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-第4版- 平 成 31年 4月 高齢者虐待防止マニュアル

千葉市 高齢者虐待防止マニュアル - Chiba...4 第2章 千葉市の高齢者虐待防止体制(ネットワーク体制) 1 関係機関との連携 高齢者虐待防止法第16条では、市町村は高齢者虐待の防止や養護者への支援を適切に

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  • -第 4版 -

    平 成 31年 4月

    千 葉 市

    千 葉 市

    高齢者虐待防止マニュアル

  • 目 次

    第 1章 高齢者虐待とは(高齢者虐待防止法の概要)

    1 目的等について

    (1)目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

    (2)定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

    2 養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等について

    (1)市町村への通報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    (2)市町村の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    (3)養護者に対する支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    (4)連携協力体制の整備等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

    3 養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等について

    (1)市町村への通報等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    (2)都道府県への通報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    (3)市町村長又は都道府県知事の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    4 その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    第2章 千葉市の高齢者虐待防止体制(ネットワーク体制)

    1 関係機関との連携 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

    2 関係機関に期待される役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

    第3章 養護者による高齢者虐待への対応

    1 高齢者虐待の対応体制の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

    2 具体的な高齢者虐待対応の流れ

    (1)発見 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

    (2)相談・通報受理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

    (3)基本情報の収集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

    (4)初動対応の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

    (5)事実確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

    (6)支援方法の検討・協議 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

    (7)支援の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

    (8)モニタリング・見守り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

  • 3 養護者と高齢者を分離させるための手段

    (1)居室の確保 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

    (2)老人福祉法上のやむを得ない措置について ・・・・・・・・・・・・ 24

    第4章 養介護施設従事者等による高齢者虐待への対応

    1 養介護施設従事者等による虐待への対応の特徴 ・・・・・・・・・・・・ 29

    2 対応の流れ

    (1)対応フロー図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

    (2)通報の受理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

    (3)事実確認 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

    (4)虐待の事実を確認した場合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

    (5)千葉県への報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

  • 1

    第 1 章 高齢者虐待とは(高齢者虐待防止法の概要)

    高齢者に対する虐待が深刻化し、社会問題化するのを受け、平成 17年 11月 1日に「高

    齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」が成

    立し、平成 18年 4月 1日に施行されました。

    1 目的等について

    (1)目的

    高齢者虐待の防止に関する国等の責務、虐待を受けた高齢者に対する保護のための

    措置、養護者に対する支援のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、

    養護者に対する支援等に関する施策を促進し、高齢者の尊厳の保持を図ることを目的

    としています。

    (2)定義

    ① 「高 齢 者」:65歳以上の者

    ② 「養 護 者」:高齢者を現に介護する者であって養介護施設従事者等以外の者

    例)高齢者の世話をしている家族、親族、同居人

    ③ 「養介護施設従事者等」:「養介護施設」又は「養介護事業」の業務に従事する職員

    ④ 「高齢者虐待」:高齢者が他者からの不適切な扱いにより権利利益を侵害される状態

    や生命、健康、生活が損なわれるような状態に置かれることで、以

    下のように分類されます。

    種 類 定 義 例

    身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴力を加えること。

    ・平手打ちする ・つねる ・蹴る ・火傷させる ・ベッドに縛り付ける

    介護・世話の

    放棄・放任

    (ネグレクト)

    高齢者を衰弱させるような著しい減食、長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること。

    ・入浴しておらず、悪臭がする。 ・室内にゴミを放置し劣悪な環境の中で

    生活させる。 ・水分や食事を十分に与えないことで、脱水症状や栄養失調状態にある。

    心理的虐待

    高齢者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行なうこと。

    ・怒鳴る、ののしる、悪口を言う。 ・排泄の失敗等を人前で話し、恥をかか

    せる。 ・高齢者が話しかけているのに、意図的

    に無視する。 ・侮蔑をこめて子どものように扱う。

    性 的 虐 待 高齢者にわいせつな行為をすること、又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

    ・排泄の失敗に対し、懲罰的に下半身を裸にして放置する。

    ・キス、性器への接触

    経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分すること、その他高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

    ・日常生活に必要な金銭を渡さない。 ・年金や預貯金を本人の意思・利益に反

    して使用する。

  • 2

    2 養護者による高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等について

    (1)市町村への通報

    ①養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、高齢者の生命

    又は身体に重大な危険が生じている又は重大な危険が生じるおそれがある場合は、

    市町村へ通報しなくてはならない。

    ② ①に定める場合のほか、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見

    した者は、市町村へ通報するよう努めなくてはならない。

    ※ 虐待者本人が市町村に届け出ることも可能

    (2)市町村の対応

    ① 相談、指導、助言を行う。

    ② 事実確認のための措置を講ずる。

    ③ 生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる高齢者を一時

    的に保護するため、迅速に老人福祉法による措置を講じ、又は適切に成年後見制度

    の市長申立てを行う。

    ④ ③の措置をとるために必要な居室を確保するための措置を講ずる。

    ⑤ 市町村は、高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、立入調査をす

    ることができる。

    ⑥ 立入調査を行うにあたって、所轄警察署長に援助を求めることができる。

    (3)養護者に対する支援

    ① 市町村は、養護者の負担軽減のため、養護者に対する相談、指導及び助言等その他

    必要な措置を講ずる。

    ② ①の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担軽減を図るため緊急

    の必要があると認める場合に、高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室

    を確保するための措置を講ずる。

    (4)連携協力体制の整備等

    ① 市町村は、養護者による高齢者虐待の防止等の適切な実施のため、地域包括支援セ

    ンター等との連携協力体制を整備しなくてはならない。

    ② 市町村は、ア)相談、指導、助言、イ)通報の受理、ウ)事実確認のための措置、

    エ)養護者に対する支援、の事務を地域包括支援センターに委託することができる。

  • 3

    3 養介護施設従事者等による高齢者虐待の防止等について

    (1)市町村への通報等

    ① 養介護施設従事者等は、自分が働いている施設等で高齢者虐待を受けたと思われる

    高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければならない。

    ② 養介護施設従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、

    当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに市町村に通

    報しなければならない。それ以外の場合は、市町村に通報するよう努めなくてはな

    らない。

    ※ 虐待者本人が市町村に届け出ることも可能

    (2)都道府県への通報

    市町村は、(1)による通報または届出を受け、当該通報又は届出に係る事実の確認を

    行った結果、虐待の事実が認められた場合、又は更に都道府県と共同して事実確認を行

    う必要が生じた場合は都道府県に報告するものとする。

    (3)市町村長又は都道府県知事の対応

    市町村長又は都道府県知事は、(1)による通報又は(2)による報告を受けた場合

    は、適切に老人福祉法又は介護保険法による監督権限を行使するものとする。

    4 その他

    市町村は、財産上の不当取引による被害を受け、又はおそれのある高齢者に係る成年

    後見制度利用開始の審判請求を行う。

    参考:「養介護施設」又は「養介護事業」

    養介護施設 養介護事業 養介護従事者等

    老人福祉法

    による規定

    老人福祉施設

    有料老人ホーム 老人居宅生活支援事業

    「養介護施設」又

    は「養介護事業」

    の業務に従事す

    る者

    介護保険法

    による規定

    介護老人福祉施設

    介護老人保健施設

    介護療養型医療施設

    介護医療院

    地域密着型介護老人福祉施設

    地域包括支援センター

    居宅サービス事業

    地域密着型サービス事業

    居宅介護支援事業

    介護予防サービス事業

    地域密着型介護予防サービス事業

    介護予防支援事業

  • 4

    第2章

    千葉市の高齢者虐待防止体制(ネットワーク体制)

    1 関係機関との連携

    高齢者虐待防止法第16条では、市町村は高齢者虐待の防止や養護者への支援を適切に

    実施するため、あんしんケアセンター(地域包括支援センター)等の関係機関、民間団体

    との連携体制を整備することとされています。

    千葉市においても、関係機関の連携・協力体制の構築のために、高齢者虐待に関係する

    機関の代表者からなる「千葉市高齢者虐待防止連絡会」を設置し、千葉市全体の高齢者虐

    待防止体制の検討や、情報交換、また、各虐待ケースに対応するための「個別ケース会議」

    の支援を行います。

    また、「個別ケース会議」においては、高齢者虐待に関係する機関の担当者を集め具体的

    な虐待ケース対応の検討・支援策の実施を行います。

    <千葉市高齢者虐待防止連絡会と個別ケース会議について>

    千葉市高齢者虐待防止連絡会 個別ケース会議

    役 割

    ・虐待問題への認識の向上

    ・個別ケース会議が円滑に行われる

    環境作り

    ・高齢者虐待防止体制の検討

    ・高齢者虐待に関する情報交換

    ・情報の共有化により、虐待や関連す

    る情報を正確に把握する

    ・個別ケースの問題点を明確にする

    ・関係機関の役割を確認する

    ・対応策を検討する

    ・個別ケースの支援策を実施する

    開催頻度 2年に1回 必要に応じて

    関係機関

    千葉市医師会

    千葉県弁護士会

    千葉市警察部

    千葉市社会福祉協議会

    千葉市社会福祉事業団

    千葉県在宅サービス事業者協議会

    千葉県訪問看護ステーション連絡協議会

    千葉市介護支援専門員協議会

    民生委員児童委員協議会

    千葉市老人クラブ連合会

    千葉市町内自治会連絡協議会

    認知症の人と家族の会

    千葉市あんしんケアセンター(地域包括支援センター)

    千葉市

    (地域包括ケア推進課・介護保険事業課・高齢福祉課・各区保健福祉センター)

  • 5

    2 関係機関に期待される役割

    関係機関 主な役割

    医 療 機 関

    ・ 診療時に虐待と疑われるようなものがあれば、あんし

    んケアセンターなど関係機関への連絡

    ・ 施設入所のための診断書作成

    ・ 緊急入院などの判断

    ・ 診断、体調の確認

    警 察

    ・ 事件性の高い高齢者虐待発生時の加害者に対する指

    導、警告、検挙等

    ・ 地域の見守りパトロール

    ・ 立入調査の援助協力

    弁 護 士 ・ 専門的な見地からの高齢者虐待防止体制に対する助言

    ・ 虐待ケース対応への助言

    ケ ア マ ネ ジ ャ ー

    ・ 虐待が疑われる高齢者の早期発見及びあんしんケアセ

    ンターへの相談、連絡

    ・ 家庭の状況や虐待についての情報の整理

    ・ 高齢者、養護者の相談、支援

    ・ 介護保険サービスの調整など、高齢者、養護者への対

    介 護 保 険 事 業 者

    ・ サービス利用時の高齢者、養護者の変化を見逃さず、

    ケアマネジャー、あんしんケアセンターへ相談、連絡

    ・ 生活支援の中での状況の観察

    ・ 虐待ケースの見守り

    ・ サービス提供による精神的支援

    老 人 福 祉 施 設

    ・ 措置受入の協力

    ・ 施設入所の相談

    ・ 虐待を発見した場合地域包括ケア推進課または介護保

    険事業課への相談、通報

    民 生 委 員

    ・ 虐待が疑われる高齢者の早期発見及びあんしんケアセ

    ンターへの相談、連絡

    ・ 虐待ケースの見守り、声かけ

    自 治 会

    ・ 虐待が疑われる高齢者の早期発見及びあんしんケアセ

    ンターへの相談、連絡

    ・ 虐待ケースの見守り、声かけ

    老 人 ク ラ ブ

    ・ 虐待が疑われる高齢者の早期発見及びあんしんケアセ

    ンターへの相談、連絡

    ・ 虐待ケースの見守り、声かけ

    認知症の人と家族の会 ・ 養護者の介護ストレスに対して、同じ悩みを持つ立場

    から対応の工夫等についての相談、支援

    社 会 福 祉 協 議 会 ・ 日常生活自立支援事業の活用・成年後見制度の相談

  • 6

    あんしんケアセンター

    (地域包括支援センター)

    ・ 総合相談

    ・ 初動調査(関係機関、相談者などからの情報収集、訪

    問調査)

    ・ 必要な措置や制度へつなげる(関係機関との調整)

    ・ 個別ケース会議の開催

    ・ 虐待ケースの管理、ケース記録票の作成

    ・ 養護者に対する相談・ケア

    地域包括ケア推進課

    ・ 高齢者虐待防止体制の検討

    ・ 高齢者虐待防止連絡会の開催

    ・ 研修会や講演会等の啓発事業の実施

    ・ 高齢者虐待等のための居室確保

    ・ 施設虐待発生時の関係機関との調整

    高 齢 福 祉 課 ・ 老人福祉法上のやむを得ない措置費の対応

    介護保険事業課 ・ 施設における虐待発生時の対応

    保健福祉センター

    高齢障害支援課

    高 齢 支 援 班

    ・ あんしんケアセンターのサポート

    ・ 身体に重大な危険が生じている場合の立入調査

    ・ 緊急ショートステイ、居室確保事業の利用、老人福祉

    法上のやむを得ない措置等の決定

    高齢障害支援課

    介 護 保 険 室 ・ 介護保険の申請手続き

    社 会 援 護 課 ・ 生活保護の適用

    健 康 課 ・ 定期健診などによる見守り、訪問

    ・ 養護者に対するケア

  • 7

    発 見

    相 談 ・ 通 報 受 理

    基 本 情 報 の 収 集

    初 動 対 応 の 検 討

    事実確認 (訪問調査 )

    支援方法の検討・協議

    支 援 の 実 施

    モニタリング・見守り

    第3章 養護者による高齢者虐待への対応

    1 高齢者虐待の対応体制の概要

    高齢者虐待ケースの基本的な対応の流れを示すと次のようになります。

    それぞれの具体的な対応については、8ページから記載しています。

    高齢者虐待対応の基本的な流れ

  • 8

    2 具体的な高齢者虐待対応の流れ

    (1)発見

    高齢者虐待をしている養護者本人には、虐待をしているという認識がない場合が多く、ま

    た虐待を受けている高齢者自身も養護者をかばう、知られたくないなどの思いがあるため虐

    待の事実が表面化しにくく、家庭内における高齢者虐待は発見されにくい状況にあります。

    虐待を早期に発見し、問題の深刻化を防ぐためには、近隣住民をはじめ、地域の民生委員

    や自治会などの地域組織、介護保険サービス事業者など高齢者を取り巻く様々な関係者が高

    齢者虐待に対する認識を深め、虐待の可能性も念頭において活動することが必要です。

    虐待のリスク要因としては、次表のとおりですが、多くの要因が複雑に関与して虐待にい

    たるとされています。高齢者を取り巻く様々な関係者は、リスク要因を十分理解し、予防的

    な支援を行うことも重要です。

    < 高 齢 者 虐 待 の 要 因 と 例 示 >

    要 因 内 容

    高 齢 者 側 の 要 因

    寝たきりの状態などになり、身の回りのことができなくな

    る(要介護状態)

    認知症、精神的な障害などにより問題行動が目立つ

    性格が頑固で、自己中心的である

    介護者に対して感謝の意を表さない(反抗的、挑戦的)

    虐 待 者 側 の 要 因

    自分の健康状態に不安を持っている

    介護負担が大きい

    精神障害やアルコール依存がある

    性格が依存的であったり、未熟性がある

    介護の知識が乏しく、介護技術が未熟である

    家 族 内 の 関 係 性 に

    起 因 し た 要 因

    高齢者と虐待者が過去から人間関係が悪い(恨み、憎しみ

    の感情などがある)

    家族内に他に病人がいる

    家族内で介護者が孤立している、協力者がいない

    家族環境、社会的要因

    経済的な不安がある(借金、失業、支出の増大)

    近隣者との交流が少ない

    家族が家庭内の暴力を容認する意識がある

    介護保険サービスに費用がかかることや福祉サービスなど

    に不満があり利用に消極的である

    次に、高齢者虐待における事実確認項目(サイン)のチェックリストの例を挙げま

    した。高齢者虐待の発見には次のようなチェックリストを利用することも有効です。

    各関係機関は、高齢者や養護者・家族等に虐待が疑われるサインが見られる場合に

    は、積極的に相談に乗って問題を理解するとともに、一つの機関で問題を抱え込まず

    に相談窓口等につなぐようにし、関係機関が協働して対応にあたるようにします。

  • 9

    事実確認項目(サイン)

    ※1:「通」:通報があった内容に○をつける。「確認日」:行政および地域包括支援センター職員が確認した日付を記入。

    ※2:太字の項目が確認された場合は、『緊急保護の検討』が必要。

    通 確認項目 サイン:当てはまるものがあれば○で囲み、他に気になる点があれば(  )に簡単に記入 確認方法

    頭部外傷(血腫、骨折等の疑い)、腹部外傷、重度の褥そう、その他(  )

    部位:           大きさ:                

    全身状態・意識レベル 全身衰弱、意識混濁、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    脱水症状 重い脱水症状、脱水症状の繰り返し、軽い脱水症状、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    栄養状態等 栄養失調、低栄養・低血糖の疑い、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    身体に複数のあざ、頻繁なあざ、やけど、刺し傷、打撲痕・腫張、床ずれ、その他(     )

    部位:           大きさ:        色:        

    体重の増減 急な体重の減少、やせすぎ、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    出血や傷の有無 生殖器等の傷、出血、かゆみの訴え、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    衣服・寝具の清潔さ 着の身着のまま、濡れたままの下着、汚れたままのシーツ、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    身体の清潔さ 身体の異臭、汚れのひどい髪、皮膚の潰瘍、のび放題の爪、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    適切な食事菓子パンのみの食事、余所ではガツガツ食べる、拒食や過食が見られる、その他(            )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    適切な睡眠 不眠の訴え、不規則な睡眠、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    行為の制限自由に外出できない、自由に家族以外の人と話すことができない、長時間家の外に出されている、その他(    )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    不自然な状況資産と日常生活の大きな落差、食べる物にも困っている、年金通帳・預貯金通帳がない、その他(      )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    住環境の適切さ 異臭がする、極度に乱雑、ベタベタした感じ、暖房の欠如、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    恐怖や不安の訴え 「怖い」「痛い」「怒られる」「殴られる」などの発言、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    保護の訴え「殺される」「○○が怖い」「何も食べていない」「家にいたくない」「帰りたくない」

    などの発言、その他(         )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    強い自殺念慮 「死にたい」などの発言、自分を否定的に話す、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    あざや傷の説明 つじつまが合わない、求めても説明しない、隠そうとする、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    金銭の訴え「お金をとられた」「年金が入ってこない」「貯金がなくなった」などの発言、

    その他(       )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    性的事柄の訴え 「生殖器の写真を撮られた」などの発言、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    話のためらい 関係者に話すことをためらう、話す内容が変化、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    おびえ、不安 おびえた表情、急に不安がる、怖がる、人目を避けたがる、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    無気力さ 無気力な表情、問いかけに無反応、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    態度の変化家族のいる場面いない場面で態度が異なる、なげやりな態度、急な態度の変化、その他(        )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    適切な医療の受診 家族が受診を拒否、受診を勧めても行った気配がない、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    適切な服薬の管理本人が処方されていない薬を服用、処方された薬を適切に服薬できていない、その他(            )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    入退院の状況 入退院の繰り返し、救急搬送の繰り返し、その他(           )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    適切な介護等サービス必要であるが未利用、勧めても無視あるいは拒否、必要量が極端に不足、

    その他(            )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    支援のためらい・拒否 援助を受けたがらない、新たなサービスは拒否、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    費用負担 サービス利用負担が突然払えなくなる、サービス利用をためらう、その他(       )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    支援者への発言「何をするかわからない」「殺してしまうかもしれない」等の訴えがある、その他(          )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    保護の訴え 虐待者が高齢者の保護を求めている、その他(             )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    暴力、脅し等 刃物、ビンなど凶器を使った暴力や脅しがある、その他(             )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    高齢者に対する態度 冷淡、横柄、無関心、支配的、攻撃的、拒否的、その他(         )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    高齢者への発言「早く死んでしまえ」など否定的な発言、コミュニケーションをとろうとしない、

    その他(            )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    支援者に対する態度援助の専門家と会うのを避ける、話したがらない、拒否的、専門家に責任転嫁、その他(         )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    精神状態・判断能力 虐待者の精神的不安定・判断力低下、非現実的な認識、その他(          )1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    その他1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    社団法人日本社会福祉士会 作成(出典:東京都老人総合研究所作成様式を参考に作成)

    養護者の態度等

    適切な支援

    話の内容

    確認日

    表情・態度

    生活の状況

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    1.写真 2.目視(  ) 3.記録(  )

    4.聴き取り(   ) 5.その他( )

    身体の状態・けが等

    外傷等

    あざや傷

  • 10

    <警察からの通報について>

    警察からの通報に関しては、各警察署生活安全課より、高齢者虐待事案通報票(参考資

    料:各様式集 高齢者虐待事案通報票)により、地域包括ケア推進課あてに通報されるこ

    とになります。

    その場合は、地域包括ケア推進課が各区保健福祉センター高齢障害支援課へ通報票の写

    しを送付し、各区高齢障害支援課があんしんケアセンターと連携して対応にあたるものと

    します。

    (2)相談・通報受理

    千葉市の高齢者虐待相談窓口

    千葉市においては、高齢者虐待対応の窓口としてあんしんケアセンター(地域包括支援

    センター)が高齢者虐待の初期相談窓口として位置づけられています。相談、通報で発見

    に至った事例は、まず、相談または通報の受理を行います。ケースによっては緊急性が高

    い場合があり、即座の判断と迅速な対応を求められることもあります。そのような場合で

    あれば、第一報を受けた機関が対応を行うことになります。

    相談・通報受理時の確認事項

    ● 相談・通報を受けた際には、虐待の具体的な内容や程度、介護サービス等の利用状

    況や関わっている事業者などの情報をできるだけ、詳細に確認しておくことが大切

    です。

    ● 相談・通報受理時に確認しておきたい情報は以下のようなものが挙げられます。こ

    のほかにも、虐待ケースファイル(参考資料:各様式集 高齢者虐待ケースファイル)

    に掲げているような項目に関しては、わかる範囲で確認する必要があります。不明

    な部分に関しては、関係機関から情報を得る必要があります。また、虐待ケースフ

    ァイルは個別ケース会議等で支援の検討や実施のために活用するようにします。

    【初期相談時、相談者からの情報で確認しておきたい情報】

    ① 虐待の状況

    ・ 虐待の具体的な内容(身体的、ネグレクト等)は?

    ・ 緊急性が高いか?どのような状況からそう考えるのか?

    ・ 高齢者本人が救済を求めているか(本人の意思確認)

    ② 養護者(虐待者)と高齢者(被虐待者)の状況

    ・ 高齢者の意思表示能力、要介護状態は?

    ・ 虐待者とみなされる人はどのような関係の人か?他に家族はいるのか?

    ・ 誰かその家族に関わっている関係者がいるか?

    ③ サービスの利用状況や関係者の状況

    ・ 介護サービスを利用しているか?

    ・ 被虐待者との連絡がとりやすい関係者は誰か?

    ・ キーパーソンとなりえそうな人は誰か?

  • 11

    相談・通報内容の共有

    ● 相談・通報を受けたあんしんケアセンターまたは高齢障害支援課は、相談・通報内容

    の共有を図り、基本情報収集に向けたあんしんケアセンターおよび高齢障害支援課の

    役割を明確にします。

    (3)基本情報の収集

    通報内容を確認・補足するため、あんしんケアセンターは、高齢者・養護者の基本情

    報の収集を行います。

    保健福祉センターでは、高齢者(被虐待者)の要介護認定・介護保険サービスなどの

    利用状況・家族構成等を確認します。

    虐待ケースファイル記録の方法

    ア 記録の書式

    基礎情報及び相談・対応内容は相談表に記入します。支援記録は全過程にわたっ

    て作成します。(参考資料:各様式集 高齢者虐待ケースファイル)

    イ 目的

    ・ 行った援助内容を明確にし、援助が適切なものであるかの検証を継続します。

    ・ 援助経過記録を残し、対象者や関係者への説明を行えるようにします。

    ・ 援助の継続性を確保します(担当者の不在や交替時に備え、適切なチームアプロ

    ーチにつなげます)。

    ・ アセスメントや個別ケース会議の基礎資料とします。

    ・ 対応の適切性を振り返るための資料とします。

    ウ 記録に記載する内容

    高齢者虐待対応は援助課程であることを念頭に置き、援助結果だけでなく、プロ

    セスを記入するようにします。ただし、経過をすべて詳細に書くのではなく、どん

    な状況の高齢者や養護者にどのような対応をしたか、対応の根拠や背景を要領よく

    まとめて書く必要があります。

    対象者が直面している心理的・社会的問題、問題の背景、アセスメント、援助方

    針、結果、所感や考察などを、必要に応じて簡潔に書きます。専門用語や略語の使

    用は避けるようにします。

    エ 記録の管理

    情報の取扱には細心の注意をはらい、保管し、不在時には施錠を行うようにしま

    す。個人情報の保護やプライバシーへの配慮には最大限配慮します。

  • 12

    (4)初動対応の検討

    通報を受理した保健福祉センター高齢障害支援課では、通報内容及びあんしんケアセ

    ンター等が収集した基本情報を高齢障害支援課長及び高齢支援班長に報告して、虐待(疑)

    の判断(①虐待の疑いなし ②虐待状況の判断はできなかった ③虐待の疑いあり)と

    緊急性の有無を判断し、初動対応を検討する。

    緊急性の判断

    高齢者の生命や身体に危険な状態であるとき等は、即時の対応が必要となるため、ま

    ずは緊急性の有無について確認する必要があります。その際に、相談・通報者が緊急で

    あるかどうかを判断した根拠を具体的に聞いておくことが、その後の対応をスムーズに

    行うために役立ちます。

    初期相談時で明らかに、危険な状態であると判断される場合であれば、各区の保健福

    祉センター高齢障害支援課と連携を行い、分離の必要性を検討します。相談者からの情

    報では判断が難しい場合は、事実確認(訪問調査、関係機関からの情報収集)へ移りま

    す。

    【緊急性の判断の参考指標】

    緊急性の判断については、限られた情報と時間の中で難しい状況が予想されます。

    以下に緊急性の判断の参考指標を示します。

    レベル3(最重度) レベル2(重度~中程度) レベル1(軽度)

    生命、心身の健康、生活

    に関する危険な状態が

    生じている。

    生命、心身の健康、生活

    に著しい影響が生じてい

    る。

    生命、心身の健康、生

    活への影響が予想さ

    れる。

    身体的虐待

    暴力等によって、生命の

    危険がある。

    (重症の火傷、骨折、頭

    部外傷、首絞め、揺さぶ

    り、身体拘束 など)

    暴力等によって、比較的

    軽傷である打撲痕、内出

    血等が認められる。睡眠

    薬の過剰摂取による過度

    の睡眠状態。

    時々、軽くつねられ

    る、叩かれるといった

    状態がみられる。

    ネグレクト

    食事が与えられないこ

    とによる重度の低栄養

    や脱水症状。十分な介護

    を受けられないことに

    よる重度の褥瘡や、肺

    炎、戸外放置等。

    食事が与えられないこと

    による体重の減少がみら

    れる。十分な介護が受け

    られないことによる極め

    て不衛生、不潔な状態。

    一時的にケアが不十

    分な状態がある。状態

    に合ったケアがなさ

    れていない。

  • 13

    経済的虐待

    年金の搾取により、収入

    源がとだえ、食事が摂れ

    ない、電気、ガス、水道

    が止められる。

    年金の搾取等により、収

    入源がとだえ、支払が滞

    りがちとなる。

    他者が年金等を管理

    し、時折、本人の承諾

    なく使われている。

    心理的虐待

    著しい暴言や拒絶的な

    態度により、人格や精神

    状況に歪みが生じてい

    る。時に抑うつ状態や自

    殺を図るまでいたる。

    暴言や無視により、無気

    力や自暴自棄な状態にな

    っている。自己効力感の

    低下が著しい状態。

    無視や幼稚言葉や暴

    言があり、落ち込むこ

    とがある。

    性 的 虐 待

    同意のない性行為がな

    されること。わいせつな

    行為をすること、または

    させること。恒常的な行

    為がつづく、または性感

    染症などにいたる。

    排泄後、下半身を裸にし

    て放置するなど、心身の

    健康に影響のおそれがあ

    る状態。

    性的な言葉をかけ、接

    触、態度、視線をなげ

    かけられ、精神的に苦

    痛を感じている。

    ※ 意図的であるか否かは問いません。

    ※ 状況的に恒常性、継続性がみられ、改善の見込みがない場合は特に注意が必要です。

  • 14

    (5)事実確認(訪問調査)

    虐待の事実を確認するためには、訪問して高齢者の安全確認や心身の状況、養護者や家

    族等の状況を把握することが重要です。ただし、訪問による面接調査は、養護者・家族等

    や高齢者本人にとっては抵抗感が大きいため、調査を拒否するケースも少なからずあると

    考えられます。一旦拒否された場合には、その後の支援を受け入れなくなるおそれもあり

    ます。また、事前に得られた情報から調査員の訪問が受け入れられにくい(信頼関係が築

    きにくい)ことが予想されるような場合もあります。

    このようなときは、高齢者や養護者・家族等と関わりのある機関や親族、知人、近隣住

    民などの協力を得ながら安否の確認を行う必要があります。また、訪問調査に関しては、

    客観的に事実を判断するためや、状況によっては担当者の危険が及ぶ場合等を考慮して、

    決して単独で行わず複数で行うものとします。虐待ケースにより、あんしんケアセンター、

    各区保健福祉センター職員、担当ケアマネジャー、担当民生委員、ヘルパー等の訪問調査

    を行いやすい立場にいる人、今後支援の実施に関係してくる人など、連携協力して対応し

    ます。

    【事実確認時のポイント】

    ○ 訪問調査時

    ・ 虐待者に虐待を疑っているということがわからないように訪問する。

    ・ 健康相談の訪問など、理由をつけて介入を試みる(健康課等に協力願い)

    ・ 一方的に虐待者を悪と決め付けず、先入観を持たないで対応する。

    ・ 介護負担軽減のためのアドバイスを行う。

    (介護保険制度の説明、市で行っている事業の説明等)

    ○ 情報収集の方法

    ・ 関係者から広く情報を収集する。

    ・ 無理な情報収集は避け、信頼関係を作る。

    ・ キーパーソンとなりうる人を探す。

    ○ 解決すべきことは何か本人や虐待者の状況から判断する。(一人の価値観で判断し

    ない)

    ・ 緊急分離が必要か。

    ・ 一次分離かサービス提供、家族支援か。

    ・ けがの程度などから、医療が優先される場合であれば主治医に連絡して状況を伝え

    指示を仰ぐ。

  • 15

    介入拒否時の対応

    ● 多くの事例において、高齢者本人や家族による介入拒否が事実確認の障害となって

    います。介入拒否を解消するためには、まずは本人や家族の思いをうけとめ、粘り

    強く接触を持つことで信頼関係を作っていくことが必要となります。

    【介入拒否時の対応のポイント】

    ① 本人や家族の思いを理解・受容する

    ・ 高齢者虐待の問題として家族を批判したり責めたりすることはしない。まずは、本

    人や家族の思いを理解、受容する。家族を追い込まない。

    ・ 「虐待者=加害者」と捉えるのではなく、虐待者が抱えている悩みや困惑、疲労に

    ついて、苦労やねぎらいながら理解を示していく。これまで介護などでがんばって

    きたことを評価し、ねぎらう。

    ・ 本人や家族の思いを理解・受容することによって信頼関係をつくり、何でも話しや

    すい関係性に結びつける。

    ② 名目として他の目的を設定して介入

    ・ 虐待のことで介入すると悟られることのないよう、名目としては違う目的を設定し

    て介入する。例えば、介護保険の認定調査や保健師による健康診断、調査(意識調

    査など)が考えられる。

    ③ 訪問や声かけによる関係作り

    ・ 定期的に訪問したり、「近くを通りかかったので」といった理由や他の理由を見つ

    けて、訪問したり声かけを行う。

    ・ 訪問や声かけを通じて、時間はかかるが細く長く関わることに配慮する。本人に会

    うことができたり、家族に連絡がとれたり、近隣から情報を聞けることがある。

    ④ 家族の困っていることから、段階を踏みながら少しずつ対応の幅を広げる

    ・ いきなり虐待の核心にふれるのではなく、家族の一番困っていることは何かを探

    り、それに対して支援できることから順に対応していく。例えば介護保険のサービ

    ス提供などで家族の介護負担を軽減することから始めるなど。

    ⑤ 家族側のキーパーソンの発掘、協力関係の構築

    ・ 本人の意思決定に影響を与えうる人を家族、親族などの中から探し出し、その協力

    を得て援助を展開する。

    ⑥ 主たる支援者の見きわめ

    ・ 主たる支援者と本人・虐待者の相性が良くないなどの場合には、主たる支援者を変

    更したり、他の機関・関係者からアプローチしてもらったりなどの方策をとること

    も考える。

    ・ 高齢者本人が医療機関に受診している場合には、医師の説得が効く場合があるた

    め、医師等との連携も視野に入れて対応を図る。

  • 16

    立入調査に関して

    ● 高齢者虐待防止法の成立により、高齢者の安否の確認ができず、高齢者の生命や身

    体の重大な危険が強く懸念される場合には、市町村の権限として立入調査を実施す

    ることが可能となりました。(法第11条)

    ● 立入調査権は市町村の権限のため、各区保健福祉センター高齢障害支援課職員によ

    り行うこととなります。(参考資料:各様式集 立入調査証)

    ● 立入調査といっても、例えば、養護者等が立入調査を拒否し施錠してドアを開けな

    い場合、鍵やドアを壊して立ち入ることを可能とする法律の条文がない以上、この

    ようなことはできません。

    ● このように、立入調査の権限を発動しても無条件に居所に立ち入れるわけではなく、

    あらかじめ立入調査を執行するための準備(例えば管理人に合鍵を借りる、出入り

    する時間帯をチェックする、ドアを確実に開けてもらうための手段や人物を介在さ

    せる、等)を綿密に行うことが必要となります。

    ● 関係者からの情報などで、高齢者とコンタクトがとれる場合であれば、その方法を

    優先します。しかし、どうしてもコンタクトがとれず、かつ高齢者の安否が気遣わ

    れるようなときには、立入調査権の発動を検討する必要があります。

    ● 正当な理由がなく、法第11条第1項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しく

    は忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁を

    し、若しくは高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円

    以下の罰金に処されることとなっています。(法第30条)

    警察に対する援助要請

    ● 立入調査の実施にあたり、養護者から物理的な抵抗を受けるおそれがあるなど、警

    察官の援助が必要と判断される場合等には、警察署長への援助要請を行います。

    ● この場合は所轄の警察署の生活安全課あてに援助依頼書を提出し、状況の説明と立

    入調査に関する事前の協議を行います(緊急の場合を除きます)。また、警察への援

    助依頼を行う場合は、各区保健福祉センター高齢障害支援課が行います。(参考資

    料:各様式集 高齢者虐待事案に係る援助依頼書)

    ● 立入調査は市町村の所管部署が、法に基づき主体的に実施するもので、警察官の職

    務ではありません。警察官は職務執行の現場に臨場したり、現場付近で待機したり、

    状況により市町村職員と一緒に立ち入ります。

    ● 警察官は高齢者の生命又は身体の安全を確保するために、必要な警察官職務執行法

    その他の法令の定める措置を講じます。

    ・虐待の制止(警察官職務執行法第5条)及び立入(同法第6条第1項)

    警察官は、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは、その予防のため関

    係者に必要な警告を発し、又、もしその行為により人の生命若しくは身体に危険が

    及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があって、急を要する場合においては、そ

    の行為を制止することができる。(法第5条)

  • 17

    警察官は、危険な事態が発生し、人の生命、身体又は財産に対し危害が切迫した

    場合において、その危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、

    已むを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において他人の土地、

    建物又は船車の中に立ち入ることができる。(法第6条第1項)

    ・被虐待者(高齢者)の保護(同法第3条)

    警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して次の各号のいずれ

    かに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相

    当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、病院、救護施設等の適当

    な場所において、これを保護しなければならない。

    1 精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼ

    すおそれのある者

    2 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認

    められる者(本人がこれを拒んだ場合を除く。)

    ・虐待者(養護者)の逮捕(刑事訴訟法第213条)

    現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。

    ● こうした連携を円滑に行うためには普段から警察署との連携体制を構築することが

    大切です。

    (6)支援方法の検討・協議

    適切な支援方法の検討

    ● 支援方法の決定に当たっては、関係機関からの情報収集、訪問調査、高齢者本人の

    意思確認等をおこない、それらを総合的に判断し検討します。また、必要に応じて、

    個別ケース会議を開催することにより、関係機関と連携して対応するようにします。

    個別ケース会議の開催

    ● 個別ケース会議は、個別の虐待事例に対する援助方針、援助内容等を具体的に協議

    する場であり、高齢者虐待への対応の中で中核をなすものです。

    ● 個別ケース会議を開催する場合は、あんしんケアセンターがキーコーディネーター

    となり複数の関係機関の招集を行います。(各区保健福祉センター高齢障害支援課は

    サポートを行います)

    ※キーコーディネーターの果たすべき役割には、当該事例にかかわる関係者や関係

    機関からの情報の集約、情報の分析による支援方針についての協議の進行・決定、

    対象者の状態像の継続的な確認(モニタリングの実施もしくは報告受理)、関係者間

    の連絡調整等があります。

    ● 個別ケース会議では今までまとめた、ケースファイル等を活用し効率的に話合いを

    進めるようにします。

    ● 個別ケース会議を開催した場合、あんしんケアセンターは記録をとり残しておくよ

  • 18

    うにします。記録は第2回の開催、第3回の開催に活用していくようにします。ま

    た、会議録は各関係機関に送付し、情報共有を行います。

    個別ケース会議は、処遇を検討し実施(家族との分離等)したら終了ではなく、その

    後も、ケースを支援するために(いずれ居宅に戻れるように)一定期間ごとに開催し、

    処遇検討を行なっていく必要があります。

    【個別ケース会議を開催することにより協議・確認するポイント】

    ① 関係者の情報の共有化

    事前にまとめてある、高齢者虐待ケースファイルの内容を踏まえ、各関係機関がも

    つ情報を補足し、情報を共有します。事前に情報交換をしていたとしても、新たな情

    報が出てくる場合もあります。一つでは取るに足らない情報と思われても、いくつか

    の情報をあわせると意味を持つことがあります。

    ② 虐待の有無の判断

    事実確認・収集された情報から虐待の有無を判断します。虐待の事実はない(虐待

    が疑われる事実等が確認されなかった)、収集した情報が十分ではなく判断できなか

    った、虐待の事実が確認された(虐待が疑われる事実が確認された)のいずれかに整

    理し、虐待の事実が確認された場合、具体的にどの虐待類型に属するのかを確認しま

    す。

    ③ 課題の明確化

    高齢者や家庭の状況を整理し、問題となっている事項を明確にします。その上で、

    問題発生の背景についても検討し、共通の認識を図ります。

    ④ 今後の支援の方向性の検討

    虐待ケースの緊急性や一時保護の必要性等について話し合い、共通の認識を持ちま

    す。初回の会議では、当面の支援方法を決定し、継続的な支援を行っていく場合には、

    中・長期的な見通しについても話合い、方針を立てます。

    ⑤ 関係機関の役割分担の明確化

    各関係機関(者)のできることを出し合って、どのような支援を行うか話し合います。

  • 19

    (7)支援の実施

    あんしんケアセンターおよび個別ケース会議により、援助方針の決定を行ったのちに、

    各関係機関の協力のもと支援の実施にうつります。なお、緊急性の度合いにより求められ

    る対応も大きく左右されてきます。以下、予想される具体的な対応についてフローチャー

    トを示しました。

    また、個別ケース会議の時点において高い緊急性が認められなくても、その後の対応時

    に状況が急変し、深刻化するケースもあることを踏まえ、常に状況を把握し、柔軟に対応

    できるようにしておく必要があります。

    各関係機関の協働と連携を基盤とする

    あんしんケアセンターでのアセスメント及び個別ケース会議

    での援助方針を受けて

    最重度

    (主にレベル 3)

    重度~中程度

    (主にレベル2)

    軽度

    (主にレベル1)

    [危機的介入対応]

    ・ 高齢者居室確保事業の利用

    ・ 緊急ショートステイの利用

    ・ やむを得ない事由による措

    ・ 警察による一時保護

    ・ 病院への入院

    [社会的資源の活用・

    調整・相談対応]

    ・ 介護保険サービス等の調整

    ・ ケアプランの変更

    ・ 成年後見申立支援

    ・ 日常生活自立支援事業の

    ・ 活用

    [予防的対応]

    ・ 継続的見守り訪問

    ・ 介護相談

    ・ 介護保険サービスの紹介

    ・ 市の事業の紹介

  • 20

    【具体的な支援方法】

    虐待要因ごとの具体的な援助方法について例を挙げます。

    支援については、関係機関との連携が必要不可欠なため、個別ケース会議などにより連

    携を図り、各関係者の役割分担を把握しておく必要があります。

    要 因 具 体 的 な 支 援 方 法 関 係 機 関 等

    養護者や家族に介

    護負担・ストレス

    がある場合

    ・定期的に訪問や電話をしたりして、養護者(虐

    待者)の話を聞き、家族ががんばっていること

    を支持する。

    ・在宅サービスを導入したり、増やしたりする。

    (デイサービスやショートステイを活用する)

    ・同居の家族や別居の親族の間で介護負担の調整

    を勧める。

    ・施設入所を検討する。

    ・市の事業などを紹介する。

    ・あんしんケアセンター

    ・保健福祉センター

    ・民生委員

    ・介護サービス事業者

    ・老人クラブ

    ・自治会

    養護者や家族に介

    護の知識技術が不

    足している場合

    ・介護の知識、技術についての情報提供(介護保

    険サービスの紹介)を行う。

    ・在宅サービスを導入し、サービス提供の中で知

    識、技術を伝える。

    ・市や県などが行う、介護に関する講座等の紹介

    をする。

    ・あんしんケアセンター

    ・保健福祉センター

    ・保健師

    ・介護サービス事業者

    認知症がある場合

    ・家族に認知症の症状やかかわり方の情報提供、

    説明、指導する。

    ・認知症についての相談窓口(ちば認知症相談コ

    ールセンターや認知症疾患医療センターによる

    医療相談等)を紹介する。

    ・服薬等で症状のコントロールが可能な場合もあ

    るため、専門医(物忘れ外来等)を紹介し、診

    断・治療につなげる。

    ・日常生活自立支援事業、成年後見制度の活用を

    検討する。

    ・あんしんケアセンター

    ・保健福祉センター

    ・ちば認知症相談コール

    センター

    ・認知症疾患医療センター

    ・医療関係者

    ・成年後見支援センター

    高齢者や家族に精

    神疾患等の問題が

    ある場合

    ・精神疾患、アルコール依存など保健所、医療機

    関につなげる。

    ・地域で見守りを実施する。

    ・日常生活自立支援事業、成年後見制度の活用を

    検討する。

    ・あんしんケアセンター

    ・保健福祉センター

    ・保健師

    ・民生委員

    ・成年後見支援センター

    経済的な困窮があ

    る場合

    ・生活保護の申請につなげる。

    ・社会福祉協議会が実施する生活福祉資金制度の

    利用につなげる。

    ・保健福祉センター

    ・社会福祉協議会

  • 21

    (8)モニタリング・見守り

    モニタリング

    援助計画に沿った対応が実施されてから、その内容を評価していくことがモニタリング

    になります。計画どおりに効果的な対応がなされているかについて関係機関で連携を行い、

    援助の評価を行っていきます。

    高齢者虐待の状況は変化が起こりやすく、緊急性があまりなかったケースが突然急変し

    たり、いったん消失していた虐待状況の再発から危機介入にいたる場合もあるため、継続

    的、定期的な見守りが必要となります。

    援助の終結

    高齢者虐待の援助の終結には、主に2つのパターンがあります。

    ① 援助目標が達成され、虐待状況が消失し、高齢者、養護者ともに主体性をもって、

    今後の新たな問題にも取り組んでいこうとする場合。

    ② 何らかの事由で援助の継続がなされなくなった場合。例えば、高齢者の長期にわた

    る継続的な入所や入院、死亡、転出あるいは虐待者との完全分離などが想定されます。

    ※ ただし、①の場合など特に、状況の変化が起こったときに虐待状況が再発しやすいこ

    とを意識し、援助目標の達成が行われても、その後のかかわりを見守りの意味も含め

    て必要となります。

    【モニタリングのポイント】

    ・ 援助目標は達成されたか、あるいはどの程度、達成されているか

    ・ 新たな状況変化や問題が発生していないのか

    ・ 高齢者や養護者のニーズや思いの変化がないか

    ・ 援助計画は適切であったか、また今の状況はどうか

    ・ 高齢者や養護者が計画や対応にどのような感想をもっているか

    ・ 援助計画のとおりの対応過程がとられているか

    ・ 関係各機関がニーズに沿った対応役割をおこなっているか

  • 22

  • 23

    3 養護者と高齢者を分離させるための手段

    (1)居室の確保

    高齢者虐待防止法第10条では、市町村は、養護者の心身の状態から緊急の必要がある

    と認める場合に高齢者を短期間施設に入所させ、養護者の負担軽減を図るため、必要とな

    る居室を確保するための措置を講ずるものとされています。

    そこで、千葉市においても「緊急ショートステイ事業」及び「高齢者虐待等居室確保事業」

    を実施し、高齢者を一時保護するための施設を確保しています。

    <千葉市緊急ショートステイ事業と千葉市高齢者虐待等居室確保事業の違い>

    千葉市緊急ショートステイ事業 千葉市高齢者虐待等居室確保事業

    目 的

    高齢者が親族等からの虐待等により、生命または身体に重大な危険が生じて

    いるおそれがあると認められる高齢者を一時的に保護し、高齢者の安全を確

    保する。

    対 象 者

    市内に居住する 65 歳以上の高齢者

    のうち、要介護状態の認定を受けてい

    る者又はこれと同等の身体又は精神状

    況にある者

    ・介護者等の急な病気又は介護の放棄

    若しくは介護者等による虐待により

    介護を受けられない場合

    ・警察に保護されており、認知症等に

    より居住地が不明なため、一時的に

    保護を必要とする場合

    市内に居住し、養護者による高齢

    者虐待を受けていて、在宅での生活

    が困難である者

    ※ただし、次のいずれかに該当する

    者は除く。

    ・伝染性疾患又は特別な理由により、

    利用が不適当であると認められる

    ・医療機関において入院加療の必要

    があると認められる者

    利 用 施 設 市内の特別養護老人ホーム 市内の養護老人ホーム

    利用手続き

    ① 緊急に家族等から引き離す必要がある場合は、各区保健福祉センター高齢

    障害支援課に相談します。

    ② 各区保健福祉センター高齢障害支援課はあんしんケアセンターや居宅介

    護支援事業所、その他関係職員と連携を取った上で、高齢者の状況を把握

    し、委託先の施設と連携を図ります。(要介護認定が未申請の場合は、要介

    護認定の申請をします)

    ③ 各区保健福祉センター高齢障害支援課が状況を判断し、利用を決定しま

    す。

    利 用 料 金 介護保険の負担額+その他 1日につき 393 円(生活保護者は無

    料)+その他

  • 24

    (2)老人福祉法上のやむを得ない措置について

    ① 趣旨・目的

    家族から虐待を受けているなど「やむを得ない事由」により介護保険サービスを受けら

    れない高齢者に対して、老人福祉法の規定に基づき、市が職権を持って、必要な介護サー

    ビスを提供する制度です。

    短期入所や特別養護老人ホームへの入所など家族等の同意がなく緊急に分離が必要な場

    合に有効な制度です。

    ② やむを得ない事由とは

    ➢ 事業者と「契約」して介護サービスを利用することや、その前提となる要介護認

    定の「申請」を期待できない場合

    ➢ 65 歳以上の者が養護者による虐待を受け、保護される必要がある場合又は 65 歳

    以上の者の養護者がその心身の状態に照らし養護の負担を軽減する必要がある場

    ③ 措置の内容

    市は必要に応じて、次のサービスを提供することができます。

    ア 居宅サービスの利用(老人福祉法第 10 条の4)

    ➢ 訪問介護

    ➢ 通所介護

    ➢ 短期入所生活介護

    ➢ (看護)小規模多機能型居宅介護

    ➢ 認知症対応型共同生活介護

    イ 特別養護老人ホームへの入所(老人福祉法第 11 条第 1 項第 2 号)

  • 25

    ④ やむを得ない事由による措置の手順

    手 順 内 容

    ①発見 通報、相談等により高齢者虐待の発見

    ②調査 あんしんケアセンター、各区保健福祉センター高齢障害支援課等

    により実態調査を実施

    ③要介護認定

    高齢者が要介護認定を受けていない場合は、市の職権で要介護認

    定を実施

    ④措置決定 ②及び③に基づき措置決定

    ⑤サービス提供 高齢福祉課が事業所と委託契約を結び、介護保険サービスの提供

    開始

    ⑥費用支弁 利用者負担分を高齢福祉課が措置費で支弁

    ⑦費用徴収 高齢者の状態に応じて高齢福祉課が費用を徴収

    ⑧やむを得ない事由

    の解消

    ・特別養護老人ホームへ入所したことにより、養護者から離脱で

    きた場合

    ・成年後見制度の活用により、本人の意思で契約できる状態にな

    った場合

    ⑨措置解除

    措置を解除し、本人は通常の契約による介護保険サービス利用に

    移行

    【やむを得ない措置のポイント】

    ① 家族が反対していても措置が行える

    「やむを得ない措置」は高齢者本人の福祉を図るために行われるものであり、本人が

    同意していれば、家族が反対している場合であっても、措置は行える。

    また、高齢者の年金を家族が本人に渡さないなどにより、高齢者本人が費用負担でき

    ない場合でも、「やむを得ない措置」を行うべきときは、まず措置を行うことが必要であ

    る。

    さらに、高齢者本人が医療機関の受診を拒んでいるため要介護認定ができない場合で

    も「やむを得ない措置」を行うことが可能である。

    ② 定員超過の取扱が認められる

    短期入所(特別養護老人ホームの空床利用の場合)及び特別養護老人ホームについて、

    「市町村のやむを得ない措置」によって定員を超える場合は、定員の 100 分の 105 を乗

    じて得た数まで定員超過が認められる。

    ※ あくまでも一時的かつ特例的なものであることから、速やかに定員超過利用を解

    消する必要がある。

  • 26

    老人福祉法による「やむを得ない事由による措置」関係機関事務処理流れ図

    ③市の委託によるサービス提供

    利 用 者 事 業 者

    ④実費負担

    ②措置によるサービス提供依頼

    ④措置費負担金支払

    ①やむを得ない事由による措置

    ④措置費支弁 ④介護保険給付

    ②委託契約締結

    ②措置開始通知

    保健福祉 高齢福祉課

    センター

    国保連合会

  • 27

    千葉市単独による措置・関係機関事務処理流れ図

    ③市の委託によるサービス提供

    利 用 者 事 業 者

    ④実費負担

    ②措置によるサービス提供依頼

    ④措置費負担金支払

    ①市単独による措置

    ④委託料

    (10割)

    ②委託契約締結

    ②措置開始通知

    保健福祉 高齢福祉課

    センター

  • 28

    あり

    なし 自立判定

    虐待の相談・発見・通報

    あんしんケアセンター

    各区保健福祉センター

    状況確認 (実態把握調

    査)

    介入の必要性

    要介護認定

    本人の判断能力

    本人の同意

    成年後見人等の代理人の有無

    やむを得ない事由による措置

    立入調査の可能性あり

    他の支援方法の検討

    職権による要介護申請に

    より認定の可能性あり

    介護保険契約利用

    介護保険契約利用の

    調整

    代理人による契約利用

    成年後見申立て

    他親族との代理人調整

    高齢者虐待等居室確保事業

    生活支援ハウス

    ケアハウス入所 等

    確認できない

    なし

    あり

    なし

    なし

    あり

    あり

    なし

    緊急ショートステイ事業

    やむを得ない事由による措置フローチャート

  • 29

    第4章

    養介護施設従事者等による高齢者虐待への対応

    1 養介護施設従事者等による虐待への対応の特徴

    養介護施設従事者等による虐待の対応の特徴としては、老人福祉法や介護保険法に規定

    された、市町村や都道府県の権限を行使することで解決を図っていくことがあげられます。

    緊急性の判断や、当面とるべき措置の検討などは養護者による虐待の場合と大きな違い

    はありませんが、苦情処理として対応するのが適当かどうかの判断や、比較的早期の段階

    で、行政と当該事業者によるやり取りが中心になることなども、特徴として挙げられます。

    養介護施設職員であれ、高齢者等の家族等であれ、高齢者本人であれ、虐待と思われる

    通報を受けた時には、迅速かつ正確に行政機関につなげていくことが重要になります。

  • 30

    養介護施設従事者等による高齢者虐待対応フロー図

    2 対応の流れ

    (1)対応フロー図

  • 31

    (2)通報の受理

    養介護施設従事者等による高齢者虐待の相談に関しては、地域包括ケア推進課が窓口と

    なります。

    緊急性の判断

    〔緊急性が高い場合〕

    ➢ 施設等が、虐待が行われていることの認識が無く、虐待防止に対応していない場

    合や、再発の危険性がある場合

    ➢ 虐待が行われているにもかかわらず、施設等が虐待者をかばっていると認められ

    る場合

    ➢ 高齢者本人が明確に保護を求めていると認められる場合

    〔緊急性が低い場合〕

    ➢ 現在、入院中である、あるいは虐待が行われている施設等のサービスを利用して

    いない場合

    ➢ 施設等が適切に対応し、介護担当者を変更していたり、事実確認などの内部調査

    を実施している場合

    ➢ 虐待者がすでに退職するなど対応をとっている場合

    【相談・通報時の確認事項】

    ・ 通報者の立場や氏名

    ・ 虐待があると思われる事業施設

    ・ 日時と具体的な場所

    ・ 虐待を行った疑いのある職員の氏名

    ・ 従事者個人なのか、事業者全体なのか

    ・ 虐待の種類と頻度

    ・ 虐待の経過(以前からなのか初めて見たのか)

    ・ 受けているダメージの程度

    ・ 通報者が考える緊急性の程度

  • 32

    (3)事実確認

    ① 施設への説明

    通報があった場合、施設長・事業所の管理者等に対し、通報があったこと、この通報を

    受けて確認調査を開始すること、虐待された高齢者の状況、調査の進展段階で施設関係者

    からの聴取を行うことなどを説明しておくことが必要です。これにより、施設が自主的に

    内部調査に入ることが期待されます。

    また、通報等がなされた養介護施設従事者の勤務する施設に対する事実確認は、当該施

    設の任意の協力の下に行います。

    ② 施設長・事業所の管理者等からの事実確認(参考資料:各様式集 高齢者虐待事情聴取)

    通報があった場合や疑いの段階で虐待が断定されない場合は、次の項目により施設等の

    管理者から事情聴取を行うことになります。

    ア 虐待防止に対する管理者、職員の意識

    管理者の虐待防止に対する意識を確認するとともに、職員に対する指導方針等を

    確認することにより、施設等の虐待に対する姿勢を知ることが可能となります。

    イ 虐待防止に向けた取り組みの状況

    虐待防止に関する会議や研修の実施状況を確認し、職員への周知の状況等を確認

    します。

    ウ 過去の虐待発生の状況及びその対応の状況

    過去の虐待発生の有無を確認し、虐待の事実があった場合は、どのように確認し

    たのかなど、具体的な確認方法等を聞いていきます。

    エ 担当職員変更の申し出

    過去に、本人や家族から、担当職員の変更を申し出された事例はなかったか確認

    します。

    オ 再発防止の取り組み

    虐待防止に向けて、介護技術の向上や認知症への理解を深めるための職員の研修

    を実施しているかを聴取します。

    カ 高齢者に対するサービスの提供状況

    高齢者の日課、サービス提供の状況や内容、その提供時の記録を介護日誌、看護

    日誌等で確認します。

    その内容から虐待の事実、虐待が行われたと思われる日時が確認できる場合や、

    その時にサービスを提供していた職員の特定(推定)が可能となる場合があります。

    キ 通報等の内容にかかる事実確認、状況の説明

    通報等の内容に基づき、高齢者は身体的虐待や心理的虐待を受けたかどうかの事

    実確認を行い、虐待の疑いも含めその状況について事情聴取をします。

  • 33

    ク 職員の勤務体制

    虐待があったと疑われる日の職員の勤務体制等を確認し、過度な勤務状況は無か

    ったか、問題は無かったか等について事情聴取します。

    ケ 虐待を行った疑いのある職員の勤務状況

    虐待を行った疑いのある職員の勤務状況(欠勤は多くないか、勤務状況は良好か

    等)や性格、生活状況、同僚との人間関係、虐待の被害にあった高齢者の性格も含

    め当該職員との人間関係などを確認します。

    また、他の入所者(利用者)に対するサービス提供に問題があったかどうかや、

    問題があった場合の上司の指導方法なども確認しておくことも大切です。

    コ 専門的な見地からの身体状況

    看護師や協力医療機関等の医師から状況を確認します。

    サ 高齢者の金銭、資産の管理の状況

    入所者(利用者)の金銭、資産管理は誰が行っているか、管理の仕方に問題が無

    いか、本人に無断で使っていないか、定期的に家族に残高を示しているか等を確認

    します。

    ※ 確認すべき資料

    介護日誌、看護日誌、月間勤務表、カルテ、事故の記録、施設・事業所で作成した

    各種マニュアル、入所者等の預り金の記録等がありますが、必要によってはその他の

    関係書類を確認する必要があります。

    ③ 施設等の職員からの事情聴取(参考資料:各様式集 施設職員聞き取り調査票)

    虐待が行われたこと、または、その疑いがあるが、具体的な虐待者が特定されない場合

    は、可能な限り多くの職員から事情を聴取し、虐待の有無を認定し、虐待が確認された場

    合は、虐待者を特定するとともに、その内容を施設等の責任者へ報告することになります。

    職員からの事情聴取内容はおおむね次のとおりです。

    ア 虐待防止のための会議、研修の実施状況

    虐待防止に関する会議や研修の実施状況を確認し、施設等(職員)の周知の状況

    を確認します。

    イ 虐待を早期に発見するための仕組み

    虐待を早期に発見するため、身体のチェック体制等の具体的な対応策の有無を確

    認するための様式の作成、発見するためのノウハウの有無などを確認します。

    ウ 虐待が発見された場合の報告の仕組み

    虐待が発見された場合の報告様式の作成など、速やかに対応できるようなシステ

    ムづくりの有無などを確認します。

  • 34

    エ 過去の虐待発生の状況

    過去に虐待発生の有無、また、あった場合はそのときの対応についても確認する

    ことが必要です。

    オ 職員による虐待の発生

    職員による虐待が発生した場合、施設としてどのように対応をしていくかなど確

    認します。

    カ 職員による虐待の噂

    職員が虐待を行ったという噂があった場合であっても、虐待が発生した場合と同

    様に対応することが必要です。

    キ 特に事故・ケガの多い高齢者

    特に事故・ケガの多い高齢者は、虐待が疑われる場合も考えられるので、事故等

    の原因を追究し、再発防止の対策も確認することも大切です。

    ク 高齢者から恐れられている職員の有無

    高齢者から恐れられている職員が虐待を行っている場合が想定されるので、その

    ような職員がいるかどうか確認をします。

    ケ 働きやすい職場であるかどうか

    職員が自分の意見を言えなかったり、職場や仕事に不満があれば、ストレスを抱

    えることになり、それが原因で虐待に発展するおそれがありますので、職員が働き

    やすい職場環境にあるかどうか確認する必要があります。

  • 35

    (4)虐待の事実を確認した場合

    ① 養介護施設従事者等による高齢者虐待の事実が確認できた場合には、高齢者本人や施

    設等への対応方針を関係課において協議することになります。

    ア 養介護施設等への対応

    虐待の事実が認められた場合には、施設等において事実確認を行い、確認した結

    果を高齢者本人や養護者(家族等)へ説明するように指導します。

    特に、施設・事業所が虐待を未然に防げなかった原因を分析し、再発防止に努め

    るよう併せて指導することが重要になります。

    イ 養介護施設従事者等本人への対応

    養護施設従業者等本人には虐待であることを認識させるとともに、原因を分析し

    再発を防止する対策を講じるよう指導することが必要です。

    ウ 通報者への対応

    事実確認した内容と対応については通報者に連絡しますが、その際は通報者への

    不利益の排除に配慮する必要があります。

    ② 虐待が確認された場合は、施設等指導、再発防止指導を行うことになります。(法第24条)

    ア 管理職、職員の研修、資質向上

    管理職及び全職員に対し虐待防止についての研修を行い、虐待が二度と起こらな

    いよう意識を高める努力を促し、職員の資質の向上を図るよう指導します。

    イ 個別ケアの推進

    利用者の表情の変化や日常動作の異常などをいち早く見つけるための個別ケアの

    徹底、あるいは入浴時や着替えの際に虐待が発見された場合(疑いを含む。)の報告

    システムや、精神的な虐待や経済的虐待を早期に発見するための取組みを再構築す

    るよう指導します。

    ウ 情報公開

    利用者に対する虐待が発生した場合は、行政機関への報告が必要となりますので、