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2020年2月 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギーの拡大

中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

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2020年2月

中国におけるエネルギー構造転換と自然エネルギーの拡大

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謝辞

本報告書を作成するにあたり、ご協力いただいた企業・団体・研究者の皆様に感謝いたします。

執筆担当者

王嘉陽 自然エネルギー財団 上級研究員

免責事項

本報告書に記載した情報は執筆時点で入手可能な内容に基づいていますが、その正確性に関して

自然エネルギー財団が責任を負うものではありません。

公益財団法人 自然エネルギー財団とは

自然エネルギー財団は、東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故を受けて、孫 正義(ソ

フトバンクグループ代表)を設立者・会長として 2011年 8月に設立されました。安心・安全で豊

かな社会の実現には自然エネルギーの普及が不可欠であるという信念から、自然エネルギーを基

盤とした社会を構築することを目的として活動しています。

表紙イメージ:上海市のシンボルタワー「東方明珠」

2013年の上海市の大気質指数(AQI)が優または良レベルに達した日数は通年で66%だった

が、大気汚染対策やエネルギー消費転換などを講じて、2019年のAQI優良率は84.7%までに向

上した。

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目次

第 1 章 中国におけるエネルギー構造転換の進展 .................................................................... 1

1-1 中国エネルギー構造転換の背景とキーワード ........................................................... 1

1-2 一次エネルギー構造の低炭素化 ................................................................................. 7

1-3 電力部門の低炭素化 .................................................................................................. 10

火力発電 .......................................................................................................................... 12

原子力発電 ....................................................................................................................... 13

自然エネルギー発電 ........................................................................................................ 15

第 2 章 中国における自然エネルギー発電の促進政策........................................................... 19

2-1 発展の初期段階 ......................................................................................................... 19

2-2 「政府定価」と入札プロジェクト ........................................................................... 20

政府定価 .......................................................................................................................... 20

風力発電の開発権入札プロジェクト.............................................................................. 20

大規模太陽光発電の開発権入札プロジェクトと分散型 ................................................ 22

2-3 固定価格買取制度 ...................................................................................................... 24

第 3 章 中国における自然エネルギー発電の課題と今後の展望............................................ 27

3-1 出力抑制問題への対策 .............................................................................................. 27

3-2 グリッドパリティ・プロジェクト ........................................................................... 32

3-3 自然エネルギー発電の今後の展望 ........................................................................... 36

おわりに ...................................................................................................................................... 39

<参考文献> .............................................................................................................................. 40

英文文献 .............................................................................................................................. 40

中文文献 .............................................................................................................................. 40

中国の法令・通知等............................................................................................................ 41

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【図表目次】

図 1 中国の一次エネルギー消費量(1990~2018 年) .......................................................... 2

図 2 中国の一次エネルギー消費の構成比(1990~2018 年) ............................................... 2

図 3 世界主要国の一人当たりエネルギー消費水準(2005~2018 年、GJ/人) ................... 3

図 4 中国 CO2 排出量と一人当たり GDP のデカップリング予測 .......................................... 4

図 5 中国のエネルギー消費の経済効率:実績と予測(1990~2050 年) ............................ 5

図 6 中国の GDP、エネルギー消費と電力消費の増加率(2001 年~2017 年) .................. 6

図 7 中国の一次エネルギー消費の構成比(2005~2018 年) ............................................... 6

図 8 中国の石炭消費量(2010~2018 年) ............................................................................. 8

図 9 中国の石油消費量(2010~2018 年) ............................................................................. 9

図 10 中国の天然ガス消費量(2010~2018 年) ................................................................. 10

図 11 中国の発電設備容量の構成(2005~2018 年:GW) ................................................ 11

図 12 中国全体の発電電力量の構成(2009~2018 年:TWh) .......................................... 11

図 13 中国石炭火力発電の建設リスク早期警告システムの例(2021 年) ......................... 12

図 14 中国の原子力発電設備容量(MW)と発電ユニット数(2013~2019 年上半期) .. 13

図 15 原子力発電設備容量の地域別シェアと分布(2018 年) ............................................ 14

図 16 各地域の原子力発電設備容量と発電電力量の省内割合 .............................................. 14

図 17 中国の自然エネルギー発電設備容量の構成(2005~2018 年:GW) ...................... 16

図 18 中国自然エネルギー発電の発電電力量の構成(2009~2018 年:TWh) ................ 17

図 19 中国のバイオマス発電設備容量(2013~2017 年:GW) ........................................ 18

図 20 中国風力発電の出力抑制量と抑制率(2012~2018 年) ........................................... 27

図 21 中国各地域の風力発電の出力抑制率と地域分布(2013~2018 年) ........................ 28

図 22 中国太陽光発電の出力抑制量と抑制率(2016~2018 年) ....................................... 30

図 23 中国各地域の太陽光発電の出力抑制と地域分布(2015~2018 年) ........................ 30

図 24 中国国家電網会社(SGCC)の国内超高圧送電網 ...................................................... 32

図 25 中国各電源の均等化発電原価(LCOE)比較 .............................................................. 33

図 26 中国の風力発電と太陽光発電 LCOE の変化(2014~2019 年) ............................... 33

図 27 中国の一次エネルギー消費構成の予測(2045 年まで) ............................................ 37

図 28 中国の発電構成の予測(2050 年まで) ...................................................................... 38

図 29 中国の最終エネルギー消費構成の予測(2050 年まで) ............................................ 38

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表 1 エネルギー発展五カ年計画の主要目標(2006~2020 年) ........................................... 8

表 2 中国自然エネルギー発電の導入目標と実績................................................................... 16

表 3 風力発電開発権入札プロジェクト(第 1~5 期) ......................................................... 21

表 4 太陽光発電開発権入札プロジェクト(第 1~2 期) ..................................................... 22

表 5 「光電一体化建築」と「金太陽モデルプロジェクト」による新規設置量(2009~2012 年)

.............................................................................................................................................. 23

表 6 風力発電の固定買取価格と地域区分(2019 年) ......................................................... 25

表 7 太陽光発電の固定買取価格と地域区分(2019 年) ..................................................... 26

表 8 中国各地域の風力発電の導入実績および出力抑制(2018 年) ................................... 29

表 9 中国各地域の太陽光発電の導入実績(2018 年) ......................................................... 31

表 10 第 1 期・自然エネルギーグリッドパリティ発電プロジェクト(2019 年) .............. 35

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第 1 章 中国におけるエネルギー構造転換の進展

1-1 中国エネルギー構造転換の背景とキーワード

21世紀に入り、中国のエネルギー消費量は経済成長と共に急速に増加し、今日では、世界

最大のエネルギー消費国となっている。BP(2019)の統計によると、2018 年の中国の一次

エネルギー消費量は 3,273.5 Mtoe(百万標準石油換算トン1)であり、世界の一次エネルギー

需要の約 24%を占めている。

中国のエネルギー消費構造は、図 1に示すように、化石エネルギーが大きな割合を占めて

いる。その中心をなす石炭の消費量は 2013 年頃にピークに達し、その後は減少ないしは横

ばいの状況にある。一次エネルギー消費に占める石炭の割合は、2010年頃までは約 7割を占

めていたが、その後は減少傾向に転じている(図 2)。

2018年の石炭消費量は約1,913 Mtoeであり、全体に占める割合が初めて6割を下回った。

一方、石油と天然ガスの消費量は年々増加しており、2018年の消費量は 2005年比でそれぞ

れ 90%増、478%増となった。全体に占める割合は石油が約 20%、天然ガスが約 7%である

(図 2)。

注目すべきは、全体に占める割合はまだ小さいものの、自然エネルギーの消費量が著しく

増加していることである。自然エネルギー消費量の割合は 2005年の時点では約 5%だったも

のが、2018年には 12%を上回っている。内訳は、水力が約 8%、風力・太陽光などが約 4%

である。一方、原子力の割合は約 2%である。

1 石油換算トン(toe:tonne of oil equivalent)は、エネルギーの単位。1トンの原油を燃焼させたときに得られる

約42GJのエネルギーを 1単位としたものである。

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図 1 中国の一次エネルギー消費量(1990~2018 年)

出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

図 2 中国の一次エネルギー消費の構成比(1990~2018 年)

出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

化石エネルギーの大量消費によって、中国は世界最大の CO2排出国になり、2018 年には

エネルギー由来のCO2排出量が約 9.5Gtとなった(IEA2019)。これは日本の排出量の約 9倍

であり、世界第 2の排出国である米国の約 2倍に相当する。また、SO2やPM2.5など、様々

な環境負荷物質の排出量も多く、大気汚染や酸性雨などの深刻な環境問題を引き起こしてい

る。一方、一人当たりのエネルギー消費水準を見ると、中国は欧米や日本などの先進諸国と

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Mto

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石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 その他自然エネルギー

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石炭 石油 天然ガス 原子力 水力 その他自然エネルギー

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比べてまだ低く、アメリカの 3 分の 1 に過ぎない(図 3)。現在のエネルギー消費構造のま

ま、経済成長と共に中国のエネルギー消費水準が先進国と同じレベルに至れば、CO2を含め

さらに大量の環境負荷物質が排出され、世界全体にとっても、中国自身にとっても、深刻な

環境悪化を招くことになる。

図 3 世界主要国の一人当たりエネルギー消費水準(2005~2018 年、GJ/人)

出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

気候変動などの環境問題に対応するため、パリ協定を契機に、中国はCO2排出削減や化石

燃料割合の低下などを目指す国家自主削減目標(NDC:Nationally Deternined Contribution)

を設定した。中国国家気候変動戦略研究・国際協力センターの研究(NCSC, 2015)によれば、

中国は NDC の目標実現を通じて欧米と比べ、より低炭素の経済発展を実現できると指摘さ

れている。図 4 に示すように、欧米の主要国は一人あたり GDP が 20,000~25,000 米ドル

(2010 年価格)の段階で一人あたりの CO2 排出量がピークに達し、排出量のピーク値は

10~22 t- CO2である。仮に中国が現在のNDC目標を予定通りに達成した場合には、一人当

たりGDPが 14,000米ドルの頃にCO2 排出量のピークに達し、欧米諸国より早い段階で排

出量増加と経済成長のデカップリングを達成できる。また、一人あたりCO2 排出量のピーク

値は 8 t- CO2という低いレベルになると予測している。

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2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

GJ

アメリカ フランス ドイツ イギリス 日本 中国

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図 4 中国 CO2 排出量と一人当たり GDP のデカップリング予測

出典)中国国家気候変動戦略研究・国際協力センター(NCSC, 2015)

このデカップリング予測の背景には、エネルギー利用効率の向上、エネルギー利用の電化、

エネルギー構造の低炭素化という 3つキーワードが存在している。本レポートはエネルギー

構造の低炭素化を中心テーマとし、特に電力部門の低炭素化について紹介していくが、その

前に、利用効率の向上と電化の傾向について簡単に紹介しておく。

中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)(2019)の研究によれば、中国のエネル

ギー消費の経済効率が、近年大幅に向上している(図 5)。2010 年の単位 GDP 当たりのエ

ネルギー消費量は 1990年の半分以下である。さらに、2030年には現在の水準の半分程度に

低下すると予測している(Below 2 °C scenario)。

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図 5 中国のエネルギー消費の経済効率:実績と予測(1990~2050 年)

注)tce(tone of standard coal equivalent):標準石炭換算トン

中国のエネルギーの単位で、1トンの標準石炭を燃焼させたときに得られる約 29GJのエネルギーを1単位とした

もの。(1 tce = 0.7 toe)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)(2019)

一方、電化の動向は、図 6に示す中国の電力消費の増加率とエネルギー消費全体の増加率

の比較から見ることができる。両者の変動パターンは同様だが、電力消費の増加率は、エネ

ルギー消費全体の増加率と比べてほぼ一貫して高い。2010年以降、毎年の電力消費量の増加

率は、エネルギー消費全体の増加率を 2~5 ポイント上回っている。また、中国国家統計局

(2019)の統計によると、2018年の一次エネルギー消費のうち一次電力(原子力発電、自然

エネルギー発電など)の割合は約 14%と 2005年比でほぼ倍増しており(図 7)、ここから

もエネルギー消費の電化が進んでいることがわかる。

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図 6 中国の GDP、エネルギー消費と電力消費の増加率(2001 年~2017 年)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

図 7 中国の一次エネルギー消費の構成比(2005~2018 年)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

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%

エネルギー消費増加率 電力消費増加率

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石炭 石油 天然ガス 一次電力

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1-2 一次エネルギー構造の低炭素化

石炭を中心に、化石燃料に依存したエネルギー構造のままでは、今後の経済発展と環境保

全の矛盾がより大きくなることが予測されるため、中国政府は石炭の利用削減を方針として

エネルギー構造転換を進めている。

中国では 5年ごとに経済・社会の発展プランが「国民経済・社会発展五カ年計画」(以下、

五カ年計画)として定められている。エネルギーに関しては「エネルギー発展五カ年計画」

(以下、エネルギー五カ年計画)としてまとめられている。第十一次から第十三次エネルギー

五カ年計画の主要目標を表 1にまとめた。

第十一次エネルギー五カ年計画(期間:2006~2010年)の主要目標は、一次エネルギー消

費量のコントロールとエネルギー利用効率の向上だった。具体的には、2010年に一次エネル

ギー消費総量を 2.7 Gtce以内に抑制、エネルギー消費の経済効率を 19%向上(2005年比)

といった目標を設定した。2010年の統計結果を見ると、一次エネルギー消費量の実績は 3.25

Gtceであり目標に届かなかったものの、エネルギー消費の経済効率は 19.1%向上し目標を達

成した。また非化石燃料の比率を 8.1%まで拡大するという目標も、実績は 8.6%となるなど、

主要目標を達成した。しかし、エネルギー消費量は増加し続けているため、エネルギーの安

定供給や環境保護、温暖化防止などの課題への取り組みを続けることの必要性が認識された。

このような状況を踏まえ、第十二次エネルギー五カ年計画(期間:2011~2015年)では、

新たにGDP原単位のCO₂排出削減目標が盛り込まれ、非化石燃料の比率もさらに高い数値

目標が設定された。具体的には、第十一次の計画を引き継ぐ形で、一次エネルギー消費量を

4 Gtce以内に抑制、非化石燃料比率を 11.4%へ拡大、エネルギー消費の経済効率を 16%向上

(2010年比)といった目標を設定した。加えて、CO₂排出量原単位の 17%削減(2010年比)

という目標を設定し、目標実現のための自然エネルギーの利用促進についても計画に盛り込

まれた。2015年の統計結果を見ると、一次エネルギー消費量がオーバーしたものの、非化石

燃料の比率や、エネルギー消費の経済効率、GDP 原単位の CO₂排出量削減など主要目標は

達成できた。

最新の第十三次エネルギー五カ年計画(期間:2016~2020年)では、一次エネルギー消費

量が 5 Gtce 以内、非化石燃料の比率を 15%に拡大、エネルギー消費の経済効率 15%向上

(2015年比)、GDP原単位のCO₂排出量 18%削減などの主要目標値を引き続き設定し、低

炭素社会の構築、気候変動対策の強化、スマートグリッド推進などを強調した。

Page 13: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

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表 1 エネルギー発展五カ年計画の主要目標(2006~2020 年)

計画 第十一次

(2006~2010)

第十二次

(2011~2015)

第十三次

(2016~

2020)

指標 2010年

目標値

2010年

実績値

2015年

目標値

2015年

実績値

2020年

目標値

一次エネルギー消費量(Gtce) 2.7 3.25 <4 4.3 <5

非化石エネルギー消費比率 8.1% 8.6% 11.4% 12.0% 15.0%

エネルギー消費の

経済効率向上

19.0%

(2005年比) 19.1%

16.0%

(2010年比) 18.4%

15.0%

(2015年比)

GDP原単位

CO2排出量削減率 ― ―

17.0%

(2010年比) 20.0%

18.0%

(2015年比)

火力発電のエネルギー消費

原単位(gce/kWh) 355 333 323 318 310

注)gcet:グラム標準石炭

出典)エネルギー発展十一次五カ年計画(2007)、エネルギー発展十二次五カ年計画(2013)、エネルギー発展十

三次五カ年計画(2016)に基づき自然エネルギー財団作成

中国の石炭消費量は 2013年にピークの 2,810 Mtceに達し、その後は減少したが、エネル

ギー需要の増加により 2017年から石炭消費量が再び増加している(図 8)。今後、石炭消費

を抑えるためには、採掘生産能力の余剰をコントロールしながら石炭火力発電を抑制し、産

業部門からの石炭需要を抑えることが求められる。

図 8 中国の石炭消費量(2010~2018 年)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

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一方、石油と天然ガスの消費量は増加傾向にある(図 9、図 10)。

中国で石油消費量の増加が最も多い部門は運輸部門である。物流システムの発達や自動車

普及などの影響で、この部門では 2017年の石油消費量が 2005年比で倍増した。中国の石油

消費の約 9割は輸入に頼っている。2017年は、消費量約 588 Mtに対して、輸入量は約 491

Mtに達した。

天然ガスの消費量は 2016年以降、急速に増加している。2010年と比べて、2018年の天然

ガス消費量は 1.5 倍になっている。その背景には、中国政府が実施している「煤改気(石炭

から天然ガスに転換)」プロジェクトがある。このプロジェクトは石炭の消費量をより環境負

荷物質が少ない天然ガスにシフトさせるために、従来の冬季暖房用、工業生産用、および発

電用の石炭設備を天然ガス設備に切り替えるという計画である。2017年に発表した「天然ガ

ス発展第十三次五カ年計画」では、2020年の天然ガス消費が全体のエネルギー消費に占める

割合を 8.3~10%とする目標を立てて、2015 年の 5.9%と比べて大幅に増加させることを目

指している。

しかし、このプロジェクトの急速な進行と共に、天然ガスの供給不足、燃料費の値上げ、

ガスパイプラインなどインフラの整備不足などの問題点が現れため、現在は見直しが行われ

ている(中国国家能源局,2019e)。

図 9 中国の石油消費量(2010~2018 年)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

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図 10 中国の天然ガス消費量(2010~2018 年)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

1-3 電力部門の低炭素化

石炭消費の約 5 割は発電向けに使用されている。図 11 に示すように中国の発電設備容量

の構造は石炭火力が中心になっている。発電量の比率を見ると(図 12)、石炭火力の割合は

さらに大きい。電力部門の低炭素化はエネルギー構造の低炭素化にとって非常に重要である。

前述のように中国の電力消費量は増加し続けており、今後もさらに増加する見込みがある。

そのため、電力部門の低炭素化方針は石炭火力発電の増加を抑え、電力構成を低炭素化電源

にシフトすることによりCO2の排出水準を低下させることである。

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図 11 中国の発電設備容量の構成(2005~2018 年:GW)

出典)中国国家統計局(2019)と国家能源局(2019a)に基づき自然エネルギー財団作成

図 12 中国全体の発電電力量の構成(2009~2018 年:TWh)

出典)中国電力企業連合会の各年年報と国家能源局(2019a)に基づき自然エネルギー財団作成

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GW

火力発電 原子力発電 水力発電風力発電 太陽光発電 バイオマス発電・その他

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30%

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

TW

h

火力発電 原子力発電 水力発電

風力発電 太陽光発電 バイオマス発電・その他

自然エネルギー割合

Page 17: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

12

火力発電

政府は石炭火力発電の無秩序な増加を抑制するために、2016年から石炭火力発電の建設リ

スク早期警告システムを導入し、石炭火力発電への新規投資を抑えようとしている(図 13)。

このシステムには電力需給均衡指標(発電設備の余剰がないか)、資源制約性指標(大気汚染、

水資源、石炭消費量などの制限があるか)、事業経済性指標(事業の内部収益率が 8%超か)

という 3つ指標を設けて、省ごとに評価を実施する。評価結果は「赤」、「黄色」、「緑」の三

段階に分け、3つの指標評価のいずれかが「赤」に該当すれば、その地域では、原則的に目標

年度(評価実施年度の 3年後)までの石炭火力新設を推奨しない。「推奨しない」という表現

だが、中央政府が実施する評価に基づくものであり、実効性の高いものと考えられる。

また、CO2の排出水準を低下させるため、古い石炭火力発電設備を停止する目標を省ごと

に毎年設定し、効率が悪い設備(エネルギー利用率、排出基準を満たしていない 300MW以

下の設備、または運転年数 20~25年以上の設備)を早めに淘汰する。十三次五カ年計画期間

中の停止目標は 20GW であり、2020 年時点の石炭火力発電の総容量は 1.1TW 以内に抑制

し、総発電設備容量に占める割合が 55%以下に低減させることを目指している。

図 13 中国石炭火力発電の建設リスク早期警告システムの例(2021 年)

注)赤と黄の地域:原則に新規導入しない、緑の地域:域外から、もしくは自然エネルギー発電を十分活用して

電力を調達しても不足する場合は、石炭火力の新設可能

出典)China Energy Portall(2019)

Page 18: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

13

原子力発電

第十二次エネルギー五カ年計画(2011~2015)では、2015年の原子力発電設備容量の目標

は 40GW と設定され、年間 30%増のスピードで導入する予定だったが、実際には 27.2GW

の達成に留まった。計画どおりに進まなかった一つの重要な要因は、福島原子力発電所の事

故である。2011年の福島原発事故以降、中国政府は新たな安全基準、管理監督基準、緊急対

策および安全保障措置など、原子力発電所に関連する様々な分野での見直しを行っている。

そのため、2011 年以降の新設認可は厳しく制限され、2015 年までの認可件数は数件しかな

く、その後 2016~2018年の 3年間は新規認可がない。

一方、すでに認可され建設中であった原子炉は順次完成したため、原子力発電設備容量と

原子炉数は増加している(図 14)。2018年に商業運転している原子炉数は 44基である。発

電設備総容量は 44.645GWであり、全国の発電設備容量に占める割合は 2.35%である。同年

の原子力による年間発電量は 286.5TWhであり、全国発電量の約 4.22%を占める。

図 14 中国の原子力発電設備容量(MW)と発電ユニット数(2013~2019 年上半期)

出典)中国原子力産業協会各年度報告書に基づき自然エネルギー財団作成

2018年時点で、商業運転中の原子力発電所を有する地域(省)は 8つであり、全て東部沿

岸地域である(図 15)。そのうち広東省の発電電力量が最も多く、86.6TWhであった。また、

中国山西省、内モンゴル自治区などの石炭産地から遠ければ遠いほど、原子力発電設備が占

める割合が高い傾向がある。福建省と海南省では、省内の年間発電電力量に占める原子力の

割合が 20%を超え、発電設備容量については 15%前後のシェアとなっている(図 16)。

17

22

28

35 37

44 47

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 1H

MW

既存発電設備容量 新規発電設備容量 運転中発電ユニット数

Page 19: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

14

図 15 原子力発電設備容量の地域別シェアと分布(2018 年)

出典)中国原子力産業協会(2019a)に基づき自然エネルギー財団作成

図 16 各地域の原子力発電設備容量と発電電力量の省内割合

出典)中国原子力産業協会(2019a)に基づき自然エネルギー財団作成

前述のように、新規の建設認可が制限されているため、建設中のユニット数はピーク時の

2012年の 30基から 2018年末の 13基まで減少しており、建設中の総設備容量は 14.03GW

である。第十三次エネルギー五カ年計画(2016~2020)では、2020年に原子力発電設備容量

の目標を58GWと設定し、同年の建設中設備容量を30GW以上にすることを目指している。

26.7% 26.4%

18.9%17.6% 16.8%

10.0%

4.6%

0.4%

15.4%14.3%

11.4%

8.6% 9.5%

4.8%3.5%

1.0%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

福建省 海南省 広東省 遼寧省 浙江省 広西自治区 江蘇省 山東省

発電電力量の省内割合 発電設備容量の省内割合

広東省,

30.49%

福建省,

22.46%

浙江省,

19.66%

遼寧省,

10.52%

江蘇省,

7.94%

広西自治区,

5.61%海南省,

2.64%山東省,

0.69%

Page 20: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

15

この目標の実現に向けては、まず 2018年末時点で建設中の原子炉を 2020年末までに全て完

成させなければならない。その上で、2019年から 2020 年までに新たに 30 基(仮に 1基あ

たりの規模が 1GWの場合)の原子炉を着工する必要がある。

2019 年、中国政府は 3 年ぶりに原子炉の新規建設認可を再開した。10 月に福建省漳州発

電所において、中国が独自に設計開発した原子炉「華龍 1 号」2 基の建設許可を出し(中国

原子力産業協会,2019b)、同年 11月時点では山東省・広東省・福建省で合計 6基(うち 4基

は「華龍 1号」)が建設許可を受けている。

2018年末の時点で建設中であった 13基うちの 3基は、2019年に商業運転を開始している

ため、現在の建設中の原子炉数は残りの 10基と新規認可を受けた 6基をあわせた 16基であ

り、その総設備容量は約 17.6GWである(中国国家能源局,2019d)。

自然エネルギー発電

前述のとおり、近年中国の自然エネルギーの利用は急速に拡大し、特に発電部門において

著しく増加している。2000年代半ばまでは、中国の自然エネルギー発電設備のほとんどが水

力発電であった。2005年の時点では、全国の発電設備容量に占める自然エネルギー発電設備

の割合は約 23%であり、大部分が水力発電(117GW)であった。一方、当時の風力発電設備

容量は僅か 1GWだった(図 17)。

2006年に「再生可能エネルギー法」が施行されたことにより、風力発電をはじめとする水

力以外の自然エネルギー発電設備の導入量が急増し、電源の低炭素化が進んでいる。2009年

からは風力発電の固定価格買取制度が実施され、風力発電の導入量が急速に増加した。2011

年からは太陽光発電の固定価格買取制度も実施され、こちらも飛躍的に増加している。急速

な拡大を可能にした政策の展開については第 2章に詳述する。

中国能源局(2019)の統計によると、2018 年、中国の自然エネルギー発電設備総容量は

729GWに達し、発電設備容量全体の 38%を占めた。非水力発電の総設備容量が初めて水力

発電設備を超え、自然エネルギー電源全体の約 52%を占めた(図 17)。風力と太陽光の発

電設備容量はそれぞれ 184GWと 175GWであり、固定価買取制度が 2年遅れて開始された

太陽光発電の設備容量はもうすぐ風力発電に追いつく。バイオマスなどその他の自然エネル

ギー発電設備容量は約 18GWである。太陽光とバイオマスの発電設備容量は、第十三次五カ

年計画に設定した 2020年目標をすでに上回り、水力・風力も目標値に近づいている(表 2)。

IRENA(2018)によれば、2018年時点において、中国の風力・太陽光発電設備総容量は共に

世界 1位となった。

Page 21: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

16

図 17 中国の自然エネルギー発電設備容量の構成(2005~2018 年:GW)

出典)中国国家統計局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

表 2 中国自然エネルギー発電の導入目標と実績

2020年発電設備導入目標

(GW)

2018年発電設備導入実績

(GW)

2018年発電実績

(TWh)

水力発電 380 352 1,233

風力発電 210 184 366

太陽光発電 105 175 178

バイオマス発電 15 18 91

合計 710 729 1,867

出典)中国発展改革委員会(2016b),中国能源局(2019)に基づき自然エネルギー財団作成

2018年、中国の自然エネルギー発電量は 1,867TWhであり、全発電量の 26.7%を占める。

そのうち、水力発電は 1,233 TWh であり、自然エネルギー発電量全体の 66%に相当する。

風力と太陽光はそれぞれ 366 TWhと 178 TWhであり、風力による発電量は太陽光の倍以上

である(表 2)。

1%3%

4%6%

10%

14%

19%23%

27%

30%

37%

42%

47%

52%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

GW

水力発電 風力発電 太陽光発電

バイオマス発電・その他 非水力発電割合

Page 22: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

17

図 18 中国自然エネルギー発電の発電電力量の構成(2009~2018 年:TWh)

出典)中国電力企業連合会の各年年報に基づき自然エネルギー財団作成

中国の主要なバイオマスは農林業廃棄物、生活ゴミ、家畜糞尿である。CEREC(2018)の

統計によると、2017 年までのバイオマス発電設備容量は 15GW に達しており、内訳は固体

バイオマスが 7.14GW、ごみ発電 7.29GW、バイオガス 0.45GWである(図 19)。今後、バ

イオマスによる熱供給(コージェネレーションも含む)も計画されており、「バイオマス供熱

の発展促進に関する意見」では、2020 年までにバイオマス熱供給面積を 1000km2とする目

標を掲げ、30 Gtceのエネルギー供給量を代替する効果を目指している。

8%10%

13% 14%

17%

18%20%

24%

30%

34%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

2,000

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

TWh

水力発電 風力発電 太陽光発電

バイオマス発電・その他 非水力発電比率

Page 23: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

18

図 19 中国のバイオマス発電設備容量(2013~2017 年:GW)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(2018)に基づき自然エネルギー財団作成

4.2

5.025.3

6.05

7.14

3.4

4.244.68

5.74

7.29

0.19 0.2 0.33 0.35 0.45

0

1

2

3

4

5

6

7

8

2013 2014 2015 2016 2017

GW

固体バイオマス発電 ごみ発電 バイオガス発電

Page 24: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

19

第 2 章 中国における自然エネルギー発電の促進政策

2-1 発展の初期段階

中国では、1958年から小型風力発電装置の研究開発が始まり、1978年から 100Wと 250W

規模の風力発電設備が導入された。同年には、中国初の太陽光電池が開発され、人工衛星の

部品など宇宙開発の分野で研究開発が行われた。1975年には寧波(浙江省)などの地域で太

陽光電池の生産工場が設立され、人工衛星向けの技術を利用して、一般分野で使用する太陽

光モジュールの生産が開始された。1979 年には、中国初の太陽光発電研究所が設立された。

その後しばらくの間、風力発電と太陽光発電は主に内モンゴル自治区などの西北地域や山間

部など、無電化地域のオフグリット電源として利用されてきた。また、一部の都市部におい

ても、実験的に分散型発電システムが建設された。

本格的に送電網に系統接続する風力発電の導入は 1986 年から開始され、同年 5 月に系統

接続された風力発電所が山東省に初めて設置された。これは、中央政府と山東省政府からの

補助金によって購入した外国製の発電設備であった。その後、各地で政府の補助金と外国の

援助金を利用して、系統接続された風力発電所が複数建設された。これらの発電所は研究や

実証モデルを目的とした小型のものであり、商業運転は行われなかった。発電設備のほとん

どは外国から輸入した設備である。しかし、輸入される風力発電設備は高額であり、保守点

検の材料調達が不便であったため、中国政府は 1994 年、風力発電設備の国内生産を促進す

る「双加工程」2と「乗風計画」3を開始した。

1998年以降、中国政府は太陽光発電システムの生産開発を重視し始めた。政府のサポート

を受けて、天威英利新能源(YINGLI)有限会社が中国最初の大規模多結晶シリコン太陽光発

電製造ラインを建設した。このシステムの年間生産量は 3MWである。2001年には、无锡尚

德太阳能电力(Suntech)有限会社が設立された。2002年、この会社は中国初の 10MW太陽

光発電モジュール生産ラインを完成し、中国における大規模生産の幕明けとなった。その後、

欧米の太陽光発電市場の拡大の影響を受けて、国内で生産する太陽光発電設備のほとんどが

輸出され、発電設備の製造業と関連産業は急速に成長してきた。しかし、国内では、大規模

な太陽光発電の利用はまだ行われていなかった。

2 「双加工程」は、1994年~1996年にかけて、国家経済貿易委員会が実施した計画である。目的は中国の科学技

術への投資拡大と、技術革新の速度を加速させることである。 3 「乗風計画」とは、風力発電設備の国産率の向上と風力発電の利用拡大を狙った計画である。主な内容として

は、外資とジョイントベンチャーの形式で企業が技術を輸入し、国内の研究機関と連携をして研究開発を行

い、大規模風力発電設備の国産率を向上させる。また、国の補助金を活用し、系統接続する大規模風力発電所

の建設・研究を行う。

Page 25: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

20

2-2 「政府定価」と入札プロジェクト

大規模な自然エネルギー発電所の建設と設備の国産化を促進するため、2003年、政府は風

力発電産業の発展を牽引する「政府定価」と「開発権入札プロジェクト」など市場化運営を

支える価格政策を取り入れた。また、2006 年には「再生可能エネルギー法」が策定された。

この法律によって自然エネルギー発電は具体的に定義され、以降の経済発展における位置付

けと役割が明確にされた。また、発電の各参加主体間の利益関係も明確にされた。すなわち、

国は自然エネルギー発電の普及を主導し、発電企業に売電価格と電力の全量買取を保証する。

送配電企業は発電事業の系統接続を義務付けられ、電力の全量買取を行う、というものであ

る。この法律の実施が、自然エネルギー発電の本格的な普及の始まりであった。

政府定価

「政府定価」とは、発電企業の立地・コスト・利潤などに基づいて、企業の売電価格を審

査・許可する制度である。その概要は以下のとおりである。まず、送配電会社は風力発電所

の系統接続に協力しなければならない。売電価格は、発電コストと一定の利潤を確保できる

合理的な範囲で決められ、政府は企業の売電価格を審査・認可する。売電価格が火力発電の

売電価格を上回る分は送配電会社が負担し、送配電会社は発電電力量を全量買取しなければ

ならない。

風力発電事業の政府定価は、プロジェクトの規模に基づき中央政府と地方政府の審査権限

を分けている。2006年の「再生可能エネルギー発電に関する管理基準」によると、50MW以

上の事業は国家発展改革委員会の審査が必要になるが、50MW以下の場合は地方政府が審査

権を持つ。この状況下で、政府は通常、事業毎に決定する方式を採用し、企業の送電価格を

審査・認可する。この制度は各地の風力発電の送電価格に大きな格差をもたらした。例えば、

2004年、広東省の広東新プロジェクトに対する定価は 0.528元/kWhであったが、浙江省の

蒼南風力発電は 1.2元/kWhに達した。

風力発電の開発権入札プロジェクト

2003年から 2008年まで国家発展改革委員会は「風力発電開発権入札プロジェクト」を実

施した。この制度は価格競争メカニズムと国産設備の利用を力点に置いている。

「発電開発権入札プロジェクト」とは、風力資源に優れた特定地域において、政府が

100MW 以上の発電事業に対して開発権の入札を募り、開発事業者を選定し、政府指導価格

を設定する事業である。入札方法は日本の公共事業と同様に、最低入札金額で落札される。

Page 26: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

21

風力発電設備の国産化を推進し、高い発電コストを下げるため、国家発展改革委員会は、

2003年から 2009年までに計 6期の風力発電開発権入札プロジェクトを実施した。始めの 5

期は発電事業の入札であり(表 3参照)、最後の 1期は発電設備の入札である。

前 5期入札プロジェクトで募集した事業の風力発電設備総容量は 3,300MWに上り、2008

年までの風力発電設置総容量の 56%に及んだ。この制度は、価格競争メカニズムを風力発電

開発に導入して売電価格を決める。入札プロジェクトから得た情報と経験を生かすため、

2006 年に国家発展改革委員会は「再生可能エネルギー発電売電価格と費用分担管理暫定法」

(中国国家発展改革委員会, 2006b)を策定した。この法令では「風力発電の売電価格は政府

の指導で決定し、その基準は国務院価格担当部門が開発権入札プロジェクトの結果を受けて

確定する」と謳われている。2006年以降、内モンゴル自治区や甘粛省などの風力資源が豊富

な地域では、大規模風力発電所が続々と設置された。

このほか、同年以降は「再生可能エネルギー発展専門資金の暫定管理方法」、「再生可能エ

ネルギー発電促進賦課金徴収に関する暫定管理方法」など一連の政策の実行により、自然エ

ネルギー発電市場拡大のための優遇政策が強化されてきた。送配電会社に対しては、自然エ

ネルギー発電電力の全量購入と、そのためのインフラ建設の責任を負わせている。併せて、

バイオマス発電などの発電電力の買取価格と買取期間も明確化された。税制面では、発電事

業に対して、売上を計上した年から最初の 3年間は企業税(法人税)を全額免除、次の 3年

間は半額免除する減税措置や、設備投資における増値税(付加価値税)などの優遇政策が実

施されている。

2009年、風力発電固定価格買取制度の実施と共に国主導の入札制度は中止された。

表 3 風力発電開発権入札プロジェクト(第 1~5 期)

年度/期 設備国産化率の基準 プロジェクト名称 総容量(MW) 落札価格

(元/kWh)

2003

1期 50%以上

広東石碑山 200

0.501

江蘇省如東一期 0.436

2004

2期 50%以上

内モンゴル輝騰錫勒

400

0.382

江蘇省如東二期 0.519

吉林通楡 0.509

2005

3期 70%以上

江蘇省東台

450

0.488

甘粛安西 0.462

山東即墨 0.600

2006

4期 70%以上

内モンゴル錫盟輝騰梁

700

0.420

内モンゴル包頭巴音 0.466

河北省張北単晶河 0.501

2007

5期 70%以上

内モンゴル烏蘭伊力更

950

0.468

内モンゴル通遼北清河 0.522

河北承徳御道口 0.551

甘粛玉門昌馬 0.521

出典)政府公表データに基づき自然エネルギー財団作成

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22

大規模太陽光発電の開発権入札プロジェクトと分散型

風力と同様に、太陽光発電についても「開発権入札プロジェクト」が実施された(制度内

容は上述の風力開発権とほぼ同様のため、制度の詳細に関する説明を省略する)。2009 年、

本開発権プロジェクトによる初の大規模太陽光発電所である「敦煌太陽光発電所」が建設さ

れ、10MWの発電設備が設置された。この発電所を皮切りに、中国の大規模太陽光発電所の

建設が始まった。2010年には「太陽光発電開発権入札プロジェクト」第 2期を実施し、全部

で 13プロジェクト(発電設備総容量は 280MW)が成約した(表 4参照)。

2011年、太陽光発電固定価格買取制度の実施と共に、国主導の入札制度は中止された。

表 4 太陽光発電開発権入札プロジェクト(第 1~2 期)

年度/期 プロジェクト名称 総容量

(MW)

落札価格

(元/kWh)

2009

1期 甘粛省敦煌 10 1.0900

2010

2期

陝西楡林 20 0.8687

青海共和 30 0.7288

青海河南 20 0.8286

甘粛白銀 20 0.8265

甘粛金昌 20 0.7803

甘粛省威 20 0.8099

内モンゴル阿拉善 20 0.8847

内モンゴル包頭 20 0.7978

内モンゴル彦淖尓 20 0.8444

寧夏青銅峡 30 0.9791

新疆哈密 20 0.7388

新疆ウイグル吐魯番 20 0.9317

新疆ウイグル和田 20 0.9907

出典)政府公表データに基づき自然エネルギー財団作成

また、中国の都市部で分散型太陽光発電の利用を促進するため、2009年、政府は分散型太

陽光発電の初期投資を一部補助する「光電一体化建築」や「金太陽モデルプロジェクト」な

どの推進政策を打ち出した。

中国における分散型電源とは、現在の電力システムの主流となっている電力会社の大規模

集中発電に対して、消費地の近くに分散して配置される多数の小規模な発電設備のことであ

る。分散型電源は、コジェネレーションに代表される燃料投入型、太陽光発電や風力発電な

Page 28: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

23

どの自然エネルギー型、廃棄物発電などの未利用エネルギー型、蓄電池などの電力貯蔵型に

分けることができる。中国国家電網公司(2012)では分散型太陽光発電について以下のよう

に定義している。「分散型太陽光発電とは、電力使用者の付近に立地し、発電電力を地産地消

でき、10kv 以下の電圧で系統接続し、設備総容量が 6MW 以下の太陽光発電システムであ

る」。

「光電一体化建物」とは、中国の財政部と住宅都市農村建設部が共同で 2009 年 3 月に導

入した政策である。その内容は、建材一体型太陽光発電設備(BIPV:Building Integrated

Photovoltaic)を設置すれば発電設備 1W あたり 15~20 元を補助する、というものである。

しかし、補助対象と補助の仕組みが不十分であると判断し、財政部、科学技術部、国家発展

改革委員会は共同で同年 7月に「金太陽モデルプロジェクト」を打ち出した。「金太陽モデル

プロジェクト」は太陽光発電モデルとなる事業について、設置費用の 50%(オンサイト:系

統と接続する分散型太陽光発電システム)~70%(オフサイト:系統から分離した独立型の

分散型太陽光発電システム)を政府から出資する計画である。

「光電一体化建築」と「金太陽モデルプロジェクト」事業による隔年の新規設置量を表 5

に示す。

表 5 「光電一体化建築」と「金太陽モデルプロジェクト」による新規設置量(2009~

2012 年)

2009年 2010年 2011年 2012年 合計

光電一体化建築(MW) 90 100 110 225 525

金太陽モデルプロジェクト(MW) 216 275 692 4,747 5,930

出典)孟宪淦(2013)に基づき自然エネルギー財団作成

2007 年 8月施行の「国家再生可能エネルギー中長期発展計画」(以下:中長期発展計画)

では、自然エネルギーの発展目標が定められた。具体的には、全エネルギー消費に占める自

然エネルギーの割合を 2010 年に 10%へ、2020 年には 15%へ引き上げることを目標として

いる。実現に向け発電事業者と送配電事業者に対して「自然エネルギー発電に関する生産・

購入の国家導入基準」(RPS法)を設定し、量的目標も定めた。「中長期発展計画」の第 8章

第 2条により義務付けた非水力自然エネルギー発電の導入目標は次の通りである。

① 発電能力が 5,000MW 以上の発電企業に対して、企業全体の発電能力における割合と

して、非水力自然エネルギー発電設備の発電能力を 2010年までに 3%以上、2020年ま

でに 8%以上とする。

Page 29: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

24

② 送配電企業における 2010年と 2020年の非水力自然エネルギー発電電力の送配電目標

は、それぞれ全体の 1%以上、3%以上にする。

③ 国営の発電企業に対しては、2010 年と 2020 年の非水力自然エネルギー発電の設備容

量について、それぞれ火力発電設備容量の 5%と 10%に相当する量を達成することを

義務付ける。達成できない国営発電企業に対しては、新たな火力発電事業の建設を許

可しない。

こうして自然エネルギー発展の全体目標が決められたが、風力、太陽光など電源ごとの拡

大のためには、より具体的な促進政策と明確な目標が必要となる。このため、2008年に「再

生可能エネルギー発展十一次五カ年計画」が発表された。この計画では、初めて自然エネル

ギーの電源別に、詳しい発展目標を策定した。2010 年までの自然エネルギー利用量は 300

Mtce、自然エネルギー発電設備容量は水力 190GW、風力 10GW、バイオマス 5.5GW、太陽

光発電 0.3GWとの目標値が設定された。

また、この計画では期間中の自然エネルギーの発展についての展望と問題点を述べ、2020

年までの中国の自然エネルギー発展の方針を発表した。主な方針は以下の3点である。

① 自然エネルギーの利用規模と利用範囲を拡大し、エネルギー問題と環境問題の解決手

段とする。エネルギー構造において、自然エネルギー比率の向上は、計画期間中で最

も重要な任務である。

② 農村での自然エネルギーの利用を促進し(特に人口が分散し、電力など通常エネルギー

インフラを整備しにくい辺縁地域)、電力やエネルギー利用困難などの問題を解消する。

③ 自然エネルギー産業の育成、技術開発の革新、設備国産率の向上などを促進し、今後

の自然エネルギー大規模利用の基盤を整える。

2-3 固定価格買取制度

2009年に風力発電、2011年からは太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)がそれぞれ確立

された。固定価格買取制度とは、自然エネルギー発電電力を政府が定める価格で、一定期間

送電事業者が買い取ることを義務付ける制度である。風力発電と太陽光発電の買取価格は地

域別に設定され、買取期間は共に 20 年である。具体的な固定買取価格と地域区分は表 6 と

表 7に示す通りである。

また、2010年の「再生可能エネルギー法修正案」では、送配電会社は自然エネルギー発電

(水力発電を除く)の購入によるコスト増加を全国の電力消費者に分担することが認められ、

自然エネルギー発電促進賦課金の徴収制度を確立した。

Page 30: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

25

2009年からは各地の風力資源の優劣と建設条件により、4つの資源区(Ⅰ~Ⅳ類)を設定し

た。2019 年の最新買取価格は 0.34~0.52 元/kWh である(表 6)。一部地域の買取価格はす

でに該当地域の火力発電ベンチマーク価格(coal benchmark feed-in tariff)より低い。この場

合、火力発電ベンチマーク価格が買取の基準となる。

表 6 風力発電の固定買取価格と地域区分(2019 年)

資源区 買取価格 資源区の対象地域

Ⅰ類 0.34 元/kWh 内モンゴル自治区の赤峰市、通遼市、興安盟、呼倫貝尓市以外の地域;

新彊ウイグル自治区の烏魯木斉市、伊犁自治区、克拉馬伊市、石河子市

Ⅱ類 0.39 元/kWh 河北省の張家口市、承徳市;内モンゴル自治区の赤峰市、通遼市、興安

盟、呼倫貝尓市;甘粛省嘉峪関市、酒泉市

Ⅲ類 0.43 元/kWh

吉林省の白城市、松原市;黒龍江省の鶏西市、双鴨山市、七台河市、妥

化市、伊春市、大興安嶺地区;甘粛省嘉峪関市、酒泉市以外の地域;新

彊ウイグル自治区の烏魯木斉市、伊犁自治区、克拉馬伊市、石河子市以

外の地域;寧夏自治区

Ⅳ類 0.52 元/kWh Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ類資源区以外の地域

出典)中国国家発展改革委員会(2019b)に基づき自然エネルギー財団作成

大規模太陽光発電は 3つの資源区(Ⅰ~Ⅲ類)を設定した。2019年の最新買取価格は 0.4~

0.55元/kWhである(表 7)。

分散型太陽光発電の固定価格買取は「全量売電」と「余剰売電」の 2種類があり、対象区

分は「商工業」、「一般住民」と「貧困対策」の 3種類となっている。

「全量売電」の仕組みは大規模とほぼ同様であり、買取価格も大規模の地域分類と同様で

ある。ただし、事業の認定条件と手続きは分散型と同様である。「余剰売電」とは、基本的に

発電した電力の自家消費を前提として、消費しきれない分を売電する事業である。余剰電力

が発生した場合、電力会社は発電設備の所在地域の火力発電ベンチマーク価格で余剰電力を

買い取る上に、政府が kWh あたりの補助金を支払う。2019年の余剰買電の補助金は 0.1 元

/kWh(商工業)と 0.18元/kWh(一般住民)である。

また、農村地域の貧困対策になる太陽光発電プロジェクトもあり、買取方法や資源区の区

部は大規模と同様だが、買取価格は比較的高い。2019 年の最新買取価格は 0.65 元/kWh(Ⅰ

類)、0.75元/kWh(Ⅱ類)、0.85元/kWh(Ⅲ類)である。

Page 31: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

26

表 7 太陽光発電の固定買取価格と地域区分(2019 年)

資源区 買取価格 資源区の対象地域

Ⅰ類 0.40 元/kWh

寧夏;青海海西;甘粛省の嘉峪関市、武威市、張掖市、酒泉市、

敦煌市、金昌市;新彊ウイグル自治区の哈密、塔城、阿勒泰、克

拉馬伊市以外の地域内;モンゴル自治区の赤峰市、通遼市、興

安盟、呼倫貝尓市以外の地域

Ⅱ類 0.45 元/kWh

北京市;天津市;黒龍江省;吉林省;遼寧省;四川省;雲南省;モン

ゴル自治区の赤峰市、通遼市、興安盟、呼倫貝尓市;河北省の承

徳市、張家口市、唐山市、秦皇島市;山西省の大同市、朔州市、

忻州市;陜西省;青海省、甘粛省と彊ウイグル自治区のⅠ類以外

の地域

Ⅲ類 0.55 元/kWh Ⅰ、Ⅱ類資源区以外の地域

出典)中国国家発展改革委員会(2019c)に基づき自然エネルギー財団作成

中国の自然エネルギー発電事業の拡大は当初の予測をはるかに上回ったため、2012 年の

「再生可能エネルギー発展十二次五カ年計画」では発電設備の導入目標を大幅に上方修正し

た。急速な普及拡大と共に様々な課題も生じた。西北部地域に発電設備を集中し、電力消費

の負荷中心から離れた地域に大規模発電所が多数建設された。そのため、自然エネルギー発

電電力量は現地の送電キャパシティを超えてしまい、発電電力の出力抑制率が高かった。こ

うした問題への対応として、東部地域に適している分散型太陽光発電の促進や、大規模発電

所の投資管理などの政策を打ち出した。

2016 年 12 月、「再生可能エネルギー発展十三次五カ年計画」が発表された。この計画で

は、2016年から 2020年までの中国の自然エネルギーの発展指針と目標を明確にした。そし

て、自然エネルギーは気候変動対策とエネルギー構造改革の有効手段であり、一部の先進国

ですでに代替資源として重要な役割を果たしていることを指摘した上で、自然エネルギー利

用における経済性も大幅に向上し、今後の経済成長を支える戦略的な産業の一つであること

が確認されている。

Page 32: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

27

第 3 章 中国における自然エネルギー発電の課題と今後の展望

3-1 出力抑制問題への対策

自然エネルギー発電設備の大量導入と共に、発電電力の出力抑制問題が深刻になる。出力

抑制とは、発電設備自体の故障などによる出力停止ではなく、電力需給のアンバランスや送

電系統運用の安全性などの理由で、電力会社が発電事業者に対して出力停止または抑制を要

請し、出力量を管理することである。この問題の解決は、中国の自然エネルギー発電の発展、

およびエネルギー構造転換にとって重要な課題である。

図 20 に示すように、2012 年の時点で風力発電の抑制率は 17%、抑制された電力量は約

20.8TWh であった。その後は、抑制率と抑制量が一旦下がったものの、2015 年から急上昇

して、2016 年に抑制率が再び 17%になり、抑制電力量は 2012 年と比べて 1.5 倍も増加し

49.7TWhになった。

図 20 中国風力発電の出力抑制量と抑制率(2012~2018 年)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(2018)および国家能源局公表データに基づき自然エネルギー財団

作成

各地域のデータ(図 21)を詳しく分析すると、毎年の抑制率がほぼ 10%以上の水準となっ

ている地域は甘粛省、新疆ウイグル自治区、吉林省、黒龍江省、内モンゴル自治区、寧夏自

治区、河北省である。これらの地域は中国の西北・東北に位置し、風力資源が豊富なため、

風力発電設備が集中的に建設された。ただし、電力需要が大きい東部沿岸地域との距離が遠

20.8 16.2 14.9 32.8 49.7 42.2 27.7

17%

11%

8%

15%

17%

12%

7%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

16%

18%

0

10

20

30

40

50

60

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

TWh

抑制量 抑制率

Page 33: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

28

く、電力を域外に送電するキャパシティが不足している。そして、現地の電力需要が比較的

低く、送電系統も弱いため、域内の自然エネルギー電力を消費する能力が比較的に小さい。

この結果、これらの地域の出力抑制問題が深刻になった。特に 2016年は甘粛省、新疆ウイグ

ル自治区と吉林省の出力抑制率がそれぞれ 43%、38%、30%となり、年間発電量の 3分の 1

以上を無駄にしてしまった。

図 21 中国各地域の風力発電の出力抑制率と地域分布(2013~2018 年)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(2018)に基づき自然エネルギー財団作成

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

2013 2014 2015 2016 2017 2018

甘粛

新疆

吉林

黒龍江

内モンゴル

寧夏

河北

遼寧

雲南

山西

陝西

Page 34: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

29

表 8 中国各地域の風力発電の導入実績および出力抑制(2018 年)

設備総容量

GW

発電量

TWh

抑制電力量

TWh 抑制率

各地域の抑制

率自主目標値

北京 0.19 0.3 0 ― 0%

天津 0.52 0.8 0 ― 0%

河北省 13.91 28.3 1.55 5% 6.7%

山西省 10.43 21.2 0.24 1% 4.2%

内モンゴル自治区 28.69 63.2 7.24 10% 12%

遼寧省 7.61 16.5 0.16 1% 8%

吉林省 5.14 10.5 0.77 7% ―

黒竜江省 5.98 12.5 0.58 4% ―

上海 0.71 1.8 0 ― 0%

江蘇省 8.65 17.3 0 ― 0%

浙江省 1.48 3.1 0 ― 0%

安徽省 2.46 5 0 ― 0%

福建省 3 7.2 0 ― 0%

江西省 2.25 4.1 0 ― 0%

山東省 11.46 21.4 0.3 1% 2%

河南省 4.68 5.7 0 ― 0%

河北省 3.31 6.4 0 ― 0%

湖南省 3.48 6 0 ― 4%

広東省 3.57 6.3 0 ― 0%

広西省 2.08 4.2 0 ― 0%

海南省 0.34 0.5 0 ― ―

重慶 0.5 0.8 0 ― 0%

四川省 2.53 5.5 0 ― 0%

貴州省 3.86 6.8 0.08 1% 3%

雲南省 8.57 22 0 ― 0%

チベット自治区 0.01 0.01 0 ― ―

陝西省 4.05 7.2 0.16 2% 2.2%

甘粛省 12.82 23 5.4 19% 23%

青海省 2.67 3.8 0.06 2% 0%

寧夏自治区 10.11 18.7 0.44 2% ―

新疆ウイグル自治区 19.21 35.9 10.69 23% 26%

合計 184.26 366 27.7 7%

注)各地域の自主抑制目標とは、各地域域内の出力抑制率の許容範囲の上限目標であり、各地方政府は実際値が

この目標値を下回ることを目指して努力する。

出典)国家能源局(2019b)に基づき自然エネルギー財団作成

Page 35: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

30

太陽光も風力と同様の理由で深刻な出力抑制問題を抱えている。2016 年の抑制率は 10%

であり、抑制された発電電力量は約 7 TWhであった。2017年、抑制率は 6%に下がったが、

新規設備容量の増加の影響で抑制発電電力量は 7.3 TWhとなった。太陽光発電の抑制問題が

深刻な地域は、風力発電と同様に甘粛省、新疆ウイグル自治区、寧夏自治区、青海省などの

西北・東北地域に集中している。2016年に、甘粛省と新疆ウイグル自治区の出力抑制率は共

に 30%以上だった。

図 22 中国太陽光発電の出力抑制量と抑制率(2016~2018 年)

出典)国家能源局公表データに基づき自然エネルギー財団作成

図 23 中国西北地域 5 省の太陽光発電の出力抑制と地域分布(2015~2018 年)

出典)国家能源局公表データに基づき自然エネルギー財団作成

7.0 7.3 5.5

10%

6%

3%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

0

1

2

3

4

5

6

7

8

2016 2017 2018

TWh

抑制量 抑制率

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

2015 2016 2017 2018

甘粛

新疆

寧夏

青海

陝西

Page 36: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

31

表 9 中国各地域の太陽光発電の導入実績(2018 年)

地域 設備総容量

GW

大規模

GW

分散型

GW

北京 0.4 0.05 0.35

天津 1.28 0.97 0.31

河北省 12.34 8.56 3.78

山西省 8.64 6.81 1.83

内モンゴル自治区 9.45 9.12 0.33

遼寧省 3.02 2.19 0.83

吉林省 2.65 2.03 0.62

黒竜江省 2.15 1.41 0.74

上海 0.89 0.06 0.83

江蘇省 13.32 7.92 5.4

浙江省 11.38 3.62 7.76

安徽省 11.18 6.77 4.41

福建省 1.48 0.37 1.11

江西省 5.36 2.94 2.42

山東省 13.61 6.48 7.13

河南省 9.91 6 3.91

河北省 5.1 3.35 1.75

湖南省 2.92 1.26 1.66

広東省 5.27 2.82 2.45

広西省 1.24 0.94 0.3

海南省 1.36 1.23 0.13

重慶 0.43 0.39 0.04

四川省 1.81 1.67 0.14

貴州省 1.78 1.68 0.1

雲南省 3.43 3.31 0.12

チベット自治区 0.98 0.98 0

陝西省 7.16 6.13 1.03

甘粛省 8.28 7.79 0.49

青海省 9.56 9.46 0.1

寧夏自治区 8.16 7.62 0.54

新疆ウイグル自治区 9.53 9.52 0.01

新疆兵团 0.39 0.39 0

合計 174.46 123.84 50.62

出典)国家能源局(2019c)に基づき自然エネルギー財団作成

Page 37: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

32

出力抑制問題を改善するため、各地域の地方政府は出力抑制率コントロール目標を設定し、

自然エネルギー発電電力を優先送電し、域内の発電設備(特に石炭火力発電設備)を活用・

改造して調整能力を向上させた。その結果、2017年以降、自然エネルギー発電の出力抑制率

と抑制量は共に減少している。2018年には風力発電の出力抑制率は 7%、太陽光発電の出力

抑制率は 3%まで低下してきた。ただし、甘粛省と新疆ウイグル自治区の出力抑制率は依然

として風力が 20%、太陽光は 10%程度という高い水準である。

また、中国政府は自然エネルギー発電で対応できる送電網の整備(スマートグリッドなど)

と地域間送電網の増強を進めている。2019年の時点で、中国国家電網公司(SGCC)は、計

22 ヵ所、総延長 32,000 km の長距離超高圧送電線プロジェクトを運転・建設中である(図

24)。

図 24 中国国家電網会社(SGCC)の国内超高圧送電網

出典)中国国家電網会社(2019)から抜粋し自然エネルギー財団一部修正

3-2 グリッドパリティ・プロジェクト

ブルームバーグNEF(BNEF)の調査によると、2019年後期には、中国の陸上風力発電と

太陽光発電の均等化発電原価(LCOE)は、石炭火力発電や原子力発電などの主要電源と同

等のレベルになっている(図 25)。石炭火力発電が 50~72米ドル/MWh、原子力発電が 56~76

米ドル/MWhであるのに対し、風力発電は約 43~65米ドル/MWh、太陽光発電は約 34~67

米ドル/MWh となっている。風力発電のLCOEは 2014 年前期と比べほぼ半減しており、

太陽光発電は 75%程度安価になっている(図 26)。こうした変化を踏まえれば、今後中国で

最も安い電源は自然エネルギー発電になると考えられる。

Page 38: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

33

図 25 中国各電源の均等化発電原価(LCOE)比較

出典)BNEF (2019)

図 26 中国の風力発電と太陽光発電 LCOE の変化(2014~2019 年)

出典)BNEF(2019)のデータに基づき自然エネルギー財団作成

自然エネルギー発電コストの大幅な低下により、一部の自然条件に恵まれた地域や火力発

電コストが高い地域では、すでに風力発電と太陽光発電の発電コストは現地の火力発電のベ

ンチマーク価格を下回った。そのため、2019年 1月に国家能源局は「積極的に風力発電と太

陽光発電の平価(Non-subsidy)系統接続の推進に関する通知」を発表し、補助金を要しない

自然エネルギー発電事業を本格的に推進し始めた。グリッドパリティ発電事業は現地の火力

発電ベンチマーク価格で売電し、発電電力の優先送電などの優遇政策を受けられる。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2014 1H 2014 2H 2015 1H 2015 2H 2016 1H 2016 2H 2017 1H 2018 1H 2018 2H 2019 1H 2019 2H

$/M

Wh

石炭火力発電 風力発電 太陽光発電

$/MWh(2019 H2)

Page 39: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

34

2019年 5月、国は第 1期の補助金なしグリッドパリティ発電プロジェクトを発表した(表

10)。2020 年から、グリッドパリティ発電事業は本格的に普及し始めることが予測されてい

る。また、2019 年の風力発電固定価格買取政策において、2021 年以降は陸上風力発電への

補助金がなくなる旨、明確に決められた。

Page 40: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

35

表 10 第 1 期・自然エネルギーグリッドパリティ発電プロジェクト(2019 年)

出典)中国国家発展改革委員会(2019a)に基づき自然エネルギー財団作成

地域 発電設備 プロジェクト数 設備容量(MW)

風力発電 3 200

太陽光発電 27 2,380

風力発電 1 100

光伏发电 23 2,040

その他 2 100

広西省 光伏发电 16 1,930

風力発電 11 1,100

光伏发电 4 270

その他 3 360

風力発電 7 1,000

太陽光発電 8 1,650

その他 1 50

太陽光発電 11 1,310

その他 3 150

風力発電 6 350

太陽光発電 7 910

太陽光発電 8 1,000

その他 2 200

吉林省 風力発電 18 1,190

遼寧省 太陽光発電 47 1,190

太陽光発電 6 1,090

その他 6 210

風力発電 1 50

太陽光発電 6 670

その他 3 110

太陽光発電 5 340

その他 2 90

湖南省 風力発電 7 350

風力発電 1 160

その他 3 110

風力発電 1 10

その他 1 90

風力発電 56 4,510

太陽光発電 168 14,780

その他 26 1,470

合計 250 20,760

全国

山西省

江蘇省

安徽省

湖北省

天津

寧夏自治区

広東省

陝西省

河南省

黒竜江省

河北省

山東省

Page 41: 中国におけるエネルギー構造転換と 自然エネルギー …...出典)BP “Statistical Review of World Energy 2019” に基づき自然エネルギー財団作成

36

3-3 自然エネルギー発電の今後の展望

再生可能エネルギー発展十三次五カ年計画(2016~2020)の自然エネルギー発電に関する

主要な目標は、前述のように、風力発電では 2020年までに 210 GWである。その 3分の 1

を占める 70GWは、中国中東部と南部地域に導入する計画であった。洋上風力発電の開発も

推進する方針であり、2020年までに 5 GWの導入目標がある。2019年、洋上風力発電の買

取価格は 0.85元/kWhである。2019年 6月時点で、中国の洋上風力発電設備容量は約 4 GW

である。

太陽光発電の導入目標は 105 GWであり、分散型太陽光発電の全面的な推進と共に、大規

模太陽光発電の計画的な開発を強調した。また、太陽熱による発電目標が初めて設定された、

2020年までに 5 GWの太陽熱発電設備の導入を目指している。その背景は、近年中国の太陽

熱発電技術が急速に発展していることである。中国の研究機関と企業の共同開発により、太

陽熱発電のコストが大幅に低下すると共に、設備の国産率が向上している。発電技術は安定

化しており、大規模な普及が可能となった。

現在、中国政府はエネルギー十四次五カ年計画(2021-2025)の作成に向けて、様々な議論

を行っている。エネルギー消費量コントロール、エネルギー利用の低炭素化、電力市場改革、

エネルギー利用効率の向上などの基本課題はもちろん、エネルギー構造転換に伴う伝統的な

エネルギー産業の課題への対応、分散型エネルギーの利用拡大、自然エネルギーを利用しや

すい社会システム構築などの新たな課題も議論の重点になる。中長期的に、2030年の非化石

エネルギー消費量が全体に占める割合の目標は 20%であり、それまでに CO2排出量をピー

クアウトすることを目指している。

こうした議論の中で、様々な組織と機関が中国エネルギー発展の今後について予測してい

る。一例として、中国発展改革委員会が所管する中国国家再生可能エネルギーセンター

(CNREC)が発表した研究成果(CREO2018)を挙げる。この研究によると、中国の一次エ

ネルギー需要の減少と低炭素化が進む中、化石燃料は早くて 2025 年頃にピークアウトし、

その後、自然エネルギー中心のエネルギーシステムにシフトするとの見通しが示されている

(図 27)。エネルギー需要構造をみると、2030年から水力、風力と太陽光が中心となるエネ

ルギーシステムが構築されるという予測になっている。

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図 27 中国の一次エネルギー消費構成の予測(2045 年まで)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)“CREO 2018” , Below 2 Scenario

自然エネルギーの利用方法は主に発電である。CNRECの研究結果(図 28)によると、2020

年代半ばから自然エネルギー発電設備は発電設備全体の半分以上を占め、2050 年に 90%以

上になると予測している。石炭火力発電の設備容量は 2020年代前半にピークアウトし、2050

年に全体発電設備容量に占める割合は 10%以下になると予測されている。風力と太陽光は将

来の主要電源と位置付けられる。

自然エネルギーが中心となるエネルギーシステムの構築と、デジタル化やスマートグリッ

ドの普及により電力が最終エネルギー消費に占める割合は段々増加する(図 29)。最終エネ

ルギー消費の主要部門は産業、建物、運輸の 3部門である。2050年の部門別の予測結果では、

電力消費量が最終エネルギー消費全体に占める割合について、産業部門が現状の 2 割から 6

割に増える。建物部門は 1割増の 5割に、運輸部門が 3割になる見通しである。

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図 28 中国の発電構成の予測(2050 年まで)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)“CREO 2018”, Stated Policies Scenario

図 29 中国の最終エネルギー消費構成の予測(2050 年まで)

出典)中国国家再生可能エネルギーセンター(CNREC)“CREO 2018”, Below 2 Scenario

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おわりに

今日の中国は、世界最大のエネルギー消費国であり、最大のCO2排出国でもある。石炭中

心のエネルギー構造により、様々な環境負荷物質が排出され、世界全体にとっても、中国自

身にとっても、深刻な環境問題を引き起こしている。こうした問題の解決をめざし、中国は

エネルギー構造転換を行い、より低炭素化な経済発展を目指している。

本レポートで述べてきたように、エネルギー構造転換は着実に進んでおり、石炭消費量は

すでに横ばいになり、エネルギー消費量全体に占める割合は 2018 年には初めて 6 割を割り

込んだ。一方、自然エネルギーの消費量は著しく増加している。

自然エネルギーへのシフトは電力部門で最も早く進んでいる。その背景には、2006年の「再

生可能エネルギー法」の施行をはじめとする政府の強力な推進政策がある。2018年の中国の

自然エネルギー発電設備総容量は発電設備容量全体の 38%を占める。

コスト低下も進み、一部の地域では、すでに風力と太陽光の発電コストが火力発電を下回っ

た。2020 年以降、補助金を要しない自然エネルギー発電の本格的な普及が予測されている。

中国が電力部門のみならず熱や燃料も含めたすべてのエネルギー部門において、いかに早

く低炭素化を進め、更には脱炭素化を進めるかは、中国だけではなく、世界の命運にもかか

わる重要性を有している。今後の動向に着目することが必要である。

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中国国家能源局(2019e)「关于解决“煤改气”“煤改电”等清洁供暖推进过程中有关问题的通知」

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2020年2月

中国におけるエネルギー構造転換と自然エネルギーの拡大

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