Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
はじめに
ダウは、2020年6月17日、世界で最もイノベーティブで顧客本位であり、インクルーシブかつ持続可能な素材科学企業になることを目指し、気候変動とプラスチックごみの問題に対処するための新たな目標を発表した。目標の一部は次の4つである。① 2050年までにカーボンニュートラルを達成、② 2030年までに100万トンのプラスチックを回収、再利用、リサイクル、③ 2035年までに
包装用ダウ製品の再利用、リサイクル性を100%実現。
プラスチックによる環境への影響が問われる昨今、パッケージにおけるバリューチェーンの各企業は、プラスチック包装の環境問題解決に向けたさまざまな取り組みを始めている。ダウも同様に、プラスチックはサーキュラーエコノミー(循環型経済)が可能な製品と考えており、プラスチック廃棄物は革新的かつ持続可能な材料を生み出し続ける資源として捉え、地球環境の保全と人々の豊
特集 SDGsの達成に向けた新たなプラスチックの技術開発と課題
ダウ・ケミカル日本㈱ 村Murayama山 亜
Aki希*1、杜
Mori暁Satoru黎*2
*1 バリューチェーン マーケティング マネージャー*2 主任研究員〒140-8617 東京都品川区東品川2-2-24☎03-5460-6330
•••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
サステナブルなパッケージソリューション
解 説
リサイクル性の改善
2.マテリアルリサイクルとアプリケーション開発
3.ケミカルリサイクル
4.再生可能原料
プラスチックのサーキュラーエコノミー
1.
図 1 ダウのサステナブル戦略
28
かな生活の両立を実現させるために、社会と経済の両面で利点のあるサステナブルなプラスチックパッケージの開発に取り組んでいる。
ダウは、サーキュラーエコノミーの実現により、プラスチックによる環境負荷が排除された世界が開かれると考えており、プラスチックの再利用やリサイクルのプロセスを見直し、リサイクル可能なプラスチックの製品設計や工程提案などの新製品や新技術の開発に注力している。サーキュラーエコノミーという目標の中で、ダウは次の4種類のサステナブル戦略に取り組んでいる。①リサイクル性を改善したパッケージ設計、②マテリアルリサイクルとアプリケーション開発、③ケミカルリサイクル、④再生可能原料の提供(図 1 )。本稿では、この4つのサステナブルなパッケージソリューションを紹介する。
リサイクル性を改善したパッケージの設計について
1 . オールポリエチレン(PE)パウチオールPEのラミネートソリューションは、プ
ラスチックのサーキュラーエコノミーを実現するための有効手段と考えられる。オールPEのパッケージ(図 2 )により軟包装の効率的なリサイクルやリユースが促進され、サステナブルなサーキュラーエコノミーの構築に貢献し、各国政府や団体による廃プラスチック規制に対応可能となるため、ダウはそうしたオールPEのパッケージの設計を支援している。オールPEのパッケージは、
軟包装業界で使われている既存設備のままで生産性と廃棄基準を両立させられることが可能で、一般消費財のパッケージにも対応可能である。
このオールPEパッケージを実現するために従来の包装表層に用いられるOPETなどの素材をPEへ切り替えることが大きな変化であり課題となる(図 3 )。ダウは独自の技術を用いて、さまざまなソリューションを提案している。2 . テンターフレーム二軸延伸ポリエチレン(TF-BOPE)フィルムダウは長年にわたる研究および社内外のコラボ
レーションを通じて、独自の分子構造を設計することによりテンターフレーム二軸延伸性の高リサイクル性の延伸フィルム用に、INNATE™ TFポリエチレン樹脂(1.7g/10min MI: 0.926 g/cm3 密度)を開発した。INNATETM TF PE樹脂で作られたTF-BOPEフィルムは際立った特性を有する。従来のPE製品で開発されたフィルムと比較し、
図 2 ダウのオールPEパッケージ
OPET
DOWLEXTM
ELITETM+LDPE
INNATETM+LDPE
ELITETM+LDPE
接着剤/LDPE多層構造
DOWLEXTM
ELITETM
接着剤
LLDPE/LDP
TF‐BOPE/MDDフィルムインフレ PE/キャストPEフィルム
PET/PE 多層構造
オールPE 多層構造
インフレシーラントフィルムmLLDPE/LD
LLDPE/LDP
図 3 ダウ提案のオールPEパウチのフィルム構成
292020年10月号(Vol.68 No.10)
INNATETM TF樹脂で作られたフィルム(図 4 )は下記のような特性がある。
・フィルムのヘイズが最大80%少ない・衝撃強度および引張弾性率が2倍・突刺強度および引張強度が3倍・低温における優れた耐屈曲亀裂性TF-BOPEを用いるとパッケージの物的性能が
全体的に向上し、フィルム使用量の削減やライン効率の向上につながる。図 5 にINNATETM TFポリエチレン樹脂を用いた場合の詳細を示す。
・他のポリマー材料代替となる IN-NATETM TF PE樹脂は優れた機械的特性を有しており、包装のフィルムの耐久層で使われているBOPA、BOPP、BOPETなどのポリマーの代替品として使用すると、多層フィルムの厚さを低減することが可能になる。材料の置き換えによって、取り扱いが容易になると同時にコストも最適化可能。
・使用時の利便性:INNATETM TF PE樹脂は単層でも、多層構造(例:BOPET//BOPE)でも、易引裂性という包装材としての重要な要件を備えており、最終消費者にとってのより良い使用体験を実現する。
・リサイクル可能な構造: 優れた光学性能と印刷性能を備えたTF-BOPEフィルムはそのまま包装の印刷層としても使用可能であり、ロゴやイメージの鮮明さ、読みやすさ、商品陳列棚での見栄えの良さが確保される。INNA-TETM TF PE樹脂を他の機能性ポリエチレンフィルム層(例:BOPE//PE)と組み合わせたオールPEパッケージは従来品よりリサイクル性が高く、サステナブルな製品の実現に向けた一助となる。3 . 一軸延伸(MDO)/インフレPEフィ
ルム/キャストPEフィルム最新鋭MDO装置とダウのPE樹脂を
組み合わせることで、既存のマルチマテリアル包装と同様にオールポリエチ
レン包装も可能となる。ダウが推奨するELITETM
ポリエチレン樹脂などの配合を用いると、多層構造フィルムを製造している既存のインフレフィルムラインでも印刷可能なPEフィルムの生産が可能なため、ラインや設備の変更や購入が必要ない。これらの方法に適するダウのポリエチレン製品は、下記のものが挙げられる。
・ ELITETM樹脂:際立った剛性、耐熱性、光学特性およびMDOプロセスで重要とされる十分な縦方向の延伸性
透明性
10
8
6
4
2
0
グロス
突刺強度
耐ピンホール性
MD剛性
厚み安定性
TF-BOPE(20μm,0.926ℊ/cm3)
MDD-PE(20μm,0.937ℊ/cm3)
インフレ未延伸PE(25μm,0.950ℊ/cm3)
耐衝撃性(ダート)強度
強度
光学
図 4 TF-BOPEフィルムと他のPEフィルムの比較
透明性
強度
TF-BOPE(20μm)
BOPET(12μm)
BOPP(18μm)
BOPA(15μm)
剛性
熱融着性
リサイクル性
10
8
6
4
2
0
図 5 TF-BOPEフィルムと他の延伸フィルムとの比較
30