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5 回アジア スマートシティ会議 報告書 2016.11.18 YOKOHAMA

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第5回アジア • スマートシティ会議

報告書2016.11.18

YOKOHAMA

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記録写真

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目 次

開催概要

アジェンダ

参加者一覧

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アジェンダ

参加者一覧

議事要旨

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Thematic Meeting3Showcase of financial arrangement

for smart city development

Thematic Meeting3Showcase of financial arrangement

for smart city development

Thematic Meeting1Thematic Meeting1Showcase of best practiceof smart city managementShowcase of best practiceof smart city management

Thematic Meeting2Thematic Meeting2Showcase of private sector technologiesand solutions for smart city developmentShowcase of private sector technologiesand solutions for smart city development

Thematic Meeting4Knowledge management

for smart city development

Thematic Meeting4Knowledge management

for smart city development

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Asia Smart City Conference

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開催概要

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アジェンダ

参加者一覧

議事要旨

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アジェンダ

参加者一覧

議事要旨

記録写真

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日  時 2016 年 11 月 18 日(金) 9:30~17:00

250 名(延べ人数)

会  場 ヨコハマグランドインターコンチネンタル(横浜市西区みなとみらい 1-1-1)

主  催 横浜市

後  援 内閣府、外務省、財務省、環境省、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、独立行政法人国際協力機構(JICA)、横浜市立大学

会議概要

参加者数

第一分科会スマートシティ経営のベストプラクティス

第三分科会スマートシティ開発のための資金

第四分科会あるべきスマートシティ開発に向けたナレッジ・マネジメントの方向性

第二分科会スマートシティ開発における民間の技術・ソリューション

ランチ • ビジネスマッチング

オープニングセッション、記念撮影

09:30-12:00

ランチ会場において横浜市内企業等による技術やサービスの展示を行い、会議参加者とのビジネス・マッチングが行われた。

12:00-14:00

クロージングセッション第5回アジア・スマートシティ会議宣言(横浜宣言)

16:40-17:00

ラウンドテーブルセッションモデレーター:

パネリスト:

15:00-16:40

14:00-14:40

14:40-15:00

ネットワーキングブレイク

分科会(四分科会を同時開催)

ランチ

全体会議

01 開催概要 02 アジェンダ

 環境未来都市である横浜市では、アジア新興国諸都市の市長や国際機関等の有識者が一堂に会し、持続可能な都市づくりの実現に向けた知見を共有する「アジア・スマートシティ会議」を平成24年から開催している。 第5回となる今年のアジア・スマートシティ会議では、46都市の市長を含む代表者や、日本政府、国際機関、学術機関、民間企業など多くの組織・機関からの参加があった。 午前中に行われた四つの分科会、午後に行われた全体会議を経て、会議で議論した内容を「第5回アジア・スマートシティ会議宣言(横浜宣言)」としてまとめ、同日中にCOP22において紹介した。 昼食会場では、横浜市内企業等による技術やサービスの展示を通じて、アジア・スマートシティ会議参加者とのビジネス・マッチングが行われた。 会議に先立ち、11月16日(水)には、横浜市の施設である北部下水道センター、鶴見工場、川井浄水場の視察が行われた。 併催イベントとしては、下記三つのイベントが11月17日(木)に開催された。 ・横浜市主催「第17回Y-PORTワークショップ」 ・横浜市・公益財団法人横浜企業経営支援財団(IDEC)共催「第  50回アジア開発銀行年次総会 横浜開催記念:アジア・インフラ  ビジネスセミナー」 ・世界銀行主催「世界銀行スマートシティ会議」

Y-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問Mary Jane Crisanto Ortega

Y-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表Alfonso Vegara

Y-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員Bindu Nath Lohani

アジア開発銀行(ADB)持続的開発・気候変動局 上級部長Gil-Hong Kim

世界銀行 都市管理 グローバルリードBarjor Mehta

国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)福岡本部(アジア太平洋担当)人間居住専門官Laxman Perera

横浜市温暖化対策統括本部 環境未来都市推進担当部長秋元 康幸

地球環境戦略研究機関(IGES)所長 森 秀行

開会挨拶

基調講演

基調講演

横浜市長 林 文子

環境省 地球環境局長 鎌形  浩史

外務省 外務大臣政務官 小田原 潔

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開催概要

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アジェンダ

参加者一覧

議事要旨

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アジェンダ

参加者一覧

議事要旨

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■ フィリピン  ■ コンポステラ市

Joel Pareja Quiño■ バングラディシュ  ■ 北ダッカ市

Mohammad Abdur Razzak

< 都市 > (国名アルファベット順)

- World Bank Technical Deep Dive

Perla Tumulak Amar■ フィリピン  ■ ラプラプ市

03 参加者一覧

Teresa Pepito Alegado ■ フィリピン  ■ コンソラシオン市

行政長官

Shaik Aleem Basha■ インド  ■ カキナダ市

副行政長官

■ カンボジア  ■ プノンペン特別市

Lim Vichet

行政局副局長

■ インド  ■ アンドラ・プラデシュ州

Ramakrishnan Karaikal Valaven

都市行政・都市開発省主席行政官

Vasant Premanand Prabhu■ インド  ■ ムンバイ市

Bahagia■ インドネシア  ■ バンダ・アチェ市

石田 謙悟 

環境局 環境国際戦略担当理事

■ 日本  ■ 北九州市

Ye Lwin■ ミャンマー  ■ マンダレイ市

Rudra Singh Tamang■ ネパール  ■ カトマンズ市

Maria Adelaida Coloma Lacsamana■ フィリピン  ■ バギオ市

Nicepuro Lauron Apura■ フィリピン  ■ カルカル市

Mae Elaine Tantengco Bathan■ フィリピン  ■ マンダウエ市

Evelyn Nacario Castro■ フィリピン  ■ ミングラニア市

メトロセブ開発調整委員会(MCDCB)調査プログラム組織開発プログラム・マネジメント部 部長

Kristine Vanessa Tadiwan Chiong■ フィリピン  ■ ナガ市

Dominica Bardinas Chua■ フィリピン  ■ セブ州

Lakambini Generans Reluya■ フィリピン  ■ サンフェルナンド市

Eduardo Rivera Gullas■ フィリピン  ■ タリサイ市

I. V. P. Dharmawardhana■ スリランカ  ■ コロンボ市

Vallop Suwandee■ タイ  ■ バンコク都

Dang Viet Dung■ ベトナム  ■ ダナン市

Do Minh Quang■ ベトナム  ■ フエ市

林 文子■ 日本  ■ 横浜市

平原 敏英■ 日本  ■ 横浜市

秋元 康幸 

温暖化対策統括本部 企画調整部 環境未来都市推進担当部長

■ 日本  ■ 横浜市

Claudia Namishan Labbe■ チリ  ■ グラン・コンセプシオン市

Sebastian Ordoñez Holguin■ エクアドル  ■ キト市

都市マネージャー

市長 市長

都市環境・公園管理オフィサー 市長

メトロセブ開発調整委員会(MCDCB)調査プログラム組織開発執行委員会 副委員長 市長

市長 獣医部 主任獣医

バンコク都知事最高顧問 人民委員会 副委員長

副市長

市長

Ahmed Bin Parvez

Omar bin abdal Aziz

Constanza Beatriz Pacheco

世界銀行 社会都市・農村開発・強靱性分野南アジア地域 プロジェクト・アナリスト

■ バングラディシュ  ■ 南ダッカ市

■ バングラディシュ  ■ 南ダッカ市

■ チリ  ■ グラン・コンセプシオン市

チリ経済開発公社(CORFO)大都市圏部 部長

チリ交通通信省スマートシティ担当プロジェクト・マネージャー

市長室 秘書官/首席補佐官

市長

都市計画・開発コーディネーター

水環境向上プロジェクト管理部 副部長

市長 廃棄物処理部 固形廃棄物処理担当

市議会議員

市長顧問市長

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- ADB Water Operators Partnerships

■ インド  ■ ボパール市

Cheeran Unny Roy

< 日本政府 >

高畠 昌明■ 内閣府

小田原 潔 

外務大臣 政務官

■ 外務省

Rehman Roshan Baig■ インド  ■ パナジ市

Najib Ouradi■ モロッコ  ■ カサブランカ市

Flávio Sancho de Almeida■ モザンビーク  ■ マプト

Takalani Edward Rathiyaya■ 南アフリカ  ■ ダーバン市

Macricia Auguste-Bushell■ セントルシア  ■ カストリーズ市

Lotfi Ben Said■ チュニジア  ■ チュニス

久島 直人

副長官補付内閣参事官

■ 内閣官房

今福 孝男

国際協力局 開発協力総括課長

■ 外務省

土谷 晃浩

国際局開発機関課課長

■ 財務省梅田 英幸  

産業技術環境局 リサイクル推進課 課長補佐

■ 経済産業省

石川 亨 

都市局総務課国際室長

■ 国土交通省

鎌形 浩史

地球環境局局長

■ 環境省

マディヤ・プラデシュ州都市行政開発局 副局長

カルナタカ州都市開発 • メッカ巡礼大臣 カーサ • プレスタシオンズ IT・デジタル変革部副部長

国立 ICT 研究所(INTIC)IT・インフラ・アクセス部 部長

経済開発・投資促進部 副部長

セントルシア経済開発省エコノミスト チュニジア地方自治・環境省 局長

地方創生推進事務局参事官

Swayandipta Pal Chaudhuri

イマジン・パナジ・スマートシティ開発社 代表取締役

■ インド  ■ フブリ・ダールワール市

Sitha Sim

Folkert Geert Jan De Jager

Rodora Navarro Gamboa

Maidy Lynne Bautista Quinto

Thatsit Sakulpong

Harold William Perry

Nguyen Minh Tuan

Arttachai Ketrattanabovorn

Seru Maivuniwi Soderberg

Phomma Veoravanh

Abdul Gaffoor Irshadh

Khoi Ngoc Pham Nguyen Van Thuan

Pamela Ann Elardo

■ カンボジア  ■ プノンペン市

プノンペン水道公社 局長

■ フィジー  ■ ナシヌー市

フィジー水道庁 計画設計部 副部長

■ ラオス  ■ ヴィエンチャン市

ラオス公共事業・運輸省 水道部 部長

■ フィリピン  ■ パンパンガ州

マニラ・ウォーター クラーク水道公社 本部長

■ フィリピン  ■ ケソン市

マイニラッド水道サービス社 水道アカデミー 副校長

■ スリランカ  ■ コロンボ市

技術部 排水技術担当 副部長

■ タイ  ■ バンコク都

メトロポリタン水道公社 水道教育開発部 部長

■ タイ  ■ バンコク都

メトロポリタン水道公社 水道教育開発部 エンジニア

ヴィテンス・エヴィデス・インターナショナルアジア地域マネージャー

天然資源・公園部 下水道課 インフラ・コーディネーター

水道局 環境保全部 副部長 ハイフォン下水排水公社 代表取締役

サイゴン水道公社 法人管理部 副部長 ワン・メンバー社 クアンビン都市環境開発部長

■ オランダ  ■ ズヴォレ市 ■ アメリカ  ■ キング部

■ アメリカ  ■ ニューヨーク市 ■ ベトナム  ■ ハイフォン市

■ ベトナム  ■ ホーチミン市 ■ ベトナム  ■ クアンビン省

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参加者一覧

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<Y-PORT センター・アドバイザー >

< 国際機関 >

< 大学 >

< 民間企業 >

Barjor Mehta

Bindu Nath Lohani

岡田 素行 ■ 株式会社 ファインテック

森 尚樹

プログラム・マネージメント・オフィス持続可能なファイナンス担当シニアコーディネーター 上席研究員

森 秀行 

所長

■ 地球環境戦略研究機関(IGES)■ 地球環境戦略研究機関(IGES)高橋 元

海外統括本部マーケティング部部長

首藤 勉  

事業推進部マネージャー

■ 株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 (JOIN)

■ JFE エンジニアリング株式会社

島村 豊臣 

公共・金融法人部部長

■ 株式会社三井住友銀行Gil-Hong Kim■ アジア開発銀行(ADB)

■ Y-PORT センター・アドバイザー

Amr J. Qari ■ アジア開発銀行(ADB)

インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部ユニット長

■ 国際協力銀行 (JBIC)岸岡 雅士 

社会基盤・平和構築部技術審議役

■ 国際協力機構(JICA)

岩間 敏之 

Laxman Perera

福岡本部(アジア太平洋担当)人間居住専門官

■ 国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)

村上 秀樹

東京投資・技術移転促進事務所次長

■ 国際連合工業開発機関(UNIDO) ■ 世界銀行

Daniel Levine■ 世界銀行

井村 秀文■ 横浜市立大学

小山 朝英

ストラクチャードファイナンス部 プロジェクトファイナンス室アジア・オリジネーション・チーム 調査役

■ 株式会社三菱東京 UFJ 銀行

周 磊 

自動車セクター執行役員 パートナー

■ デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

櫻井 秋久

コグニティブソリューション 技術理事

■ 日本アイ・ビー・エム株式会社

William Edwards

IKEA 港北ストアマネジャー

■ イケア・ジャパン株式会社

吉田 太輔 

グローバル SI サービス事業開発本部本部長代理

■ 日本電気株式会社

宮原 智彦

ビジネスソリューション本部 CRE 事業推進部部長

■ パナソニック株式会社

石井 亮 

都市ソリューションセンターマネージャー

■ PwC アドバイザリー合同会社

Stuart Robert Kay■ グリーンプレース・アセッツ

Mary Jane Crisanto Ortega

Alfonso Vegara 廣野 良吉

成蹊大学 名誉教授

持続的開発 ・気候変動局上級部長 官民連携部 主席官民連携専門官

代表取締役

都市管理 グローバルリード

東京開発ラーニングセンター(TDLC)シニア・オペレーションズ・オフィサー/チームリード

グローバル都市協力研究センター特任教授

チーフ・サステナビリティ・オフィサー

アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

■ Y-PORT センター・アドバイザー

ファウンダシオ・メトロポリ代表

シティネット特別顧問

■ Y-PORT センター・アドバイザー

■ Y-PORT センター・アドバイザー

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 この分科会には、私を含め14名のプレゼンターが参加される。 テーマは、持続可能な都市開発のための都市間連携である。

04 議事要旨

Dang Viet Dungダナン市人民委員会 副委員長

  ダナン市と横浜市は、廃棄物や下水などの環境問題への対策や都市計画、スマートな交通システムをはじめとしたインフラ開発など、都市ソリューションについて3年間協力を続けている。 都市レベルの協力は、最も効率の良いモデルである。規模が小さいため、対応すべき重要事項を特定しやすく、解決策を容易に実行できることから、協力スキームとして望ましい形である。来月には、両市は第5回目のフォーラムを開く予定であり、環境に優しくスマートな都市になるため、ダナン市における都市化の課題と解決策について更に議論していく。

 今日は日本の循環型社会構築に向けた取組と、都市への期待についてお話ししたい。リサイクル政策を推進するに当たり、都市の役割が非常に重要である。 少し前の政策で、各自治体にリサイクル設備を集約するエコタウンプランを作成してもらい、経済産業省と環境省がそのプランを承認して、設備に補助金を出すエコタウンプロジェクトというものがあった。現在、国際的なテーマとなっている、産業共生のはしりだ。 途上国では、不適切な廃棄物処理が行われている現状があり、このような問題への対処に重要なのが、自治体間の協力であり、法規制を含めた適切なリサイクル制度の導入である。 2016年度から行っている政策で、ポリシーダイアログによる制度構築支援と技術実習により、ハード、ソフトの技術をパッケージとして提供する事業がある。また、今後は、各都市の状況を診断するカルテのようなサステナビリティ指標を作成し、各都市に適切なソリューションをパッケージで提供したい。

 2016年10月にエクアドルのキトで、第3回国連人間居住会議が開かれた。この会議は20年ごとに行われ、世界的な開発アジェンダを議論する場であり、今回の会議では持続可能な都市化を推進するためのビジョンと責務が採択された。 都市化が急速に進む中、ニュー・アーバン・アジェンダは都市とスマートシティの取組に注目するとともに、都市ソリューションに向けた都市間の協力も大切だとしている。 持続可能な開発目標11とスマートシティに関して言うと、eガバメントのソリューションが住宅サービスに対応できるだろうし、スマートな都市輸送、都市計画へのICTプラットフォームの応用、文化・自然遺産の保存にオープンなコミュニケーションを行うことも可能だ。 また、アジア太平洋地域では防災が大切で、ICTで災害に備え、強靭な都市になることができる。 大事なことは、グローバルなシナリオや国レベルの政策にも目を向け、持続可能な都市化に向けて民間セクターや都市のパートナーシップを持つことである。

 我々は、国際技術協力のプラットフォーム「Y-PORTセンター」のメンバーで、このセンターは横浜市と、日揮などの横浜市にある大企業、CITYNETなどの機関、そして高い技術をもった横浜市の中小企業10社が属する横浜アーバン・スマート・ソリューション・アライアンスが属し、さらには日本政府、JICA、各種協議会などと連携している。 横浜市は、フィリピンのセブ市、ベトナムのダナン市、タイのバンコク都、インドネシアのバタム市と都市間連携を結んでおり、各都市においてビジネスマッチングを行っている。我々はそのマッチングに参加する中で、例えばJCM(二国間クレジット制度)の事業としてタイのバンコクの

 内閣府は、21世紀の共通課題である環境、超高齢化の解決に向け、比類なき成功事例を創出し、それを国内外に普及展開して、国際課題解決力の強化を図る、環境未来都市構想を推進している。現在、横浜市を含め日本の11都市が選定され、各都市の取組に対して政府として財政措置や規制制度改革を行うとともに、定期的なフォローアップを行っている。この構想の目指す都市像は、人間

高畠 昌明内閣府地方創生推進事務局 参事官

分科会第一分科会

「スマートシティ経営のベストプラクティス」

Laxman Perera国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)福岡本部(アジア太平洋担当)人間居住専門官

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

梅田 英幸経済産業省 産業技術環境局リサイクリング推進課課長補佐

岡田 素行株式会社ファインテック代表取締役

モデレーター

スマートシティ経営のベストプラクティスを学ぶ時、自市にも取り入れたいと思わせる要因は何か?

ベストプラクティスを取り入れる際、どんな課題に直面するだろうか?事業コストか、職員の能力か、市民の賛同か、あるいは他の原因か?

都市間連携のより良い手法は何か(例:南南連携、北南連携、二都市間連携、他都市間連携等)? 三都市間連携はどうだろうか?

中心の新たな価値を創造する都市というものである。 さらに、国内外の都市の連携を促進し、様々なベストプラクティスや成功へのプロセスを共有して、国際的な知のプラットフォームを構築しようとしている。この知の交流の場として、これまで国際フォーラムを国内外で8回開催している。

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 ネパール政府は2015年に新しいICT政策を立ち上げ、カトマンズ市でも採用している。ICTは経済成長を促し、市民の生活の質を向上し、eガバナンスによるサービス・プラットフォームを推進するツールである。オンラインサービスによりペーパーワークを80%なくしたいと考えている。市民向けに二つのモバイルアプリも提供している。 また、廃棄物の分別も外国のパートナーと協力している。さらに、再生可能エネルギーにも取り組んでおり、2015年の地震で壊れた建物の屋上に太陽光パネルを設置することでエコエネルギーのビルに改築していく。市内では太陽光ミニグリッドのプロジェクトも進んでいる。 スマートシティには、スマートな市民が不可欠である。また、新しいことを導入するには、行政が力強いリーダーシップをとることが必要だ。

 都市課題の解決には様々なレベルでの連携が重要である。メトロセブ開発調整委員会は、JICA、横浜市の支援を受け、メガセブビジョン2050に基づき持続可能なメトロセブの都市開発のためのロードマップを策定した。これは、都市の競争力、都市部の土地利用、高速道路と公共輸送、上下水道、雨水管理、廃棄物管理、エネルギー管理、そして都市のガバナンスをカバーしている。 その中の優先課題は、交通の向上だ。メトロセブでは交通渋滞がひどいが、それを教育面で解決しようと、メガセブ・トラフィック・エンフォースメント・アカデミーを設立した。これは、フィリピン国内の他の自治体には見られないユニークなものだ。

 当市は、カレッジを運営しており、貧しい人でも市から援助を受け、入学できる。1,000人以上が通学しており、教育、政治学、ビジネスマネジメント、ホテル・レストラン学、会計を勉強している。このカレッジの目的は、若者の能力向上による貧困削減で、既に貧困率を27%から15%に削減した。また、メトロセブの一員として、セブの中心部に行かなくても地元で教育を受けられることは、交通渋滞の解消にも一役買っている。自立したコミュニティの形成に向けて、商業・産業への投資も促進している。

 インド政府がスマートシティイニシアティブを立ち上げ、選ばれた100都市のうち、3都市が当州内にある。 当市のサービスは、ICTからIoTに、eガバナンスからモバイルガバナンスに移行しつつある。また、生活の質を向上させるインフラを提供することにより、民間の投資を誘致し、持続可能な財政を実現している。さらに、経済のマスタープランを策定するとともに、都市のブランド化を進めている。 当市のスマートシティは、市民中心で、市民が開発プロセスに参加する。モバイルアプリが市民参加のツールとなっている。また、リアルタイム・ガバナンスの一例として、コマンド・コントロール・センターが街灯、交通状態、不動産税の徴収や廃棄物発電などをモニタリングしている。

 当市の開発の一つの方式は官民50%プラス50%というものだ。これは、市が費用の50%を、住民が残り50%を拠出して、地域の道路を建設するというものだ。 また、「ヤシの葉でヤシの砂糖を包む」という方式がある。都市開発において、民間部門の協力を得るが、市が土地を貸し出し、民間が開発する。この方式で、多くの護岸や橋が建設されている。また、公共バスに広告を出し、広告収入を公共バス運営費に充てているのもその例だ。

 ボパール市が州都のマディヤ・プラデシュ州では、三つの都市がインド最初のスマートシティの指定を受けた。これは、インドの州で最多だ。 ボパールがスマートシティプロジェクトの実施を率先している。具体的には、スマートな輸送システム、街灯、自転車、市民サービス用のアプリケーションである。例えば、スマートな街頭の事例では、監視カメラなど8つのサービスのついた街灯を企業が建設する協定を締結した。これは完全なPPP方式であり、企業は広告掲出と光ファイバーの敷設の許可を受けることで、そのリース料で経費を賄う。むしろ市は、企業から収入も得る予定だ。 ネパールの方が発言されたように、スマートシティにはスマートな市民が不可欠だ。私はさらに、市民が食と住を得て幸せであることも必要だと、付け加えたい。

 チュニジア政府は、地方自治体の業務評価システムを始めた。中央政府が財源を地方自治体に渡す場合、この業務評価に基づいている。26の指標があり、ガバナンス、管理、そして持続可能性の三つの分野がある。この評価は、新設された地方自治体ウェブサイトに発表され、誰でも閲覧可能だ。

Lim Vichetプノンペン特別市行政局副局長

Cheeran Unny Royマディヤ・プラデシュ州都市行政開発局副局長

Lofti Ben Saidチュニジア地方自治・環境省局長

Dominica Bardinas Chuaセブ州 メトロセブ開発調整委員会

(MCDCB)調査プログラム組織開発執行委員会副委員長

Teresa Pepito Alegadoコンソラシオン市市長

Ramakrishnan Karaikal Valavenアンドラ・プラデシュ州都市行政・都市開発省主席行政官

Rudra Singh Tamangカトマンズ市市長

ペイント工場の屋根にソーラーパネルを導入することが決まった。 また、効率的に電力を使うアドバンスト・エネルギー・マネジメント・システムを構築しようと考えている。こうしたシステムは、1社ではできず、点でなく面で行わなければならない。我々が属する横浜アーバン・スマート・ソリューション・アライアンスは、優れた技術を持った中小企業の集まりだが、複数の企業がそれぞれの技術を応用し、面的に事業を進めることで実現できることが多くあると考えている。

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 都市間連携には知見の共有とネットワーキングが大事だと思う。一つの都市だけではSDGsを達成しニュー・アーバン・アジェンダを展開することはできないと思う。また、都市の運営者だけでなく、コミュニティとの交流も重要だ。既に発言があったように、人々が幸せでなければ、どんなにスマートなソリューションを導入しようとしても成功しない。

Laxman Perera国際連合人間居住計画(UN-HABITAT)福岡本部(アジア太平洋担当)人間居住専門官

 プノンペンでは、問題は三点ある。交通、下水、廃棄物管理だ。横浜のエコタウンのシステムを導入したいが、そのためにはマスタープランを作成し、官民協力が必要だ。

Lim Vichetプノンペン特別市行政局副局長

 サステナビリティ指標について、もっと知りたい。経済産業省が開発しているとのことだが。

 そこがまさに、ネットワーキングが重要なところだ。横浜市が直接支援できるケース、あるいは他の連携都市や企業を紹介することで、南南協力や三都市連携につながるケースもあるだろう。

Dominica Bardinas Chuaセブ州 メトロセブ開発調整委員会(MCDCB)調査プログラム組織開発執行委員会副委員長

 3つのベストプラクティスを導入したい。一つは廃棄物処理、特に液体廃棄物の処理だ。日本は固形・液体を一緒に処理するとのことだが、それを導入したい。また、コミュニティカレッジについてフィリピンの経験を学びたい。最後は交通管理。州都デリーは交通渋滞による公害が最もひどい都市であり、日本から学びたい。

Ramakrishnan Karaikal Valavenアンドラ・プラデシュ州都市行政・都市開発省主席行政官

 今週は、この会場の内外で学ぶ機会を得た。水曜日の視察からは、下水処理と廃棄物処理が当市にも適用可能か検討したい。また、本日のプレゼンからは、インドのオンラインシステムや、ファインテック社のスマート・アーバン・グリッド・プロジェクトに関心がある。

Lotfi Ben Said チュニジア地方自治・環境省局長

Rudra Singh Tamangカトマンズ市市長

 今まで聞いたベストプラクティスの中で、自分もやってみようと思うものは何か。またその理由は何か。

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

 二つ持ち帰りたい。一つはファインテック社の方が言っていたJCM。低炭素プロジェクトの提案や技術の導入に役立つだろう。もう一つは、やはりファインテックの方が言っていた、先進的なエネルギー管理システムだ。

Cheeran Unny Royマディヤ・プラデシュ州都市行政開発局副局長

 ダナン市は長期にわたり横浜市と協力しているが、もう1つの都市を入れて、三者協力にしたい。

Dang Viet Dungダナン市人民委員会 副委員長 サステナビリティ指標は作成中なので、コンセプトのみ述べたい。都市の発展段階を診断し、そ

の上で、例えば廃棄物やエネルギー、ICTや交通などのいくつかの軸で都市の現状を評価することで、制度と技術をパッケージでソリューションを提供できるようにしたいと考えている。

梅田 英幸経済産業省産業技術環境局 リサイクリング推進課課長補佐

モデレーター

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

モデレーター

 SDGsについての発言もあったが、UN-HABITATの方から何かコメントは。

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

モデレーター

 チュニジア政府は、持続可能な都市プログラム2050を導入した。対象は国内10都市だが、プログラムの実施に向けて横浜市の経験を共有したい。

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 この分科会のテーマは、民間部門の技術がいかに都市の変貌に貢献できるか、ということだ。都市には予算がないが、ニーズだけは多い。従って技術が本当に役立つ。民間部門も都市のソリューションを出しているが、新しいファイナンスの仕組みが必要だ。同時にスマートな手法を応用し、官民連携を推進する必要がある。以上の点を踏まえ発表してほしい。

 海外からの人の受入という選択肢は、まだ進んでいない。人口減少の一因として、東京に人口が集中することで子育ての環境が厳しくなり子供を産めない状況がある。地方を活性化し、若者が地方で子供を育てられるようにし、出生率を上げたい。

高畠 昌明内閣府地方創生推進事務局 参事官

 ラオスの首都ビエンチャンで都市交通マスタープランを実施するにあたり、ICTがどのように貢献するかについてお話ししたい。JICAは、2005年からビエンチャンで調査を行い、道路網の計画策定、交差点の改善、需要管理、バス事業の改善を提案した。 その中のバス事業に関してお話しする。一つは、GPSやWi-Fiを使ってバスの位置と乗客分布をモニタリングすること。また、速度データや移動パターンを把握する。これらのデータを解析し、バス運行をコントロールができ、収入増につながる。最後は、割引運賃や学生のためのスマートカードパスを提供している。これにより、学生が公共交通に慣れるとともに、スマートカードシステムのおかげで面倒なお金のやりとりがなくなり、バス事業の収入が増える。

 UNIDOは、先進国の技術を活用し、発展途上国、新興国の工業化を支援している。世界に八つある投資技術移転促進事務所は、投資促進そして技術移転を行っている。 東京事務所は、発展途上国の政府関係者あるいは商工会議所の方、さらには自治体関係者を日本に招き、技術移転に向けた日本とのマッチングを行っている。 最近の例を一つご紹介する。日本インド商工会議所の幹部を招へいした。スマートテクノロジーの開発に関心があり、日本企業をインドに誘致したいと考えていた。東京で開催されたスマートシティエキシビジョンにお招きし、日本企業とマッチングを行った。帰国後、インドのATMシステムに問題があることが分かり、日本企業を誘致してATMの改善をお願いした。

 高畠様に質問がある。人口減少の話があったが、日本が永住権の取得を緩和することを検討していると聞いた。人口減少の問題の解決策になるのだろうか。

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

岩間 敏之国際協力機構(JICA)社会基盤・平和構築部 技術審議役

村上 秀樹国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所 次長

第二分科会「スマートシティ開発における民間の技術・ソリューション」Mary Jane Crisanto Ortega

Y-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

モデレーター

モデレーター

スマートシティ開発における基本コンセプト、基本原則は何か?

スマートシティ開発に活用できる主な提案・ソリューションは何か?

技術トレンドはどういったものか、また、近い将来の都市の変貌にどのように応用できるか?

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 当社は、環境にやさしいインフラの事業に携わっている。例えば、シンガポールのスカイパークや横浜市の廃棄物処理や下水処理の施設を建設した。 スマートシティというとITが重視されるが、エンジニアリング会社の視点から言えば、ITはそれぞれのインフラ設備を最適化するために活用できるものだ。例えば、当社は、ハイパワー・リモート・システムを開発しており、横浜の本部に五つの廃棄物処理施設とつながったリモート・コントロール・センターが設置され、安全で安定した運営を可能にしている。 このように当社は、様々なインフラを提供しつつ、そのインフラをよりスマートにできるノウハウも提供できる。

William Edwardsイケア・ジャパン株式会社IKEA 港北 ストアマネジャー スマートシティを実現するためには、持続可能性を日常生活に取り入れなければならない。それは、私共のビジョンでもある。例えば2015年には、再生可能エネルギーに6億ユーロを投資した。持続可能性を追求することで、ビジネスを変革し、競争力強化につなげている。 三つの変革の鍵がある。①何百万というお客様にインスピレーションを与え、自宅でも持続可能な生活をしていただく。②リソース及びエネルギーの独立性を確保し、長期的に持続可能な原材料を担保する。③我々のビジネスが影響を与えた人々やコミュニティがより良い生活を創造できるようリードする。

 当社は、都市を効率的に運営し、市民の満足度を上げるため、様々な情報を収集し、可視化して、ビッグデータのエンジン、AIを活用して分析している。自治体は、こうした分析を活用して、都市のマスタープランを作成することが可能だ。当社は、都市がSDGs達成するために、ICTのプラットフォーム及びサービスを提供することができる。例えば、顔認証では世界一であり、物体認知や群衆行動解析などの核となる技術を持っている。 もちろん、都市は成熟度やニーズが異なる。垂直的にソリューションを提供したい。 当社は、例えば香港やインドでは、スマート・バス事業を提供しており、他の国々では廃棄物管理や防災事業も手掛けている。

 私共の考えるスマートシティには二つのポイントがある。スマートシティというと、スマートなインフラや先進技術を活用してエネルギーを中心に街をつくることになるが、家電を通じて豊かな暮らしを生み出してきた経緯から、スマートライフの進め方に注目し、エネルギーを中心に、セキュリティ、モビリティ、コミュニティ、ウェルネスという5つのスマートライフを考えつつ、それを実現する空間とそれを支えるインフラということで街を設計している。もう一つは、スマートなだけでは街が長続きしないので、持続可能な街づくりをしている。 今、二つの工場跡地でプロジェクトを進めている。一つは藤沢サスティナブル・スマートタウ

 スマートモビリティの変容、台頭についてお話ししたい。モビリティは接続性が大事であり、また自動運転が求められている。 イニシアチブを取っているのは、米国ではICT企業で、連邦政府・州政府がサポートしている。日本では中央政府、地方自治体、大学、企業が連携して実証事業を行っており、中国は中央政府が力強いイニシアチブをとっている。 米国の中規模の都市では、カーシェアリング、自転車シェアリングが行われている。ドイツでは、鉄道が重要な役割を果たしている。日本では自動運転が注目の話題で、仙台、東京、愛知で試みられている。中国では、大都市で自動運転とコミュニケーションを一つのプラットフォームに統合しようとしている。 スマートモビリティのモデルは、都市中心部、観光地、そして過疎地の三つに分類できる。

 IoTは、スマートシティに不可欠だ。前提として、都市の状況をモニターする必要がある。それには、適切なIoT機器や接続技術が必要だ。 IoTセンサーは、現在のセルラーネットワークでは適切でなく、省電力広域ネットワークのLPWANが適切だ。IBMも開発に関与している。また、ネットワークサーバーは、IBMが開発したLRSCがある。 こうした技術を導入すると、人々がインスパイアされ、アプリケーションを考えはじめ、イノベーションにつながる。

Nicepuro Lauron Apuraカルカル市市長

 2017年1月に完成予定のシティセンターを建設している。ここにシティセンターのみならず、学校、市役所、公共市場、教会を整備する。また、公共交通機関のターミナルも作る。さらには市民プール、スタジアムも。また、水田を保存し、公共広場や歩道も整備する。

吉田 太輔日本電気株式会社グローバル SI サービス事業開発本部 本部長代理

櫻井 秋久日本アイ・ビー・エム株式会社コグニティブソリューション 技術理事

高橋 元JFE エンジニアリング株式会社海外総括本部マーケティング部 部長

宮原 智彦パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE 事業推進部 部長

周 磊デロイト トーマツ コンサルティング合同会社自動車セクター 執行役員 パートナー

ン・プロジェクト、もう一つが横浜綱島サスティナブル・スマートタウン・プロジェクトだ。前者では、CO2削減70%、再生可能エネルギーの利用率30%以上を目指し、後者では、2005年度比でCO2削減40%、新エネルギーの活用30%以上を掲げている。また両者ともライフラインの確保を3日間としている。 当社としては、これらで培ったソリューションをグローバルに提案していきたい。

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04 Flávio Sancho de Almeidaモザンビーク国立 ICT 研究所(INTIC)IT・インフラ・アクセス部 部長

 世界銀行の支援を受けてマプト市で実施しているMOPAプロジェクトを紹介したい。これは、モザンビークが廃棄物管理をITソリューションで解決するために開発したアプリケーションだ。これは統合型のアプリケーションで、インターネットとモバイルサービスを組み合わせ、市民がマプト市の廃棄物管理に関与できるようにしている。 今後数年間の課題がある。一つは、このソリューションを国内他都市に広げること。それから、他の都市のためのプログラム開発を実施すること。また、ICT関連の他のイニシアチブと組み合わせることで、持続可能なものとすることだ。さらに、INTICがICT分野の国立研究所として、MOPAが目標を達成するよう支援することだ。 我が国で実施しているITイニシアチブに関して3点を共有したい。まず、中央政府のネットワークで市民と市役所がコミュニケーションをとるようにし、リアルタイムで情報を共有できるようにする。もう一つはナショナル・データ・センターで、INTICがMOPAのデータの安全管理を支援している。三つ目は、実行途中にあるEガバメント。MOPAで開発した規格をEガバメントの枠組みに統合したい。

 私が所属するスマートシティ部門は、政府・大学・企業・市民と連携し、技術そのものだけではなく、革新的なプロセスについて取り組んでいる。 具体的には、我々は、モビリティに関する革新的な技術のプロジェクトを行っている。市民が参加し、モビリティに関して、その地に合ったソリューションを提供してもらう。また、交通に関するモバイルツールがあり、リアルタイムでユーザーに交通情報を送っている。オープン・データ・サービスも市民に提供している。さらに、市内のウォーキングに適した歩道を表示するアプリを使い、ウォーキングプロジェクトを奨励している。

Najib Ouradiカサブランカ市 カーサ・プレスタシオンズIT・デジタル変革部 副部長

 大学の研究所とIT分野の2名の起業家が貢献した、スマートシティを支援するイニシアチブがある。Eマディナというスマートシティのクラスターで、マディナとはアラビア語で都市を意味する。市議会及び中央政府、大学・研究所、市民の代表や独立した専門家、そして民間企業が集まっており、官民のための協力的なスマートシティ・エコシステムを作ることを目標にしている。もう一つの目標は、世界中のスマートシティの経験から学ぶことだ。ITマスタープランの作成やスマートビレッジ、バーチャル・ミュージアムのプロジェクトなどが既に立ち上がっている。

Macricia Auguste-Bushellセントルシア 経済開発省エコノミスト

 カストリーズは、カリブ海にある小さな、開発途上の島嶼国セントルシアの首都だ。費用効率の高いソリューションを必要としている。 官民のインフラ投資が少なく、人口減少が進んでいる。観光に依存しているが、ホテルの多くが外国資本のため、収益が海外に流失している。 中央政府は、世界銀行と協力して1,500万米ドルのプロジェクトを組んだ。その目標は、①民間部門の投資を促し、②インフラに対する戦略的な公的投資を推進し、③中小企業に対する事業改善のための補助制度を整備する、というものだ。また、下水管理の対策や輸送効率の向上など、長期に取り組むべき課題がある。

Maria Adelaida Coloma Lacsamanaバギオ市都市環境・公園管理オフィサー

 当市のような中規模都市にとっては、技術の導入と管理が不可欠だが、コストがかかると考えられている。しかし、現在の開発トレンドに沿って、前進しなければならない。 10年前にeガバナンスを導入した。オンラインで様々な申請ができる。GISで公共インフラのモニタリングもやっている。市のウェブサイトでは市民からのフィードバックを受け付けている。 問題もある。台風により停電が頻繁に発生し、十分なフィードバックが得られないこともある。そのため、新しい全市的な監視プロジェクトを開始し、スマートなソリューションを得るために情報・人々・技術をつなぐシステムを導入した。 新しいプロジェクトは、民間部門のCSRを通じて支援されている。成功への鍵は、市長のリーダーシップと、民間部門との良きパートナーシップである。

Bahagiaバンダアチェ市 都市マネージャー

 スマートシティは、持続可能な開発を実現するために最適なアプローチであり、主要な関心事の一つである。 まず、情報管理システムを構築し、ITマスタープランを作成した。マスタープランが掲げるのは、当市はイスラム教社会なので、イスラム・サイバー・シティである。それに基づき、市職員から83の提案が行われた。ADBなどの協力も得て、現在、41の部門のうち11部門がオープンデータを採用している。 ICTイノベーションを促進するため、「三重らせんコンセプト」を導入し、大学や民間セクターと連携している。その結果、インドネシアのテレコム会社の協力で、Eクリニックのようなアプリケーションサービスが生まれた。2016年10月にできたデジタル・イノベーション・ラウンジ(DILo)には、34のコミュニティグループが参加している。 将来の目標は、スマートシティにおける民間セクターの役割の向上、市職員の能力向上、そしてそれをサポートするインフラの整備だ。

Constanza Beatriz Pachecoチリ交通通信省スマートシティ担当 プロジェクト・マネージャー

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William Edwardsイケア・ジャパン株式会社IKEA 港北 ストアマネジャー

 一点目に関しては、インフラと日々の行動における持続的な変化が基本コンセプトだ。それをやるためには、人こそが中心となるべきだ。三点目は、デジタル技術、遺伝子工学を使った農業、再生可能なエネルギーだ。

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

モデレーター

 JICAは、資金のみならず、技術支援も提供している。民間部門とパートナーシップを組んで、こうしたテクノロジーを導入したい。現場に応用できることがわかれば、資金を提供し、民間部門がより大きなプロジェクトを導入する機会にもなる。

岩間 敏之国際協力機構(JICA)社会基盤・平和構築部 技術審議役

 キーワードは、関係者間の協力。大学・研究所、金融機関、国内外の企業、公的機関、市民と来街者といったステークホルダー間の協力だ。二つ目の答えは、基本的にはライフライン。しかしもっと重要なのは、安全、清潔、モビリティといったキーワードだ。NECの顔認証、廃棄物管理、スマート・バスなどの技術も貢献できる。三つ目の技術トレンドは、デジタル化によって情報を集め、ビッグ・データ・エンジン、AIなどの技術を使って、提案、予測、適切な資源配分をするということだ。

吉田 太輔日本電気株式会社グローバル SI サービス事業開発本部 本部長代理

 最初の点は、居住者、来街者が協力して、街ができた後の支え合う運営の仕組みをコンセプトの時点から考えるということだ。主要なソリューションだが、様々な企業が協力して多様な技術を組み合わせることだと思う。最後の技術トレンドは、自然エネルギーの活用と、水素エネルギーに注目している。

宮原 智彦パナソニック株式会社ビジネスソリューション本部 CRE 事業推進部 部長

 ニーズとテクノロジーをつなげるのは、実際は簡単ではない。その一つの理由は、資金調達スキームだ。JICA、そして世界銀行やADBといった国際金融機関が支援制度を持っていると考えられる。UNIDOは、残念ながら良い資金調達スキームを持っていないが、情報やマッチングの機会を提供することはできる。このような会議の場は、企業が何を提供できるか、途上国が何を必要としているか、知ることができる素晴らしい機会である。 スマートシティの開発は、各都市の戦略や法的枠組みを考慮すると、市政府の関与が非常に重要だ。

村上 秀樹国際連合工業開発機関(UNIDO)東京投資・技術移転促進事務所 次長 

 スマートシティのコンセプトは、環境にやさしい、または省エネになると思う。二つ目の質問は、一つ目と重なるが、温暖化ガスの削減と省エネになる。三つめのトレンドは、様々な技術が考えられる。 上記に加えて、資金面の課題について述べたい。インフラ整備の資金調達は、結果が見えるため簡単にできる。しかし、廃棄物や省エネの場合、恩恵を理解することが少し難しく、民間部門にとって良いソリューションを提案できるようなスキームにならないことが多い。

高橋 元JFE エンジニアリング株式会社海外総括本部マーケティング部 部長

 スマートシティのコンセプトは、国によって違うかもしれないが、基本コンセプトとして、エネルギーとモビリティが一つのプラットフォームに統合されるべきだと考える。そして、国に合わせてそのプラットフォームをカスタマイズする。プラットフォームを作る場合、データをオープンにするかクローズにするかは難しいが。技術トレンドは、プラットフォーム技術だと思う。

周 磊デロイト トーマツ コンサルティング合同会社自動車セクター 執行役員 パートナー

 この分科会では、テクノロジー企業の視点と、様々な都市のビジョンについて伺った。両者をディスカッションのなかでマッチングしていきたい。どのようにすれば、スマートシティ・ソリューションの実施を加速できるか。資金面でもイノベーションが必要だろう。JICA、UNIDOの方、何かソリューションの提案はあるだろうか。

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

モデレーター

 日本の首相が以前おっしゃっていた。日本は世界有数の経済大国だが、国内だけで成長するのは難しい。高齢化が進み、インフラの整備も終わっている。だが、インフラ整備の経験は非常に強固だ。世界を見ても、これほど知識と技術、経験をもつ国はない。 企業の代表の方々に次の3点に関するビジョンを伺いたい。一つは、スマートシティ開発のコンセプト、第二に、スマートシティ開発の主要なソリューション、最後に技術トレンドと都市の変貌への応用方法だ。そして、都市の代表の方々からそれにフィードバックしていただきたい。

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Nicepuro Lauron Apuraカルカル市市長

 全ての指導者がスマートシティ開発に注力し、環境に配慮するべきだ。

Bahagiaバンダアチェ市都市マネージャー

 政府は、スマートシティに関して強いコミットメントを示すとともに、大学や民間部門、市民とも協力をしなければならない。

 スマートシティを実現するために、政府は強いコミットメントを示すべきだ。もう一つは官民のパートナーシップだ。

Macricia Auguste-Bushellセントルシア経済開発省エコノミスト

 スマートシティ戦略を策定するために政治的なコミットメントが必要であり、プロセスの全過程に市民参加を確保することで、政治体制が変わってもスマートシティ開発の継続を担保できる。

Najib Ouradiカサブランカ市カーサ・プレスタシオンズ IT・デジタル変革部 副部長

 ボトムアップのイニシアチブが、トップダウンによる政府ビジョンに伴わなければならない。短期的な選挙サイクルと長期的な戦略ビジョンが調和することが必要である。 技術に関しては、知識移転が鍵を握ると思う。

Maria Adelaida Coloma Lacsamanaバギオ市都市環境・公園管理オフィサー

 より効果的にガバナンスをやるべきだ。技術も大事だが、あらゆる段階で人々を関与させる、人間中心であるべきだ。職員育成もしっかりやらなければならない。

 基本コンセプトは、データで動く都市を構築することだ。主なソリューションは、どうやってデータを得るか、どうやってそれをうまく管理・分析するかだ。当社の技術トレンドについては、認知ソリューションやAI技術だ。

櫻井 秋久日本アイ・ビー・エム株式会社コグニティブソリューション 技術理事

 我々のような途上国では、スマートシティに関する市民教育と市民参加が課題だ。政治家が長期的なソリューションを念頭に置くことも大切である。政府からの投資は大きな課題だ。国際機関の支援を受けることも可能だが、民間部門との連携では大抵はパイロット事業で、その後が続かない。

Claudia Namishan Labbeチリ経済開発公社(CORFO)大都市圏部 部長

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

モデレーター

 各都市の代表の方々に、スマートシティを実現するための政治のリーダーシップの役割について、またコミュニティ参加について、伺いたい。

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

モデレーター

 5年前に、シンガポールが都市ソリューションの実験室になるという戦略を決定した。国内外のリソースを使い、シンガポールで実験をして、そのソリューションを海外に売ろうと考えている。横浜市のY-PORT事業も、コペンハーゲン市やスペインのビルバオ市も同様に、他都市の参考事例になろうとしている。 政治家のリーダーシップ、創造性、市民参加、将来のプロジェクトの共有、そしてインテリジェントな社会を作っていくことが、技術を活用するのに重要だ。

Flávio Sancho de Almeidaモザンビーク国立 ICT 研究所(INTIC)IT・インフラ・アクセス部 部長

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 2013年、日本政府は経協インフラ戦略会議を立ち上げた。海外インフラ事業の受注を2010年に10兆円だったものを2020年に30兆円にする目標を立て、五つの柱を設定した。①PPP、②民間企業及び地方政府並びにその人材活用、③国際基準、④新しいフロンティア、⑤エネルギー鉱物資源の確保、だ。 スマートシティ開発の観点からは、その五つの柱に含まれるツールは、マスタープラン及びフィージィビリティスタディの支援、無償資金協力及び技術協力、新しいタイプの融資を含む円借款、JBIC、JOIN(海外交通・都市開発事業支援機構)やJICT(海外通信・放送・郵便事業支援機構)などが提供する公的資金だ。 そして、日本政府は2015年に質の高いインフラパートナーシップを発表し、2016年にこのパートナーシップを拡大した。民間資金の導入を促進し、多くのインフラプロジェクトを海外で実現することを目指している。

久島 直人内閣官房副長官補付内閣参事官

 重要なインフラ開発課題の資金面を担当している。SDGsとパリ協定を達成するため、DRM(国内資金動員)と公的資金の動員、民間部門へのインセンティブという3つの柱を設定している。 日本政府は、DRMに向けて、OECD、IMF、世界銀行、ADBと密接に協力しつつ、途上国に対して資金援助と能力開発支援を行っている。これらの機関は、公的資金の主要な提供者でもある。国際開発金融機関は現在、補充段階に入っているので、今後、公的資金は増えるだろう。そして、リスク削減策を提供し、民間投資家がインフラ事業に安全に投資できるようにすることが大事だ。

土谷 晃浩財務省国際局開発機関課 課長

第三分科会「スマートシティ開発のための資金」

各国は、国際支援を通じて途上国における税収等の国内キャパシティを向上させるなど、国内資金の動員をさらに強化することが求められている。各国では、スマートシティ開発に向けた国内資金動員のために何が行われてきたか? また、共有すべき経験は何か? 資金動員における制約や障害は何か?

途上国は、SDGsやCOP21のアジェンダを達成するため、さらなる開発支援に期待している。各国はどのような資金支援(例:ODA、緑の気候基金(GCF)、等)を受け、スマートシティ開発にどのように活用してきたのか?

民間資金の動員なくして、SDGsやCOP21のアジェンダを成功裡に達成することはできない。スマートシティ開発の現在、そして将来の資金需要についても同じことが言える。スマートシティ開発における民間資金の活用について新しい手法はあるか? あるいは、これまで成功裡に活用されてきた財政手段(環境整備など追加施策を要するものも含む)は何か(例:PPP、国内債券市場、採算補填(VGF)、リスク保証の促進による資本市場の活用、高リスク事業へのブレンドファイナンス、グリーンボンドのようなテーマ別債権、機関投資家、年金基金、等)?

 2015年の世界の状況を見ると、SDGsと気候変動に関するパリ協定が合意された。そして、人口の65%が都市に住み、GDPの70~80%が都市で生み出され、温室効果ガスの7割が都市で発生していることから、都市が非常に重要なアジェンダとなっている。 スマートシティの開発だが、SDGsを考えると資金ニーズは非常に大きい。世界銀行とADBは、各国が国内でリソースを発掘し、それを動員していくことが重要だと報告している。ただ、もっとODAが出てくるだろうという期待感を各国が持っている。GCF(緑の気候基金)など新しい形の資金にも期待が寄せられている。もちろん、民間部門のリソースも動員しなければならない。 このセッションでは、3つの質問を投げかけたい。①スマートシティ開発のためのリソースの動員が本当に起こっているか、その制約は何か。②ODAやJICA、JBIC、ADBや世界銀行などが資金を提供しているとわかっているのに、活用でき ていないのはなぜか。③民間部門がODAなどをどのように使ってきたか、PPPがうまくいっている国はどこか、国内の債 券市場はどうなっているか。

モデレーター

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

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 アジア地域においては、インフラ開発とその資金需要が非常に多く、21世紀の世界経済をけん引する成長の中心になる。各国政府が持続可能な開発を進めるには、質の高いインフラが必要だ。久島参事官が言及したように、日本政府は、質の高いインフラのためのパートナーシップ、もう一つは、質の高いインフラのための拡大パートナーシップという2つの政策を発表した。また、2016年5月に日本で開催されたG7伊勢志摩サミットでは、質の高いインフラを実現する原則を採択した。 日本には3つのODAスキームがある。①相手国の要請に基づくもの、②草の根・人間の安全保障無償資金協力プロジェクト(GGP)、③日本の地方自治体のノウハウを活用するもの、の3つだ。

今福 孝男外務省国際協力局 開発協力総括課長

 我々は、ODAではないが、準商業融資をしている。①相手国の輸入業者への輸出融資、②日本企業に対して行う海外投資ローン、③日本が関わる必要のないアンタイドローン、④日本企業が海外事業に投資する際の株式投資だ。 二つの事例を紹介する。一つは、インドで進めているプロジェクトで、DMIC(デリー・ムンバイ産業大動脈)地域における日本企業のインフラプロジェクトへの参画支援のため、DMICDC(デリー・ムンバイ産業大動脈開発会社)という企業に出資している。もう一つは、気候変動対策のためのグリーン・ファシリティというファイナンスで、地球温暖化を防ぐプロジェクトを導入するものだ。JBICが、金融機関に資金を提供し、その金融機関が、プロジェクトに資金を提供する。 また、本年10月から、我々も質の高いインフラプロジェクトを拡大する事業を開始している。

岸岡 雅士国際協力銀行 (JBIC)インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部 ユニット長

 政府として海外展開のインフラ輸出を進めている中、当省はインフラの部分から後押ししている。私は都市局に所属しており、都市開発の海外展開を担当している。都市開発の場合、ODAを使うより、民間企業の海外進出を支援している。企業単独ではリスクも高く、海外進出を目指している企業の協議会を立ち上げ、支援している。また、資金的リスクも高いので、JOINという新たな金融支援の仕組みを作った。

石川 亨国土交通省都市局総務課 国際室長

Amr J. Qariアジア開発銀行(ADB)官民連携部 主席官民連携専門官

 第一に、出資者は何を検討してから途上国のPPPプロジェクトに参入するのか、第二に、ADBが、PPPを途上国でどのようにサポートしているか、お話ししたい。 第一の点だが、どれくらいの確実性で政府が調達を実施するかを検討する。また、非常に重要な点が、実際にその入札を勝ち取る確率はどれくらいか、ということ。さらに、1回限りのプロジェクトなのか、これから先もプロジェクトがあるのかという、プロジェクトパイプライン。さらに、リスクをどう分散するか。そして、長期的な契約執行の可能性と、透明性のある調達かどうかだ。 第二の点。ADBの複数の部門が、相乗効果を得ながら、PPPを進めている。能力開発、技術支援のための資金援助・融資などだ。また、ソブリン、非ソブリンの資金提供を、長期的な視点で行っている。また、民間・公共部門の双方にアドバイス事業も行っている。 また、アジア・太平洋プロジェクト組成ファシリティ(AP3F)を設立した。この目的は、民間投資をインフラプロジェクトに呼び込むことだ。途上国であれば、中央政府、地方政府、国営企業などが活用できる。主要セクターは、エネルギー、輸送、都市開発、社会インフラだ。

 当社は、2014年、国土交通省と民間の交通都市開発インフラ関係の企業の共同出資で設立された、日本初、唯一の交通都市開発関係のインフラ出資のファンドだ。日本企業の海外事業を出資という形で支援し、現地のインフラ開発に貢献することを目的として設立された。出資という側面を持ちながら、JICA、JBICなどの日本の公的金融機関と連携して、必要な資金を確保してい

首藤 勉株式会社海外交通・都市開発事業支援機構 (JOIN)事業推進部 マネージャー

る。また、出資以外にハンズオン支援、すなわち、技術移転と人材育成も行っている。出資金は210億円で、1,100億円の投資キャパシティを持っている。事業分野は、鉄道、高速鉄道、都市交通、有料道路、橋梁、さらに船舶海洋事業、港湾開発、空港開発、都市開発、運輸物流などだ。 現在、ベトナムのチーバイ国際港など5つの支援案件、またフィリピンの米軍クラーク基地跡地の広域開発のマスタープランを作成している。

 グリーンボンドは、民間資本を自治体レベルで、低炭素かつ強靭なインフラ整備に使うことができるツールだ。世界的には、2015年に400億ドル以上発行され、2016年には倍になると見られている。発行しているのは、開発銀行、民間銀行、ユーティリティ企業などだ。 3つのことが、その原動力になっている。①G20の後押し、②自主的ガイドラインの策定、③投資家が責任のある投資原則を取り入れ始めたこと、だ。 自治体レベルでは、2015年に40億ドル発行されているが、先進国に限らていれる。日本では、東京都が試験的に発行すると発表した。 グリーンボンドの課題は、グリーンの定義が明確でないことだ。また、途上国では債券市場、資本市場を整備する必要がある。

森 尚樹地球環境戦略研究機関(IGES)プログラム・マネージメント・オフィス持続可能なファイナンス担当シニアコーディネーター/上席研究員

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Vasant Premanand Prabhuムンバイ市副行政長官

 インドの都市ムンバイは都市化が進んでいる。インドは、都市化の次の震源地になるかもしれない。都市化により、新しいアイデアのイノベーションが起こり、チャンスを生む。問題もある。人口密度が高くなり、インフラが十分ではない。資金が適切に使われていない。資本投資50~58%しか使われていない。投資がないので、収入が上がらない。収入がないので、インフラに資金が投入されないという悪循環がある。 我々がやったことは、代替可能な容積率を導入し、資産価値に基づいた資産税を得るということだ。これにより我々の税収は大きく増加した。開発が必要な分野を絞り、インフラに大きな資本投資を行うことで、将来的に継続して収益を上げる方式だ。

Ahmed Bin Parvez世界銀行社会・都市・農村開発・強靭性分野 南アジア地域 プロジェクト・アナリスト

 南ダッカ市では、2015年に当選した新市長が、置き去りにされていた川沿いの地域の公共スペースを再建することを公約した。南ダッカ市は、世界銀行からフィージビリティスタディに向けた技術支援を受けている。さらに、同市は世界銀行に対し、川沿いに公共施設を整備する2億米ドルのプロジェクトを提案した。 また、2009年にバングラデシュ政府は、バングラデシュ地方自治体開発基金(BMDF)を設立した。様々なドナー機関と共同で、一定の金額を地方自治体がプロジェクトベースで受けられるというものだ。

Rehman Roshan Baigカルナタカ州都市開発・メッカ巡礼大臣

 カルナタカでは、下水排水施設の改善に向けてADBの支援を受けたいと考えている。州全体を対象とするには1.5億米ドル強が必要になるだろう。

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

 当行の成長産業クラスター部門がスマートシティ関連の取引の中心となっている。世界市場において、インフラや環境にやさしい代替エネルギー、水、環境、医療などの分野に取り組んでいる。 スマートシティに関する我々のアプローチは、まず市場調査、次にフィージビリティスタディ、そしてプランニングをし、プロジェクトに問題がなければ、建設段階で資金を提供する。企業へのファイナンス、不動産ファイナンス、プロジェクトファイナンス、そのほかエコタイプの融資など、様々な種類がある。我々は、プロジェクトファイナンス、特にインフラ部門の実績がある。

島村 豊臣株式会社三井住友銀行公共・金融法人部 部長

 いくつかの主要なスキームのうち、長期的な投資を必要とするインフラへの資金提供が特に重要だ。インフラ開発に民間資本を動員するのに最も適しているのは、プロジェクトファイナンスだ。重要な特徴は、信用度がプロジェクト実施者のバランスシートではなく、プロジェクトのキャッシュフローによるということ。したがって、製品・サービスを購入することでキャッシュフローをプロジェクトに提供する組織が重要になってくる。スマートシティ開発という観点からすると、その組織は、地方政府、国営企業、あるいは公益企業になる。その場合、そうした組織がどれだけ情報を開示するかが重要だが、難しい場合は、国際的な格付け機関から情報を得ている。

小山 朝英株式会社三菱東京 UFJ 銀行ストラクチャードファイナンス部 プロジェクトファイナンス室アジア・オリジネーション・チーム 調査役

 インドでは中央政府が、100のスマートシティを開発すると宣言し、スマートシティの需要は多い。特に、資金面の需要も高いが、技術面での需要も多く出てきている。技術面を受け入れることに懐疑的な人もいるが、技術は非常に重要だ。また、地方政府では、資金管理がうまくいっていないので、日本の技術支援をお願いしたい。

(会場からの発言)

モデレーター

 第一に、公的機関の方々から日本のODAの話があったが、私の個人的な見解では、この30年、日本は世界で、特にアジア太平洋地域で、インフラ開発の手段を強化している。第二に、PPPなど様々な手段が明確に存在しているのに、実現されていないものもある。この後の各国のプレゼンの中で、どの手段が適しているか見ていきたい。 スマートシティが必要な投資をどうやって誘致すればいいのか。新しい手段の規律が政府から提供されねばならないというのが一つ。地方債についてはあまり話がなかったが、格付けなどの分野で支援が必要だ。現在、利益率が世界的に低いので、機関投資家も7~8%の利益があるインフラ投資をしたがっている。それから政治リスクの保証が民間部門には必要だ。 これについて、各国政府側からの意見を伺いたい。 Bindu Nath Lohani

Y-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 ADBのほか、JBICやJICA、駐インド日本大使館も、本件の窓口になるかもしれない。

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Vasant Premanand Prabhuムンバイ市副行政長官

 資金を得ることはできるだろうが、問題はプロジェクトの履行面であり、財政支援をどう活用するか、どうやって返済するかだ。そのためには投資に対する利益が必要で、そこから返済をしていく。

Vasant Premanand Prabhuムンバイ市副行政長官

 我々は、資産税を資産価値課税に変えたが、10年かかった。また、地下鉄は民営で開始したが、運賃を当初の40ルピーから10ルピーや20ルピーへの値下げし、助成金を交付する形を余儀なくされた。

Stuart Robert Kayグリーンプレース・アセッツチーフ・サステナビリティ・オフィサー

 グリーンボンドには大きなチャンスがある。我々はエネルギー改善のプロジェクトで多くのグリーンボンドを活用している。東京都が所有する全資産にグリーンボンドを活用すれば、オリンピックに向けて市場に対する重要なメッセージになると思う。

 日本企業は、EPC(設計・調達・建設)方式に興味があるが、PPPやBOT(建設・運営・移転)方式にはあまり興味がない。そして、事業のリスクを避け、同時に国内インフラ企業より優遇措置を求める。また、日本企業が入札で勝てないのはコストが高いからだろうと思う。

(会場からの発言)

 EPCとなると、参入してくるのは日本企業だけではない。商業的な実現可能性を考えると、日本は負けてしまう。それを乗り越えないと、日本は入り込めない。

(会場からの発言)

 これまでのところ、あまり地方自治体のリスクを負っていない。信用を評価するのが難しく、また、都市の歳入は現地通貨が多いからだ。これからは、評価能力を拡張し、地方自治体に資金を提供したい。

岸岡 雅士国際協力銀行 (JBIC)インフラ・環境ファイナンス部門 社会インフラ部 ユニット長

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 ファイナンスの問題だが、中央政府が保証すれば、地方自治体が必要な資金を得られるのではないか。

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 だからこそ、EPCをやったほうがいいのではと思う。EPCの実績は?

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 ハンズオン支援のファンディングについて知りたいと思う。お金を提供するだけでなく、履行面までやりたいと。

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 税金は中央政府にいってしまうが、地方自治体に十分な額が提供されていない。また、自治体に資産管理の資金が十分にないなら、PPP方式を使って、民営化したらどうか。

Amr J. Qariアジア開発銀行(ADB)官民連携部 主任官民連携専門官

 ADBの貢献の一つは、IIFCL(インドインフラ金融公社)と共にクレジット保証を一部やっていることだ。これにより、地元のインドの銀行が、債券投資家に損失保証をすることを可能にした。非常に革新的だ。

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各自、プレゼンを用意していると思うが、三つのトピックに集中したいと思う。①スマートシティ開発に関する知見とは何か、②スマートシティ開発の知見を共有する際の障害・制約は何か、③知見の共有には二都市間連携が一つの選択肢だと思うが、スマートシティ開発において、 その実効性を高めるにはどうすれよいのか、だ。

 地方自治体への資金は、日本国内でも問題になっている。日本の地方自治体は、地方税もあるし、国からの交付金もあるし、債券も発行している。中央政府が暗黙のうちに保証している状態だと思う。

土谷 晃浩財務省国際局開発機関課 課長

第四分科会「あるべきスマートシティ開発に向けたナレッジ・マネジメントの方向性」

Gil-Hong Kimアジア開発銀行(ADB)持続的開発・気候変動局 上級部長

Daniel Levine世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)シニア・オペレーションズ・オフィサー/チームリード

 TDLCは日本政府と世界銀行のパートナーシップで、約240億米ドルに及ぶ約250件のプロジェクトを管理している社会・都市・農村・強靭性グローバル・プラクティス部門に属している。 2015年、日本国内で都市パートナシッププログラムを始めた。本日ここにいる北九州、そしてもちろん横浜も参画している。今は都市の時代である。特定の分野やテーマだけを見るのではなく、都市レベルで課題を解決する必要がある。知識をパッケージ化して、受け手側が利用できるようにする取組を進めている。共同研究やケーススタディも行うほか、テクニカル・ディープ・ダイブを実施している。これは、学習環境や優先順位付けを行うという点で、従来の視察ツアーよりも系統立てて集中的に学べるプログラムである。

モデレーター

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

モデレーター

 やはり、中央政府や連邦政府が、地方自治体を保証することが大事だ。信用度が上がれば、うまく回っていくと思う。

スマートシティ開発において、政策決定者、事業実施者、ステークホルダーにそれぞれ必要な知見は何か?

知見の取得・共有・活用における障害は何か? 都市開発プロセスにおいて、知見の移転や適時の知見の応用を可能にするための提案は何か? 都市レベルで設立・運営されているナレッジ・プラットフォームの良い事例はあるか?

都市開発において二都市間連携はどのような役割を果たしているか? また、二都市間連携のプログラムは規模が小さく、長期的な影響よりもマーケティングや広報事業として見られることが多いが、長期的な視点から、二都市間連携をより効果的にする方法は何か?

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Mae Elaine Tantengco Bathanマンダウエ市市長室 秘書官/首席補佐官

 我々が行ったイノベーションは、パフォーマンス・ガバナンス・システム(PSG)と呼ぶガバナンスの改革プログラムだ。バランス・スコアカードを採用していて、地方自治体では新しい。また、これを使って、コミュニティのための共有ビジョンを策定した。こうした政策を行った結果、当市は、2016年、内務自治省からシール・オブ・グッド・ガバナンスという賞を受賞した。また、環境に配慮した建物に関する条例などにより環境政策を推し進め、総合的な土地利用計画を改訂したことなどから、2015年のAPECでも表彰された。 当市の環境に配慮した建物に関する条例を遵守している企業に税の免除を行っている。さらに、複数の教育機関を抱え、優秀な人材を輩出している。

Kristine Vanessa Tadiwan Chiongナガ市市長

 当市は、内務自治省及びセブ州政府と協力してコミュニティ・ベース・モニタリング・システム(CBMS)というプログラムを採用している。これは、貧困を診断するツールだ。データを収集して、データベースを構築し、短期・中期・長期の開発投資計画策定に活用している。しかも、コミュニティのメンバーが、CBMSの各プロセスに参加している。貧困のマッピングをして、優れた行政サービスを提供している。これにより、SDGsの達成の一助となるほか、草の根レベルで貧困の全体像をつかむことが可能になった。 ナガ市の経験から言うと、ナレッジ・マネジメントが大事であるということ。課題としては、データ収集に適した人材がいないこと、制度だけでなく意識を変える必要があることが挙げられる。

Ye Lwinマンダレー市市長

 ミャンマーは、東南アジアにおける豊かな国の一つだったが、1987年に開発が最も遅れている国になった。今は、世界で最下位に位置する。 私は、2016年4月に着任して、ICT開発プロジェクトを始めた。地域Wi-Fiの整備と3Gから4Gへの改善を行った上で、土地管理システムと情報管理システム、水供給、公共輸送、固形廃棄物管理、税制などの統合システムを手掛けている。

Evelyn Nacario Castroメトロセブ開発調整委員会(MCDCB)調査プログラム組織開発プログラム・マネジメント部 部長

 新興国では、都市経営の需要と圧力が増しているが、地元のリソースと能力を超えている。そこで、計画、政策立案、開発、能力開発、知識管理で連携が必要だ。 我々には、特に知見を必要とする五つの優先テーマがある。総合的な開発と空間計画、交通・輸送管理、固形廃棄物管理、上下排水管理、防災だ。セブにおいては、縦割り型の計画策定や政策決定がまだ多く、知見共有のための経常的なメカニズムが無いことから、MCDCBが対策に取り組んでいる。

Ilangange Vipulaguna Premalal Dharmawardhanaコロンボ市獣医部 主任獣医

 我々は、グッドガバナンス、官民の連携、系統だった開発を進める必要があった。まず行ったのは、ガバナンスの改善とICTを使った知識の利用だ。2016年12月からは、市民参加制度が始まる。 また、道路整備、環境改善、市民の健康に取り組んでいるが、資金面や人材面のリソースと、持続的な政治コミットメントが課題となっている。

 スマートシティは持続可能で、強靭で、暮らしやすくあるべきだ。しかし、スマートシティの理想と現実には、ギャップがある。そこを埋めるには、知見を共有する必要がある。共有すべき知見は三つある。①課題は何か、②技術、資金スキーム、新しい政策体系を含む、ソリューションは何か、そして最も重要なのが③ビジョンだ。 では、その知見を誰と共有するか。それは、中央政府、地方政府、市民、民間の大企業、そしてベンチャーだ。ベンチャーを入れたのは、今後、プロトタイプの価値感が重要だからだ。

石井 亮PwC アドバイザリー合同会社都市ソリューションセンター マネージャー

 北九州市は2010年6月に、アジア低炭素化センターを設立した。公害を克服した当市の経験など地元資源を活用し、環境ビジネスの視点からアジアにおける低炭素開発を推進している。アジアの57の都市において、106の企業や大学とともに、141のプロジェクトを行った。 このイニシアチブを効果的に行うため、北九州の今までの知識を蓄積した北九州モデルを策定した。これを使い、アジアの都市がグリーンシティに向けたマスタープランを作成する手伝いをしている。こういったイニシアチブにおいて、各都市の歴史的、経済的、社会的な背景を大切にしている。そして、それらの都市と友好的な関係を築きたい。一例は、2014年に姉妹都市となったベトナムのハイフォン市だ。北九州市が策定を支援したグリーン成長推進計画に基づき、ハイフォン市が都市の環境を改善していく。

石田 謙悟北九州市環境局 環境国際戦略担当理事

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Vallop Suwandeeバンコク都バンコク都知事最高顧問

 2011年にバンコクで洪水が発生した。原因としては、政府省庁が河川管理をしっかりしなかったこと、公共水路に不当に居住する人々の存在が、挙げられる。 バンコクには1,682の運河がある。複数の政府省庁が水路沿いの土地を所有しているが、調整が行われず、生活者の侵入を防げなかった。政党も対策に躊躇してきた。 バンコク都は、市民参加によりこの問題を解決することにした。市民と協議し、共同調査を行い、計画を策定し、市民に自主管理させた。また、社会開発・人間安全保障省の協力を得て、貯蓄融資協同組合を設立した。これらにより、水路沿いに新しい住宅が建設された。

Shaik Aleem Bashaカキナダ市行政長官

 カキナダは、人口40万人だが、インド政府からスマートシティ開発の指定を受けた。スマートシティ開発に向けて、いくつかの課題がある。市民の40%以上について経済発展が進んでおらず、生計を向上させる必要がある。また、インフラの整備と維持、従事する職員の能力開発について支援が必要だ。横浜市と世界銀行TDLCと、技術支援の都市間連携を進めたい。

Takalani Edward Rathiyayaダーバン市経済開発・投資促進部 副部長

 自治体ラーニング・イニシアチブというものを立ち上げた。ダーバン市として学習したことを1つのプログラムにまとめ、南アフリカ、さらにはアフリカ全体の市町村と共有するものだ。 本日の発表のなかで、1974年にも同じような課題について議論していたと聞き、驚いた。こうした課題が消えることはなく、継続して都市開発と人々の生活の質の向上に取り組まなくてはいけないということだ。他の都市と学び、共有する機会があれば、よりスマートで、競争力ある都市になれると思う。

Gil-Hong Kimアジア開発銀行(ADB)持続的開発・気候変動局 上級部長

 どのように都市間連携と大学間連携を結び付けたら良いか。横浜市は、長期にわたりマレーシアのペナン市と連携している。横浜市大も、ペナンのマレーシア科学大学と連携している。JICAが、横浜市とペナン市の都市開発における草の根協力のプロジェクトを立ち上げた。これにより、大学も都市間連携に関わる機会がある。こうしたスキームを多都市間の連携に発展させることができる。 横浜市大は大都市にあるので、都市計画や都市インフラの建設・管理などについて先進的な技術を持っている。それを世界の都市に移転していきたい。2009年、持続可能な都市に関する国際アカデミックコンソーシアム(IACSC)というアジアの大学の連合体を組織した。主に研究における連携を行うとともに、都市課題共通教育プログラム(SUDP)や、横浜都市解決学(YUSS)を行っている。

井村 秀文横浜市立大学グローバル都市協力研究センター 特任教授

 1974年、世界銀行が開催した都市開発の会議に参加した。その会議では皆ハード面に関心があったが、帰国してソフト面も大事だと考えた。そこで、人口14万人の東京郊外の武蔵野市で、スマートシティと呼べるソフト面のコンセプトを立ち上げた。 まずやったことは、都市づくりへの市民参加。これにより、様々な資産が動員される。さらに、ビジョンの共有ということで、市民が参加して、自治憲章を1976年に策定した。2つ目は、政策。しっかりとした計画を立てることだ。市民が参加して長期計画を策定した。また、参加するには人々が健康でなければいけないので、社会保障制度を整備した。もう一つは、統合。つま

廣野 良吉Y-PORT センター・アドバイザー/成蹊大学 名誉教授

モデレーター

Lakambini Generans Reluyaサンフェルナンド市市長

 地方自治体として、防災に対する市民の意識と理解を高めている。フィリピンは、地震地帯であり、太平洋台風ベルトの中にある。また、気候変動により災害が起こりやすく、かつ被害が悪化しやすくなっている。 市の防災部門には、緊急時のコマンドセンターがある。複数のセクターが参加し、今までの知識とリソースを最大限活用している。また、その機能を高めるために能力開発に投資している。

り、エンパワーメントと公平性。また、すべての関係者が何をやってきたかモニターし、評価するなど、資源の無駄遣いがないか効率性を重視した。最後に透明性。多くの透明性の指数を用意した。 環境のみならず、経済的、財政的、社会的、そして文化的な持続可能性が大事だ。

 14名のパネリストの方々から、どういった知識がスマートシティでは必要なのか、また、どういった課題に直面しているのか、そしてどういう提案があるのか、を発表していただいた。グッドプラクティスとして共有すべきものもあった。

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開会挨拶

ラウンドテーブルセッション

 アジアの都市の多くは、人口急増など共通の課題に直面している。都市のありよう、発展段階はそれぞれに異なるが、誰もが目指す共通の都市像が「スマートシティ」である。近年、スマート関連のテクノロジーの進化は目覚ましいが、必要な技術は都市によって異なり、スマートシティを確立する上で最も重要な要素は、技術そのものよりも、それを選択し用いる「人」であるといえる。私たちリーダーは、住民、企業、関係機関と共に、その都市に最適なスマートシティへの道筋を考え、最も効果的な技術を選択しなければならない。 アジアの都市は個性にあふれており、この多様性は活力の源泉だ。ともにアジアの多様性に富んだ成長を実現していくために、皆様と議論を深めていきたい。 現在、モロッコ・マラケシュでCOP22が開かれており、この最終日に、本日の会議の議論をとりまとめた宣言を報告する予定にしている。将来を担う世代に希望あふれる未来を送り届けるため、本日お集りの皆様と、一層手を携え連携していきたい。

林 文子横浜市市長

 2015年の2030年アジェンダの採択、パリ協定の合意といった世界的な潮流の中、都市の役割の重要性は高まりつつある。2016年5月には富山でG7環境大臣会合が開催された。そこでは先進的な都市による取組の更なる支援、都市間連携の推進、都市の役割の主流化などが議長サマリーとして取りまとめられた。今後も、持続可能な社会への移行を目指す都市による積極的な取組を後押しするため、都市間連携を活用した国際協力事業に引き続き取り組んでいく。 「都市の役割」が重要になる中、環境省はスマートシティ開発に向けた様々な取組を実施している。途上国における低炭素都市づくりへの支援として、二国間クレジット制度(JCM)を活用した案件の形成を目指す都市間連携事業に積極的に取り組んできた。また、案件実施を資金的に支援する制度として、優れた低炭素技術、製品、システムを海外に導入する費用に対して補助を行っている。さらに、その他の資金支援としては、アジア開発銀行(ADB)にJCM日本基金を設置し、先進的な低炭素技術の導入を補助する仕組みを構築した。ナレッジ・マネジメントの観点では、ASEAN事務局などと連携し、2010年から環境的に持続可能な都市づくりの実現を支援するためのハイレベルセミナーを開催している。 2016年11月にモロッコのマラケシュで開催されたCOP22で、環境省は「日本の気候変動対策支援イニシアチブ」を発表した。このイニシアチブは、気候変動分野において日本の技術や経験をフルに活用し、途上国におけるパリ協定の実施を後押しすることを目指す。さらに、知見、経験の共有による適応能力の拡充として、2016年8月には気候変動適用情報プラットフォームを設置した。これは、アジア太平洋地域の気候変動の影響に関する情報を集約し、適用に関する国際的なハブ機能を有するアジア太平洋適用情報プラットフォームへと発展させることを目指している。

鎌形 浩史環境省地球環境局長

基調講演

 近年、アジアの新興国における経済発展は目覚ましいが、その反面、都市問題に対するニーズが急増している。これらは、日本がかつて高度経済成長期に経験、克服したものであり、日本の自治体には、

こうした問題に対処するノウハウが蓄積されている。また、日本の企業が有する高い技術力を用いれば、単に都市問題を克服するのみならず、環境に優しく便利で効率のよいスマートな街づくりを、アジア全域で、ともに進めていくことができる。我が国は、こうした豊富な経験や最先端の技術を惜しむことなくアジアの皆さんと共有したいと考えている。 アジアにおいて、膨大なインフラ整備が必要とされる中、街づくりの知見・経験を有する自治体や、優れた技術を有する民間企業の役割が、ますます重要になってきている。昨年、我が国が策定した開発協力大綱においても、官民連携や自治体連携による開発協力の推進を柱の1つとしている。高い技術を有する地方自治体が、主体的に途上国への無償資金協力事業を提案し、参加する枠組みに加え、外務省では、JICAと共にODAを用いて、高い技術を有する中小企業の海外展開を支援する事業を実施している。このような枠組みを、街づくりの主役である、ここにいらっしゃるアジアの自治体の皆様に積極的に活用していただき、アジアのスマートシティの開発が、力強く推進されることを期待している。

小田原 潔外務省外務大臣政務官

本会議

森 秀行地球環境戦略研究機関 (IGES)所長

モデレーター

 このセッションでは、分科会で報告された事項のサマリーと、三つのプレゼンテーション、そして簡易投票とそれを受けたディスカッションを進めていきたいと思う。

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04 議論したのは三つのポイントだ。一つは、スマートシティ開発の知見とは何か。ナレッジ・マネジメントの障害や制約は何か。三点目に、成功事例や提案は何か。最初のポイントだが、横断的なアプローチによる統合型の計画が大事だ。気候変動など新たな課題に関する特定分野の知見も、財政管理やグッドガバナンスとともに必要になっている。最後に、都市のリーダーが都市開発のビジョンをしっかり策定し、市民と共有することが重要だ。二つ目のポイントについては、縦割りの考え方、データ分析能力の不足、情報収集・共有システムの未整備、意思決定者のコミットメント不足が挙げられた。それらへの提言として、明確なビジョンの必要性、それを裏付けるデータと体制、様々なグループの積極的な参画、データ収集の透明性、知見の共有などが挙げられた。また、試験的な取組や二都市間の連携・学習プログラムの重要性にも言及された。成功事例として、ナガ市のコミュニティベースのモニタリングシステムやバンコクトにおける市民参加などが紹介された。ADBは横浜市と、フューチャー・シティ・プログラムのもとで総合的かつ長期的なアプローチによる知見の共有について連携を進めており、来年横浜で開催される第50回年次総会で発表したいと考えている。 以上まとめると、スマートシティ開発は、各都市の状況に応じてカスタマイズが必要であること。第二に、市民参加と、知見・情報の共有が非常に重要であること。第三点は、知見の共有は、実際の事業実施や投資につながらなければ意味がないこと、以上だ。

 三つの質問を投げかけた。一つは、国内資金動員の制約は何か。二つ目は、ODAの現況はどうなっているのか。三つ目は、民間資金を動員するにはどうしたらよいか。三つのポイントを紹介したい。第一点は、日本はインフラ開発に注力しており、提供できる資産がかなり大きいこと。つまり、日本の機関から得られるリソースは多いということだ。新た

な手法も紹介された。第二点は、国際機関はの資本基盤が増強され、多くの融資が可能になったほか、PPPなどの手法をさらに活用したいと考えている。また、プロジェクト関係の債券も使える。ただ、先進国で使われている地方債は、途上国では成功していない。第三点は、地方自治体のスマートシティ開発のための資金。リソースはたくさんあるが、地方自治体が必要とする額を借りることができていない。議論の結論は、中央政府の役割が重要ということだ。中央政府が貸し付けるとか、地方債を一定期間保証することが必要だ。

<分科会サマリー>

第一分科会「スマートシティ経営のベストプラクティス」

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

 各パネリストのプレゼンテーションを要約する。ダナン市は横浜市と都市開発フォーラムを過去4回開催したこと、カトマンズ市は市庁舎で紙の使用を20%にまで削減したことを発表した。また、カトマンズ市長の「スマートな市民なくしてはスマートシティはできない」という発言を受けて、ボパール市の代表からは「スマートかつ幸せな市民なくして

はスマートシティはできない」との意見があった。セブ市は、交通渋滞などの課題をPPPで解決したこと、コンソラシオン市は、教育により貧困率を27%から15%まで削減したこと、アンドラ・プラデシュ州は、州内の3都市がインド政府のスマートシティ開発の指定を受けたこと、プノンペン市は、公共バスに広告を掲載していること、ボパール市は、太陽光パネルを施設の屋根に取り付けたこと、チュニジアは、ガバナンスマネジメントの持続可能性を取り上げた。日本政府からは、内閣府から人口減少の中で地方を活性化すること、経済産業省からは、リサイクルと持続可能な都市の診断について発表があった。国連ハビタットからは、都市とSDGsの関わりについて紹介し、また民間企業のファインテックの取組は、多くの都市の代表者から期待されていた。

第三分科会「スマートシティ開発のための資金」

第二分科会「スマートシティ開発における民間の技術・ソリューション」

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

第四分科会「あるべきスマートシティ開発に向けたナレッジ・マネジメントの方向性」

Gil-Hong Kimアジア開発銀行(ADB)持続的開発・気候変動局 上級部長

 金融機関、国際機関、民間企業、各都市の代表が参加した。主要なテーマの一つは、テクノロジー企業は都市のスマートシティ化をどのように支援できるか。民間セクターと都市をマッチングし、デジタルソリューションを実施しなければならない。将来の鍵は、デジタルソリューションと都市の物理的なデザインをつなげることだ。持続可能な将来を築くための日本の役割について、様々な意見があった。日本は世界第3位の経済大国だが、海外での成長を考える必要がある。そして、横浜のような日本の都市は、世界の都市がスマートシティのコンセプトを学ぶ際の参考事例となる。また、横浜市が、産業界・国際機関・都市を集め知見を共有する場としてこの会議を開催していることは、素晴らしい貢献だ。将来のテクノロジーに今投資するための、クリエイティブなメカニズムを考えなければならない。私たちの行ったディスカッションの中には、テクニカルな解決策も出て来た。国際機関からも様々な提案が出され、都市と民間セクターをどうやってつなげていけば、都市が大きく変革できるか、という議論を行った。

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Barjor Mehta世界銀行都市管理 グローバルリード

Laxman Perera国際連合人間居住計画 (UN-HABITAT)福岡本部 ( アジア太平洋担当 )人間居住専門官

 この3~4年間、都市化に関する対話を続けてきた。次のアーバン・アジェンダの準備が国レベルで開始され、さらに地域レベル、さらにはグローバルなプラットフォームとして、今年10月にエクアドルのキトで開催されたハビタットⅢへと上っていった。国連加盟国が、前年のSDGs採択を受けて、一堂に会し、今後20年間の都市化に対応するためのビジョン、政治的なコミットメントに合意した。これは各国にとっての開発アジェンダと言える。また、社会的役割の遂行などの主要課題にどう取り組むのか、これを都市化の枠組みでどう解決していくかが議論された。また、市民社会や都市計画者なども一堂に会して、何が一番の原則かという点に注目した。包摂的なアプローチ、環境の持続可能性、持続可能で包摂的な経済成長の三つが原則として取り上げられた。さらに、ニュー・アーバン・アジェンダにおいて、都市の果たすべき役割が中心に置かれた。科学・技術をどのように都市化の動きに統合できるかということ、また、イノベーションや知見の共有などが、ニュー・アーバン・アジェンダの中で確認された。 このニュー・アーバン・アジェンダを国、都市、コミュニティへと結び付ていくことが次のステップだ。

森 秀行地球環境戦略研究機関 (IGES)所長

<プレゼンテーション>

<ディスカッション>

 横浜市がテクノロジー以外に、歴史や文化、人間中心の街づくりを行ってきたことをお話ししたい。 転機は、1960年代に横浜が、高度経済成長期の中で急激に人口が増加し、様々な都市問題に直面したことだ。1963年に革新的な市長が誕生

し、工業都市、港湾都市を目指すだけでなく、市民が主役の都市づくりも目指すようになった。新市長は、都市部の強化事業といった六大事業のほか、民間開発の誘導、それから都市デザインを都市づくりの三本の柱として位置付けた。 今日お話しするのは、都市デザインの七つの目標だ。第一目標は、安全で快適な歩行空間を作ること。第二、第三、第五の目標は、横浜の地域資源とか、地域の地形や植生、地域の歴史性や文化遺産、水資源を生かした街づくりを進めること。第四と第六の目標は、コミュニケーションの場を豊かにすること。第七の目標は、最終的に美しい街をつくることだ。こうした精神は、横浜市が進めている環境未来都市にも受け継がれている。そして今、SDGsの17の目標にも着実に取り組んでいこうと考えている。

秋元 康幸横浜市温暖化対策統括本部環境未来都市推進担当部長

モデレーター

 東京と横浜で、11月の14日から18日まで実施された、スマートシティをテーマとした第5回テクニカル・ディープ・ダイブについてお話ししたい。テクニカル・ディープ・ダイブというのは、一つのトピックを選んで深く学ぶものだ。今回は、9か国から12の都市、34名の代表が参加した。現在、都市化の歴史的な変遷の真っ只

中にあり、ICTが進化し続ける中で、この二つが交わるところがスマートシティである。貧困を削減し、繁栄を共有するためには、スマートシティが重要だと考えている。 四つの分野を選んだ。一つ目は、質の高いインフラについて。二つ目は、市民参加を確保するための都市課題。三つ目は、官民連携の必要性。四つ目に、どうすればスマートシティが全ての市民に経済的な恩恵を与えられるか。ピアツーピアの知見共有を重視しており、日本政府と都市パートナーシッププログラムを立ち上げ、海外の都市が成功事例である日本の都市を訪問できるようにした。

 ここで新しい試み、簡易投票を行おうと思う。三つの質問に四つの答えを用意したので、お手元の機器でご回答いただきたい。

質問1:スマートシティ開発に期待することは何か? 1.利便性の向上 2.都市の競争力の強化 3.効率的なエネルギー管理/気候変動対策 4.市民とのコミュニケーション強化

結果は、大体イーブンに分かれている。

質問2:スマートシティ開発を進める上での課題は何か? 1.資金調達 2.行政のナレッジ強化 3.市民の理解 4.その他

 結果は、ほとんどの方が、お金と行政担当者の知識を高めるのが鍵だと。

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Laxman Perera国際連合人間居住計画 (UN-HABITAT)福岡本部 ( アジア太平洋担当 ) 人間居住専門官

 スマートシティで重要な三つのポイントにつながると思う。適切なニーズの把握、知見の強化、利便性の向上の三つだ。

Gil-Hong Kimアジア開発銀行 (ADB)持続的開発・気候変動局 上級部長 三つの質問から、スマートシティとは、清潔で安全、廉価で強靭な都市サービスを、また、より良い未来を市民に提供するものでなければならないと再確認した。これには、市民ニーズの的確な把握、そして知見と資金が必要だ。ADB もその点を考えており、ファイナンス・プラス・プラスという形で支援している。資金支援に加えて、本当の都市ニーズとソリューションが何かを把握するための知見、さらに、より多くの資金を動員するための支援も提供する。

Bindu Nath LohaniY-PORT センター・アドバイザー/アジア工科大学特別名誉教員兼評議員

 最初の質問結果には驚かなかった。「上記全て」という第五の選択肢があれば、それを選んだだろう。 二つ目の、資金と知見が課題という結果も、人々が最善の資金活用方法を模索し、最良の知見有識者を探している現況を考えれば、予想通りだった。三つ目の結果も理解できる。ニーズが分からなければ、何を導入すべきかも分からない。

Alfonso VegaraY-PORT センター・アドバイザー/ファウンダシオ・メトロポリ代表

 私には驚きの結果だった。ここから導き出されることは、デジタル技術と都市のインテリジェンスをつなぐことが必要だと思う。都市のインテリジェンスとは、リーダーシップであり、都市のアイデンティティを把握することであり、ビジョンをもち、プロジェクトを実施すること、そして、目標達成に技術をどう活用できるか、ということだ。

Mary Jane Crisanto OrtegaY-PORT センター・アドバイザー/シティネット特別顧問

 一つ目の質問は、まさにスマートシティの定義とは何かということだった。二つ目の質問について、私の経験から言うと、都市開発戦略が資金をもたらすと思う。リーダーシップが力を発揮すれば、行政も非常にダイナミックになる。最後に、やはりニーズは把握しなければならない。ニーズに基づく採算性の問題だ。

Barjor Mehta世界銀行都市管理 グローバルリード

 投票結果は非常に興味深いものだった。都市は多様なので、スマートシティの定義は一つだけではなく、市民に強制することはできない。市民も多様なので、彼らの本当のニーズを理解することが大切だ。

 最初の質問で四つに分かれたのは、おそらく都市によってニーズが違うためだろうと思う。ニーズをよく確かめながら進める必要があるのだと感じた。一方で、知識や資金面の先進事例には共通点があるので、それを知ることが非常に大切だと思う。

秋元 康幸横浜市温暖化対策統括本部 環境未来都市推進担当部長

質問3:スマートテクノロジーの導入に向けた課題は何か? 1.採算性 2.適切なニーズの把握 3.行政との連携 4.その他

 結果は、50%以上が二番に集中し、次が行政との連携の難しさだ。 今の結果の感想を聞くところからディスカッションに入りたい。

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森 秀行地球環境戦略研究機関 (IGES)所長

第 5回アジア・スマートシティ会議における横浜宣言

 私たちは、過去5年にわたり、都市間相互の協力と連携をさらに深め、関係国際機関とともにアジアの持続可能な成長を目指して「アジア・スマートシティ会議」を開催してきました。

 私たちは、第3回までの会議の成果及び第1回並びに第4回「アジア・スマートシティ会議宣言」の精神に基づき、以下のことに合意しました。

1.第5回アジア・スマートシティ会議において、40を超える都市、国際機関、専門機関が一堂に会し、住みやすく持続可能性があり、災害に強く復元力のある都市やコミュニュティを実現するため、各々の課題や知見を集約するとともに実践的な議論を行いました。

具体的には、それぞれの専門的、技術的見地から、以下の4つのテーマによる意見交換を行いました。

1)持続的な開発に向けた都市間協力2)民間セクターの質の高い技術を呼び込み、スマートテクノロジーを通じた都  市課題解決を共に創造していくためのリーダーの役割3)スマートシティを実現するための幅広い資金の動員4)スマートシティ開発に向けた知見共有、人材育成のための効果的な手法

2.会議参加者は、「国連持続可能な開発目標(SDGs)」、「第3回国連人間居住会議(HABITATⅢ)」で採択された「ニュー・アーバン・アジェンダ」、「国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議(COP21)」で採択された「パリ協定」などの、地方政府や自治体の果たす重要な役割を認めた昨今の様々な国際的な枠組みについて考察しました。そして都市が、持続可能なスマートシティマネジメントを通じた都市の変革を確実なものとし、更なる発展をしっかりと遂げていくために、それぞれの都市のリーダーが、市民や企業と協力し、強い指導力を発揮することが重要であると再確認しました。

3.第4回アジア・スマートシティ会議において、会議に参加した都市や支援機関は「アジア・スマートシティ・アライアンス」を形成することを宣言しました。参加者は、このアライアンスがアジアにおけるスマートで持続的な開発のため、それぞれのメンバーが互いに結びつき、積極的な役割を果たすことができるものと期待しています。さらに、アライアンス間の知見の共有を強化していくことについても合意されました。

4.私たちは、この宣言を本日、モロッコのマラケシュで開催されている、「国連気候変動枠組条約第 22 回締約国会議 (COP22)」において報告します。

モデレーター

 これまでのポイントをまとめたい。まずはスマートシティという概念。元々の ICT 技術をベースにしたアプローチから参画型のものに変わってきたことだ。暮らしやすく、持続可能で、競争力ある都市をつくるために、テクノロジーが活用されるべきだ。 二つ目として、スマートシティに向けた持続可能な都市開発のアジェンダが、国際的に認識されてきたということだ。SDGs の世界的な取組の一つであり、ハビタットⅢでも持続可能な都市をつくることの重要性が再確認された。現在マラケシュで開催中の COP22 も、スマートシティを含む気候変動対策を推進する力強いメッセージを発信する予定だ。 最後に、様々なアクションが多くの都市で取られているが、実施という点に焦点を当てることが大事だ。そのためには、資金、知見共有、この会議のようなネットワーキングが非常に重要である。そうした観点から、昨年の会議で採択されたイニシアチブ、アジア・スマートシティ・アライアンス(ASCA)は有益であり、続けていくべきだ。

第5回アジア・スマートシティ会議宣言(横浜宣言)

 これまで議論した内容を「第5回アジア・スマートシティ会議における横浜宣言」として取りまとめ、林横浜市長とVallop Suwandeeバンコク都知事最高顧問が発表し、採択された。

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第二分科会

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ネットワーキングブレイク

全体会議 カクテルパーティー

集合写真