機に投入される。

が低下するため,別処理する必要がある。当プラントでは解体工程内でキャビネットを別途回収し,テレビキャビ専用破砕機に投入して減容化した後,別途処理する。また,洗濯機の解体工程にて回収された水槽(PP

製)は,プラスチック専用破砕機に投入して減容化した後,リペレットメーカを経由して再びシャープ製洗濯機の水槽として使用される。

2・5 選別工程(1)磁力選別機磁力選別機は,ベルトコンベアで搬送中の破砕物に

混在している鉄類を,上部に設置した本装置で磁気吸引して分離する構造になっている。なお単純に磁力に吸引された物を選別するため,フェライト系ステンレスも同じように回収される。ステンレスが限度以上混入したまま電炉に投入すると再生鉄の品位が低下し,引取不可になるため,ステンレスは解体工程にて可能な限り回収する。(2)風力選別機冷蔵庫専用破砕機から出る破砕物に,ある一定の風

力を与えることによって,嵩密度の小さいウレタン断熱材を風力で吹上げることにより,他のものと選別する。(3)ウレタン成形機風力選別機によって選別されたウレタン断熱材は,

圧縮成形機によってRDF(固形燃料)状に成形する。なお,この成形機にも吸引ダクトが設置されているため,圧縮の際に放出されるフロンもフロン回収装置に送り込まれる構造となっている。(4)渦電流選別機図7に原理図を示す。前工程で鉄を取り除いた破砕

物は渦電流選別機に投入される。ドラムに内蔵した永久磁石を高速回転させることにより,非鉄金属に渦電流が発生し,この働きで非鉄金属は上前方に撥ね飛ばされる。この原理によって高い選別精度が得られる。

図6 エアコンの処理フロー

Fig. 6 Air-conditioner recycling process flow.

2・3 冷媒フロン回収冷蔵庫及びエアコンの冷媒フロン(R12,R22等)は,

ライン上に設置されたフロン回収装置によって回収する。当プラントでは冷凍機油を効率良く回収するため,配管に小穴を開けて,ワークを傾けて回収する装置を使用する。回収したフロンは専用ボンベに,冷凍機油はドラム缶に貯蔵して専門業者に引き渡す。

2・4 破砕選別装置による素材回収(1)冷蔵庫破砕及び断熱材フロン回収工程冷蔵庫のウレタン断熱材には発泡ガスとしてフロン

(R11等)が含まれている。これを回収するために冷蔵庫は冷蔵庫専用破砕機に投入される。この破砕機には吸引ダクトが設置されており,破砕機内のフロンを含む空気はフロン回収装置に送り込まれる構造となっている。フロン回収装置では,フロンを活性炭に吸着させて空気と分離した後,活性炭をスチーム加熱して,フロンを脱着させる。この脱着ガスを冷却して水とフロンを分離する。分離したフロンをさらに冷却して液化させ,ドラム缶に密封して専門業者に引き渡す。(2)洗濯機・エアコン破砕工程解体工程を終えた洗濯機・エアコンは同じ竪型破砕

機に投入され,50mm以下に粉砕される。(3)テレビキャビネット及び回収プラスチックの破砕当プラントにはテレビキャビ専用破砕機を設置して

いる。テレビキャビネットは難燃剤を含んでいるため,他製品と一緒にすると,混合プラスチックの品位

図7 渦電流選別機の原理

Fig. 7 Principle of eddy-current separator.

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シャープ技 報 第79号・2001年4月

3 . 回収素材のリサイクル

3・1 三菱マテリアルとの連携

関西リサイクルシステムズ株式会社の共同出資会社である三菱マテリアルは,ベーシック・マテリアル(非鉄ベースメタル,貴金属,セメント),ファブリケーテッド・マテリアル(金属加工品,飲料用アルミ缶),アドバンスト・マテリアル(半導体関連製品,ファインセラミックス,ファインケミカル)を生産する日本を代表する素材メーカである。とりわけ,非鉄精錬は鉱山会社としてスタートした三菱マテリアルの基幹事業の一つとなっている。ここでは,銅管や基板等のリサイクル処理を委託す

る三菱マテリアル直島製錬所の銅精練の概要を紹介する。同製錬所は1917年に創業を開始し,銅18,500トン/月,金5トン/月,銀40トン/月を生産している。銅精練は,まず銅精鉱(鉱石)を調合・乾燥した後,粉炭,硅砂及び石灰を加え,空気酸化により銅精練が行われる。精錬工程を図8に示す。混合された原料はランスと呼ばれる吹出し口から空

気とともに,S炉に投入され,熔融・酸化される。CL炉では銅分を多く含むカワ(Matt:Cu含有量66%)と鉄分を多く含むカラミ(Slag)に分離され,C炉でさらに酸化・還元を行い,分離されたカワが精製される。得られた粗銅(純度98%)は精製炉で99%の純度となり,鋳造機でアノード板が形成される。アノード板は電解工場で精製されて99.99%の電気銅となる。

図8 銅精錬炉の構成(直島精錬所)

Fig. 8 Copper refining flow.

原料として使用されている硫化銅精鉱は銅分35%であり,鉱石はすべて輸入されている。この鉱石より輸送費も含めて安価な原料としてリサイクル材の見直し,積極的な活用が考えられている。これは,海外事業所とのコスト競争が背景にある。直島製錬所では,リサイクル原料を以下の4通りに

分類して精錬工程で処理している。① 鉱石と混合3mm以下の研磨粉,メッキスラッジ,焼成灰等は原料の精鉱に混合してS炉に投入される。② プレス処理フレーム材,電線,管材,ラジエータ等の金属スク

ラップはプレス処理後,品位によってS炉(低品位の場合)あるいはC炉(高品位の場合)に投入される。③ サイドチャージ3~50mmのプリント基板,部品くず等はS炉の側部から投入される。④ オーバーサイズその他の多様なスクラップはドラム管に入れて,そのままプレスしてS炉に投入される。枚方プラントで回収される銅管類,基板類は②と③

で処理される。基板は30mm以下に粉砕してS炉に投入処理され,上記の工程を経て貴金属が抽出される。銅スクラップは1,000トン/月,銅滓は1,000トン

/月,金銀滓は1,200トン/月,同製錬所で処理されている。精錬処理は連続的に高温処理されるため,ダイオキ

シン発生の危惧もなく基板のような金属・樹脂混合物の最も優れた処理方法である。また,プリント基板は金銀滓として注目されており,対象となる金,銀,パラジウム等の含有量が炉前価格(製錬所への持込価格)の指標になる。

3・2 金属類(鉄,銅,アルミ)鉄,銅,アルミニウム等の金属素材はスクラップ市

場が形成されており,分別することにより有価物として取引きされる。スクラップ市場の規模は鉄45,000千トン,銅700千トン,アルミ1,500千トン程度であり,家電リサイクルプラントから回収される量(廃家電の回収率100%として鉄360千トン,非鉄類60千トン程度)は吸収可能と考えられる。(1)鉄類鉄スクラップの需要は電炉メーカがその70%を占

め,引取基準,価格はこの業界動向により決定される。電炉精錬は酸化精錬であり,この工程で除去できな

い合金くずや非鉄金属が規定値以上混入した鉄スクラップは引取を拒否される可能性がある。とくに銅,クロム,ニッケル,鉛は製鋼上の禁忌元素とされ,リサイクルプラントでの分離が必要となる。鉄スクラップへのステンレス(鉄,クロム,ニッケルの合金)の混入は品位を低下させる要因となる。なお,亜鉛(メッキ鋼板)は融点が低く製鋼時に蒸発して除去されるため,その混入は障害にならない。(2)銅類銅スクラップ全般の需要は伸銅メーカが過半数を占

めるが,家電から回収されるものは品位が低く採用されない。精錬,銅合金用途が対象となり,三菱マテリアル直島製錬所での処理を考えている。

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枚方家電リサイクルプラントのリサイクル技術

(3)アルミ類家電から発生するスクラップの需要は,二次地金製

造,鋳物,ダイカスト用途に限定される。エアコンの熱交換器は,この二次地金製造用途に使用される。二次地金製造では,銅を必要量添加する必要があり熱交換器の銅管は障害にならない。

3.3 ブラウン管当プラントではテレビを手分解しブラウン管を取り

外す。カレット化工程は外部の専門業者にに委託する。ブラウン管ガラスは,パネル部とファンネル部に分別してカレット化される。分別カレットは,日本電気硝子あるいは旭硝子のような管ガラスメーカに引取られて,原料と調合してブラウン管として再生される。

3・4 プラスチック3・4・1 プラスチックリサイクルの分類と名称我が国で一般的に使用されているプラスチックリサ

イクルの分類にはマテリアルリサイクルとサーマルリサイクルがある。マテリアルリサイクルは廃プラスチックを樹脂として再生して利用することであり,サーマルリサイクルは熱源として有効利用することである。しかし,マテリアルリサイクルは最近では単に樹脂としてだけでなく,物(素材)として再利用するという広義で使用される場合がある。欧米では,以下のように厳密な分類がなされている。(1)メカニカルリサイクル欧米でよく利用される用語で,機械的手段を用いて

プラスチックをリサイクルすることで,我が国で一般に使用されるマテリアルリサイクルと同義である。廃プラスチックを分別・洗浄し,機械的に粉砕した樹脂を溶融再生して利用することである。当プラントではメカニカルリサイクルの比率を高め

ていくことを目標としている。(2)フィードストックリサイクル廃プラスチックを化学的手段により分解して得られ

た生成物を,化学原料として利用することである。我が国で一般に使用されるケミカルリサイクルは,化学的手段を使用してリサイクルすることで,その生成物が化学原料として使用される場合と燃料として使用される場合がある。この前者がフィードストックリサイクルであり,後者の場合,いわゆるサーマルリサイクルになる。

3・4・2 マテリアル(メカニカル)リサイクルプラスチックは樹種毎に分別すればマテリアルリサ

イクルが可能となり,有価物となりうる。たとえば,洗濯機の水槽,脱水槽等は各社ともポリプロピレン

(PP)が採用されておりこの水槽,脱水槽のみを分離回収すれば有価となりうる。このように,家電製品の中で部品毎の樹種が各社で統一されていれば再商品化率向上に大いに役立つ。混合プラスチックの選別装置も数多く開発されているが,選別精度や装置価格が高いといった問題が解決されていない。事前解体で選別回収する方が破砕後に選別するより優位であると考えている。

3・5 フロン冷蔵庫,エアコンに使用されているフロンは,オゾ

ン層保護及び地球温暖化防止の観点から,家電リサイクル法施行令で回収と適正な処理が義務づけられている。フロンの破壊処理は高温水蒸気分解法,プラズマ分解法,燃焼分解法等が開発されており,これらの方法により分解,無害化処理が行われている。

3・6 基板類基板類のなかで,テレビの基板(変圧器等が取り付

けられた電源回路を有するもの及びこれと一体として設置されている部品)は,分離して部品に含まれる金属を回収し,再生又は処分するように定められている。当プラントでは,テレビのみならず冷蔵庫,洗濯

機,エアコンの基板についても解体分離して,三菱マテリアルの精錬工程での処理を検討している。(1) 再商品化率当プラントの再商品化率見込は,図9~12の通り

である。開業当初から,洗濯機のPPリサイクルを推進するため,洗濯機は相対的に高い再商品化率が得られると自負している。他の品目にもプラスチックリサイクルを拡大し,再商品化率の向上を図っていく。家電リサイクル法の規定では有価で引渡した回収物

が再商品化対象となるが,関西リサイクルでは逆有価であっても再資源化に努め,焼却や埋立てを極力排除して,環境保全に貢献する所存である。

4 . 今後の課題

今後,枚方プラントおよびリサイクルや適正処理を委託する専門の事業者との連係によるリサイクル技術開発を進め,次のような課題に取組む。

(1)再商品化率向上2008年には再商品化率が80%以上に引き上げられ

る可能性があることから,より早い時点でそのレベルに達するよう取組んで行く。特に,当プラントでは「廃プラスチックのマテリア

ルリサイクル技術」について注力しており,プラントとしては手解体と選別の改善を進めることで,洗濯機

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シャープ技 報 第79号・2001年4月

の水槽(PP)以外の部品や他品種に対象を広げていく。また,単に「率」を追求するだけでなく,サーマルリサイクルをマテリアルリサイクルに切替えて行く等,よりレベルの高いリサイクルを追及して行く。まだまだプラスチックリサイクルのインフラが整っているとはいえない状況の中で,技術開発と共に用途開発も含めたシステム作りが重要になる。(2)処理コスト低減当プラントにおいて,家電4品目の再商品化等を実

施するのに必要な費用構成を見ると,人件費,設備等の償却費,と共にダスト類の処理委託費,有価物の売却益の比率が大きい。人件費の低減には,より効率的な解体方法の開発や作業現場での改善活動等,工程改善(工数低減)のための開発が重要になる。処理委託費は,ダスト量の低減,処理困難物の分離により改善され,売却益は有価物の増加及び品位の向上で増加する。これらの諸要素と追加投資とのバランスを取りながらリサイクル技術開発を進めていくことが重要である。

むすび

枚方プラントには当社だけでなく,同業各社の各年代の商品が戻ってくる。これを毎日大量にリサイクルする中で多くの情報・ノウハウを得ることが可能である。このため,環境安全本部の技術者が駐在し,設計へのフィードバックを行う体制を取る。

参考文献1) 通商産業省機械情報産業局電気機器課,“家電リサイクル法

(特定家庭用機器再商品化法)の解説”,財団法人通商産業調

査会出版部(2000).

2) 隅田他,“廃プラスチックのマテリアルリサイクル技術”,シャープ

技報,No79,(2001. 4).

(2001年1月24日受理)

図9 テレビの再商品化率見込み

Fig. 9 Recycling rate of television.

図10 冷蔵庫の再商品化率見込み

Fig. 10 Recycling rate of refrigerator.

図11 洗濯機の再商品化率見込み

Fig. 11 Recycling rate of washing-machine.

図12 エアコンの再商品化率見込み

Fig. 12 Recycling rate of air conditioner.