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オマーン情報 20198一般財団法人 中東協力センター 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当センターはその正確性を保証するものではありません。

オマーン情報 - JCCME2019/08/30  · Ⅰオマーン(Sultanate of Oman)概況 出典:外務省 •1970年に即位したカブース国王が、首相、外相、財相、国防相を兼任し、経済開発に取

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オマーン情報

2019年8月

一般財団法人中東協力センター

当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当センターはその正確性を保証するものではありません。

Page 2: オマーン情報 - JCCME2019/08/30  · Ⅰオマーン(Sultanate of Oman)概況 出典:外務省 •1970年に即位したカブース国王が、首相、外相、財相、国防相を兼任し、経済開発に取

Ⅰオマーン(Sultanate of Oman)概況出典:外務省

•1970年に即位したカブース国王が、首相、外相、財相、国防相を兼任し、経済開発に取

り組み近代化政策を実施。

•内政は安定。2010年12月からの「アラブの春」の影響を受け、各地で労働環境の改善等

を求めるデモやストライキが発生するも、国王が政治改革や社会サービスの向上を発表

し、翌年5月までに沈静化。

1. 内政

•原油可採年数は20年前後と推定され、原油収入依存型の経済構造からの脱却が課題。商

工業、漁業等の育成等、多角化政策を進めるとともに、大型観光開発や石油・ガスを利

用した下流部門の開発を進めている。LNG生産をはじめとした天然ガス開発事業は順調

に発展。なお、オマーン原油の積出港はホルムズ海峡の外側に位置している。

•2000年代よりアラビア海に面したドゥクムに経済特区を設け、政府は港湾を核にした開

発を継続中。(2012年にフル操業を開始した世界規模のドライドックが存在)

2. 経済

•全方位外交を展開、特にイランとの関係が良好、中東地域情勢に積極的な仲介外交実施。

•イラン:イランとの友好関係を保持。核協議に関しては米・イランを仲介

•イエメン:ハーディ大統領のイエメン脱出を支援、イエメン国内の人質解放にも尽力

•シリア:アサド大統領とも一定の関係を維持

•中東和平:イスラエル・ネタニエフ大統領、パレスチナ・アッバース大統領とも関係を

維持(2018年10月にカブース国王が会談を実施)

3. 外交

•カブース国王は、日本を国家開発の手本と国民に呼びかけたほどの親日家(1994年に皇

太子同妃両殿下がオマーンをご訪問)。2014年1月に安倍総理がオマーンを訪問し、

「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」を発表。2017年12月に河野外相が訪問。

•我が国にとってオマーンは8番目の原油供給国(18年シェア1.7%)。我が国の技術協力

(環境保全、農漁業等)は、オマーンの国造りや人材育成に大きく貢献したとの評価あ

り(2013年にODA卒業)。

•天然ガス開発事業には、プラント建設をはじめ、製造、販売、輸送事業に、多くの日系

企業が参画。

4. 二国間関係

•約31万km2(日本の約85%)(1) 面積

•465万人(うち261万人がオマーン人)(2)人口

•アラビア語(英語もよく通じる)(3) 言語

•アラブ人(4) 人種

•イスラム教(イバード派が主流)(5) 宗教構成

•君主制(6) 政体

•カブース・ビン・サイード国王陛下(7) 元首

•諮問議会(84名)、国家評議会(83名)(8) 議会

•ファハド副首相(9) 政府

•708億ドル、@17,128ドル(18年IMF)(10) GDP

•156名(17年10月現在)(11) 在留邦人

•20社(17年10月現在)(12) 進出企業数

•航空協定(98年)、租税協定(14年9月発行)、

投資協定(17年7月発行)(13) 国際約束

•天然ガス:8位(3.7%)、原油:8位(1.7%)(14) 石油・ガス輸入量

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Ⅱオマーンの特徴(比較優位性)

ホルムズ海峡を領海に有するとともに、インド洋に直接面し湾岸諸国、インド、東南アジア、東アフリカの結節点としての地政学的メリット。日本のみならず、世界のエネルギー安全保障の観点からもオマーンの重要性が高まっている。

安定した内政。テロ等とは無縁な安全な治安。1970年に就任したカブース国王(1940年生まれ)の後継者問題も、2017年に副首相兼国王特別代理が任命されたことで当面の懸念は払拭。

全方位外交。イランやカタールを含め、近隣諸国と良好な関係を維持。イエメンとは部族を通じた血縁関係があり、他のGCC諸国とは一線を画す。

他のGCC諸国と比較して、オマーンの石油・天然ガスの採掘可能年数は15~20年と短く、産業の多角化が急務。その核となるのが経済特区やフリーゾーンの開発と外資の導入。特にオマーンの中央部に位置するドゥクム経済特区は、国家プロジェクトとして、その開発と外国企業の誘致に力を注いでいる。

古くから海洋国家として発展してきた歴史的背景から、現在もインドや東アフリカと強い繋がりを持つ(インド・東アフリカへのアクセス)。※オマーンの企業では、多くのインド人が経営幹部として活躍。GCC以外ではインドが最大の貿易相手国

2009年1月に米国とのFTA(自由貿易協定)発効、オマーンを製造拠点に、米国に関税なしで輸出可能。※GCCとして、シンガポール、EFTA(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)ともFTA締結。GAFTA(大アラブ自由貿易地域)にも加盟

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オマーンでは、産業の多角化と民間活用による、石油に依存しない持続可能な経済を実現するため、「オマーンVision 2020」と呼ばれる第9次 5か年開発計画(The Ninth Five-Year Development Plan, 2016-2020)を策定、その中で重点的に開発に取り組む分野として、①製造業、②輸送・ロジスティクス、③観光、④漁業、⑤鉱業の5分野を挙げている。各々の分野で2020年までに達成を目指す主要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)は下記の通り。

Ⅲオマーンのビジネス環境(オマーンVision 2020)

重点分野 主なKPI

GDPシェア 年平均成長率 投資金額

・製造業・輸送・ロジスティクス・観光・漁業・鉱業

9.8% → 11.0%6.2% → 7.0%3.0% → 3.3%0.5% → 0.6%0.4% → 0.5%

7.8%5.4%5.3%7.0%6.5%

26億OMR61億OMR16億OMR11億OMR7億OMR

「オマーンVision 2020」の実施を加速・可能なものにするため、2016年に最高計画評議会が管轄し、省庁横断機能を持つNational Program for Enhancing Economic Diversification(Tanfeedh)が設立された。Tanfeedhの主な役割は、明確な役割分担とKPIをベースに、各政府が5か年計画の中で担当する事業の着実な実行を支援し、具体的なプロジェクトの進捗を管理すること。「Tanfeedh HANDBOOK」には、日本企業にとっても相対的にビジネス機会が多いと考えられる「製造業」に関し、次の通り有望なサブ・セクターと、各サブ・セクター毎に実施すべきプロジェクトが明示されている。なお、「オマーンVision 2020」を引き継ぐ形で、同国の2040年までの長期的な開発戦略を描く「オマーンVision 2040」は、当初の予定では2019年第一四半期に最終版を策定し、閣議に提出されることになっているが、未だ正式な発表はない。

<化学・石油化学> OCTALのポリエチレン・テレフタレート(PET)の生産能力拡大

PET製造プラント アンモニウム肥料プラント 瀝青防水膜プラント

<食品・飲料品> 野菜供給、加工プラント 海産物処理、缶詰製造 統合された酪農場の設立 鶏肉生産事業の強化 デーツ製品の開発とイノベーション

<金属・非金属> 液体金属製造のためのソハール・アルミニウムプラントの拡張

建設資材・資材部品 アルミニウム生産の下流部門、鉄製品 金型のデザイン・製造プラント セメントの国内生産の増強

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1990年代以降、オマーンではフリーゾンや経済特区の開発に力を入れている。近年では、シンガポールの3倍の広さを持ち、中国の「一帯一路」プロジェクトにも指定された「Duqm経済特区」を足掛かりに、外資誘致による産業の多角化を進めようとしている。

区分フリーゾーン・経済特区外地域

Soharフリーゾーン

Salalahフリーゾーン

Al Mazunahフリーゾーン

Duqm経済特区

誘致したい産業

鉄鋼業、食品加工、物流・貿易、鉱物、石油・ガス

化学および素材加工・製造・組み立て、物流、販売

化学、加工、組立業、輸送・配送業

製造業、港湾・ドライドック、ツーリズム、漁業、輸送

労働関係現地人採用30%以上社会保障:雇用者は月給の9.5%を負担

現地人採用15% 現地人採用10%

現地人採用10%(20%?)イエメン人のビザなし就労、滞在可能

現地人採用25%

税制例

法人税:12%(石油探査企業55%)源泉徴収税(配当、マネジメントフィー、ロイヤリティ、ソフトウェア):10%所得税、VATなし

法人税:25年不課税法人税:30年不課税配当:30年不課税

法人税:30年不課税法人税:30年不課税配当:30年不課税

インセンティブ外資上限を70%に制限

・外資100%可能・25年間の所得税免除・輸入関税の免除・現地市場への販売に係る制限撤廃・最低株式資本要件の引き下げ(2万OR)

・外資100%可能・免税制度・輸出入関税の免除・現地市場への販売に係る制限撤廃・最低株式資本要件の撤廃・資本、利益および投資の本国送金の制限撤廃

・外資100%可能・30年間の所得税免除・商事代理店法に基づく義務の一部免除・関税免除オマーン人採用要件の引き下げ・最低投資要件、外国為替制限の撤廃

・外資100%可能・長期借地利用(50年)の容易化およびリース料の軽減・外国資本および最低設備投資に対する制限撤廃・法人税、関税の減免・外国為替制限の撤廃、投資資本および利益の本国送金の自由

関税 関税 5% 関税免除 関税免除 関税免除 関税免除

Ⅳフリーゾーン・経済特区のインセンティブ比較

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外務省海外在留邦人数調査統計(平成30年要約版)によると、2017年10月1日現在、オマーンに進出している日系企業数は20社(UAE:337社、サウジアラビア:115社、カタール:46社、バーレーン:20社、クウェート:18社)。歴史的に、石油・LNGの引き取りが主要事業の一つであるが、過去に製油所、肥料プラント、還元鉄プラント等を建設した実績を持つ。日本の商社がドゥクムの経済特区に在庫拠点を設け、BPオマーンがKhazzanタイトガス田開発で使用する日本製の油井管を供給。LNGについては、我が国の海運会社がオマーンの国営企業であるOman Shipping CompanyとLNG船を共同保有し操船している。最近では、海水淡水化事業や発電事業への取り組みが目立つ。水・電力分野は、今後とも民間活力の導入により造水・発電能力の拡充を図ることから、同分野での本邦企業の活躍が期待される。

【海水淡水化】オマーンで最初の大型IWP案件(造水能力:190,000m3/日)、その後同国最大となる案件(造水能力:218,000 m3/日)を、日系企業が筆頭株主のコンソーシアムが受注し、既に商業生産を開始している。直近では、日本のエンジニアリング会社が75%を出資するSPCが、造水能力80,000 m3/日の20年にわたる造水事業を受注、2021年4月の商業運転開始を目指している。【発電】従来は商社や電力会社がIPP案件に参画していたが、今年2月、日系企業が50.1%を出資するSPCが、23年間にわたるオマーン初のメガソーラー(大規模太陽光発電所)事業を受注した。

Ⅴオマーンにおける日系企業の事業活動

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10.75

1.51

33.87

4.39 2.75 4.70

0

10

20

30

40

人口(単位: 百万人)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

39,806

25,781 22,507 18,082

70,288

29,129

0

20,000

40,000

60,000

80,000

一人当たりGDP(単位: USD)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

-5

0

5

10

15

20

2010 2012 2014 2016 2018

経済成長率推移(単位: %)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

【参考】 GCC主要指標比較①

-3

-2

-1

0

1

2

3

4

5

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2010 2012 2014 2016 2018

インフレ率推移(単位: %)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

・出典:IMF-World Economic Outlook Database、World Bank-Data Indicators他・2019年:推計、2018年:一部推計

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50

100

150

200

2010 2012 2014 2016 2018

経常収支推移(単位: 10億USD)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

2010 2012 2014 2016 2018

財政収支対GDP比推移(単位: %)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

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20

40

60

80

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2010 2012 2014 2016 2018

政府総債務残高対GDP比推移(単位: %)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

0

100

200

300

400

500

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700

800

2010 2012 2014 2016

外貨準備高推移(単位: 10億USD)

UAE Bahrain KSA Oman Qatar Kuwait

【参考】 GCC主要指標比較②