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イノベーションケーススタディ 「買収防衛を巡る状況」 本資料に記載しておりますスキームに関わる法務上、税務上、会計上の各処理方法及び法令などの改正につきましては、内容を確約させていただくものではございま せん。専門家にご確認頂きます様お願い申し上げます。 三菱UFJ信託銀行株式会社 証券代行部 ストックソリューション室 東京大学大学院工学系研究科 講義資料(20116142011621

イノベーションケーススタディ 「買収防衛を巡る状 …2011/06/14  · 表面上純投資又は政策投資を目的としながら、実際には経営参画を

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(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

イノベーションケーススタディ 「買収防衛を巡る状況」

本資料に記載しておりますスキームに関わる法務上、税務上、会計上の各処理方法及び法令などの改正につきましては、内容を確約させていただくものではございま

せん。専門家にご確認頂きます様お願い申し上げます。

三菱UFJ信託銀行株式会社

証券代行部

ストックソリューション室

東京大学大学院工学系研究科

講義資料(2011.6.14) (2011.6.21)

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2(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

TOB規制の概要

買収防衛策の導入(新規・継続)事例とその傾向

買収防衛策に対する投資家・株主の評価

買収防衛策の限界と企業側の取組み

敵対的買収攻防の実際(事例研究)

Ⅵ 演習

目次

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3(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

Ⅰ.

TOB規制の概要

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4(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

赤枠は金融商品取引法上の規制

黄枠は任意対応事項

公開買付者

公開買付開始日

公開買付終了日

公開買付開始公告

公開買付届出書

提出

公開買付説明書

交付

意見表明報告書

提出

(質問記載・期間延長請求)

期間延長請求公告

対質問回答報告書

提出

公開買付条件変更公告

公開買付結果公告

公開買付報告書

提出

買収防衛策の発動等

公開買付撤回公告

公開買付撤回届出書

提出

当座意見表明

任意質問書

任意回答書

プレス対応

機関投資家対応

株主向け勧誘文の発送

株主勧誘

従業員向け説明会

株主勧誘

公開買付期間

20~60営業日

公開買付時における対応事項

10営業日以内

5営業日以内

金融商品取引法におけるTOB規制

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5(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

公開買付者は、買付開始にあたり、公開買付届出書を内閣総理大臣に提出しなければならない(金商法第27条

の3第2項)。また、併せて株主に対して公開買付説明書を交付しなければならない。(金商法第27条の9第2項)

一方、対象会社は公開買付開始公告が行われた日から10営業日以内に意見表明報告書を内閣総理大臣に提

出しなければならない(金商法第27条の10第1項)。証券取引法下では任意であったが、平成18年の改正で義務

化されたもの。

公開買付者と対象会社との間の主張と反論が株主・投資家に見えるかたちで公開されることにより、投資判断の

的確性をより高める効果がある。

公開買付届出書(公開買付説明書)と意見表明報告書

公開買付届出書 意見表明報告書

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6(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

公開買付届出書(公開買付説明書)のポイント

1.対象者名

2.買付等をする株券等の種類

3.買付等の目的

4.買付等の期間、買付等の価格及び買付予定

の株券等の数

5.買付等を行った後における株券等所有割合

6.株券等の取得に関する許可等

7.応募及び契約の解除の方法

8.買付等に要する資金

9.買付等の対価とする有価証券の発行者の

状況

10.決済の方法

11.その他買付等の条件及び方法

公開買付要項記載事項

①「支配権取得又は経営参加目的」か「純投資又は政策投資目的」か表面上純投資又は政策投資を目的としながら、実際には経営参画を意図するようなTOBを予防するため、保有目的を細分化。

前者であれば、経営方針・経営参加後の計画について具体的に記載する必要がある。

②追加取得予定の有無はどうか当該TOBの後に、対象会社の株券等をさらに取得する予定があるか

否か、について理由・内容の記載。③上場廃止の見込み

上場廃止の見込みがある場合には、その旨及び理由の記載。②③とも少数株主の売却機会を実質的に保障する狙い。

①価格の妥当性②算定の基礎、算定の経緯

①買付予定額に満たない応募しかなかった場合の取扱い応募した分は買い付けるのか、予定額に満たなかった場合は全部買い付けないのか

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7(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

意見表明報告書のポイント

意見表明報告書記載事項

1.公開買付者の氏名又は名称及び住所

2.公開買付者が買付け等を行う株券等の種類

3.TOBに関する意見の内容、根拠及び理由

4.役員が保有する株券等及び議決権の数

5.公開買付者又はその特別利害関係者による

利益供与の内容

6.会社の支配に関する基本方針に係る対応

方針

7.公開買付者に対する質問

8.公開買付期間の延長請求

①意見の内容「公開買付に応募することを勧める」「応募しないことを勧める」「中立の立場をとる」「意見を留保する」の4つのいずれか

②意見の根拠意思決定に至ったプロセスを具体的に記載

③意見の理由賛否・中立の場合はその理由、留保の場合は理由と今後表明する予定の有無

10日間という早期段階での提出義務があることから、訂正報告が可能

対象会社は意見表明報告書に公開買付者に対する質問を記載するこ

とが出来る(金商法第27条の10第2項第1号)

また、公開買付者は5営業日以内に当該質問に対する回答等を記載し

た「対質問回答報告書」を内閣総理大臣に提出しなければならない(金

商法第27条の10第11項)

対象会社は、公開買付期間が30営業日より短い場合には、30営業日

まで延長することが出来る(金商法第27条の10第2項第2号、第3項、第

27条の14第1項他)

特に敵対的な買収のケースでは、株主・投資家の熟慮期間確保に資す

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8(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

ご参考:各国のTOBルール

米国 英国 日本

入口規制(TOBルール)は厳

しくないものの、企業による買

収防衛策*が発達

※州法による企業買収規制法もあり

・濫用的買収を入口段階

(TOBルール)で規制

・買収防衛策は原則禁止

濫用的買収に対する抑止力・

抑制効果は不十分

TOBルールの

適用範囲

原則5%超の買付

※規制適用範囲の明文規定なく、個別事

例ごとに適用要否がSEC又は裁判所が判

30%以上の買付

※市場内外問わず

5%超

(市場外で60日間に11名以上から買付)

1/3以上

(市場外で60日間に10名以下から買付)

対象会社の

意見表明

10日以内

※質問権なし

14日以内

※質問権なし

※買付者はTOB開始前28日間以内に

TOBの意思を対象会社へ通知

10営業日以内

※質問権あり

TOB期間 20営業日~ 21日~74日間 20営業日~60営業日

TOB撤回 ○×

(撤回にはパネルの承認必要)

TOB条件変更 ○×

(変更にはパネルの承認必要)

全部買付義務 × ○

(部分TOBを禁止) △

2006年にTOBルールは改正されたものの、欧米と比べてわが国の現在の法規制は、濫用的買収に対する抑止

力・抑制効果が不十分といえる。

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Ⅱ.買収防衛策の導入(新規・継続)事例とその傾向

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買収防衛策とは

買収防衛策の導入目的買収防衛策の導入目的

(事前警告型)買収防衛策とは(事前警告型)買収防衛策とは

◆STEP 1買収者に対してルール(検討期間確保、情報提供 )を課し、

◆STEP 2ルール違反の買収者や濫用的買収者に対しては対抗措置を発動するもの

買収防衛策

の目的

買収防衛策

の目的

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益を毀損することが明白である買収を止めること

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益を毀損することが明白である買収を止めること

株主共同の

利益の

確保・向上

株主共同の

利益の

確保・向上

・買収そのものを阻止できるものではない

・経営陣の保身を図ることを目的として買収防衛策が利用されることは、決して許されるべきものではない

・買収そのものを阻止できるものではない

・経営陣の保身を図ることを目的として買収防衛策が利用されることは、決して許されるべきものではない

(出所)経済産業省

企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(2008年6月30日)

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買収防衛策のスキーム

発動可決 発動否決

左記以外の場合株主共同の利益を著しく損なう場合

行なわない

期間不遵守

買 付 者 等 の 出 現

独立委員会型独立委員会型

意向表明書、本必要情報の提出

手続き不遵守の買付け

取締役会評価期間(原則、60日若しくは90日)

取締役会による評価、意見形成、代替案立案等

独 立 委 員 会 に よ る 検 討

独立委員会による発動の勧告

独立委員会による不発動の勧告

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議)

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議) 対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)

行なわない 行なう

当社企業価値・株主共同の利益を損なう場合

左記以外の場合

勧告を大限尊重

勧告を大限尊重

株主意思確認型株主意思確認型

買 付 者 等 の 出 現

意向表明書、本必要情報の提出

手続き不遵守の買付け

取締役会評価期間(原則、60日若しくは90日)取締役会による評価、意見形成、

代替案立案等

株主意思確認総会若しくは書面投票の実施

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議)

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議) 対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)

行なう

実質的対抗措置発動決定機関

発動可決 発動否決

左記以外の場合株主共同の利益を著しく損なう場合

行なわない

期間不遵守

買 付 者 等 の 出 現

独立委員会型独立委員会型

意向表明書、本必要情報の提出

買 付 者 等 の 出 現

独立委員会型独立委員会型

意向表明書、本必要情報の提出

手続き不遵守の買付け

取締役会評価期間(原則、60日若しくは90日)

取締役会による評価、意見形成、代替案立案等

独 立 委 員 会 に よ る 検 討

独立委員会による発動の勧告

独立委員会による不発動の勧告

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議)

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議) 対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)

行なわない 行なう

当社企業価値・株主共同の利益を損なう場合

左記以外の場合

勧告を大限尊重

勧告を大限尊重

株主意思確認型株主意思確認型

買 付 者 等 の 出 現

意向表明書、本必要情報の提出

手続き不遵守の買付け

取締役会評価期間(原則、60日若しくは90日)取締役会による評価、意見形成、

代替案立案等

株主意思確認総会若しくは書面投票の実施

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議)

対抗措置の発動(取締役会にて発動を決議) 対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)対抗措置の不発動

(取締役会にて不発動を決議)

行なう

実質的対抗措置発動決定機関

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12(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収交渉の進行と買収防衛策の効果

0.00%

5.00%

10.00%

15.00%

20.00%

25.00%

Oct-

04

Nov-

04

Dec-04

Jan

-05

Feb-

05

Mar

-05

Apr

-05

May

-05

Jun-05

Jul-

05

Aug-

05

Sep-

05

Oct-

05

Nov-

05

Dec-05

Jan

-06

Feb-

06

Mar

-06

Apr

-06

May

-06

Jun-06

Jul-

06

Aug-

06

Sep-

06

Oct-

06

Nov-

06

Dec-06

Jan

-07

Feb-

07

Mar

-07

Apr

-07

May

-07

Jun-07

Jul-

07

Aug-

07

Sep-

07

Oct-

07

0.00%

5.00%

10.00%

15.00%

20.00%

25.00%

Oct-

04

Nov-

04

Dec-04

Jan

-05

Feb-

05

Mar

-05

Apr

-05

May

-05

Jun-05

Jul-

05

Aug-

05

Sep-

05

Oct-

05

Nov-

05

Dec-05

Jan

-06

Feb-

06

Mar

-06

Apr

-06

May

-06

Jun-06

Jul-

06

Aug-

06

Sep-

06

Oct-

06

Nov-

06

Dec-06

Jan

-07

Feb-

07

Mar

-07

Apr

-07

May

-07

Jun-07

Jul-

07

Aug-

07

Sep-

07

Oct-

07

交渉・対応期間

ブルドック

vsスティール・パートナーズブルドック

vsスティール・パートナーズ

06/2/17 防衛策導入:サッポロ

06/3/30 総会決議:サッポロ

07/2/1 株主提案:スティール

15 意向表明書:スティール

07/3/1 必要情報リスト送付:サッポロ

29総会決議:サッポロ

07/5/15 回答:スティール

29 追加情報の提供要請:サッポロ

07/11/8 再回答:スティールスティール保有比率

(大量保有報告ベース)

スティール保有比率

(大量保有報告ベース)

サッポロHD

vs スティール・パートナーズサッポロHD

vs スティール・パートナーズ

07/5/15 意向表明書:スティール

18 公開買付開始:スティール

25 意見表明(意見留保&質問):ブルドック

07/6/1 質問回答:スティール

7 意見表明(反対意見):ブルドック

24 株主総会(新株予約権発動決議):ブルドック

07/7/11 新株予約権効力発生→希釈化

07/8/23 公開買付終了

提案検討評価

90日

12/6 評価期間開始

09/

02/

17

買収断念

防衛策ルールに則り交渉

08/3/10 条件変更:スティール

08/2/26提案に反対:サッポロ

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13(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収防衛策導入企業数の推移

敵対的買収への関心が高まったH17年から導入が始まり、その後ハイペースで増加したものの、H21年6月まで

の1年間の新規導入社数は30社、

H22年6月までの1年間では7社、H23年5月までの約1年間は6社と、従来か

ら導入ペースは大幅に鈍化。

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

導入時期別の導入企業数推移(累計)

143

225208

307 6

143

368

576606 613 619

0

100

200

300

400

500

600

700

~18年6月 18年7月~19年6月 19年7月~20年6月 20年7月~21年6月 21年7月~22年6月 22年6月~23年5月

新規導入社数

導入社数(累計)

※累計導入企業数には廃止した企業数を含みます。

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14(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収防衛策導入傾向の分析

①業種別

電気・ガス、空運、金融業等、参入に対する障壁が高い特殊な業種を

除き、全体として業種の垣根なく導入が進捗。

化学、電気機器、機械セクターにおける導入比率が高い。

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

0

10

20

30

40

50

60

70

ガラ

ス・土

石製

ゴム

製品

サー

ビス

その

他金

融業

その

他製

パル

プ・紙

医薬

卸売

化学

海運

機械

金属

製品

建設

鉱業

小売

証券

・商

品先

物取

引業

情報

・通

信業

食料

水産

・農

林業

精密

機器

石油

・石

炭製

繊維

製品

倉庫

・運

輸関

連業

通信

鉄鋼

電気

・ガ

ス業

電気

機器

非鉄

金属

不動

産業

輸送

用機

陸運

導入企業数うち新規導入

業種別の導入状況業種

導入企業数

導入比率

うち新規導入

ガラス・土石製品 22 3.6%ゴム製品 6 1.0% 1サービス業 40 6.5%その他金融業 1 0.2%その他製品 31 5.0%パルプ・紙 8 1.3%医薬品 15 2.4%卸売業 34 5.5%化学 59 9.5% 1海運業 4 0.6%機械 54 8.7%金属製品 21 3.4%建設業 15 2.4% 1鉱業 2 0.3%小売業 44 7.1% 1証券・商品先物取引業 4 0.6%銀行業 0 0.0%情報・通信業 38 6.1% 2食料品 43 6.9%水産・農林業 2 0.3%精密機器 16 2.6%石油・石炭製品 1 0.2%繊維製品 16 2.6% 1倉庫・運輸関連業 5 0.8%通信業 1 0.2%鉄鋼 24 3.9%電気・ガス業 1 0.2%電気機器 56 9.0%非鉄金属 8 1.3%不動産業 15 2.4%輸送用機器 14 2.3%

空運業 0 0.0%

陸運業 19 3.1%合計 619 100.0%

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15(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収防衛策導入傾向の分析

②上場市場別

この数年で、東証1部以外での累計導入数に

占める割合も高まっている。

東証1部企業で見ると、導入比率は約3割と

なる。

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

近の傾向

東証1部 62.5%

JQ 22.5%

大証1部 1.6%

福岡 0.2%

名証1部 0.5%

セントレックス0.5%

名証2部 0.5%

ヘラクレス 0.3%大証2部 2.6%

マザーズ 1.6%

東証2部 7.3%

東証1部71.9%

JQ 8.8%

大証1部 2.0%

名証1部 0.3%

マザーズ 2.5%

東証2部 8.7%

大証2部 2.9%

名証2部 0.7%

セントレックス0.8%

ヘラクレス1.1%

福岡 0.2%

アンビシャス0.2%

22年6月までの累計

23年5月までの累計

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16(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

ブルドック事件判決〈※〉を受け、H19年7月以降、発動時に株主意

思を問うスキームが増加。

一方で、客観性確保の観点から、独立委員会を発動判断スキー

ムに組込むパターン(BおよびD)が引続き主流。

また、継続事例においても、継続時点で発動時株主意思を問うパ

ターンへ変更(AやB⇒D)する事例が増加しており、導入当初から

みると、スキームDの占める割合が全体の4割強まで増加。

〈※

ブルドック事件 高裁判決〉

企業価値が毀損され、株主共同の利益が害されるかどうかは株主(総会)の

判断が尊重される。総会決議に瑕疵が無く、スティールが対価を受けていること

から、相当性には欠かない。

買収防衛策導入傾向の分析

③対抗措置発動時の判断主体別

対抗措置発動の判断主体を、以下4パターンに分類。

A:「取締役会判断型」

B:「独立委員会判断型」

C:「株主意思確認総会型」

D:「独立委員会と株主意思確認総会と両方で判断する型」

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

対抗措置発動判断主体別パターン

A 7.6%

B 67.2%

C 5.3%

D 19.9%

A 2.6%

B 49.9%

C 6.6%

D 40.9%

近の傾向

導入時点の状況

現時点の状況

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17(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

本6月総会で有効期限が到来(又は到来予定)であった事前警告型買収防衛策183社( ※ )につき、

有効期限到来時の動向(継続or廃止)を調査。

本6月総会で有効期限が到来(又は到来予定)であった事前警告型買収防衛策183社( ※ )につき、

有効期限到来時の動向(継続or廃止)を調査。

有効期限が到来した買収防衛策の動向

役員選任議案により継続した事例、総会後の取締役会で継続決議した事例を含む。

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

168社が継続、残りの13社は廃止。

継続率は92.8%

(参考)H22年6月総会における同動向:

185社中167社が継続

⇒継続率90%

有効期限到来後の動向

有効期限到来後の動向 社数

継続 168

廃止 13

廃止 7.2%

継続

92.8%

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18(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収防衛策廃止(非継続)事例

前総会までの1年間(H22年7月~H23年5月)では、下記25社が防衛策の廃止(非継続)を発表。

機関投資家等を中心に買収防衛策の導入に対し否定的な態度を取る株主が増加したことが、廃止の主な

原因と見られる。

(ご参考)廃止理由「金融商

品取引法の改正」について

・06年12月の金融商品取引

法の改正によりTOBの際の

株主・投資家への情報提供

の充実が図られたため、濫

用的買収を防止

するため

の一定の対応はなされたと

いう見方もある。

・但し、当然ながら金商法の

みではカバーできない点もあ

り、その点で依然として防衛

策(以下①~④は一例)は有

用と思われる。

①濫用的な買収への抑止効

②(ルールを守る買収者の場

合)TOB開始前の交渉時間

確保

③検討期間として一定日数

を確保可能

④買収についての充分な情

報の確保

※上場廃止・子会社化等による受動的な廃止は除く。

証券コード

社名 廃止日 廃止理由(非継続理由)

6496 中北製作所 H22.7.13 理由記載なし

3810 サイバーステップ H22.7.20 金融商品取引法による手続き整備、資本市場等の見解を反映

7514 ヒマラヤ H22.9.29 金融商品取引法による手続き整備

9978 文教堂 H22.10.26 金融商品取引法による手続き整備

1987 ソルコム H23.2.14 金融商品取引法による手続き整備

4351 山田債権回収管理総合事務所 H23.2.23 金融商品取引法による手続き整備、資本市場等の見解を反映

2150 ケアネット H23.2.28 金融商品取引法による手続き整備

7956 ピジョン H23.3.7 金融商品取引法による手続き整備

9681 東京ドーム H23.3.31 金融商品取引法による手続き整備

7649 スギホールディングス H23.4.12 理由記載なし

3946 トーモク H23.4.13 理由記載なし

8251 パルコ H23.4.20 金融商品取引法による手続き整備、株主構成の変化等を勘案

6868 東京カソード研究所 H23.4.26 中期経営計画の達成、金融商品取引法による手続き整備

7276 小糸製作所 H23.4.27 コーポレートガバナンスの強化

2715 エレマテック H23.5.10 金融商品取引法による手続き整備

6974 日本インター H23.5.10 財務体質を改善に伴い、株主安定化を促進

2730 エディオン H23.5.11 金融商品取引法による手続き整備

4555 沢井製薬 H23.5.12 企業を取り巻く経営環境の大きな変化

3004 神栄 H23.5.13 金融商品取引法による手続き整備、企業を取り巻く経営環境の大きな変化

6420 福島工業 H23.5.13 金融商品取引法による手続き整備、企業を取り巻く経営環境の大きな変化

6245 ヒラノテクシード H23.5.13 金融商品取引法による手続き整備、企業を取り巻く経営環境の大きな変化

6268 ナブテスコ H23.5.14 金融商品取引法による手続き整備

7945 コマニー H23.5.20 金融商品取引法による手続き整備

7774 ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング H23.5.20 企業を取り巻く経営環境の大きな変化

9113 乾汽船 H23.5.26 金融商品取引法による手続き整備

(※

適時開示・各社開示資料を基に弊社作成。)

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Ⅲ.

買収防衛策に対する投資家・株主の評価

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1.企業価値研究会

『近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方』①

今回の報告書(08/6公表)は、買収防衛策そのものを否定するものではなく、買収防衛策の

本来の目的を整理し、特に有事局面における買収防衛策の運用についてのガイドライン

との位置付け。

買収防衛策の設計上の留意点等を明らか

にし、平時における導入の考え方を整理

主眼点

報告書公表

の背景

有事における買収防衛策の運用につき、考え

方を整理

「企業価値報告書」(2005/5/27)

「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」

(2008/6/30)

・敵対的M&Aの経験の少ない国内市場

において、ルール未整備の状態を放置す

れば、奇襲攻撃や過剰防衛が繰り返され

る懸念がある

・敵対的買収や公開買付けのルールが確

立されている欧米にならい、日本におい

ても一定のルールが必要

・05年の企業価値報告書以来、企業における

買収防衛策導入がすすみ、上場企業の約1

4%が導入を決定

・日本技術開発事件、ニッポン放送事件、ブ

ルドックソース事件等、国内においても司法

判断が積み重なる中で、その運用(特に「発

動」)についての議論が過熱

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1.企業価値研究会

『近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方』②

買収防衛策

の目的

買収防衛策

の目的

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益*を毀損することが明白である買収を止めること

*「企業価値」:

概念的に企業が生み出すCFの割引現在価値を想定し、この概念を

恣意的に拡大解釈しないよう留意すべき

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益*を毀損することが明白である買収を止めること

*「企業価値」:

概念的に企業が生み出すCFの割引現在価値を想定し、この概念を

恣意的に拡大解釈しないよう留意すべき

*株主共同の利益:概念的には『キャッシュフローの割引現在価値』を指し、概念の恣意的に拡大して解釈してはならない

株主共同

の利益の

確保・向上

株主共同

の利益の

確保・向上

買収防衛策

の発動

買収防衛策

の発動

提案内容に踏み込んだ実質的判断に基づく防衛策発動は、買収に賛成する株主の株式売

却機会を奪うことになるため、原則として制限的であるべき

株主共同の利益を毀損する買収であり、金員等の交付を行わなくとも発動できると責任を

持って説明できる場合でなければ、防衛策は発動されるべきではない

提案内容に踏み込んだ実質的判断に基づく防衛策発動は、買収に賛成する株主の株式売

却機会を奪うことになるため、原則として制限的であるべき

株主共同の利益を毀損する買収であり、金員等の交付を行わなくとも発動できると責任を

持って説明できる場合でなければ、防衛策は発動されるべきではない

防衛策発動にあたり、買収者への金員等の交付は行うべきではない

買収者の経済的ダメージがなくなることで、防衛策ルールに則るインセンティブが生じな

くなる結果、防衛策発動を誘発する

善管注意義務を負っている被買収者の取締役は、買収提案が株主共同の利益に適うか否

かに関する第一次的判断を自らは回避し、形式的に株主総会に判断を委ねるのではなく、

責任をもって防衛策発動の要否判断をし株主に対する説明責任を果たすことが求められる

株主意思確認型の防衛策の否定ではない

防衛策発動にあたり、買収者への金員等の交付は行うべきではない

買収者の経済的ダメージがなくなることで、防衛策ルールに則るインセンティブが生じな

くなる結果、防衛策発動を誘発する

善管注意義務を負っている被買収者の取締役は、買収提案が株主共同の利益に適うか否

かに関する第一次的判断を自らは回避し、形式的に株主総会に判断を委ねるのではなく、

責任をもって防衛策発動の要否判断をし株主に対する説明責任を果たすことが求められる

株主意思確認型の防衛策の否定ではない

(企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」より弊社作成)

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1.企業価値研究会

『近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方』③

買収局面における取締役の行動のあり方(買収防衛策運用の基本的考え方)

株主以外の利害関係者の利益に言及し、防衛策により保護しようとする利益を不明確とするなど、

発動要件を幅広く解釈してはならない

被買収者の資産を担保としたり、遊休資産処分利益による高配当をさせる予定など、それのみで

は株主共同の利益を侵害するとまでは言い難い理由で発動の判断を行ってはならない

株主以外の利害関係者の利益に言及し、防衛策により保護しようとする利益を不明確とするなど、

発動要件を幅広く解釈してはならない

被買収者の資産を担保としたり、遊休資産処分利益による高配当をさせる予定など、それのみで

は株主共同の利益を侵害するとまでは言い難い理由で発動の判断を行ってはならない

発動要件発動要件

合理的な範囲を超えて、買収提案の検討期間を徒に引き延ばしたり、意図的な繰り返しの延長を

して、株主の買収是非判断機会を奪ってはならない

合理的な範囲を超えて、買収提案の検討期間を徒に引き延ばしたり、意図的な繰り返しの延長を

して、株主の買収是非判断機会を奪ってはならない検討期間検討期間

株主共同の利益向上に資するかという観点から、買収提案内容について、外部専門家の分析を

得るなど、財務的観点を含めた真摯な検討が行われなければならない

株主共同の利益向上に資するかという観点から、買収提案内容について、外部専門家の分析を

得るなど、財務的観点を含めた真摯な検討が行われなければならない真摯な検討真摯な検討

買収条件の改善による株主共同の利益に資するものとなる可能性がある場合、条件改善に向け

て買収者との交渉を真摯に行わなければならない

買収条件の改善による株主共同の利益に資するものとなる可能性がある場合、条件改善に向け

て買収者との交渉を真摯に行わなければならない

買収者との

交渉

買収者との

交渉

株主共同の利益を向上させる買収提案であると判断した場合、株主総会で株主意思を問うまでも

なく、直ちに防衛策不発動決議をしなければならない

株主共同の利益を向上させる買収提案であると判断した場合、株主総会で株主意思を問うまでも

なく、直ちに防衛策不発動決議をしなければならない不発動決議不発動決議

株主が買収の是非を判断できるよう、買収提案に対する評価などにつき、できるだけ事実に基づ

き、株主への説明責任を果たさなければならない

株主が買収の是非を判断できるよう、買収提案に対する評価などにつき、できるだけ事実に基づ

き、株主への説明責任を果たさなければならない

取締役会意

見の説明

取締役会意

見の説明

独立委員会を設置する場合、経営陣からの独立性を実質的に担保するとともに、勧告内容に従う

という判断に関する 終的な責任を取締役会は負わなければならない

独立委員会を設置する場合、経営陣からの独立性を実質的に担保するとともに、勧告内容に従う

という判断に関する 終的な責任を取締役会は負わなければならない

独立委員会

勧告

独立委員会

勧告

(企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」より弊社作成)

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<三菱UFJ信託銀行>

2.国内機関投資家

買収防衛策関連◆定款変更

特段の理由のない過大な発行可能株式総数の拡大、取締役解任の決議要件加重、合併・買収等の決議要件加重等の定款変更議案については、買収防衛策として経営陣の保身目的のために利用される可能性があることから、肯定的な判断は行いません。

◆敵対的買収防衛策事前警告型買収防衛策(ライツプラン)については、導入の必要性や発動時における意思決定の透明性・妥当性が確保されるべきであり、以下の項目について検討し、問題があると考える場合、肯定的な判断は行いません。

なお、防衛策が株主総会の議案として提案されない場合、取締役選任議案を通じて当該防衛策への意思表示を行います。

(イ)導入の必要性

防衛策導入が中長期的な株主利益の向上に資することについて十分な説明があるか

業績等の観点から防衛策導入の必要性が低いと考えられる状況にないか

(ロ)有効期間、導入・更新の要件

有効期間が3年以内であるか

導入時および更新時に株主総会決議による承認を経ることなく、かつ取締役任期を2年としていないか

(ハ)発動時の意思決定

特別委員会等を設置し、その勧告を受けて取締役会が判断する場合、独立社外取締役が選任されているか

株主総会等により、株主の意思を直接確認する場合、株主構成上妥当性があるか

(ニ)その他

買収者に付与された新株予約権等を経済的対価を支払うことにより取得することができる仕組みになっていないか

検討期間を延長する必要が生じた場合に合理的な理由を開示することが明記されているか買収者以外の株主間で公平性が保たれているか

(出処:各社HP上の議決権行使基準から抜粋し弊社作成)

<野村アセットマネジメント>

①合併、買収、その他の企業再編

合併、買収、その他の企業再編に係る議案は、株主価値に与える影響を勘案しながら、個々の事案に応じて検討を行うものとし

ます。

②買収防衛策買収防衛策については、個別に分析を行い、株主価値を守ると判断される場合を除き、反対します。

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3.ACGA(Asian

Corporate

Governance

Association)

日本のコーポレートガバナンス白書日本のコーポレートガバナンス白書

白書の提唱機関

・ACGA :アジアにおけるコーポレートガバナンスの長期的向上に取り組む独立非営利の会員制協会

・Aberdeen Asset Management :英系運用会社(運用資産2000億ドル)

・British Columbia Investment :カナダ 大の機関投資家(運用資産850億カナダドル)

・CalPERS :米国 大の公的年金基金(運用資産2400億ドル超)

・F&C Asset Management :英系運用会社(運用資産1040億ポンド)

・Hermes Fund Managers :英国の各種企業年金(BT、ロイヤルメール、BBCなど)運用を行う資産運用会社(運用資産340億ポンド)

・Railway Pension Investments :英国企業年金の投資管理会社(運用資産200億ポンド)

・Universities Superannuation :英国の主要教職員退職年金基金(運用資産300億ポンド)

◆買収防衛策について

・買収防衛策を採用するに当たって、他に効果的な選択肢がないか検討すること

・防衛策が必要とされた場合、カナダ型に倣い、防衛策の採用、変更に際して株主に賛否を表明

する機会を与えること

・TOBの際、株主に対して検討する時間と十分な情報を提供すること、買収提案を検討する独立

委員会は取締役会を通さずに、防衛策の執行と株主コミュニケーションを行う権限を持つこと

・取締役会の社外取締役の数を増やし適切な防衛策の運用ができるようにすること

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Ⅳ.買収防衛策の限界と企業側の取組み

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【再掲】

買収防衛策の効果について

買収防衛策の導入目的買収防衛策の導入目的

事前警告型買収防衛策とは事前警告型買収防衛策とは

◆STEP 1買収者に対してルール(検討期間確保、情報提供 )を課し、

◆STEP 2ルール違反の買収者や濫用的買収者に対しては対抗措置を発動するもの

買収防衛策

の目的

買収防衛策

の目的

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益を毀損することが明白である買収を止めること

A) 株主が買収の是非を適切に判断するための時間・情報及び買収者・被買

収者間の交渉の機会を確保すること

B) 株主共同の利益を毀損することが明白である買収を止めること

株主共同の

利益の

確保・向上

株主共同の

利益の

確保・向上

・買収そのものを阻止できるものではない

・経営陣の保身を図ることを目的として買収防衛策が利用されることは、決して許されるべきものではない

・買収そのものを阻止できるものではない

・経営陣の保身を図ることを目的として買収防衛策が利用されることは、決して許されるべきものではない

(出所)経済産業省

企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(2008年6月30日)

防衛策ルールに則った買収提案を受

けた場合、 終的には買収・被買収双

方のコーポレートストーリーの勝負に⇒企業側の経営方針が見劣りすれば、 終

的に株主の支持が得られず、TOBは成功す

る可能性も

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被買収企業側での平時対応(=有事対応準備)の重要性

防衛策・金商法に則って対応すべき事柄(一例)

独立委員会の運営

有事

外部アドバイザーの目処

買付の意向表明があれば、即提示しなくてはならない

マスコミ対応 各種リリース、説明会開催

意見表明報告書の提出

ロジスティック周り PTの設置場所・電話回線等確保、HP更新準備、社内周知態勢

情報リストの提示

(独立委員会がある場合)平時から委員会を開催しているか?

平時

有事の際のアドバイザーは決めているか?

安定株主の把握 買収者・提案内容によって安定株主比率の捉え方は異なる

プロジェクトチーム組成 どの部署の誰が何の役割を果たすか?(機能別における役割分担

の明確化、外部委託先候補の選定)

買収予兆の察知 予兆を察知するための日々のチェック体制(例:株価、出来高の

チェック)はできているか?

10営業日以内に正式な意見(賛成、反対)を表明

買収者の想定 想定されるTOBパターンは分析できているか?

当座意見表明の報告 意向表明の当日午前中のリリースが望ましい

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Phase2Phase2

Phase1Phase1

当日当日

事前事前

TO

B期

間TO

B期

間被買収企業側での平時対応(例)

有事フローの確認と行動計画の策定

『事実確認』

『発動・勧誘』

『準備』

『意見発表』

買付価格(プレミアム)

買付期間(20~60日)

買付数量(33.4~100%)

買付目的(シナジー等)

•機関投資家のプロファイルを

調査(判明調査)

平時平時

•予兆の確認『分析・検討』

Phase3Phase3

•自社の適正企業

価値算出

•事前防衛策の検討

•買収者の想定

•自社分析(強み、弱み)

•安定株主比率の確認

(友好的株主の把握)

•FAと弁護士に目処

•コーポレートストーリー

の準備・修正

• TOB期間中に発動可能

な対応策の検討

•買収者との

シナジーの検討

• Stock Watch

•当座意見表明

•株主動向の把握

•質問状の作成・送付

•公開買付届出書

の入手

•正式な意見表明 •財務局、東証、プレスへの送付• WEBへの掲載

•防衛策の発動検討

•個人向け勧誘文の発送•機関投資家MTG

•株主提案に向けたProxy

Fightの準備

-買収者側の株主提案への対応検討

-株主判明調査

-主要投資家への説明

•株主総会の準備

『Proxy Fight』

•防衛策の発動

•質問状への

回答受領

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1 創業者一族

2 役職員・家族

3 OB・家族

4 従業員持株会

5 取引先企業

6 取引金融機関

7 国内機関投資家

8 外国人投資家

9 その他

10 自己株式

2/3以上

50%以上

1/3以上

10%以上

3%以上

1%以上

・重要事項の特別決議の成立(合併・解散・営業譲渡・株式交換/移転・会社分割・定款変更・新株有利発行など)

・経営権の獲得・取締役会のコントロール(取締役・監査役の総会での選任決議)・取締役・監査役解任

・重要事項の特別決議の否決 (拒否権)

・会社解散請求権

・会計帳簿の閲覧・謄写請求・株主総会招集請求(6ヶ月以上継続保有)

・取締役・監査役の解任請求(6ヶ月以上継続保有)、 など

・株主提案権(6ヶ月以上継続保有)など

被買収企業側での平時対応(例)

株主構成のチェック

株主構成を日常的にチェックし、有事に備えたいわゆる“票読み”のシミュレーションを行う

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敵対的買収防衛という観点からはDCF法を中心に他の方法による算定結果を組み合わせるアプローチが一般的である

市場株価平均法市場株価平均法

評価対象会社が上場する市場の過去の一定期間の平均株価をもって算定する方法。市場で形成された株

価は、様々なファクターを反映した客観性の高い数値であるが、時期、期間により分析結果が大きく左右さ

れる。

評価対象会社が上場する市場の過去の一定期間の平均株価をもって算定する方法。市場で形成された株

価は、様々なファクターを反映した客観性の高い数値であるが、時期、期間により分析結果が大きく左右さ

れる。

類似企業比較法類似企業比較法

類似企業比較法は、評価対象会社と類似する上場企業の株価に対する一定の財務指標の倍率を評価対

象会社の財務指標に適用して株式価値を評価する方法。ビジネスモデルに独自性がある企業ほど比較す

る企業群の選定が困難となる。

類似企業比較法は、評価対象会社と類似する上場企業の株価に対する一定の財務指標の倍率を評価対

象会社の財務指標に適用して株式価値を評価する方法。ビジネスモデルに独自性がある企業ほど比較す

る企業群の選定が困難となる。

DCF法DCF法

DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来獲得することが見込まれるフリーキャッシュフローを適切な割引率

で割り引いた現在価値をもとに株式価値を評価する方法。

DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来獲得することが見込まれるフリーキャッシュフローを適切な割引率

で割り引いた現在価値をもとに株式価値を評価する方法。

企業価値評価(市場株価平均法、類似企業比較法、DCF法)

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(ご参考)企業価値とDCF法(

Discounted Cash Flow )

企業価値

事業価値(継続価値)

非事業価値(売却価値)企業価値

事業価値(継続価値)

非事業価値(売却価値)

株主価値

企業価値

債権者価値(有利子負債)株主価値

企業価値

債権者価値(有利子負債)

企業価値とは企業価値とは

理論株価

株主価値

÷

発行済み株式数理論株価

株主価値

÷

発行済み株式数

DCF法による理論株価の算出方法DCF法による理論株価の算出方法将来のキャッシュフローの総額を現在価値に割引計算する方法将来のキャッシュフローの総額を現在価値に割引計算する方法

①将来のCFを予測する-今後5年間の利益計画を元に毎年のCFを算出する-6年目以降はある成長率が永続するものと仮定して、その収束値(ターミナルバリュー))を算出する

②①の合計値を資本コスト(WACC)で現在価値に割引計算する-WACC:Weighted Average Cost of Capital、株主・債権者それぞれの期待収益率を加重平均した資本コスト

税引後負債コスト

×

株主資本コスト

×

③②に非事業価値(現預金・有価証券・遊休資産等)を加える

④③から有利子負債を控除する

⑤④を発行済み株式数で割る

①将来のCFを予測する-今後5年間の利益計画を元に毎年のCFを算出する-6年目以降はある成長率が永続するものと仮定して、その収束値(ターミナルバリュー))を算出する

②①の合計値を資本コスト(WACC)で現在価値に割引計算する-WACC:Weighted Average Cost of Capital、株主・債権者それぞれの期待収益率を加重平均した資本コスト

税引後負債コスト

×

株主資本コスト

×

③②に非事業価値(現預金・有価証券・遊休資産等)を加える

④③から有利子負債を控除する

⑤④を発行済み株式数で割る

負債の価値

負債の価値+株式の価値

株式の価値

負債の価値+株式の価値

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買収提案内容の主な分析ポイント

買付数量・方法買付数量・方法

買付目的買付目的

買付価格の妥当性買付価格の妥当性・企業価値評価(フェアバリュー)と比較し、適正な企業価値を

反映した買付価格かどうか

・部分買付かどうか

(少数株主のリスクを分析検討すべきか)

・現金買収か株式対価か

(買付者の株式価値を算定する必要性があるか)

・事業目的か、純投資目的か

・買収後の企業価値毀損の可能性(部分買付の場合)

a. 事業計画・財務戦略

b. 経営者の属性

c. 取引先・顧客

d. 従業員

e. コンプライアンス・社会貢献

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Ⅴ.敵対的買収攻防の実際(事例研究)

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敵対的行為とは敵対的行為とは

上場企業に対する敵対的行為とは上場企業に対する敵対的行為とは

敵対的買収敵対的買収

Ⅰ.市場での株式買い集めⅡ.株主提案(取締役選解任要求)による経営陣入れ替えⅢ.公開買付け(TOB)による株式取得

ポイズン・ペンポイズン・ペン

強圧的であったり、必要十分な情報・検討期間を与えない買収等には、結果として企業

価値や株主共同の利益を損なう虞がある。

現経営陣(取締役会)の賛同なく貴社経営権を取得しようとする行為

株主提案株主提案

株主が、一定の事項について、株主総会の目的事項として提案すること。(発行済み株

式数の1%を6ヶ月間保有する株主に、提案権が発生。)

取締役選解任、剰余金分配要求(増配等)、自社株買い要求

現経営陣に対し、企業価値向上等を働きかける書簡。

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敵対的買収者の定義敵対的買収者の定義

経営権獲得と違い、一般的に当初から転売目的で株式を購入

財務諸表に加え、不動産・有価証券の含み益などを考慮したスクリーニングを行い投資対

象を絞り込む

資金に限界があり、大企業を標的とすることは稀

企業に妥協を強いて、投資リターンを確保

自社事業の規模拡大、技術等の補完関係、コングロマリットの形成等を目的に、仕入先、販

売先、競合他社の一部もしくは全部の経営権を獲得

ファイナンシャル・バイヤーファイナンシャル・バイヤー

ストラテジック・バイヤーストラテジック・バイヤー

垂直統合モデル 生産~販売までのプロセス統合による効率化を目的として行うモデル(利益追求型)

水平統合モデル 競合他社との競争回避、シェア拡大を目的とし、自社と同じ事業を持つ会社を統合

するモデル(売上追求型)

コングロマリットモデル シナジー効果の期待できる異業種との統合モデル

コストメリットモデル 研究開発や設備投資を共同で行うことによるコスト削減を目的とした統合モデル

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スティールパートナーズ

5%株式取得

(大量保有報告書)

02/12/5

長期間に渡り、株価は500~700円のレンジで推移

スティールパートナーズ

によるTOB@1,584円

発表

スティールパートナーズ

8%強株式保有

筆頭株主へ(04/2/20)

ブルドックソース

期末配当10→20円へ

増配は発表(04/2/13)

(07/06/26現在)

ブルドックソース

vs スティールパートナーズ①

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スティールパートナーズ

によるサッポロHDへの

買収提案(07/2/15)

SPのサッポロHD への買収提案を機に、

SP保有銘柄が上昇

業績見通し

下方修正

(07/5/7)

スティールパートナーズ

によるTOB@1,584円

発表(07/5/16)

ブルドックソースの反対表明

+中期事業計画発表

スティールパートナーズ

TOB価格引き上げ

1,584円→1,700円

(07/6/15)

ブルドックソース

防衛策可決@株主総会

(07/06/26現在)

ブルドックソース

vs

スティールパートナーズ②

7/2前場終値

1,460円(▲160円)

東京地裁

防衛策容認

(6/28)

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38(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

ブルドックの

反対表明

+中計画発表

スティールパートナーズ

TOB価格引き上げ

1,584円→1,700円

(07/6/15)

ブルドックソース

防衛策可決@株主総会

(07/06/26現在)

ブルドックソース

vs

スティールパートナーズ③

東京地裁

防衛策容認

(6/28)

新株予約権

権利落ち日

新株割当

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(百万円) FY02 FY03 FY04 FY05 FY06 FY07 FY08 FY09 FY10 FY11 FY12 CAGR売上 14,168 13,877 13,343 14,705 16,759 17,000 17,200 17,400 17,500 17,700 17,900 +1.1%営業利益 985 1,027 885 849 718 900 1,200 1,300 1,900 2,300 2,500 +23.1%営業利益率 7.0% 7.4% 6.6% 5.8% 4.3% 5.3% 7.0% 7.5% 10.9% 13.0% 14.0%

反対意見表明と併せて発表された中期事業

計画では、6年後に営業利益3.5倍、利益率

も4%台から14%への大幅改善を見込むも

のとなっている。

平時の段階から中期事業計画は公表されて

おらず、中期事業計画の内容への信頼性も

含め唐突感は否めず。

中計発表後の株価も全く反応せず。

ブルドックソースの中期事業計画

◆中期事業計画数値

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40(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

スティールパートナーズ ブルドックソース

買付価格1,584円

(6/15 1,700円に引き上げ)

• 合理的かつ達成可能であると経営陣が

考える中期事業計画を策定し、それに基

づく株式価値算定をFAが実施

• TOB価格は、当社の企業価値を適正に

反映しておらず不十分

算定根拠

• 過去1ヶ月間の終値平均比+18%

• 財務・資産・経営の状況、将来収益な

どの諸要素を総合的に勘案

• 直近の市場株価は、株主が認識して

いる公正な株式価値を合理的に反映

したものと判断

• その上で、適切と考えるプレミアムを

加算

スティールパートナーズの買収価格と算定根拠

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41(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

ブルドックソースの買収防衛策発動(新株予約権無償割当)の効果

(396円×1,950千株×3=23億円)

7/10

会社による

新株予約権取得

(予)

TOB終了日8/10

基準日

新株予約権無償割当て

新株予約権の取得後

権利落ち日7/5

新株予約権割当て中止の可能性(~7/4まで)

対応策の効果

現時点でのSP保有の議決権10.52% → 2.86%へ希釈化

(+現金23億円の取得)

新株予約権無償割当てによる一般株主のTOBへの応募を阻害することを回避

(公開買付期間内に新株交付予定)

発行差止めが認められない場合、SPは以下の選択肢

①TOB撤回

②TOB価格の希釈化の程度に応じた引下げ(新株予約権効力発生後)を行い、TOB継続

保有議決権個数

16,580個

保有議決権個数

1,950個(10.52%)

(出所:ブルドックソース公表資料より弊社作成)

保有議決権個数

66,320個

保有議決権個数

1,950個(2.86%)

+現金23億円

8月9日に新株を交付予定

TOBへの応募可能

(実際の応募:1.89%)

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42(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

ブルドックソースの買収防衛策容認:

東京地裁決定(07/06/28)

株主平等の原則株主平等の原則

不公正発行不公正発行

対抗手段の許容基準対抗手段の許容基準

• 持株比率の希釈化という不利益を受けるが、少なくとも新株予約権の無償割当ては株主総

会の特別決議(賛成83.4%)に基づき実施されるものであり、SPがプレミアムをつけたTOB 価格を基にした適正な対価が交付され、経済的利益の平等は確保されていると一応認めら

れる

• 持株比率の希釈化という不利益を受けるが、少なくとも新株予約権の無償割当ては株主総

会の特別決議(賛成83.4%)に基づき実施されるものであり、SPがプレミアムをつけたTOB 価格を基にした適正な対価が交付され、経済的利益の平等は確保されていると一応認めら

れる

• 経営支配権の取得防止であっても、株主総会がその権限を濫用したものとして著しく不公正

な方法によるものと認めることはできない

• 経営支配権の取得防止であっても、株主総会がその権限を濫用したものとして著しく不公正

な方法によるものと認めることはできない

対抗手段の必要性対抗手段の必要性

• 対抗手段の必要性の判断は、原則として株主総会に委ねられるべき

(総会判断が合理性を欠く場合、対抗手段の必要性は否定)

• SPは、株主の高値買取要求をした証明はなくグリーンメーラーと認めるには足りないが、経

営権取得後の経営方針の提示がないことを根拠に対抗手段が必要とした総会の判断は、明

らかに合理性を欠くものとは言えない

• 対抗手段の必要性の判断は、原則として株主総会に委ねられるべき

(総会判断が合理性を欠く場合、対抗手段の必要性は否定)

• SPは、株主の高値買取要求をした証明はなくグリーンメーラーと認めるには足りないが、経

営権取得後の経営方針の提示がないことを根拠に対抗手段が必要とした総会の判断は、明

らかに合理性を欠くものとは言えない

対抗手段の相当性対抗手段の相当性

• 経営権支配の争いがある場合、株主が適切な判断を行うために双方の事業計画の提示お

よび必要な考慮期間が確保されることが必要

• 今回のTOB期間は、現経営陣に代替案を提示する時間的余裕を与えないまま、株主に判断

を迫るもの

• 経済的利益の平等は確保されていることに加え、持株比率の希釈化についてもTOB撤回に

より回避が可能

• 経営権支配の争いがある場合、株主が適切な判断を行うために双方の事業計画の提示お

よび必要な考慮期間が確保されることが必要

• 今回のTOB期間は、現経営陣に代替案を提示する時間的余裕を与えないまま、株主に判断

を迫るもの

• 経済的利益の平等は確保されていることに加え、持株比率の希釈化についてもTOB撤回に

より回避が可能

• 株主総会として、買収者による経営権取得が企業価値を毀損する恐れがあると判断する場

合、株主全体の利益保護の観点から相当な対抗手段を採ることが許容されるべき

• 株主総会として、買収者による経営権取得が企業価値を毀損する恐れがあると判断する場

合、株主全体の利益保護の観点から相当な対抗手段を採ることが許容されるべき

◆「総会の特別決議+適正対価」という要件を満たせば、総会の判断が著しく不合理でない限り、総会の判断を

尊重するという決定内容。

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43(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

買収防衛策は合理的な事情がある場合には是認。

手段としての新株予約権の適法性は、買収者および被買収者の属性も考慮の上、TOBの態様と対比し、買

収防衛策の必要性・相当性を検討の上、相対的に判断。

スティールを濫用的買収者と認定し、買収防衛策の必要性・相当性はある程度緩やかに判断してよいという

論理展開と思われる。(※濫用的でない買収者に対する防衛策の適法性については何も判示されていない)

ブルドックソースの買収防衛策容認:

東京高裁決定(07/07/09)

不公正発行不公正発行

• 手続き的な観点:

少なくとも株主総会の特別決議を経て導入されたものであり、持株比率を低下さ

せるものではあるが、新株予約権の代わりに現金を受けることが予定されており、その不当性の程

度との相関関係からすると過度の財産的損害を与えるものではない

• SP以外の株主の観点:

同株主がこれを受忍することを了承したと解され、相当性を有する対抗策

である(※買取価格が低額であったとしても、本件においては買収策の相当性を欠くものではないと

の評価も考えられる)

• 手続き的な観点:

少なくとも株主総会の特別決議を経て導入されたものであり、持株比率を低下さ

せるものではあるが、新株予約権の代わりに現金を受けることが予定されており、その不当性の程

度との相関関係からすると過度の財産的損害を与えるものではない

• SP以外の株主の観点:

同株主がこれを受忍することを了承したと解され、相当性を有する対抗策

である(※買取価格が低額であったとしても、本件においては買収策の相当性を欠くものではないと

の評価も考えられる)

• スティールは、様々な策を弄して専ら短中期的に対象会社の株式を転売することで売却益を得るなど、ひた

すら自らの利益を追求しようとする存在といわざるを得ない。また、買収対象企業の経営関与の予定もなく、

いたずらに相手方に不安を与えている

• 本TOBは、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するものとして信義誠実の原則に抵触する不当なもの

であり、スティールは本件については濫用的買収者

• スティールは、様々な策を弄して専ら短中期的に対象会社の株式を転売することで売却益を得るなど、ひた

すら自らの利益を追求しようとする存在といわざるを得ない。また、買収対象企業の経営関与の予定もなく、

いたずらに相手方に不安を与えている

• 本TOBは、企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するものとして信義誠実の原則に抵触する不当なもの

であり、スティールは本件については濫用的買収者

• 株式会社は多種多様なステークホルダーとの関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきもので

あり、企業価値について、専ら株主の利益のみを考慮すれば足りるという考え方には限界がある

• 濫用的買収者による支配は、企業価値の毀損、株主共同の利益を害することにつながるものであり、

このような濫用的買収者は株主として差別的な取り扱いを受けることがあってもやむをえない

• 株式会社は多種多様なステークホルダーとの関係を視野に入れた上で企業価値を高めていくべきもので

あり、企業価値について、専ら株主の利益のみを考慮すれば足りるという考え方には限界がある

• 濫用的買収者による支配は、企業価値の毀損、株主共同の利益を害することにつながるものであり、

このような濫用的買収者は株主として差別的な取り扱いを受けることがあってもやむをえない

対抗手段の

必要性・相当性

対抗手段の

必要性・相当性

買収者の属性買収者の属性

• 企業価値の毀損を防止するために必要かつ相当で合理的な防衛策なら、買収者を差別的に扱って

も株主平等の原則に反しない

• 企業価値の毀損を防止するために必要かつ相当で合理的な防衛策なら、買収者を差別的に扱って

も株主平等の原則に反しない

株主平等の原則

株主平等の原則

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株主総会の決議を尊重する地裁決定と同様の枠組み(濫用的買収者か否かは判断せず、株主の判断を重視)。

ブルドックソースの買収防衛策容認:

高裁決定(07/08/07)

株主平等の原則株主平等の原則

不公正発行不公正発行

• 企業価値・株主共同の利益が毀損されるような場合、その防止のため買収者を差別的に

扱っても、衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、株主平等の原則に反するものと

いうことはできない。

• 企業価値・株主共同の利益を毀損するか否かは、会社の利益の帰属主体である株主により

判断されるべき。

(特別決議か普通決議かについてはコメントせず)

• 総会手続きや判断材料に重大な瑕疵がない限り、株主の判断が尊重される。

• 企業価値・株主共同の利益が毀損されるような場合、その防止のため買収者を差別的に

扱っても、衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り、株主平等の原則に反するものと

いうことはできない。

• 企業価値・株主共同の利益を毀損するか否かは、会社の利益の帰属主体である株主により

判断されるべき。

(特別決議か普通決議かについてはコメントせず)

• 総会手続きや判断材料に重大な瑕疵がない限り、株主の判断が尊重される。

• 対抗措置が事前に定められていないからといって、有事の際に対応策を講じることが許容さ

れないものではない。

• 株主が必要であると判断した措置であり、対価もSPに支払われるため不公正発行にはあた

らない。

• ただし、対抗措置発動が専ら経営方針目的である場合は著しく不公正な方法であるが、本件

はこれに該当しない。

• 対抗措置が事前に定められていないからといって、有事の際に対応策を講じることが許容さ

れないものではない。

• 株主が必要であると判断した措置であり、対価もSPに支払われるため不公正発行にはあた

らない。

• ただし、対抗措置発動が専ら経営方針目的である場合は著しく不公正な方法であるが、本件

はこれに該当しない。

• 83.4%の賛成、適正な総会手続き、SPの不明な経営方針などから正当性を失わせる重大な

瑕疵はない。

• また、経済的な適正対価をSPは受けるため防衛策の相当性も欠かない。

• 従って、SPが濫用的買収者か否かにかかわらず、株主平等の原則に反するものではない。

• 83.4%の賛成、適正な総会手続き、SPの不明な経営方針などから正当性を失わせる重大な

瑕疵はない。

• また、経済的な適正対価をSPは受けるため防衛策の相当性も欠かない。

• 従って、SPが濫用的買収者か否かにかかわらず、株主平等の原則に反するものではない。

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Ⅵ.演習

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(1)演習1

「Ⅴ」のケースにおいて、被買収者(ブルドックソース)の一連の対応の中で、

①適切な対応であったもの

②不適切な対応であったもの

にそれぞれ分類し、そのように考える理由とあわせて指摘、説明せよ。

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(2)演習2

別途配布する資料のケースで、買収者側によるTOBが実施された場合、投資家(株

主)としてTOBに応募するか否か、理由を付して説明せよ。

(より具体性を高めるために、どんな株主なのか、前提をおいても良い)

○ポイント

・買収価格、条件の妥当性

・買収企業、被買収企業の事業戦略の比較

・買収企業の過去の買収実績

・株主による立場の違い

~機関投資家か個人投資家か

~金融機関

~取引先企業

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48(c) MITSUBISHI UFJ TRUST AND BANKING CORPORATION

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