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目 次 プランの策定にあたって  基本的な考え方  基本計画 プランを推進するにあたって 数値目標一覧 1 プラン策定の趣旨 …………………………………………………………………… 2 プランの策定・位置づけ …………………………………………………………… 3 計画期間 ……………………………………………………………………………… 1 策定にあたっての背景 ……………………………………………………………… ⑴時代の潮流 ………………………………………………………………………… ⑵本県教育を取り巻く現状・課題 ………………………………………………… 2 基本テーマ……………………………………………………………………………… 3 基本目標 ……………………………………………………………………………… 4 施策の基本方針 ……………………………………………………………………… 10 5 施策体系 ……………………………………………………………………………… 16 第1章 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成 ……………………… 20 第2章 確かな学力の習得と活用する力の育成 ……………………………………… 56 第3章 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進 ……………………… 82 第4章 誰もが安心して学べる教育環境づくり …………………………………… 122 第5章 特に力を入れて取り組む6つの視点 ……………………………………… 171 1 プランの点検・評価について …………………………………………………… 176 2 プランを推進するにあたっての関係機関等との連携 ………………………… 176 数値目標一覧 …………………………………………………………………………… 180 ◆参考資料 ………………………………………………………………………………… 189 プランの策定にあたって

プランの策定にあたって 基本的な考え方 Ⅰ プランの策定に ...4 5 Ⅱ Ⅱ 基本的な考え方 基本的な考え方 1 策定にあたっての背景 ※県総合計画より抜粋

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目 次

Ⅰ プランの策定にあたって 

Ⅱ 基本的な考え方 

Ⅲ 基本計画

Ⅳ プランを推進するにあたって

Ⅴ 数値目標一覧

1 プラン策定の趣旨 …………………………………………………………………… 2

2 プランの策定・位置づけ …………………………………………………………… 2

3 計画期間 ……………………………………………………………………………… 2

1 策定にあたっての背景 ……………………………………………………………… 4

  ⑴時代の潮流 ………………………………………………………………………… 4

  ⑵本県教育を取り巻く現状・課題 ………………………………………………… 7

2 基本テーマ……………………………………………………………………………… 9

3 基本目標 ……………………………………………………………………………… 9

4 施策の基本方針 ……………………………………………………………………… 10

5 施策体系 ……………………………………………………………………………… 16

第1章 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成 ……………………… 20

第2章 確かな学力の習得と活用する力の育成 ……………………………………… 56

第3章 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進 ……………………… 82

第4章 誰もが安心して学べる教育環境づくり …………………………………… 122

第5章 特に力を入れて取り組む6つの視点 ……………………………………… 171

1 プランの点検・評価について …………………………………………………… 176

2 プランを推進するにあたっての関係機関等との連携 ………………………… 176

数値目標一覧 …………………………………………………………………………… 180

◆参考資料  ………………………………………………………………………………… 189

Ⅰ プランの策定にあたって

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プランの策定にあたって

1 プラン策定の趣旨 本県の教育行政の基本方針を定めるため,昭和38年に「茨城県教育振興計画」を策定して以来,昭和44年,47年及び51年に「茨城県教育振興対策」を,昭和55年,61年及び平成3年に「茨城県教育振興計画」を策定してきました。 また,平成7年には平成17年度を目標年度とする第8次の教育計画である「いばらき教育プラン」を策定しましたが,社会経済情勢の変化などにより,平成12年度に県計画が改定されたことに併せ,「いばらき教育プラン」も改定しました。 その後,第9次の教育計画を経て,平成23年度からは,茨城県総合計画「いきいきいばらき生活大県プラン」の策定に併せて,平成23年度から27年度までの県教育行政運営の基本方針として「一人一人が輝く 教育立県を目指して」を基本テーマに取り組んできたところです。 今回,新しい茨城県の総合計画「いばらき未来共創プラン」の策定や,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正を受けて新たに知事が策定した「茨城県教育大綱」に併せ,本県教育の目標及び取り組むべき施策の方向を明示する「いばらき教育プラン」を策定し,平成28年度から32年度までの5年間における県教育行政運営の基本方針とするものです。

2 プランの策定・位置づけ 茨城県総合計画「いばらき未来共創プラン」の部門別計画としてその整合性を確保し,本県における第11次の教育計画として位置づけられた計画です。 また,教育基本法第17条第2項にあるように,平成25年に策定された国の第2期教育振興基本計画を参酌して地方自治体で策定することが求められている,本県の教育振興基本計画としても位置づけられるものです。

3 計画期間 このプランは,茨城県総合計画(計画期間:平成28年度から32年度まで)における部門別計画であることから,計画期間を平成28年度から平成32年度までの5年間とします。

Ⅱ 基本的な考え方

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

1 策定にあたっての背景※県総合計画より抜粋

⑴時代の潮流

① 急激な人口減少と超高齢化の進行

・我が国の総人口は,平成20年を頂点に減少局面に入り,平成52年には約1億700万人に減少し,総人口に占める高齢者の割合は,平成22年の約23%から,約36%まで増加すると見込まれています。(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計)また,東京圏への若年層を中心とした流入超過による人口の東京一極集中が続いており,人口の地域的な偏在が進んでいます。・人口減少や超高齢化の進展は,国内需要や労働力人口の減少などによる経済活動の縮小,地域コミュニティの崩壊,国や地方公共団体の財政悪化による社会生活基盤の劣化など,様々な影響を及ぼすことが懸念されています。・国を挙げて地方創生が進められており,本県においても,平成27年10月に策定した「茨城県まち・ひと・しごと創生総合戦略」及び「茨城県人口ビジョン」において,急激な少子高齢化の進展に的確に対応し,人口減少の進行を可能な限り緩やかなものとしていくとともに,将来にわたって活力ある地域社会を維持していくため,人口,経済,地域社会の課題に一体的に取り組んでいくこととしています。

② 社会経済のグローバル化と交流の拡大

・世界経済の結び付きが深まるグローバル化が一層加速する中,アジアの新興国の成長などにより様々な分野において国際競争が激化しており,社会経済はもとより,日常生活においても大きな影響をもたらしています。・国では,地域間の対流を発生させてイノベーションを促進し,国際競争力の強化を実現する国土づくりの方向性を示すとともに,観光立国の実現に取り組むなど,グローバル化を活かした成長戦略を推進しています。

③ 大規模自然災害の切迫とインフラの老朽化

・今後30年以内の発生確率が70%と予想される首都直下地震,南海トラフ巨大地震や大規模火山噴火,地球温暖化に伴い激甚化する恐れがある風水害や土砂災害など,大規模自然災害への対応が大きな課題となっています。・高度成長期以降に集中整備したインフラは,今後,老朽化が急速に進むと見込まれており,長寿命化や計画的な更新により機能を適切に維持していくことが必要です。

④ 資源・エネルギーの制約や地球環境問題の深刻化

・エネルギー資源の大部分を海外に依存している我が国にとって,その安定供給の確保は常に重要な課題となっています。・地球温暖化の進行や生物多様性の危機など地球規模での環境問題が一層深刻化しています。我が国においても,異常気象による災害の激甚化や渇水被害のほか,PM2.5による国境を越えた大気汚染など,新たな環境問題も生じてきています。・地球温暖化問題の解決を図りつつ,低炭素社会の構築とエネルギー安定供給の確保の両立を始めとする,環境と経済が両立した持続可能な社会の実現がより重要となっています。

⑤ 情報通信技術(ICT)等の劇的な進歩

・情報通信技術(ICT)や科学技術は,劇的に進歩しており,産業の生産性を高めるとともに,生活の利便性を急速に向上させています。・ICTを活用したネットワーク化は,人と人のつながり方も含め,国民生活に大きな影響を与えています。・今後の経済発展の原動力として,科学技術の果たす役割が非常に大きくなっており,交通,医療,教育,防災など様々な分野でのイノベーションを促進し,その成果を社会に円滑に取り入れることを可能とする基盤を整備していくことが必要です。

⑥ 生活の安全と安心を求める意識の高まり

・近年,全国的な医師不足など地域医療が抱える問題や,感染症の脅威,高齢化の進行に伴う介護福祉サービスの充実に対する関心の高まりに加え,食品の安全性の問題など,安全・安心に対する意識が高まっています。・治安の面では,刑法犯認知件数や人身交通事故発生件数の減少など,数値の面では治安の回復傾向が継続していますが,ニセ電話詐欺や自動車盗などの身近な犯罪が高い水準で発生しており,依然として予断を許さない状況にあります。・雇用の面では,若年層の非正規雇用が拡大しており,不安定な雇用や低賃金,能力開発の機会の欠如といった課題から,所得格差の拡大や生活不安の増大の一因になるとともに,晩婚化や未婚率の上昇,出生数の低下にも繋がっています。

⑦ 価値観の変化とライフスタイルの多様化

・人々の価値観の多様化が進んでおり,物の豊かさに加えて心の豊かさを享受し,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が実現した社会を構築していくことが重要になっています。・特に,仕事と子育てを両立できる環境を整備するため,多様で柔軟な働き方が求められており,長時間労働の抑制や教育啓発活動など,仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の更なる推進が必要となっています。・核家族や一人世帯が増加する中,地域コミュニティの力が,より一層求められるとともに,個人だけでなく企業やNPOなどもプレイヤーとして地域づくりに関わる,新しい「協働」の取り組みが重要となっています。

⑧ 女性が活躍する社会づくりの要請

・我が国では,企業等の役員,管理職に占める女性の割合は1割程度と国際的に低い水準にあり,女性の労働力率も,子育て期に当たる30歳代で低下する「M字カーブ」が解消されていない状況にあります。・生産年齢人口の減少により,活力の低下が懸念される中で,我が国最大の潜在力である「女性の力」を最大限発揮できる社会を構築することは,喫緊の課題となっています。

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

⑨ 東京オリンピック・パラリンピック及び茨城国体の開催

・第32回夏季オリンピック・パラリンピック(平成32年)の開催地として東京が選出され,開催に向けてインフラ整備などの準備が進められています。オリンピック等の開催は,約3兆円の経済波及効果や約15万人の雇用を誘発するとされており,参加国との人的・経済的・文化的交流の拡大や訪日外国人旅行者の増加など,観光面でも大きな効果が期待されています。・本県においても,事前キャンプの誘致や観光誘客などによる地域活性化の取り組みを推進し,オリンピック等を契機とした地域づくりを進めることが必要です。・第74回国民体育大会及び第19回全国障害者スポーツ大会(平成31年)の開催地として本県が内定しており,開催を通して,スポーツのより一層の普及・振興や全国から来県する多くの人々との交流による地域活性化を推進し,全国に「いばらきの魅力」を発信することが重要です。・こうした全国的・世界的ビックイベント開催を最大限に活かしていくためには,開催期間中だけでなく,開催後においても持続的に交流の拡大や地域活性化に繋がるような取組を進めていくことが必要です。

⑵本県教育を取り巻く現状・課題※第1回新いばらき教育プラン策定懇話会より(説明資料は巻末掲載のとおり)

① 人口減少の影響

 私立高校の生徒数は増加傾向にあるものの,公立学校の児童生徒数,学校数は年々減少傾向にあります。また教員の大量退職という時期を迎えます。 国立社会保障・人口問題研究所の推計では,本県における年少人口は平成22年から向こう30年間の推計で見ても,約4割減少すると見込まれています。こういった中で小中学校の適正配置が課題です。これまでも平成20年に示した「公立小・中学校の適正規模について(指針)」をベースに統廃合が進み,これまで小中合わせ66校が統廃合により減少し,今後も22校の減が見込まれています。このような学校統合を契機とした魅力ある学校づくりや,教員の大量退職という中で,優秀な教員人材の確保や教職員のさらなる資質の向上などの取組が重要になっています。 一方で,教員の多忙化や業務の複雑,困難化が指摘される中,教員のサポート体制の構築も大きな課題です。さらに,平成28年度からの小中一貫校(義務教育学校)の制度化に伴う中等教育学校の在り方についても課題になります。

② 学力向上

 全国学力・学習状況調査の結果を見ると,全体としては児童生徒の学力は着実に向上していますが,中学の数学で,全国の平均正答率を若干下回り課題となっています。 平成27年度の理科の平均正答率は小中ともに全国上位に位置しています。また,「理科が好き」「授業が良くわかる」という肯定的な回答をした児童生徒の割合は,いずれも全国平均を上回っています。一方で,その割合は,中学校になると大きく減少します。小学校教員養成課程においては,実験・観察等の時間が十分に取れていないということもあり,苦手意識を持つ教員がいるということが教員側の課題です。 国際理解教育については,グローバル化が進む中で国際競争が激化する一方,日本の若者は内向き志向であるといったことも指摘されています。 国では現在,平成32年度からの学習指導要領の改訂に向け検討が行われており,これまでの知識を習得するということに加え,いわゆる「アクティブ・ラーニング」の方向性が強く打ち出されています。また,小学校での英語の教科化や選挙権年齢の引き下げに伴う新たな科目の新設,高校での日本史の必修化などが検討されています。 このような中,基礎学力の定着・向上,科学技術を担う人材及び国際社会で活躍し世界をリードする人材の育成が急務となっています。また,課題解決型の学習にしっかりと対応できる教員の養成など,新学習指導要領への適切な対応を図っていくことも求められています。

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

③ 健やかな体

 体力・運動能力については,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査」の結果において,小中学校,男女とも全国上位を維持しています。 4年後の平成31年度には茨城国体,その翌年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される中で,それらを見据えた競技力の向上への取組や,小中学生の運動能力の高さを活かした高校以降での競技力の向上などが課題です。 また,健やかな体をつくるベースとなる食育については,食育推進の中核的な役割を担う栄養教諭の配置を増やしていますが,食育を通して,例えば早寝・早起き・朝ごはんなど基本的な生活習慣づくり,家庭でのルールづくりなどに取り組む必要があります。

④ 豊かな心

 本県では全国に先駆けて全県立高校1年生で道徳の授業を実施し,平成28年度からは2年生に拡充するところです。生徒対象のアンケート調査の結果でも,8割から9割の生徒がこの道徳の授業を肯定的に捉えているという結果になっています。 家庭・地域の教育力については県政世論調査の結果でも,家庭の教育力の低下,あるいは子どもたちの社会性や規範意識の低下が指摘をされています。 いじめ・問題行動も大きな社会問題になっており,いじめの認知件数は本県でもこの2年間は5,000件前後で推移をしています。また,減少傾向にあった不登校児童生徒数が平成25年に増加に転じたことや,暴力行為の発生件数が小学生で増加していることが懸念されています。また,ネット社会と言われる中で,フェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーション能力の低下が指摘されています。 このような中で,命をつなぐといった視点に立ちながら,思いやりなど心を育む教育が必要であり,家庭や地域の教育力の再生,幼児教育の充実など人間としての基礎を作る就学前の教育がますます重要になってきます。また,低年齢化する問題行動解決に向けた取組や心に起因する問題に対しては,自然体験やボランティア活動といった体験活動が,今後ますます重要になってきます。

⑤ 特別支援教育

 特別支援教育については,特別支援学校や特別支援学級に在籍する児童生徒数が増加傾向にあるとともに,通常の学級においても,発達障害等の特別な教育的支援を必要とする児童生徒が相当数在籍していると考えられます。 そのため,特別支援学校の過密状態を解消するための施設等の整備や,小・中学校等における発達障害に対する正しい理解ときめ細やかな対応を図っていくなど,障害のある児童生徒が自立と社会参加を目指すための支援が重要となっています。

⑥ その他

 本県の市町村立学校の耐震化率は全国平均より低い状況にあり,耐震性の確保をはじめ,安全・安心な教育環境の整備が重要です。 子どもの貧困対策については,経済状況や家庭環境等による教育格差という問題が指摘されており,要保護・準要保護児童生徒に対する援助率で見ると,近年では7%弱で本県では推移しています。貧困の世代間連鎖を防止するための学習支援等に保健福祉部を始め,関係部局と連携して取り組んでいく必要があります。

2 基本テーマ

3 基本目標

一人一人が輝く 教育立県を目指して~子どもたちの自主性・自立性を育もう~

 学校・家庭・地域がそれぞれの役割を十分に果たしながら,社会全体で子どもたちを守り育てる体制を構築します。 特に生涯にわたる人格形成の基礎を培う乳幼児期において,家庭のしつけの徹底などにより,自主性・自立性に富み,優しさや思いやりを持って,強くたくましく生きられる子どもを育て,その上にたって「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」のバランスのとれた子どもたちの育成を図ります。

 近年,個人の自由を優先する社会の風潮を背景に,自分さえ良ければ良いという,行き過ぎた「個人主義」の考え方がはびこり,子どもたちの社会性や規範意識などの低下が指摘されています。 また,ライフスタイルや家族構成の変化,人間関係の希薄化などにより,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中,子どもたちの基本的な生活習慣の乱れや,過保護・過干渉による子どもたちの自主性・自立性の欠如が見られます。

 このような状況において,少子高齢化や人口減少,社会経済のグローバル化が急速に進展する中,資源小国である我が国が今後とも世界で確固たる地位を占め,将来にわたって大きく飛躍していくためには,個性や能力を発揮し,いきいきと活躍できる人材を社会全体で育てていくことが不可欠です。 特に,これからの時代を,社会的・職業的に自立し,たくましく生き抜いていくためには,子どもたち一人一人が,基礎となる学力,体力を土台としてしっかり身に付けた上で,想定外の事象や未知の事象に対しても,持てる力を総動員して主体的に解決していこうとする力や,他者に共感できる感性,思いやり,他者との意思の疎通を図るコミュニケーション能力などを培っていくことが必要となります。

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

4 施策の基本方針

 基本テーマ及び基本目標の実現に向け,次の4つの基本方針を掲げます。 

 家庭や地域,大学,企業など子どもたちの育成に携わる機関がそれぞれの主体性を尊重しつつ連携協力し,基本方針に基づく施策を推進することにより,一人一人が輝き,いきいきと活躍できる社会を実現する教育立県を目指します。また,一人一人が将来にわたり活躍するための基礎・土台として,乳幼児期からの教育・保育を通じて,たくましい心を持ち,自ら考え行動できる子どもたちを社会全体で育んでいくため,「子どもたちの自主性・自立性を育もう」というサブテーマを共有し,家庭や地域,大学,企業など「オール茨城」でその実現に向けて取り組んでいきます。 

基本方針1 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成

基本方針2 確かな学力の習得と活用する力の育成

基本方針3 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進

基本方針4 誰もが安心して学べる教育環境づくり

基本方針1 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成

 本県では,全国に先駆けた県立高校1学年での道徳の授業の導入や,さわやかマナーアップ運動の推進,「いばらき教育の日・教育月間」における県民運動により,子どもたちの規範意識や公共マナーの向上,豊かな心を養うための取組を進めてきました。

 しかしながら,子どもたちの規範意識の低下や問題行動の低年齢化が課題となるなど,更なる対応が求められています。特に,自主性・自立性に富み,優しさや思いやりを持って,強くたくましく生きる力を育てるには,自然体験活動や読書活動などにより,自ら考え積極的に行動し,自分の行動に責任を持つなどの社会を生き抜く力を育成することが重要です。また,生涯にわたる人格形成の基礎を培う乳幼児期における家庭教育等の充実のほか,道徳教育の更なる推進,世代をつなぐ意識の醸成なども重要です。さらに,情報の積極的な発信など開かれた学校づくりや学校を核とした地域コミュニティの再生など,社会全体での推進体制の整備が求められます。

 このため,家庭や地域の教育力の低下が指摘される中,教育の主体となる学校・家庭・地域などが,それぞれの教育力を高め,連携して子どもたちを守り育てることにより,社会全体で子どもたちの自主性・自立性,規範意識などを育み,人間として生きていく上での基礎力を培います。

体験活動

ボランティア活動

幼稚園児と小学生の交流活動

さわやかマナーアップ運動

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

基本方針2 確かな学力の習得と活用する力の育成 基本方針3 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進

 本県では,一人一人に応じたきめ細かな指導のための少人数教育の推進や,小学校高学年における理科教科担任制の実施など,児童生徒の基礎学力向上に向けた取組を推進してきました。 その結果,「全国学力・学習状況調査結果」においては,調査対象の多くの分野で全国の平均正答率を上回るなど,児童生徒の学力の向上が見られます。

 一方,グローバル化の急速な進展による国際競争や国際交流の活発化など教育を取り巻く環境は大きく変化しており,自国や郷土固有の自然・文化・歴史等を正しく理解するための教育や,つくば・東海等,科学技術の集積地である本県の特色を活かした教育などが一層重要となってきています。 国においては,課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の在り方や,小学校での英語の教科化,国民投票や選挙権年齢の満18歳以上への引き下げを踏まえた高等学校における新たな科目の新設など,新学習指導要領の検討が行われています。

 このように変化の激しい時代をたくましく生き抜いていくため,国公私立の学校を問わず,地域を正しく理解し,グローバル社会で活躍できる力や最先端の科学技術を担う力など,これからの日本や世界をリードする人材となるために必要な基礎的・基本的な知識・技能や,自ら課題を発見し解決できる能力など,確かな学力の習得と活用する力の育成を図ります。

 本県では,いつでもどこでも学べる機会を充実させるとともに,生涯にわたって質の高い学びを続けることができる環境づくりや,心に潤いと感動をもたらす文化芸術活動の推進,スポーツ活動の振興にも取り組んできました。 特に文化・芸術面では,平成26年全国高等学校総合文化祭茨城大会の開催を契機に,本県高校生の文化芸術活動が活性化するとともに,児童生徒の体力・運動能力の面では,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査結果」において男女とも得点合計が全国トップクラスの高い水準を維持しています。

 近年,県民の学習ニーズ,内容の多様化・高度化に伴う様々な学習機会の提供や,社会構造や生活様式の変化に対応した地域文化の継承の取組などが重要となっています。 また,国においては,スポーツ基本法の策定やスポーツ庁の設置など,スポーツに関する施策の総合的な推進が図られています。

 このため,生涯にわたり学べ,スポーツに親しめる環境を整備するとともに,文化振興条例に基づき,総合的な文化振興の推進に努めるなど,心豊かな県民生活の実現を図ります。また,体力づくりや食育,がん教育などの健康教育の推進により,生涯にわたりいきいきと活躍できる健やかな体の育成を図るとともに,特に平成31年の第74回国民体育大会「いきいき茨城ゆめ国体」や,その翌年の東京オリンピック・パラリンピックを契機とした競技力の向上やスポーツの振興を図ります。

高校生の英語による観光ガイド体験

いばらきっ子郷土検定

科学の甲子園ジュニア茨城県大会 生涯学習センターでの活動

文化活動(子ども歌舞伎)

自然博物館

国民体育大会キャリア教育(インターシップ)

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

基本方針4 誰もが安心して学べる教育環境づくり

 少子化の進展により,本県における公立小・中・高等学校の児童生徒数も年々減少し,国や県がガイドラインを示して学校規模の適正化や学校の適正配置を進めているものの,学校の小規模化に伴う教育上の諸課題がこれまで以上に顕在化しています。 一方,特別支援学校や特別支援学級等に在籍する児童生徒数は増加傾向にあり,障害の多様化や重度・重複化に伴い不足教室の解消が必要です。 また,親世代の不安定な雇用や低い所得水準による子どもの貧困など,経済状況や家庭環境等による教育格差や貧困の連鎖,いじめや暴力行為等の問題が指摘されています。 さらに,「県人権施策推進基本計画」及び「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」を踏まえ,誰もが個人の尊厳及び権利を尊重され,幸せに暮らすことのできる社会の実現が求められています。

 こうした中,子どもたちが将来に必要となる力を確実に習得し,一人一人が輝く社会の実現を図るためには,誰もが安心して学べる環境をつくり,子どもたちの学びを支えることが必要です。

 このため,少子化の進展など時代の変化に対応した魅力ある学校づくりの推進を図るとともに,信頼・尊敬される教員の育成や,ICT教育の推進,問題行動への対応,児童生徒等の安全の確保を進めます。また,自立と社会参加に向けた特別支援教育の推進,家庭の経済状況などに関わらずすべての子どもが等しく学習することのできる機会の確保,人権教育の推進などを図ります。さらに,私立学校における教育条件の維持向上や保護者の負担軽減等のため私学助成の充実に努め,建学の精神に基づく特色ある質の高い私学教育の振興を図ります。

いばらき輝く教師塾

防犯教室

ICTを活用した授業

外国人児童との学習

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Ⅱ Ⅱ

基本的な考え方

基本的な考え方

【基本方針1】 社会全体による子どもたちの自主性・自立性の育成 【基本方針2】 確かな学力の習得と活用する力の育成

【基本方針3】 生涯にわたる学習と文化芸術,スポーツ活動の推進

【基本方針4】 誰もが安心して学べる教育環境づくり

5 施策体系

 【基本テーマ】 一人一人が輝く 教育立県を目指して       ~子どもたちの自主性・自立性を育もう~

1項 課題解決型等,新たなニーズに対応した教育の推進

1節 基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得と活用する力の育成

2節 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)の育成

3節 言語活動の充実4節 環境教育,消費者教育,金融経済教育の充実

2項 グローバル社会で活躍できる人材の育成を目指した教育の推進

1節 外国語による実践的なコミュニケーション能力の向上2節 国際教育の推進のための環境づくり

3項 科学技術の集積地である本県の特色を活かした教育の推進

1節 理数教育の充実

4項 郷土教育の充実 1節 自国や郷土を正しく理解し,誇りや愛着を育てる教育の推進

5項 キャリア教育,職業教育の充実1節 キャリア教育の充実2節 ものづくりを担う人づくりの推進

6項 情報活用能力を育てる教育の充実 1節 情報活用能力を育てる教育の充実

7項 政治的教養教育の推進 1節 政治的教養を育む教育の推進

1項 学校の適正規模・適正配置の推進,魅力ある学校づくりの推進

1節 市町村立小中学校の適正規模・適正配置の推進2節 高校教育改革の推進

2項 信頼・尊敬される教員の育成

1節 教職員の資質能力の向上2節 優秀な人材の育成・確保3節 教職員のサポート体制の充実4節 コンプライアンスの確立

3項 安全・安心な学校施設づくり,ICT教育など社会の変化に対応した教育環境づくり

1節 学校施設整備の推進2節 学校のICT環境の整備

4項 いじめ,暴力行為や不登校等への対応,児童生徒等の安全の確保

1節 問題行動への対応の充実2節 多様化・複雑化する不安や悩みに対応できる教育相談体制の

充実・強化3節 学校の安全対策の推進

5項 自立と社会参加に向けた特別支援教育の推進

1節 障害の重度・重複化,多様化に応じた特別支援学校における教育の充実

2節 幼稚園,小・中学校,高等学校等における発達障害等のある子どもへの支援の充実

3節 社会性や豊かな人間性を育むための交流及び共同学習の充実4節 就学前から卒業後までの一貫した支援体制の充実5節 特別支援学校の教育環境整備の推進

6項 子どもの貧困対策などすべての子どもたちへの学習機会の確保

1節 学習の機会の確保

7項 多様性を認め合う社会づくり,男女共同参画についての教育の推進

1節 学校教育における人権教育の推進2節 社会教育における人権教育の推進3節 男女共同参画社会形成への意欲の向上4節 多文化共生のための環境づくり

8項 教育を推進するための行政運営 1節 教育行政の責任体制の明確化への対応

9項 私学教育の振興 1節 私学教育の振興

1項 社会を生き抜く力の育成1節 豊かな人間性を育むための体験活動の推進2節 子どもの読書活動の推進3節 災害等の危機管理能力の育成

2項 生活習慣・しつけなど家庭の教育力の向上1節 学校・家庭・地域・企業の連携による家庭教育への支援2節 社会全体で家庭教育支援に取り組む機運の醸成

3項 就学前教育の充実1節 幼児教育・保育の充実と小学校教育の連携及び接続2節 特別な教育的支援が必要な子どもへの早期対応

4項 豊かな心を育むための道徳教育の推進1節 道徳教育の充実2節 ボランティア活動の推進

5項 命を大切にする教育,世代をつなぐ教育の推進1節 命を大切にする教育の推進2節 家族愛や世代をつなぐ意識の醸成

6項 開かれた学校づくりの推進1節 地域の人材の積極的な活用と体制づくりの支援2節 地域に向けた情報の発信

7項 青少年の健全育成,情報モラル・情報リテラシーの向上

1節 マナーアップ運動の推進2節 県全体で取り組むインターネット機器利用の家庭のルールづ

くりの推進

8項 地域コミュニティの再生 1節 学校を核とした地域の活性化

9項 いばらき教育の日・教育月間の推進 1節 県民全体の運動の活性化

1項 生涯にわたって学び続けることができる環境づくり

1節 生涯学習・社会教育推進体制の充実2節 生涯学習ボランティア育成と活性化3節 県民の自主的な学習と学習成果の活用促進4節 県民の読書活動の推進

2項 文化芸術活動の活性化による地域づくり,文化芸術に親しむ環境づくり

1節 幼い頃から文化芸術を鑑賞,体験する環境づくり2節 学校教育における文化芸術活動の充実3節 美術館・博物館を活用した文化芸術の振興4節 オリンピック・パラリンピック文化プログラムの推進5節 文化振興施策の総合的な推進

3項 文化財の保存と活用 1節 文化財の保存と活用

4項 地域の文化を理解し継承していく取組の推進 1節 地域に根ざした伝統文化の継承

5項 茨城国体,東京オリンピック・パラリンピックを契機とした競技力の向上とスポーツの振興

1節 茨城国体を通した競技スポーツの推進2節 スポーツ関係組織の連携強化3節 オリンピック・パラリンピック教育の推進4節 スポーツイベントの開催を通した「する・みる・支える」

スポーツ活動の推進

6項 体力づくり,生涯にわたりスポーツに親しむ環境づくり

1節 学校体育の充実2節 生涯スポーツや健康づくりの推進のための環境整備

7項 食育,がん教育などの健康教育,薬物乱用防止に関する教育の推進

1節 食に関する指導と学校給食の充実2節 学校保健と健康教育の充実