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イチジクの新病害(株 枯病) - maff.go.jp...イチジクの新病害(株 枯病) 学名:Ceratocystis fimbriata 英名:Ceratocystis canker (Ellis et Halsted) J・A・ELLIOTT

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Page 1: イチジクの新病害(株 枯病) - maff.go.jp...イチジクの新病害(株 枯病) 学名:Ceratocystis fimbriata 英名:Ceratocystis canker (Ellis et Halsted) J・A・ELLIOTT

イチジクの新病害(株 枯病)

学 名:Ceratocystis fimbriata

英 名:Ceratocystis canker

(Ellis et Halsted)

J・A・ELLIOTT

愛知県では 、稲作転換事業でイチジクが最も有

利な転換作物として普及したが、48年頃から夏期

に葉が萎ち ょうするイチジク園が見受けられ 、50

年頃からは 、立枯症状を呈するようにな り問題と

な っている。現在 、発生は愛知 、山口、岐阜 、三

重の各県でも見られている。

被害と病徴 本病は5月 から10月 の高温乾燥時に

新梢の先端葉が萎ちょうする。更 に進むと下葉ま

での黄化 、または葉の周囲からの枯れ込みが見 ら

れ、最後には果実を残 して落葉する。り病樹の根

の基部は腐敗枯死し、篩管部や形成層 、導管部に

沿って褐変を生じる。木質部は黒褐色となって腐

敗し、枯死する。

被害は、愛知県弥富町の例によると、53年約5

haの面積に7,500本 栽植されていたものが 、同年

夏の高温 と干ばつで、被害も激しく、4,000本がり

病枯死した。その後 、再植 しても1年 後には、同

様に高率で発

病枯死して栽

培は断念される程であった。

本病原菌は 、土壌伝染性で、分散は苗の移動に

伴うものと考えられている。病原菌のC.fimbriata

はサツマイモ黒 斑病 の 病原 菌と同じである。イ

チジク菌はサツマイモ、サ トイモには病原性はな

いが 、サツマイモ菌はイ チジクにも病原性を示す。

本病 と類似の症状を示すものに白絹病 、白紋羽

病 、疫病があるが 、白絹病は地際部の主幹に白色

絹糸状の菌糸が密生し、更に菌核を多数形成する。

白紋羽病は太根や地下部の主幹に白色の根状菌糸

束がまん延する。疫病は病斑部の皮層は軟化腐敗

すること等から区別できる。

防除方法としては、愛知県農業総合試験場で各

種の試験を実施しているが、的確な防除法は見当

たっていない現状にある。

キンケクチブ トゾウムシの発生状況と防除

本情報第5号 で既報のとお り、昨年静岡県駿東

郡小山町の園芸会社の農場で発生が確認されたキ

ンケクチブ トゾウムシは、同農場から出荷された

植物の一部に付着して、他の都道府県にも分散し

ている疑いが持たれ 、農林水産省の指示により昨

年6月 から7月の間、全国的な発生調査が実施された。

調査は 、寄生の疑いの強いコ トネアスター 、シ

クラメン、ベゴニア及びピラカンサについて流通

販売先の判明したもの全てを対象に、関係都道府

県と植物防疫所が協力して実施された。

調査結果 発生農場からは 、昭和49年 から56年 ま

での間にピラカンサが約9,000本 、コ トネアスター

が約77,000本 出荷されており、このうち 、ピラカ

ンサ約3,000本 、コ トネアスター約42,000本 の流

通 、販売先が判明した。

これらの大半は、公園等の公共施設に既に植え

付けられていたが、一部は取扱い造園業者等の園

内に仮植されていた。

一方 、シクラメン、ベゴニアは、全て小売用の

鉢物ですでにほとんどが一般家庭に小売 りされて

おり、追跡調査が困難であった。

調査の結果は別表のとお りで、6都 府県の13地

点において、シクラメン 、ベゴニア及びコ トネア

スターの3種 類の植物に寄生していることが確認

された。寄生が確認された植物で、最も出荷が早

いものは、昭和54年2~3月 に出荷されたコ トネ

イチヂク株枯病の病微愛知県農業総合試験場

加藤喜重郎氏提供

植物防疫病害虫情報 第7号(1982年3月15日)

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アスターで、それ以前に出荷されたものでは寄生

が認められなかった。また、ピラカンサでは全く

寄生を認めなかった。

寄生の確認されたベゴニア 、シクラメンについ

ては、全て回収廃棄処分した。

防除対策 当初発生が確認された園芸会社の農場

については 、5月 に幼虫を対象とした防除試験を 、

また、7~8月 には成虫を対象とした防除試験を

それぞれ実施した。

10月に実施した防除効果確認調査では 、従来 、

幼虫が高い密度で発見されていた地点においても 、

完全な殺虫効果が確認されたが 、試験区周辺の一

部で幼虫が若干発見されたため 、11月 に前回と同

様な方法で幼虫防除試験を行った。

この他の流通先等の発見地点についても、すべ

て定期的な薬剤散布と防除効果の確認を兼ねた発

生調査を実施しており、今後も根絶確認 まで継続

する予定である。

キンケクチブトゾウムシ発生調査結果

発生確認場所

東京都小金井市

〃 日野市

〃 中野区

〃 杉並区

神奈川県港南区

静岡県清水市

静岡県大仁町

大阪府堺市

〃 富田林市

〃 河南町

兵庫県山南町

広島県広島市

〃 東広島市

寄 主 植 物

コ トネアスター

シクラメン

ベゴニア

コ トネアス ター

シクラメン

シクラメン

シクラメン

コ トネアスター

コ トネアスター

コ トネアスター

コトネアスター

コトネアスター

コトネアスター

調査年月 発 生 状 況

56.3 コトネアスター(ビ ニールポッ ト植

え)13鉢 中3鉢 から幼虫

56.3シクラメンの廃棄土(1鉢 分)か ら幼虫

56.3ベゴニア1鉢 から成虫及び蛹

56.6園芸業者園内に保管中のコトネアスター(ビ ニールポット)及びその周辺のツゲ、ツツジ等から幼虫及び成虫

56.4 シクラメン1鉢 から成虫

56.3シクラメン14鉢を調査の結果幼虫

56.3シクラメン5鉢 中1鉢 から幼虫

56.4病院の庭に植付けられているコトネアスターから幼虫及び蛹

56.7 公共施設に植え付けられているコトネアスターから死成虫

56.6 園芸業者園内のコトネアスターから死成虫

56.6 コトネアスターから成虫

56.4

56.4

}県の公園等に植付けられているコ

トネアスターから幼虫

備 考

広島県下へ流通した分と同一荷口

我が国未発生細菌病の抗血清による診断への利用

植物細菌病の診断 、同定にあたっては 、病徴によ

る診断 の他 、グラム染色 、培地上の形態等培養 、生

理的性質など数10種 に及ぶ細菌学的性質を調査す

るが、これらの技法は多くの労力と期間を必要と

する。これに対 して血清学的診断法は 、これまで

の多くの研究から精度が高く 、手法も簡便で、し

かも迅速性に富むなど診断技法として多くの利点

を備えていることから、植物検疫の分野において

も実際の検査の中で広く応用されている。

植物防疫所では、これまでの研究や応用の結果

にもとづき、我が国未発生細菌病の抗血清による

植物検疫における利用について 、検討を進めてい

る。外国産細菌の導入にあたっては、農林水産大

臣の特別許可を受け、宿主植物 、産地等の違いに

よる菌株間の血清反応 を考慮し、既報の文献等を

参考に必要最少限の菌株を導入した。これらの細

菌は、大臣の許可条件に定められた利用条件にも

とつく厳重な管理の下で取扱い、抗血清の作成や

血清学的類縁関係、診断精度等の試験を行った。

その結果 、現在までに次に掲げる4種 の細菌の

抗血清を作成した。細菌病の診断には、それぞれ

の細菌で作製した抗血清による血清学的診断法が、

植物検疫においてスク リーニング法として十分対

応 し得ることがわかり、今後 、これら細菌病の早

期発見などにも利用価値は大 きいものと思われる。

病 原 菌(菌 株番号) 宿生植物

Corynebacterium((NCPPB156) キ ク

〃 (NCPPB469) イチゴ

〃 (NCPPB1488) スイー トピー

〃 (NCPPB2210) チ ュー リップ

C.flaccumfaciens pv.flaccumfaciens(NCPPB178) インゲンマメ

〃 (NCPPB390) 〃〃 (NCPPB567) 〃

〃 (NCPPB1751) 〃

Erwinia amylovora(NCPPB311) ナ シ

〃 (NCPPB595) 〃〃 (NCPPB683)neo-type 〃〃

〃 (NCPPB717) サンザシ

〃 (NCPPB1591) ナ シ

〃 (NCPPB1734) 〃

〃 (NCPPB1952) サンザシ〃 (NCPPB2079) リンゴ

〃 (NCPPB2080) ナ シ

〃 (NCPPB2086) サンザシ

〃 (NCPPB2135) ナ シ

〃 (NCPPB2213) リンゴ

〃 (NCPPB2291) スグ リ

Xanthomonas campestris pv.oryzicola(NCPPB1585) イ ネ

〃 (NCPPB1632) 〃

〃 (Philippine) 〃

産 地

イギ リス

アメ リカ

ハンガリー

東 ドイツ

ルー マニア

アメリカ

イギリス

オランダ

エジプト

オランダ

ニ ュージーラン ド

ポーラン ド

デンマーク

アメリカ

マレー シア

フィ リピン

(病菌課 高山睦雄)

植物防疫病害虫情報 第7号(1982年3月15日)