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地区別研究大会 中央南部B 愛宕保育園 稲佐保育園 大浦保育園 大浦児童園 桐の木保育園 小島保育園 慈光保育園 たんぽぽ保育園 長照寺保育園 若宮保育園 保育士の働きかけによる子どもの変化 ~様々な視点から見る~ 〈運動・言語・遊具〉~ 子どもたちを取り巻く環境は著しく変化し、子どもたちの姿にも影響を与えている。 時間、空間、仲間といった子どもの遊びを守っていた3間の減少、それに伴う子どもの体 力の低下も顕著に見られている。幼児期運動指針においても、「幼児は様々な遊びを中心に、 毎日、合計60分以上、楽しく身体を動かすことが大切である」とある。 身体を動かす、発達の特性に応じた遊びの環境、それに伴う様々なものに対する意欲の向 上に着目し、子どもにとってのもっともふさわしい環境を考える。 保育所保育指針 第2章 子どもの発達では、「子どもは、様々な環境との相互作用によ り発達していく。すなわち、子どもの発達は子どもがそれまでの体験を基にして、環境に 働きかけ、環境との相互作用を通して、豊かな心情、意欲及び態度を身に付け、新たな能 力を獲得していく過程である。」とある。これから保育制度が変革するにあたり、変わるも のと変わらないものをしっかりと認識し、子どもを主体とした保育の本質をしっかりと守 らなければならない。 そこで、子どもを取り巻く環境を3つのカテゴリーに分類し、様々な側面から子どもにと っての最善の利益、もっともふさわしい場を子どもの姿と保育士の立場から検証していく。 【検証分類】 3つの環境カテゴリー 運動 言語 遊具 【検証方法】 対象家庭及び保育園に対してのアンケート調査(運動、遊具) 自由遊びと設定保育での運動量の違い、運動による足の裏の発育状態を検証(運動) しりとり遊びを利用した言葉の獲得に適した環境構成 遊具における古今の比較とアンケートによる年齢別遊具のあり方を検証

保育士の働きかけによる子どもの変化nagasakishihoikukai.jp/cp-bin/wordpress/wp-content/...地区別研究大会 中央南部B 愛宕保育園 稲佐保育園 大浦保育園

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地区別研究大会

中央南部B

愛宕保育園 稲佐保育園 大浦保育園 大浦児童園

桐の木保育園 小島保育園 慈光保育園

たんぽぽ保育園 長照寺保育園 若宮保育園

保育士の働きかけによる子どもの変化

~様々な視点から見る~ 〈運動・言語・遊具〉~

子どもたちを取り巻く環境は著しく変化し、子どもたちの姿にも影響を与えている。

時間、空間、仲間といった子どもの遊びを守っていた3間の減少、それに伴う子どもの体

力の低下も顕著に見られている。幼児期運動指針においても、「幼児は様々な遊びを中心に、

毎日、合計60分以上、楽しく身体を動かすことが大切である」とある。

身体を動かす、発達の特性に応じた遊びの環境、それに伴う様々なものに対する意欲の向

上に着目し、子どもにとってのもっともふさわしい環境を考える。

保育所保育指針 第2章 子どもの発達では、「子どもは、様々な環境との相互作用によ

り発達していく。すなわち、子どもの発達は子どもがそれまでの体験を基にして、環境に

働きかけ、環境との相互作用を通して、豊かな心情、意欲及び態度を身に付け、新たな能

力を獲得していく過程である。」とある。これから保育制度が変革するにあたり、変わるも

のと変わらないものをしっかりと認識し、子どもを主体とした保育の本質をしっかりと守

らなければならない。

そこで、子どもを取り巻く環境を3つのカテゴリーに分類し、様々な側面から子どもにと

っての最善の利益、もっともふさわしい場を子どもの姿と保育士の立場から検証していく。

【検証分類】 3つの環境カテゴリー

① 運動

② 言語

③ 遊具

【検証方法】

① 対象家庭及び保育園に対してのアンケート調査(運動、遊具)

② 自由遊びと設定保育での運動量の違い、運動による足の裏の発育状態を検証(運動)

③ しりとり遊びを利用した言葉の獲得に適した環境構成

④ 遊具における古今の比較とアンケートによる年齢別遊具のあり方を検証

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1、運動

① 各保育園における具体的な取り組み

愛宕保育園 歩数計を使って自由遊び・設定遊びの運動量の比較

慈光保育園 歩数計を使って自由遊び・設定遊び(保育士が3つの視点【跳躍力・

支持力・懸垂力】で運動量を増やす目的で遊びを提供)の意欲と

運動量の変化

若宮保育園 体育教室で『がんばるぞカード』を使った運動量の変化

小島保育園 足裏マッサージに取り組み、運動能力と足の発達。

稲佐保育園 足裏マッサージに取り組み、各年齢に合った運動の取り組み。発達

の変化。

② 生活リズム・環境との関係について アンケート集計

※5カ園の平均値をグラフ化

45% 徒歩

53%

その他

2%

通園方法

11

37

19

10 6 4

0

10

20

30

40

5分以

5~10

10~

15分

15~

20分

20~

25分

25~

30分

徒歩での所要通園時間

喜んで

歩く

60%

嫌々歩く

3%

どちらで

もない

11%

その日

の気分

26%

歩く時の様子

よくある

66%

時々

ある

30%

ない

4%

階段や坂道を歩く機会

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≪考察≫

昔に比べ、車の普及や遊び場所の減少、メディアの増加など子どもたちを取り巻く環境

が著しく変化している中で子どもの生活の現状を知る為にアンケートを行った。その結果、

各保育園の環境の違いはあるものの通園方法の半数は徒歩だったこと、その中でも嫌々歩

く、その日の気分によって歩くは29%であり、どちらでもないを含め約70%の子が歩

くという行為を肯定的かつ積極的に日常の一部として取り組んでいることが伺える。しか

しながら同じような割合の車での登園時については、その移動手段が日常化していること

を考えると保育園での運動量の確保が必要だと考えられる。

今回の検証では、この徒歩での登園と運動意欲との関連においてはふれてはいないが、好

奇心旺盛で動くことが大好きな子ども本来の特性を考えると歩くという移動手段において

も子どもの運動能力に微力ながら影響を与えるのではないだろうか。

またメディアの普及や玩具の増加により、戸外より室内遊びを好む子どもが多いと予測

していた反面、アンケートの結果においては戸外、運動遊びを好む傾向が見られ、家庭で

も体を動かして遊びたい子どもが多いことがわかった。果たして家庭においてどれほどの

運動時間を確保できているのだろうか。

徒歩での登園、降時間は運動時間として考えない場合、生活時間のほとんどを過ごす保

育園が子どもたちの運動意欲、そして実際の運動能力の向上を保障する場であることは明

裸足

98%

その

2%

家で過ごす時

戸外遊

61%

室内遊

34%

どちら

も4% 未回答

1%

お子さんの好きな遊び

4 16

28

133

33

0 0

50

100

150

テレビ

(DVD)

造形 ごっこ

遊び

運動 机上 リズム

特に好きな遊び

足に

ピッタ

56%

少し

大き

35%

少し

小さ

9%

普段履いている靴

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らかである。

③ 子どもの足(土踏まず)から発育状態の考察

土踏まずとは、人の足裏にあるアーチ形状である。土踏まずは片足に三箇所(厳密に言え

ば四箇所)あり、それぞれ前後方向、左右方向、水平回転方向の姿勢制御を容易にする。

また、アーチ形状がバネのように作用することで、足にかかる衝撃を緩和させる役目もあ

る。

直立二足歩行を行うことで次第に形成されるため、生まれたばかりの赤ちゃんにはない。

また足に合わない靴を履くなど、足の使われ方によっては、土踏まずが形成されないこと

がある。土踏まずが正常に形成されていない足を扁平足と予備、脚が疲れやすいと言われ

ているが、姿勢情報の入力センサーともいえる土踏まずの機能がない、もしくは低下して

いることにより制御が遅れ、必要以上の脚力を使ってバランスを取っているからだと考え

られる。

(フリー百科事典 ウイキぺデイアから引用)

これらのことを考慮した場合、日常的な活動や遊びにおいて、

1、つまずきやすい子

2、運動遊びを好む子

3、運動が苦手な子

の足の裏を比較することで、形成などにバランスの偏りが見られることが予想される。

果たして運動をする機会または時間が多い子ほど土踏まずが形成されているのか。

逆に苦手である子やバランスなどが悪い子は形成不全として明確に結果がでるのかを検証

する。

1)つまずきやすい子、運動遊びを好む子、運動が苦手な子の足裏の比較

【つまづきやすい子ども】

5 歳児 4 歳児

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【運動遊びを好む子ども】

5 歳児 4 歳児

【運動が苦手な子ども】

5 歳児 4 歳児

≪考察≫

保護者アンケートの自由記述において『よく転ぶ』『つまづきやすい』という声が保護者

から聞かれたことから、子どもたちの足型との関連性を検証した。

若干の差はあるものの、よく転ぶ、つまづきやすい子どもの足型は左右の形に違いが見ら

れたことから、やはり土踏まずの形成不全によるバランスの悪さが影響していると考えら

れる。運動を好む子どもに対し、苦手な子どもの足型は土踏まずの形成が未発達なのでは

ないかと予測していたが、運動を好む子も苦手な子も特に大きな違いはなかったが、苦手

という意識が直接的にその後の運動意欲に影響することはあると考えられる。

しかし明らかなことは3歳児期より 4 歳児期、4 歳児期より 5 歳児期と年齢が上がるにつれ

て土踏まずの形成が進んでいるということである。これは年齢に応じた活動量の増加が直

接的な影響を与えるものであると考えられる。

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④ 足裏マッサージの実施園と未実施園の歩数計での活動量の比較

○足裏マッサージをしている園

・稲佐保育園・小島保育園

○足裏マッサージをしていない園

・愛宕保育園・慈光保育園・若宮保育園

土踏まずの形成においては、草履や下駄など鼻緒付きの履物を普段から活用することで、

足の筋肉の鍛錬になり、土踏まず形成に効果があるとされている。実際に足裏マッサージ

を取り入れている保育園があることから、その効果と子どもの活動への影響を考える。

ある調査によると、“体力向上の実践プログラムなどに取り組んでいる保育園での子どもた

ちの一日の平均歩数は14,000歩、未実施園では12,500歩と計画的に、継続的

に活動を行うことで子どもたちの動きへの影響が見られる”ということは実証されている

ことである。(幼児期運動指針より抜粋)

しかしながら、今回は明確な差を導き出すことが出来なかった。それについては実施期間、

時間、対象者数が極端に少ないことが大きな理由であり、もっと長期的で継続的な検証の

必要性があった。実施園では足指の柔軟性の変化やバランス制御力改善に大きく期待する

取り組みの1つとして継続していくことを期待する。

※平均値で比較

歩数計を使った検証

<対象> 5 歳児 10 名

<時間> 30 分間

<計測期間> 10 日間

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

若宮

慈光

愛宕

小島

稲佐

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④ 自由遊びと設定遊びの活動量の比較

(対象)4・5歳児 自由遊び、設定遊びの30分の歩数を計測(10日間ずつ)

≪計測結果からの考察≫

○保育園 事例①

今回取り組みとして、保育士からの意図的で計画的な声かけ・働きかけのない子ども自

らの自由遊びと意図的、計画的な働きかけのある設定遊びを通しての歩数の比較計測を行

った。

その結果、十分に子どもたちにとって良い運動・遊びをしたと実感したであろう自由遊び

と保育士が意図性や計画性をしっかりと持ち、楽しい雰囲気を作りながら行った設定遊び

の場合とを計測すると、全体的にその2倍の数字が出たことである。

明らかな差としては、男女差や活動内容における環境によってその活動量は影響を受ける

0 500 1000 1500 2000

愛宕

慈光

設定保育

自由遊び

活動(年中) 1日目:外遊び 2日目:外遊び 3日目:鬼ごっこ 4日目:室内遊び 5日目:バルーン 6日目:外遊び 7日目:サーキット遊び 8日目:室内遊び9日目:色鬼ごっこ10日目:外遊び 合計 平均

B 481 382 2005 326 279 665 1352 406 1905 421 8222 822.2B 509 439 2403 415 113 884 1631 419 2245 562 9620 962B 314 423 2114 226 452 958 1219 249 1986 396 8337 833.7A 1208 1162 2763 336 954 1121 2048 428 2449 1164 13633 1363.3A 1609 1381 2636 562 722 1891 2251 630 2558 1204 15444 1544.4

A 1481 1561 2862 626 1541 2042 2569 562 2788 1361 17393 1739.3A 1239 1121 2663 436 737 2135 2448 561 2696 1292 15328 1532.8C 1512 1384 2782 526 568 1953 2363 681 2592 1231 15592 1559.2C 1306 1211 2532 321 816 1851 2269 434 2483 1186 14409 1440.9C 1239 1362 2798 389 1789 1971 1489 339 2792 1281 15449 1544.9

運動を好む子をA、運動を好まない子をB、どちらとも言えない子をCで表示

活動(年長) 1日目:室内遊び2日目:室内

 ドッジボール3日目:外遊び 4日目:外遊び 5日目:鬼ごっこ 6日目:サーキット遊び7日目:室内遊び 8日目:外遊び 9日目:室内遊び 10日目:氷鬼ごっこ 合計 平均

C 1019 1167 1117 962 2235 2101 504 1096 451 2415 13067 1306.7B 28 40 356 504 1340 1228 56 382 192 1190 5316 531.6C 282 288 986 894 2482 1608 318 1041 182 2505 10586 1058.6B 98 102 504 341 2091 1568 108 561 204 2076 7653 765.3C 308 1473 1018 991 919 1916 282 631 256 889 8683 868.3

A 592 2209 1581 1291 2302 2514 342 1336 428 2158 14753 1475.3A 294 1994 1643 1293 3042 2517 314 1362 628 2938 16025 1602.5A 1130 2003 1758 1412 2691 2368 634 1621 576 2578 16771 1677.1C 305 1341 1208 1336 1308 2432 948 1256 841 1209 12184 1218.4A 345 1971 1532 1362 2819 2403 254 1421 381 2929 15417 1541.7

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ということ、また、体を動かすのが苦手な子や座って遊んだり室内遊びが好きな子は、設

定遊びの場合もより運動量が増えるものの、よく動く子に比べるとその差は歴然である。

明らかな結論ではあるが、自由遊びより運動を強く意識した設定遊びが平均的により子ど

もの運動が増加することである。このことから、歩数が少ない子も多い子も運動量の増加

には保育士の声かけ、働きかけを含めた環境が最も重要だということである。

今後も子どもたちの運動量、体力向上のために楽しく体を動かせるような声かけや、環境

作り遊びの提供を考えていきながら日々の保育に取り組んでいきたい。

○保育園 事例②

保育士が遊びを設定することで運動量が増えたというより、遊びの質が良くなった印象

があった。保育士が設定する長縄跳びやリレー、遊具を使った遊びなど、遊びによっては

待ち時間が長くなることから、結果的に歩数は少なくなっていた。

したがって、自由遊びより設定遊びの方が歩数は少なくなっていると考えられる。

集団遊びに自ら参加しなかった子にとっては、保育士の働きかけにより遊びに参加する

良いきっかけができた。5歳児は、保育士の働きかけがなくても自分たちで誘い合い集団

遊びをする姿が多くなった。4歳児は、保育士の働きかけで歩数が増えた。また、年長児

の集団遊びに加わる姿も増え、遊びが持続するようになった。保育士の働きかけがなくな

ると、自分の好きな遊びに戻る姿も多く見られ、歩数が減っていた。年中児は年長児に比

べ、集団よりも3・4人で好きな遊びをじっくり取り組む子も多い様子。

まとめ

研究を行う中で様々な視点から子どもの生活・あそびを見つめなおし、子どもが主体的

に体を動かす活動を働きかけることで、子どもの意欲や意識にも変化があることがわかっ

た。

土踏まず形成については、その形成を助長する活動内容を0歳児からしっかりと考え、日

常の活動の一部として長期的に取り組んでいくことが必要であり、自由遊びや設定遊びに

おいてもその活動内容次第では、子どもの活動量に大きく影響を与える。しかし遊びにお

ける学びは単に運動量(健康領域:元気に遊ぶ)だけに着目せず、バランスのよいその他

の領域を含めた活動として考えなければいけない。

また、研究を始める前と後では、保育士自身にも変化があり、子どもを見る視点・生活環

境や家庭の背景を視野に入れた個々の支援、活動時の働きかけの仕方など意識が高まった。

少子化や核家族化、技術の発展などにより生活様式が大きく変化したことは、子どもたち

の生活リズムや身体、運動能力に影響をもたらしているのではないか。このような子ども

を取り巻く環境を理解したうえで、多様化する保育ニーズに対し、幼児期に携わる私たち

は子どもたちを保育するプロとして今回の研究を活かし、今後の保育に役立てていきたい

と思う。

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2、言語

子どもの発達は、子ども自らが様々な環境に働きかけていくことである。言語の獲得

においても、大人とのやり取りや保育士の会話を聞き、刺激を受けながら身に付けて

いく。

それは教えていくという習得の側面より気付いていく、教えあっていくという時間を

かけて熟成していく側面をどのように環境の中に自然と入れ込んでいくか。

今回は、年長児の遊びの中でよく見られるしりとり遊びに注目し、その形態(人数、

環境、組み合わせ)などの視点から保育士の配慮すべきポイントを整理していく。

一般的にしりとり遊びは人数的な制限が特になく、一人でも二人以上でも行うことが

できる言葉遊びの代表的なものである。しかし日常的な言葉や知り得る言葉を用いる

ことからパターン化しやすい一面も否定できない。

しりとり遊びを語彙獲得の手段の1つとして、また子ども同士のコミュニケーション

力を高めることができるものでもあるとして、様々な方法を用いて最適な環境を検証

する。

【方法】

1、形式、隊形による変化

2、人数による変化

3、時間による変化(遊びの前と遊んだ後)

4、文字遊びに取り組んだ後のの変化

5、子ども集団の構成による変化

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ヒントあり  ヒントなしPM1:00

ことばカード

話す子と話さない子をまぜたとき

0’50

0'42

「あ」のつく言葉を書き出す活動一人ずつ紙を配り、思いつくだけ書いてみる

8月計115個(10人)平均 11.5個/人

11月計205個(10人)平均 20.5個/人

AM10:30 5人で行った

 よく話す子ども

あまり話さない子ども 1’34

AM 10:30 8人で行った

7’2514’59

PM1:00 5’26

円になる(床)

3文字1’575’08

3’403’44

3文字のたべもの7’58

12’1823’5719’38

円になる(床) テーブル(椅子)

   たべもの6’468’39

・あまり話さない子は、混ぜた時

のほうが子ども同士でも刺激を

受けて自分で考えようとするよ

うになった。

・混ぜるとタイムも早くなった。

・円の時とテーブルの時では

タイムはバラバラで、あまり

変化が見られなかった。

・午後に行ったほうがタイム

が早かった。

・言葉のカードを掲示すると3カ月

の間で2倍近く語彙が増えた。

・掲示物をよく覚えていてすすんで

書くことが出来た。

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ヒントあり  ヒントなし

2’31

1’48

1’11

テーマなし

 よく話す子ども

あまり話さない子ども 1’01

3‘236‘53

7月

10月

計40個(16人)平均 2.5個/人

計81個(12人)平均 6.75個/人

AM 10:30 

「あ」のつく言葉を書き出す活動一人ずつ紙を配り、5分間計測

話す子と話さない子をまぜたとき

0’45

1’10

AM 10:30 8人で行った

4‘572‘57

円になる(床)

円になる(床) テーブル(椅子)

   たべもの

2‘101‘40

0‘542‘30

PM 1:00

円になる(床) ・あまり話さない子は、混ぜた時の

方が自分で考えて答えを導き

だそうとしていた。

・混ぜるとタイムも早くなった。

・よく話す子は、ヒントをもらっても

難しい言葉を答えようとする為

・円の時とテーブルの時では

タイムはバラバラで、あまり

変化が見られなかった。

・テーマを絞ると、回答するまでの

時間が長くかかった。

・言葉あそび活動(しりとり)を

始める前(7月)は全体的にあまり

書くことができていなかったが、

何度かの活動を経た後は全体的に

書き出す個数が増えていた。

・活動を通して言葉への興味関心が

増し、周囲の様々なものの名称を

意識して見たり、覚えたりする

様子が多く見られるようになった。

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しりとり遊びを通した2ヶ園の研究結果より・・・

しりとりのテーマに関係なく、座る隊形(床・椅子)による結果には影響を及ぼさない

ことが分かった。また、8人での取り組みは待ち時間が長く集中力が続かない場合が多く、

5人程度での取り組みの際は、集中力が切れることなく取り組むことが出来た。

また、ことばカードを日常的に用いながら、子どもたちが自然と多くの言葉に触れられ

るように環境づくりを行ったことは、子どもたちが文字に触れる機会が増え、自ら興味を

持ち働きかける動機付けとなった。また取り組み時間については、活動内容は別としてあ

る一定の遊びを十分に体験した後に行う場合が集中力が増し、しりとりの流れもスムーズ

で結果、タイムも平均して早まった。

今回の研究を通して、保育士の様々な働きかけによって子ども達の語彙力が上がり、普

段は自分の思いを表現することが少ない子も、自ら考え言葉にしようとする姿が見られる

ようになった。

また興味深いポイントとしては、子どもたちの集団構成である。タイムにおいて“よく話

す子ども”がスムーズであることが明確であるが、しりとり環境を意図的に、よく話す子

とあまり話さない子を混在する人的なものとした場合、タイムとしても一番早いタイムと

さほどの差はないほど“あまり話さない子”は積極的に参加し、考えて、集団としていい

影響を一方で与え、一方では受け合っていた。

様々な活動を通して、言葉への興味・関心が増し、周囲の様々なものの名称などを意識

してみたり、覚えたりする様子が多くみられるようになったと同様に、子ども同士の関係

性においてもこの遊びを通じて保育士が多面的(文字や言葉の習得に限らず、子ども同士

の関係性の向上を意図する環境)に意図することの重要性を改めて認識として深めること

ができた。今後もしりとりだけではなく、様々なことば遊びを通して、子どもたちが楽し

みながら語彙力を上げていけるように関わりを工夫していきたい。

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3、遊具

「おもちゃについて」

誰でも 1度は遊んだことがある「おもちゃ」。現在、たくさんのおもちゃがあふれ、時代

によって多様に変化しています。

けん玉、お手玉、竹馬、メンコ、ゴムとびなど昔は当たり前にあったもの、そしてゲー

ム、テレビから生まれたおもちゃ、カードゲームなど今は当たり前にあるもの。そんな様々

な種類の「おもちゃ」がある中で、どのようなものをあたえる良いのか、発達にどのよう

な影響を与えるのか、家庭や保育園などの身近な環境や関わり方の違いも踏まえて考察し

ていく。

①【 今と昔の「おもちゃ」の比較 】

○昔のおもちゃ=手作りできるものが多い

・作る工程から楽しむことができる

・想像力、発想力を養える

・失敗から学べる力が付く

・子どもの達成感、満足感が得られる

○現代のおもちゃ

・手作りできない複雑なもので遊ぶ事ができる

・簡単に手に入る

・色や形など、種類によって選ぶことができる

・習得にかかる時間が少なく、誰にでもすぐ楽しめる

子どもたちの発達を促すものが、遊具(おもちゃ)であると定義すると、それを与える側

というよりまず子ども自身が選ぶことにその価値があると考える。であれば、昔がよい・

今が悪いという観点ではなく、それ自体のおもちゃにどんな側面を刺激し、発達に繋げる

要素があるのか。そしてその場合の適切な支援とは何なのかということから考えていきた

い。

【検証方法】

1、 家庭で遊び現状の把握 【アンケート調査】

2、 保育園でのおもちゃの意図性と子どもたちが求めるおもちゃのランキング

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【 家庭での過ごし方 】

帰宅後から就寝までの短い時間の中で、半数以上が家族の誰かと関わって過ごしている

という結果がでているが、兄弟の有無や帰宅時間によって、各家庭の差が大きく見られる。

何に興味を持ち遊んでいますかという問いについては、ほぼバランスよく様々な遊びが見

られた。人形、ままごと、ブロック、ボール、絵本、お絵かきなどは、室内遊びの代表的

なあそび

1日の大半を保育園で過ごしている分、園ではあまり見ないテレビを見せる家庭も多数あ

った。

37%

43%

28%

17%

帰宅後の様子

一人で遊

兄弟と遊

29% 33%

2%

親子の会話

多い(2時

間以上)

普通(1時

間以上)

少ない(1

時間未満)

18%

13%

22% 15%

11%

21%

何を使って遊んでますか?

人形

ままごと

ブロック

ボール

絵本

お絵かき

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【保育園での過ごし方(アンケート結果より)】

【手作りおもちゃランキング】

各保育園で作っている人気の“手作りおもちゃ”をランキングしました!

≪1位≫ ガラガラ(35票)

≪2位≫ ぼたんつなぎ(32票)

≪3位≫ ままごと用おんぶひも(27票)

<4位> エプロン(15票)

赤ちゃんのおもちゃとして

人気の“ガラガラ”。音がす

るものや、キラキラ・色ど

りが綺麗なものが人気のよ

うです。

制服の練習にもなる“ぼた

んつなぎ”は、ボタンの種

類や布の形によってバリ

エーションが豊富にでき

るのも、人気の一つですね

ご家庭や保育園で見慣れてい

る“エプロン”。お母さんや先

生になりきって遊ぶ子どもの

必須アイテムです。

おままごとをする時に男女

問わず人気の“おんぶひも”。

園によって形は様々ですが、

紐を結ぶ練習にもなってい

ます。

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<5位> 棒・チップ・ホース落とし(12票)

<6位> 紐通し(11票)

<7位> ままごと用布団(10票)

お人形(10票)

<9位> ままごと用食材(9票)

お手玉(9票)

< 10位~ >

・型はめ落とし ・パズル ・洗濯バサミ遊び ・牛乳パック机、椅子

・布絵本 ・絵合わせ ・ボール ・牛乳パック積み木

・ままごと用バック、スカート ・かるた ・魚釣りゲーム

・マジックテープ貼り ・軍手人形 ・段ボールサークル

・ままごと用三角布、帽子 ・かまぼこ板の積み木

【園のおすすめおもちゃ】

・カプラ

・木製積み木

・LaQ(パズルブロック)

・マグフォーマー(マグネット付ブロック)

・大型積み木

・アイクリップ

・3Dジオシェイプス

・ネジ付つみき

・Bブロック

・JPクッション

・段ボールハウス

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【購入するにあたり、気を付けている事】

○未満児は取り合いにならないように、同じものでも数を多くそろえる

○未満児用は、口に入れても大丈夫なものを選らぶ

○以上児は、みんなで使えるように数が多いものを選ぶ

○危険性の少ないもの

(誤飲を誘発しないか、破損しやすくないか)

○遊びに多様性、発展性があるもの

○子ども達の興味、関心、夢中になれるもの

○少し購入後、よかったら追加購入する

○児童憲章「こどもは良い文化で育てられる」その基準で選んでいる