51
長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書 【問い合わせ先】 東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 高齢者在宅長期ケア看護学分野 研究代表者 山本 則子 連絡担当者 齋藤 弓子 Tel : 03-5841-3508 Fax : 03-5841-3502

長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

  • Upload
    others

  • View
    7

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

長期療養施設におけるケアの質改善

に関する質問紙調査

報告書

【問い合わせ先】

東京大学大学院 医学系研究科

健康科学・看護学専攻

高齢者在宅長期ケア看護学分野

研究代表者 山本 則子

連絡担当者 齋藤 弓子

Tel : 03-5841-3508

Fax : 03-5841-3502

Page 2: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

1

はじめに

日本では高齢化が急速に進み、日常生活に支援の必要な高齢者が居住し、必要なケアを受けられる療養

型医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設などの長期療養施設に対する社会的期待が高まって

いる。このような長期療養施設では、ケアニーズの高い高齢者に対して、人的・物的資源の限られた状況下でケ

アを提供する必要がある。しかし、長期療養施設におけるケアの質保証・改善に関する検討は、米国を中心とし

て諸外国において長い歴史がある一方で、我が国においてはほとんどなされてこなかった。特に、医療保険下の

制度である療養病床(以下、医療療養型病床と称する。)におけるケアの質に関する検討は非常に限られて

いる。

我々はこの現状に鑑み、2014 年に医療療養型病床で高齢者ケアに関わる職種を対象に、ケアの質に関す

る認識や、ケア提供上の工夫と課題に関するインタビュー調査を実施した。その結果、高齢者の個別性に応じ

たケアを提供しやすくする工夫、看護・介護職者のやりがい感を創出し維持するための組織的な働きかけ、長期

ケアのモデルおよびケアの質を適切に評価する指標の必要性が示唆された。

そこで、インタビュー調査で明らかになった医療療養型病床におけるケアの質の現状や課題の全国的な動向

を把握するため、医療療養型病床の管理者および直接ケアの提供者である看護・介護職者を対象とした質問

紙調査を実施した。本稿では、質問紙調査で分かったことをまとめて報告する。

調査の概要 <目的>

本邦における長期療養施設、特に医療療養型病床のケアの質の現状や課題を明らかにするため、入院患者

の状況、ケアの実施状況、看護・介護職者の身体・心理・社会的側面及び、ケアの質確保のために実施され

ている工夫についての全国的な動向を把握する。

<対象>

全国の医療療養型病床を有する全施設のうち、30 床以上の 3,767 施設から無作為選定した 2,000 施

設うち268施設から調査協力に同意が得られた。本調査における対象者は、268施設の医療療養型病床に

勤務する病棟の看護管理者 1 名、病棟の看護職者全員、及び病棟の介護職者 1 名である。尚、1 施設に

複数の医療療養型病床がある場合は、入院患者の平均在院日数が最も長い 1 病棟に調査協力を依頼した。

<方法>

調査協力施設に無記名自記式質問紙を郵送し対象者から回答を得た後、収集されたデータを統計的に解

析した。

<調査期間>

2015 年 8月~2015 年 11月(データ収集期間)

Page 3: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

2

<調査内容>

病棟の看護管理者票(1 名)、病棟の看護職者票(全員)、病棟の介護職者票(代表者 1 名)は、

それぞれに設問を用意した。主な調査内容は以下の通りである。

【病棟の看護管理者】

施設の基本属性(病院全体の病床数、当該病棟の病床数、設置主体等)、調査時の入院患者属性

(人工呼吸器、中心静脈栄養法等の医療処置を必要とする患者の人数等)、調査時過去 1 ヶ月間の入

院患者状況(褥瘡の新規発生、転倒・転落、経口摂取の開始した患者の人数及び件数等)、回答者の

基本属性(性別、年齢、看護及び看護管理者としての経験年数等)、病棟のケアの質、等

【病棟の看護職者】

回答者の基本属性(性別、年齢、看護経験年数、看護系最終学歴等)、身体症状、仕事の負担、

バーンアウト及びワークエンゲージメントの程度、病棟のケアの質、等

【病棟の介護職者】

回答者の基本属性(性別、年齢、介護経験年数、介護系保有資格等)、身体症状、仕事の負担、

バーンアウト及びワークエンゲージメントの程度、病棟のケアの質、等

<倫理的配慮>

調査にあたっては、参加者に対し、研究の目的と意義、調査への参加は各自の自由意志に基づくこと、施設

や個人が特定されないような形で結果を報告者や学会に公表すること等を、文書で説明した。本研究は、東

京大学医学部倫理委員会の承認を受け実施した。

報告書の作成にあたっては、匿名性を保持した。

Page 4: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

3

調査結果の概要

本調査の結果、以下のような主な知見を得た。

【入院患者の属性および状況】

① 入院患者属性 人工呼吸器、中心静脈栄養法等の医療処置を必要とする患者の人数等)や入院

患者状況 褥瘡の新規発生、転倒 ・転落、経口摂取の開始した患者の人数及び件数等)の割合

は施設間でばらつきがあった。

【看護・介護職者の状況】

② 身体症状として 背中や腰の痛み」や 疲労感」を抱える者の割合は、看護 ・介護職者ともに

8 割を超えていた。

③ 過去 1ヶ月間に 腰痛を伴うことがあった」と回答した者の割合は、看護・介護職者ともに

7 割を超えていた。

④ 病棟の看護管理者からの助けや評価があると回答した者の割合は、看護職者が介護職者より

低かった。

⑤ バーンアウトの平均得点は、介護職者よりも看護職者が高かった。

⑥ ワークエンゲージメントの平均得点は、介護職者よりも看護職者が低かった。

⑤⑥、介護職者に比べて、看護職者はバーンアウトのリスクが高く、ワークエンゲージメントが

低い 職場でイキイキと働けていない)ことを意味する。

*注)看護職者は病棟全員、介護職者は病棟代表者1名がアンケートに回答しているため、回答

者数が異なる 看護職者 n=3729・介護職者 n=252)。以下同様。

【痛みのケア】

⑦ 痛みがあると思われる患者がいると回答した者の割合は、介護職者よりも看護職者が低かった。

⑧ 看護 ・介護職者の半数以上が、疼痛スクリーニングのための尺度を使用した痛みのアセスメン

トをしていなかった。

⑨ 介護職者は、高齢者本人に痛みの有無を尋ねることや、日々のケアを通じて痛みの発見に努め

ていた。

【ケアの質:プロセス】

― 評価項目における傾向 ―

⑩ 病棟の看護管理者と看護 ・介護職者が、病棟でのケアの状況において できている又はあては

まる」と評価した項目は以下である。

・患者に十分な清潔ケアができている

・患者の状態に合わせた適切な食事へのケアができている

⑪ 病棟の看護管理者と看護 ・介護職者が、病棟でのケアの状況において できていない又はあて

はまらない」と評価した項目は以下である。

・患者に十分なレクレーションを提供している

・高齢者に多い合併症予防が十分にできている

・患者の自立度を維持・回復するための支援ができている

・スタッフは現在の仕事にやりがいを感じている

・他の職種や管理部門は、看護・介護職者が抱える負担に理解を持っている

Page 5: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

4

⑫ 病棟の看護管理者、看護・介護職者が あてはまる」と評価した項目は以下である。

・ケアのための人手が十分ではない

・看護・介護職者の離職のためにスタッフ全体に負担がかかる

― 評価者における傾向 ―

⑬ 病棟の看護管理者や介護職者に比べ、看護職者は、患者へのケア実践に関して できていない

又はあてはまらない」と低く評価する傾向がみられた。

⑭ 看護 ・介護職者に比べ病棟の看護管理者は、 スタッフは仕事に対してやりがいを感じている」

他の職種や管理部門は、看護 ・介護職者が抱える負担に理解を持っている」に関して、 でき

ている又はあてはまる」と高く評価する傾向がみられた。

⑮ 病棟の看護管理者に比べ看護 ・介護職者は、 ケアのための人手が十分ではない」 看護 ・介護

職者の離職のためにスタッフ全体に負担がかかる」に関して あてはまる」と評価する傾向が

みられた。

【ケアの質向上のための工夫】 自由記載)

⑯ ケアの質向上のための工夫として、身体抑制を最小限にする工夫・高齢者にメリハリのある

生活を送っていただくための工夫等に関する、様々な取り組みがされていた。

【ケアの質に関連する要因の検討】

⑰ ケアの質 アウトカム)には、病院/病棟の病床数等の施設属性が関連していた。

⑱ ケアの質 プロセス)には、チーム医療・チームケアを実践できていることが関連していた。

【看護・介護職者のメンタルヘルスに関連する要因の検討】

⑲ 看護・介護職者のバーンアウト及びワークエンゲージメントの改善には、 病棟の看護管理者

の適切な評価や困った時の助け」や 看護 ・介護職者間での助け合い」があることが重要であ

ることが示唆された。

提言

以上の知見より、医療療養型病床におけるケアの質を改善する上での提言を最後にまとめた。

看護・介護職者の身体的不調を改善する取り組み

看護・介護職者のやりがいを高めるためのアプローチ

高齢者の自立度を維持・回復するためのケアやレクレーション活動の促進

ケアの質 アウトカム・プロセス)の維持 ・向上を図るためにも、看護 ・介護職者のバーンア

ウトを予防し、ワークエンゲージメントを高めるための取り組み

看護・介護職者のバーンアウトとワークエンゲージメントの改善には、病棟の看護管理者か

らの支援や職場の人間関係が重要

今回の調査結果が、医療療養型病床に入院する高齢者とその家族及び、彼らに質の高いケアを

提供するために日々奮闘している看護・介護職者のWell-being 向上の一助となることを願う。

最後に、本調査にご協力いただきました皆様に心より感謝申し上げます。

平成28年 10 月

研究代表者 山本 則子 東京大学大学院)

Page 6: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

5

調査結果 基本集計)

<回収結果>

病棟の看護管理者票は 268 施設のうち、発送数は 268 件で回収数は 257 件で、回収率は

95.9%だった。 病棟の看護職者票は 268施設のうち、発送数は 3,951 件で回収数は 3,279

件、回収率は 83.0%だった。 病棟の介護職者票は 268施設のうち、発送数は 268件で回収

率は 252件で、回収率は 94.0%だった。

<回答者の属性>

1.性別

2.年齢

発送施設数 発送数 回収数 回収率)

病棟の看護管理者 268件 268件  257件 95.7%)

病棟の看護職者 268件 3,951件 3,279件 83.0%)

病棟の介護職者 268件 268件  252件 94.0%)

2.3

5.8

19.0

97.3

94.1

81.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

性別

管理者 n =257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

男 女 無回答

平均年齢 歳) 標準偏差

52.1 7.0

44.2 11.0

44.8 9.6

年齢

管理者 n = 257)

看護職者 n = 3279)

介護職者 n = 252)

Page 7: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

6

3.勤務経験年数

平均値 年) 標準偏差

27.9 7.9

3.0 3.8

8.8 7.5

病棟の看護管理者 n = 257)

看護職としての通算勤務年数

現在の病棟での看護師長 又は代理)としての勤務年数

看護管理者 副看護師長以上)としての勤務年数

平均値 年) 標準偏差

18.0 11.1

9.3 9.0

3.8 4.8

看護職者 n = 3279)

現在の病院での勤務年数

現在の病棟での勤務年数

看護職としての通算勤務年数

平均値 年) 標準偏差

13.0 5.0

11.0 6.1

6.2 4.8

介護職者 n = 252)

介護職としての通算勤務年数

現在の病院での勤務年数

現在の病棟での勤務年数

Page 8: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

7

<回答施設の概要>

病棟の看護管理者に、施設属性について尋ねた。

下記のグラフは横軸に全体に対する割合 %)を示す。

1)病院全体の病床数

病院全体の病床数は、 150症以上~200床未満」が 27.6%、 100床以上~150床未満」

が 26.1%、 50床以上~100床未満」が 23.3%であった。病院全体の平均病床数は、162.0

±92.4 床であった。

2)設置主体

設置主体は、 医療法人」が 68.5%で最も多く、次いで その他の法人」が 14.3%、

市町村」が 7.0%だった。

度数 最小値 最大値 平均値 標準 偏差

病院全体の病床数 (床) 257 30 700 162.0 92.4

2.7

23.3

26.1

27.6

7.0

3.9

7.0

1.6

0.8

0 5 10 15 20 25 30

30床以上~50床未満

50床以上~100床未満

100床以上~150床未満

150床以上~200床未満

200床以上~250床未満

250床以上~300床未満

300床以上~400床未満

400床以上~500床未満

500床以上

病院全体の病床数 n = 257%

7.0

68.5

4.7

4.7

14.3

0.8

0 10 20 30 40 50 60 70 80

市町村

医療法人

公益法人

社会福祉法人

その他の法人

無回答

設置主体 n = 257%

Page 9: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

8

3) 療養病棟以外の病棟 複数回答)

療養病棟以外の病棟は、 一般病棟」を有している施設が 63.8%、 回復期リハビリテー

ション病棟」を有する施設が 26.1%、 地域包括ケア病棟」を有する施設が 20.2%であった。

4)併設事業所 複数回答)

併設事業所は、 居宅介護支援事業所」を有する施設が 43.6%、 訪問看護ステーション」

を有する施設が 39.3%、 老人保健施設」を有する施設が 31.9%であった。

9.7

31.9

19.8

39.3

43.6

19.5

24.9

0 10 20 30 40 50

特別養護老人ホーム

老人保健施設

介護療養病床

訪問看護ステーション

居宅介護支援事業所

その他

無回答

併設事業所 複数回答) n = 257%

63.8

26.1

20.2

2.7

16.7

16.7

0 10 20 30 40 50 60 70

一般

回復期リハビリテーション

地域包括ケア

精神

その他

無回答

療養病棟以外の病棟 複数回答) n = 257 %

Page 10: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

9

5)当該病棟の病床数

当該病棟は、 40 床以上~50 床未満」が 35.8%、 50 床以上~60 床未満」が 30.4%、

30 床以上~40 床未満」が 18.7%であった。当該病棟の平均病床数は、46.6±9.9 床であ

った。

6)病棟の看護体制

看護体制は、 2交代制」が 78.2%、 3交代制」が 16.3%であった。

2.3

18.7

35.8

30.4

12.1

0.8

0 5 10 15 20 25 30 35 40

20床以上~30床未満

30床以上~40床未満

40床以上~50床未満

50床以上~60床未満

60床以上~70床未満

70床以上

当該病棟の病床数 n = 257

度数 最小値 最大値 平均値 標準偏差

当該病棟の病床数 257 21 96 46.6 9.9

78.2

16.3

1.6

3.9

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

2交代制

3交代制

その他

無回答

病棟の看護体制 n = 257%

Page 11: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

10

7)調査時の病棟の入院患者について

病棟の看護管理者に、調査時における設問の状態に当てはまる患者数を尋ね、その各病棟

に占める割合を算出した。下記のグラフは横軸に病棟件数 件)を示す。

1)体のどこかに痛みを訴える人と、痛みがあると思われる人の割合は、 0以上~10%未

満」が 107件、 10%以上~20%未満」が67件であった。

2)身体拘束中の人の割合は、 0以上~10%未満」が 62 件、 10%以上~20%未満」が

65件であった。

3)人工呼吸器を使用している人の割合は、 0%」が 199 件、 1%以上~5%未満」が

25 件であった。

199

25

18

8

1

1

5

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~50%未満

50%以上

無回答

人工呼吸器を使用している人 n = 257件

107

67

26

19

4

24

10

0 20 40 60 80 100 120

0以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上~40%未満

40%以上~50%未満

50%以上

無回答

痛みを訴える人と痛みがあると思われる人 n = 257件

62

65

49

33

26

15

7

0 10 20 30 40 50 60 70

0以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上~40%未満

40%以上~50%未満

50%以上

無回答

身体拘束中の人 n = 257件

Page 12: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

11

4)中心静脈栄養を行っている人の割合は、 0%」が 82件、 20%以上~50%未満」が 45

件であった。

5)疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍のある人の割合は、 0%」が170 件、 1%以上~

5%未満」が 54件であった。

6)調査時、肺炎と診断され治療中の人の割合は、 0%」が 92件、 1%以上~5%未満」

が 79件であった。

82

37

38

39

45

10

6

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~50%未満

50%以上

無回答

中心静脈栄養を行っている人 n = 257件

170

54

20

6

2

1

4

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍のある人 n = 257

92

79

49

30

2

2

3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

調査時、肺炎と診断され治療中の人 n = 257

Page 13: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

12

7)調査時、尿路感染症と診断され治療中の人の割合は、 0%」が 132件、 1%以上~5%

未満」が 78件であった。

8)褥瘡 Ⅱ度以上)を有する人の割合は、 5%以上~10%未満」が 75件、 1%以上~5%

未満」が 66件であった。

9)せん妄の兆候のある人の割合は、 0%」が 114件、 1%以上~5%未満」が 65件であ

った。

132

78

36

7

1

0

3

0 20 40 60 80 100 120 140

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

調査時、尿路感染症と診断され治療中の人 n = 257件

50

66

75

54

7

1

4

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

褥瘡を有する人 Ⅱ度以上) n = 257件

114

65

37

22

5

7

7

0 20 40 60 80 100 120

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

せん妄の兆候のある人 n = 257件

Page 14: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

13

10)うつ状態の人の割合は、 0%」が 131件、 1%以上~5%未満」が 61件であった。

9)透析をしている人の割合は、 0%」が 184件、 10%以上~20%未満」が 21件であっ

た。

(10) 尿道カテーテル類を留置している人の割合は、 10%以上~20%未満」が 85件、 20%

以上~40%未満」が 85件であった。

131

61

33

11

9

5

7

0 20 40 60 80 100 120 140

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上

無回答

うつ状態の人 n = 257件

184

19

21

13

7

8

5

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0%

1%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~40%未満

40%以上~60%未満

60%以上

無回答

透析をしている人 n = 257

16

44

85

85

21

2

4

0 20 40 60 80 100

0%

1%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~40%未満

40%以上~60%未満

60%以上

無回答

尿道カテーテル類を留置している人 n = 257

Page 15: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

14

11)認知機能障害加算を算定している人の割合は、 0%」が 229件であった。

(12) 徘徊のある人の割合は、 0%」が 171件、 1%以上~5%未満」が 55件であった。

(13) 経管栄養 経鼻・PEG)を行っている人の割合は、 50%以上~70%未満」が 59件、

30%以上~40%未満」が 46件であった。

229

5

3

2

0

1

17

0 40 80 120 160 200 240 280

0%

1%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~40%未満

40%以上~60%未満

60%以上

無回答

認知機能障害加算を算定している人 n = 257

171

55

19

4

1

7

0 40 80 120 160 200

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上

無回答

徘徊のある人 n = 257

23

33

40

46

30

59

19

7

0 10 20 30 40 50 60 70

0以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~30%未満

30%以上~40%未満

40%以上~50%未満

50%以上~70%未満

70%以上

無回答

経管栄養 経鼻・PEG)を行っている人 n = 257件

Page 16: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

15

8)調査時より過去 1ヶ月間の病棟の入院患者

1)病床あたりの褥瘡 Ⅱ度以上)が新たに発生した人は、 0%」が 178 件、 1%以上~

5%未満」が 59件であった。

2)病床あたりの転倒転落した人は、 0%」が108 件、 1%以上~5%未満」が 66件、 5%

以上~10%未満」が 58件であった。

3)病床あたりの転倒 ・転落の件数は、 0%」が 110件、 1%以上~5%未満」61件、 5%

以上~10%未満」49件であった。

178

59

13

2

2

3

0 40 80 120 160 200

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上

無回答

褥瘡 Ⅱ度以上)の新規発生 n = 257件

108

66

58

17

5

3

0 20 40 60 80 100 120

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上

無回答

転倒・転落した人 n = 257件

110

61

49

25

9

3

0 20 40 60 80 100 120

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上

無回答

転倒・転落の件数 n = 257件

Page 17: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

16

4)経管栄養のみの栄養摂取から経口摂取 食事、おやつ等)を開始した人は、 0%」が

190件、 1%以上~5%未満」が 45件であった。

5)入院時、床上排泄だった人の中でトイレ ポータブルトイレ含む)での排泄を試みてい

る人は、 0%」が 130件、 1%以上~5%未満」が 74件であった。

6)自宅 ・入居系施設へ退院した人は、 0%」が 69件、 1%以上~5%未満」が 104件、

10%以上~20%未満」が 36件であった。

190

45

16

1

5

0 40 80 120 160 200

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

無回答

経管栄養のみの栄養摂取から経口摂取を開始した人 n =257件

130

74

25

14

8

6

0 20 40 60 80 100 120 140

0%

1%以上~5%未満

5%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上

無回答

床上排泄だった人の中でトイレでの排泄を試みている人 n = 257

69

104

36

30

5

2

11

0 20 40 60 80 100 120

0%

1%以上~10%未満

10%以上~20%未満

20%以上~40%未満

40%以上~60%未満

60%以上

無回答

自宅・入居系施設へ退院した人 n = 257件

Page 18: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

17

7)院内・病棟内で開催されたレクレーションは、 1回以上~5回未満」が 53.3%、

0回」が 31.9%であった。

31.9

53.3

5.4

3.9

2.7

1.2

1.6

0 10 20 30 40 50 60

0回

1回以上~5回未満

5回以上~10回未満

10回以上~20回未満

20回以上~30回未満

30回以上

無回答

院内・病棟内で開催されたレクレーション n = 257

Page 19: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

18

Ⅰ.病棟の看護職者について

1.看護職者の看護系の最終学歴

看護職者の看護系の最終学歴は、 3年制看護師専門学校」が 36.2%、 2年制准看護師学

校」が 27.2%、 准看護師後専門学校又は短期大学」が 18.3%であった。

2.身体症状の程度

調査時において過去 1 週間の身体症状の程度を尋ねた。 背中、または腰の痛み」は、 悩

まされている わずかに悩まされている~とても悩まされている)」が 82.4%であった。 疲

れている、または元気がない」は、 悩まされている わずかに悩まされている~とても悩ま

されている)」が 84.6%であった。

27.2

18.3

5.5

36.2

2.7

1.7

7.3

1.2

0 10 20 30 40

2年制准看護師学校

准看護師後専門学校又は短期大学

高等学校 衛生看護科)

3年制看護師専門学校

3年制短期大学

4年制大学以上

その他

無回答

看護系の最終学歴 看護職者) n = 3279%

41.4

15.9

28.9

37.7

66.7

61.9

13.6

36.4

23.2

18.7

19.5

22.2

17.3

18.5

23.8

21.7

24.9

32.1

27.0

21.7

9.5

10.6

29.8

20.3

5.7

20.8

14.5

10.7

2.6

3.8

19.6

10.6

2.5

10.8

8.1

4.7

11.4

7.5

0 20 40 60 80 100

胃腸の不調

背中、または腰の痛み

腕・脚 あし)、または関節の痛み

頭痛

胸の痛み、または息切れ

めまい

疲れている、または元気がでない

睡眠に支障がある

過去1週間の身体状況の程度 看護職者) n = 3279

全然悩まされていない わずかに悩まされている 少し悩まされている

かなり悩まされている とても悩まされている 無回答

Page 20: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

19

3.現在の職場の選択理由

現在の職場の選択理由について尋ねた。 通勤が便利」であることが 54.1%、 職場の雰囲

気がよい」ことが 21.6%、 患者とゆっくり関わりたい」ことが 18.3%、 老年看護への興

味」が 18.0%であった。

4.院内・院外勉強会・研修会への参加回数

調査時において過去 3ヶ月間の院内勉強会・研修会への平均参加回数は 2.6 回、院外勉強

会・研修会への平均参加回数は 0.8回であった。

5.病棟の看護管理者の適切な評価

病棟の看護管理者は適切に評価してくれるかを尋ねた。 はい」が 73.7%であった。

6.病棟の看護管理者の助け

病棟の看護管理者は困った時に助けとなってくれるか尋ねた。 はい」が76.7%であった。

18.0

18.3

5.6

21.6

13.1

12.4

54.1

8.9

8.8

17.1

11.1

4.2

0 10 20 30 40 50 60

老年看護への興味

患者とゆっくり関わりたい

教育体制が整っている(資格取得支援含む)

職場の雰囲気がよい

働き続ける環境が整っている(託児所/職員寮がある等)

福利厚生が整っている (育児・介護休暇含む)

通勤が便利

給料がいい

身分が保証される

近隣に他に働ける病院/施設がない

その他

無回答

職場の選択理由:複数回答 看護職者) n = 3279

20.6 73.7 5.7

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

看護職者) n = 3279

いいえ はい 無回答

19.0 76.7

4.3

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

看護職者) n = 3279

いいえ はい 無回答

Page 21: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

20

Ⅱ.病棟の介護職者について

1.介護職者の医療/福祉分野の保有資格 複数回答)

介護職者の介護系の保有資格は、 介護福祉士」が 78.6%であった。

2.身体症状の程度

調査時過去 1 週間の身体症状の程度を尋ねた。 背中、または腰の痛み」は、 悩まされて

いる わずかに悩まされている~とても悩まされている)」が 83.7%であった。 疲れている、

または元気がない」は、 悩まされている わずかに悩まされている~とても悩まされている)」

が 85.7%であった。

44.0

14.7

22.2

40.9

69.4

70.6

13.1

35.3

25.0

17.5

24.6

27.0

17.9

13.9

29.0

24.6

20.2

26.2

25.4

19.0

9.1

9.5

31.3

21.0

7.9

19.8

16.7

6.0

2.4

3.6

14.3

10.3

1.2

20.2

9.5

5.6

0.0

0.8

11.1

7.1

0 20 40 60 80 100

胃腸の不調

背中、または腰の痛み

腕・脚 あし)、または関節の痛み

頭痛

胸の痛み、または息切れ

めまい

疲れている、または元気がでない

睡眠に支障がある

過去1週間の身体状況の程度 介護職者) n = 252

全然悩まされていない わずかに悩まされている 少し悩まされている

かなり悩まされている とても悩まされている 無回答

Page 22: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

21

3.現在の職場の選択理由

現在の職場の選択理由について尋ねた。 通勤が便利」が 61.1%、 老年介護への興味」

37.3%、 福利厚生が整っている 育児/介護休暇含む)」が 22.6%であった。

4.院内勉強会・研修会への参加回数

調査時より過去 3ヶ月間の院内勉強会・研修会への平均参加回数は 2.5 回、院外勉強会・

研修会への平均参加回数は 0.6 回であった。

5.病棟の看護管理者の適切な評価

病棟の看護管理者は適切に評価してくれるかを尋ねた。 はい」が 85.3%であった。

6.病棟の看護管理者の助け

病棟の看護管理者は困った時に助けとなってくれるかは、 はい」が 84.1%であった。

37.3

13.1

4.8

20.2

10.3

22.6

61.1

11.5

16.7

5.6

4.8

2.4

0 10 20 30 40 50 60 70

老年介護への興味

患者とゆっくり関わりたい

教育体制が整っている(資格取得支援含む)

職場の雰囲気がよい

働き続ける環境が整っている(託児所/職員寮がある等)

福利厚生が整っている(育児・介護休暇含む)

通勤が便利

給料がいい

身分が保証される

近隣に他に働ける病院/施設がない

その他

無回答

職場の選択理由:複数回答 介護職者) n = 252

12.7 85.3

2.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

(介護職者) n = 252

いいえ はい 無回答

13.5 84.1

2.4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

介護職者) n = 252

いいえ はい 無回答

Page 23: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

22

Ⅲ.腰痛・メンタルヘルス(個票データより)

ここでは、看護・介護職者に腰痛及び、メンタルヘルス バーンアウトとワークエンゲー

ジメント)について尋ねた。各職種の評価を比較しながら報告する。

1.腰痛の有無と程度

調査時における過去 1ヶ月間の腰痛の有無と程度を尋ねた。 腰痛を伴うことはあったが、

仕事に支障をきたすことはなかった」は、看護職者が 60.8%、介護職者が 57.1%であった。

2.バーンアウト

バーンアウトとは、極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群であり、医療・福祉等のヒ

ューマンサービスに従事する者に多発するとされている。バーンアウトは、情緒的消耗・脱

人格化・個人的達成感の減退の3つの症状から定義される。

・情緒的消耗:心理的な要素が中心になって生じる疲労感、虚脱感

・脱人格化:対象者の人格に敬意を払わず人を物として扱うような態度

・個人的達成感の減退:仕事に対する達成感が低下した状態

本調査における、看護・介護職者のバーンアウトの平均得点は以下の通りである。

*バーンアウトの各項目の得点が高いほど、バーンアウトの高リスク状態であると評価する。

平均値 標準偏差 平均値 標準偏差

1~5 3.1 1.0 2.9 1.0

1~5 2.1 0.8 1.9 0.8

1~5 3.8 0.7 3.3 0.7

看護職者 n = 3279) 介護職者 n = 252)範囲

情緒的消耗 平均)

脱人格化 平均)

個人的達成感の減退 平均)

18.6

60.8

14.7

2.4

3.4

18.7

57.1

18.3

2.4

3.6

0 10 20 30 40 50 60 70

腰痛を伴うことはなかった

腰痛を伴うことはあったが、仕事に支障をきたすことはなかった

腰痛のため仕事に支障をきたしたこともあったが、欠勤(休職)はなかった

腰痛のため、欠勤 休職)をしたことがある

無回答

過去1ヶ月間の腰痛の有無と程度

看護職 n = 3279・介護職 n = 252)

看護 介護

Page 24: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

23

1)バーンアウトの程度

・看護職者に、調査時における過去 6か月間に以下のことをどの程度経験したかを尋ねた。

16.9

37.8

11.6

19.6

38.0

38.2

3.5

17.7

22.8

41.2

55.1

14.1

22.2

51.2

52.3

6.3

19.9

23.3

28.5

31.4

25.2

31.7

28.4

13.7

26.1

35.3

31.7

24.6

27.4

36.3

26.6

28.4

21.3

39.5

25.6

21.7

33.1

33.4

17.6

18.1

19.5

22.0

30.8

16.8

13.2

25.1

29.8

14.5

13.5

27.7

31.6

19.1

8.9

16.4

15.0

8.6

10.0

25.4

19.3

8.8

6.9

4.2

19.4

8.8

4.6

3.6

26.4

7.0

14.4

2.0

7.0

5.9

3.4

4.6

37.3

14.3

1.4

2.7

2.0

13.3

2.2

2.1

1.2

17.4

1.3

0 20 40 60 80 100

1)こんな仕事,もうやめた」と思うことがある

2)我を忘れるほど仕事に熱中することがある

3)こまごまと気配りをすることが面倒に感じることがある

4)この仕事は私の性分に合っていると思うことがある

5)同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある

6)自分の仕事がつまらなく思えて仕方のないことがある

7)一日の仕事が終わると やっと終わった」と感じることがある

8)出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある

9)仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある

10)同僚や患者と、何も話したくなくなることがある

11)仕事の結果はどうでもよいと思うことがある

12)仕事のために心にゆとりがなくなったと感じる

13)今の仕事に、心から喜びを感じることがある

14)今の仕事に、私にとってあまり意味がないと思うことがある

15)仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある

16)体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある

17)我ながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある

調査時点における過去6ヶ月の間に以下のことをどの程度経験しましたか?

看護職者 n = 3279)

ない まれにある 時々ある しばしばある いつもある 無回答

Page 25: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

24

・介護職者に、調査時における過去 6か月間に以下のことをどの程度経験したかを尋ねた。

25.4

27.0

21.4

6.7

40.1

46.8

2.8

28.6

10.3

43.3

63.9

13.1

11.5

68.7

38.1

7.9

6.3

26.6

27.0

32.5

17.5

34.5

29.8

19.8

25.4

29.0

32.1

20.6

31.7

26.6

18.7

28.2

26.6

28.6

23.4

26.6

25.0

34.9

13.5

11.1

24.2

21.8

42.5

15.1

10.3

24.2

38.1

7.1

22.6

23.4

44.4

13.5

14.3

13.9

27.0

7.1

8.3

23.8

13.1

14.7

6.0

2.0

18.3

19.4

1.2

7.1

27.8

17.5

9.5

3.6

5.6

12.3

2.8

2.4

28.2

9.5

2.4

2.4

1.6

11.1

2.8

2.4

2.8

13.1

2.0

0 20 40 60 80 100

1)こんな仕事,もうやめた」と思うことがある

2)我を忘れるほど仕事に熱中することがある

3)こまごまと気配りをすることが面倒に感じることがある

4)この仕事は私の性分に合っていると思うことがある

5)同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある

6)自分の仕事がつまらなく思えて仕方のないことがある

7)一日の仕事が終わると やっと終わった」と感じることがある

8)出勤前、職場に出るのが嫌になって、家にいたいと思うことがある

9)仕事を終えて、今日は気持ちのよい日だったと思うことがある

10)同僚や患者と、何も話したくなくなることがある

11)仕事の結果はどうでもよいと思うことがある

12)仕事のために心にゆとりがなくなったと感じる

13)今の仕事に、心から喜びを感じることがある

14)今の仕事に、私にとってあまり意味がないと思うことがある

15)仕事が楽しくて、知らないうちに時間がすぎることがある

16)体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある

17)我ながら、仕事をうまくやり終えたと思うことがある

調査時点における過去6ヶ月の間に以下のことをどの程度経験しましたか?

介護職者 n = 252)

ない まれにある 時々ある しばしばある いつもある 無回答

Page 26: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

25

3.ワークエンゲージメントの程度

ワークエンゲージメントとは、仕事に関するポジティブで充実した心理状態と定義される。

近年、ワークエンゲージメントは、バーンアウトの対概念として職場のメンタルヘルス対策

において注目されている。本調査における、看護・介護職者のワークエンゲージメントの平

均点は以下の通りである。*得点が高いほど、イキイキと働いている状態であると評価する。

看護・介護職者の回答を、以下それぞれにまとめた。

15.3

14.4

5.6

11.3

18.4

22.1

6.3 18.5

15.8

20.6

17.0

7.7

13.9

17.3

21.5

11.6

19.0

15.8

27.0

25.1

14.2

20.8

21.0

24.0

15.3

24.7

22.7

21.7

24.0

28.0

28.1

20.2

17.8

30.2

19.8

23.1

6.5 8.2

14.7

10.5

8.8

6.6

12.2

7.6

9.6

6.2

7.7

16.6

10.2

8.6

5.3 12.4

6.7

7.9

1.4

2.3 12.0

3.9

4.6

1.4 10.7

2.3

3.8 0 20 40 60 80 100

1)仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる

2)職場では、元気が出て精力的になるように感じる

3)仕事に熱心である

4)仕事は、私に活力を与えてくれる

5)朝に目が覚めると、さあ仕事へ行こう、という気持ちになる

6)仕事に没頭しているとき、幸せだと感じる

7)自分の仕事に誇りを感じる

8)私は仕事にのめり込んでいる

9)仕事をしていると、つい夢中になってしまう

仕事についてどのように感じていますか?

看護職者 n = 3279)

全くない ほとんど感じない めったに感じない 時々感じる よく感じる とてもよく感じる いつも感じる 無回答

7.5

6.0

1.6

6.0

8.7

10.3

2.4 8.3

5.2

10.7

11.5

3.6

6.0

9.5

13.5

8.3

8.7

7.9

29.4

26.6

5.2

20.6

26.2

30.6

10.7

27.0

21.0

29.8

25.8

32.1

33.7

22.6

24.6

28.2

28.6

31.7

7.5 10.3

19.4

11.9

11.9

10.3

17.1

10.3

12.7

10.3

14.7

21.8

14.3

13.1

6.7 14.3

12.3

14.7

3.2

3.6 14.3

6.0

6.3

2.4 17.1

3.2

4.8 0 20 40 60 80 100

1)仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる

2)職場では、元気が出て精力的になるように感じる

3)仕事に熱心である

4)仕事は、私に活力を与えてくれる

5)朝に目が覚めると、さあ仕事へ行こう、という気持ちになる

6)仕事に没頭しているとき、幸せだと感じる

7)自分の仕事に誇りを感じる

8)私は仕事にのめり込んでいる

9)仕事をしていると、つい夢中になってしまう

仕事についてどのように感じていますか?

介護職者 n = 252)

全くない ほとんど感じない めったに感じない 時々感じる よく感じる とてもよく感じる いつも感じる 無回答

%%

Page 27: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

26

Ⅳ.痛みのケア(個票データより)

ここでは、看護・介護職者に痛みのある 痛みのあると思われる)患者及び痛みのケアの

実施について尋ねた。

1.痛みのある 痛みのあると思われる)患者について

1)病棟の看護職者の評価による痛みのある患者割合

2)病棟の介護職者の評価による痛みのある患者割合

平均値 標準偏差

看護職者 n = 3279

28.0

48.0

30.0

33.3

体のどこかに痛みを訴える人と、痛みがあると思

われる人の割合 %)

慢性的な 1ヶ月以上続く)痛みの訴えのある人

と、痛みがあると思われる人の割合 %)

調査日の勤務病棟の入院患者のうち、痛みがある

かどうかわからない人の割合 %)

33.3 31.2

平均値 標準偏差

慢性的な 1ヶ月以上続く)痛みの訴えのある人

と、痛みがあると思われる人の割合 %)44.6 34.1

調査日の勤務病棟の入院患者のうち、痛みがある

かどうかわからない人の割合 %)42.8 31.2

介護職者 n = 252

体のどこかに痛みを訴える人と、痛みがあると思

われる人の割合 %)51.9 34.2

Page 28: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

27

2.痛みのケアの実施

病棟の看護職者には、 痛みの発見」 痛みのアセスメント」 薬物療法の適用」 副作用の

観察」 教育 ・心理的支援」 その他のケア」 組織的アプローチ」について尋ねた。病棟の介

護職者には、 痛みの発見」 痛みのアセスメント」 日々のケア」について尋ねた。

1)病棟の看護職者の評価による痛みのケアの実施

合計 行っていない 行った 無回答

3279 1363 1784 132

100.0 41.6 54.4 4.0

3279 1676 1469 134

100.0 51.1 44.8 4.1

3279 2525 621 133

100.0 77.0 18.9 4.1

3279 2002 1130 147

100.0 61.1 34.5 4.5

3279 2761 387 131

100.0 84.2 11.8 4.0

3279 2362 777 140

100.0 72.0 23.7 4.3

3279 2191 942 146

100.0 66.8 28.7 4.5

3279 1477 1660 142

100.0 45.0 50.6 4.3

3279 1999 1127 153

100.0 61.0 34.4 4.7

3279 1132 1998 149

100.0 34.5 60.9 4.5

3279 1717 1390 172

100.0 52.4 42.4 5.2

3279 1688 1420 171

100.0 51.5 43.3 5.2

3279 1876 1240 163

100.0 57.2 37.8 5.0

3279 1778 1341 160

100.0 54.2 40.9 4.9

3279 1906 1184 189

100.0 58.1 36.1 5.8

3279 2308 802 169

100.0 70.4 24.5 5.2

3279 1755 1383 141

100.0 53.5 42.2 4.3

3279 2251 872 156

100.0 68.6 26.6 4.8

正しく診断され、適切に治療されるようになったら、いつまでも痛みの強さや症状

に焦点を当て続けない。

代替療法 漢方やマッサージ、鍼灸など)を行う場合には、ケア提供者側に知らせ

てほしいことを高齢者や家族に説明する。

疼痛管理 痛みへのケア等)は、多職種が協働で行う。

痛みのある高齢者へは、適切な専門家を紹介し効果的な治療が受けられるように調

整する。

16

17

18

15

NSAIDs 非ステロイド性消炎鎮痛剤)を高齢者に用いる場合、消化器症状や腎障

害、高血圧、心不全、薬と疾患又は薬と薬による相互作用の有無を定期的にアセス

メントする。

コミュニケーションが中程度から重度障害のある高齢者の痛みについては、適切な

尺度(痛みの観察尺度など)を使ったり、痛みについて知識や技術のある者にき

く。

高齢者やその家族・後見人には、痛みのアセスメントや疼痛管理の方法について説

明し、協力が得られるようにする。

13

14

12高齢者の慢性痛への薬物療法を考える際には、アセトアミノフェン 例:カロナー

ル)を第一選択薬として検討する。

コミュニケーションが可能で、神経障害性疼痛の可能性のある高齢者には、神経障

害性疼痛をスクリーニングするための尺度の使用を検討する。

痛みの強さについてアセスメントする場合、高齢者の認知機能や言語、感覚機能、

それぞれの好みなど、個別性に合わせた方法を選ぶとともに、信頼性・妥当性のあ

る尺度(数字評価尺度:NRSなど)を用いる。

尺度(フェイススケールなど)を用いる場合は、その人の身体機能 視覚や聴力な

ど)を考慮して用いる。例えば、大きな字で示し、明るい光の下で用いる、など

集中できる時間に制限があったり、認知機能低下がある高齢者の場合は、回答まで

に十分な時間をかけるとともに、質問を繰り返し伝える。

9

10 慢性的な痛みがある場合は、以下の要因を継続的に考慮する。

11その人にとって、痛みを軽減するのに効果があった疼痛緩和の治療法や方法(民間

療法、補完・代替療法を含む)についても、アセスメントする。

看護職者 n = 3279

3障害や痛みなどにより、痛む部位を直接指し示せない場合には、体の絵がかかれた

図などを用いる。

4

痛みのアセスメントを包括的に行うには、まず、生物学上の痛みのタイプについて

検討し、次に痛みに影響したり関係しそうな事柄や治療への支障(治療への捉え方

や問題点等)などについて情報収集する。

1入所時や、定期的なアセスメントの時、高齢者の状態に変化があったときには、痛

みのアセスメントを行う。

2 痛みの強さが弱い場合でも、痛みへのアセスメントを行う。

5

6

7

8

Page 29: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

28

2)病棟の介護職者の評価による痛みのケアの実施

合計 行っていない 行った 無回答

252 33 204 15

100.0 13.1 81.0 6.0

252 20 218 14

100.0 7.9 86.5 5.6

252 111 125 16

100.0 44.0 49.6 6.3

252 59 176 17

100.0 23.4 69.8 6.7

252 30 208 14

100.0 11.9 82.5 5.6

252 23 215 14

100.0 9.1 85.3 5.6

252 91 143 18

100.0 36.1 56.7 7.1

252 121 112 19

100.0 48.0 44.4 7.5

252 206 30 16

100.0 81.7 11.9 6.3

252 165 67 20

100.0 65.5 26.6 7.9

252 201 32 19

100.0 79.8 12.7 7.5

252 196 38 18

100.0 77.8 15.1 7.1

252 170 63 19

100.0 67.5 25.0 7.5

252 93 138 21

100.0 36.9 54.8 8.3

252 101 131 20

100.0 40.1 52.0 7.9

252 68 165 19

100.0 27.0 65.5 7.5

252 149 82 21

100.0 59.1 32.5 8.3

252 58 177 17

100.0 23.0 70.2 6.7

252 11 225 16

100.0 4.4 89.3 6.3

252 47 188 17

100.0 18.7 74.6 6.7

252 61 172 19

100.0 24.2 68.3 7.5

介護職者 n = 252

高齢者に痛みがあるかどうかを見つけるために、①高齢者の痛みの訴えを聴く、

②高齢者の様子の観察という2つのアプローチを用いる。

高齢者に、痛みによって引き起こされる行動や反応などの『痛みのサイン(顔をし

かめる、さする、足を引きずるなど)』がないか観察する。

入所時や、定期的なアセスメントの時、高齢者の状態に変化(行動・日常生活・精

神状態などの変化)があったときには、痛みのアセスメントを行う。

高齢者は痛みについて様々な表現をつかう可能性があり、そのことを考慮する。

(例えば、焼け付くような感じ、重苦しい、しめつけられるなど)。

7

1

2

3

4

5

13

14

15

16

高齢者は、様々な理由で痛みを自分から訴えてこない可能性があるため、痛みに

ついて直接尋ねてみる。

認知機能低下があっても、まずは本人に直接痛みがあるかどうか聞いてみること

が大切であるため、今痛みがあるかどうかを本人に聞いてみる。6

8

9

10

痛みの強さが弱い場合でも、痛みへのアセスメントを行う。

障害や痛み 触ることにより痛みが増加する場合等)などにより、痛む部位を直

接指し示せない場合には、体の絵がかかれた図などを用いる。

痛みのアセスメントを包括的に行うには、まず、生物学上の痛みのタイプについ

て検討し、次に痛みに影響したり関係しそうな事柄や治療への支障などについて

情報収集する。

11

12

コミュニケーションが可能で、神経障害性疼痛の可能性のある高齢者には、神経

障害性疼痛をスクリーニングするための尺度の使用を検討する。

痛みの強さについてアセスメントする場合、高齢者の認知機能や言語、感覚機能

視力,聴力など),それぞれの好みなど、個別性に合わせた方法を選ぶととも

に、信頼性・妥当性のある尺度(数字評価尺度:NRSなど)を用いる。

尺度(フェイススケールなど)を用いる場合は、その人の身体機能 視覚や聴力な

ど)を考慮して用いる。例えば、大きな字で示し、明るい光の下で用いる、など

集中できる時間に制限があったり、認知機能低下がある高齢者の場合は、回答ま

でに十分な時間をかけるとともに、質問を繰り返し伝える。

コミュニケーションが中程度から重度障害のある高齢者の痛みについては、適切

な尺度(痛みの観察尺度など)を使ったり、痛みについて知識や技術のある者にき

く。

慢性的な痛みがある場合は、以下の要因を継続的に考慮する。・現在の痛みの強

さや性質、部位、動作時・安静時痛など・痛みによる日常生活動作(ADL)、睡

眠、気分、食事、人間関係などへの影響

17

18

19

20

21

高齢者の痛みの訴えを初めてアセスメントする際は、以下のことを踏まえる。痛

みの性質(例えば、痛みの強さ、質、頻度・パターンなど)、部位、期間、痛みを

引き起こしたり、軽減させたりすること、痛みによる生活への支障(辛さや悪影

その人にとって、痛みを軽減するのに効果があった疼痛緩和の治療法や方法(民間

療法,補完・代替療法を含む)についても、アセスメントする。

<コミュニケーションが可能な場合>高齢者自身が自分の健康状態をどのように

感じているかや心配事などについても尋ねる。

痛みへの第一の防衛策として、痛みの発生を予防する。例えば、高齢者を介護す

る際に適切な注意を払うことにより、骨折、表皮剥離等の痛みが起こりやすい状

態発生を防止する。

慢性的な痛みがある場合の第一の目標は、痛みを緩和するのと同時に、機能面で

の向上(いろいろな活動への参加、認知・心理・睡眠等の向上等)についても考慮

する。

安静にしたり体の一部を使わないようにすることは一般的な慢性痛ケアとして推

奨できない。高齢者へは痛みへの不安を軽減し、体を動かすことの重要性を理解

できるよう支援する。

Page 30: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

29

Ⅴ.病棟のケアの質:プロセス評価(個票データより)

ここでは、病棟の看護管理者及び看護・介護職者にケアの質について尋ねた。各職種の評

価を比較しながら報告する。

1)病棟では、 患者に十分な清潔ケアができている」かを尋ねた。

2)病棟では、 患者の状態に合わせた適切な食事へのケアができている」かを尋ねた。

*病棟の看護管理者、看護・介護職者が あてはまる」と評価した項目

・ケアのための人手が十分ではない

・看護・介護職者の離職のためにスタッフ全体に負担がかかる

*病棟の看護管理者と看護・介護職者が、 できている又はあてはまる」と評価した項目

・患者に十分な清潔ケアができている

・患者の状態に合わせた適切な食事へのケアができている

*病棟の看護管理者と看護・介護職者が、 できていない又はあてはまらない」と評価した項目

・患者に十分なレクレーションを提供している

・高齢者に多い合併症予防が十分にできている

・患者の自立度を維持・回復するための支援ができている

・スタッフは現在の仕事にやりがいを感じている

・他の職種や管理部門は、看護・介護職者が抱える負担に理解を持っている

1.2

3.8

1.6

19.5

29.0

18.3

56.8

51.2

50.0

21.0

14.9

26.6

1.6

1.1

3.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者に十分な清潔ケアができている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.0

2.2

0.8

12.1

19.3

13.5

56.0

57.1

52.4

29.6

20.2

30.2

2.3

1.2

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者の状態に合わせた適切な食事へのケアができている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 31: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

30

3)病棟では、 患者に十分なレクレーションを提供している」かを尋ねた。

4)病棟では、 高齢者に多い合併症 尿路感染症 ・誤嚥性肺炎 ・褥瘡など)の予防が十分に

できている。」かを尋ねた。

5)病棟では、 患者の自立度を維持・回復するための支援ができている」かを尋ねた。

24.9

23.9

25.4

49.8

45.7

45.2

21.8

23.5

22.2

2.7

5.4

3.6

0.8

1.4

3.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者に十分なレクレーションを提供している

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.8

4.2

2.0

25.7

30.5

14.3

63.0

53.0

58.3

9.7

11.1

22.2

0.8

1.2

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

高齢者に多い合併症の予防が十分にできている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

3.5

7.6

3.2

42.0

42.6

35.3

47.5

41.9

49.6

5.8

6.5

8.7

1.2

1.3

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者の自立度を維持・回復するための支援ができている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 32: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

31

6)病棟では、 患者の個別性に合わせたケアができている」かを尋ねた。

7)病棟では、 患者の尊厳を保っている」かを尋ねた。

8)病棟では、 患者の家族・後継人にも働きかけている」かを尋ねた。

1.6

6.2

2.4

34.2

38.5

29.8

56.4

46.3

50.4

7.0

7.6

13.5

0.8

1.3

4.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者の個別性に合わせたケアができている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.4

3.5

2.4

17.5

27.3

21.8

66.9

55.8

53.2

14.4

12.0

19.0

0.8

1.4

3.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者の尊厳を保っている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.8

3.3

1.2

14.4

25.5

21.0

64.6

56.0

53.6

19.5

13.4

19.8

0.8

1.8

4.4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

患者の家族・後見人にも働きかけている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 33: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

32

9)病棟では、 療養病床としてのケアの質が確保できている」かを尋ねた。

10)病棟では、 スタッフは病院の理念を理解している」かを尋ねた。

11)病棟では、 スタッフは現在の仕事にやりがいを感じている」かを尋ねた。

0.8

5.2

2.4

27.2

31.4

28.2

59.1

50.4

52.8

11.3

11.2

13.5

1.6

1.9

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

療養病床としてのケアの質が確保できている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

1.6

5.2

3.6

37.0

36.4

34.9

51.8

47.4

48.4

7.8

9.6

9.9

1.9

1.3

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

スタッフは病院の理念を理解している

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

1.6

8.6

3.6

45.9

49.1

52.0

49.4

37.2

37.7

1.9

3.5

3.6

1.2

1.6

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

スタッフは現在の仕事にやりがいを感じている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 34: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

33

12)病棟では、 スタッフは現在の仕事にプライドを持っている」かを尋ねた。

13)病棟では、 スタッフはケアを実施するための十分な教育・支援を受けている」かを尋

ねた。

14)病棟では、 調査時において過去1年間に、院外の研修講座 看護協会 ・介護福祉士会

によるもの等)の研修に参加した看護職・介護職者がいた」かを尋ねた。

0.8

5.0

1.6

26.8

35.0

32.5

66.5

50.3

54.8

4.7

8.0

7.5

1.2

1.6

3.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

スタッフは現在の仕事にプライドを持っている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.8

5.9

2.8

35.4

36.7

32.5

57.2

47.8

47.6

5.8

8.1

12.7

0.8

1.5

4.4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

スタッフはケアを実施するための十分な教育・支援を受けている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.4

2.9

4.8

7.0

9.4

8.3

39.3

39.6

32.1

52.1

45.9

50.0

1.2

2.1

4.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

過去1年に、院外研修に参加した看護・介護職者がいた

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 35: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

34

15)病棟では、 他の職種や管理部門は、看護 ・介護職者が抱える負担に理解を持っている」

かを尋ねた。

16)病棟では、 看護・介護職種間で助け合っている」かを尋ねた。

17)病棟では、 調査時において過去1年に、院内の多部門 ・多職種合同のケア改善のため

の話し合いがあった」かを尋ねた。

3.5

17.4

11.9

43.2

42.3

48.8

44.4

32.9

29.0

8.2

5.8

7.1

0.8

1.6

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

他の職種や管理部門は、看護・介護職者が抱える負担に理解を持っている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

0.0

2.0

1.6

5.4

15.3

20.2

56.0

55.1

43.3

37.4

25.8

31.7

1.2

1.8

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

看護・介護職種間で助け合っている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

15.6

14.2

12.3

21.0

28.2

27.4

40.1

38.1

35.3

21.4

16.7

20.2

1.9

2.7

4.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

過去1年に、院内の多部門・多職種合同のケア改善のための話し合いがあった

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 257)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 36: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

35

18)病棟では、 チーム医療・チームケアが出来ている」かを尋ねた。

19)病棟では、 ケアのための人手が十分ではない」かを尋ねた。

20)病棟では、 看護 ・介護職者の離職のためにスタッフ全体に負担がかかる」かを尋ねた。

2.3

7.6

4.0

31.9

36.4

28.2

54.1

44.8

51.2

10.1

9.3

11.9

1.6

1.9

4.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

チーム医療・チームケアができている

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

1.9

2.9

1.2

14.4

9.0

10.7

39.3

29.0

32.5

43.6

57.7

52.0

0.8

1.4

3.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

ケアのための人手が十分ではない

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

1.9

1.6

3.2

14.4

8.3

5.2

40.9

32.5

33.3

41.6

56.0

54.4

1.2

1.6

4.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

管理者

看護職者

介護職者

看護・介護職者の離職のためにスタッフ全体に負担がかかる

管理者 n = 257・看護職者 n = 3279・介護職者 n = 252)

全くそう思わない あまりそう思わない ややそう思う とてもそう思う 無回答

Page 37: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

36

Ⅵ.ケアの質向上のための工夫

病棟の看護管理者に ケアの質向上のために工夫していること」を自由記載で尋ねた。回答者

257名のうち、128 名の自由記載への書き込みがあった。自由記載の内容は、いくつかのカテゴ

リーに分類し以下にまとめた。 表現に一部修正あり)

(1)ケアをペアで実施する

・オムツ交換、体位変換、移乗などは必ずスタッフ2名で対応する。

・誰が行っても同じように行き届いたケアができるよう研修を実施したり、リハビリ、清潔、排

泄ケアを看護・介護職が一緒に行っている。

・患者の日常生活の援助が日々の中心であり、看護師だけではなく介護職と一緒にケアを行った

り、介護職リーダーとの申し送り・カンファレンスを行っている。

(2)看護・介護方式に関する工夫

・パートナーシップ・ナーシング・システム PNS)を導入し、看護師と看護補助者がパートナ

ー・ペアになりパートナーシップマインドの育成に取り組んでいる。

・患者把握、ケアの充実を図るためにチームナーシングを取り入れている。

・看護職と介護職で、受け持ち患者の計画立案、評価を話し合いで行っている。

・個別ケア充実のために、介護福祉士と看護師が日々ペアとなり受け持ちを行っている。ケア計

画の修正やケースカンフレンスの開催は、受け持ち主導で行い、受け持ちとしての意識を高め

ることで、ケアの実践に対して責任や配慮が効果的であると感じる。

(3)看護・介護計画に関する工夫

・看護計画の統一を図るため、文章だけでなく体位・セット位置など写真でベッドサイドに表示

している。

・日本版ケアプランニングアセスメントツール J-PAT)を用いて、認知症がある患者のケアプラ

ンを立案しケア実施している。まだ取り組み始めたばかりの研究段階ですが継続していきたい。

(4)病棟のチームワークを大切にするための工夫

・スタッフのチームワークを大切にしていきたいと思いながら日々の業務に取り組んでいる。

・1年間チーム活動をすると自立して問題解決行動をとれるようになる。必ずケアの質向上のた

めの内容に着眼し活動している。

・チーム会 Aチーム Bチーム)を定期的に開き、それぞれのチームでケアの評価や頑張ろうと

することを話し合っている。

・看護職と介護職でチームを組み、教育・事務改善について対策を立て実践評価している。介護

職も自分たちの役割を認識し意見が出せるようになってきた。病棟のレクリエーションは、リ

ハビリスタッフやボランティアと協力して実施しているため家族からの評価が高い。

・時間に追われることがないように優先順位を考慮しながらスタッフ同士が声を掛け合う。

・病棟スタッフ全員が声を掛け合い、そのときに発生した問題点や疑問点は、その日のうちにミ

ーティングで改善できるように努力している。

・看護助手との連携がとても大切なので、常に情報交換をするよう心掛けている。

・常勤ナース・パート・CW・クラークと役割分担をして業務を行っている。

・看護職・介護職としての役割を理解し協力体制を取り効果的なケアを提供する。

Page 38: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

37

(5)日々のケアを実施するうえでの工夫

A. 病棟の特徴を考慮したケアを実践するための工夫

・透析患者が多く糖尿病を合併している患者が多い。フットケアを実施し足病変の改善に効果が

ある。

B. 身体抑制を最小限にするための工夫

・急性期治療でミトン手袋などの身体抑制が必要となった患者に、抑制を日中解除するため介護

職と看護師が付き添った。半月後にはすっかり抑制が必要なくなった。

・抑制の解除などのため、リハビリスタッフと共に環境調整 物品の配置)をしている。

"倫理"学習会を継続的に行っている。

・軍手活用し、指の拘縮予防をしている。又、点滴ルート・経管栄養チューブなどを抜かないよ

うにミトンすることなく軍手活用している。

C. 高齢者にメリハリのある生活を送っていただくための工夫

・できるだけ認知症のある方は起床させるよう心がけている。不穏が強い方でも徐々に精神的に

安定する。

・ほとんどの患者様が寝たきりである。刺激 行事やイベント)を与えることで患者に笑顔が見

られ、患者・家族に喜んでもらえる。療養病棟でしかできないサービスの提供を行っている。

・入院する部屋に気を配っている。ADL のレベルが同じような患者をまとめると QOL の向上に

つながるケースがある。 例えば離床、食欲、会話など)

・食事を食べている患者は、酸素を付けていても全介助で車椅子へのトランスを行い、デイルー

ムで毎食食べられるようにしている。

・毎日離床を行い、患者が体操、音楽を楽しめるようにする。

・ギャッジアップ座位のできる患者は 1日 15 分の車椅子散歩。介助歩行できる患者は 1日 1 回

歩行練習を行っている。

・トイレ誘導 離床 ベッド→車椅子へ)を進めている。

・排泄物の臭いを最小限に抑えている。

D. 適切な清潔ケアを提供するための工夫

・スキンケアの取り組みとして 2 回/週の入浴時、保湿剤を全身に塗布することで落屑がなくな

り、皮膚トラブルの軽減につながった。

・ケア板を作成し、毎朝チェックして清拭・手浴・足浴を分担して実施している。

・オリーブジェルを用いて皮膚乾燥の予防している。

・緑茶を乾燥させ、綿の袋に入れ、手掌に握ってもらうことで消臭効果につながる。

E. 褥瘡を予防するための工夫

・皮膚排泄認定看護師に介入していただきスキントラブルの予防に努めている。

・適切な耐圧分散寝具の利用、体位交換で棟内発生はほぼ0です。

・長期臥床で経過をしている患者が多い病棟であり、褥瘡の発生するリスクが高く、年間2~3人

の褥瘡患者がいた。そこでリハビリ訓練士と連携をし、褥瘡予防に全員で取り組み、患者個々

にあったポジショニング、2時間毎の体位変換、身体の清潔、入浴日以外は部分清拭 洗浄)を

実施した。その結果、褥瘡の持ち込み患者はいますが、院内での褥瘡発生はなくなった。

・褥瘡予防のため、一回発生した部位には保湿保護目的でプロぺドなどを塗布している。

Page 39: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

38

・体交や皮膚観察をしっかり行うことで褥瘡発生の予防はできている。

・陰部のただれや PEG 周囲のただれにアズノール軟膏とバリケアパウダーを混ぜて使用すると、

浸出液も吸収するため治りが早い。

F. (尿路)感染症を予防するための工夫

・排泄介助時、陰部洗浄を施行することで尿路感染による熱発が少なくなった。

・バルンカテーテルの管理 体より上にするときはクランプする、吊り下げる位置に注意する等)

・オムツ交換や吸引汚物処理方法などエビデンスに基づいた手順で行い感染予防をしている。

G. レクレーションを実施する上での工夫

・昼食時間帯に童謡や昔の歌謡曲をかける。お楽しみ会を実施している。

・夏場はプランターに野菜・花などを植え、天気のいい日は外に水やりに出かける。

・ボランティアの活発な行事開催があります。できるだけ病状が安定している患者さんには参加

していただき日常生活が活性化するよう努めている。

H. 家族の気持ちに配慮したケアを実施するための工夫

・家族とのコミュニケーションを大切にし、家族が来院されたら声を掛け、患者の状態について

話すよう心がけている。

・患者・家族の思いを尊重した看護・介護実践の実施 ADL 向上や経口摂取のための取組み)し

ている。

・家族の経済的負担に考慮して、消耗品は可能な限り安価なものを家族に提示している。

・エンドオブライフケアとして病棟全体で本人・家族のニーズ把握に努めることにより信頼関係

が深まった。

I. 口腔ケア(肺炎予防)を実施する上での工夫

・口腔ケアは近医の歯科医院と連携して行っている。

・摂食嚥下認定看護師に介入していただき口腔ケアの充実を図っている。

・肺炎予防・栄養状態改善を目的に口腔ケアチームを立ち上げた。歯科衛生士の定期的な訪問、

口腔ケア技術の向上、スタッフの意識の向上等に努め、患者に合ったケアを提供している。

・歯ブラシ・舌ブラシ・マウスピュアの3点を利用し、口腔ケアに力を入れている。

・口腔ケアは専属ナース 非常勤)によって実施している。

J. 拘縮予防のための工夫

・主治医 ・看護師 ・リハビリスタッフで、患者の硬縮予防のため入浴時にマッサージをしている。

(6)多職種連携・情報共有を図るための工夫

A. 看護―介護/看護補助者間の連携を円滑にするための工夫

・看護職と介護職の連携を深め、取り組む課題を共有するため、師長・看護主任・介護リーダー

及び業務リーダーで月一回ミーティングを行っています。方向性が一致するため課題解決に取

り組みやすい。

・看護師の意見だけでなく、看護補助者の視点からの情報もとても参考になります。1回/W以上

のミニカンファレンス 10分くらい)の時間を作るようにしている。

Page 40: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

39

B. リハビリスタッフとの連携

・セラピストを含めたコメディカルとの情報共有と協働は重要。タイムリーな情報交換の場の構

築が課題であるとともに、ご本人ご家族の思いをケアの視点とすることの重要性を大切にした

い。

・ 生活安全カード ピクトグラムのようなもの)」を独自で作成し、リハビリスタッフ等の多職

種と患者のADL情報を共有している。

・特に STと協力し口腔ケアや食事介助法について指導、相談しながら介入する。

・排泄ケア、移動介助についてはリハビリスタッフとともにカンファレンスなどで検討する。

・患者・家族の要望、特別なケア等があれば申し送りメモと連絡ノートにだれもが記入し、ケア

の統一を図れるように情報共有・周知に努めている。患者様入棟時は看護師だけでなくリハビ

リスタッフからも申し送りを受け、ADL向上のために協力する。

・リハビリスタッフとNS、ワーカーでのカンファレンスを毎週実施している。

C. 患者を回診をする上での工夫

・褥瘡対策チーム及び NST チームによる定期回診 W/1 回)は患者情報の共有に効果があり、

タイムリーなカンファレンスが実施している。

・週一回の回診は医師.リハビリスタッフ、栄養士、ソーシャルワーカー等と一緒に行っている。

D. カンファレンス実施する上での工夫

・1 日 1 回その日の勤務者でカンファレンスを開き、意見を出し合い問題解決や統一すべき事項

を検討している。

・朝の申し送り時、毎日のショートカンファレンス時に、多職種 MSW,PT,OT,ST,薬剤師)も参

加していて、情報を共有し意見交換なども図っている。

・多職種へは疑問点を問いかけて各職種のアドバイスをもらい、患者に合ったケアをするよう心

がけている。

・多職種が高齢者総合機能評価 CGA)を用いて患者を評価し退院支援を行っている。

・業務検討を曜日ごとに内容を決めて行っている。例)月曜日 :入浴、火曜日 :オムツ、水曜日 :

インシデントに関すること等。

・ 排泄カンファレンス」を実施し排便サポートに対する取り組みを行っている。医師と協働し話

し合いを行っている。

・ デスカンファレンス」を行い看護の振り返りを行っている。

・ヒヤリハット、事故報告書は、事例検討により問題点や解決策を検討し情報を共有している。

(7)看護・介護職者の教育内容に関する工夫

・ 自分自身の家族だったらどうするか?」というの職員の認識を高めるよう配慮している。

・抑制、手浴、足浴等、実際に体験することを教育計画に入れている。

・ポジショニングの勉強会年5回開催し、患者に応じた体位をベッドサイドに表示している。

・看護師・介護職者が共に救急蘇生法を学んでいる。人形を使い、病室・風呂場などで倒れてい

るところを発見した設定で訓練している。実際に2事例に対応することができた。

・接遇に関する自己及び他者評価を年3回実施している。

・業者からオムツのあて方について指導を受けて、尿もれやシーツ汚染が激減した。

Page 41: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

40

(8)介護職者に特化した教育内容に関する工夫

・介護職者へ、解剖 ・病態生理、実技等を細かく指導し、日々のケアの必要性を理解してもらう。

・主任会主催での看護補助者研修を行っている。 例)ステップ 1 コース 初級)4 回/年、ステ

ップ2コース ステップ1終了者)4回/年

・看護補助者の勉強会 2~3か月に一回、 口腔ケア」 オムツ交換」 入浴介助」などスタッフ間

で勉強会を行っている。

・最近入職してくる介護職者は無資格未経験者が多いため、指導者の教え方やスキルも難度を増

している。 課題)

(9)看護・介護職者の教育方法に関する工夫

・週一回、ランチを食べながら ランチタイム勉強会」を 30分行っている。様々な職種が講師と

なり、伝達したいことや協力を得たいことなどを伝える場となっている。

・ 日常生活援助技術講座」を 2 か月に 1 回以上のペースで行われています。マニュアルの内容

に準じたことだけでなく、その講座を通して病院全体の取り組みについて話している。 こうし

たらよくなるのでは?」という意見が、取り組もうにつながっている。

・看護協会主催の研修に参加した者が、病棟で研究内容を報告しケアの見直しや新しい情報を職

員が得る機会を持っている。

・認知症患者への対応力向上のため、月 2 回ミニカンファレンス後 症状別対応ガイドブック」

を読み、認知症についての理解を深めている。

・ポジショニングの基礎知識を考えるための手法を古い考えから新しい考えであるパンガー法を、

リハビリと連携し取り入れている。療養者と介護者に負担の少ないケアを提供している。

(10)看護・介護研究の実施及び発表によるケアの質改善の工夫

・ 寄り添いケア 勤務した日は1つ以上受け持ち患者にケア提供する)」について病棟会で発表

する 1回/年)。全病棟での取り組み発表会も予定している。

・看護部全体で看護・介護の質評価に取り組み、発表会を実施している。

・病棟での看護研究でユマニチュードを取り入れている。まだまだ定着していないが、ケアの質

向上につながる。

・毎年 院内研究発表会」を実施していている。その発表会のために病棟内で 1 年かけて研究に

取り組みスタッフ全員で頑張っている。褥瘡や口腔ケア等、直接ケアの内容を研究テーマにす

ることで病棟のケアの改善になっている。

・QCサークル活動を取り入れ、問題を解決していく一連のプロセスを学び改善に役立てている。

また、毎年発表会をすることで競争心も芽生え、スタッフ同士の会話が増える。

(11)看護・介護職者のモチベーションを保つための工夫

・死亡退院が多く夜間に退院する患者が多いため、家族が帰られた時の言葉をスタッフに伝える

ようにしている。

・病棟内で、毎月サンクスカードを利用して、感謝の気持ちを相手に伝えるようにしている。

・自らの役割を認識し行動することで個人の意識の変化、職場風土が変化している。

・療養病床でのレクリエーションの実施が、スタッフのモチベーションアップにもつながる。

・看取りが多い 20 名/月)中で振り返りがないことによるモチベーションの低下がみられたた

め、デスカンファレンスを実施し今後のケアに繋いでいる。

Page 42: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

41

・介護職者は全員が介護福祉士であるため、有資格者としてのプライドを持ちプロとしてのケア

を目指させている。

・看護・介護職者が対象者の計画・実施・報告をする際、それらの活動が勤務時間外となるため

負担感が大きい。しかし、それらの活動を看護・介護職者が行わないと、自ら改善していくと

いう意識が下がり、自立した病棟にすることは難しい。 課題)

・療養病棟は長期に入院する患者が多く、寝たきりの患者も多い。そのためスタッフの中にはケ

アが流れ作業になってしまいがちである。そのような状況下になると、スタッフの知識と良識

が追い付いていかなければ看護力の低下につながる。 課題)

(12)看護管理上の工夫

・スタッフ1人 1人の面談を実施し、 困っていることはないか」 不安なことがないか」を把握

するように努めている。ケアの難しい患者への対応が負担にならないよう、スタッフのケアを

管理者が行っている。年齢に関係なくメンタルが不安定にならないよう声掛けと気遣いをして、

スタッフを守ることが大切のように感じています。

・5Sの取り組み

・職員が、働きやすく休みがとりやすい勤務表作りを心がけている。

・個別スタッフの目標管理について具体的な行動レベルになるように支援している。

・ケアの質改善を最も望むところですが、この一年でやっと離職者がなくなり人員の安定化が図

れるようになった。個別の目標管理に有効に取り組むことで質改善の足掛かりにしていく。

・改善対策の進捗状況などを、師長会 1回/月)で報告し、病院全体の共有をしている。

・委員会 業務改善、サービス向上、記録、ケアプラン、リクリエーション)活動の活発化。

・クリニカルラダー教育、ピア・レビューを取り入れ、看護を語り、評価し、モチベーションア

ップ、やりがいのある職場、離職防止に繋げたい。

・病棟ラウンドで気づいた点や、日常でのケア不足の点など言い続ける。

(13)制度面での課題

・国が定めている療養病床の人員配置基準では十分な介護看護ができない。医療区分 2.3 の患者

割合が多くなり、看護業務が増えている。工夫だけでは質改善に結びつかない現実がある。

・平日 ・休日のスタッフ人数の差がとても大きい。パート職員で賄っているため全体の時間数 常

勤換算)ではなく、常勤何名以上という人員配置の法律を整えて欲しい。

・食事支援・排泄支援・輸液管理・経管栄養などにマンパワーを必要とし個別性のケアやリハビ

リとの連携が十分でない。

・2015 年より療養病棟となり、病院の経営方針により、人工呼吸器患者を受け入れることになっ

た。病棟で看護補助者も含め勉強会を開催して対応している。日本全体の動きとして、療養病

棟の果たす役割は大きいと思い、スタッフ全員で頑張っている。ただ、業務の見直しはしてい

ますが、急性病棟と同様のことはできないと、わりきっていくことや、患者に少しでも 幸せ」

があればと思うようにしている。

・個別ケアや高齢者に対する人権・倫理問題 身体拘束を含む)に視点を当て、ケースカンファ

レンスをしているが、質が一定レベルに保てていないことが悩みである。 ケアの仕事を して

あげている」という仕事中心のスタッフがいる)

Page 43: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

42

Ⅶ.ケアの質の関連要因

1.ケアの質指標(QIs)の開発

我々は、医療療養病床をはじめとする長期療養施設での、ケアの質を適切に評価する客観的指

標の開発を目指している。その第一段階として、病棟の看護管理者から得た患者情報を基に、ケ

アの結果としてネガティブ・ポジィティブ両側面を評価するための 9 つのケアの質の指標を開発

した。

質指標項目の値は、 経管栄養のみの栄養摂取から経口摂取を開始した人」(0.8%)から身体拘

束中の人の割合」(23.7%)まで幅があった。

各質指標項目の値に対する入院患者特性の影響を考慮するため、各質指標項目と入院患者の医

療・ADL区分の分布間の関連を検討した。その結果、 自宅・入居系施設への退院割合」 尿路カ

テーテル留置の割合」 転倒 ・転落した人の割合」の三項目に関して、入院患者の医療 ・ADL区分

が強く関連していることが示された。そこでこの三項目に関しては、入院患者の特性による影響

を統計的に調整して算出した 調整値」を質指標の値として用いることにした。

ポジティブな側面 ネガティブな側面

自宅・入居系施設へ退院した人 身体拘束中の人

経管栄養のみの栄養摂取から経口摂取を開始した人 尿路感染症と診断され治療中の人

床上排泄だった人の中でトイレでの排泄を試みている人 尿道カテーテル類を留置している人

院内・病棟内で開催されたレクレーションの数 褥瘡 Ⅱ度以上)が新たに発生した人

転倒・転落した人

ケアの質指標 QIs)ーケアアウトカムー

8.6%

0.8%

2.8%

23.7%

2.2%

19.7%

1.1%

3.2%

0% 5% 10% 15% 20% 25%

自宅・入居系施設への退院割合

経管栄養から経口摂取の開始割合

トイレでの排泄の試行割合

身体拘束中の割合

尿路感染症の割合

尿カテ留置の割合

褥瘡発生率

転倒・転落した人の割合

Page 44: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

43

2.ケアの質指標(QIs)に関連する要因の検討

本分析では、9 つのケアの質指標 QIs)に関連する要因を検討した。9 つの QIs を従属変数、

施設属性、看護・介護職者の個人属性を独立変数として重回帰分析を行った。

1)自宅 ・入居系施設へ退院した人の割合

は、当該病棟の病床数が少ないほど高か

った。

2)経管栄養のみの栄養摂取から経口摂

取を開始した人の割合は、病床あたり日

勤の看護職者数が多いほど高かった。

3)院内・病棟内で開催されたレクレー

ション回数は、病院全体の病床数と病床

あたり日勤の看護職者数が多く、看護職

者の平均年齢が高いほど、実施回数が多

かった。

4)身体拘束中の人の割合は、病床あた

りの介護職者数が多く、看護職者の情緒

的消耗 バーンアウト)の得点が高いと

高かった。一方、看護職者が病棟で十分

なレクレーションを提供できていると評

価しているほど、身体拘束中の人の割合

は低かった。

5)尿路感染症と診断され治療中の人の割

合は、高齢者の状態において、医療区分が

高くADL区分が重い時に高かった。一方、

看護職者の過去 3 ヶ月間の院外勉強会や

研修会への参加回数が多いことや、看護職

者が病棟で直接的ケアを提供できている

と評価しているほど、尿路感染症と診断され治療中の人の割合は低かった。

*直接的ケアとは、 患者に十分な清潔ケアができている」といったケアプロセスの内うち 9つの

設問をまとめたものである。次項3-1)参照

β p

当該病棟の病床数 -.296 .003

Adjusted R 2=.078

β p

病床あたり日勤の看護職者数 .262 .007

Adjusted R 2=.060

β p

病院全体の病床数 .245 .031

病床あたり日勤の看護職者数 .297 .011

看護職者の平均年齢 .277 .015

Adjusted R 2=.252

β p

病床あたりの介護職者数 .346 .001

看護職者の情緒的消耗 .228 .025

十分なレクレーションの提供 プロセス) -.266 .010

Adjusted R 2=.168

β p

医療区分 高)ADL区分 重) .173 .035

看護職者の院外勉強会への参加 -.216 .010

*直接的ケアの提供 プロセス) -.194 .019

Adjusted R 2=.112

Page 45: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

44

6)尿道カテーテルを留置している人の

割合は、看護職者の情緒的消耗 バーンア

ウト)の得点が高いと高かった。

7)褥瘡(Ⅱ度以上)が新たに発生し

た人の割合は、施設内に精神病棟を併設

していることや、介護職者の脱人格化 バ

ーンアウト)の得点が高いと高かった。

8)床上排泄だった人の中でトイレでの排泄を試みている人の割合と転倒・転落した人の割合に

関連する要因はなかった。

以上の結果より、ケアの質指標 QIs)には、病院/病棟の病床数や看護・介護職者数、療養病

床以外の病棟等の施設属性が関連していることが明らかとなった。

β p

看護職者の情緒的消耗 .289 .003

Adjusted R 2=.074

β p

精神病棟の併設 .412 .000

介護職者の脱人格化 .208 .047

Adjusted R 2=.190

Page 46: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

45

3.ケアプロセスの質に関連する要因の検討

本分析では、ケアプロセスに関連する要因を検討した。ケアの質に関する 9 つの設問 看護職

者回答)をまとめた 直接的ケア」と 十分なレクレーションの提供」を従属変数、施設属性、看

護・介護職者の個人属性を独立変数として重回帰分析を行った。

1)直接的ケアの評価得点は、看護職者の

*量的労働負荷が大きく、居宅介護支援

事業所の併設、准看護師の離職者数が増

えると低かった。一方、スタッフが病院の

理念を理解している、チーム医療 ・チーム

ケアが実践できている、さらには、介護職

者のワークエンゲージメントが高いと直

接的ケアの評価得点も高かった。

2)十分なレクレーションの提供につい

ての評価得点は、病棟の介護職者の離職

者数が多いほど低かった。一方、病棟の常

勤介護職者数が多いことや、スタッフが

病院の理念を理解していると評価得点も

高かった。

*量的労働負荷とは、業務量が多いことによる心理的負担感の程度を示す。

以上の結果より、チーム医療・チームケアを実践できていると直接的ケアの評価得点が高いこ

とが明らかとなり、チームケアの実践がケアプロセスの質の向上に繋がる可能性が示唆された。

十分な清潔ケア

患者の状態に合わせた適切な食事へのケア

高齢者に多い合併症予防

患者の自立度を維持・回復するためのケア

個別性に合わせたケア

患者の尊厳を保つケア

患者の家族や後見人への働きかけ

療養病床としてのケアの質の確保

ケアの質指標 ーケアプロセスー

1)直接的ケア

2)十分なレクレーションの提供

β p

*量的労働負荷 -.315 .001

居宅介護支援事業所の併設 -.271 .004

病棟の准看護師の離職 -.276 .003

スタッフが病院の理念を理解していること .210 .047

チーム医療・チームケアの実践 .428 .000

介護職者のワークエンゲージメント .266 .005

Adjusted R 2=.629

β p

病棟の介護職者の離職 -.300 .005

病棟の常勤介護職者の数 .310 .004

スタッフが病院の理念を理解していること .260 .016

Adjusted R 2=.221

Page 47: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

46

Ⅷ.看護・介護職者のメンタルヘルスの関連要因

本分析は、看護 ・介護職者のバーンアウトの“情緒的消耗”と“脱人格化”、“ワークエンゲージメ

ント”の平均得点を従属変数、施設属性、個人属性、仕事のストレス、病棟のケアの質に関する項

目を独立変数とし重回帰分析を行った。

【看護職者について】

1)バーンアウトの情緒的消耗の得点は、

*量的労働負荷が大きいこと、*技能の

低活用 活用できない)、病棟の常勤看護

職者数が多いこと、給料がいいことを理

由に職場を選択しているほど高かった。

一方、看護職者の年齢が高いこと、病棟

の看護管理者の助けや適切な評価がある

こと、看護・介護職者間で助け合えるこ

と、老年看護への興味や患者とゆっくり

関わること等の理由で職場を選択した者

はバーンアウトの情緒的消耗の得点が低

かった。さらに、病棟では患者に十分な清

潔ケアを提供していると評価する者ほど

得点は低く、ケアプロセスが看護師の情

緒的消耗に関連していた。

*量的労働負荷とは、業務量が多いことによる心理的負担感の程度を示す。

*技能の低活用とは、これまで獲得した知識や技術を活用できないと感じる程度を示す

β p

*量的労働負荷 .444 .000

*技能の低活用 .093 .000

病棟の看護職者数 常勤) .057 .002

   給料がいいこと 職場の選択理由) .039 .036

年齢 -.135 .000

病棟の看護管理者の助けがある -.085 .001

病棟の看護管理者の評価がある -.097 .000

看護・介護職者間で助け合っている -.101 .000

  老年看護への興味 職場の選択理由) -.063 .001

 職場の雰囲気がいいこと (職場の選択理由) -.067 .000

働き続ける環境が整っていること(職場の選択理由) -.053 .005

近隣に他に働ける病院/施設がない 職場の選択理由) .038 .041

十分な清潔ケアを提供している プロセス) -.051 .008

Adjusted R 2=.317

Page 48: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

47

2)バーンアウトの脱人格化の得点は、

*量的労働負荷が大きく、*技能の低活

用 活用できない)、病棟の常勤看護職者

数が多く、給料がいいことを理由に職場

を選択した者ほど高かった。一方、年齢が

高く、男性より女性、病棟の看護管理者の

適切な評価があること、老年看護への興

味や職場の雰囲気がいいこと等の理由で

職場を選択した者はバーンアウトの脱人

格化の得点が低かった。さらに、看護 ・介

護職者間で助け合えることやスタッフが

病院の理念を理解していると脱人格化の

得点は低かった。

バーンアウトの情緒的消耗と同様に、

ケアプロセスが脱人格化にも関連してい

た。病棟では患者に適切な食事へのケア

や合併症予防ができている者ほど脱人格

化の得点は低かった。さらに、身体拘束中

の患者割合が高いと脱人格化の得点が低

くなるという傾向がみられた。

3)ワークエンゲージメントの得点は、

技能が活用できない、病棟の看護師の数

が多いと低かった。一方、年齢が高く、現

在の病棟での経験年数が長いこと、病棟

の看護管理者の助けやあること、老年看

護への興味、患者とゆっくり関わること

や職場の雰囲気がいいこと等の理由で職

場を選択した者はワークエンゲージメン

トの得点が高かった。

バーンアウト同様に、ケアプロセスの

関連がみられ、十分な清潔ケアができて

いると評価する者はワークエンゲージメ

ントの得点が高かった。さらに、ワークエ

ンゲージメントには、患者の状態像が関

連していた。病棟における褥瘡のある患

者の割合が多くなると得点が高くなる傾

向がみられた。

以上の結果より、看護職者のバーンアウト及びワークエンゲージメントの改善には、 病棟の看

護管理者の評価や助け」 看護・介護職者間での助け合い」があること、さらに、 職場の選択理

由」が改善策を検討する上での手掛かりになる可能性が示唆された。

β p

*量的労働負荷 .237 .000

*技能の低活用 .121 .000

病棟の看護職者数 常勤) .043 .031

給料がいいこと 職場の選択理由) .050 .009

年齢 -.093 .000

性別 女性) -.046 .018

病棟の看護職者数 非常勤) -.052 .008

病棟の看護管理者の評価がある -.137 .000

 老年看護への興味  職場の選択理由) -.040 .038

職場の雰囲気がいいこと 職場の選択理由) -.067 .001

働き続ける環境が整っていること(職場の選択理由) -.059 .003

適切な食事のケアを提供している プロセス) -.044 .036*高齢者に多い合併症予防ができている プロセス) -.050 .022

看護・介護職者間で助け合っている -.146 .000

スタッフが病院の理念を理解していること -.064 .002

身体拘束中の患者 -.048 .012

Adjusted R 2=.269

β p

*技能の低活用 -.228 .000

病棟の看護職者数 常勤) -.074 .000

年齢 .181 .000

現在の病棟での経験年数 .046 .029

性別 女性) .066 .001

病棟の看護管理者の助けがある .077 .000

  老年看護への興味 職場の選択理由) .086 .000

患者とゆっくり関わること 職場の選択理由) .098 .000

職場の雰囲気がいいこと 職場の選択理由) .108 .000

教育体制が整っていること 職場の選択理由) .086 .000

働き続ける環境が整っていること(職場の選択理由) .050 .013

十分な清潔ケアを提供している プロセス) .043 .041

看護・介護職者間で助け合っている .084 .000

他職種や管理部門の看護職者の負担への理解 .079 .000

褥瘡のある患者 .065 .001

Adjusted R 2=.210

Page 49: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

48

【介護職者について】

1)バーンアウトの情緒的消耗の得点は、

*量的労働負荷が大きいほど高く、病棟看

護管理者の助けがあること、職場の雰囲気

がいいこと等の理由で職場を選択した者

ほど低かった。

2)バーンアウトの脱人格化の得点は、

*量的労働負荷が大きいほど高かった。

一方、病棟の看護管理者の助け、看護 ・介

護職者間の助け合いや、他職種 ・管理部門

の介護職者の負担への理解があるほど低

かった。

3)ワークエンゲージメントの得点は、

*技能の低活用 活用できない)がある、

病棟の病床数が多いと低かった。一方、看

護 ・介護職者間の助け合い、他職種や管理

部門の介護職者の負担への理解があるこ

と、給料がいいことを理由に職場を選択し

た者ほど高かった。さらに、病棟のケアに

ついて十分なレクレーションを提供して

いる、患者の個別性に合わせたケアができ

ていると評価しているとワークエンゲー

ジメントの得点が高かった。

以上の結果より、介護職者のバーンアウト及びワークエンゲージメントの改善には、 病棟の看

護管理者の助け」や 看護 ・介護職者間での助け合い」があること、さらに、 個別性に合わせた

ケア」や 十分なレクレーションの提供」といった良いケアが実践できるような働きかけの重要

性が示唆された。

β p

*量的労働負荷 .489 .000

病棟の看護管理者の助けがある -.227 .001

職場の雰囲気がいいこと 職場の選択理由) -.143 .031

Adjusted R 2=.352

β p

*量的労働負荷 .347 .000

病棟の看護管理者の助けがある -.233 .002

看護・介護職者間で助け合っている -.178 .018

他職種や管理部門の介護職者の負担への理解 -.168 .013

Adjusted R 2=.338

β p

*技能の低活用 -.253 .000

病棟の病床数が多い -.169 .012

看護・介護職者間で助け合っている .180 .011

他職種や管理部門の介護職者の負担への理解 .151 .028

十分なレクレーションを提供している .176 .011

個別性に合わせたケアができている .176 .013

給料がいいこと 職場の選択理由) .229 .001

Adjusted R 2=.338

Page 50: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

49

ご挨拶 2015 年 9~11 月にかけ、貴院をはじめとする療養病床を有する病院の看護・介護職員の

みなさまにご協力を頂き、ケアの質改善に関する質問紙調査を実施させていただきました。

本調査の結果から、療養病床におけるケアの質に関する全国的な実態を把握することのでき

る貴重なデータを収集することができました。

本研究にご協力いただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたし

ます。

2016 年 10月

研究代表者 山本 則子

研究班 メンバー

東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 教授 山本 則子

群馬県立県民健康科学大学大学院看護学研究科 教授 高井 ゆかり

東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 講師 五十嵐 歩

同上 助教 野口 麻衣子

同上 特任助教 山花 令子

同上 大学院生 齋藤 弓子

同上 大学院生 二見 朝子

今後の予定

<ワークショップ開催のご案内>

当研究室主催による 第 1 回高齢者ケアの質研究会」を下記の通り開催することにいたし

ました。皆さまの参加をお待ちしております。

1.日時 2016 年 11月 23日 水曜日)午後13時~

2.場所 東京大学

3.内容 ・事例研究ワークショップ

高齢者への日々のケアを振り返る事例検討を通じて、 このケアをどのような

意図で提供したか」 このケアは対象にとってどのような意図を持っていたと考

えられるか」 ケアの結果として対象と家族にどのような変化がみられたか」等

を検討します。学会・研修会などでご好評いただいているセミナーです。

・事例研究発表会

実際に事例研究に取り組んでおられる方々より、学会発表や論文執筆に関す

る経験談・裏話等をご発表いただきます。

4.費用 無料

※懇親会 自費)も合わせてご参加をご検討ください。

※同封のチラシ裏面の FAX 用紙にて出欠をお知らせください。

お問い合わせは連絡担当:齋藤まで

電話 03-5841-3508 FAX 03-5841-3502

メール [email protected]

Page 51: 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査 報告書ltcq/img/activity_t02.pdf · 長期療養施設におけるケアの質改善 に関する質問紙調査

50

<学会発表>

1)医療療養病床で働く介護職者のバーンアウト及びワークエンゲージメントの実態と関連

要因.第 24回日本慢性期医療学会、H28.10.28 石川.

2)医療療養病床におけるケアの質管理・向上のための工夫:病棟看護管理者への全国調査

より.第 24回日本慢性期医療学会、H28.10.27 石川.

3)医療療養病床におけるケアプロセスの質とその関連要因の探索 ―組織および看護職の個

人特性の検討―.第 36回日本看護科学学会、H28.12.10-11 東京.

4)Work Values and Their Association with Burnout/Work Engagement of Nurses in

Long-Term Care Hospitals: The Gerontological Society of America(GSA),

November, 2016: New Orleans, America.

5)Improving Long-Term Care Quality by Improving Staff Satisfaction & Confidence

Using Case Conference: The 21th IAGG World Congress of Gerontology and

Geriatrics, July, 2017: San Francisco, America.

*現在も質問紙調査データ分析を継続しています。順次、学会及び論文を発表する予定です。

<介入研究への参加協力のご案内>

本調査の結果を踏まえ、医療療養病床のケアの質向上を図るため、看護・介護職者を対象

とした介入研究を計画しています。医療療養病床は、限られた人員配置の中でケアの質改善

の取組みが困難な環境にあり、臨床現場の状況を考慮した支援策を提示する必要があります。

そこで、看護・介護職者が日々の実践の中で実施している事例検討を通し、看護・介護職者

がケア実践の意味づけやケアに対する肯定的評価を獲得することが期待されます。具体的な

方法として、院内で実施している事例検討(ケースカンファレンス)に、研究者が参加しフ

ァセリテータ役を務めさせていただきます。この取り組みにより、研究者と臨床現場の協同

によるケアの質改善の仕組みを構築していきたいと考えております。

現在、東京都内の1施設を対象にパイロットスタディを実施しており、参加協力施設を募

集しています。

お問い合わせ先

東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻

高齢者在宅長期ケア看護学分野 連絡担当者:齋藤)

〒113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1

Email:[email protected]

Tel.03-5841-3507 Fax.03-5841-3502 Tel は 10:00-17:00)