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セメントを使用しないフライアッシュ コンクリートの製造技術開発と 実用化に向けた取り組み 2017年 11月 21日(火) 科学技術館サイエンスホール 中川ヒューム管工業株式会社 人見 隆 一般財団法人 電力中央研究所 菊地 道生 NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)主催 2017年 「石炭灰有効利用シンポジウム」 セッションⅢ:石炭灰の普及拡大への取組について

セメントを使用しないフライアッシュ コンクリート …セメントを使用しないフライアッシュ コンクリートの製造技術開発と 実用化に向けた取り組み

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Page 1: セメントを使用しないフライアッシュ コンクリート …セメントを使用しないフライアッシュ コンクリートの製造技術開発と 実用化に向けた取り組み

セメントを使用しないフライアッシュコンクリートの製造技術開発と

実用化に向けた取り組み

2017年 11月 21日(火)科学技術館サイエンスホール

中川ヒューム管工業株式会社 人見 隆一般財団法人 電力中央研究所 菊地 道生

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)主催

2017年 「石炭灰有効利用シンポジウム」

セッションⅢ:石炭灰の普及拡大への取組について

Page 2: セメントを使用しないフライアッシュ コンクリート …セメントを使用しないフライアッシュ コンクリートの製造技術開発と 実用化に向けた取り組み

背景・目的

セメントを使用しないフライアッシュ

(FA)コンクリートとは?

当グループが開発する製造方法

特長

実用化先

実プラントの適用性

実用化に向けた取り組み

今後の展開

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アウトライン

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その他

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石炭火力発電所

JIS品36万t

原粉923万t

セメント混和材/コンクリート

混合材セメント原料

土工材

建材等

16万t

31万t

142万t

603万t

167万t受入量上限

背景 石炭灰の有効利用問題

利用量増大に資する技術の開発が望まれる

品質管理され有価で取引

品質管理されない原粉

年間約959万t(2014年度・電気事業(火力発電))

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技術開発の目的・目標

セメント不使用FAコンクリート製造技術の開発とコンクリート製品としての実用化

• CO2低排出型&エコ• 高耐酸性

フライアッシュ(JIS品&原粉)有効利用量増大に向けた,

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業において,• 一般財団法人電力中央研究所• 一般財団法人石炭エネルギーセンター• 中川ヒューム管工業株式会社

共同実施

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セメント不使用FAコンクリートとは?

Si-Al系粉体 アルカリ水溶液

混練・養生

ジオポリマー

セメント不使用コンクリート=ジオポリマー

1980年代,Davidovits博士(仏)が開発・提案した技術SiやAlの重合により形成される自然岩石に硬化機構が近しいと

考えられたことから、岩石=ジオ,重合体=ポリマーと命名フライアッシュや高炉スラグ微粉末などの粉体を焼成せずに使

用することが出来る

フライアッシュ高炉スラグ微粉末等

水ガラス(Na2SiO3)+水酸化ナトリウム等

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海外における実用化状況

建築物のスラブ材(豪州)桟橋の床板(豪州)

豪州での実用化例が多い強度向上効果を有する水ガラスが安価であることが

一つの要因常温での反応が遅いため,工場で蒸気養生を施し製

造するコンクリート製品としての実用化例が多い※空港滑走路の現場打ち例あり(Brisbane West Wellcamp 空港)

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当グループが開発を進める製造技術水ガラス:日本ではコンクリート材料としては高価

粘性が高く扱いにくい

水ガラスを使用せず,他の産業副産物を使用する等の工夫により強度を確保する技術を開発

従来技術に比べ安価,製造し易い

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特長①CO2低排出・産業副産物大量利用

セメント 1tの製造・調達に係る CO2:760kg/t-CO2

全世界におけるセメント産業のCO2排出量≒人為的排出量の約6%(16億t)

FA1tの製造・調達に係るCO2※:17.9kg/t-CO2

製造時CO2=0,輸送に係るCO2=17.9kg/t-CO2

※土木学会:コンクリート構造物の環境性能照査指針(試案),コンクリートライブラリー125,2005

材料の製造・調達に係るCO2排出量

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特長①CO2低排出・産業副産物大量利用コンクリート1m3当たりに使用する各種材料に係るCO2排出量

ex.)FA:単位FA量300(kg/m3)×17.9(kg)=5.4(kg-CO2)使用材料毎に算出し積算

セメント製に比べ,CO2排出量が約70%低減FA使用量が非常に多い

FA以外の産業副産物も利用

環境負荷が少ないエコなコンクリート

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特長②高耐酸性

セメント不使用FAコンクリートは、セメントコンクリートに比べ、酸に侵されやすいCa分が少ないため、高い耐酸性を有している。

5%硫酸水溶液へのコンクリート浸漬試験結果

セメント製に比べ,耐酸性が非常に高い

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実用化先既存の蒸気養生製品(コンクリート製品)の代替

高い耐酸性が競争力となる下水道資材,温泉地資材

一般用途品 道路用製品,

護岸用製品など

酸腐食が問題 高耐酸性材料に対する

ニーズがある

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実プラントを使用した製造試験

試験実施工場:中川ヒューム管工業株式会社岡崎工場

コンクリートの混練から打設,養生および脱型に至るまでの生産サイクルを想定し,実プラントを使用した製品製造試験を実施

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使用材料

フライアッシュ原粉高炉スラグ微粉末(JIS A 6206 4000品)その他の粉体水酸化ナトリウム水溶液骨材減水剤AE剤

項目 FA成績値

二酸化珪素(%) 52.0湿分 (%) 0.2強熱減量 (%) 5.7密度 (g/cm3) 2.40粉末度 ブレーン比表面積 (cm2/g) 4300フロー値比 (%) 105活性度指数(%)

材齢28日 80材齢91日 ‐(養生中)

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実プラント使用試験状況

試料投入機を使用したマンホール上部 打設状況

打設後蒸気養生槽への型枠設置状況

若干粘性が高いものの,施工性には問題がない。流し込みも容易に行える。

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実プラント使用試験状況U字溝 脱型作業 マンホール下部部材 脱型作業

単純矩形型枠では問題ない。複雑な形状の型枠では、剥離剤等に工夫が必要

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試作品U字溝マンホール上下部材

脱型直後は青みがかった色を示すが,時間経過によりセメントコンクリートと同様の灰色に落ち着く

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実プラント使用試験結果

スランプフロー試験空気量

(%)圧縮強度σ1

(N/mm2)スランプフロー(cm)

50cm到達時間(sec)

実験室 58.0 8.0 4.8 37.9工場 63.0 4.5 5.5 37.7

<実験室と工場の試験結果比較>

<U字溝の製品試験>

「JIS A 5372 プレキャスト鉄筋コンクリート製品」準拠 曲げ耐力,外観,寸法:合格

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現場実証試験発電所構内 排水溝(熱排水:70~90℃)供用開始約1年後の状況• 同時施工したセメント製:表面の荒れ,剥離・剥落• セメント不使用FAコン製:目立った変状無し,健全

約1年経過後(2017/11)

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下水道展での製造品展示と反響下水道展2017(東京ビッグサイト,8/1~4)中川H管ブースにて,7月製造試作品展示 新聞社数社より取材 セメント新聞,下水道新聞に記事掲載

セメント新聞掲載記事(8/7号)

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有望実用化先 下水道管きょの状況管路施設の年度別整備延長※ 管路施設に起因した道路陥没件数※

管路延長は47万km今後,50年経過管が急増,道路陥没件数が増大する可能性

※国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html)

下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン(2015年度版)

再構築(改築・修繕)時代に突入ストックマネジメントが重要

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セメント不使用FAコン実用化のメリット

使用限界値

基準値

セメント不使用FAコン製セメント製

健全度

費用

補修 補修

改築(更新)

機能停止or事故発生

初期(更新)

補修 補修

改築(更新)

管路の長寿命化

改築サイクルの延伸

事業の平準化

省コスト化

時代にマッチした材料

実用化

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今後の取り組み

様々な性状のFAへ対応するための技術の高度化

NETISや各種リサイクル認定の取得に向けた,性能データの拡充

現場実証試験(試験施工)の積み上げ

FA利用量の増大により貢献するための,現場打ち可能な製造技術の開発