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高成形性チタンクラッドマグネシウム合金
薄板のレーザ突合せ溶接
大阪府立大学 大学院 工学研究科
物質・化学系専攻 マテリアル工学分野 准教授 井上 博史
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マグネシウムの利点と欠点
利点 ■ 実用金属中 最軽量
■ 高比強度
■ 振動吸収性
■ 切削性
■ 電磁遮蔽性
■ リサイクル性
■ 耐くぼみ性
欠点 ■ 可燃性
■ 低耐食性
中性・酸性域
■ 難加工性(常温) 結晶構造に起因
圧延方向
底面集合組織
3
クラッド材の開発経緯
耐食性の改善
⇒ Mgの表面に耐食性の優れたTiを接合し、実質的にTiと同等の耐食性を得る。
また、表面のTiは意匠性に優れている。
力学的性質の向上
⇒ Tiの強度・成形性とMgの軽量性を活かした新規軽金属材料を開発する。
チタンクラッドマグネシウム合金(TCM)板の創製
4
圧延接合プロセス
加熱 温間圧延接合
拡散焼鈍 内面研削
Mg合金
Ti クラッド板
wt.% Al Zn Mn Fe Mg
AZ61A 6.4 0.74 0.41 0.0011 Bal.
AZ31B 2.9 0.95 0.35 0.0024 Bal.
板厚0.5mmの
薄板化に成功
Mg層とTi層の厚さ比 3:1 密度 ~2.45 g/cm3
Ti:工業用1種純チタン
3層TCM板も
作製可能
5
AZ61Mg/Ti 曲げ半径 0.2 mm AZ61Mg/Ti 曲げ半径 0.1 mm
AZ61Mg 曲げ半径 2.0 mm AZ61Mg 曲げ半径 3.0 mm
TCM板の90ºV曲げ試験
曲げ半径 AZ61Mg/Ti AZ61Mg
3.0 mm - ○
2.0 mm - △
1.5 mm - ×
1.0 mm - ×
0.5 mm ○ -
0.2 mm ○ -
0.1mm ○ -
×:割れ発生または破壊
試験温度:室温 成形速度:0.167 mm/s
微小割れ
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TCM板とMg単板の特性比較 材料特性 AZ61Mg/Ti AZ31Mg/Ti AZ61Mg AZ31Mg
ヤング率 (GPa) 63 63 44 44
比ヤング率 (GPa/(g/㎝3)) 26 26 25 25
降伏強度・室温 (MPa)
降伏強度・200℃ (MPa)
降伏強度・300℃ (MPa)
246
187
99
243
154
94
185
146
50
166
75
36
比降伏強度・室温 (MPa/(g/㎝3)) 102 101 104 94
引張強さ・室温 (MPa)
引張強さ・200℃ (MPa)
引張強さ・300℃ (MPa)
331
218
108
307
180
98
295
181
61
256
114
44
絞り成形(絞り比1.67)
限界成形速度・150℃ (mm/s)
限界成形速度・175℃ (mm/s)
限界成形速度・200℃ (mm/s)
0.83
1.67
≥ 16.7
0.83
≥ 16.7
≥ 16.7
不可
0.167
5.0
0.167
0.83
5.0
90º曲げ成形(室温)
Rmin / t (速度 0.167 mm/s)
Rmin / t (速度 8 mm/s)
≤ 0.2
≤ 1.0
-
-
~ 4.0
~ 6.0
-
-
張出し成形(室温)
エリクセン値 (mm)
6.2
-
3.1
-
7
AZ61Mg/Tiクラッド薄板の大型化
TCM薄板の曲げ加工品
Ti側 Mg側
室温曲げ加工を行い、寸法精度の良好な成形品が得られた。
厚さ 0.5 mm×幅 230 mm×長さ 200 mのAZ61Mg/Tiクラッド薄板コイル材(MgとTiの厚さ比3:1, 密度2.46g/cm3)を試作した。
TCM薄板長尺コイル材
MgとTiの融点が大きく異なり、Mgのみ溶解することでTiと分離できるので、構成金属の再利用が可能である。
8
レーザ溶接により、融点が大きく異なる2種類の金属からなるTCM板同士の溶接の可能性を検討
TCMパイプの作製を想定
突合せ溶接
Ti側からレーザ照射 → 熱伝導でMg合金層を溶融
Mg合金層の温度上昇を抑える → 銅製裏当て金
純Ti: 融点 1668℃
純Mg: 融点 650℃
沸点 1120℃
本研究開発の目的
9
Ti-Mg二元系状態図
金属間化合物相が存在しない
Ti相とMg相の固溶限が小さい
Ti + Mg
10
空冷(自然冷却) 水冷
溶接条件:スポットサイズ,レーザ出力,試料移動速度
裏当て金の冷却法
11
50 mm
40 mm 40 mm
50 mm
圧延方向
圧延方向
接合面
標点間距離
10 mm
突合せ溶接用試料
2層AZ61Mg / 1種Ti クラッド板(板厚0.5 mm)
12
Ti側 Mg側
水冷, 1.5 mm, 400 W, 5 mm s-1
試料外観
13
AC:空冷 WC:水冷
スポットサイズ ϕ1.5 mm
継手効率(%)=(継手強度) / (母材強度)
0.2 %耐力 83%、UTS 69%
冷却方法, レーザ出力(W), 試料移動速度(mm s-1)
0.2 %耐力 75%、UTS 64%
0.2 %耐力 79%、UTS 66%
引張試験結果 - 強度 -
0 50 100 150 200 250 300 350
Stress / MPa
0.2% proof stressTensile strength
AC, 250, 5AC, 300, 5AC, 350, 10AC, 400, 5AC, 400, 10AC, 400, 15
WC, 350, 10WC, 350, 5
WC, 400, 5WC, 400, 10WC, 400, 15
WC, 450, 15WC, 450, 10
Unwelded
14
AC:空冷 WC:水冷
スポットサイズ ϕ1.5 mm 冷却方法,レーザ出力(W),試料移動速度(mm s-1)
母材の伸び 13.5%
空冷の方が総じて伸びは大きい
引張試験結果 - 伸び -
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8
Elongation (%)
AC, 250, 5AC, 300, 5AC, 350, 10AC, 400, 5AC, 400, 10AC, 400, 15
WC, 350, 10WC, 350, 5
WC, 400, 5WC, 400, 10WC, 400, 15
WC, 450, 15WC, 450, 10
15
レーザスポット範囲
空冷, 400 W, 5 mm s-1 空冷, 400 W, 10 mm s-1
水冷, 400 W, 5 mm s-1
クラッド状態保持
200 μm
200 μm
200 μm
200 μm
水冷, 400 W, 10 mm s-1 水冷, 450 W, 10 mm s-1
200 μm
溶接断面の光学顕微鏡写真
16
水冷溶接材の母材部と溶接部の微視組織
20 μm
=100 μm; BC; Step=1 オm; Grid450x160
100 μm
母材部 溶接部
Ti
Mg
粗大粒(凝固組織) 微細粒
溶接条件:水冷, 400 W, 5 mm s-1
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ま と め
1. クラッド状態を保ったまま突合せ溶接に成功した。
2. 裏当て金を水冷した方が継手強度が高く、接合状態も良好である。
3. 適切な溶接条件下では、0.2%耐力で継手効率80%以上、引張強さで継手効率65%以上が得られた。
18
従来技術・競合技術との比較
• 融点が大きく異なる金属クラッド薄板で突合せ溶接を試みた例は見当たらない。
• 融点が近いマグネシウムとアルミニウムのクラッド板も軽量性の点で有望であるが、溶接により合金化が起こるために溶接部でクラッド状態は保持されない。→ クラッド状態を保持する点で、TCMの突合せ溶接はクラッドの特性を活かすことが可能。
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想定される用途
• 本技術の特徴を活かすためには、軽量構造部材の製造に適用することで軽量化のメリットが大きいと考えられる。
• 上記以外に、チタンによる意匠性の効果も期待できる。
• 具体的な用途として、車椅子のフレームやパネル、軽量二輪車用構造部材、スポーツ用品の構造部材などが考えられる。
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実用化に向けた課題
• 現在、TCM薄板(0.5mm 厚) の突合せ溶接および角管溶接
を問題なく行うことができる。
• 今後、円管についてレーザ溶接実験を行い、TCM薄肉パイプの試作を検討していく。
• 実用化に向けて、板厚の異なるTCM板を用いてレーザ溶接条件を最適化する必要がある。
TCM薄肉溶接角管
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本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :金属クラッド溶接材および
金属クラッド溶接材の製造方法
• 出願番号 :特願2014-156568
• 出願人 :公立大学法人大阪府立大学
• 発明者 :井上 博史
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本技術と関連する知的財産権
• 発明の名称 :マグネシウム合金クラッド材
およびその製造方法
• 特許番号 :特許第5315043号
• 登録日 :2013年7月12日
• 特許権者 :公立大学法人大阪府立大学
• 発明者 :井上 博史
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企業への期待
• TCM薄肉パイプの実現には、造管成形技術をもつ企業または溶接パイプ製造企業、パイプ曲げ加工技術をもつ企業との共同研究を希望。
• また、軽量の構造部品を開発中の企業、福祉機器への展開や二輪車の軽量化、スポーツ用品への適用を考えている企業には、TCMクラッド板の製造技術と溶接技術の利用が有効と思われる。
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問い合わせ先
大阪府立大学 産学官研究連携推進センター
統括コーディネーター 亀井 政之
TEL 072-254-9872
FAX 072-254-7475
e-mail [email protected]