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蛍光X線分析についてよくある質問 日本電子(株)分析機器営業本部 環境機器販促グループ 安東和人 環境セミナー2008 X線を試料に照射し、試料から発生した蛍光 X線を検出器で検出する。試料に含まれる 元素の種類と濃度を非破壊で分析できる。 フィルター X線管球 検出器 試料 試料室 CCD カメラ コリメータ 蛍光X線分析装置(EDXRF)RoHSスクリーニングに広範に使用されて いるが、ユーザからは次のような質問が多く寄せられる。ここではA.Bついて紹介する。 ARoHSスクリーニング/ばらつき、異常な結果 BRoHS5元素以外の測定 ・塩素(Cl)測定 ・玩具の8元素(Sb,As,Ba,Cd,Cr,Pb,Hg,Se)測定 C一般の試料の分析 ・材料の受け入れ検査(定量分析) ・メッキ厚みの測定 D操作法の説明 ・検量線法 蛍光X線分析についてよくある質問

蛍光X線分析についてよくある質問 - JEOL...プラスチックと一緒にはんだを測定すると 異常な分析結果となる X線管 検出器 プラスチック

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蛍光X線分析についてよくある質問

日本電子(株)分析機器営業本部環境機器販促グループ 安東和人

環境セミナー2008

X線を試料に照射し、試料から発生した蛍光X線を検出器で検出する。試料に含まれる

元素の種類と濃度を非破壊で分析できる。

フィルター

X線管球検出器

試料

試料室

CCD カメラ

コリメータ

蛍光X線分析装置(EDXRF)はRoHSスクリーニングに広範に使用されているが、ユーザからは次のような質問が多く寄せられる。ここではA.とBに

ついて紹介する。

A. RoHSスクリーニング/ばらつき、異常な結果 

B. RoHS5元素以外の測定・塩素(Cl)測定・玩具の8元素(Sb,As,Ba,Cd,Cr,Pb,Hg,Se)測定

C. 一般の試料の分析・材料の受け入れ検査(定量分析)・メッキ厚みの測定

D. 操作法の説明・検量線法 

蛍光X線分析についてよくある質問

A.RoHSスクリーニング

ばらつき、異常な結果

蛍光X線分析の大前提

1)蛍光X線分析法はばらつきを持つ: 

分析値>3σで初めて検出されたといえる

2)試料は均一でなければならない

3)X線照射域に試料以外の物質があってはならない

A.蛍光X線分析法はばらつきを持つ分析値>3σで初めて検出されたといえる

試料 : 鉛フリーはんだ(Sn96.5%、Ag3.5%)

測定 : MetalCalib

測定結果

分析値>3σで初めて検出されたといえる

試料名 日時 分析対象 結果 単位 3σSolder-4 2008/5/13 12:45 Cd 61.4 ppm 179.7Solder-4 2008/5/13 12:47 Pb 345.4 ppm 93.0Solder-4 2008/5/13 12:51 Cr 73.7 ppm 111.0Solder-4 2008/5/13 12:47 Br 5.9 ppm 24.3Solder-4 2008/5/13 12:47 Hg 95.2 ppm 220.5Solder-4 2008/5/13 12:43 openspec 0 ppm

試料 : 鉛フリーはんだ (Sn96.5%、Ag3.5%)

測定 : MetalCalib

3σは検出限界と考える。検出されたのはPbのみ。

繰り返し測定結果

1回目 2回目 3回目結果 3σ 結果 3σ 結果 3σ

Cd 61.4 179.7 123.4 182.7 155.7 180.3Pb 345.4 93 .0 418.2 94.8 335.5 91.8Cr 73.7 111.0 81 .3 110.1 128.4 107.1Br 5.9 24 .3 10 .5 25.2 11 .7 25.5Hg 95.2 220.5 9 .5 218.4 57 .4 205.8

蛍光X線分析法はばらつきを持つ・ 複数回測定すると値が異なる・ 真値±3σ内に分布する

測定時間による3σの差

測定時間 1倍 4倍 16倍結果 3σ 結果 3σ 結果 3σ

Cd 116.5 364.2 61.4 179.7 58.6 93.3Pb 299.0 164.1 345.4 93.0 324.5 48.0Cr 232.8 220.8 73.7 111.0 98.4 56.1Br 30.5 44 .7 5.9 24 .3 6.3 13 .5Hg 61.3 428.4 95.2 220.5 23.1 113.4

蛍光X線分析法はばらつきを持つ・ 測定時間4倍で3σは1/2に向上

試料のセッティングとX線照射領域1mmΦコリメータでは中央約1×1.4mmΦ

7mmΦコリメータ(Cd,Pb,Crフィルター)では約10×15mmΦ  

NG : 

中心が外れている

OK : 

正しいセッティング

NG : 

測定領域内に別の物質がある

1mmΦコリメータ

7mmコリメータ

視野 別の物質

試料

プラスチックと一緒にはんだを測定すると異常な分析結果となる

X線管 検出器

プラスチックBCR680はんだ

ステージ

はんだのみ 後ろにBCR680 BCR680組成結果 3σ 結果 3σ 組成

Cd 61.4 179.7 642 .8 147.0 140.8Pb 345.4 93.0 1390.4 158.1 107.6Cr 73.7 111.0 5126.3 378.6 114.6Br 5.9 24.3 13314.3 224.1 808.0Hg 95.2 220.5 1176.2 354.0 25.3

プラスチックと一緒にはんだを測定すると異常な分析結果となる

はんだの後ろにBCR680がある

プラスチックと一緒にはんだを測定すると異常な分析結果となる

プラスチックの検量線

はんだの検量線

【Pb検量線模式図】

Pb濃度 ppm

PbLβ

強度

・ プラスチックからはX線が発生しやすい。・ プラスチックから発生したX線をはんだの  検量線で定量するため、大きな分析  結果として算出される。・ はんだを基板についたまま分析すると  大きな(異常な?)値が算出される。・ 分析のためにははがして単一物質と  することが大切である。P

bLβ

ハロゲン(特にCl)のスクリーニング

ハロゲン分析の重要性ハロゲン系有機化合物は人体に有害なものが多い

ハロゲン系有機化合物は安定で埋め立て処理にも限界がある

焼却処理ではダイオキシン等、有害ガス発生の危険性がある

グリーン調達上の要請ハロゲン(Br、Cl)フリー化

最大許容濃度 1000ppm以下

分析法例 燃焼イオンクロマトグラフィー法

⇒迅速分析の必要性があり、蛍光X線に期待

ClはEDXRFで検出できる

1. 一般にEDXRFではNa(12)以上の元素が検出できる

2. ClKαにはRhLαが重なる / フィルターが必要

3. 大気の吸収により感度は真空中の1/4大気中のArがClKαに近接する

4. 検量線法による定量分析手順標準試料の準備と検量線作成が必要

1.EDXRFではNa(12)以上の

元素が検出できる

測定対象

塩素の測定例

• 塩ビ(PVC)• 左端の大きなピークがClKα• 50kV Open 大気

keV0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00

CP

S

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

ClRh

RhRh

Rh SnSn

ClKα

2.ClKαにはRhLαが重なる微量のCl測定にはフィルターが必要

keV

1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

CP

S

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0 RhL

α

RhL

β ArK

αA

rKα

ClK

αフィルターなし

Crフィルター

keV

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00

CP

S

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

CuLa1

,2

AlK

aSiK

a

SKa S

Kb1

RhLa1

RhLb1

CdLa1

KKa

KKb1,

3C

aKa

ILa1

CaK

b1

ILb1

BaL

a1

BaL

b1

BaL

b2

FeK

a

FeK

b1

CuK

a

真空

大気

←C

lKα

位置

試料:ガラス

大気によるX線の吸収

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25

X線エネルギー(keV)

強度

%(大

気/真

空)

BrCuFe

Cr

Ti

K

AlP

Cl

HgPb

CdMo Ag

真空測定に対する大気測定のX線強度比

3.ClKαの感度は大気の吸収により真空中の1/4大気中測定ではArKαがClKαに近接する

keV

1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

CP

S

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

ArK

α

SKα

ClK

α

CaK

α

真空中

大気中

4.標準試料の準備と検量線作成が必要

• Cl濃度の保障された市販標準試料例 : BCR-680、BCR-681 (PE系)

EC681K、EC680K

• 検量線作成プログラム(標準装備)の利用

• 検量線作成手順

検量線作成と定量分析の手順

1)標準試料は板状に加工(加熱整形プレス)

2)全標準試料を測定しデータを保存

3)検量線作成プログラムで検量線作成、保存

4)検量線法での定量分析

未知試料を測定しデータ入手

定量分析するとバルクFP法での結果が表示される  定量条件をバルクFPから検量線に変更

  Cl検量線名を指定すると定量結果が得られる

1)標準試料は板状に加工(加熱整形プレス)

BCR-680 BCR-681作成した板状試料加熱整形プレス機

検量線作成と定量分析の手順

測定と検量線作成は【保守パネル】⇒【測定・分析】,【検量線】で可能となる

測定、データ保存

検量線作成

2)全標準試料を測定しデータを保存

測定

データ保存My Document¥JEOL¥data

3)検量線作成プログラムで検量線作成、保存

使用する測定データの登録

元素の指定

検量線の新規作成 測定データと元素の指定

ファイル選択後クリック

検量線作成と保存

標準試料の分析値手入力、検量線作成と保存

①測定データ

③分析値を手入力

②X線強度が

自動入力

④検量線が自動作成

⑤検量線保存

4)検量線法での定量分析

【測定】⇒【分析】 のあと、定量条件をバルクFPから検量線に変更し

保存した検量線を指定すると定量結果が得られる

①試料測定

②定量分析

③定量条件変更

④検量線法選択

⑤検量線名指定

⑥検量線法での分析結果

塩素(Cl)測定の注意事項

注意事項

・ 異なる材質(PE試料以外)では誤差が生じる可能性がある

・ 未知試料と標準試料は形状を揃える厚みや面積の補正はされていない

その他

・ 標準試料さえ準備すれば別の元素や他の材料でも

  検量線作成は可能

・ 市販標準試料はごくわずかしかない

独自に化学分析した試料は標準試料として使用できる

異なる材質(PE試料以外)では誤差が生じる可能性がある

PE (C2H4)

ベース

セルロース(C6H10O5)ベース,

K、Ca 数%含有

【Cl検量線模式図】

Cl濃度 ppm

ClK

α強

蛍光X線分析装置(EDXRF)はRoHSスクリーニングに広範に使用されて

いるが、ユーザからは種々の質問が寄せられる。今回は以下の2例について紹介した。

A. RoHSスクリーニング/ばらつき、異常な結果

蛍光X線はばらつきを伴う分析法である分析値>3σではじめて検出されている

試料は単一物質として測定することが大切 

B. RoHS5元素以外の測定

塩素(Cl)測定標準試料が入手できれば検量線法が適用できる

 

蛍光X線についてよくある質問 まとめ