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ガスクロマトグラフについて (化学総合実験第一補足資料) ガスクロマトグラフィーの原理 ガスクロマトグラフ装置およびその使用法 データ集録ソフトの使用法 解析に関する参考資料 平成22325日改訂 用語補足説明 ガスクロマトグラフィー: 分析手法を指す ガスクロマトグラフ: 装置を指す ガスクロマトグラム: 測定結果のチャートを指す

ガスクロマトグラフについてkouchi/GC-Guide2010.pdfIntroduction to Gas Chromatography” by Drs. B. Kreuz and R. Dusenberyより転載)。ガスクロマトグラフィーの原理(2)

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ガスクロマトグラフについて (化学総合実験第一補足資料)

ガスクロマトグラフィーの原理

ガスクロマトグラフ装置およびその使用法

データ集録ソフトの使用法

解析に関する参考資料

平成22年3月25日改訂

用語補足説明ガスクロマトグラフィー:

分析手法を指すガスクロマトグラフ:

装置を指すガスクロマトグラム:

測定結果のチャートを指す

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ガスクロマトグラフィーの原理(1)本実験で使用する島津製ガスクロマトグラフGC8AIFでは、検出器として水素炎検出器、カラムとしてパックドカラムを採用している。キャリアーガスはN2を使用する。

ガスクロマトグラフィーは、カラム内の吸着剤との相互作用が分子ごとに異なることを利用して試料分析を行う分析方法である。

試料は、キャリアーガスに押し出されることにより、吸着剤を充填したカラム内を移動し、水素炎検出器に到達する。カラム内を移動するのに要した時間を「保持時間」と呼ぶ。

吸着剤表面と試料分子との相互作用時間は分子ごとに異なる。その違いはわずかであるが、カラムを移動する間、何回も吸着と脱離を繰り返すことにより、結果的に、保持時間の違いは相当なものになる。この保持時間の違いを利用して分子を分離検出し、試料中にどのような分子が含まれていたかを分析する(左下図参照)。

キャリアーガス(N2)

分析する試料

水素炎検出器(H2+圧縮空気)

カラム

3種類の異なる物質がカラム内を移動する様子を示した模式図

(”

Introduction to Gas Chromatography”

by Drs. B. Kreuz and R. Dusenberyより転載)。

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ガスクロマトグラフィーの原理(2)検出器に到達した分子は、水素による高温の炎によりイオン化される。できたイオンを電極により捕集し、イオン電流として測定することで、試料がカラム内を移動し終わり、検出器に到達したことを知ることができる。イオン電流値を時間を追って記録することにより左下図のようなガスクロマトグラムが得られる。ガスクロマトグラム上の各ピーク位置から保持時間を知ることができる。

各ピークの面積はイオン電荷の総量を意味し、イオン電荷総量はカラムを移動した元の分子の数に比例する。従って、ピークの面積からその分子が試料中に何モル含まれていたかを知ることができる。ただし、イオン化される効率は分子により異なるため、感度補正が必要である。この補正を行うためのファクターが「相対モル感度」である(本実験に関係ありそうな分子の相対モル感度はテキストに表としてあげてある)。相対モル感度を用いて補正を行うことにより、ガスクロマトグラム中にピークを与える各分子のモル比を知ることができる。さらに、反応においてcis-2-butenのほとんどは未反応であると仮定することにより、反応生成物のモル数を知ることができる。

保持時間保持時間

イオ

ン電

流※

実際

はイ

オン

電流

に比

例し

た電

保持時間は、カラム長さ、キャリ

アーガス圧力などの装置および

実験条件で異なるため、その絶

対値は大きな意味を持たず、解

析には相対値を用いる。

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ガスクロマトグラフ装置と使用法 (1)①

窒素ガスボンベの元栓、レギュレータバルブ、ストップバ

ルブ、本体バルブの順に操作し、始めに2~3分間程度、

窒素(キャリアーガス)をカラムに流す。ボンベの2次圧

は5kg/cm、本体への導入圧力は測定時の圧力に設定

(0.5kgf/cm2)する。本体バルブは、キャリアーガス1、2 とも使用する。

ガスクロマトグラフGC8AIF本体の電源を入れ、カラム温

度(COL)は60℃、インジェクション温度(INJ)は90℃に温

度設定する。

①と同様のレギュレータ操作により圧縮空気を水素炎

検出器に導入する(水素炎検出器は

1、2とも使用する)。

圧縮空気のレギュレータ2次圧は2kgf/cm2とし、本体へ

の導入圧力は本体バルブにより0.1kgf/cm2とする。本

体バルブにより本体への水素の導入圧力を0.9kgf/cm2

に合わせる。ライターを用い水素炎検出器に点火する。

点火後、火が点いていることを確認したら(注)、水素、

圧縮空気とも圧力を0.6kgf/cm2にする(このとき火を消

してしまわないようゆっくりと圧力を調整する)。

(注)水素と空気の燃焼なので、水蒸気が出る。ライターの先端を検出

器に近づけ、水蒸気がライターに付着するかどうかで点灯状態を

確認できる。

データ集録装置+PC

INJECTOR(試料導入口)

水素炎検出器

本体バルブ

レンジ切り替え温度設定(カチカチ(2回)で1レンジ変わる。)

こっちを使う0

0

0

水素発生器

キャリアーガス (N2)×1本圧縮空気×1本

ボンベ2本

ボンベ元栓

レギュレータバルブ

ストップバルブ 1次圧ゲージ

2次圧ゲージ

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ガスクロマトグラフ装置と使用法 (2)④

しばらくウォームアップ(つまり時間をおく)後、使用可

能となる。

注射器を用い、INJECTORから試料をカラムに導入す

る(次ページ参照)と同時にデータ集録を開始する(ソ

フトの使い方は後述する)。103のレンジで測定を開始

し、レコーダー上でスケールオーバーしそうになったら

レンジ切替スイッチにて感度を104にする。標準ガス

(スプレー缶)に対する測定のときは104レンジからス

タートする。

試料がカラムから排出され終わったらデータ集録を中

止する。

使用後の片付け:①

H2 、圧縮空気を止める。レギュレータのバルブを閉め

る(別のグループがガスクロマトグラフを使用していな

いことを確認してからバルブを閉めること)。

温度(COL、INJ)を室温以下に設定。COL温度が十分

室温以下になったらN2 を止め、電源を切る。 後にレ

ギュレータ、ボンベの元栓を閉める。カラム室のトビラ

を開けるとカラムからの放熱が速い。

データ集録装置+PC

INJECTOR(試料導入口)

水素炎検出器

本体バルブ

レンジ切り替え温度設定(カチカチ(2回)で1レンジ変わる。)

こっちを使う0

0

0

水素発生器

キャリアーガス (N2)×1本圧縮空気×1本

ボンベ2本

ボンベ元栓

レギュレータバルブ

ストップバルブ 1次圧ゲージ

2次圧ゲージ

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ガスクロマトグラフ装置と使用法 (3)~試料導入

試料採取のためには、まず液体窒素を用いて液体窒素を用いて試料採取セル内に分析したい

試料をトラップする。室温に戻した後室温に戻した後、試料採取用セルのシリコンゴムの部分

に注射器を刺し(注1)、注射器内に試料を微量採取する。注射器内の試料をガ

スクロマトグラフのINJECTOR部から試料をカラムに導く(注2)。

(注1)試料捕収容器はそのままでは減圧状態となっている。従って注射針を差し込

んでも試料を採取することができないので、容器のバルブを一旦開いて大気圧に大気圧に

戻してから戻してから試料採取を行うこと。※試料中に空気が入っても問題ない。ただし、このとき、長時間バルブ

を開けたままにすると、せっかくの反応生成物が飛び去ってしまうので注意する。シュッと音がする間だけバルブを開

けていれば良い。

(注2)INJECTORはキャリアーガスの影響で加圧状態になっているため、注射器のシシ

リンジ内筒を押さえながらリンジ内筒を押さえながら刺し込むこと(左図および写真を参照)。

(注3)INJECTOR部にもシリコンゴムが内臓されており、一回の分析において都合2

回注射針をシリコンゴムに刺す作業を行う。このとき注射針がゴム片で詰まってし

まうと、試料採取と分析カラムへの注入がうまくいかない。確認しながら作業を進め

るとよい。

注射器の扱いには十分注意すること。折れた注射針、割れたシリンジ(筒)は産廃となるので、ゴミ箱に捨てないこと。

試料採取セル

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データ集録ソフトの使用法(1) ~VI Loggerの起動

デスクトップ上の VI Logger(NI-DAQmx) アイコンをダブルクリックし、開いたウィンドウ左のツリー中にある、My VI Logger Task1 を選択する。

コレ

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データ集録ソフトの使用法(2) ~ベースライン補正

VI Loggerウィンド内の“Run task”をクリックし、電圧測定を開始する(詳しくは次ページ)。

まず、104レンジにし、電圧値を確認する。現在の測定電圧値はグラフの右上に表示される。

次に、103レンジにし、104のときとほぼ同じ電圧値を示すようにCoarseまたはFineつまみでベースラインを調節する。

Cis-2-butenを含むサンプルの分析を行う前には、ベースライン補正を行う。ガスクロ

マトグラフのウォームアップが十分できたら、以下に従いベースライン補正を行う。

前述のように、標準ガス(メタン、エタンなど)に対するガスクロマトグラフを測定するとき

は104レンジで、Cis-2-butenを含むサンプルに対しては103レンジで測定を開始する。

レンジ切り替えスイッチはココにある。

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データ集録ソフトの使用法(3) ~データ集録の開始

シリンジ(注射器)によりガスクロマトグラフへ試料を導入すると同時に Run task ボタンをクリックし、データ集録を開始する。

データ集録を開始する前に、次に続く2ページ

(オーバーフローに対する対応)と、重要な注意

事項のページは必ずチェックすること。

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データ集録ソフトの使用法(4) ~測定中

縦軸は±80mVが限界で、それを越えるとオーバーフローしてしまう。オーバーフローしてしまった場合、解析不能となる可能性が高いので、ディスプレイツールをうまく使い監視しながらデータ集録を継続する(次ページも参照のこと) 。

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データ集録ソフトの使用法(5) ~オーバーフローしそうだ!

オーバーフローしそうな(電圧が±80mVを超える)時は、レンジ調節つまみによりガスクロ本体の感度を10分の1に変える必要がある(例えば、 レンジを103→104に変更する)。この変更によりピークは右下に○印をつけた図のように見えるが、解析時にデータ加工し、滑らかにつなげることが可能である。

0

20

40

60

80

100

0

0

20

40

60

80

0

保持時間 保持時間

保持時間

0

50

100

150

200

250

300

0

本当はこんなピー

クだが・・・。

オーバーフローしてしまった。

これではピーク位置不明。

途中で感度を変える。

※ピーク強度が小さくなってきたら感度を元に戻そう。

ピークテールに含まれる小さなピークを見逃してしまう。

104画面上の電圧変動を良く見て、オーバーフローする

直前にレンジを変えるか否か判断します。

×

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データ集録ソフトの使用法(6) ~データ集録の終了とデータ保存

データ集録終了時は Stop task ボタンをクリックする(ソフトウェアの使用に際しては次ページに注意事項を列挙するので、データ集録終了前に必ず確認のこと)。その後、 View in Excel ボタンをクリックすることにより集録データを保存・解析することができる。

集録データは、班ごとにディレクトリをつくり、

ひとまとめにしておくこと。ディレクトリ名は、

自分達だけでなく、誰もがわかるような名前

が望ましい。例えば、マイドキュメント¥VI Logger Data¥My VI Logger task1¥2006年7班¥****.xlsなど。また、ファイル名も特徴あるものにして

おいた方が、他の班に上書き保存されてしま

う危険性が減る。保存したファイルは各自

USBメモリに速やかにコピーすること。ハード

ディスク内のデータは次年度4月に消去する。

自宅に解析用PCを持っていない学生は実験

室内のPC、および、プリンターを使用するこ

とができる。担当者に相談のこと。

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データ集録ソフトの使用法(7) ~ソフトウェア使用時の注意事項

“Stop logging”ボタンをクリックすると、データがリセットされ、データ集録は継続される。特に理由がない限り、クリックしない方が安全である。

“View in excel”ボタンをクリックすることによりエクセルに転送されるデータは、クリック時にグラフ上に表示されているデータのみである。従って、すべての集録済みデータを保存するためには、“View in excel”ボタンをクリックする前に、ディスプレイツール中の アイコンにてデータの全体を表示させること。データ転送に失敗したことが解析中に判明したときは、担当者に申し出ること。実験で使用したPCからオリジナルデータを再現できるかもしれない。

“View in excel”ボタンをクリックするとき、保存前のデータ(デフォルトのファイル名がつけられている)が表示されていると、エラーがでることがある。測定したデータは速やかにファイル名をつけ、保存しておくと良い。

これを怠ると解析時に延々と悩むことになるかもしれない。

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データ解析(ピーク同定) ~1/3まずは標準ガスのガスクロマトグラムと比べ、メタン、エタン、エチレン、イソブタンが含まれているか確認しよう。

※ただし、試料導入やデータ集録開始のタイミングはばらつく上、キャリアガス圧力などにも時間変動があ

るため、完全に一致することは稀であろう。種々の要因による保持時間のばらつきを見るため、分解

生成物分析の前後に標準サンプルのガスクロマトグラフを測定しているはずである。

それ以外のピークについては、次ページの表を参考に同定する。

それでもわからなかったら、次々ページの沸点と相対保持時間との関係を利用し、推定する。ただし、この方法による同定の精度は低い。

実験室には、下に上げた標準サンプルも用意してあるので、それらの保持時間を測定し、比べてみることができる。希望する場合は申し出ること。

1-ブテン、イソブテン、プロパン、プロピレン、n-ブタン、アセチレン、トランス2ブテン

なお、今回使用したカラムの仕様は以下のとおり。

ステンレス製内径3mm、長さ3m、充填剤=ODPN(β,β’-Oxydipropionitrile)/wt. 16%; 活性アルミナ担体; 高使用温度90℃; 粒度60~80

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データ解析(ピーク同定) ~2/3今回使用するカラムでの各種炭化水素の相対保持時間とモル感度を下表に示す。

相対保持時間 沸点/℃ 相対モル感度

水素

メタン 0.15 -161.5 0.95

エタン 0.19 -88.6 2.0

エチレン 0.21 -103.7 2.0

プロパン 0.34 -42.1 3.0

プロピレン 0.40 -47.4 2.9

Iso-ブチレン 0.87 -6.9

n-ブタン 0.69 -0.5 4.0

Iso-ブタン 0.61 -11.7

アセチレン 0.35 -84.0 2.2

1-ブテン 0.84 -6.3 4.0

Trans-2-ブテン 0.98 0.9 3.9

Cis-2-ブテン 1 3.7 3.9

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データ解析(ピーク同定) ~3/3近似的に、「物質の沸点と保持時間(ガスクロマトグラフのピークを与える時間(ピーク位置))の相対値との間の関係は、直線になる」ことが知られている。これを利用すると、例えばメタンとCis-2-ブテンのピークがはっきりしているとき、この2点から得られる一次関数から未知ピークの大まかな沸点が予想できる(下図参照)。この沸点の予想から未知試料の見当をつけることができる。

沸点

相対

保持

時間

の対

メタン

Cis-2-ブテン×

未知のピークの

相対保持時間

沸点の近似値がわかる

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データ解析(定量)

また、水素炎イオン化検出器におけるガス状炭化水素の相対モル感度は、ほとんどその炭素数に比例している。データ解析(ピーク同定)2/3ページの表に文献値を示す(「 新ガスクロマトグラフィー11 応用編」 船坂・池川編著、広川書店(1965)p350より)。相対モル感度とガスクロマトグラフ・チャート上のピーク面積比とから、各物質の生成モル比がわかる。もちろん測定を行った時のAttenuation、Range(レンジ切り替えつまみで選択する)の補正は必要であるので、測定中には選択したレンジのメモを忘れないこと。

例えば、注射器の中に物質Aと物質BがそれぞれnA、nBモル含まれているとする。物質Aと物質Bの相対モル感度がそれぞれCA、CBのとき、ガスクロマトグラフ上のピーク面積比は、(nA×CA):(nB×CB)となる。この関係を利用すると、実験で得られた面積と既知の相対モル感度とから、物質Aと物質Bのモル比を知ることができる。

以上の手順で、反応によって何が、どのくらい生成したかを求める。

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データ解析に関する参考(1) ~データ形式

データ番号

時間“13分00.7秒”

電圧

エクセルファイル

を作った時刻スキャンレート

一行目はバグか?意味不明。

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データ解析に関する参考(1) ~エクセルによるグラフ描画

グラフウィザードから散布図を選択し、 ここをクリックしてX、Yのデータ範囲を指定する。

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データ解析に関する参考(2) ~マクロの利用グラフ描画、ベースライン差引作業を容易にするため、エクセルのマクロを用意した。以下の要領でマクロを読み込み、実行すると(多分)楽である。

エクセルのメニューバーから、[ツール(T)]-[マクロ(M)] -[Visual Basic Editor(V)] を指定し、

VBEウィンドウを起動する。

VBEウィンドウメニュー[ファイル(F)] -[ファイルのインポート(I)]を指定し、次のファイルを読み込

む。

マイドキュメント¥VI Logger Data¥My VI Logger task1¥Module1.basマイドキュメント¥VI Logger Data¥My VI Logger task1¥Module2.basマイドキュメント¥VI Logger Data¥My VI Logger task1¥frmIntegrate.frm

エクセルウィンドウに戻り、

[ツール(T)]-[マクロ(M)] -

[マクロ(M)] と指定し、マクロウィンドウか

ら“CopySheet”を実行する。ベースライン差引の図を、適宜縦軸を拡大するなどしながら見て、

ベースラインを検出し、赤色のセルにベースライン値を代入すると、ベースライン差引が行える。

数値積分にてピーク面積を求めるために、”PeakAreaSearch”マクロを用意した。“CopySheet”マ

クロを実行した結果に対して”PeakAreaSearch”マクロが実行できる。

上記3つのファイルと”frmIntegrate.frx”の計4個のファイルをコピーすることで、自宅などのPCで

もマクロが使用できる。

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データ解析に関する参考(3) ~レンジ変更に対する補正

測定中にレンジを変更した場合は、下図のようなガスクロチャートが得られるはずである(「オーバーフローしそうだ! 」ページを参照)。このような時は、真ん中のへこんだ部分を10倍するか、または、真ん中を除く両端の部分を1/10倍することにより、データを滑らかにつなげることができる。

定数倍の計算はエクセルでやればよい。

0

20

40

60

80

0

例えばA1セルの値に10を

かけた値をB1セルの値と

してほしい場合は、左図の

ようにB1セルに式を書くこ

とにより、右図のような結

果を得る。

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例えば、左上図を与えるような(x,y)データ列

に対し、C26セルに”=(A27-A26)*B26”のように数式を代入することにより左下図の矩形の

面積を求めることができる。

この計算式をC列の他のセルにコピーすれば、左下図の矩形の面積をすべて求めることが

できる(ただし 下行のデータのみ無効であるので注意)。ピーク周辺の矩形面積の和をと

ることによりピーク面積を得る。なお、和をとるときは、“=sum(B1:B99)”などという数式により

B1~B99セルの和を計算することができる。

より精度の高い数値積分法としては、台形則、シンプソン則を使う方法などがある。

データ解析に関する参考(4) ~エクセルによる数値積分(区分求積法の例)

0

0

(xi , yi )

(xi+1 , yi+1 )

矩形の面積= (xi+1 –xi )× yi

A B25 : :26 x i y i

27 x i+1 y i+1

28 x i+2 y i+2

29 : :

A B C25 : : :26 x i y i = (A27-A26)*B26

27 x i+1 y i+1

28 x i+2 y i+2

29 : :