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Copyright © ALOX Co., Ltd. All Rights Reserved 財務分析のミカタ 2016/4 Vol.02 特集記事 バブル後、最も数値が増えている勘定科目とは? Copyright © ALOX Co., Ltd. All Rights Reserved バブルのピークを1990年として、バブルの前10年とバブル崩壊後 の失われた20年と言われている2010年までの、通算30年間で日本 の法人企業の財務構造がどのように変化してきたのでしょうか? ■バブルって何? 株式や不動産を中心にした資産の過度な 高騰、経済拡大期間を示します。 1980年代後半には、「東京都の山手線内 側の土地価格でアメリカ全土が買える」 という試算がされるほどに、土地の価格 が高騰しました。 日経平均株価は1989年12月29日の大納 会に、史上最高値38,957円を付けるなど し、資産価格のバブル化が起こりました バブル期、多くの企業が不動産や株式といった資産を購入し、 貸借対照表の資産の部(特に有形固定資産)が膨張しました。 その原資は、銀行からの借入金で賄われ、貸借対照表の負債 の部も比例して膨張しました。 <バブル前とバブル期の貸借対照表イメージ図> ■バブル後の貸借対照表の構造 販売債権(受取手形・売掛金)、 仕入債務(支払手形・買掛金)、 ともに縮小している。 単純に言えば、「売ったら早く 回収する」、「仕入れたら早く 支払う」ようになったため、 企業間信用は全体として縮小し、 立替期間の改善がすすんでいる。 つまり、運転資金のニーズは、 縮小したと言えるだろう。 財務分析・与信管理に役に立つ情報提供を目的としたニュースレター 流動資産 有形固定 資産 投資等資産 流動負債 長期負債 純資産 流動資産 有形固定 資産 投資等資産 流動負債 長期負債 純資産 バブル前 バブル期 急激に資産と負債が膨張! 急激に資産と負債が膨張! 200 100 1990 2000 2010 受手・売掛 91 支手・買掛 66 企業間信用 1980年を100%とした場合、各勘定科目はどのような推移を辿るのか、 下記の図は日本統計年鑑(基本は法人企業統計年報)を基に作成したも のである。 企業数は増加傾向ではあるが、 短期・長期・社債をあわせた 借入金は、1990年の462兆円を ピークにして、2010年には 398兆円に減少している。 借入金が減少している理由は、 立替期間が縮小した結果、運転 資金が昔ほど必要がないことも 1つの要因だろう。 また、借入金以外の資金調達 方法、特に資本増強の手段が 多様化したことも、借入金 減少の要因と考えられる。 一方で、純資産は増加しており、 企業の内部留保の充実を物語ると 共に、設備投資等の攻めの経営に 億劫な日本企業を表している とも言える。 400 300 200 借入金 152 現預金 134 100 純資産 385 1990 2000 2010 負債・資本等

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財務分析のミカタ 2016/4 Vol.02

特集記事 バブル後、最も数値が増えている勘定科目とは?

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バブルのピークを1990年として、バブルの前10年とバブル崩壊後の失われた20年と言われている2010年までの、通算30年間で日本の法人企業の財務構造がどのように変化してきたのでしょうか?

■バブルって何?

株式や不動産を中心にした資産の過度な高騰、経済拡大期間を示します。 1980年代後半には、「東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買える」という試算がされるほどに、土地の価格が高騰しました。 日経平均株価は1989年12月29日の大納会に、史上最高値38,957円を付けるなどし、資産価格のバブル化が起こりました

バブル期、多くの企業が不動産や株式といった資産を購入し、貸借対照表の資産の部(特に有形固定資産)が膨張しました。その原資は、銀行からの借入金で賄われ、貸借対照表の負債 の部も比例して膨張しました。

<バブル前とバブル期の貸借対照表イメージ図>

■バブル後の貸借対照表の構造

販売債権(受取手形・売掛金)、 仕入債務(支払手形・買掛金)、 ともに縮小している。 単純に言えば、「売ったら早く 回収する」、「仕入れたら早く 支払う」ようになったため、 企業間信用は全体として縮小し、 立替期間の改善がすすんでいる。 つまり、運転資金のニーズは、 縮小したと言えるだろう。

財務分析・与信管理に役に立つ情報提供を目的としたニュースレター

流動資産

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バブル前 バブル期

急激に資産と負債が膨張! 急激に資産と負債が膨張!

200

100

1990 2000 2010

  受手・売掛 91

   支手・買掛 66

企業間信用

1980年を100%とした場合、各勘定科目はどのような推移を辿るのか、下記の図は日本統計年鑑(基本は法人企業統計年報)を基に作成したものである。

企業数は増加傾向ではあるが、 短期・長期・社債をあわせた 借入金は、1990年の462兆円をピークにして、2010年には 398兆円に減少している。 借入金が減少している理由は、 立替期間が縮小した結果、運転 資金が昔ほど必要がないことも 1つの要因だろう。 また、借入金以外の資金調達 方法、特に資本増強の手段が 多様化したことも、借入金 減少の要因と考えられる。 一方で、純資産は増加しており、 企業の内部留保の充実を物語ると 共に、設備投資等の攻めの経営に 億劫な日本企業を表している とも言える。

400

300

200

借入金 152

現預金 134100

純資産 385

1990 2000 2010

負債・資本等

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【編集後記】

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目玉 情報

アロックスのホームページにおいて、 財務分析ブログを週1回更新しています。 <ブログタイトル一覧> 2016/01/05 銀行における審査部の廃止 2016/01/13 74%の決算書は不適切? 2016/01/19 新規上場社数が6年連続増加。 2016/01/26 今年の倒産を予測する - 2016年 - 2016/02/02 粉飾の動機 ≒ 「対外信用の維持(獲得)」 2016/02/09 利益操作の傾向を知るための2つのポイント 2016/02/16 取引先評価の肝は、因果関係の調査 2016/02/25 新たな取引先評価ポイント-ブラック企業編- 2016/03/01 シャープ買収報道で出現した 新キーワード=潜在的債務(偶発債務) 2016/03/09 緊急支払い能力と倒産の関係は? 2016/03/15 「企業評価におけるスコアリング」の終焉 2016/03/22 5年で売上が500倍! 急成長からの倒産そのワケとは? 2016/03/29 “迷走”を体現したようなシャープの買収劇 ぜひ、弊社サイトへお越しください。

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ブログ、メルマガ、ニュースレターなど、最近はライター業務の数がバブルなみに、膨張しています。まあ、書くことは嫌いでもないですし、反応を頂く事があったりして、楽しいと思えることも多いです。ただ、大半は頭を悩ます時間で、苦しい思いをしています。セミナー講師を務める時も同様に、1ヵ月ぐらい前から、頭を悩ませて苦闘しています。 自己満足のきらいはありますが、こういった苦闘を続ければ続ける程に、文章の精度や内容が高まるような気がしています。経験は神様だと思います。 (塙)

棚卸資産は縮小しており、「在庫保有=悪」という考えが企業に浸透しているようだ。 固定資産は増えており、中でも投資勘定は突出している。これは企業のM&Aやグローバル化にともなう海外進出の気運と軌を一にするものと言える。これは上場企業に限った話ではなく、非上場企業でも事業承継やM&Aにより、投資勘定が増加傾向であることは留意しなければならない。 一部の企業では分不相応な投資勘定の拡大及び無形固定資産の拡大が散見される。即ち、世界的な低金利政策が借入金調達を楽にし、この借入金で企業買収することによって売上高のカサ上げや、シェアー拡大を図る動きが横行している。その結果、過大な無形固定資産を計上する企業が増加しており、「のれんの定期償却不要の国際会計(IFRS)」の導入が これに拍車をかけている。 その代表がソフトバンクであると言え、そのリスキ-さはバブル時代の巨大倒産企業も顔負けである。その経営姿勢はバブル時代の帝王達が「儲けは自分のもの、損は債権者のもの」として行動した姿に似ている。 <参考> 無形固定資産の拡大は全部の企業で見られるわけではないが、M&Aにからみ一部の企業では無形固定資産が総資産の50%を超えるものが出現している。倒産企業1000社でみると、15社(1.5%)の企業で観察された。生存企業3000社でみれば、無形固定資産が総資産の50%を超えている企業が13社(0.4%)ほどあり、このうち5社はその後の一年間で倒産している。これは必ずしも少ない数字ではない。バランスシートを審査担当自身で目を通せば、すぐ気づくような異常であるが、昨今のように入力がOCR化され自動読取りになってしまうと見過ごされやすい。これを上場企業に限ってみると、無形固定資産額が純資産額を超えるものが47社あったが、このうち24社が上場廃止に至っているということである。言い換えれば、無形固定資産額が純資産額を超えるようになったら、早晩その内の半分以上が上場廃止の憂き目に合うということになる。 バブル時代とは異なった新しいリスクの時代が始まろうとしている。

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※ このレポートは、2015年7月の「アラーム管理システムバージョンアップセミナー」における 伊藤信用情報株式会社が講演した「財務構造の変化とこれからの財務分析」を編集して作成しています。