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第 6回 学校図書館ジャムセッション 2009.8.10 ESDを支える学校図書館
-限界・境界を超える学習と協働-
東京学芸大学 成田喜一郎
1 ESDとは何か?
Education for Sustainable Development 持続可能な開発のための教育、 「持続発展教育」(文科省)
将来の世代が自らのニーズを充足する能力を損な
うことなく今日の世代のニーズを満たすような開
発を可能とする教育(文科省) 【暫定的定義】わたくしたちと将来世代の生命、環
境・経済・社会の持続可能性を脅かす地球・地域的
諸課題に積極的に取り組むことのできる次世代市
民を育てるための教育(Narita2009.8.8) 2 ESDの 10年:2005-2014
1987年 ブルントラント委員会「SD概念」登場 2002年 ヨハネスブルグ・サミットで日本が提案 国連総会で「ESDの 10年」採択 2006年 関係省庁連絡会議で実施計画を策定
(内閣府・外務省・文科省・環境省等) 2008年 中教審答申、教育振興基本計画、学習指
導要領及び解説に記載 3 ESDの普及・支援の推進 ①学校教育における ESDの推進 新学習指導要領における ESDの推進 高等教育機関における ESD教育・研究 ②ユネスコ・スクール活動への支援 ③生涯にわたる ESDの教育機会の提供 ④国際的な協働の場の形成 等 4 学習指導要領解説の中の ESD ①小学校(総則+7教科・領域)
総則、社会、理科、生活、家庭、 外国語、道徳、総合的な学習の時間 ②中学校(総則+5教科・領域) 総則、社会、理科、技術・家庭、道徳 総合的な学習の時間
→「持続可能な発展/社会」が記載 5 ユネスコ・スクールの活用・普及 1953年、15カ国 33校 2009年 8月、177カ国 8,000校(日本 92校) ① 地球規模の問題に対する国連システムの理解 ② 人権、民主主義の理解と促進 ③ 異文化理解 ⑤ 環境教育 以上、4つの基本分野 6 ESDで育てたい子どもの力 ① 体系的な思考力 ② 持続可能な発展に関する価値観 ③ 代替案の思考力(批判力) ⑤ 情報収集力・分析能力 ⑥ コミュニケーション能力
文科省「持続発展教育」より http://www.mext.go.jp/unesco/004/004.htm
7 ESDを読み解く6つの視点★ ①HOPE(希望)評価の可能性
Holistic Participatory Empowering ②持続不可能性/持続可能性の選択 ③次世代市民としての価値観・世界観形成 ④世代間の交流・文化の持続継承性 ⑤地域と地球との対話と想像力 ⑥個人や専門性の限界・境界を超えた協働 ※①は永田佳之(2009)「動き始めた、持続可能な未来へのESD評価方法」『ACCUニュース』2009.1
②~⑥は Narita2009.8.8 8 ESD教材(学習財)例
ESD教材(学習財)例
地雷Landmines
中・英語 中・音楽
小・総合
中・社会
中・特活中・家庭
小総合・中音楽・中特活・中社会・中家庭・中英語
2
9 ESD(学習財)例の構成概念
ESD教材(学習財)例の構成概念
地雷Landmines
言語活動 合唱曲
出会い
平和・開発
創作演劇ものつくり
出会い、合唱曲、創作演劇、平和・開発、ものつく
り、言語活動 10 実践「お願い、地雷をとらないで」 ある NGOの戸惑い 「市場へ続く道より・・・・」 「お願い、地雷をとらないで・・・」
という村人の言葉! えぇ、なんでやの?
↓ 「市場へ続く道より、まずお寺に行く道を」 →経済優先志向と生活文化理解
「お願い、地雷をとらないで! 地雷がなくなったあと、 農業が出来なくなってしまうから」 →平和構築運動と公正な経済開発 11 ESD6つの視点と地雷の授業 ①持続不可能性/持続可能性の選択
→地雷の除去とその後の意味 ②次世代市民としての価値観・世界観
→文化的多様性、理性・感性、 ③世代間の交流・文化の持続継承性
→何世代もかかる除去、ライフヒストリーの形成 ④地域と地球との対話・想像力
→愛知・東京・三重とカンボジア・世界 ⑤個人や専門性の限界・境界を超えた協働
→子ども・教師・NGO、教科・領域の相互浸透 12 学校図書館と ESD
①「学校図書館憲章」1991年 ②「ユネスコ学校図書館宣言:すべての者の教育と
学習のための学校図書館」1999年 ③ユネスコ中期戦略 2009-2013年
↓ ESDを支える学校図書館への道
13 ユネスコ学校図書館宣言 1999 ◆すべての者の教育と学習のための学校図書館 ◆情報・知識基盤社会を生きるための基本的な情報
とアイディアを提供する。 ◆責任ある市民として、生涯学習の技能の育成、想
像力を培う。 ◆情報を批判的、効果的な利用ができるようにする
ために学習サービス、図書、情報資源を提供する。 ◆学校図書館は、教育の過程に不可欠である。 ◆学校図書館サービスの核は、識字、情報リテラシ
ー、指導、学習・文化の発展への貢献である。 ◆学校の使命・教育目標・カリキュラムを支援・推
進 ◆読書習慣及び学習習慣と楽しみ、図書館利用の促
進・継続 ◆知識・理解・想像・楽しみのための情報利用、創
造体験の機会の提供 ◆情報の活用と評価の技能の学習・練習への支援 ◆世界中からの情報の入手、多様なアイディア、経
験、見解に接する機会の提供 ◆文化的社会的な関心の喚起、感性錬磨の計画 ◆知的自由の理念の意義、民主主義の具現化 等 14 ユネスコの中期戦略 2008-2013 ①万人のための質の高い教育と生涯教育の実現
→「読み書き計算」など基礎教育の必要性 ②持続可能な開発のための科学的知識と政策動員 ③新たな社会的及び倫理的課題への取り組み ④文化的多様性、異文化間の対話と平和の文化の促
進 ⑤情報とコミュニケーションを通じた包括的な知
識社会の構築→情報と知識への普遍的アクセス、
多元的な自由、独立したメディアと情報基盤の強
化
3
15 ESD・学校図書館(員)への期待 ①子ども・教員・保護者・地域等との協働
②0類 総記 1類 哲学 2類 歴史 3類 社会 科学 4類 自然科学 5類 技術・工学・工 業 6類 産業 7類 芸術 8類 言語 9類 文学:NDC世界全体への対応 ③専門性(分類)の限界・境界を超えたノットワーキ
ング Knot working 人間じんかんと間専門性のノットワーカー
16 再び、ESD6つの視点で
ESD6つの視点と学校図書館
学校図書館の未来
越境する協働 持続可能性
希 望
世代間交流・持続継承
次世代市民の価値観地域と地球
希望・持続可能性・次世代市民の価値観・世代間交
流・持続継承性・地域と地球・越境する協働 17 むすびにかえて
過去とは現在の記憶であり、 未来とは現在の期待である。
そして、現在とは記憶と期待のライブラリーである。 (アウグスティヌス+寺澤満春)
【参考文献】 ACCU(2009)『ESD教材活用ガイド:持続可能な未来への希望』
・はじめに(定義、経緯、学習指導要領解説) ・13の実践事例(明示的実践、黙示的実践) ・ESDへのアプローチ(教材の「選択」から「評価」のしかたまで)
・ESDではぐくむ「学力」ほか 【参考資料1】地雷の授業実践ノットワーク
①小学校 5年~6年(愛教大附岡崎小・鈴木佳樹先生) 1999年、対人地雷全面禁止条約発効 総合「ノーモア地雷―私たちの未来は私たちで守ろう―」小5・柴田知佐さん作・4コマ漫画『ノーモア地雷』・・・中・・・高・・・立命館大学生
一教材(学習財)「地雷 Landmines」が柴田知佐さんのライフヒストリーを形成・・・
②中学校 2年(学大附属大泉中・松井孝夫先生)2000年 音楽「君から吹く風」(作詞:松任谷正夫、作
曲:松井孝夫) ③中学校 2年(学大附属大泉中・吉田章先生)
2001年 9.11同時多発テロ直後 特活 学芸発表会参加作品演劇「Sacrifice犠牲」(地雷と子どもたちとある写真家の物語)
④中学校3年(学大附属大泉中・成田) 2001年 9.11同時多発テロ、アフガニスタン空爆
社会(公民) 子どもの学びの履歴の中に「地雷」
を発見(音楽の授業)→教材研究開始。文献研究、Web検索、NGO・JCBLをはじめとする国内外の地雷に関するネットワークの構築、学習指導案の検
討への助言・協力 「国際社会と平和を考える~なぜ、今、Landmines
なのか」(公開授業) ⑤中学校2年(学大附属大泉中・成田+NGO・松浦香
恵さん)2004年(公開授業)社会(地理)+人間理解 NGOの松浦香恵さんとの協働で教材(学習財)開発。「カンボジアの子どもたちの暮
らしと社会」(お願い、地雷をとらないで)1限~4限の社会
「NGO・松浦香恵さんの講演」5限の人間理解(道徳)
4
・松浦香恵さんのライフヒストリーと地雷廃絶・
除去活動支援の実際 →「お願い、地雷をとらないで」その後、「地雷ベ
ルトをグリーンベルトに」カンボジア在住の
NGO・奥田英朗氏の取組を教材化・実践した古家正暢先生(現在、学大附属国際中等教育学校
教諭が実践・教材開発中) ⑥中学校 2年(文京区立文林中・岡部芳枝先生) 2008年→国際理解教育研修会での出会い、地雷に関する教材研究支援をする(成田) 英語“Landmines and Children:地雷の犠牲になるのは誰?”(中2)三省堂 “A World without Landmines”(中3)教育出版
⑦中学校 3年(伊勢市立五十鈴中・西村朱美先生) 2008年、技術・家庭 「松坂もめん」の実践(金融教育・消費者教育・ESD・シチズンシップ教育) →ACCU『ESD教材活用ガイド:持続可能な未来への希望』pp.8-13
【参考資料2】ESDへの疑問や批判(問いかけ) ① 環境教育、国際理解教育、開発教育・・・・との違いがまだ分からない。
② ESDを出すと視点が拡散し、ぼけるのではないか。(わが教委は、環境教育で行く)
③ これまでの◇◇教育と同様に流行に過ぎないのではないか。
④ 持続可能な教育(SE)ではなく、持続可能性のための教育(SD)なのではないか。
⑤ 学校現場でどう取り組めばよいのか。 ↓
疑問・批判への応答(レスポンス)準備中 EASD Educational Approach for Sustainable Development(Narita2009)
補足資料】「水の思想・川の組織論」(Narita2009)
「水の思想」
最上の善は水のようなものである。
あらゆるものに利益を与え、争わない。
水は、人の嫌う地味で低い場所を好む。
思考の奥深さと心やさしさを好み、
言葉の誠実さとよき秩序を好む。
その能力を生かし、潮目を見て行動する。
(老子第8章要約)
「川の組織論」
《川上》
子ども
教職員
管理職
図書館員
《川下》
教員の教育活動
子どもたちの声
方針提示・日常のケア
非常時のコントロ
ル
「川の組織論」学校図書館編
図書館管理概念の多様性と転換
①ケアcare②責任charge③指導direction④監督supervision⑤運営administration⑥経営management⑦統制control
①統制control②経営management③運営administration④監督supervision⑤指導direction⑥責任charge⑦ケアcare
川下で支える「水の思想・川の組織論」