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2019 年 12 月・2020 年 1 月の問題
先月の解答・解説
図1 ペントミノ(5-omino)
図1の図形はペントミノ(Pentomino, 5-omino)といい、5つの正方形を辺で繋げたものです。ペン
トミノは 12 種類あります。
(1) 正方形ではない他の図形を5つ繋げると、何種類の図形ができるで
しょうか。
たとえば図2のような、正三角形を繋げたもの(5-iamond)や立方体を
繋げたもの(5-polycube)、正六角形を繋げたもの(5-polyhex)は何種
類でしょう。
(2) (1)で挙げた図形のほかに、同じような考察ができる図形はあるでし
ょうか?いくつか考えてみてください。
図2
様々な図形
解説
正方形を何個かつなげたものをポリオミノ(Polyomino)といい、5個つなげたものはペントミノといいま
す。「poly-」は、主に化学で目にする(ポリマーなど)接頭辞ですが、元はギリシャ語の「多い、たくさんの」
が由来のようです。
n 個の正方形をつなげたポリオミノは「n-ポリオミノ」、あるいはペントミノなど個別の名前で呼ばれ、
1, 1, 2, 5, 12, 35, 108, 369, 1285, ...
のように種類が増えていきます。5-ポリオミノは 12 個です。
(1) さて、正方形以外にもつなげられる図形はあります。これをポリフォーム(Polyforms)といい、今回は
三種類を紹介しました。
たとえば正三角形を n 個繋いだポリイアモンド(Polyiamond, あるいは Triangular Polyomino や Triangular
Polyform とも言う)という図形派があります。n = 5の場合は次の 4 種類があります。
n を大きくするとパターン数は
1, 1, 1, 3, 4, 12, 24, 66, 160, ...
と増えていきます1が、ポリオミノよりは数が少ないようです。もっと先まで見てみる(n=30 まで知ることが
できました)と、n が 1 つ増えるとパターン数が約三倍になっていることが観察できました。
n がもっと大きいときにどうなるのかは調べられませんでしたが、ポリオミノでは約四倍になることが証明さ
れている2ので、ポリオミノの数のほうがずっと大きいのは間違いなさそうです。
三角形のかわりに六角形を使う Polyhex というものもあり、これはn = 5で 22 パターンあります。
(図:wikipedia「Polyhex」より引用)
1 https://oeis.org/A000577 2 Barequet, Gill. "λ > 4: An Improved Lower Bound on the Growth Constant of Polyominoes". Retrieved 2017-02-02.
Polyhex の数は
1, 1, 3, 7, 22, 82, 333, 1448, 6572, ...
と増加していきます。これは、約五倍のペースで増加していますね。
最後に Polycube ですが、これは
1, 1, 2, 8, 29, 166, 1023, 6922, 48311, ...
と増加していきます。n=5 のときは 29 個の Polycube があります。そのうち 12 個は平面的なポリキューブ、つ
まり実質ペントミノと同じものです。
図:平面的なペンタキューブ。12 個存在する。
図:平面的でないペンタキューブ。17 個存在する。
青(色が濃いもの)が一段目、黄色(色が薄いもの)が二段目にある。
それぞれの数は
Polyiamond(三角形)<Polyomino(四角形)<Polyhex(六角形)<Polycube(立方体)
となっているようです。単純につなげられる辺(面)の数が多い方がパターンが増えるのだと推測されます。
Polyhex と Polycube はどちらも辺(面)が 6 個ですが、Polycube の数のほうが多いのは三次元で考えた方が自
由度が大きいということでしょうか?
(2) もっといろいろな図形をつなげてみましょう。
(1)で扱った四つの図形は、どれも平面や空間を充填できるという性質がありました。たとえば正五角形は敷き
詰めができない図形なので、n=5 ならまだしも n=10,20,…の場合を考えるのは難しそうです。
僕が一番始めに考えついたのは、四次元の立方体、五次元の立方体、…を考えることでした。四次元立方体
は正八胞体と呼ばれ、8 つの「胞」で隣の立方体とつながることができます。したがって三次元立方体の
Polycube より多くのパターン数が存在すると考えたのですが、実際 4 次元の n−Polycube は
1, 1, 2, 7, 27, 164, 1316, 12757, 134174, …
個存在し3、5次元では
1, 1, 2, 7, 26, 154, 1172, 12049, 148508, …
個存在します4。
n が大きいところでは高次元のほうが多いものの、n が小さいところ(n=4,5,6)では低次元のほうが多いとい
うことがわかりました。むしろ少なくなっていることがわかりました。これは「低次元だと区別していたもの
(鏡像)を高次元では区別しなくなる」ことの影響が n が小さいところで大きくなるからです。この様子は 50
年くらい前の論文5にまとめられています。
他には、平面を充填する図形として「直角二等辺三角形」や「30°, 60°, 90°の三角形」などがあるのでこ
れを使うことができます。もちろん一般の三角形が平面充填可能なのですが、この 2 枚は鏡像を混ぜて並べる
ことができるので考えがいがあります。
鏡像をまぜて並べた例
3 https://oeis.org/A255487 4 https://oeis.org/A290305 5 W. F. Lunnon, “Counting multidimensional polyominoes” The Computer Journal, Volume 18, Issue 4, 1975,
Pages 366–367,
直角二等辺三角形で Polyform を考えたものを Polyabolo、あるい
は Polytan といい、n=3 の Polyabolo は右の 4 つがあります。
Polyabolo の数は
1, 3, 4, 14, 30, 107, 318, 1116, 3743, …
で6、Polyomino よりも多いです。(なぜか考えてみましょう)
30°, 60°, 90°の直角三角形がどのような名前かは調べてもわかり
ませんでした(ので、詳しく調べてみると面白いかもしれません)。そ
のかわりただし、「30°, 30°,120°」の三角形で考えた Polyform に
Polypons という名前がついていることは発見できました。
他に、「Snub Square Tiling」という右のような平面充
填で Polyform を考えるという面白い試みも見つけまし
た。この場合のパターン数は
2, 2, 4, 10, 28, 79, 235, 720, 2254,…
だそうです7。
ほかにも正方形を 3 次元でつなげていく Polysquare、正方形を辺だけでなく頂点でつながっていてもよいとす
る Polyking(あるいは Pseudo polyomino)など、さまざまなものがあります。
数えるだけでも楽しいです。ぜひいろいろ考えてみてください。
6 https://oeis.org/A006074 7 https://oeis.org/A309159