24
マクロ経済学入門 (データ分析入門) 3経済学ではデータを使って何を 知りたいのか (2) 『部分識別入門』第1章 1.3, 1.4, 1.5奥村綱雄 横浜国立大学経済学部 201910241

マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

マクロ経済学入門(データ分析入門)

第3回経済学ではデータを使って何を

知りたいのか (2)『部分識別入門』第1章

1.3節, 1.4節, 1.5節奥村綱雄

横浜国立大学経済学部2019年10月24日 1

Page 2: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝒚 : 結果変数

𝒕 = 𝒛𝒋実現処置変数

𝒕 : 処置変数

( treatment,説明変数、独立変数、

原因の変数 )

𝒚𝒋 : jの関数

𝒚𝒋 𝒕 : 結果変数

(outcome,被説明変数、従属変数)

𝒕 ≠ 𝒛𝒋潜在的処置変数

𝒚𝒋 = 𝒚𝒋 𝒛𝒋実現結果変数𝒚𝒋 𝒕

for 𝒕 ≠ 𝒛𝒋潜在的結果変数

用語の解説 (処置効果、因果効果)

𝑦

𝑦

2

Page 3: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

y社会全体の教育の効果(リターン)

A

B

y 𝑧 = 0

y

高卒 大卒

所得

教育

データ(高卒の人々の実際の平均所得)

知りたいこと(高卒の人々がもし大卒だった場合の仮想的な平均所得)

教育の関数

𝐸 𝑦 𝑡 |𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々がもしtであった場合の仮想的な𝑦 𝑡 の平均値𝐸 𝑦 𝑠 |𝑧 = 𝑠 = 𝐸 𝑦|𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々の実際の𝑦

の平均値

𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0

t= 1

𝐸 𝑦 𝑡 |z=0

3

Page 4: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

y社会全体の教育の効果(リターン)

A

B

y 𝑧 = 0

y

高卒 大卒

所得

教育

データ(高卒の人々の実際の平均所得)

知りたいこと(高卒の人々がもし大卒だった場合の仮想的な平均所得)

教育の関数

社会全体の大学教育のリターンの測り方(案)

高卒の人々がもし大学教育を受けた場合の平均リターン

「処置を受けなかった人の平均処置効果」

=〇B ー A = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 − 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0

𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0

t= 1

𝐸 𝑦 𝑡 |z=0

4

Page 5: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

社会全体の大学教育のリターンの測り方(案)

しかし、高卒の人々がもし大学教育を受けた場合の平均リターン

「処置を受けなかった人の平均処置効果」𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 − 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0は、実際の高卒の人々の効果だけで社会全体の効果ではない

𝐸 𝑦 0 |z=0 𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

5

社会全体の教育の効果(リターン)

Page 6: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

𝑬 𝒚 𝟎 :全員が高卒のときの平均賃金𝑬 𝒚 𝟏 :全員が大卒のときの平均賃金

6

社会全体の教育の効果(リターン)

Page 7: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

社会全体の大学教育のリターンの測り方 (正解)すべての人が大学教育を受けることによって、平均的に賃金はどれだけ変化するか𝑬 𝒚 𝟏 − 𝑬 𝒚 𝟎 : 平均処置効果

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0

7

社会全体の教育の効果(リターン)

全員が大卒のときの平均賃金

全員が高卒のときの平均賃金

Page 8: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

8

𝐸 𝑦|𝑧 = 𝑠 = 𝐸 𝑦 𝑠 |𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々の実際の𝑦の平均値𝐸 𝑦 𝑡 |𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々がもしtであった場合の仮想的な𝑦 𝑡 の平均値

データの例 j 𝒛𝒋 𝑦1 0 22 0 13 1 14 1 3

Page 9: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

9

𝐸 𝑦|𝑧 = 𝑠 = 𝐸 𝑦 𝑠 |𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々の実際の𝑦の平均値𝐸 𝑦 𝑡 |𝑧 = 𝑠 :sの状態の人々がもしtであった場合の仮想的な𝑦 𝑡 の平均値

データの例

𝑦 𝒕j 𝒛𝒋 𝑦1 0 22 0 13 1 14 1 3

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏1 0 2 22 0 1 13 1 2 24 1 4 4

Page 10: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

10

𝑦 𝒕

𝐸 𝑦|𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = × 2 + × 1 = = 1.5 𝐸 𝑦|𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = × 2 + × 4 = = 3

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏1 0 2 22 0 1 13 1 2 24 1 4 4

Page 11: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

11

𝑦 𝒕

表赤字の( )は、もし𝒕 ≠ 𝒛𝒋であった場合の𝑦 𝒕 であり、

観測されない値

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3)2 0 1 1 (1)3 1 2 (2) 24 1 4 (2) 4

Page 12: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

12

𝑦 𝒕

𝐸 𝑦|𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = × 2 + × 1 = = 1.5 𝐸 𝑦|𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = × 2 + × 4 = = 3 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = × 3 + × 1 = = 2 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = × 2 + × 2 = = 2

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3)2 0 1 1 (1)3 1 2 (2) 24 1 4 (2) 4

赤字は観測されない値

Page 13: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

条件付き期待値

13

𝑦 𝒕

𝐸 𝑦|𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = × 2 + × 1 = = 1.5 𝐸 𝑦|𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = × 2 + × 4 = = 3 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = × 3 + × 1 = = 2 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = × 2 + × 2 = = 2 𝐸 𝑦 0 = × 2 + × 1+ × 2 + × 2 = = 1.75 𝐸 𝑦 1 = × 3 + × 1+ × 2 + × 4 = = = 2.5

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3)2 0 1 1 (1)3 1 2 (2) 24 1 4 (2) 4

赤字は観測されない値

Page 14: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

社会全体の大学教育のリターンの測り方 (正解)すべての人が大学教育を受けることによって、平均的に賃金はどれだけ変化するか𝑬 𝒚 𝟏 − 𝑬 𝒚 𝟎 : 平均処置効果

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0

14

社会全体の教育の効果(リターン)

全員が大卒のときの平均賃金

全員が高卒のときの平均賃金

Page 15: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

平均処置効果

15

𝑦 𝒕

𝐸 𝑦 0 = 1.75, 𝐸 𝑦 1 = 2.5, 𝐸 𝑦|𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = 1.5, 𝐸 𝑦|𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = 3, 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = 2, 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = 2 処置を受けなかった人の平均処置効果 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 − 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = 2 − 1.5 = 0.5 平均処置効果𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0 = 2.5 − 1.75 = 0.75𝐸 𝑦 1 − 𝑦 0 = × 1 + × 0+ × 0+ × 2 = 0.75 大卒高卒の賃金格差 𝐸 𝑦|𝑧 = 1 − 𝐸 𝑦|𝑧 = 0 = 3 − 1.5 = 1.5

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3) (3 − 2 = 1)2 0 1 1 (1) (1 − 1 = 0)3 1 2 (2) 2 (2 − 2 = 0)4 1 4 (2) 4 (4 − 2 = 2)

赤字は観測されない値

Page 16: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡𝑬 𝒚 𝟏 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1 + 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0大卒の平均賃金 大卒の人口比率 仮想的平均賃金 高卒の人口比率= 3 × + 2 × = 2.5

識別できない 観測されない

高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の

仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

16

識別問題:社会全体の教育の効果(リターン)

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0全員が高卒のときの平均賃金

全員が大卒のときの平均賃金

Page 17: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

繰り返し期待値の法則

17

𝑦 𝒕

繰り返し期待値の法則

𝑬 𝒚 𝟏 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1 𝐸 𝑦 1 = 2.5 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = 2, 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = 3 𝑃 𝑧 = 0 = + = , 𝑃 𝑧 = 1 = + = 𝑬 𝒚 𝟏 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 12.5 = 2 × 12 + 3 × 12

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3)2 0 1 1 (1)3 1 2 (2) 24 1 4 (2) 4

赤字は観測されない値

Page 18: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡𝑬 𝒚 𝟎 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1高卒の平均賃金 高卒の人口比率 仮想的平均賃金 大卒の人口比率= 1.5 × + 2 × = 1.75

識別できない 観測されない

高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

18

識別問題:社会全体の教育の効果(リターン)

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0全員が大卒のときの平均賃金

全員が高卒のときの平均賃金

Page 19: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

繰り返し期待値の法則

19

𝑦 𝒕

繰り返し期待値の法則

𝑬 𝒚 𝟎 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1 𝐸 𝑦 0 = 1.75 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = 1.5,𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = 2 𝑃 𝑧 = 0 = + = , 𝑃 𝑧 = 1 = + = 𝑬 𝒚 𝟎 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 11.75 = 1.5 × 12 + 2 × 12

j 𝒛𝒋 𝑦 𝑦 𝟎 𝑦 𝟏 𝑦 𝟏 − 𝑦 𝟎1 0 2 2 (3)2 0 1 1 (1)3 1 2 (2) 24 1 4 (2) 4

赤字は観測されない値

Page 20: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡平均処置効果𝑬 𝒚 𝟏 − 𝑬 𝒚 𝟎= 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1− {𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 𝑃 𝑧 = 0 + 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 𝑃 𝑧 = 1 }

は識別できない 。

高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

20

識別問題:社会全体の教育の効果(リターン)

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0

観測されない

全員が高卒のときの平均賃金

全員が大卒のときの平均賃金

Page 21: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

社会全体の大学教育のリターンの測り方(案)で議論した

高卒の人々がもし大学教育を受けた場合の平均リターン

「処置を受けなかった人の平均処置効果」𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 − 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0も、 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 が観測されないから、識別できない。

𝐸 𝑦 0 |z=0 𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

𝑦 𝑡 :賃金関数

21

識別問題:社会全体の教育の効果(リターン)

Page 22: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

(平均)独立の仮定𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1を置く。

識別問題に対する計量経済学の方法

22

全員が高卒のときの平均賃金

全員が大卒のときの平均賃金

Page 23: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡高卒 大卒

賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒の実際の平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

(平均)独立の仮定𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 , 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1⟹ 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 0 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 = 𝐸 𝑦 1

識別問題に対する計量経済学の方法

23

全員が大卒のときの平均賃金

全員が高卒のときの平均賃金

Page 24: マクロ経済学入門 2019 第3回 7第3回 経済学ではデータを使って何を 知りたいのか(2) 『部分識別入門』第1章 1.3節, 1.4節, 1.5節 奥村綱雄

𝐸 𝑦 0 |z=1 𝐸 𝑦 0𝐸 𝑦 0 |z=0

𝐸 𝑦 1 |z=1 𝐸 𝑦 1𝐸 𝑦 1 |z=0

𝑦

𝑦𝑦

0 1 𝑡(平均)独立の仮定:𝐸 𝑦 𝑡 |𝑧 ≠ 𝑡 = 𝐸 𝑦 𝑡 |𝑧 = 𝑡 ⟹𝑬 𝒚 𝟏 − 𝑬 𝒚 𝟎 = 𝐸 𝑦 1 |𝑧 = 1 − 𝐸 𝑦 0 |𝑧 = 0

平均処置効果 最小二乗推定値

高卒 大卒

賃金

𝐸 𝑦 1 − 𝐸 𝑦 0最小二乗推定値

セレクションバイアス

24

大卒の実際の平均賃金

高卒の実際の平均賃金

高卒がもし大卒だった場合の仮想的な平均賃金

大卒がもし高卒だった場合の仮想的な平均賃金

全員が高卒のときの平均賃金

識別問題に対する計量経済学の方法