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1 トリ白血病ウイルスの精度の高い 清浄化システムの開発 担 当 機 関 名 研 究 期 間 株式会社 後藤孵卵場 平成 14 年度~16 年度 Ⅰ.3 ヶ年の研究成果の要約 1.技術開発課題の目的 トリ白血病ウイルス[ALV]は白血病、産卵低下、免疫抑制などをもたらす病原 体で、種鶏を清浄化することによって養鶏場での被害をなくすことができる(生 産性の向上)。また、国産育種鶏を清浄化することができれば外国鶏との競争力も 増大し、低迷する国産鶏のシェアが回復する(自給率の増加)。さらに、国内各地 で維持されている稀少種日本鶏の清浄化(遺伝資源の保存)にも役立つ。本研究 では、①育種鶏の清浄化に利用可能な、精度の高い清浄化システムの開発と、② 清浄確認検査に利用可能な、特異性の高い抗体検査法(ELISA)の開発を行う。 2.担当者 3.研究の実施場所 [本研究開発実施者] 株式会社後藤孵卵場中央研究所・姫研究所 岐阜県各務原市那加柄山町 154、可児市下切 1532-1 所属及び役職 氏名 株式会社後藤孵卵場研究開発本部・本部長 株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・技術顧問 株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・課長 株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・部員 株式会社後藤孵卵場研究開発本部業務部・課長 株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部・技術顧問 株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部病理診断室・室長 株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部病理診断室・室員 望月 完二 長谷部 誠 鈴木 真也 西松 賢吾 俊雄 垣田 慎一郎 津久美 清 村田 昌紀

トリ白血病ウイルスの精度の高い 清浄化システムの開発 - …...3 Ⅱ.3カ年の研究成果の本文 1. 技術開発課題の目的 トリ白血病ウイルス[ALV]は鶏に白血病、産卵低下、発育不良、免疫抑制を引き

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    トリ白血病ウイルスの精度の高い

    清浄化システムの開発

    担 当 機 関 名 研 究 期 間

    株式会社 後藤孵卵場 平成 14 年度~16 年度

    Ⅰ.3ヶ年の研究成果の要約

    1. 技術開発課題の目的

    トリ白血病ウイルス[ALV]は白血病、産卵低下、免疫抑制などをもたらす病原

    体で、種鶏を清浄化することによって養鶏場での被害をなくすことができる(生

    産性の向上)。また、国産育種鶏を清浄化することができれば外国鶏との競争力も

    増大し、低迷する国産鶏のシェアが回復する(自給率の増加)。さらに、国内各地

    で維持されている稀少種日本鶏の清浄化(遺伝資源の保存)にも役立つ。本研究

    では、①育種鶏の清浄化に利用可能な、精度の高い清浄化システムの開発と、②

    清浄確認検査に利用可能な、特異性の高い抗体検査法(ELISA)の開発を行う。

    2. 担当者

    3. 研究の実施場所

    [本研究開発実施者]

    株式会社後藤孵卵場中央研究所・姫研究所

    岐阜県各務原市那加柄山町 154、可児市下切 1532-1

    所属及び役職 氏名

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部・本部長

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・技術顧問

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・課長

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部育種部・部員

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部業務部・課長

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部・技術顧問

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部病理診断室・室長

    株式会社後藤孵卵場研究開発本部品質管理部病理診断室・室員

    望月 完二

    長谷部 誠

    鈴木 真也

    西松 賢吾

    堤 俊雄

    垣田 慎一郎

    津久美 清

    村田 昌紀

  • 2

    [委託研究機関]

    独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所

    感染病研究部病原ウイルス研究室

    茨城県つくば市観音台 3-1-5

    岐阜養鶏農業協同組合種鶏部

    岐阜県各務原市須衛町 4-291

    [共同研究機関]

    独立行政法人家畜改良センター岡崎牧場

    愛知県岡崎市大柳町栗沢 1

    岐阜県畜産研究所養鶏研究部

    岐阜県関市迫間 2672-1

    4. 要約

    トリ白血病ウイルス[ALV]の清浄化は、感染親鶏からの介卵性の垂直伝播及び育成段

    階での水平伝播を両面的に阻止することで達成可能である。しかし、ALV の垂直伝播動

    態、精度の高い摘発手法及び水平伝播阻止の要件等に関する充分な研究がなされていな

    い。本研究では実用鶏に対する ALV 清浄化システムを開発することを目的として、平成

    14 年度から 15 年度にかけて上記の課題に取り組みながら、併せて平成 15 年度から 16

    年度には試作した清浄化システムを国産育種鶏群に適用し、その有効性を検証した。ま

    た全期間を通して、ALV の亜群特異的な抗体を検出することのできる ELISA の開発を動

    物衛生研究所に委託した。

    ALV 感染雌鶏の卵管内へのウイルス排泄推移を調べた結果、大部分のケースでは恒常

    的にウイルスを排泄しており、卵管内から採取した試料の検査で充分に摘発できること

    が明らかになった。ただし、一部の感染雌鶏ではウイルス排泄が不安定・不規則である

    ことを示唆する成績も得られたことから、感染雌鶏の完璧な摘発を目指すことは実用的

    ではないとの結論に至った。一方、感染母鶏の摘発漏れが発生した場合でも、幼雛時に

    糞便のウイルス検査を実施すれば、垂直感染雛を完全に摘発できることが証明された。

    この際、通常の飼育ケージを細分化した分離飼育システムを用いて育成すれば、垂直感

    染ひなによる水平伝播を最小限に食い止めることができることも明らかとなった。

    本研究成果に基づいて構築した清浄化システムは、3世代にわたる試験的なシステム

    導入の結果、90%以上あった ALV 抗体陽性率をゼロにすることができた。最終的に確立

    された清浄化システムは、1世代で ALV を清浄化できる可能性が非常に高いと考えられ

    る。委託研究の ELISA 開発については、遺伝子組換え手法を用いた亜群特異的抗原の量

    産化が困難を極めるなど最終的には実用化の道は開かれなかったが、PCR 及びフォーカ

    ス抑制中和試験等の手法を駆使してウイルス及び抗体の亜群型別を可能にした。

  • 3

    Ⅱ.3カ年の研究成果の本文

    1. 技術開発課題の目的

    トリ白血病ウイルス[ALV]は鶏に白血病、産卵低下、発育不良、免疫抑制を引き

    起こす病原体で、古くから広く鶏群を汚染している。本ウイルスは持続感染するレ

    トロウイルスで、病原性のある外来性ウイルス(A,B,J 亜群)と、非病原性の内在

    性ウイルス(E亜群)に分けられている。本病にワクチンはなく、対策の基本は“外

    来性ウイルスの清浄化”である。

    本ウイルスは、母鶏から雛へ垂直伝播する。また、垂直感染した雛から同居雛へ

    水平伝播する。この水平伝播は同居させなければ起こらない。そこで、垂直伝播を

    起こさない親鶏を選抜することによって垂直感染を断ち、非感染雛を汚染雛と分け

    て飼育することによって水平伝播を絶つことができれば、種雛は清浄化される。一

    旦清浄化されれば、本病は完全になくなる。

    本研究では、多品

    種・多羽数からなる

    鶏を清浄化するため

    に、①採取法・採取

    器具の開発、②ウイ

    ルス増殖の変動の解

    明、③伝播鶏の摘発

    効率の分析、④分離

    飼育システムの確立、

    ⑤清浄化の難易度分

    析を行い、最終的に

    は⑥実用原々種鶏の清浄化システムの開発を目的にしている[図 1]。

    2. 技術開発課題の内容

    (1) 技術開発の実施に必要な事業

    ア. 基礎となる試験研究の概要及び技術開発の目的

    後藤孵卵場は動物衛生研究所と共同で、トリ白血病ウイルスを垂直伝播する母

    鶏を摘発する方法に関する研究において、平成 13 年からウイルス検査法の技術移

    同居ひな

    感染ひな

    雌親 雄親

    ①採取法・採取器具の開発

    ②ウイルス増殖の変動の解明

    ③伝播鶏の摘発効率の分析

    ⑤清浄化の難易度分析

    ④分離飼育システムの確立

    ⑥実用原々種鶏の清浄化

    • ニワトリの系統• ALV汚染度

    何をどう採材すればいいのか?

    いつ採材してもいいのか?

    いつ採材すればいいのか?

    ケージ間での伝播は起こらない?

    垂直伝播阻止

    水平伝播阻止

    汎用性はあるのか?

    完全なプログラムを目指して

    図1 システム構築のための解明すべき課題

    同居ひな

    感染ひな

    雌親 雄親

    ①採取法・採取器具の開発①採取法・採取器具の開発

    ②ウイルス増殖の変動の解明②ウイルス増殖の変動の解明

    ③伝播鶏の摘発効率の分析③伝播鶏の摘発効率の分析

    ⑤清浄化の難易度分析⑤清浄化の難易度分析

    ④分離飼育システムの確立④分離飼育システムの確立

    ⑥実用原々種鶏の清浄化

    ⑥実用原々種鶏の清浄化

    • ニワトリの系統• ALV汚染度

    何をどう採材すればいいのか?

    いつ採材してもいいのか?

    いつ採材すればいいのか?

    ケージ間での伝播は起こらない?

    垂直伝播阻止

    垂直伝播阻止

    水平伝播阻止

    水平伝播阻止

    汎用性はあるのか?

    完全なプログラムを目指して

    図1 システム構築のための解明すべき課題

  • 4

    転と清浄化計画のすり合わせを済ませ、卵管のウイルス検査による伝播鶏の摘発効

    率の検討を開始している。

    後藤孵卵場では 1960 年頃から国産鶏を改良作出し、生産販売している。また、

    各都道府県では、地場産業育成事業として、“おいしい地鶏“の開発を進めており、

    その候補鶏は 50 種にのぼる。これらの国産鶏・地鶏における ALV の汚染状況は不明

    であるが、清浄化の取り組みがされていないことから、汚染の程度は高いと考えら

    れ、薩摩地鶏などのように本病で大きな被害を受けたものもある。また、近年、国

    産肉用鶏において J 亜群のウイルスによる白血病が大きな問題となっている。

    ところが、海外で清浄化に使われている方法は、ELISA を用いた卵白や総排泄孔

    の拭い液(クロアカスワブ)のウイルス抗原検査である。この方法は簡単な反面、

    特異性と感度が低く、より信頼性が高く短期間に清浄化できる技術の開発が強く求

    められている。本研究では、鶏一般に利用可能な精度の高い清浄化技術と、簡易な

    汚染調査法及びモニタリング法を開発することによって、鶏白血病問題を根本から

    解決する基盤を確立することを目的とする。

    イ. 技術開発の内容

    イ-1 伝播鶏の摘発効率の分析

    ALV 抗体陽性のウイルス排泄及び非排泄鶏、及び SPF 鶏(日生研;ライン M;C/O)

    の5日齢種卵に動物衛生研究所より分与されたA亜群ウイルス標準株[RAV-1]を約 3

    ×105virion 卵黄嚢内接種した。各群にウイルス無接種卵を用意し対照群とした。

    孵卵 15 日目に漿尿液を採取しウイルス分離を行った。また、孵化後は群別に隔離飼

    育し 2、4及び 8週齢時にクロアカスワブを採取してウイルス分離を実施した。

    イ-2 ウイルス増殖の変動の解明

    卵管拭い液(膣スワブ)で ALV が分離された個体(ウイルス排泄鶏群)及び分離

    されなかった個体(ウイルス非排泄鶏群)各 23 羽の雌成鶏を対象にして、連続 15

    週間にわたって卵管液のウイルス分離を実施した。また、鶏への強いストレスがウ

    イルスの体内変動を誘発するかどうかを調べるため、養鶏場で産卵性回復のために

    常用される絶食操作(強制換羽)を試験期間途中に行った。

    イ-3 採取法・採取器具の開発

    ALV 排泄鶏を対象にして、①膣部の綿棒による拭き取り(膣スワブ)、②子宮部

    の綿棒による拭き取り(子宮スワブ)及び③卵管貯留液の 3種類の検体を採取した

    [図 2]。検体は 4000rpm、5 分間の冷却遠心処理後、その上清をウイルス培養に供

    した。ウイルスの培養及び ELISA 検査に関する方法は、塚本の研究報告に従って実

  • 5

    施した。ELISA 判定はマイクロプレー

    トリーダーを使用し、490 及び 620nm

    の二波長で吸光度を測定した。

    イ-4 分離飼育システムの確立

    イ-4-1 試験鶏:①SPF 鶏(日生研;ライン M;C/O)及び②ALV 移

    行抗体(+)鶏

    イ-4-2 ウイルス接種:ALV-A 亜群RAV-1株およびJ亜群RAV-103株を培養細胞で増殖させたものを約7×105/

    個に調製し、5日齢発育鶏卵の卵黄嚢内に接種した。

    イ-4-3 分離飼育:90cm(W)×50cm(D)×40cm(H)の飼育ケージを金網で 3 分割したものを試験群の 1 単位と

    して各区画にそれぞれ 7

    羽の試験鶏を収容した。

    各区画の中央にウイルス

    接種鶏をその右側に SPF

    鶏、左側に移行抗体(+)

    鶏を配置した[図 3]。一

    部の試験群では、金網の

    下部にプラスチック製の仕切り板を設置した。

    イ-4-4 試験群:①ウイルス株 A 及び J 亜群(2群)、②ウイルス接種羽数 1羽および 7羽(2群)、③仕切り板の有無(2群)をそれぞれ組み合わせた計8種

    類の試験群を設けた。初生ヒナより定期的に個体毎のウイルスおよび抗体

    検査を行い、ケージ間の水平伝播の有無を 12 週齢まで調べた。

    イ-5 清浄化の難易度分析

    上記イ-1 から 4 で得られた成果を元にして、以下のような清浄化システムを立

    案し、ALV 汚染度の異なる自社保有原々種鶏の 3鶏種を対象にして試験的に運用し

    た。

    1) 垂直伝播を阻止するために、種卵採取前の親鶏のウイルス検査を 1~2 回実施し、

    ウイルスが分離された個体は淘汰し交配には使用しない。

    2) 水平伝播を阻止するために、幼雛期にウイルス検査を 1~2 回実施し、ウイルス

    が分離された個体を含む同一ケージ内の鶏をすべて淘汰する。

    清浄化システム運用前後の抗体陽性率を比較することにより、本システムが ALV

    汚染度及び鶏種を問わず有効に機能するかどうかを検証した。

    膣部 10cm 表皮

    子宮部 10cm 卵殻

    峡部 10cm 卵殻膜

    膨大部 35cm 卵白

    ロート部 7cm 卵子補足

    卵巣 3cm 卵子

    クロアカ

    ③卵管貯留液

    ②子宮スワブ

    ①膣スワブ

    図2 ♀生殖器模式図と採材方法

    膣部 10cm 表皮

    子宮部 10cm 卵殻

    峡部 10cm 卵殻膜

    膨大部 35cm 卵白

    ロート部 7cm 卵子補足

    卵巣 3cm 卵子

    クロアカ

    ③卵管貯留液

    ②子宮スワブ

    ①膣スワブ

    図2 ♀生殖器模式図と採材方法

    SPF(7)

    接種

    (3:1:3)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (3:1:3)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (3:1:3)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (3:1:3)抗体+

    (7)

    SPF(7)

    接種

    (7)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (7)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (7)抗体+

    (7)SPF(7)

    接種

    (7)抗体+

    (7)

    仕切り板設置通常の飼育ケージ

    ※括弧内の数字は収容羽数を示す。

    図3 分離飼育システム試験鶏群の収容配置

  • 6

    イ-6 実用原々種鶏の清浄化

    これまでに得られた本事業の成果に基づき清浄化システムを構築し、平成 16 年か

    ら 17 年にわたって白色レグホーン系原々種鶏に対して清浄化を 2 回実施した。

    イ-6-1 対象鶏:平成 16 年及び 17 年春餌付の白色レグホーン系実用原々種鶏 イ-6-2 導入した清浄化システム

    ⅰ)親鶏の ALV 検査:交配予定の雌雄を各 1~2回検査した。雌は膣スワブを、

    雄は精液またはクロアカスワブを採取してウイルス分離に供した。ALV 陽性

    の個体は交配には使用せず淘汰した。

    ⅱ)育成鶏の ALV 検査:ALV が分離されなかった雌雄親鶏を交配して得られた

    種卵から発生した個体は、幼雛時に糞便プール試料を用いてウイルス検査を

    1~2 回実施した。プール試料で ALV 陽性であった場合は、同一ケージ内で育

    成されていた鶏をすべて淘汰した。

    ⅲ)育成鶏の ALV 抗体検査:清浄化の確認のため 100~120 日齢で残存個体す

    べての血清を採取し ELISA による抗体検査を実施した。なお、抗体が陽性で

    あったサンプルはフォーカス抑制中和試験を行った。

    イ-7 清浄化技術の確立

    実用原々種鶏の清浄化を実施した結果から、必要最小限の作業プログラムに絞っ

    た効率的で精度の高い清浄化システムの確立を目指した。

    イ-8 血清亜群型別法の開発[委託研究]

    イ-8-1 ALV 亜群特異的領域の遺伝子単離と組換え蛋白質の発現 亜群特異的領域と、その領域を含む外皮蛋白質である gp85 蛋白全体をそれぞれ

    単離し、Bac to Bac 及び Bac N Blue バキュロウイルス発現システムにより組み

    換え抗原の発現を試みた。

    イ-8-2 ウイルス型別法の開発 i) 外来性 ALV-A 及び B 亜群の亜群特異的なペプチド領域を選定し、常法により

    ウサギに免疫しペプチド抗体を得た。

    ii) ALV 精製抗原に対するモノクローナル抗体を作製し、反応性を調べて亜群特異的なモノクローナル抗体を選定した。

    iii) モノクローナル抗体と精製ALVウサギ IgG及びペプチド抗体を用いてALV亜群型別法の開発を行った。

    iv) ALV 亜群型別プライマーの設計を行った。

  • 7

    イ-8-3 抗体型別法の開発

    i) イ-8-2 で選定したペプチド抗原、ペプチド抗体及びモノクローナル抗体を用

    いた抗体型別法の開発を行った。

    ii) 従来法であるフォーカス抑制中和試験の調整を行った。

    ウ. 技術開発の実施結果

    ウ-1 伝播鶏の摘発効率の分析

    垂直感染した雛の摘発法を確立するために、種卵にウイルスを接種し孵卵中及び

    孵化後に経時的にウイルス分離を行い、その摘発効率を調べた[表1]。その結果、

    SPF 種卵にウイ

    ルスを接種し

    た群では、孵卵

    15 日目の漿尿

    液の分離率は

    66.7%であった

    が、2週齢以降

    のクロアカス

    ワブの分離率

    は 100%であっ

    た。ウイルス排

    泄及び非排泄

    鶏の分離率が SPF 鶏のそれと比べて低かったが、このことは接種したウイルスの生

    存・増殖に対して、ALV の移行抗体が影響したものと推察された。本試験の結果か

    ら、親鶏のウイルス検査で摘発漏れが発生した場合でも、2週齢以降の育成鶏のク

    ロアカスワブを検査することで、垂直感染鶏を摘発できると考えられた。

    ウ-2 ウイルス増殖の変動の解明

    ウイルス排泄鶏群の卵管液からの

    ウイルス分離を 15 週間行った結果、

    強制換羽期間を除いて、ウイルス分離

    率は平均 80%以上と高率であった[図

    4]。一方、ウイルス非排泄鶏群では、全

    個体とも強制換羽期間を含めた全期間

    を通じてウイルスはまったく分離され

    なかった。以上の結果から、ウイルス排

    0/8

    4/9

    2/12

    5/9

    0/18

    13/13

    陽性数

    クロアカスワブ

    8週齢

    0.0

    44.4

    16.7

    55.6

    0.0

    100

    陽性率(%)

    0/8

    4/9

    2/13

    6/9

    1/18

    14/14

    陽性数

    クロアカスワブ

    4週齢

    0.0

    44.4

    15.4

    66.7

    5.6

    100

    陽性率(%)

    0/8

    4/9

    3/13

    6/9

    0/18

    17/17

    陽性数

    クロアカスワブ

    2週齢

    0.0

    44.4

    23.1

    66.7

    0.0

    100

    陽性率(%)

    0.00/10-

    30.03/10+抗体(+)排泄(-)

    6.31/16-

    50.08/16+抗体(+)排泄(+)

    0.00/18-

    66.712/18+SPF

    陽性率(%)陽性数

    漿尿液

    孵卵15日目

    ウイルス接種

    種卵

    0/8

    4/9

    2/12

    5/9

    0/18

    13/13

    陽性数

    クロアカスワブ

    8週齢

    0.0

    44.4

    16.7

    55.6

    0.0

    100

    陽性率(%)

    0/8

    4/9

    2/13

    6/9

    1/18

    14/14

    陽性数

    クロアカスワブ

    4週齢

    0.0

    44.4

    15.4

    66.7

    5.6

    100

    陽性率(%)

    0/8

    4/9

    3/13

    6/9

    0/18

    17/17

    陽性数

    クロアカスワブ

    2週齢

    0.0

    44.4

    23.1

    66.7

    0.0

    100

    陽性率(%)

    0.00/10-

    30.03/10+抗体(+)排泄(-)

    6.31/16-

    50.08/16+抗体(+)排泄(+)

    0.00/18-

    66.712/18+SPF

    陽性率(%)陽性数

    漿尿液

    孵卵15日目

    ウイルス接種

    種卵

    表1 垂直伝播鶏の摘発効率の分析

    40

    60

    80

    100

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (週)

    分離

    率(%

    )

    0.0

    0.4

    0.8

    1.2

    1.6

    2.0

    OD

    分離率(%)

    OD平均値

    強制換羽

    40

    60

    80

    100

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 (週)

    分離

    率(%

    )

    0.0

    0.4

    0.8

    1.2

    1.6

    2.0

    OD

    分離率(%)

    OD平均値

    強制換羽

    図4 ウイルス増殖の変動の解明(ウイルス排泄鶏群)

  • 8

    泄鶏の大部分は比較的安定して卵管内にウイルスを排泄しており、その逆に膣スワブの

    ウイルス検査が陰性であれば、垂直伝播を起こす可能性は低いことが示唆された。また、

    鶏に強いストレスを加えるとウイルスの体内増殖が誘発されることを想定していた

    が、強制換羽期間中は期間前後と比較してウイルス分離率が低かった。これは絶食

    操作による卵管の萎縮が卵管液の減少をもたらし、このことがウイルス分離率を低

    下させたものと推察される。

    ウ-3 採取法・採取器具の開発

    ウイルス培養用検体の採取方法による検出感度を比較した。その結果、膣スワブ

    及び子宮スワブと比較して、卵管貯留液のウイルスの検出率及び ELISA の OD 値が有

    意に高かった[表 2]。このことから卵管貯留液がウイルス培養用検体として最適で

    あると思われた

    が、卵管貯留液は

    少量ずつ卵管内

    に貯留されてゆ

    くことが明らか

    になり(データ未

    提示)、必要量を

    任意に採取する

    ことができなか

    った。また、卵管

    貯留液を採取するためには特殊な器具を使用する必要があり、このことが鶏に対し

    て過度のストレスを与える結果となり、産卵が一時的に停止するなどの育種上望ま

    しくない影響を及ぼすことも明らかとなった。以上の結果から、ウイルス分離材料

    としては卵管貯留液が最適であることが判ったものの、実用性の観点からは膣スワ

    ブで代用することが賢明であるとの結論に達した。

    ウ-4 分離飼育システムの確立

    ウイルス接種鶏のいるケージから隣接するケージ内の非感染鶏へ、ALV の水平伝

    播が起こるかどうかを初生ヒナから 12 週齢まで調べた。

    1)ウイルス接種鶏 1 羽と同一ケージ内で飼育された SPF 鶏では、4 週齢頃より

    感染抗体の上昇が見られ、感染初期にはウイルス排泄も確認された。また、同一

    ケージ内で飼育された移行抗体(+)鶏でも、移行抗体が消失する 4週齢頃より同様

    の感染抗体の上昇が認められた。

    2)試験群毎の隣接ケージへの水平伝播の有無を表 3 に示した。隣接ケージへの

    水平伝播が認められたのは、仕切り板が設置されていなかったケージのみであっ

    あり0.9379.5

    39子宮スワブ

    1.33100卵管貯留液

    100

    80.4

    89.3

    82.1

    検出率(%)

    1.32卵管貯留液あり

    0.6656

    膣スワブ

    0.84子宮スワブなし

    0.7128

    膣スワブ

    有意差平均OD値N

    あり0.9379.5

    39子宮スワブ

    1.33100卵管貯留液

    100

    80.4

    89.3

    82.1

    検出率(%)

    1.32卵管貯留液あり

    0.6656

    膣スワブ

    0.84子宮スワブなし

    0.7128

    膣スワブ

    有意差平均OD値N

    表2 採取法・採取器具の開発

  • 9

    た。

    表 3 水平伝播確認試験

    試験群 ウイルス株 接種羽数 仕切り板 水平伝播

    1 A 1 あり なし

    2 A 1 なし なし

    3 A 7 あり なし

    4 A 7 なし あり

    5 J 1 あり なし

    6 J 1 なし あり

    7 J 7 あり なし

    8 J 7 なし なし

    3)水平伝播により感染した個体は、抗体の上昇が認められたものの、試験期間

    中に恒常的なウイルス排泄鶏に転化することはなかった。

    ウ-5 清浄化の難易度分析

    清浄化システムを試験的に運用した際の、清浄化前後の抗体陽性率の変化を図 5

    に示した。清浄化前の汚染度が低かったホワイトロック[WR]では、17.0%から 7.1%

    に、汚染度が中程度であ

    ったロードアイランド

    レッド[RIR]では 49.2%

    から 13.3%に、最も汚染

    度の高かった白色レグ

    ホーン[WL]では、86.6%

    から 3.8%に減少した。

    以上の結果から、清浄化

    システムは ALV 汚染度

    及び鶏種に関係なくあ

    る程度有効に機能することが示唆された。

    ウ-6 実用原々種鶏の清浄化

    清浄化の難易度分析(イ・ウ-5)で試験的に運用した清浄化システムに更なる改

    良を加えたものを運用した。本試験で清浄化の対象とした白色レグホーン系原々種

    は、母系が2系統存在し隔年使用であるため2年間連続して清浄化を図った[図 6]。

    ウ-6-1 第 2 回清浄化実施結果

    17.0

    49.2

    86.6

    13.37.1

    3.8

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    低[WR] 中[RIR] 高[WL]

    抗体保

    有率(%)

    清浄化前

    清浄化後

    図5 清浄化の難易度分析(清浄化前後のALV抗体陽性率の推移)

    17.0

    49.2

    86.6

    13.37.1

    3.8

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    低[WR] 中[RIR] 高[WL]

    抗体保

    有率(%)

    清浄化前

    清浄化後

    図5 清浄化の難易度分析(清浄化前後のALV抗体陽性率の推移)

  • 10

    当該年使用の親鶏雄は第 1 回清浄化を試験的に実施した鶏群なので、親鶏雌と比

    較して抗体陽性率が

    低くなっていた。また、

    ALV 分離率が雌 5.8%、

    雄 0%の鶏群からウイ

    ルスが分離されなか

    った親鶏を選抜して

    次世代を作出したが、

    垂直伝播による育成

    鶏の ALV 分離率は約

    5%であった。しかし、

    これらの陽性鶏群を

    淘汰した結果、本鶏群の成鶏時の ALV 分離率は 0%になった。

    ウ-6-2 第 3 回清浄化実施結果

    当該年使用の親鶏雌は第 1 回清浄化を試験的に実施した鶏群で、親鶏雄は前年に

    清浄化を実施した鶏群である。親鶏の ALV 分離率及び抗体陽性率は既にかなり低い

    数値になっており、清浄化システム運用後の育成鶏にはウイルスが分離される個体

    は完全にいなくなっていた。また、中和試験の結果から中和抗体陽性鶏も皆無の状

    態になった。

    ウ-7 清浄化技術の確立

    本事業の成果から、トリ白血病ウイルスの精度の高い清浄化システムに必要な要

    件を図 7 に示したが、重要度が高いと考えられるものを大きな文字で表現した。実

    用レベルでは、育成鶏のウイ

    ルス検査と水平伝播による

    被害を最小限にする分離飼

    育装置の導入が最も重要で

    ある。親鶏のウイルス検査に

    よる摘発・淘汰は垂直伝播の

    危険性を減少させる効果か

    ら、抗体陽性率の高い鶏群に

    対しては有効な方策と位置

    付けられる。また、清浄化後

    の抗体検査はシステムの精度管理上からは必須の項目であり、全数検査ができない

    場合でも抽出検査で確認すべきであると思われる。

    世代Ⅰ 0 62.3

    0.4 4.1

    5.8 90.5

    14.8 100

    0 10.8

    0 3.7

    ウイルス 抗体

    陽性率(%)

    第1回清浄化

    第2回清浄化

    第3回清浄化

    世代Ⅱ

    世代Ⅲ

    世代Ⅳ 0 00 0.4※現時点では育成鶏の検査結果しかない。

    図6 実用原々種鶏の清浄化

    世代Ⅰ 0 62.3

    0.4 4.1

    5.8 90.5

    14.8 100

    0 10.8

    0 3.7

    ウイルス 抗体

    陽性率(%)

    第1回清浄化

    第2回清浄化

    第3回清浄化

    世代Ⅱ

    世代Ⅲ

    世代Ⅳ 0 00 0.4※現時点では育成鶏の検査結果しかない。

    世代Ⅰ 0 62.30 62.3

    0.4 4.1

    5.8 90.55.8 90.5

    14.8 10014.8 100

    0 10.80 10.8

    0 3.7

    ウイルス 抗体

    陽性率(%)ウイルス 抗体

    陽性率(%)

    第1回清浄化

    第2回清浄化

    第3回清浄化

    世代Ⅱ

    世代Ⅲ

    世代Ⅳ 0 00 0.4※現時点では育成鶏の検査結果しかない。

    図6 実用原々種鶏の清浄化

    対象鶏群のALV抗体保有率調査

    ウイルス排泄母鶏の摘発・淘汰

    •育成鶏のウイルス検査•分離飼育

    清浄化確認のためのALV抗体検査

    図7 実用的な清浄化システムの確立

    対象鶏群のALV抗体保有率調査

    ウイルス排泄母鶏の摘発・淘汰

    •育成鶏のウイルス検査•分離飼育

    清浄化確認のためのALV抗体検査

    対象鶏群のALV抗体保有率調査対象鶏群のALV抗体保有率調査

    ウイルス排泄母鶏の摘発・淘汰

    ウイルス排泄母鶏の摘発・淘汰

    •育成鶏のウイルス検査•分離飼育•育成鶏のウイルス検査•分離飼育

    清浄化確認のためのALV抗体検査清浄化確認のためのALV抗体検査

    高高

    低低

    図7 実用的な清浄化システムの確立

  • 11

    ウ-8 血清亜群型別法の開発[委託研究]

    ウ-8-1 ALV亜群特異的領域の遺伝子単離と組換え蛋白質の発現

    Bac to Bacバキュロウイルス発現システムにより組換え抗原の発現を試みた。設計

    した7種類の発現ベクターはすべてウイルスに組み込むことができたが、組換え抗原

    の発現が確認できたクローンは2クローンのみであった(envA-His MBP-His control)。

    そこでBac N Blue バキュロウイルス発現システムにより、再度亜群特異的領域とその

    領域を含む

    外皮蛋白質

    であるgp85

    蛋白全体を

    発現させる

    ことを試み

    た。Bac N

    Blueシステ

    ムにおいて

    も発現ベク

    ターはすべ

    てウイルス

    に組み込むことができ、抗His抗体を用いたWestern Blottingにより組換え抗原の発

    現分析を行った結果、Bac to Bacシステムで発現が確認できたクローンに加え、3ク

    ローン(His-envA His-envB MBP-envA-His)で抗原の発現が確認できた(図8)。これら

    のクローンを用いて抗原の収量を上げる調整を行いSDS-PAGEで発現量を確認したが、

    バンドが確認できたクローンはcontrolのMBP-Hisのみであった。さらに、鶏免疫抗A

    LV抗体を用いたWestern Blottingによる反応を試みたが、前記同様にバンドは認め

    られなかった。以上の結果から、バキュロウイルス発現システムではEnv蛋白の特異

    的領域を発現することはできるが、実用化に充分な抗原量を得ることができないこ

    とが明らかとなった。

    ウ-8-2 ウイルス型別法の開発

    ウ-8-2-1 常法により選定したペプチドをウサギに免疫し、抗ペプチドウサギ免疫血清

    を得た。得られた免疫血清に対して、ALV精製抗原にて亜群特異的な反応が見

    られるかどうかを確認した。その結果、ALV-A精製抗原特異的に反応する抗SR

    A抗体及びALV-B精製抗原特異的に反応する抗B2抗体の2つのウサギ免疫血清

    が選定できた(図9)。しかし、選定した免疫血清はIgG精製等を行うと反応性が

    低下したため、ELISA用抗体として利用することができなかった。

    図8 組換え抗原の分析

    中和抗体結合部位

    発現部位≒300bp

    レセプター結合部位

    ≒1200bp

    gp85

    Env-A

    Env-B

    M 1 2 3 M 4 5 6 7 M 8 9

    M 1 2   3  4

    Western BlottingSDS-PAGE

    2 MBP

    1 Cell

    HisMBP

    3 A-His HisEnv-A

    HisEnv-B4 B-His2 5 8 MBP

    1 4 Cell

    3 A-His HisEnv-A

    His6 His-A

    His7 His-BHisMBP

    MBP HisEnv-A9 His-B

    Bac N BlueシステムBac to Bacシステム

    図8 組換え抗原の分析

    中和抗体結合部位

    発現部位≒300bp

    レセプター結合部位

    ≒1200bp

    gp85中和抗体結合部位

    発現部位≒300bp

    レセプター結合部位

    ≒1200bp

    gp85

    Env-A

    Env-B

    M 1 2 3 M 4 5 6 7 M 8 9

    M 1 2   3  4

    Western BlottingSDS-PAGE

    2 MBP

    1 Cell

    HisMBP

    3 A-His HisEnv-A

    HisEnv-B4 B-His

    2 MBP

    1 Cell

    HisMBP

    3 A-His HisEnv-A

    HisEnv-B4 B-His2 5 8 MBP

    1 4 Cell

    3 A-His HisEnv-A

    His6 His-A

    His7 His-BHisMBP

    MBP HisEnv-A9 His-B

    Bac N BlueシステムBac to Bacシステム

  • 12

    ウ-8-2-1 ALV精製抗原に対する複数のモノクローナル抗体を作製し、それぞれの反応

    性をALV精製抗

    原にて確認した。

    その結果、ALV-

    A精製抗原特異

    的に反応するモ

    ノクローナル抗

    体としてA1、A9

    及びALV-B精製

    抗原特異的に反

    応するモノクロ

    ーナル抗体としてB1、B2の各2種類を選定できた(図10)。

    ウ-8-2-3 上記で選定した抗ペプチドウサギ免疫血清、モノクローナル抗体を組み合わ

    せた抗原検出ELISAの

    検討を行ったが、ALV-

    A培養上清を亜群特異

    的に検出することはで

    きなかった(図11)。

    ウ-8-2-4 ALV-A及びBを特異

    的に検出可能なプライ

    マーの設計を行い、そ

    れらのプライマーを用

    いて各ウイルス標準株

    を特異的に増幅できるかどうかを確認した。それによりA亜群について1セット、

    B亜群については2セ

    ットのプライマーセ

    ットが選定できた。次

    に、各種鶏群の清浄化

    過程で分離されたウ

    イルス株からRT-PCR

    によりcDNAを作製

    し、それをテンペレー

    トとしてそれぞれの

    プライマーでPCRを

    行った。上記と併行してALV共通プライマーを用いたPCRを行い、増幅産物の

    抗B1 抗B2 抗B3

    102

    103

    104

    105

    抗SRA 抗RAV1

    102

    103

    104

    105

    ウイルス中和活性抗SRA   陰性抗B 2   陰性

    精製抗原抗SRA A亜群特異的抗B2  B亜群特異的

    精製抗原 ペプチド抗体

    ラベル抗体

    図9 ペプチド抗体の選定

    抗B1 抗B2 抗B3

    102

    103

    104

    105

    抗SRA 抗RAV1

    102

    103

    104

    105

    ウイルス中和活性抗SRA   陰性抗B 2   陰性

    精製抗原抗SRA A亜群特異的抗B2  B亜群特異的

    精製抗原 ペプチド抗体

    ラベル抗体

    抗B1 抗B2 抗B3

    102

    103

    104

    105

    102

    102

    103

    103

    104

    104

    105

    105

    抗SRA 抗RAV1

    102

    103

    104

    105

    102

    102

    103

    103

    104

    104

    105

    105

    ウイルス中和活性抗SRA   陰性抗B 2   陰性

    精製抗原抗SRA A亜群特異的抗B2  B亜群特異的

    精製抗原 ペプチド抗体

    ラベル抗体

    図9 ペプチド抗体の選定

    精製抗原A1 A9 A亜群特異的B1 B2 B亜群特異的

    精製抗原 モノクローナル抗体

    ラベル抗体

    精製抗原  A B A B

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    A9

    A1 B1

    B2

    精製抗原A1 A9 A亜群特異的B1 B2 B亜群特異的

    精製抗原 モノクローナル抗体

    ラベル抗体

    精製抗原  A B A B

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    A9

    A1 B1

    B2

    精製抗原  A B A B

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    ×100

    ×1000

    A9A9

    A1A1 B1B1

    B2B2

    図10 モノクローナル抗体の選定

    原液

     A1  B1  A1  B1 A1  B1

    ×100 ×1000 ×10000

    抗ペプチドウサギ免疫血清

    モノクローナル抗体 (x200)

    培養上清

    培養上清:原液, ×100, ×1000

    抗ペプチド血清:×100, ×500, ×2000

    ラベル抗体:HRPOウサギ血清×1000

    モノクロ抗体:×200

    ×1000

    ×100

    原液

    ×1000

    ×100

    図11 抗原検出用免疫血清

    原液

     A1  B1  A1  B1 A1  B1

    ×100 ×1000 ×10000

    抗ペプチドウサギ免疫血清

    モノクローナル抗体 (x200)

    培養上清

    培養上清:原液, ×100, ×1000

    抗ペプチド血清:×100, ×500, ×2000

    ラベル抗体:HRPOウサギ血清×1000

    モノクロ抗体:×200

    ×1000

    ×100

    原液

    ×1000

    ×100

    図11 抗原検出用免疫血清

    原液

     A1  B1  A1  B1 A1  B1

    ×100 ×1000 ×10000

    抗ペプチドウサギ免疫血清

    モノクローナル抗体 (x200)

    培養上清

    培養上清:原液, ×100, ×1000

    抗ペプチド血清:×100, ×500, ×2000

    ラベル抗体:HRPOウサギ血清×1000

    モノクロ抗体:×200

    ×1000

    ×100

    原液

    ×1000

    ×100

    原液

     A1  B1  A1  B1 A1  B1

    ×100 ×1000 ×10000

    抗ペプチドウサギ免疫血清

    モノクローナル抗体 (x200)

    培養上清

    培養上清:原液, ×100, ×1000

    抗ペプチド血清:×100, ×500, ×2000

    ラベル抗体:HRPOウサギ血清×1000

    モノクロ抗体:×200

    ×1000

    ×100

    原液

    ×1000

    ×100

    図11 抗原検出用免疫血清

  • 13

    シークエンスにより亜群を特定した。シークエンスの結果からA亜群と特定さ

    れた野外分離株の大部分は、選定したA亜群特異的プライマーでのみ増幅され

    た。一方、A亜群特異的プライマーで増幅されなかった1株は、B亜群特異的プ

    ライマーで増幅され、シークエンスの結果もB亜群に合致した。

    ウ-8-3 抗体型別法の開発

    ウ-8-3-1 ペプチド抗原、ペプチド抗体を駆使して様々な抗体型別法を試みたが、良好な

    結果は得られなかった。モノクローナル抗体とALV精製抗原を用いたサンドイッチEL

    ISAでは、ALV精製抗原のみを用いた従来法と比較して交差反応が減少すること

    が確認できた (図12)。

    ウ-8-3-2 遺伝子組換え技術を利用した抗体検出ELISAの開発は、事業期間内での完遂

    が困難であると判断し、既存技術であるフォーカス抑制中和試験の応用化に転

    換した。

    エ. 考察

    トリ白血病ウイルスの感染様式に焦点を当て、垂直伝播鶏及び垂直感染ヒナの摘発方法

    また摘発漏れによる水平伝播の阻止対策など、育種鶏を清浄化するために必要な各種要件

    を3カ年にわたって調べてきた。ALVに関しては多くのことが明らかにされている反面、

    不明な点も数多く残されている。本研究では、これらの不明な点をひとつひとつ明らかに

    しながら清浄化システムを開発しなければならなかった。また、構築した清浄化システム

    を実用原々種鶏に適用しその有効性を検証するためには、育種の世代更新サイクルに合わ

    せて実施するしか手立てはなく、実質的には1年に1回しか検証の機会はなかった。それゆ

    え、研究課題の基礎的な試験を行いながら、そこから得られた成果を迅速にシステムに反

    映させる必要に迫られた。振り返ってみれば、本研究テーマを3年間の事業とするには多

    図12 モノクローナル抗体を用いた抗体検出ELISAの検討

    ラベル抗体

    モノクロ抗体精製抗原

    免疫血清

    1,3,5:抗ALV-A鶏血清

    2,4,6:抗ALV-B鶏血清

    7,8,9,10:SPF血清

    5-10 レーン:サンドイッチELISA1-4 レーン:従来法

    1  2 3 4 5 6 7 8 9 10免血希釈

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    サンドイッチELISA従来法

    図12 モノクローナル抗体を用いた抗体検出ELISAの検討

    ラベル抗体

    モノクロ抗体精製抗原

    免疫血清

    1,3,5:抗ALV-A鶏血清

    2,4,6:抗ALV-B鶏血清

    7,8,9,10:SPF血清

    5-10 レーン:サンドイッチELISA1-4 レーン:従来法

    1  2 3 4 5 6 7 8 9 10免血希釈

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    サンドイッチELISA従来法

    ラベル抗体

    モノクロ抗体精製抗原

    免疫血清

    1,3,5:抗ALV-A鶏血清

    2,4,6:抗ALV-B鶏血清

    7,8,9,10:SPF血清

    5-10 レーン:サンドイッチELISA1-4 レーン:従来法

    1  2 3 4 5 6 7 8 9 10免血希釈

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    ×100

    × 1000

    5-10 レーン:サンドイッチELISA1-4 レーン:従来法

    1  2 3 4 5 6 7 8 9 10免血希釈

    ×100

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    ×100

    × 1000

    サンドイッチELISA従来法

  • 14

    少不向きであったかも知れない。しかし、研究成果の中には初めて確認された事象もある。

    たとえば、父鶏のALV陽性率が高くても、母鶏の陽性率が低ければ垂直伝播が起こりにく

    いこと、その逆のケースでは垂直伝播が起こりやすいことなどである。他にも、ウイルス

    排泄が不安定・不定期な個体では、摘発漏れを起こすような可能性が高いこと等が挙げら

    れる。最終的には3年間に得られた成果を集積し、実用的で精度の高い清浄化システムが

    開発できたと確信している。

    抗体の亜群型別法の開発に関しては、外来性ウイルス抗体と特異的に反応すると予想さ

    れる領域の変更、また、バキュロウイルス発現系の変更を行いながら組換え抗原の発現は

    達成できた。しかし、抗原を精製するための充分量を発現させることができず、本手法を

    用いた開発を断念した。ただし、試験を行ったいずれの発現系においても、コントロール

    抗原は発現できていることから(SDS-PAGEで確認可)、目的とする領域が適切に選択され

    れば開発の道が開かれる可能性は残されている。一方、ウイルス亜群型別法の開発は、P

    CR手法を用いて型別が可能であることを確認できた。

    オ. まとめ

    本研究成果に基づいて構築した清浄化システムは、2世代にわたる清浄化システ

    ム導入の結果、90%以上あった ALV 抗体陽性率をゼロの状態にすることができた。

    最終的に確立された清浄化システムは、運用上のミスが発生しない限りにおいては、

    1 世代で ALV を清浄化できる可能性が非常に高いと考えられる。委託研究の ELISA

    開発は、遺伝子組換え手法を用いた亜群特異的抗原の量産化が困難を極め、最終的

    には実用化の道は開かれなかった。

    「トリ白血病ウイルスの精度の高い清浄化システムの完成」は様々な波及効果を

    もたらすことが期待される。簡潔に以下に列記する。

    1)多系統・多羽数からなる国産鶏・地鶏を清浄化し、生産性を向上させることが

    できる。これにより外国鶏との競争力が増し、国内自給率の向上及び地域の活性化

    と雇用の拡大に貢献できる。

    2)動物用生ワクチンの製造の一部及び生物学的製剤の検定には SPF 種卵が使用さ

    れている。しかし、国内で維持されている既存の SPF 鶏は近親交配により生産性が

    極端に低下している現状にある。そこで、ALV を含めて介卵感染する病原体すべて

    の清浄化が図れれば、生産性の高い鶏種・系統での SPF 種卵の生産が実現可能とな

    る。また、インフルエンザ等のヒト用生ワクチンの製造には通常の種卵が用いられ

    ているが、将来的にはより高品質のものへの転換を要請される可能性もあり、そう

    なれば SPF 種卵の需要は益々高まってくる。

    一方、ALV の清浄化それ自身を事業化するためには解決すべき課題がいくつかあ

    る。本事業で開発した清浄化システムには、高度な技術と清浄化対象鶏群を飼養す

  • 15

    る大規模な鶏舎設備を必要とする。後藤孵卵場は本事業の遂行と併行して、(独)

    家畜改良センター岡崎牧場及び岐阜県畜産研究所養鶏研究と本事業テーマでの共

    同研究を展開していた。岡崎牧場には関連するすべての技術移転を行い、独自に清

    浄化できる道筋がついた。岐阜県は検査以外の部分をすべて自前で行っている。し

    かし、両者とも本格的な研究機関であるから独自に実施できるのであり、技術を移

    転すればどこでもできるというシステムではない。よって、先に述べたような民間

    で維持されている鶏群を清浄化するためには受託事業とする以外の道はないと思

    われる。清浄化システムを受託可能な事業にするためには、専用の鶏舎を増設する

    等の新たな設備投資が必要となってくる。しかし、民間で受託事業化するためには、

    採算性の面で委託側との折り合いをつけることが難しいと予想される。この問題の

    解決策として、種卵を受け取り孵卵期間中に陽性個体の摘発・淘汰を行い、ALV フ

    リーヒヨコのみを委託側に返す方法が考えられる。本研究中にこの手法に関する付

    加的な試験を行って一定の知見は得られたが、検討すべき課題は残されている。

    カ. 特許出願、学会発表等

    (ア) 工業所有権等

    現段階では取得の予定なし。

    (イ) 学会発表等

    本研究成果は順次学会及び論文で発表予定である。