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コード統一/マスター統合の考え方

コード統一/マスター統合の考え方...-4- Copyright © DRI, All rights reserved. 1.3 マスタデータ整備作業概要 マスタデータ整備では、広域流通性の高いこれらマスタ

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コード統一/マスター統合の考え方

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総務省『情報通信白書』によれば、日本企業の情報システムはアメリカ企業のそれと比べて、業務間会社間の情報連携に乏

しく、目的は個別業務の効率化に重点を置いている。

企業における情報システムの歴史は、給与計算や財務会計処理など個別業務の効率化を目的として、主に定型作業への導入

を中心に発展してきた。

一方、今日ではSCMやCRMなどの業務横断、あるいは企業横断で情報システムを活用するニーズが主流になってきている。

このような状況の中で、今日多くの企業の情報システムは「データが繋がらない」「データの精度が低い」「欲しいデータ

がすぐ取得できない」などの課題を抱えている。その主な要因は、元来の個別業務の効率化に適したデータ構造が、業務を

またがったデータの流通に向いていないことにある。

業務や企業を横断してデータが円滑に流通するための鍵は、マスタデータの整備にある。

例えば、CRMでは顧客ひとりひとりの嗜好、購入履歴、クレームなどのデータを横串で見る必要がある。

ところが、現状の情報システムは、マーケティング部門、セールス部門、サービス部門などでそれぞれ独自に顧客マスタを

持ち、それらの間で、コード体系、データ粒度、定義が異なっていることが多い。

したがって、CRM実現のためには、どのような情報を見たいか、といった業務上のニーズを反映させることはもちろんだ

が、それとは別に部門間で共通の顧客マスタを整備することが必須になる。

マスタデータの整備は、今日の情報システムにとって大きな課題の一つなのである。

一般に、マスタデータの整備というと「コード体系と桁数、属性を決めれば完了」と簡単に捉えているケースが意外と多い。

しかし、マスタデータ整備の作業はそれほど簡単なものではない。

例えば、一言で顧客マスタといっても、捉え方が各業務で異なる場合がある。

経理部門では顧客は支払口座を意味し、販売部門では顧客窓口を意味する。また、物流部門では商品の配送先を表すなど、

それぞれの業務の使途にしたがって、顧客を意味する範囲やデータの粒度が大きく異なるケースが見られる。

それら各業務の要件、制約条件を調整しながら最適解を見出すには、相応の技術が必要である。

また、マスタデータの流通範囲の広さから一度情報システムに取り込まれると、簡単に設計変更をすることができないため、

ビジネス環境の変化に耐えられるような将来にわたって柔軟で安定的なデータ構造を設計しなければならない。

マスタデータの整備では、業務間の調整や柔軟かつ安定的なデータ構造設計など、多様な面で高度なスキルが要求されるの

である。

データ総研では、以上のような時代の要請と技術的困難さへの解決策のひとつとして、マスタデータ整備作業にフォーカス

し、数々のプロジェクトを通して得たノウハウ・知見を方法論「PLAN-MASTER」にまとめている。

本稿では、マスタデータ整備に問題意識を持たれている方々に向け、弊社が考える「コード統一/マスター統合」の概要を

示す。

2006年5月

はじめに・・・

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グローバルSCM

最初に、そもそもマスタデータ整備とはどのようなものかについて概観する。

1.1 広域情報連携とマスタデータ整備の目的 「単一企業内・グループ内・取引企業内・業界内など、広範囲にわたり、水平/垂直方向の情報を容易かつスムーズに

 (データ変換などを可能な限り伴わず)、把握可能とすること」これを「広域情報連携(流通)」と言う。

1.マスタデータ整備とは何か

【図1-1:広域情報連携(流通)のパターン】

パターン2:直接連携型-既存システムそれぞれに修正を加えて、 コードを統一し、データ連携する

パターン1:合体型-既存システムを統合・一本化し、 コードを統一する

パターン3:間接連携型-既存システムはそのままで、新システムに データを変換・移行することで、データ連 携を可能にする

顧客管理

顧客管理

顧客管理

顧客管理 購買 製造 販売

購買 製造 販売変換 変換

C事業

B事業

A事業 顧客管理

顧客管理

顧客管理

商品開発

商品開発

購買

購買

購買

製造

製造

製造

販売 会計

販売 会計

販売 会計商品開発

購買 製造 販売変換 変換

購買 製造 販売

変換

  CRM・SCM・連結会計・・・さまざまな経営施策実現のため、経営サイドから、情報システムをどのように整備しビジネス

  と連携させるのかは重要な課題である。

   ・グローバルSCM(グループ企業外のサプライヤーや量販店も含む)

   ・連結企業内でのCRM(顧客の一元管理)

   ・連結会計

   ・連結企業内での業務機能再編成(会計、人事、購買などの部門統合もしくはシステム統合・シェアードサービス化)

   ・企業統合

   ・ERP子会社展開

  しかし、依然として「グループ戦略が描けない」「国際会計基準への対応に苦慮している」「連結在庫が見えない」

  「グループの経営効率化に着手できない」といった経営課題を抱えていることも多い。

  これは、WEB/オープン系にまで拡がりをみせる状況下で、システム間のインタフェースがより広範囲化・複雑化し、経

  営リソースを容易にかつ統合的に見ることができないことにも起因している。

  したがって、システムではこれらに対応するために、全社あるいは社外を含め「広域にデータを流通させることができる

  基盤」作りが急務であると言える。

  「マスタデータ整備」とは、主にマスタファイルで管理されるデータの広域情報連携をねらい、現状のマスタファイルを

  統合し「統合マスタ」を設計することを目的とした作業である。

変換 変換

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   このうち共有性の高い重要なリソースは、情報システムではマスタファイルとして管理されることが多い。

   したがって、本稿ではこれを「マスタ(データ)」と呼ぶ。

 1.2.2 マスタデータの特徴   マスタデータの特徴は以下の通りである。

   1) 共用性が高い

   マスタデータは多くの業務で共用される。

   例えば、CRMでは、マーケティング部門・セールス部門・サービス部門で顧客マスタを共用する。

   また、集中購買では、製品分野が異なる事業部門間で購買品マスタを共用し発注データを集約する。

   2) 再利用性が高い

   マスタデータは、一度登録されると繰返し利用される。

   例えば、取引先マスタのデータは、取引先との取引が継続する限り存在し続け、受注や請求の都度参照される。

   商品マスタも同様で、商品の企画から廃番までの期間存在し、各業務から参照される。

1.2 対象となるデータ

 1.2.1 リソースデータとマスタデータ   組織・人・場所・商品など、事物を示すデータ、もしくは、それらの種類、それらの関係を示すデータを「リソース

   (データ)」と呼ぶ。次の3種類に分類される。

・プロジェクトメンバ :各プロジェクトを構成するメンバを表す  (プロジェクトと社員の関係)・販売単位 :取引先ごとに設定する商品販売単価を表す  (取引先と商品との関係)

組織、社員、取引先など

取引先分類、商品分類、受注区分、課税区分など

事例

種類や分類を表すタイプリソース1

リソース間の業務ルールおよび標準化された関係を表す

関連リソース3

個体を表すオカレンスリソース2

意味説明種類No

【図1-2:リソースの共有性イメージ図】

受注出荷

■営業

受払

■物流 ■生産

会計資金

■経理

異動給与

■人事

管理系計画・実績

 

支店 得意先 商品  勘定科目部署 仕入先 原材料 工場      機器社員

生産検収

□リソース

1.マスタデータ整備とは何か

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1.3 マスタデータ整備作業概要  マスタデータ整備では、広域流通性の高いこれらマスタデータを対象とする。

  一般に各企業・事業・業務間では、各種用語の使われ方やコード体系が統一されていないことが多い。

  したがって、以下の設計指針により、新規のマスタデータ構造・運用を設計する。

  各企業・事業・業務間の統制を図るため、現状を調査分析した上で「マスタ統合」「コード統一」を主な施策とする。

  1) 整合性・統一性

  同じ意味を持つマスタデータは、企業・事業・業務間を横断して意味を統一する。

  類似のマスタデータは、それぞれの異同を整理する。

  また、企業・事業・業務間の翻訳ルールも整理し、これらを共有できるよう定義・可視化する。

  2) 安定性

  マスタデータが流通するすべての範囲で、将来にわたり、ビジネス環境の変化に耐えられるような柔軟で安定的なデータ

  構造を持つ。

  3) 中立性

  特定の業務だけから影響を受けるのではなく、共用する業務それぞれと等距離な中立した位置付けである。

  4) 安全性

  障害や情報漏洩などが生じないようセキュリティ面での対策がなされている。

1.4 なぜ「マスタデータ整備」が広域情報連携実現の核なのか

  1) 経営ガバナンスとマスタデータ

  以下に、ビジネス上の目的・ねらいの具体例をあげる。

  これらが示す施策の視点軸は、すべてマスタデータにかかわる。

  経営戦略的視点とマスタデータは非常に密接な観点である。

  また、前述の特徴からもわかるよう、マスタデータは、共用性・再利用性が高い。

  したがって、マスタデータを統制することにより、広域情報連携実現に絶大な効果を発揮する。

1.マスタデータ整備とは何か

事業部門全体で「仕入先マスタ」「購買品目マスタ」を共通化する。

グループ全体で「部品マスタ」「商品マスタ」を共通化する。

マーケティング部門・セールス部門・サービス部門で「顧客マスタ」「商品マスタ」を共通化する。

整備が必要なマスタデータ

利用先・出荷先・請求先を「顧客」として管理し、取引履歴・応対履歴を把握し、顧客の嗜好・購入性向を分析し、各顧客からの収益の向上を図る。

CRMの導入1

複数工場で使用する原材料を集中管理し、購買機能を一元化し、仕入先に対する価格交渉力を強化する。

集中購買3

子会社を含めたグループ全体での在庫状況を把握し、過剰在庫や欠品の事態を早期に対処し、最適化を図る。

企業グループ全体での在庫削減

2

内容目的・ねらいNo

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1.5 マスタデータ整備の難しさ  マスタデータ整備作業には、以下の特徴そして難しさがある。

  1) 一気に刷新できない

  マスタデータを利用する業務システムの範囲は広く、それらすべてを一気に刷新することは難しい。

  そのため、マスタデータ整備の企画段階では、経営課題の緊急性や個々の業務案件などを勘案し、中長期の段階的なマス

  タデータ整備計画を策定すべきである。

  2) 利用部門間の調整に気を配る必要がある

  マスタデータの利用部門が多岐にわたることから、要件定義の際に利用部門間の利害が相反する可能性がある。

  それらの利害調整に時間を取られ、プロジェクトの進捗が遅延することがないよう配慮が必要である。

  3) 作業範囲を絞り込む必要がある

  マスタデータは、イベントデータ側でどのように使われているかを把握し、また、どのように使いたいかを決めて設計し

  なければならないので、設計するデータ構造のボリュームに対して、現状調査や課題検討の範囲が大きくなる傾向にある。

  子会社を含めたグループ全体で商品マスタの統合を図ろうとすると、関係する全企業のイベントを含めたデータが範囲に

  なる可能性があり、通り一遍に作業を進めると膨大な作業量になる恐れがある。

  したがって、マスタデータ整備の目的をよく見極め、少ない作業量で効果的な整備をおこなうよう心がける必要がある。

  4) 利用部門にとって要件が馴染みづらい

  マスタデータは利用部門がサービスを享受する業務システムの屋台骨となるので、マスタデータの要件に関しても利用部

  門が積極的に参画して決定すべきである。ところが、利用部門は日常接している業務システムの要件には関心を持つが、

  マスタデータの構造の整備はIT部門が担うものと考えていることが多い。

  利用者の協力を得られないと品質の高い設計は実施できないため、プロジェクトを実施するにあたって、利用部門にマス

  タデータ整備は利用部門自身の課題であることを理解してもらうことが重要である。

1.マスタデータ整備とは何か

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「マスタデータ整備」は、広範囲に影響のある施策である。

したがって、全体のシナリオとそれに適した体制を確保しなければ、継続も難しい。

本章では、プロジェクトを企画する際のガイドとして、全体計画イメージ、および実施体制・スケジュール立案・設計の

ポイントを示す。

2.1 プロジェクトの目的・方針について

  1) 経営課題に直結する全社プロジェクトと位置付ける

  もともと広域情報連携実現は全体利益の追求を意識した、経営課題に直結するテーマである。

  したがって、マスタデータ整備プロジェクトも、個別アプリ構築という位置付けではなく、全社レベルのプロジェクトと

  して相応の予算・体制・期間をかけ取り組むべきである。

  経営トップのコミットメント・支援、業務部門の参画・協力は必須である。

  これが得られない場合はまず達成困難と認識すべきである。

  2) ビジネス目的重視

  マスタデータ整備は、あくまでも、ビジネス上の目的・ねらいを達成するための手段である。

  したがって、この達成すべき目的・ねらいが明確であることが大前提である。

  目的・ねらいが異なれば、課題・解決策やその優先順位も異なってくる。やみくもにマスタデータ整備をするのは、作業

  負荷の割に実利に結びつかない事も多くなってしまう。

  目的・ねらいが明確であることで、何をどこまで整備するかの判断が自明となり、負荷を最小限にすることにもつながる。

  また、現業部門との調整や説得もスムーズになる。

  達成しなければならない目的が明確になっているかどうかが、プロジェクトの成否の鍵を握ると考える。

  3) Think Globally,Act Locally

  共有性の高いマスタデータは対象ユーザが多く、ほぼすべての業務システムで利用される。

  目的にもよるが、マスタデータ整備は、既に存在する業務システムへの影響も大きく、全体浸透まで時間がかかることが

  多い。それだけに、相応の全体シナリオを用意しておかなければ継続が難しい。

  現状からゴールに到達するまでのマイルストーンを明示し、関係者皆で共有する必要がある。

    【フェーズ1】現状マスタデータアセスメント

    【フェーズ2】統合マスタ基盤整備中長期計画策定

    【フェーズ3】統合マスタ基盤整備実施

2.プロジェクト企画ガイド

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2.プロジェクト企画ガイド

2.2 工程ガイド

 2.2.1 全体工程概要  「マスタデータ整備」とは、業務・事業間で共有するリソースデータを整備し、統合マスタを管理するための企画・作業

  一般を示す。

  全体を鳥瞰すると、主管が異なる2系統のプロジェクトが共存することになる。

  一つは、「統合マスタ基盤」構築を目指す全社レベルのマスタデータ整備プロジェクト、もう一つは、各業務のニーズを

  実現するシステム開発・保守プロジェクトである。

  後者は、適用のためにプロジェクト化されることもあるが、多くは、各開発計画案件の設計工程の中に取り込まれること

  になる。したがって、両者の連携は必須である。

  本稿では、前者プロジェクトを対象(前者のプロジェクトの立場で記述)とし、これら全般を「マスタデータ整備」と呼ぶ。

【図2-1】

会計システム再構築プロジェクト

1.現状マスタデータ アセスメント

設計

統合マスタ基盤整備系 プロジェクト

2.統合マスタ基盤整備 中長期計画策定 3.統合マスタ基盤整備実施

各種業務システム系

プロジェクト

経営施策検討

現状マスタデータ評価

現状マスタデータ調査・分析

統合マスタ骨格設計

(基本方針)

統合マスタ基盤整備中長期計画

現状追加分析

統合マスタ管理業務設計/システム設計

概念設計

物理設計

データ移行設計(クレンジング)

企画

現状調査

設計

開発~移行

[2次]

追加設計

[3次]

追加設計

[2次]開発

&移行

[1次]開発

&移行

[3次]開発

&移行

マスタDB汎用機能開発

統合マスタ連携部追加設計&開発&マスタ移行

〇〇業務△△プロジェクト〇〇業務□□プロジェクト

▽▽システム△△プロジェクト

統合マスタ連携部

追加設計&開発&マスタ移行

統合マスタ連携部

追加設計&開発&マスタ移行

【PLAN-MASTER】 前提とする全体計画イメージと マニュアル守備範囲

 Ver1.0リリース範囲:

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2.プロジェクト企画ガイド

 2.2.2 3つのフェーズ  弊社が企画するプロジェクトでは、マスタデータ整備の工程を大きく3つのフェーズにわけ、現状からゴールに到達する

  までのマイルストーンをモデルで明示し、これを指針に作業を進める。

   【フェーズ1】現状マスタデータアセスメント

   【フェーズ2】統合マスタ基盤整備中長期計画策定

   【フェーズ3】統合マスタ基盤整備実施

【フェーズ1】現状マスタアセスメント

  現状のマスタデータのデータ構造・管理状態、および主要課題を明らかにする。

  以下のような観点からマスタデータの課題を抽出する。

    ・利用者が抱える業務課題

    ・主要マスタデータ間の整合性

    ・データ構造のあるべき姿とのギャップ

  最終的にはこれらの情報を経営層に提示し、経営課題として承認、位置付けることが目的である。

  また、現状分析の前提として、次の2つのケースがある。

    ・CRMやSCMなど既に定められた経営戦略を契機とする場合

    ・特定の経営戦略を契機とせず、広く現状のマスタデータの実態を把握する場合

  前者は、CRMやSCMなど既に定められた領域に対し、経営施策実現の阻害要因となる事項を中心にマスタデータの課題

  を抽出する。後者は、より一般的で広範囲な観点からマスタデータの課題を抽出する。

  <主なOUTPUT>

   ■現状_概念DB構造図(マスタ)

   ■現状_IPFチャート(マスタ)

   ■検討テーマ一覧表

   ■現新ファイル対応表(Ver1:現状マスタの統合案)

【フェーズ2】統合マスタ基盤整備中長期計画策定

  前フェーズ(1. 現状マスタデータアセスメント)の結果を踏まえ、マスタデータ整備が寄与する効果目標を明確にし、業務

  課題を定義する。業務課題の重要度や費用、マスタデータ以外のシステム計画などを勘案し、統合マスタ基盤整備の中長

  期計画を策定する。統合マスタ基盤整備中長期計画は、統合マスタ管理業務・システムの構築、および業務システム側の

  適用の両者を含む計画である。

  マスタ・コード整備は、リソースの性質上広範囲に影響のある施策である。

  統合マスタ管理システムの構築を考えた場合、現在稼動している業務システムの個別事情もあり、現実的には一括刷新と

  いうわけにはいかない。全事業・業務での適用完了までの展開を示す、段階的な適用計画を策定する必要がある。

  <主なOUTPUT>

   ■統合マスタ基盤整備_中長期スケジュール

   ■課題定義書

   ■統合マスタ管理基本方針

     ・統合マスタ_概念DB構造図(Ver2:主要管理対象の骨格)

     ・コード別データ品質管理組織一覧表(Ver1:主要管理のみ)

     ・稼動システム環境要件(システム構成,HW,SW,NW,I/Fなど)

     ・開発環境要件(システム環境,方法論など)

     ・想定見積金額一覧表 など

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2.プロジェクト企画ガイド

【フェーズ3】 統合マスタ基盤整備実施

  前フェーズ(2. 統合マスタ基盤整備中長期計画策定)を踏まえ、「統合マスタ管理業務・システム構築」および「業務システ

  ム側の統合マスタ適用」の実行計画を策定し、実施する。

  「統合マスタ管理業務・システム構築」では、前フェーズで定義した業務課題について解決策を検討し、統合マスタ管理

  業務・システム、および適用業務システムとの連携仕様を設計する。

  具体的には、統合マスタのDB構造、統合マスタ登録更新の業務手順および画面帳票、統合マスタと業務システムとのイン

  タフェースファイルの仕様を定義する。以降、開発・移行・テスト・運用を実施する。

  「業務システム側の統合マスタ適用」では、統合マスタと業務システムとのインタフェースファイルの仕様を踏まえ、業

  務システム内の影響箇所を調査し、設計する。以降、開発・移行・テスト・運用を実施する。

  当該フェーズの一部は、前フェーズで策定した中長期計画の適用スケジュールに則り、業務システムでの適用タイミング

  に合わせて、複数回実施される。

  なお、本マニュアルでの工程解説は概念設計までとし、以降の作業(物理設計・開発・移行・テスト・運用)は対象として

  いない。物理設計以降の作業に関しては、DOA-RADマニュアルをご参照されたい。

  <主なOUTPUT>

   ■統合マスタ_概念DB構造図

   ■統合マスタ管理_IPFチャート

   ■統合マスタ管理_入出力定義書

   ■統合マスタ管理_インタフェース定義書

   ■現新ファイル対応表

   ■統合マスタ移行_インタフェース定義書

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2.プロジェクト企画ガイド

2.3 スケジューリング スケジュールを考える上では、作業ボリュームの把握が必要である。

 分析・設計を効率的に進めるには、まず、ビジネス上の目的・ねらいを明確にすることが先決である。

 そして、作業負荷を最小限にするために、広範囲にわたる適用範囲から、分析対象・分析素材を適切に選択し、分析の範囲

 を絞込むことが重要である。

2.4 体制 体制を考える上では、以下に留意する必要がある。

  ・利用部門間の利害調整への配慮

  ・利用者に馴染みがない要件が議論される中での利用者の積極的な参画促進

 体制図のサンプルを示す。

ワーキンググループ

プロジェクトオーナー

マスタ整備実行責任者

ステアリング委員会

各種調査支援者

事務局

マスタ整備支援コンサルタント

マスタ整備実行リーダー

マスタ整備実行担当者

【図2-2:体制図】

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2.プロジェクト企画ガイド

2.5 統合マスタ設計に関するコンセプト

  1) 全体最適設計優先の原則

  マスタデータが流通するすべての範囲で、将来にわたりビジネス環境の変化に耐えられるよう、柔軟で安定的なデータ構

  造を設計する。

  そのために、1つの情報システム内における最適解よりも、企業全体さらには関連企業全体の最適解を優先し、広域流通

  コードを特定の処理のために概念データ構造をねじ曲げて実装したり、個別業務だけのニーズで変更するような設計は避

  けるべきと考える。

  2) 実装独立設計

  設計工程では、概念設計と物理設計の相互不可侵を徹底する。

  まず、概念設計工程では「どんな業務があり、そこでどんなデータが必要か」ということを示し、組織間の業務フロー・

  概念ファイル(管理対象)・データ項目・入出力項目の仕様を確定する。

  次に、物理設計工程では「それを、稼動環境にどう実装するか」ということを示し、HW、NW、DB、DBMS、PGM、

  CASE、などを前提とした仕様を確定する。

現状入出力の収集

現状データ構造分析

現状業務プロセス分析

新規データ構造

各種情報の定義

新規入出力の設計課題の検討

新規業務プロセス

現状分析 新規設計

ビジネスモデル

ソフトウェアの設計はAさんに任せてあります。

ビジネスモデルの設計はBさんに任せてあります。

独立! 独立!

ソフトウェアモデル

【図2-3:実装独立設計工程イメージ図】

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2.プロジェクト企画ガイド

  3) 各企業・事業・業務間で共有管理すべきマスタを「統合マスタ」と位置付ける

  各企業・事業・業務間で共有性の高いリソースを見極め、これを「統合マスタ」と位置付ける。一般に、以下の意味を

  持つレコードを調査・設計の対象とし、企業・事業・業務間でどのように整合性を保つべきかを明確にする。

     □組織(社内組織、グループ企業、グループ組織):事業推進体制

     □要員(社員、アルバイト、グループ社員):人的資産

     □場所(Location:地域、拠点、倉庫):モノに関する生産拠点、流通拠点

     □取引先(顧客、業者、企業、部門、個人、銀行):ビジネスの相手先

     ○品目(原材料、部品、製品、商品):ビジネスにおける価値提供物

     ○勘定科目:金銭に関する管理の分類基準

     ○単位(数量、通貨、言語):グローバルな単位基準

     ○経営指標とその分類軸(事業分野、事業地域):グローバル経営の評価軸

【A範囲:CO共有管理項目】 ・各BU(カンパニー/事業部/拠点など)の  データをCO(コーポレート)として集約  して管理する項目 ・業務間で広く利用され、かつ各BU間で  共有化が望まれる項目  ※SCMなどにより社内外で共有化する   項目を含む

【B範囲:BU間業務共有管理項目】 ・ある業務範囲において、各BU間で共有  化が望まれる項目

【C範囲:BU内共有管理項目】 ・特定BU内で共有化が望まれる項目

【D範囲:個別項目】 ・BUごと業務ごとで利用される項目  (共有化の要望がない)

D範囲

B範囲

業務内固有

C範囲BU内固有

A範囲全社(BU間)共有

業務間共有

BU BU BU BU

設計・開発 設計・開発 設計・開発 設計・開発

調達 調達 調達

生産

販売

経理

人事

CO(経営管理)

調達

販売

生産

経理

販売

生産

経理

販売

生産

経理

A

B

D

【図2-4:共有レベルのいろいろ】

C

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  4) One fact in One place の原則とコード統一

  「One fact in One place」とは「同じ意味のものは情報システムのどこか1個所で管理されるべきである」という原則

  である。

  一般に各企業・事業・業務間など、範囲が広域になるにつれ、用語の使われ方が統一されていないことが多い。

  したがって、同じ意味を持つマスタデータは、業務を横断して意味を統制し「統一コード」を付与する。

  類似のマスタデータは、ホモニム・シノニムを把握し、それぞれの異同を整理し、用語の意味を定義し統制する。

  さらに、だれが見てもわかるよう、標準化された図面言語で可視化する(モデル化する)。

【図2-5:コード体系・意味定義不統一のイメージ】

製品コードは、10桁です。

製造コードは、10桁です。

商品コードは、5桁です。

同じもの?

  5)  統合マスタ管理機能の独立

  共有性の高い「統合マスタ」は各業務システムに内包されるのではなく、共有機能として独立管理することが適切である。

  論理的に1つに統合されたDBは、周辺システム間でシームレスなデータ連携・データ整合性・マスタ拡張・保守容易性を

  保証する。このアーキテクチャは、統合マスタ管理機能としてシステム化するか否かにかかわらず、マスタデータ整備全

  般に適用される。

【図2-6:統合マスタアーキテクチャ】

統合マスタ管理システム

統合マスタ

マスタ マスタ マスタ

購買 製造 販売

コード変換PGI/F

コード変換PGI/F

コード変換PGI/F

購買 製造 販売

コード変換PGI/F

PG:プログラム  I/F:インタフェース

【コード翻訳】 システム間インタフェースプログラムで行っている コード変換を統合マスタで管理

【業務システムインタフェース】 各業務システムに向けて統合マスタデータを配信

製品コードは、7桁です。

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     2006年5月15日発行

編 集:株式会社データ総研

発行者:代表取締役社長 黒澤 基博

発行所:株式会社データ総研

    〒103-0001 東京都中央区日本橋小伝馬町4-11サンコービル

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    FAX 03-5695-1656

コード統一/マスター統合の考え方 資料

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