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∪.D.C・る21.313.2.02る.447:〔る21.771:る21.31る.718〕
ダイバークレス大形直流電動機Dive爪erlessLargeDC Motors
可変速範囲の広い圧延機駆動用大形直流電動機は,ブラシから火花を発生し
ない領域である無火花帯の位置が,回転速度の増加によって移動する無火花帯
移動現象があるため,従来,外部補償装置を設けて補償していた。今回,直流
電動機の磁気回路をくふうすることにより,無火花帯移動現象を直流電動機自
体で補償できる外部補償装置不要のダイバータレス大形直流電動機を開発した。
その構成は,主極と補極間の補極鉄心先端側に磁性体から成る磁気ブリッジを
設けるもので,きわめて単純な構成である。470kW機および1,200kW機に適用
して検証した結果,計算どおり無火花帯移動現象を補イ賞できることを明らかに
した。
n 緒 言
圧延機用を主体とした大形直流電動機は,年々,単機大容
量化,高速化,小形・軽量化が図られ,また制御技術の進歩
によって電気的,機械的限界まで使用されるようになった。
この結果,整流的には厳しい運転条件となり,全運転領域で
ブラシから火花を発生しない無火花整流を達成することが困
難となってきている。直流電動機のよりいっそうの高性能・
高信頼性化を図るには,整流性能の向上が必須(す)条件とな
る。このため,すでに本誌にも述べたが,設計段階で整流性
能を定量的に評価できる整流計算方法,個々の整流コイルの
整流性能を等しくできるリアクタンス電圧均一化電機子,お
よび摩耗の少ない低抵抗ブラシを開発し,整流性能の向上を
図ってきた1),2)。一方,可変速範囲の広い大形直流電動機には,
固有の問題として低速運転時と高速運転時の無火花帯の位置
が異なる「無火花帯移動現象+を生じることが知られてい
る3),4)。その発生原割こついては,実験および理論解析上から
検討されてきたが,結果的には従来外部補償装置を付加して
対処している5),6)。
本稿では直流電動機システムの省スペース,省メンテナン
スおよび低コスト化を目的に,外部補償装置を省略するため
直流電動機自体で無火花帯移動現象を補償できる新補極構造
を考案した。また,計算および実機を通してその動作原理を
明らかにし良好な結果を得たので,以下にその概要とともに
述べる7)。
小原木春雄* 肋r"0〟0力βタ噂オ
田原和雄** ∬αZ〟0乃ゐα和
江藤哲生*** 乃f∫"〃gJ♂
凶 無火花帯移動現象とその補償方式
2.1概 要
大形直流電動機では,図】(a)に示すように低速運転時の無
火花帯の位置に対し,高速運転時の無火花帯の位置があたか
も補極が強〈なるように下側(減励磁側)へ移動する現象が発
生する。これを無火花帯移動現象と称している。何ら補償を
行わない場合,低速運転時には負荷電流の横軸上に無火花借
が存在するので,ブラシから火花を発生しない。しかし,高
速運転時では,負荷電流の横軸上から無火花帯が外れる同図
(a)のA点以上の負荷電流では,ブラシから火花を発生する。ブ
ラシからの火花の発生は,ブラシ摩耗を増加してメンテナン
スの時期を早めるとともに,ブラシ周りの整流トラブルを発
生しやすくなるなどの問題を生じる。なお,無火花帯を回転
速度を横軸にとって表すと,同図(b)のようになる。
無火花帯移動現象の補償方法については,種々提案され,
最近実用された方式を代表例として図2に示す。従来の直流
電動機は同凶(a)に示すように,補極の根元に補極巻線とは差
動に作用する補助補極巻線を設け,これに外部補償装置から
電流を供給する構成である。外部補償装置は,無火花帯の中
心線に沿って補助補極巻線電流勿を供給し,無火花整流を達
成する。これに対し,外部補償装置を不要化した直流電動機
を便宜+L「ダイバータレス直流電動機+と呼称する。
ダイバータレス直流電動機は,同図(b)に示すように,主極
と補極間の補極鉄心先端側に磁性体から成る磁気ブリッジを
設けるもので,きわめて単純な構成である。磁気ブリッジは
界磁巻線と補極巻線の起磁力差を利用し,主極と補極間の漏
*H立製作所日立研究所 **口立製作所H立研究所工学博_卜 ***H立製作所 日立工場
77
662 日立評論 VOL.72 No.7(朋0-7)
(+)
0
胤媒絆⊂月慣澄渡
(-)
時転運速監
士凡戦荷負
時転運速舌同
(a)負荷電流に対する無火花帯
+
0
棟侭田岩崎澄渡
(-)
度速転[且
(b)回転速度に対する無火花帯
図I無火花帯移動現象 回転速度に対して,無火花帯の位置が移動する無火花帯移動現象の説明図を示す。
項目 (a)従来の直流電動機 (b)ダイバークレス直流電動機
補助補極巻線
極、王 爪粉矧凶
阿州U[㈲〓U
阿州U爪び 外部
補償装置主極蔭閻
補極
囲⑳
磁気ブリッジ
成
,仲+
無
火
-化
帯 0
喋伊喪神螢鮭奄軽
(-)血
rlP
注:ル(補助補極巻線電流)
回転速度
・JP+
棋伊渡瀬螢檻奄簿
(-)わ
度速転回
ふ
図2 無火花帯移動現象とその補償方式 外部補償装置を用いた従来の直流電動機と,磁気ブリッジにより外部補償装置を省略できる
ダイバークレス直流電動機の構成比較を示す。
78
れ磁束を変化させて補極ギャップ磁束を調整し,無火花帯を
回転速度の横軸上に存在させるように作用する。したがって,
ダイバータレス直流電動機は,従来方式に対し補助補極巻線
や外部補償装置を省けることから,省スペース,省メンテナ
ンスによる高信頼性および低コスト化を達成することができ
る。
2.2 ダイバークレス直流電動機の原理
無火花帯移動現象を補償するには,回転速度の増加に応じ
て補極磁束を減少させればよい。そこで,大形直流電動機で
は低速運転から高速運転までの速度変化を,界磁巻線起磁力
の大きさで調整することに着目し,磁気ブリッジを設けた新
補極構造を考案した。新補極構造から成るダイバータレス直
流電動機の原理を図3に示す。ここで,同極の主極と補極間
に設けた磁気ブリッジを磁気ブリッジⅠ,異極間に設けた磁
気ブリッジを磁気ブリッジⅡとする。
その原理は図3中に示すように,全界磁の低速運転時には
界磁巻線起磁力A71を補極巻線起磁力ATよりも大きく設定
する。これにより,鎖線で示す界磁鉄心中を通る主磁束の一
部が磁気ブリッジⅠ側を通って補極磁束となり,補極ギャッ
プ磁束¢′ゞが増加する。弱め界磁の高速運転時には,起磁力
Aちを起磁力ATよりも小さく設定する。これにより,鎖線で
示す補極鉄心中を通る補極磁束の一部が,磁気ブリッジⅠ側
ダイバークレス大形直流電動機 663
を通って主磁束となり,補極ギャップ磁束かが減少する。す
なわち,ダイバータレス直流電動機は,界磁巻線起磁力と補
極巻線起磁力の大小の関係を利用して,磁気ブリッジⅠ側を
通る漏れ磁束の方向と大きさを変化させることにより,補極
ギャップ磁束の大きさを調整して無火花帯移動現象を補償す
るものである。
磁気ブリッジを通る漏れ磁束の調整は,磁気ブリッジの厚
みや磁気ブリッジと界磁鉄心間のギャップ長を変化して行う。
最適な漏れ磁束を得る磁気ブリッジの設計定数は,磁路仮定
法による磁界計算では高精度の漏れ磁束算出が難しいことか
ら,二次元の有限要素法による磁界解析を行って決定した。
2,000kW機および470kW機の磁束分布の計算結果を図4
に示す。磁気ブリッジⅠ側を通過する漏れ磁束の方向は,同図
(1)の2,000kW機およ川2)の470kW機とも,同図(a)の低速運転
時(仝界磁)の場合は主趣から補極へ,同図(b)の高速運転時(弱
め界磁)の場ノ釧ま補極から主極へとなっていることがわかる∂
以上述べたダイバータレス直流電動機の原現,および動作
を磁界解析で明らかにしたので,実機に適用して検証した。
B 実機確認結果
ダイバータレス直流電動機は,すでに多数台に適用してい
る。ここでは,表1に示す仕様の470kWおよび1,200kW直流
補極鉄心
■■-一一一-■
補極巻線
磁束流れ図 紛
磁気ブリッジⅠ
補極∩
■■一-----■
日ー
■■-・■■
電機子
ノ
ソ′
(U
補極ギャップ磁束如
界磁巻線
界磁鉄心
/
磁気ブリッジⅠⅠ
如>如
、三極N(紗回
-愉悼川ト [=日
-J■・、
八嘲/
、■ Jl
補極ギャップ磁束如
/
′王極巳
/
項 目 低速運転時(全界磁) 高速運転時(弱め界磁)
ダイバータレス化の条件(1)低速運転時:界磁巻線起磁九4丁ン>補極巻線起磁力Ar
高速運転時:界磁巻線起磁力.4乃<補極巻線起磁九471
(2)磁気ブリッジの厚み 1
磁気ブリッジと界磁鉄心間ギャップ長lの最適化
図3 ダイバータレス直流電動機の原理 低速遷幸云時と高速運転時での磁気ブリッジⅠ,Ⅱを通る漏れ磁束の流れ方向を利用した,ダイバーク
レス直流電動機の原理説明図を示す。
79
664 日立評論 VOL.72 No.7=990--7)
項目 (a)低速運転時(全界磁) (b)高速運転時(弱め界磁)
1、半
磁気ブリッジⅠ
(1)
2,000
kW機
リー・.〓\い1し・■.\1〓、1.\ヰ
磁束の流れ方向
磁気ブリッジⅠⅠ
→
/
′′′(\\=\
磁気ブリッジⅠ
イ←・・-
よ
磁気ブリッジⅠⅠ
一---一寸ト
ノ
L
磁気ブリッジⅠ
→
(2)
470
kW磯
≧:ぢ磁気ブリッジⅠⅠ
----一寸ト
磁気ブリッジⅠ
イー
〓〓〕〆.→
-.い、\
\\
試酬
磁気ブリッジⅠⅠ
一---一寸ト
==二二二=二二こ=ニ)
図4 ダイバークレス直流電動機の磁束分布(100%負荷時) 磁気ブリッジを設けた2′000kW磯および470kW機の磁界解析による磁束分布を示
す。
表l 対象機の主な仕様と設計定数 磁気ブリッジは470kW機
が厚み6mm,l′200kW機が厚み9mmと比較的薄いもので,軟鉄で構成
した。
項 目 470kW機 l′200kW機
出 力 (kW) 470 し200
電 圧 (〉) 440 l′200
電 流 (A) l.200 し川0
回 転 速 度(「/min) 400/し525 210/860
極 数 6 6
磁気ブリ ッジの厚み(mm) 6 9
磁気ブリッジギャップ長(mm) ll 10
80
電動機への適用結果を示す。磁気ブリッジは図5(a)に示すよ
うに,補極鉄心先端部に数個所ボルトで固定し,同図(b)に示
すように主極と補極間に配置した。
3.1補極飽和特性
470kW直流電動機の補極飽和特性を図6に示す。ここで,
実線は実測値,鎖線は計算値である。同図から磁気ブリッジ
のない原設計機の場合は,実測値および計算値とも仝界磁と
弱め界磁の補極ギャップ磁束量がほぼ同じであることがわか
る。これに対し,磁気ブリッジを設けたダイバータレス直流
電動機の場合には,実測値および計算値とも全界磁よりも弱
め界磁での補極ギャッ70磁束量が負荷電流の増加に比例して
ダイバークレス大形直流電動機 665
磁気ブリッジ
(a)補極
図5 470kWダイバークレス直流電動機の磁気ブリッジの取付状況
の固定子組込状況を示す。
×10`3
10
5
(∈\コ主)
榊僻頒0卜>キ恥骨楚
注:一実測値
--一計算値
原設計磯
\グ
7
○
′
′
/
/′
/
7
7
/
y
/
′
′
/
′
′
′
/
♂
劾′
/
//
笥/
全界磁弱め界磁 の場合
全界磁の場合
弱め界磁の場合
ダイバークレス直流電動機
50 100
負荷電流率(%)
図6 470kW直涜電動機の補極飽和特性 磁気ブリッジのない原設
計機と磁気ブリッジを設けたダイバータレス直流電動機の補極磁束量の
実測値と計算値を比較して示す。
小さくなる。磁気ブリッジを通過する漏れ磁束による磁気ブ
リッジ先端の磁束密度を図7に示す。ここで,磁束密度は主
極Nから補極nおよび補極nから主極Sへ通過する漏れ磁束を正
として示している。同図(a)の全界石盗の場合は,磁気ブリッジ
Ⅰ,Ⅱの先端の磁束密度がともに正である。これに対し,同
(b)固定子
補極鉄心先端への磁気ブリッジの取付状況,磁気ブリッジを言引ナた補極
50
(ト)雌軸状瑠G背ポヘヽニート蝦讃
0.5
0
(←)雌僻鵬瑠G強ボヘ>「r卜蝦櫻
0.5
一一一一一■一一
磁気ブリッジ1I
。_J⊥0一一一一一‾‾‾
二≡㌣もー-、-、、、、磁気ブリッジⅠ
---一計募債
50 100 150
負荷電流率(%)
(a)全界磁の場合
磁気ブリッジⅠⅠ
ム妄一一一一
一一一一一一一′
一一一一
\或5。1。。15。磁気ブリッジⅠ
\\
\\
\
\
\
注:-実測値 \
\
負荷電流率(%)
ヽ、
---一計算値\\
ヽ、
ヽ、
ヽ、
ヽヽ
(b)弱め界磁の場合
図7 470kWダイバークレス直流電動機の磁気ブリッジ先端の磁束密度 仝界磁と弱め界磁の場合での負荷電流に対する磁気ブリッジ先
端の磁束密度の変化を示す。
81
666 日立評論 VOL.72 No.7(1990-7)
60
04
02
(訳)併蝶柳眉慣滑津
-20
\
●
q
\\
\
\
\
\\
\\
\
\
500\\●
注:-実測値
--一計算値
ダイバークレス直流電動機
ヽ、
ヽく
1,000 ○--01,500
回転速度(r/min)\\
覧(100%負荷時)
\ヽ、
こ=二二こ:、
原設計機
「■ 、
図8 470kW直流電動機の無火花帯 磁気ブリッジのない原設計機
と,磁気ブリッジを設けたダイバークレス直流電動機の無火花帯を比較
して示す。
図(b)の弱め界磁の場合の磁束密度は,磁気ブリッジⅡ側につ
いては正のままであるが,磁気ブリッジⅠ側については負荷
電流の増加とともに正から負へ方向反転していることが確認
できた。なお,計算値と実測値はよく一致している。
3.2 無火花帯
470kW直流電動機の無火花帯を図8に示す。無火花帯の計
算値は整流計算を行って求めた。原設計機の場合は,回転速
度の増加に伴って無火花帯の位置が減励磁側へ移動するため,
無火花整流を達成するには外部補償装置を必要とする。これ
に対し,磁気ブリッジを設けたダイバータレス直流電動機の
場合は,無火花帯が回転速度の横軸上に存在する。また,無
火花帯の計算値は実測値とよく一致している。1,200kWダイ
バータレス直手先電動機の無火花帯の実測結果を図9に示す。
1,200kW機でも磁気ブリッジを設けることにより,無火花帯
が回転速度の横軸上に存在する。これにより,ダイバータレ
ス直流電動機は,外部補償装置を省略できることが検証でき
た。
S2
80
04
0
(訳)煉棋紆□弔悼螢建
04一
-80
○---、
○
\回転速度(「仙∩)
、○-・
\0■
200 400 6
。/。/
三L一一瞥○‾1・000
(100%負荷時)
図9l′200kWダイバータレス直涜電動機の無火花帯の実測結果
磁気ブリッジを設けたl′200kW機の無火花帯の実測結果を示す。
山 緒 言
無火花帯移動現象を補償するための外部補償装置を省略で
きるダイバータレス直流電動機の原理を述べるとともに,470kW
機および1,200kW機に適用し,その有効性を明らかにした。
なお,この電動機はすでに多機種,多数台に適用され,現在
順調に稼動中である。
参考文献
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61,7,487~490(昭54-7)
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137~140(昭58-2)
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電気学会論文誌,103-B,1(昭58-1)
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10,897~900(昭44-10)
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108,942(昭63-10)
6)仲村,外:大形直流機における整流改善のインテリジェント化
について,電気学会論文誌D,110,534(平2,5)
7)小原木,外:ダイバータレス直流機の実用化検討,電気学会全
国大会,700(平2-3)