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1)玄武岩質マグマ,割れ目噴火 2) 過去3度の噴火はおよそ20年間隔 1940, 1962, 1983, 次は2003? → 実際は2000) 3) 活動はきわめて短期間(数日から数週間程度) 三宅島 1983 (噴火前) 三宅島カルデラ陥没に伴う様々な観測・解析結果のレビュー 火山物理セミナー (11/21) 担当 大湊

三宅島カルデラ陥没に伴う様々な観測・解析結果の …...1)玄武岩質マグマ,割れ目噴火 2) 過去3度の噴火はおよそ20年間隔 (1940, 1962,

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1)玄武岩質マグマ,割れ目噴火

2) 過去3度の噴火はおよそ20年間隔

(1940, 1962, 1983, 次は2003? →実際は2000)

3) 活動はきわめて短期間(数日から数週間程度)

三宅島

1983 (噴火前)

三宅島カルデラ陥没に伴う様々な観測・解析結果のレビュー火山物理セミナー (11/21) 担当 大湊

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2000 三宅島火山活動の推移(中田他 2000)

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山頂陥没期

July 9 July 22

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爆発期

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(Uhira et al.2005)

震源移動 三宅島→神津島

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(中田 HPより)

三宅・神津 ダイク貫入とカルデラ形成の全体像(中田 HPより)

カルデラ形成と開口割れ目どちらが原因? どちらが結果?

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Kaneko et al.

・深さ3-5km付近に安山岩質のマグマ溜まり.組成は1983年噴火時のマグマが分化したもの

・1983安山岩質マグマからの分化+玄武岩質マグマ

・1983年マグマの溜りに玄武岩質マグマが上昇してきたことが噴火のきっかけ

Miyasaka et al.

・深さ3-5km付近に安山岩質のマグマ溜まり.組成は1983年噴火時のマグマと同じ.

・6/27の海底噴火で1983噴火と同じ安山岩質マグマが噴出.

・安山岩質マグマが神津島側に移動し,深部(深さ10km程度)から玄武岩質マグマが上昇する余地が生じた.

地質屋・岩石屋の描く,2000年三宅島噴火の経緯

産総研モデル

・安山岩質マグマ溜まり(4-5km)からマグマが西方に移動するにつれて,ピストン状の岩体が落ち込む.

・深さ4-5kmのマグマ溜まりの中身は,安山岩質マグマから玄武岩質マグマに徐々に置き換わり,玄武岩質マグマが岩体の割れ目を伝って上昇(ストーピング).

・山頂カルデラ形成後,噴火に寄与する玄武岩質マグマの割合が徐々に増加.

・8/18噴火は,ストーピングにより深さ1kmまで上昇したマグマが地下水と反応したマグマ水蒸気爆発.

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(Miyasaka et al.2005)

岩石屋によるモデル(1)

・深さ3-5km付近に安山岩質のマグマ溜まり.組成は1983年噴火時のマグマと同じ.

・6/27の海底噴火で噴出したマグマは1983噴火と同じ安山岩質.

・安山岩質マグマが神津島側に移動し,深部(深さ10km程度)から玄武岩質マグマが上昇する余地が生じた.

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(Kaneko et al.2005)岩石屋によるモデル(2)

・海底噴火と山頂噴火の両者に玄武岩質マグマが含まれる.噴火進行につれて,玄武岩質マグマの割合が増える.

→ 「浅部の安山岩質マグマが何らかのメカニズムで移動を開始し,その後を深部からの玄武岩質マグマが埋めた」というモデル(Miyasaka モデル)は誤り.

「深部玄武岩質マグマが浅部安山岩質マグマ溜まりに入り,マグマ混合が起きた.マグマ混合がマグマの移動開始のきっかけ」

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(Saito et al.2005)

ガス屋によるモデル

1)噴火前 深さ10kmから浮力により上昇し,中立点の3-5km付近に停留2)カルデラ形成期 3-5km付近より,岩石を破壊しながら上昇.破壊された岩体はマグマ溜りへ落下.3)噴火期 マグマが3km以浅に達すると発泡により密度が急低下

8/18噴火 30vol%の気泡を含むマグマが地下水と接触.マグマ水蒸気爆発

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(Geshi et al.2002)

三宅島カルデラ形成の詳細

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マグマ溜まりの深さの精度(岩石学的・物質科学的手法)

Miyasaka et al.(2005) 岩石学(圧力を推定)

浅いマグマ溜まりの圧力は1kbar (約3km). 深いマグマ溜まりは2kbar(約8km)圧力に基づく深さの精度は低い.精度は浅部1±1kbar,深部2±1kbar程度.他の地球物理観測に基づき,浅いマグマ溜まり3-5km,深いマグマ溜まり8-10km.

Saito et al.(2005) 流体包有物(密度や圧力を推定).浅いマグマ溜まり:安山岩質マグマの密度は2.6g/cm3程度.伊豆大島で得られている密度構造を仮定

すれば,3km付近の密度境界にトラップされているはず.浅部マグマ溜まりは3km.

深いマグマ溜まり:H2OとCO2の含有量見積の最低値からは,飽和圧が190MPa以上(約8km以深).

他の地球物理観測を考慮し,浅いマグマ溜まりは2-3km,深いマグマ溜まりは10km.

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7/1-7/7ゆっくりした全磁力の減少→深さ 1.5-2km,消磁体積 3.3-5.8X107m3

7/8噴火直前全磁力の加速的減少→深さ 1km,消磁体積 3.4X107m3

7/8噴火噴火に伴い全磁力増加→深さ 0.1km,消磁体積 3.7X107m3

(参考 重力観測による空洞は,深さ 1.7km体積 5.8X107m3

電磁気観測による噴火前の空洞位置

(笹井 他, 2001)

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6/26-7/17 8/10-8/30

酒井 他 2000

震源分布が示唆する,崩落岩体とマグマ溜りの位置

山頂から深さ4km(海面下3km)まで,鉛直な震源分布.その下に空白域があり,マグマ溜まりを示唆.空白域の中心は,山頂真下ではなく,やや南西側に見える.地殻変動モデルの収縮源位置と矛盾しない.

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震源分布・移動

(Uhira et al.2005)

・2000年6/26 18時頃 雄山南西麓で群発地震始まる.深さ0-5km.・21時頃まで南西に移動し,急に西へ向きを変える.深さは2-4km.・そのまま朝まで西方への移動が続く.深さは2-4kmから3-5kmへ徐々に下降.・翌27日10時頃,海底噴火.地震活動は更に西方へ移動,三宅島-神津島間で群発始まる.

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地殻変動モデル(防災科研Uedaモデル)

・島内の傾斜計とGPSデータを使用

・4つのダイク(DK1, DK2, DK3, DK4).

(Uyeda et al, 2005)

DK1 6/26 18-21時の震源分布に対応.深さは0-3kmで震源分布と矛盾しない.

DK26/26 21時~6/27 1時の震源分布に対応.深さ0-10kmは震源分布よりかなり深い.(震源分布はダイクの上端)

DK36/27 1時から6時以降の西方へ移動した震源分布に対応.深さ0-10kmは震源分布よりかなり深い.

DK4震源分布と対応しない.「収縮」するダイクはいつ開口したのか?はじめから開いていた,という解釈らしい.三宅島南東部の観測点の西方への移動と沈降を説明するために導入されたもので,やや不自然.

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(Ueda et al, 2005)

地殻変動モデル(防災科研Uedaモデル 続き)

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(Irwan et al.2006)

地殻変動モデル(名大 Irwanモデル)

・3つのダイクと1つの球状収縮源.

・3つのダイクは,防災科研モデルのDK1, DK2, DK3にそれぞれ対応.水平位置はほぼ一致.深さは浅い(0-5km).(震源分布はダイクと一致)

・球状収縮源をDK4の代わりに導入.水平位置はDK4の中心,深さ6.6kmはDK4最深部付近.水平位置は,西村 他の深部膨張・収縮源(深さ9.5km)と同じ.

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地殻変動モデル(地理院西村モデル)

収縮源位置を未知パラメタとしてインバージョンで決定.

1)1997-1999(噴火前)火口の南南西3km,深さ9.5kmに膨張源(+2.0X108m3).

2) 7/9-7/12(噴火直後の膨張)火口西0.7km,深さ0.5kmに膨張源 (+6.6X105m3).

あるいは2') 火口西0.7km深さ2.1kmに膨張源 (+2.9X106m3)+3) 深さ9.5km収縮 (-2.4X106m3)+4) 深さ2.9km収縮 (-6.5X106m3)

2) と 2')+1)+4) のAIC差はわずか.優劣つけがたい.崩落岩体が空洞を充填した事による圧力増加か?

3) 2000年6-8月(カルデラ形成期)火口の南南西2km,深さ4.2kmに収縮源(-1.2X108m3).

あるいは1) (深さ9.5km収縮 (-2.2X108m3)

+4) (深さ2.9km収縮 (-0.42X108m3)残差は,3)より 1)+4)が1割程度良い.

3)は2つに分かれたソース( 1)+4) )を1点で表現したことによる虚像か?

4) 2000年8月-2001年5月(脱ガス期)火口南1km,深さ2.9kmに収縮源(0.16X108m3).

たくさんあるように見えるが,実際の膨張・収縮源は次の3つで表現できる.

1) 火口の南南西3km,深さ9.5km2')火口西0.7km,深さ2.1km4)火口南1km,深さ2.9kmに収縮源

2),3)はこれらの組み合わせ.2)=1)+2')+4)3)=1)+4)

1)

2)

3)4)

(西村 他, .2002)

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地殻変動モデル(名大 坂東モデル)

GPS観測点数は最大

収縮(6/29ー7/8)火口南西3km,深さ6km 1.2×108m3

Irwanの球状収縮源,安山岩質マグマ溜り

膨張(7/8-7/12)火口南2km,深さ3.5km 1.3×107m3

傾斜ステップのソース

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重力+GPSモデル(地震研 古屋モデル)

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(1)6/26-7/6(噴火前)火口下 深さ1.7km 半径240mの空洞 5.8X107m3

火口南西1km,深さ5.3km 収縮源 –8.7X107m3

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(2)7/11-8/12(陥没期)火口南2km 深さ3.7km収縮源 –1.6X107m3

火口西4km 深さ1.9km収縮源 –0.4X107m3

火口下4km 深さ1.7-2.7km円柱体の密度変化(→1g/cm3)1.7X108m3

(円柱体の隙間を地下水が埋めたことによる密度変化)

(3)9/11-11/12(脱ガス期)火口南西1km,深さ5.3km収縮源 –1.1X107m3

火口下4km 深さ0-2.5km円柱体の密度増加(→2g/cm3)1.2X108m3

(上昇マグマが隙間を埋めた)

GPSデータが少なく,膨張・収縮源の位置精度は高くない.

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Furuya Void 1.7km(before)

Furuya Deflation 5.3km (before)

Furuya Cylinder 0.6km (exp. period)Furuya Deflation2

1.9km (exp. period)

Nishimura 2.9km

Nishimura 9.5km

Nishimura 4.2km

Irwan 6.6km

Nishimura shallow

0.5-2.4kmFuruya Cylinder 1.3km (after)

Furuya Deflation 5.3km (after)

膨張・収縮源の位置の比較

Bando 6.6km

Furuya Deflation1 3.7km (exp. period)

Bando 3.5km

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Nishimura 2.9km

Nishimura 9.5km

Nishimura 4.2km

Irwan 6.6km

Nishimura shallow 0.5-2.4km

膨張・収縮源の位置の比較

Bando 6.6km

Bando 3.5km

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膨張・収縮源の位置の比較

Nishimura 2.9km

Nishimura 9.5km

Nishimura 4.2km

Irwan6.6km

Nishimura shallow 0.5-2.4km

Bando6.6km

Bando3.5km

A

B

信頼できそうなのは,

(1) 3kmの膨張 or 収縮=長周期地震震源?

(2) 6.6kmの収縮源

5km

10km

雄山

Bando 3.5km

Nishimura 4.2km

Nishimura 2.9km

Nishimura shallow 0.5-2.4km

Nishimura 9.5km

Irwan6.6km

AB

収縮

膨張

膨張

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傾斜ステップ,50sパルスのモデル

(Fujita et al. 2002)

Fujita et al.(2002), Fujita et al. (2003)傾斜ステップの向きを説明するが,地震波の

パーティクルモーションは説明しない.(地震記録の上下記録しか使用していない.)

6-8kmの深さのほぼ水平なシート状マグマ溜まり.

マグマドレインバックによる圧力低下→マグマ中の発泡促進→マグマ中のガス相の圧力増→傾斜ステップ,50sパルス

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菊地 他(2001)の間欠泉モデル

山頂南西1km,深さ2-3km

第1段階地下水が熱水溜りに流れ込み気化.圧力上昇により火道上部に微小地震発生.

第2段階蒸気圧が急激に上昇して周囲の岩体を押し広げ,「長周期パルス」発生.膨張が最大に達したところで上部岩塊(ピストン)が落下し,シングルフォースを発生

第3段階水蒸気が徐々に液化して,体積が減少し山体は収縮.

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山頂南2km,深さ5km

ピストン状の岩隗が間欠的にマグマ溜まりへ突入する際に,周期50sパルスが発生.

(Kumagai et al.2001)

Kumagai et al. (2001)

ピストンモデルによると、地震パルス幅は次の式で表される。

τ:パルス幅

m:ピストン質量

V :マグマ溜り体積

k :体積弾性率

S:ピストン断面積

2kSmV

πτ=

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2000年三宅島活動中に観測された様々な長周期地震の解析に基づく噴火の始まり(準備中)

山頂陥没前LP(0.2Hz, 0.4Hz)VLP(20s)

これらは7/8 山頂陥没の準備過程ではないか?

山頂陥没後VLP(50s) 傾斜ステップ,菊地モデル,藤田モデル,熊谷モデル・・・・

陥没前のVLP(20s)が長周期化したものではないか?

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長周期地震の性質

・0.2Hz(LP1),0.4Hz(LP2),0.05Hz(20秒)LP3.

・LP1(0.2Hz), 深さ6km 等方成分(円柱?)・LP2(0.4Hz成分)は場所が良く決まらない

・LP1,LP2は初動付近と後続部分に分かれる.

・初動付近の1周期分. 深さ2-3km,水平(南北)シングルフォース

・0.2Hz,0.4Hzの後続は 深さ6km 体積変化(成分間の位相ずれあり)

・LP3(20秒成分) 深さ2.6km VLP(50s)とよく似たメカニズム

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LP1(0.2Hz),LP2(0.4Hz)の性質

・6月27日には既に発生している・7/4-7/5が発生のピーク・7/8以降はほとんど無し

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LP1(0.2Hz ),LP2(0.4Hz)の波形の特徴LP1(0.2Hz)

LP2(0.4Hz)

卓越周波数は0.2Hz,0.4Hz

0.8Hzなど倍音も見られる.

パルス的な初動部と共鳴振動のような後続部

初動部と後続部の発生位置はことなる.

初動部2km付近 シングルフォース

後続部6km付近 体積変化

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LP1, LP2の震源位置

初動部分は 浅部のシングルフォース後続部分は 深部の体積変化

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初動部と後続部の振幅に正の相関あり

たまたま独立に発生しているのではない.初動部が後続部を励起すると考えるのが自然

初動部と後続部の関係

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各成分の位相がずれているので,幾何学形状を解釈することが難しい.

2枚のクラックが位相ずれをもって振動するモデルで説明可能

後続部のソースは単純な幾何学形状では説明できない

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LP解析から示唆されるモデル

LP1の初動部は水平シングルフォース.通路に詰まった岩体が水平方向に飛び出すことにより励起される圧力波が直交するダイクの共鳴を引き起こす.

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VLP(20sec)の発生位置とメカニズム

山頂南2km,深さ3.5km

北北西に傾いた,扁平な円柱

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VLP(20s)の解析から示唆されるモデル

LPがVLP(20s)を伴い始める火道浅部のブロック落下がマグマ溜りの膨張(20s)を励起

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酒井 pers. comm.

6/26 16:00 - 6/27 12:00

VLP(20s)

LP1(0.2Hz)

SF

5km

10km

御山

Bando 3.5km

Nishimura 4.2km

Nishimura 2.9km

Nishimura shallow 0.5-2.4km

Nishimura 9.5km

Irwan6.6km

AB

収縮

膨張

膨張

VLP ⇔浅部膨張源(3km)LP(0.2Hz) ⇔収縮源(6km)という対応が成り立ちそうである.

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LP解析から得られたモデル

VLP解析から得られたモデル

2つのモデルをうまく繋ぎたい

VLP(50s)とも繋げたい

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VLP50sLP 5s

VLP20s

LPとVLP(50s)は共存しない

VLP(20s)とVLP(50s)は共存しない

LPの中にVLP(20s)を伴う場合と伴わない場合がある

LP,VLP(20s),VLP(50s)の関係 その1

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VLP(20s)にLP(0.2Hz, 0.4Hz)が重なっている.

時間的な前後関係はわからない

LP,VLP(20s),VLP(50s)の関係 その2

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Phase ILP発生,VLP(20s)は励起されず.

LP1の初動部は水平シングルフォース.通路に詰まった岩体が水平方向に飛び出すことにより励起される.

Phase II LPがVLP(20s)を伴い始めるDK1+DK2がマグマ溜りにつながる.火道

浅部のブロック落下がDK1+DK2の共鳴振動(5s)と,マグマ溜りの膨張(20s)を励起

VLP(20s)を励起する岩石ブロックは火道ごく浅部

Phase III 火道浅部の岩体と火道深部の岩体が一体となり,マグマ溜りへ落下.マグマ溜りの膨張(50s)を励起

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シングルフォース

VLP 20s

LP0.2Hz0.4Hz

観測事実

LPにはシングルフォース(SF)が必ず先行 (SF+LP)LPの中にVLP(20s)を伴う場合と伴わない場合がある(SF+LP あるいはSF+LP+VLP)

シングルフォース

VLP 20s

LP0.2Hz0.4Hz

シングルフォース

VLP 20s

LP0.2Hz0.4Hz

在り得る組み合わせSF + LPSF + VLP

在り得る組み合わせSF + VLPSF + VLP + LP

在り得る組み合わせSF + LPSF + LP+VLP

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Phase I LP発生,VLP(20s)は励起されず.LP1の初動部は水平シングルフォース.通路に詰まった岩体が水平方向に

飛び出すことにより励起される.

Phase II LPがVLP(20s)を伴い始めるDK1+DK2がマグマ溜りにつながる.火道浅部のブロック落下がDK1+DK2

の共鳴振動(5s)と,マグマ溜りの膨張(20s)を励起

Phase III 火道浅部の岩体と火道深部の岩体が一体となり,マグマ溜りへ落下.マグマ溜りの膨張(50s)を励起

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7/8噴火前の長周期地震(準備中)

モデル案

LP1(0.2Hz成分)6km深部マグマ溜まり(8-10km)と浅部マグマ溜まり(3-5km)を結ぶ通路の振動.

LP2 (0.4Hz成分)LP2-a(初動付近)2-3km深部マグマ溜まりから浅部マグマ溜まりへのマグマ移動は連続的でなく,間歇

的に起きる(なぜか?)移動開始は急に起きる.圧力に応じて開閉するバルブのような機構の存在? バルブが開く際にLP2-aを発生?

LP2-b(後続波)6kmLP1の高次モード?LP3(20秒)2.6km

50sパルスと同じもの.7/8以降は崩落物質がピストン質量に加わったため,周期が延びた.7/8の前後で関与する質量が6倍になれば良い.

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酒井 pers. comm.

6/26 16:00 - 6/27 12:00 6/26 - 7/16

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50sパルス前の群発地震 Kobayashi et al. (2003)

(Kobayashi et al.2003)

震源位置 → 西村(2003)の浅部膨張源と一致.

岩体が火道内を滑り落ちるまえの前駆現象

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LP地震に伴う空振 (Kobayashi et al. 2005)

(Kobayashi et al.2005)

空振が火口底から発するのは,地震波発生後2.3秒後.

地震の発生位置は,火口底から更に1.4km下.

地震発生位置から火口底まで伝わる圧力波の速度は500-700m/s

理想気体を仮定すると,温度が低すぎる.火山灰混じりのガスか?

海面下1400mにマグマヘッド.産総研モデルでは海抜0m付近に帯水層.ここにマグマヘッドが達して水蒸気爆発.

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7/8噴火前の長周期地震(準備中)

モデルで説明したい内容6/26-7/8は4-5km付近にあるマグマ溜まりの中身が,安山岩質から玄武岩質

に置き換えられる時期.安山岩質マグマは西方へ流出し,玄武岩質マグマが深部から上昇.・深さ4-5kmにある安山岩質マグマ溜まりから,西方へのマグマ流出に関係する

現象.・深さ8-10kmの玄武岩質マグマ溜まりから,深さ3-5kmのマグマ溜まりへのマグ

マ移動に関係する現象(おそらくこちら).

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(Uhira et al.2005)

震源分布とダイクモデル

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(中田 他, 2001)

8/18,8/29 噴火モデル

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Mass budget

西村 他 2002 6/28-8/31山頂陥没 –6.0X108m3 収縮源 –1.2X108m3

三宅-神津島間の開口割れ目10.2X108m3 噴出物 0.1X108m3

計 (10.2+0.1)-(6.0+1.2)=3.1X108m3 地殻下部からの供給?Ozawa et al. 6/14-8/31山頂陥没 –6.0X108m3 収縮源 –1.2X108m3

三宅-神津島間の開口割れ目12.0X108m3 噴出物 0.1X108m3

計 (12.0+0.1)-(6.0+1.2)=4.9X108m3 地殻下部からの供給?Furuya et al. (2003)山頂陥没 –6.0X108m3 収縮源 –1.3X108m3 密度低下 2.9X108m3

三宅-神津島間の開口割れ目9.4X108m3

質量に換算山頂陥没 –1.38X109t 収縮源 –0.35X109t 密度低下 –0.29X109t三宅-神津島間の開口割れ目2.69X109t計 2.69-(1.38+0.35+0.29)=0.67X109t 体積換算で2.3X108m3 地殻下部からの供

給?Yamaoka et al. 2005 6/28-8/31山頂陥没 –6.0X108m3 収縮源 –3.5X108m3

三宅-神津島間の開口割れ目20.0X108m3 噴出物 0.1X108m3

地殻下部からの供給 -15.0X108m3

計 (20.0+0.1)-(6.0+3.5+15)= -4.4X108m3 深部からの供給大きすぎる.

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地殻変動モデル(地理院 Nishimuraモデル)

(Nishimura et al., 2001)

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地殻変動モデル(名古屋 村瀬モデル)

(1)6/26以前5kmの膨張源

(2)6/27-7/11.5kmの収縮源から西方へマグマ移動

(3)7/2-8/101.5kmの収縮源から西方へのマグマ移動続く(やや深部へ向かう)三宅-神津間のダイクへ地殻深部からマグマ供給開始

(4)8/11-8/185kmの収縮源から西方へマグマ移動.山頂噴火.

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(Furuya et al., 2003)

(Furuya et al., 2003)

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(Yamaoka et al.2005)

(Murase et al.2006)