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国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について (討議用) 知的財産戦略推進事務局 資料2

国境を越えるインターネット上の知財侵害への 対応について(討 … · 国境を越えたインターネット上の知財侵害の増大に対し、海外政府は様々な対策を講じていると

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国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応について (討議用)

平 成 2 8 年 2 月

内 閣 官 房

知 的 財 産 戦 略 推 進 事 務 局

資料2

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違法音楽ファイル削除要請件数の推移 リーチサイト(※)のサーバ設置国毎の割合

0

20

40

60

80

100

2009 2010 2011 2012 2013 2014

(万件)

出典: 著作権保護・促進センターの活動について(コピライト653号(2015年9月))を基に作成

1. インターネット上の知財侵害の深刻化

• 音楽やアニメ、ドラマなどコンテンツのデジタル化、インターネットやクラウドなど流通技術の発達に伴い、知財制度上保護されている情報のインターネット上での不正流通は急増。

• 近年は、広告収入等を目的とした営利追求型が増加していると言われている。

• 違法コンテンツを提供するためのサーバーを国外に設置するなど、国を基本とした従来の知財制度では対応が難しい事例が顕在化・拡大。

特徴

※ 違法コンテンツを含むサイトへのアクセスを容易化するサイトのこと。本調査では、自動検索技術により抽出した571サイトについて分類

音楽ファイル(動画サイト、ストレージサイト、携帯サイトから提供されるもの)について、違法ファイルの削除要請件数は、2009年の8万件から2014年には92万件と10倍以上に増加。

特にこの2年で3倍と急増。

約92万件

約33万件

約8万件

リーチサイトについて、サーバを日本国外に設置するケースは全体のおよそ3/4を占める。

出典: 電気通信大学「リーチサイトにおける知的財産侵害実態調査(2012年3月)」を基に作成

第一回事務局資料

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消費者

(参考) インターネット上の知財侵害の主なパターン

動画共有型

・サイト運営会社が立ち上げたプラットフォームに、複数の人間がアップロードを行うサイト。・複数の人間が同じファイルをアップロードすることが起こるため、違法ファイル数は多い。

サイト運営型

・サイト運営会社がコンテンツをアップロードしていると思われるサイト。ファイルの重複は無く整理されている。(動画共有サイトの体裁を取ってるものも)・削除に応じないケースが多々ある。

ストレージサイト

・ダウンロード可能に侵害ファイルが蔵置されたサイト。一般的に、窓口サイト(リーチサイト)を作って誘導。・ダウンロード容量が大きいことなどから有料会員を薦めてくることも。・例えば漫画の場合、発売日直後にストレージサイトに新作が掲載される。・また、削除申請しても、数日後には別のファイルがアップロードされているような状況。

ECサイトでの模倣品・海賊版販売

トレントサイト(P2Pを利用した侵害)

その他の手口

まとめサイト(ブログ)

アプリ提供

・アニメやドラマ、映画の無料コンテンツをまとめたサイト。・「○○ 無料」などと検索すると、検索上位の大半を占める。・リンク先の多くは動画共有サイト。

・侵害コンテンツの視聴を可能とするアプリも存在。・ユーザーインターフェースを整えるなど、消費者が気軽に手を出せる雰囲気を醸成。

アニメ見放題!

侵害ファイルへのアクセスを容易化

(一社)コンテンツ海外流通促進機構(CODA)等からのヒアリング等を基に事務局作成

ネット二次創作・情報発信

・パロディ動画や、「歌ってみた」「踊ってみた」、コスプレなど、形式的には著作権侵害の可能性があるが、寛容的利用により成立している領域。

無料で音楽聞き放題!○○ランキング☆位!

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ストリーミングサイト

第一回事務局資料

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2. このテーマに関する主な意見 (事務局ヒアリングまとめ)

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国境を越えたインターネット上の知財侵害の増大に対し、海外政府は様々な対策を講じているところ、我が国も対応強化すべきでないか。

国境を越えた侵害は、著作権だけでなく、全ての知財において起こりうる。

日本において、権利行使や執行について法の域外適用をどうするか、併せて検討すべきではないか。

著作物も権利者も多様化する中、一部の著作物を保護するために、社会全体として大変なコストをかけるというのは問題ではないか。

海賊版でしか読めないコンテンツも存在するのであり、一様に撃滅して良いものか。

<総論(対策の必要性と対象について)>

「次世代知財システム検討委員会」におけるこれまでの発言、委員からの個別ヒアリング、及び有識者(法学者、コンテンツ事業者、プラットフォーム事業者)からの個別ヒアリング結果をまとめたもの。

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2. このテーマに関する主な意見 (事務局ヒアリングまとめ)

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リーチサイトなど「導線」を貼る行為を取り締まることは、極めて効果が高いのではないか。

主観的にはまっ黒と思われるが、現状では著作権法上黒とは言いきれず、訴訟も起こしにくい。

なぜ著作権侵害なり侵害幇助になるのか法的整理が必要ではないか。

<更なる対策のあり方>

2) リーチサイト対策について

1) 海外サーバにある侵害コンテンツへの削除要請

海外の違法サイト対策をする際に、国によっては何を根拠に申し立てたら良いのか分からない。

海外サーバにある侵害コンテンツを発見したら、きちんとした国内機関が海外プロバイダに要請して削除してもらう、それを政府としてサポートするような仕組みが必要。

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2. このテーマに関する主な意見 (事務局ヒアリングまとめ)

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【必要性に関する意見】

ルールを守る人達による自主的な解決では限界があり、インターネットのアクセス制限等、より強い方策も検討項目に挙げるべき。

海賊版対策を行う立場として、削除だけではとても対応しきれず、国内向けの違法動画を見られなくするサイトブロックは有効な手段と感じている。

<更なる対策のあり方>

3) サイトブロッキングについて

【導入に対し慎重な意見】

通信の秘密などの国内法体系や、名誉毀損・プライバシー侵害・リベンジポルノ・わいせつ物頒布など他の法益侵害とのバランスがとれるのか。

コストに対し、効果が限定的ではないか。(発信者がURLを変更すれば回避可能な点など)

児童ポルノで実施されているような運営体制を知財でも作ることができるのか。(児童ポルノでは、ISP等の関連事業者がコスト負担し、民間団体(ICSA)が作成したリストに基づきブロッキングを実施)

ブロッキングすべき対象サイトの判断が難しいのではないか。(一つでも侵害行為があれば対象か、リンクサイトはどうなるのかなど)

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2. このテーマに関する主な意見 (事務局ヒアリングまとめ)

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<更なる対策のあり方>

4)ユーザーへの啓発について

5)プラットフォーマーによる自主的な対応促進について

違法コンテンツを見てはいけないという民意拡大のため、ユーザーへの啓発にももう少し力を入れた方がよいのではないか。

長期的には、著作権の直接的な保護が困難となった場合の最終的方法は、プラットフォーマーに対する行動規制であろう。

プラットフォーマーには、削除に応じるだけでなく、もう一段の対応促進を期待する。

サイト運営者が対策を講じるためのインセンティブ、対策を講じないことに対する負のインセンティブをどう与えるかが課題。

プロバイダによる情報開示について、明らかな侵害であっても訴訟しないと開示されないケースがほとんど。もう少し緩和してもよいのではないか。

米国型のノーティスアンドテイクダウンのように、通知後すぐに削除が可能な仕組みを検討してもよいのではないか。(現状、侵害者は、通知から削除まで( 5日程度 )、インターネット広告により不当に稼ぐことが可能。 )

6)その他

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3.(1) 検討のポイント

• インターネット上の知財侵害について、改めて対策のあり方を検討する必要性についてどのように考えるか。

例: 国境を越える侵害の増大、削除要請に応じない等悪質な侵害の増大 など

• どのような行為や類型を対象に、更なる対策の必要性やあり方について検討を深めるべきか。

例: 営利目的かどうか(ネット広告の有無)、サイト全体に占める侵害コンテンツの分量、削除要請に対する対応の程度、法的措置の困難の程度(サーバーや運営者が国外にいる等) など

論点① 総論 (更なる対策の必要性と対象について)

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• サーバが海外に設置されている場合の権利行使について、より効果的に実施していくために必要と考えられる方策は何か。

例: 海外サーバ上での侵害行為に対する国内法の適用明確化(※1)

侵害コンテンツが掲載されうる主要海外サイト管理者に対する削除申立ての仕組みの整備

(※1) 海外サーバへの国内法適用の例として次項参照

• まとめサイトやアプリ等、侵害コンテンツへのアクセスを容易化する目的のサイト(以下、リーチサイトという)への対応について強化が必要との意見についてどのように考えるか。

※ 現行法制度上、これらのサイトは侵害コンテンツを直接保有・発信等していないため、著作権侵害として法的措置を取れるかどうか必ずしも明確ではない。(※2)

• 必要と考える場合、どのような侵害行為を念頭に、またどのような方法で対応することが考えられるか。

(※2) リーチサイトに関する判例等として次々項参照年)

論点② 海外サーバ上での侵害行為対策について

論点③ リーチサイト対策について

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【個人情報の取扱いのグローバル化への対応 (個人情報保護法)】

• 平成27年法改正において、日本国内において事業を行う者が、物理的には海外のサーバーで管理している営業秘密について、これをサイバー攻撃等によって海外で不正取得する行為を、不正競争防止法の処罰対象とすることを明確化。

【国外サーバーで管理する営業秘密の保護強化 (不正競争防止法)】

(参考) 海外サーバへの国内法適用の例

• 平成27年法改正において、国内にある者への物品・サービス等の提供に関連して個人情報を取得した個人情報取扱事業者が、外国において当該個人情報等を取り扱う場合にも個人情報保護法上の一定の規定を適用する旨を明確化。

• また、日本の個人情報保護委員会から、外国執行当局に対し、当該外国執行当局の職務の遂行に資すると認められる情報を提供できる旨を明確化。

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(参考) リーチサイトに関する判例等

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① 名誉毀損的な内容を含むウェブサイトへのリンク情報をインターネット掲示板に投稿した行為 <民事>(東京高判平成24年4月18日)

• 「A(本名、職業を記載)のセクハラ」との記載(記事1)とともに、その詳細な内容が記載されたウェブサイト(記事2)へのリンク情報(URL)をインターネット掲示板に投稿した行為が、名誉毀損に該当するかどうかが争われた事案。

• 記事1と記事2は、それぞれ別の電子掲示板における記事であり、リンク情報の記載によって、記事2が記事1の内容となり得るかどうかが争われたところ、判決において、記事1にはハイパーリンクが設定表示されていてリンク先の具体的で詳細な記事の内容を見ることが出来る仕組みになっており、記事1を見る者がハイパーリンクをクリックして記事2を読むに至るであろうことは容易に想像できる、そして、記事1を書き込んだ者は意図的に記事2に移行できるようにハイパーリンクを設定表示している、として、記事2を記事1に取り込んでると認め、記事1の投稿者による名誉毀損を認めた。

② 児童ポルノが掲載されたウェブサイトのURLを自身のウェブサイトに掲載した行為 <刑事>(大阪高判平成21年10月23日、最判平成24年7月9日)

• 被告が運営するホームページ上に、児童ポルノが掲載された第三者が運営するウェブサイトのURLを掲載した行為が、児童ポルノを公然と陳列したことに該当するかどうかが争われた事案。大阪高裁は、他人が掲載した児童ポルノへのハイパーリンクを設定する行為は、それがウェブページの閲覧者に対し当該児童ポルノの閲覧を積極的に誘引するものである場合には、児童ポルノ公然陳列に該当する旨判じた。なお、最高裁は、反対意見を示しつつも被告による上告を棄却。

【リーチサイトによる侵害を肯定した事例】

【リーチサイト(知情性なし)による侵害を否定した事例】

◎ウェブサイト上にリンク先の動画を埋め込んで表示した行為 <民事>(大阪地判平成25年6月20日)

• 原告による撮影映像の生放送配信後、第三者により動画投稿サイトにアップロードされた動画について、動画の引用タグ又はURLを、自社の運営するウェブサイトの編集画面に入力することで、当該ウェブサイト上で視聴できるようにした行為について著作権侵害が争われた事案。

• 本裁判では、被告の行為は動画へのリンクを貼ったにとどまり、送信主体は被告ではないため、本件動画の「自動公衆送信」又は「送信可能化」に該当せず著作権侵害は認められないとした。さらに、動画のアップロードが原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で、被告がリンクを削除している事情に照らせば、第三者の著作権侵害につき違法に幇助したものでもない旨判示した。

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3.(2) 検討のポイント

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論点⑤ その他の対策について

• その他、より力を入れていくべきと考えられる対策は何か。

例: 侵害コンテンツへのインターネット広告の抑制、ユーザーへの啓発、プラットフォーマーによる自主的な対応促進 など

• インターネット上の知財侵害に対してサイトブロッキングの導入が必要との意見についてどのように考えるか。必要と考える場合、以下についてどのように考えるか。(※3)

論点④ サイトブロッキングについて

(※3) 知財侵害以外での取組や海外での取組例として、次項および次々項参照

A) ブロッキングの実効性について

B) 実施体制について

C) 対象とする侵害行為について

D) 法的位置づけについて (他の法益侵害行為に対する措置とのバランスや国内法体系との関係なども含めて検討が必要か

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(参考) 児童ポルノにおける削除及びサイトブロッキングの枠組み

①児童ポルノ情報に対する削除要請

警察庁の委託団体であるIHC(インターネット・ホットラインセンター)が、インターネット利用者等から通報を受けた違法情報等(児童ポルノや違法薬物広告など)について、警察への情報提供やサイト管理者への削除依頼等を実施

②児童ポルノ情報に対するアクセス遮断等

上記のサイト管理者等への対応依頼では削除されない児童ポルノ情報について、民間団体であるICSA(インターネットコンテンツセーフティ協会)が、ISP、検索事業者、フィルタリング事業者等に通知してアクセス遮断(ブロッキング)等を実施

ブロッキングの対象となるサイトについては、IHCや警察庁から提供を受けた情報を元にICSAが所定の基準に則って検討・リスト化。基本的な判断基準として、サイト開設目的、児童ポルノ画像の数量、発信者の同一性(一つのドメイン内に複数のサイトがある場合)、他の実効的な代替手段の有無、を採用

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インターネット上の児童ポルノ流通対策全体イメージ

児童ポルノブロッキング対象ドメインの判定基準

(出典) ICSAホームページ

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◎イギリスにおけるサービスプロバイダーへの差止命令の制度化• 上記欧州著作権指令に準拠し、2003年に、英国著作権法97条A「サービスプロバイダに対する差止」を追加。

他者が当該サービスを著作権侵害に使っていることを認識している場合に、サービスプロバイダーに対する差止命令を可能とした。

• 当該条項に基づき、サービスプロバイダーによる知財侵害サイトへのアクセス遮断等の差止を行うためには、民事裁判所へ申し立てが必要。

• 申し立ての際は、対象サイトが明らかに知財侵害サイトであること、そのサーバーがイギリスの司法権の及ばない場所にあるため他に対処方法がないことを証明する証拠を提出する必要あり。

(参考) 知財侵害サイトのブロッキングに関する海外の動向

◎アメリカにおけるドメイン差押• オンラインでの模倣品販売や海賊版展開への対策として、2010年よりアメリカ移民局傘下のIPRセンターで実

施。申し立てを受け侵害サイトのドメイン(.com、.net等)について差押。差押が実施されると、その旨を示す画面が表示され、ユーザは侵害サイトにアクセスできなくなる。

◎欧州における媒介サービス提供者への差止命令の制度化• 2001年に策定された欧州著作権指令(2001/29/EC)第8条第3項において、加盟国は、権利者が、著作権侵

害をしている第三者が利用する媒介サービスの提供者(intermediaries)に対し侵害差止の措置を請求できるようにする旨を規定。

• 2004年に制定された欧州エンフォースメント指令(2004/48/EC)では、媒介サービスの提供者への差止請求権を、他の知財侵害に対しても認めることを加盟国に義務付け。

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◎サイトブロッキングに対するドイツ最高裁判決

• 音楽の権利者団体がドイツ最大手の通信事業者ドイツテレコムに対し、音楽の違法ダウンロードサイトへのアクセスブロックを求めていた訴訟において、2015年11月ドイツ最高裁は、「実際に侵害行為を行っている者に対し、権利者が合理的な対応を行った場合に限り、インターネットへのアクセスを提供する事業者は当該サイトのブロッキングに対し責任を負う」と判じた。その上で、本事案においては、原告は侵害に対し十分な努力をしていないとして、ブロッキングを棄却。

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(参考) インターネット知財侵害に関連する法制度・既存の取組等

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<関連法制度>

著作物、発明、意匠、商標、営業秘密等について、それぞれ著作権法、特許法、意匠法、商標法、不競法により保護。各法に規定された侵害行為に対する刑事・民事措置を規定。国境を越える侵害措置として、各法とも一定の輸出入行為(インターネット経由を含む)を禁じ、水際での取締りを可能としている。

知財侵害事犯の検挙数における、インターネットを利用した侵害事犯の割合はインターネットを利用した知財侵害事犯の検挙事件数は、近年400件を超えている。

1) 著作権法等の知的財産法

0

200

400

600

800

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

最近5年間における知財侵害事犯の検挙状況等

知財侵害事犯の検挙事件数

うちインターネット利用事犯の件数

<最近の逮捕事例(著作権侵害)>

複製権、出版権侵害による逮捕(平成27年11月)

発売前の「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年マガジン」を電子化、海外サーバにある海賊版サイトに公開したとして、配送会社社員の日本人と中国人3人を逮捕した事案。配送会社社員が積み荷から抜き取って手渡しし、それを切り取ってスキャン・電子ファイル化していたとされている。

公衆送信権侵害による逮捕(平成27年12月)

国内のアニメ作品動画ファイルを、海外の動画配信サイト(FC2)のサーバを通じて無断配信したとして、大阪市の会社員男性を逮捕した事案。

2) プロバイダ責任制限法

出典: 不正商品対策協議会HP

特定電気通信による情報の流通によって権利侵害があった場合について、プロバイダ等の損害賠償責任の制限等について定めたもの(プロバイダ等の義務を定めたものではない)。プロバイダ等が情報の流通により他人の権利が侵害されていることを知っていたときや知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき以外は、その情報について削除等の措置を講じなくても被害者に対して賠償責任を負わない旨を規定(3条1項)

また、同法に基づくインターネット上の著作権侵害情報の削除等に関し、権利者及びプロバイダの行動基準を明確化するため、民間団体により「プロバイダ責任制限法著作権関係ガイドライン」(第2版平成15年11月)が策定されている。

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(参考) インターネット知財侵害に関連する法制度・既存の取組等

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<運用面での対応>

1) 民間主体の取組

◎コンテンツ海外流通促進機構(CODA)による取組

• CODAは、日本コンテンツの海外展開促進とその障害となる海賊版等の侵害対策を目的に設立。会員は著作権関連団体やコンテンツ企業など。侵害対策として、ⅰ)国内外政府機関・関連団体との連携、ⅱ)違法アップロードされたコンテンツの削除要請、ⅲ)オンライン侵害者に対する直接的な権利行使、ⅳ)その他周辺対策、などを実施。

• 国外政府機関との連携例として、中国のネット侵害摘発キャンペーン「剣網行動」において、国家版権局に行政処罰の申立を実施。また、周辺対策例として、セキュリティソフト会社との連携した侵害サイトのフィルタリング、検索サービス会社と連携した侵害サイトの検索結果への表示抑止、広告配信事業者の団体を通じた侵害サイトへのウェブ広告の停止要請などを実施。

◎インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)による取組

• CIPPは、権利者とオークション事業者などのプラットフォーマーが、インターネットオークションにおける課題を共有し、連携、協働して知財侵害品の流通防止を検討する場として設立。メンバーは、権利者としてユニオン・デ・ファブリカン、日本動画協会、日本レコード協会など、事業者としてヤフー、楽天オークション、ディー・エヌ・エーなど。

• 権利者とプラットフォーマーの連携、協働という共通認識の下、CIPPとして「知的財産権侵害品流通防止ガイドライン」を策定。それに基づき、権利者からの通知に基づく削除措置、プラットフォーマーによる自主パトロールの推奨、侵害品の出品者に対する利用アカウント停止等の取組を実施。

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(参考) インターネット知財侵害に関連する法制度・既存の取組等

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<運用面での対応>

2) 政府による取組

◎経済産業省

• CODAと連携し、動画サイトへの違法コンテンツの削除要請、正規版サイトへ誘導する仕組みの構築、ユーザーへの普及啓発を実施。政府模倣品・海賊版対策総合窓口に寄せられる情報について、関係省庁及び国内の主要なECサイト運営者等に定期的に共有。また、中国の主要なECサイト運営者や政府との対話・招聘や現地セミナー等を実施。模倣品・海賊版撲滅キャンペーンにより知財保護に対する消費者意識向上を啓発。

◎文科省

• 海賊版対策として侵害発生国との定期協議や現地セミナー、普及啓発、専門家等招聘等を実施(中国、韓国、ASEAN等)。海外における権利侵害に対する著作権者向けのハンドブックを作成。

◎総務省• インターネットサービスプロバイダと権利者等によるコンテンツ侵害対策に関する自主的な取組を支援。

◎警察庁

• サイバーパトロールや権利者との連携等によって端緒情報の収集に努め、商標法違反事件及び著作権法違反事件の取締りを推進。また、ファイル共有ソフトを使用するといった悪質なインターネット上の著作権侵害事犯の取締りを強化。さらに、ウイルス対策ソフト事業者等と連携し、海外の偽ブランド品販売サイトによる消費者被害の拡大防止に向けた取組を実施。

◎消費者庁

• 海外著名ファッションブランドの権利者等と連携し、模倣品販売が確認されたサイト等悪質な海外ウェブサイトの公表を実施。また、模倣品販売に関する消費者トラブル等について、消費者に対し必要な情報を提供。