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国民 不服申立て 行政訴訟 行政 司法 行政不服審査法 行政事件訴訟法 行政審判 前章では、国民の損害や損失について賠償や保障を学んだ。 しかし、それは行政側の処分等に基づいて発生した金銭的な損害について の争いに過ぎない。 例えば、違法な営業取消処分に対し、国家賠償請求により金銭的救済がさ れても、営業取消処分は、依然として効力があるから、営業は再開できない。 そのため、金銭的裁判とは別に、元となった行政側の処分等を取り除くこと を目的とした手段も必要である。 それが「行政争訟」である。 行政争訟は、大きく分けて2種類ある。 一つは、「裁判所」に対して「行政側の処分等を取り消してほしい」等と訴 える行政訴訟(行政事件訴訟)である。 もう一つは、処分等をした行政そのものを相手にして争う不服申立てである。 また、行政に関する争訟は行政不服審査法による不服申立ての他に、行政 審判がある。 種類 1. 行政争訟とは何か 2. 行政争訟の種類 行政法 11 行政不服審査法等 378

行政法 11 行政不服審査法等pro.goukakudojyo.com/pdf/必勝テキスト1_2016修正...不服申立ての対象は、処分と不作為である。 処分とは、主に「行政処分」のことである(最判昭39.10.29参照)。

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Page 1: 行政法 11 行政不服審査法等pro.goukakudojyo.com/pdf/必勝テキスト1_2016修正...不服申立ての対象は、処分と不作為である。 処分とは、主に「行政処分」のことである(最判昭39.10.29参照)。

国民不服申立て

行政訴訟

行政

司法

行政不服審査法

行政事件訴訟法行政審判

 前章では、国民の損害や損失について賠償や保障を学んだ。 しかし、それは行政側の処分等に基づいて発生した金銭的な損害についての争いに過ぎない。 例えば、違法な営業取消処分に対し、国家賠償請求により金銭的救済がされても、営業取消処分は、依然として効力があるから、営業は再開できない。 そのため、金銭的裁判とは別に、元となった行政側の処分等を取り除くことを目的とした手段も必要である。 それが「行政争訟」である。

 行政争訟は、大きく分けて2種類ある。 一つは、「裁判所」に対して「行政側の処分等を取り消してほしい」等と訴える行政訴訟(行政事件訴訟)である。 もう一つは、処分等をした行政そのものを相手にして争う不服申立てである。 また、行政に関する争訟は行政不服審査法による不服申立ての他に、行政審判がある。

1種類

1. 行政争訟とは何か

2. 行政争訟の種類

行政法

11行政法

11 行政不服審査法等

378

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 不服申立ての対象は、処分と不作為である。

 処分とは、主に「行政処分」のことである(最判昭39.10.29参照)。 また、処分には権力的事実行為も含まれる。旧行政不服審査法では「公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」(最判昭39.10.29)を処分に含めていたが、これらの継続的事実行為が処分に含まれることに異論はなく、本法には明記されてない。また、行政事件訴訟法及び行政手続法の処分の定義では、権力的事実行為が処分に含まれる旨は明記されてないが解釈上肯定され、行政事件訴訟法及び行政手続法の処分には非継続的な権力的事実行為も含まれると解される。本法でも異なる処分概念をとるべきではないとのことから、行政不服審査法における「処分その他公権力の行使」には、非継続的な権力的事実行為も含まれると解される。 また、行政処分であっても、以下の判例のように行政不服審査法の対象とはならない場合がある。

「公正」という文言が明記され、手続の公正性をより重視している。

 行政不服審査法は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

 不服申立ての一般法は、行政不服審査法である。 ここからは、この法律について見ていくことにする。

 行政不服審査法における一次的な目的は、「国民の権利利益の救済を図る」ことであるが、副次的に「行政の適正な運営を確保すること」も目的になっている。これは、不服申立ての対象に違法だけでなく、不当を含めていることにも関係してくる。すなわち、権利救済だけを考えるのであれば、違法にまで至らないものは、救済する必要性に乏しいといえるが、不当も対象に含めることによって、行政内部の自己統制機能が働き、適正な行政を確保することができるのである。

 また、簡易迅速性を目的に挙げているのもポイントである。 これは、裁判と比較すると簡単で速いということである。

不服申立て処分

不作為

不服申立て 行政訴訟

司法権行政権

権利救済

「適法・違法」

厳正簡易・迅速

目的

関与機関

対象

手続

権利救済及び行政の適正な運営確保

「適法・違法」及び「妥当・不当」

公正3

処分1

適正運営の確保1

2二つの相違

1 行政不服審査法の趣旨

2 不服申立ての対象等

3. 不服申立ての一般法

4. 行政不服審査法の趣旨・対象等

簡易・迅速性2

380379

2

行政法

11

行政不服審査法等

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当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの

刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分

国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、収税官吏、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分

学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分

刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分

②裁判所関係

①国会による もの

④検査官会議 関係

③国会を経た もの

⑥刑事事件等 関係

⑤形式的当事 者訴訟関係

⑧学校等関係

⑦税金等関係

⑨刑務所等関 係

⑪試験関係

⑩外国人関係

裁判所若しくは裁判官の裁判により又は裁判の執行として行われる処分

国会の両院若しくは一院又は議会の議決によって行われる処分

国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上で行われるべきものとされている処分

検査官会議で決すべきものとされている処分

外国人の出入国又は帰化に関する処分

専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分

判例

●不服申立ての対象(最判昭 43.4.18)

〈事実の概要〉

 Aは、自己の加熱装置がBの実用新案の技術的範囲に属しないことの判定を特許庁に求めたところ、特許庁は、Bの実用新案の技術的範囲に属する旨の判断をした。そこで、Aは特許庁長官に対して審査請求をした。「技術的範囲についての判定」は行政不服審査の対象となるか。

〈判旨〉

 行政庁の行為であっても、性質上法的効果を有しない行為は、行政不服審査の対象となり得ない。 実用新案の技術的範囲についての判定は、本来、特許発明又は実用新案の技術的範囲を明確にする確定的行為であって新たに特許権や実用新案権を設定したり設定されたこれらの権利に変更を加えるものではなく、特許庁の単なる意見の表明であって、所詮、確定的性質を有するにとどまる。 したがって、行政不服審査法の対象とならない。

■概括主義の例外‐1(第二条及び第三条の規定は、適用しない。)

「不作為」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これをしないことをいう。例えば、Xが行政庁に営業許可申請をしたのに、何ヶ月経っても許可処分も拒否処分もしないで、放置している状態が不作為となる。

 行政不服審査法の前身である訴願法は、列記主義を採用しており、不服申立ての対象事項を列記していた。 他方、行政不服審査法は、概括主義を採用しており、原則として「処分・不作為」の不服申立ての対象事項であり、例外的に不服申立ての対象とならない事項を規定している。

不作為2

3 不服申立て事項

382381

2

行政法

11

行政不服審査法等

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行政不服審査法に基づく処分

国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する

処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相

手方となるもの及びその不作為①審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者又は審査請求に係る不作為に係る処分に関与し、若しくは関与することとなる者(※)

②審査請求人

③審査請求人の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族

④審査請求人の代理人

⑤上記③④に掲げる者であった者

⑥審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人

⑦当該処分について利害関係を有する者と認められる者

上級行政庁がない場合 当該行政庁(4➀)

上級行政庁がある場合 原則として、最上級庁(4➃)

※新法が審理員を規定した理由は審査を処分関係者が行うことがあったため、審理公

正への信頼を損ねていたからである。したがって、このような規定が設けられている。

 審査請求がされた場合、審理の主宰者を審理員とする制度を導入した。審理員は、審査庁に所属する職員の中から審査庁が指名する。これは新法により規定された。

■概括主義の例外-2(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く)

■概括主義の例外-3(行政不服審査法全部を適用しない)

 処分・不作為とも不服申立て手段が審査請求に一元化された(2、3)。 なお、法律により再審査請求ができる旨の定めがあれば、再審査請求をすることができる。再審査請求を全く廃止してしまわなかったのは、旧法で保障されていた国民の手続的権利を全て奪うべきではないと考えたからである。 審査請求の審査庁は、次の通りである。

 行政庁の処分につき処分庁以外の行政庁に対して審査請求をすることができる場合において、法律に再調査の請求をすることができる旨の定めがあるときは、当該処分に不服がある者は、処分庁に対して再調査の請求をすることができる。ただし、当該処分について審査請求をしたときは、この限りでない。なお、不作為について再調査の請求ができるとする旨の規定はない。 再調査の請求とは、処分庁に対して不服を申し立てること、すなわち旧法でいう異議申立てに該当すると思って頂きたい。 再調査の請求と審査請求とは、不服申立て人の自由選択である。

 一言で不服申立ての要件をいうと、「不服申立ては適法か」というとになるが、これを以下に詳説する。

 これは当然である。 特に、不作為については申請が前提となっている点に注意が必要である。

 これを「当事者適格」の問題という。 その前提として「当事者能力」を考えなければならない。

審理員2

■審理員になれない者

再調査の請求2

審査請求への一元化と審査庁1

5. どのような不服申立てができるか

1 不服申立ての種類

6. 不服申立ての要件

1 処分又は不作為があること

2 正当な当事者が不服申立てをすること

384383

2

行政法

11

行政不服審査法等

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〈判旨〉

不服申立てができる者は、当該処分について不服申立てをする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者である。法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保護される利益である。仮に、公正取引委員会による公正競争規約の認定が正当にされなかったとしても、一般消費者としては、景表法の規定の適正な運用によって得られるべき反射的な利益ないし事実上の利益が得られなかったにとどまり、その本来有する法律上の地位には、なんら影響はないといわなければならない。したがって、単に、一般消費者であるというだけでは公正取引委員会による公正競争規約の認定につき景表法10条6項による不服申立てをする法律上の利益をもつものであるということはできない。

判例

●不服申立て資格 (最判昭 53.3.14)

〈事実の概要〉

一般消費者であるAは、公正競争規約が果汁を全く含まない飲料について「合成着色飲料」「香料使用」と表示するだけでよいとしている点は違法であるとして、不当景品類及び不当表示法(景表法)に基づき、公正取引委員会に対して不服申立てをした。Aに不服申立ての資格があるか否かが問題となった。

本判例によって、行政事件訴訟法の処分と行政不服審査法の処分

は、同じ概念であると解されるようになった。

(Ⅰ)主観的不服申立期間(18Ⅰ)

 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求に

 当事者能力とは、自己の名において不服申立てをすることができる「一般的な資格」をいう。 当然だが、犬や猫は、不服申立てはできない。できるのは、人である。 ここにいう「人」は、自然人に限られず、法人も含む。 問題は、「権利能力なき社団・財団」であるが、これについては、「代表者又は管理人の定めがあるものは、その名で不服申立てをすることができる」(10)と規定されている。 例えば、町内会や設立途中の会社は、基本的にその名で不服申立てをすることが可能である。 ただ、形式的に代表者を決めたに過ぎない場合は、この要件を満たさない。 例えば、マンション建設を反対する近隣住民で結成した団体について、定款・規約等によって代表者が定められていなかったため、代表者がいないとして不適法却下した実例がある(東京都建築審査会昭52.3.8)。

 当事者適格とは、特定の争訟において当事者として具体的に不服申立てができる地位をいう。例えば、処分を受けたXと、全く関係のないYが、「Xが可哀想」と思ったとしても、それだけではYに「当事者適格」はない。 この場合、原則としてXに「当事者適格」がある。

 これは当然であろう。窓口を間違わないようにということである。 ただ、審査請求は、処分庁を経由してする事が認められており(21)、また、誤った教示のせいで間違えてしまった場合は、それに対する各種の救済規定が設けられている(22)。

当事者能力1

当事者適格2

3 権利を有する行政庁に申し立てること

4 不服申立期間内に申し立てること審査請求の申立期間1

386385

2

行政法

11

行政不服審査法等

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処分の日の翌日 処分を知った日の翌日

①3ヶ月

②1年

❶かつ❷が不服申立期間

※起算日は、処分又は裁決があったことを知った日の翌日

主観的不服申立期間

客観的不服申立期間

正当な理由があるとき不服申立ての種類

3か月

1か月

3か月

1年

1年

1年

審査請求期間

再審査請求期間

再調査請求期間

不服申立期間

処分

不作為

左や右の限りではない

審査請求書を郵便で提出した場合における審査請求期間の計算においては、送付に要した日数は算入しない(18Ⅲ)。

判例

●処分の告示と審査請求期間の起算点(最判平 14.10.24)

〈事実の概要〉

 Aは、都市計画事業の認可の取消しを求めて審査請求したが、認可の公示日の翌日を起算点とすると、不服申立て期間を過ぎていた。そこで、「処分があったことを知った日」とはどのような日かが問題となった。

〈判旨〉 「処分があったことを知った日」とは、処分がその名あて人に個別に通知される場合は、その者が処分のあったことを現実に知った日のことをいい、知り得たというだけでは足りない。しかし、都市計画法における都市計画事業の認可のように、処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係者権利者等に画一的に告知される場合には、「処分があったことを知った日」とは、告示があった日をいう。

(Ⅰ)主観的不服申立期間(62Ⅰ)

(Ⅱ)客観的不服申立期間(62Ⅱ)

 不作為については、その性質からいって、不服申立期間の制限はない。

 再審査請求は、原裁決があったことを知った日の翌日から起算して1か月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

 再審査請求は、原裁決があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(Ⅰ)主観的不服申立期間(54Ⅰ)

 再調査の請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(Ⅱ)客観的不服申立期間(54Ⅱ)

 再調査の請求は、処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

(Ⅱ)客観的不服申立期間(18Ⅱ)

 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

ついての決定があったことを知った日の翌日から起算して1か月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

不服申立期間のまとめ5

不作為の申立期間2

再審査請求の申立期間3

再調査の請求期間4

388387

2

行政法

11

行政不服審査法等

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①審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所②当該不作為に係る処分についての申請の内容及び年月日 ③審査請求の年月日

①審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所②審査請求に係る処分の内容③審査請求に係る処分(当該処分について再調査の請求についての決定を経たときは、当該決定)があったことを知った年月日 ④審査請求の趣旨及び理由⑤処分庁の教示の有無及びその内容⑥審査請求の年月日

処分についての審査請求に対する弁明書

不作為についての審査請求に対する弁明書

処分の内容及び理由

処分をしていない理由並びに予定される処分の時期、内容及び理由

(Ⅰ)弁明書の提出について(29)

◎審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとする。 弁明書には以下の事項を記載しなければならない。

 審査請求がされた行政庁(以下「審査庁」という。)は、一定の例外的場合を除き、審査庁に所属する職員のうちから審理手続を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等に通知しなければならない。

 審査請求は、代理人によってすることができる。代理人は、各自、審査請求人のために、当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。ただし、審査請求の取下げは、特別の委任を受けた場合に限り、することができる。

■審査請求書の記載事項

■不作為についての審査請求書の記載事項

 審査請求は、他の法律(条例に基づく処分については、条例)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、政令で定めるところにより、審査請求書を提出してしなければならない(19Ⅰ)。 なお、口頭による場合は、下記の記載事項を陳述しなければならない。この場合において、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認し、陳述人に押印させなければならない。

 多数人が共同して審査請求をしようとするときは、三人を超えない総代を互選することができる。また、必要があると認めるときは、審理員は、総代の互選を命ずることができる。 総代は、各自、他の共同審査請求人のために、審査請求の取下げを除き、

当該審査請求に関する一切の行為をすることができる。 共同審査請求人は、総代を通じてのみ、当該不服申立てに関する行為をすることができる。 また、共同審査請求人に対する行政庁の通知その他の行為は、2人以上の総代が選任されている場合においても、1人の総代に対してすれば足りる。 そして、共同審査請求人は、必要があると認める場合には、総代を解任することができる。

 審査請求書が上記 の記載事項の記載が欠けていれば、審査庁は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。

1

審理員の欠格事由については前述した。2

審理員の役割3

1審理員

7. 手続の進行

審査請求書の補正(23)2

総代(11)3

5 その他注意点書面主義1

代理人(12)4

審理員の指名1

390389

2

行政法

11

行政不服審査法等

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(Ⅰ)標準審理期間の設定・公表(16)

 審査庁となるべき行政庁は、審査請求がその事務所に到達してから当該審査請求に対する裁決をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、当該審査庁となるべき行政庁及び関係処

(Ⅸ)審理意見書について(42)

 審理員は、審理手続を終結したときは、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(以下「審理員意見書」という。)を作成しなければならない。  この審理員意見書を作成したときは、速やかに、これを事件記録とともに、審査庁に提出しなければならない。

(Ⅵ)参考人の陳述及び鑑定の要求について(34)

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参考人としてその知っている事実の陳述を求め、又は鑑定を求めることができる。

(Ⅶ)検証について(35)

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、必要な場所につき、検証をすることができる。審査請求人又は参加人の申立てにより検証をしようとするときは、あらかじめ、その日時及び場所を当該申立てをした者に通知し、これに立ち会う機会を与えなければならない。

(Ⅷ)審理関係人への質問について(36)

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、審査請求に係る事件に関し、審理関係人に質問することができる。

(Ⅴ)物件の提出要求について(33)

 審理員は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その他の物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる。この場合において、審理員は、その提出された物件を留め置くことができる。

その他の物件を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

(Ⅳ)証拠書類等の提出(32)

 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができ、 処分庁等は、当該処分の理由となる事実を証する書類その他の物件を提出することができる。この場合において、審理員が、証拠書類若しくは証拠物又は書類

(Ⅱ)反論書の提出について(30)

◎審査請求人は、弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面(以下「反論書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない(30Ⅰ)。 ◎審理員は、審査請求人から反論書の提出があったときはこれを参加人及び処分庁等に、参加人から意見書の提出があったときはこれを審査請求人及び処分庁等に、それぞれ送付しなければならない(30Ⅲ)。◎審査請求に係る事件に関する意見を記載した書面(以下「意見書」という。)を提出することができる。この場合において、審理員が、意見書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない(30Ⅱ)。

(Ⅲ)口頭意見陳述について(31)

◎審査請求人又は参加人の申立てがあった場合には、審理員は、当該申立てをした者(以下「申立人」という。)に口頭で審査請求に係る事件に関する意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、当該申立人の所在その他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる場合には、この限りでない。 ◎上記意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。◎口頭意見陳述において、申立人は、審理員の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。 ◎口頭意見陳述において、審理員は、申立人のする陳述が事件に関係のない事項にわたる場合その他相当でない場合には、これを制限することができる。 ◎口頭意見陳述に際し、申立人は、審理員の許可を得て、審査請求に係る事件に関し、処分庁等に対して、質問を発することができる。

審理の迅速化を促進する制度4

392391

2

行政法

11

行政不服審査法等

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審査庁 執行停止等の要件

処分庁の上級行政庁又は処分庁

処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない審査庁

必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置(以下「執行停止」という。)をとることができる。

必要があると認める場合には、審査請求人の申立てにより、処分庁の意見を聴取した上、執行停止をすることができる。ただし、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をとることはできない。

審査庁 諮問機関

主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局の庁の長官である場合

地方公共団体の長

行政不服審査会

条例により設置された諮問内容を調査審議する付属機関

(Ⅰ)執行不停止の原則

 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない(25Ⅰ)。つまり、執行不停止が原則である。これは、不服申立ての濫用によって行政が麻痺することを防止するという政策である。

(Ⅱ)執行が停止できる場合

 執行停止ができる場合には、それが可能な場合とそれをしなければならない場合(義務である場合)に分けることができる。 可能な場合は、以下の通りである。

(Ⅲ)諮問機関

◎諮問をした審査庁は、審理関係人(処分庁等が審査庁である場合にあっては、審査請求人及び参加人)に対し、当該諮問をした旨を通知するとともに、審理員意見書の写しを送付しなければならない。

 利害関係人(審査請求人以外の者であって審査請求に係る処分又は不作為に係る処分の根拠となる法令に照らし当該処分につき利害関係を有するものと認められる者をいう。以下同じ。)は、審理員の許可を得て、当該審査請求に参加することができる。また、審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、当該審査請求に参加することを求めることができる。

(Ⅰ)審理手続の終結

 前述したように、審理手続を終結したときは、審理員は、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書(審理意見書)を作成し、速やかに事件記録とともに審査庁に提出しなければならない。

(Ⅱ)行政不服審査会への諮問

 審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、法定の場合を除き、行政不服審査会等に諮問しなければならない。 つまり、審査庁は、行政不服審査会等の諮問を受けその意見を参考にして、審査庁としての判断をするということである。

(Ⅱ)審理手続の計画的進行(28)

 審査請求人、参加人及び処分庁等(以下「審理関係人」という。)並びに審理員は、簡易迅速かつ公正な審理の実現のため、審理において、相互に協力するとともに、審理手続の計画的な進行を図らなければならない。

(Ⅲ)事前の意見聴取(37Ⅰ)

 審理員は、審査請求に係る事件について、審理すべき事項が多数であり又は錯綜しているなど事件が複雑であることその他の事情により、迅速かつ公正な審理を行うため、行政不服審査法に規定する審理手続を計画的に遂行する必要があると認める場合には、期日及び場所を指定して、審理関係人を招集し、あらかじめ、これらの審理手続の申立てに関する意見の聴取を行うことができる。

分庁の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

9. 執行停止

2 利害関係人の参加(13Ⅰ、Ⅱ)

3 審査請求の取下げ(27)

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①不服申立てをすることができる旨

②不服申立てをすべき行政庁

③不服申立てをすることができる期間

①審査請求人の申立て

②処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるとき

③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないとき(※)

④本案について理由がないとみえないとき(※)

利害関係人に対する教示2

行政庁が、教示の内容を誤ったとき3

10. 教示制度

1 教示制度とは何か

2 教示すべき場合

審査請求人に対する教示1

 誤って審査請求された行政庁は、速やかに、審査請求書を処分庁又は審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。 そして、処分庁は、速やかに、これを審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなければならない。

(Ⅰ)審査庁でない行政庁を審査庁と誤って教示し、その誤って教示された行政庁に書面で審査請求がなされた(22Ⅰ)

 処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書を審査庁となるべき行政庁に送付し、かつ、その旨を再調査の請求人に通知しなければならない。

(Ⅱ)再調査の請求ができない処分につき、処分庁が誤って再調査の請求ができる旨を教示し、行政庁に再調査の請求がなされた(22Ⅲ)

 再調査の請求人から申立てがあったときは、処分庁は、速やかに、再調査の請求書又は再調査の請求録取書及び関係書類その他の物件を審査庁となるべき行政庁に送付しなければならない。この場合において、その送付を受けた行政庁は、速やかに、その旨を再調査の請求人及び当該再調査の請求に参加する者に通知しなければならない。◎上記(Ⅰ)~(Ⅲ)においては、審査請求書又は再調査の請求書若しくは再調査の請求録取書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす。

(Ⅲ)再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って審査請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、当該処分庁に再調査の請求がされた(22Ⅳ)

※公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときや本案について理由がないとみえ

るときであっても、義務が生じないだけで執行停止をしてはならないというわけではない。

(Ⅲ)執行停止の取消し(26)

 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

◎義務である要件は以下の通りである。

 すべての国民が不服申立ての制度を知っているとは到底いえない。 そこで、処分をしたときに「このような不服申立ての制度があります」と国民に教える制度を教示制度という。

 以下の場面において書面でしなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。

 利害関係人から求めがあった場合は、前述  の事項を教示しなければならない。また、教示を求めた者が書面による教示を求めたときは、当該教示は、書面でしなければならない。

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理由なし 棄却裁決

審査請求

理由の有無理由あり

事情裁決

容認裁決

却下裁決(請求が不適法)不服申立て

形式審理審査請求手続に入る(請求が適法)

①行政不服審査会等から諮問に対する答申を受けたとき

②行政不服審査会等の諮問が不要な場合は審理員意見書が提出されたとき

③他の法律・条例で定める一定期間の議を経るべき旨又は経る事ができる旨の定めがあるときは、その議を経たとき

④法令に基づく申請に対して一定の処分をすべきものと認める場合や不作為について一定の処分を命じる場合で、審議会等の議を経て裁決しようとするときには、その議を経たとき

行政庁が不服申立期間の教示を怠ったり、法定期間より長い期間を教示したときで、当該不服申立期間が経過した場合は、「正当な理由」による期間徒過として不服申立てが認められると解されている(18Ⅰただし書き、54Ⅰただし書き)。◎処分庁は、再調査の請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過しても当該再調査の請求が係属しているときは、遅滞なく、当該処分について直ちに審査請求をすることができる旨を書面でその再調査の請求人に教示しなければならない。

 審査庁は、以下のいずれかの事由に該当すれば、遅滞なく裁決をしなければならない。

 要件を欠くときに「請求に理由があるか否かにかかわらず」審理を拒否する審査庁の判断である。いわゆる門前払いである。 たとえば、審査請求が法定の期間後にされたものであるときは、審査庁は、却下裁決をする。

 審査請求人から申立てがあったときは、審査庁は、速やかに、審査請求書又は審査請求録取書を処分庁に送付しなければならない。ただし、審査請求人に対し弁明書が送付された後においては、この限りでない。  そして、審査請求書又は審査請求録取書の送付を受けた処分庁は、速やかに、その旨を審査請求人及び参加人に通知しなければならない。 ◎審査請求書又は審査請求録取書が処分庁に送付されたときは、初めから処分庁に再調査の請求がされたものとみなされる。

(Ⅳ)再調査の請求をすることができる処分につき、処分庁が誤って再調査の請求をすることができる旨を教示しなかった場合において、審査請求がされたとき(55Ⅰ)

 不服申立てがあると、まず適法性の審理(形式審理)がなされ、請求が不適法であれば、そこで門前払い、すなわち却下裁決がなされる。 請求が不適法というのは、たとえば、当事者適格が認められなかったり、不服申立期間が徒過していたりした場合である。

 前述 を通過した場合、つまり請求が適法であった場合、本案審理(実質審理)がなされる。 そして、請求に理由があるかないかの審理・判断がされる。 ここでの理由には、前述のとおり、違法性のみならず、不当性も含まれる。

1

不作為についての審査請求の場合には、申請から相当の期間が経過していない場合には、それを理由として却下裁決がなされる。(49Ⅰ)

本案審理(実質審理)2

却下裁決1

2裁決の時期

3 裁決の種類

1 不服申立ての流れ

適法性の審理(形式審理)1

11. 裁決

2

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審査庁 措置

不作為庁である審査庁

当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること

当該処分をすること

不作為庁の上級行政庁である審査庁

審査庁 措置

処分庁である審査庁

当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること

当該処分をすること

処分庁の上級行政庁である審査庁

審査庁 措置

処分庁である審査庁

当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること

当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること

処分庁以外の審査庁

①主文

②事実の概要

③審理関係人の主張の要旨

④理由

 審査請求に係る処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し、又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上、処分を取り消し、又は撤廃することが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決の主文で、当該処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない。

 裁決は、次に掲げる事項を記載し、審査庁が記名押印した裁決書によりしなければならない。

 不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。この場合において、以下に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該措置をとる。

(Ⅲ)不作為についての認容裁決

(Ⅱ)事実上の行為についての認容裁決(47)

(Ⅰ)処分についての認容裁決(46)

 要件は満たしているが、請求に理由がないとして審査請求人が負けという審査庁の判断である。

 審査請求に理由があるので、審査請求人の勝ちという審査庁の判断である。 認容裁決については、取消し、撤回、変更の3つの種類がある。

 処分についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。 処分の全部又は一部を取り消す場合において、以下に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、以下の措置をとる。

 審査請求に理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、以下に掲げる審査庁の区分に応じ、一定の措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。

 裁決は行政行為であるから、行政行為一般の効力(公定力、執行力、不可争力)の他に特有の効力として不可変更力が生じる。 なお、認容裁決については、関係行政庁を拘束する(拘束力-52Ⅰ)。

(Ⅰ)効力

事情裁決(45Ⅲ)4

裁決の方式5

棄却裁決2

認容裁決3

裁決の効力6

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 裁決は、審査請求人に送達された時に、その効力を生ずる。裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによってする。

(Ⅱ)発生時期

 通常の行政機関は、不服申立てに対する裁決等を行う。 行政審判は同じく行政機関による審判であるが、通常の行政機関とは一線を画するいわゆる「独立行政委員会」及びこれに準ずる行政機関(例-海難審判所)が裁判に類似する手続(準司法的手続)によって審判を下す制度をいう。

 独立性とは、審判するにあたって、他の行政機関からの指揮を受けないことである。 独立性のある行政機関に審理・裁定がされることによって、公平性が担保される。

 準司法的手続の意味については争いがあるが、一般的には、口頭による公開審理の機会や利害関係人の利益の手続的保障など裁判所の訴訟手続に準じた手続構造を有しているものをいう。

 行政審判を経てなされた決定に対しては、行政不服審査法に基づく不服申立ての制限がされたり、司法審査における一審が省略されたりすることもある。 例えば、独占禁止法70条の22では公正取引委員会がなした一定の審決について行政不服審査法による不服申立てをすることができない旨が規定されている。 また、独占禁止法85条1項では、公正取引委員会の審決に係る抗告訴訟では、東京高等裁判所が第一審裁判所とされている。 なお、憲法上では行政機関による終審裁判は禁止されているが(憲法76Ⅱ)、終審でなければ、行政機関が司法手続の一部を担うことは許される。

 実質的証拠法則とは、行政審判の裁決などの事実認定については、一定の場合において裁判所を拘束するというものである。 例えば、独占禁止法80条1項は「…公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときは、裁判所を拘束する。」と規定する。 この点、「公正取引委員会」が認定した事実が裁判所を拘束するのであれば、「行政機関」が終審として裁判を行うことになり、憲法76条2項に違反するのではないかという問題がある。 しかし、独占禁止法80条2項が、「実質的な証拠の有無は、裁判所がこれを判断する」と規定していること、司法の中心は「事実に法を当てはめることにあること」などを理由にして、憲法には違反しないとされている。

 独占禁止法81条1項は「新証拠の提出」に制限を設けている。 明文の規定がなければ上記 の「実質的証拠法則」や「新証拠の提出の制限」を認めないのかが問題となるが、多くの判例は明文の規定がなければ、これらを認めていない。

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具体例

事前手続

内容分類

事後救済手続

私人間紛争の解決のための審判

行政処分に対する不服の審査として準司法的手続によって行われる行政審判

行政機関の第一次的決定の発動をするにあたり、その公正・適正を確保するためにされる行政審判

・不当労働行為の申立てに基 づく労働委員会の審問・特許無効審判

・特許拒絶査定不服審判・電波監理審議会の審判

・海技士等に対する懲戒処 分を行うための海難審判・公安審査委員会の破壊的 団体規制処分手続

12. 行政審判

1行政審判とは何か

2行政審判の種類

3 行政審判の特徴独立性1

準司法的手続2

審級の省略等3

実質的証拠法則4

新証拠提出の制限5

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2

行政法

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行政不服審査法等