27
セッション1 学校教育における体験活動の意義 -5- 1.ねらい 今日の社会的環境、児童の状況、発達段階を踏まえ、体験活動の意義と必要性、教育的 効果を理解する。 2.内容 ・青少年を取り巻く社会的環境や青少年の現状を踏まえ、青少年の現代的課題と青少年問 題について理解する。 ・体験活動の教育的意義や学力との関係について理解する。 ・発達段階に配慮した体験活動の在り方と指導者に求められる役割や資質を理解する。 3.内容の補足(◎は必ず取り扱って欲しい事項) ◎小学生の現代的な特性(基礎的な体力・意欲・コミュニケーション能力の低下、直接体 験の不足、生活実態など) ・小学生の発達課題 ◎体験活動の意義や目的(各種データ、各種答申、専門的な知見、研究成果など) ・教育法規と体験活動との関連(教育基本法、学校教育法、社会教育法) ◎「小学校長期自然体験活動」に関連する施策(「子ども農山漁村交流プロジェクト」、 「自然体験活動指導者養成事業」、「小学校自然体験活動プログラム開発事業」) ・「長期集団宿泊・自然体験活動」を推進する背景(各種答申や学習指導要領) 4.参考資料 (1)平成 20 年度講習会の講師資料 ①熊本大学教育学部教授 古賀 倫嗣氏 P 6 ②中京女子大学教授 平田 裕一氏 P 8 ③信州大学教授 平野 吉直氏 P17 ④青少年機構教育事業部企画・推進課長 小林 真一氏 P20 (2)その他の資料 ①「小学校長期自然体験活動指導者養成事業」実施の背景 P27 ②「青少年の意欲をめぐる現状と課題」 P30 ③「教師指導者のための農業体験学習A toZ」(全国農村青少年教育振興会) P31 §セッション1 学校教育における体験活動の意義 講義 2 時間

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-5-

1.ねらい

今日の社会的環境、児童の状況、発達段階を踏まえ、体験活動の意義と必要性、教育的

効果を理解する。

2.内容

・青少年を取り巻く社会的環境や青少年の現状を踏まえ、青少年の現代的課題と青少年問

題について理解する。

・体験活動の教育的意義や学力との関係について理解する。

・発達段階に配慮した体験活動の在り方と指導者に求められる役割や資質を理解する。

3.内容の補足(◎は必ず取り扱って欲しい事項)

◎小学生の現代的な特性(基礎的な体力・意欲・コミュニケーション能力の低下、直接体

験の不足、生活実態など)

・小学生の発達課題

◎体験活動の意義や目的(各種データ、各種答申、専門的な知見、研究成果など)

・教育法規と体験活動との関連(教育基本法、学校教育法、社会教育法)

◎「小学校長期自然体験活動」に関連する施策(「子ども農山漁村交流プロジェクト」、

「自然体験活動指導者養成事業」、「小学校自然体験活動プログラム開発事業」)

・「長期集団宿泊・自然体験活動」を推進する背景(各種答申や学習指導要領)

4.参考資料

(1)平成 20 年度講習会の講師資料

①熊本大学教育学部教授 古賀 倫嗣氏 P 6

②中京女子大学教授 平田 裕一氏 P 8

③信州大学教授 平野 吉直氏 P17

④青少年機構教育事業部企画・推進課長 小林 真一氏 P20

(2)その他の資料

①「小学校長期自然体験活動指導者養成事業」実施の背景 P27

②「青少年の意欲をめぐる現状と課題」 P30

③「教師指導者のための農業体験学習 A toZ」(全国農村青少年教育振興会) P31

§セッション1 学校教育における体験活動の意義 講義 2時間

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-6-

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

(1)平成 20 年度講習会の講師資料

①熊本大学教育学部教授 古賀 倫嗣氏

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-8-

②中京女子大学教授 平田 裕一氏

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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③信州大学教授 平野 吉直氏

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-20-

「学校教育における自然体験活動の意義」「教育課程と体験活動の関連性」

平成21年1月28日(水)

独立行政法人国立青少年教育振興機構

教育事業部企画・推進課長 小林真一

学校支援リーダー養成研修

自然体験活動指導者養成事業目標と目的

小学校が実施する

1週間の自然体験活動を

支援する指導者の養成

研修の受講

思い出に残る集団宿泊活動

力を伸ばす集団宿泊活動

終ゴール

実際に活動

目的

ちょっと,コーヒーブレイク

目標

手段

・めざすこと(どうなったらいいか)

考えを整理する2つの視点

・ 終的にめざす姿・なんのために

・達成するための方法

本時の目標

学校教育における自然体験活動の意義を理解する。

教育課程と体験活動の関連性を理解する。

学校の(長期)自然体験活動を指導する者の役割を理解する。

本時の内容

学校(長期)自然体験活動指導者の役割

①指導者は何をするのか?

②指導者に求められる資質・スキルとは?

③なぜ,指導者が必要なのか?

学校教育における自然体験活動の意義

①自然体験活動の意義は?

②教育課程とは?

③集団宿泊活動と教育課程との関連は?

④集団宿泊活動の実施上の留意点は?

学校(長期)自然体験活動指導者の役割

④青少年教育機構教育事業部企画・推進課長 小林 真一氏

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-21-

「学校の自然体験活動」の指導者が必要な理由

「体験活動」に関する答申など

平成19年 教育再生会議

経済財政諮問会議

小学校で1週間の

集団宿泊自然体験

平成20年 中央教育審議会 小学校で1週間程度の

集団宿泊自然体験

指導者が必要な理由①

「社会総がかりで教育再生を-第2二次報告-」(平成19年6月1日)

○心と体-調和の取れた人間形成を目指す-

提言2 様々な体験活動を通じ,子供たちの社会性,

感性を養い,視野を広げる

・小学校で,1週間の集団宿泊体験や自然体験・農林漁業体験活動を実施。

・中学校で,1週間の職場体験活動を実施。

・高等学校で,奉仕活動を必修化。

教育再生会議

指導者が必要な理由②

「経済財政改革の基本方針2007~美しい国へのシナリオ~」(平成19年6月19日)

○心と体の調和の取れた人間形成

・体験活動の推進

すべての子どもが自然体験(小学校で1週間),社会体験(中学校で1週間),奉仕活動(高等学校で必修化)を経験,そのための指導者の活動支援,専門高校や専修学校等が地域社会と連携して行う特色ある職業教育の取組の積極的支援。

指導者が必要な理由③

経済財政諮問会議

「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」

(平成20年1月17日)

○体験活動の充実

・現在,特別活動や総合的な学習の時間などにおいて行われている様々な

体験活動の一層の充実が必要である。

指導者が必要な理由④

中央教育審議会・答申

場 所

プログラム 教育方法

指導者が必要な理由⑥

学校の自然体験活動を構成するもの

何をどのようにするのか

いつするのか

どこでするのか

時 期

誰がするのか

なぜするのか 目 的

教 員 指導者

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-22-

小学校長期自然体験活動支援プロジェクト

自然体験活動指導者養成事業

全体指導者

平成20・21年度 文部科学省・青少年課

補助指導者

小学校自然体験活動プログラム開発事業

指導者が必要な理由⑧

豊かな体験活動推進事業

自然の中での長期宿泊体験事業

農山漁村における生活体験推進校

平成20・21年度 文部科学省・児童生徒課

学校教育における人間力向上のための長期宿泊体験活動推進プロジェクト

指導者が必要な理由⑨

農山漁村交流プロジェクト(三省連携)

「学校の自然体験活動」の指導者の役割と必要なスキル

指導者の役割①

全体指導者は何をするのか?

小学校が実施する1週間の自然体験活動の「計画に対して助言」を行う。

「活動時に全体指導」を行い,「活動全体の様子を把握」する。

終了後には,小学校が行う「評価の際に助言」を行う。

指導者の役割②

補助指導者は何をするのか?

全体指導者の指示で「補助指導」を行う。

指導者のスキル①

「計画に対して助言を行う」スキル①

企画力

自然体験活動に関する知識

教育課程に関する知識

企画に関する知識と技術

自然体験の・意義・内容・安全管理 など

・教育課程とは

・体験活動の教育課程上の位置づけ など

・効果的なプログラムとは・企画書の作成

など

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-23-

運営力

指導者のスキル②

「計画に対して助言を行う」スキル②

場(所)のコーディネイト

調整する力人(指導者)のコーディネイト

・宿泊施設

・活動場所(農業体験,名所等の見学) など

・学校の教員と・施設の職員と・指導者と

など

・活動プログラムの指導者 など

指導力

自然体験活動に関する技術

目的に応じた指導方法に関する知識・技術

安全管理に関する知識・技術

指導者のスキル③

「活動時に全体指導を行い,活動全体の様子を把握する」スキル①

・自分自身ができるようになること(野外炊事,創作活動など)

・危険を回避する・事故に対応する(救急措置)

・仲間づくり・自然に親しむ・環境学習 など

指導力

教えることができる

できる

知 る

ちょっと,コーヒーブレイク

指導力

基礎的なスキル

指導者のスキル④

「活動時に全体指導を行い,活動全体の様子を把握する」スキル②

・話し方

(大きさ,口調など)

・立ち位置

・服装 など

専門的なスキル

・伝える→インストラクター(教える)

インタープリター(解説する)

・気付かせる→カウンセラー(よく聞く)

ファシリテーター(促す)

企画力

評価・方法に関する知識

児童を「みる」力(視る・観る・診る・看る)

指導力

指導者のスキル⑤

「終了後には,小学校が行う評価の際に助言を行う」スキル

・目標の達成度・原因の究明と改善策・定量的評価と定性的評価

など

・意識しないと見えない

・手は出さないが,目は離さない など

教育力

運営力企画力

指導力

指導者のスキル⑥

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-24-

指導者のスキル⑦

そんなこと「無理」だと思っていませんか?

研修の受講

補助指導者として活動

実務経験+研修

全体指導者として活動 学校教育における自然体験活動の意義

経験説

人間の心理的・行動的特質やその個性,認識や概念の

内容は,経験を通じて漸成的に形成されるという考え方。

生得説

人間または生物一般が示す諸形質(形態や行動あるい

は人間のもつ認識や概念など)は,環境の影響を受けな

がら漸成的に形成されるのではなく生まれつき内在する

遺伝的なものが自律的に発現したものとする考え方。

「心理学辞典」1999,1,25有斐閣

自然体験活動の必要性⑤

相互作用説

人間の発達や個人差の説明に関する「遺伝か環境

か」をめぐる議論のなかで,遺伝要因と環境要因が互

いにダイナミックに作用しあう点を強調する考えかた

の総称。これは両要因のいずれか一方を強調孤立要

因説や,両要因の統合性・全体性を強調する輻輳(ふ

くそう)説,あるいはそれぞれが独立に加算的に寄与

するという立場に替わる,現在 も妥当な説を考えら

れている。

「心理学辞典」1999,1,25有斐閣

自然体験活動の必要性⑥

「社会力」

・一つの社会を作り,その社会を維持し運営していく力。

・社会力は,「相互行為」によって身につく。

「相互行為」

・相手から働きかけられたその内容に影響されて行為を

返し,相手が自分に何らかの働きかけをするその内容

に影響を与える意図で相手に働きかけをする,という

行為の交換。

「子どもの社会力」 門脇厚司 1999,12,20 岩波新書

自然体験活動の必要性⑦

図23 ほめられたりしかられたりした経験と生活習慣,道徳観・正義感の関係

大人からほめられたりしかられたりした経験の多い小中学生には,生活習慣や道徳観・正義感が身に付いている者が多い。

「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」平成19年中央教育審議会

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-25-

※ 小4年生、小6年生、中2年生

※ 「生活習慣」と「道徳観・正義感」に関する質問への回答を得点化し,各々の子どもの得点を5段階に区分した上で,それぞれの質問項目の5段階得点と「ほめられたりしかられたりした経験」をクロス集計した。

独立行政法人国立青少年教育振興機構国立オリンピック記念青少年総合センター『「青少年の自然体験活動等に関する実態調査」報告書 平成17年度調査』(平成18年

自然体験の多い小中学生には道徳感・正義感の身に付いている者が多く,自然に触れることで学習意欲を喚起される者が多い。 図37 自然に触れる体験をしたとき勉強に対してやる気になるか

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-26-

■生活体験が豊かな子どもほど,道徳観・正義感が充実

「小さい子どもを背負ったり,遊んだりしたこと」,「ナイフや包丁で,果物の皮を

むいたり,野菜を切ったこと」といった生活体験の度合いと,「友達が悪いことを

していたら,やめさせる」,「バスや電車で席をゆずる」といった道徳観・正義感の

度合いを,それぞれ点数化してクロス集計したところ,「生活体験」が豊富な子ど

もほど,「道徳観・正義感」が身についている傾向が見受けられました。

■お手伝いする子どもほど,道徳観・正義感が充実

「食器をそろえたり,片づけたりすること」,「新聞や郵便物をとってくること」,

「ペットの世話とか植物の水やりをすること」といったお手伝いをしている度合い

と,「友達が悪いことをしていたら,やめさせる」,「バスや電車で席をゆずる」と

いった道徳観・正義感の度合いを,それぞれ点数化してクロス集計したところ,

「お手伝い」をしている子どもほど,「道徳観・正義感」が身についている傾向が

見受けられました。

子どもたちの心の成長には,地域での豊かな体験が不可欠

■自然体験が豊かな子どもほど,道徳観・正義感が充実

「チョウやトンボ,バッタなどの昆虫をつかまえたこと」,太陽が昇るところや沈む

ところを見たこと」,「夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たころ」といった自然体験

の度合いと,「友達が悪いことをしていたら,やめさせる」,「バスや電車で席をゆ

ずる」といった道徳観・正義感の度合いを,それぞれ点数化してクロス集計した

ところ,「自然体験」が豊かな子どもほど,「道徳観・正義感」が身についている傾

向が見受けられました。

「経験」と「体験」と「体験活動」①

経験:「人間と外界との相互作用の過程を人間の側から見ていう語。人間のあらゆる社

会的実践を含むが,人間が外界を変革するとともにまた自己自身を変化させる活動が

も基本的なもの。人間の直接にぶつかる現実。」(「広辞苑第四版」)とも定義され,本

答申では,人間が実際に見たり,聞いたり,行ったりすることを広く指して用いる。

体験:経験のうち,経験する者の能動性や経験の内容の具体性に着目して,能動的な

経験や具体的な経験を指して用いている。

体験活動:体験を通じて何らかの学習が行われることを目的として,体験する者に対し

て意図的・計画的に提供される体験を指して用いている。

体験活動の意味①

「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」中央教育審議会答申平成19年1月

「経験」と「体験」と「体験活動」②

体験活動の意味②

経 験

体 験

体験活動

なぜ,「体験活動」が必要か?

自然体験活動の意義

幼児期・学童期

思春期・青年期

「遊び」を通じて

仲間との関わりを通じて

家族・社会との

関わりを通じて

社会の変化 家庭の変化 体験活動

意図的・計画的

年齢期ごとの施策の基本的方向

乳幼児期

学童期

思春期

青年期

情愛的きずな,認知や情緒の発達

体力・運動能力,知識・経験,社会性

自分らしさの確立の模索,社会規範

自立した生活の営み,公共への参画

「青少年育成施策大綱」平成15年12月青少年育成推進本部

どんな体験が必要か④

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-27-

①「小学校長期自然体験活動指導者養成事業」実施の背景

長期宿泊による自然体験活動事業はこれまでも文部科学省の委託事業として、学校の

教育活動や青少年教育の事業として実施されています。

年代 事業名 概要

昭和 59 年 自然教室推進事業 小中学校:5 泊 6日程度

昭和 63 年 自然生活へのチャレンジ推進事業

-フロンティア・アドベンチャー事業- 学校外:10 泊程度のキャンプ

平成 5 年 青少年自然体験推進事業 学校外:6泊~10 泊程度

平成 11 年 子ども長期自然体験村 学校外:2週間以上の自然体験活動

平成 17 年 豊かな体験活動推進事業 小中高等学校:年間 7日以上

平成 18 年 都市と農山漁村の相互交流 学校外:相互に 1 週間程度の交流プロ

グラム

平成 19 年 サマーキャンプ 学校外:夏休みに 3~4週間

こうしたこれまでの事業成果を受け、平成 20 年度、長期集団宿泊活動・自然体験活動に

関する施策として、文部科学省スポーツ・青少年局青少年課が「青少年体験活動総合プラ

ン『小学校長期自然体験活動支援プロジェクト 自然体験活動指導者養成事業』」(以下、

「指導者養成事業」という。)を、文部科学省初等中等教育局児童生徒課においては、農林

水産省及び総務省との三省連携による「子ども農山漁村交流プロジェクト」(以下、「農村

交流」という。)が実施されました。

この指導者養成事業及び農村交流の特色は、全国の小学校が 1 週間程度の集団宿泊活

動・自然体験活動が展開できる環境を整備することで、その推進を図ることを目的にして

いるといえます。

こうした施策が実施された背景には、近年の教育法規の改正や各種答申等での提言があ

ります。

平成 18 年に改正された「教育基本法」では、新たに「教育の目標」(第 2 条)が規定さ

れました。この目標の中で、自然体験活動に関する条項として、以下のことをあげること

ができます。

教育基本法

第二条 (教育の目標)

四 「生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと」

そして、教育基本法の改正を受け、平成 19 年には「学校教育法」が改正され、教育目標

が見直されるとともに、「体験活動の充実」が規定されています。

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

(2)その他の資料

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-28-

学校教育法

第二十一条

二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに

環境の保全に寄与する態度を養うこと。

第三十 条

② 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な

知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必

要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む

態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

第三十一条 小学校においては、前条第一項の規定による目標の達成に資するよう、教

育指導を行うに当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉

仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合に

おいて、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなけ

ればならない。

こうした法律の改正を受け、政府の諮問機関等から、以下のような提言・答申が出ていま

す。

教育再生会議「社会総がかりで教育再生を-第 2二次報告-」(平成 19 年 6 月 1日)

○心と体-調和の取れた人間形成を目指す-

提言 2 様々な体験活動を通じ、子供たちの社会性、感性を養い、視野を広げる。

・小学校で、1週間の集団宿泊体験や自然体験・農林漁業体験活動を実施

・中学校で、1週間の職場体験活動を実施

・高等学校で、奉仕活動を必修化

経済財政諮問会議「経済財政改革の基本方針 2007~美しい国へのシナリオ~」

(平成 19 年 6 月 19 日)

○心と体の調和の取れた人間形成

・体験活動の推進

すべての子どもが自然体験(小学校で 1週間)、社会体験(中学校で 1 週間)、奉

仕活動(高等学校で必修化)を経験、そのための指導者の活動支援、専門高校や専

修学校等が地域社会と連携して行う特色ある職業教育の取組の積極的支援。

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

-29-

中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領

等の改善について」(答申)(平成 20 年 1 月 17 日)

5.学習指導要領改訂の基本的な考え方

(7)豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

(略)親や教師以外の地域の大人や異年齢の子どもとの交流、自然の中での集団

宿泊活動や職場体験活動、奉仕体験活動などの体験活動は、他者、社会、自然・

環境との直接的なかかわりという点で極めて重要である。

7.教育内容に関する主な改善事項

(5)体験活動の充実

(略)現在においても、学習指導要領上、小・中・高等学校の特別活動において

「旅行(遠足)・集団宿泊的行事」や「勤労生産・奉仕的行事」を行うこととな

っているが、今回の学習指導要領の改訂において、体験活動の重要性を一層明確

にし、その内容に即して小・中・高等学校でそれぞれ重点的に行う体験活動につ

いて記述することが必要である。

(略)これらの体験活動は、学期中や長期休業期間中に一定期間(例えば、1週

間(5日間)程度)にわたって行うことにより、一層意義が深まるとともに、教

育効果が期待されるものであり(略)

教育振興基本計画(平成 20 年 7 月 1日閣議決定)

生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ、社会性、規範意識などを育てる

ため、関係府省が連携して、小学校で自然体験・集団宿泊体験を全国の児童が一定期

間(例えば 1 週間程度)実施できるよう目指すとともに、そのために必要な体験活動

プログラムの開発や指導者の育成を支援する。

こうした提言・答申を受け、平成 20 年 3 月に告示された「小学校学習指導要領解説 特

別活動編」には、以下のことが明記されています。

小学校学習指導要領解説 特別活動編

第3章 各活動・学校行事の目標及び内容

第4節 学校行事

2 学校行事の内容

(4)遠足・集団宿泊的行事

(カ)宿泊を伴う行事を実施する場合は、通常の学校生活で行うことのできる教育

活動はできるだけ除き、その環境でしか実施できない教育活動を豊富に取り入

れるように工夫する。また、集団宿泊活動については、望ましい人間関係を築

く態度の形成などの教育的な意義が一層深まるとともに、高い教育効果が期待

されることなどから、学校の実態や児童の発達段階を考慮しつつ、一定期間(例

えば1週間(5日間)程度)にわたって行うことが望まれる。

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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②「青少年の意欲をめぐる現状と課題」

平成 17 年 6 月、中央教育審議会「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す

方策について」の参考になる項目は以下のとおりです。

なお、本答申は文部科学省のホームページに掲載されており、印刷が可能です。

1.青少年の意欲と行動の様相・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P14

(1)基礎的な体力の低下や不足

(2)青少年の価値観等と社会的期待の相違

(3)行動の段階でのつまづき

2.データが示す青少年の生活実態等の現状と課題・・・・・・P19

(1)生活の夜型化、朝食欠食などの基本的生活の乱れ

(2)希薄な対人関係

(3)直接体験の少なさ

(4)情報メディアの急速な普及に伴う問題

検索エンジンで「文部科学省」→「中央教育審議会」

→「青少年の意欲を高め心と体の相伴った成長を促す方策について」

と入力し検索

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/06092804/001/003.htm

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)

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セッション1 学校教育における体験活動の意義

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③「教師指導者のための農業体験学習 A to Z」(全国農村青少年教育振興会)

以下に、ホームページから一部を抜粋して掲載します。

http://www.nou-taiken.net

第 1章 農業・農村体験学習の教育的意義

~いま、なぜ農村体験学習が必要か~

農村体験活動は、子どもたちが班やグループなど小集団の形態の中で、豊

かな自然環境を背景に人と人とのつながりや自然との触れ合いを深め、農村

社会の中にとけ込みながら、勤労の尊さや意義を理解し、働くことや創造す

ることの喜びを実体験し、「生きる力」の資質や能力を身に付けることがで

きます。

1. 魅力ある農業・農村体験学習

(1)「地域の先生」が期待されている

(2)農山村が教育の場として注目を集める

2. 農業・農村体験学習のねらい

農業・農村体験学習のねらいと内容

3. 学校教育と農業体験学習

学校の教育活動全体を通した農業体験学習

4. 農業・農村体験学習の活動内容

農業・農村体験学習の活動にはどんなものがあるのか

5. 都会の子どもたちの受け入れ

グリーンツーリズム

小学校長期自然体験活動指導者養成研修

講師用ハンドブック(平成 21年度試行版)