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1 心理学的コミュニケーション論
コミュニケーションの心理学担当:柿本敏克
講義概要
人のコミュニケーション活動の諸様態を、主として(社会)心理学とグループ・ダイナミックスの視点か
ら論じる。そこでのコミュニケーション研究の対象は、大きく対人コミュニケーションとマス・コミュニケ
ーションの2つの領域に分けられる。この講義ではこれらを(後者は軽めに)概観した後、近年利用者の増
えてきた電子コミュニケーションの問題に触れる。最後にリーダーシップ研究を、集団のコミュニケーショ
ンという観点から取り上げる。
評価方法
1. 講義への出席・参加状況(全体の 30%)2. 提出物と最終レポート(全体の 70%)講義予定
第1講 ガイダンス —さまざまなコミュニケーション論—
例 記号論 : 意志・情報の伝達、意味の解釈
社会理論 : 公共性
人間関係論: 社会的相互作用としてのコミュニケーション
心理学 : 自我の形成、象徴的相互作用、対人コミュニケーション
社会学 : マス・メディアの影響、世論形成 …
第2講 対人コミュニケーション論Ⅰ
コミュニケーション事態記述の各種モデル,NVC
第3講 対人コミュニケーション論Ⅱ
放送大学ビデオ教材(社会心理学⑨『対人行動Ⅲ』)
第4講 対人コミュニケーション論Ⅲ
欺瞞のコミュニケーション
第5講 対人コミュニケーション論Ⅳ
小集団内コミュニケーション,説得的コミュニケーション
第6講 記号論的コミュニケーション論
池上(1984)のモデル,動物のコミュニケーション(ビデオ:『野生の驚異』)
第7講 マス・コミュニケーション論Ⅰ
マス・コミュニケーション論の背景,接触率・接触行動調査
第8講 マス・コミュニケーション論Ⅱ
マス・コミュニケーションの効果研究,結果としての影響,利用と満足研究他
第9講 電子コミュニケーション論Ⅰ
電子コミュニケーション論の背景
第 10 講 電子コミュニケーション論Ⅱ SIDE モデル,電子コミュニケーションの病理他
第 11 講 電子コミュニケーション論Ⅲ (つづき)
第 12-14 講 リーダーシップ研究Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
集団のコミュニケーションとしてのリーダーシップ研究の概要と各論
第 15 講 全体のまとめ
2 参考文献
飽戸 弘(1992)『コミュニケーションの社会心理学』筑摩書房
池上嘉彦 (1984) 『記号論への招待』 岩波新書
池田謙一(編著)(2005) 『インターネット・コミュニティと日常世界』 誠信書房
池田謙一・村田光二 (1991) 『こころと社会』 東京大学出版会
入江幸男・霜田求(編)(2000) 『コミュニケーション理論の射程』 ナカニシヤ出版
ウォレス,P.(著) 川浦康至・貝塚泉(訳)(2001)『インターネットの心理学』 NTT出版
内川芳美・岡部慶三・竹内郁郎・辻村明(編)(1973) 『基礎理論』 東京大学出版会(現代の社会とコミュニケーショ
ン 第一巻)
エクマン,P.(著) 工藤力(訳)(1992)『暴かれる嘘—虚偽を見破る対人学』 誠信書房
岡 隆・佐藤達哉・池上知子(編)(1999)『偏見とステレオタイプの心理学』至文堂(現代のエスプリ384号)
岡本裕介(1997)対人コミュニケーション白樫三四郎(編著)『社会心理学への招待』(ミネルヴァ書房),83-99.
柿本敏克(1997a)インターネットを用いた学生国際交流—米沢女子短期大学の事例『山形県立米沢女子短期大学生活文
化研究所報告』第24号,53-68.
柿本敏克(1997b)通常質問紙と電子調査票でみた米国短大生の日本人イメージ別府庸子他(編著)『インターネット
を使った調査の有効性』(平成8年度山形県立米沢女子短期大学共同研究報告書),2-11 頁
柿本敏克(1999)電子メールを通した異文化間接触のコミュニケーション論的意義『山形県立米沢女子短期大学紀要』
第34号,99-111 頁
柿本敏克(2001)集団間関係研究のコミュニケーション論的位置づけ『群馬大学社会情報学部研究論集』第8巻,79-91.
狩野素朗(1985)『個と集団の社会心理学』ナカニシヤ出版 〈図 4-2 等〉
川浦康至(編)(1998) 『インターネット社会』 至文堂(現代のエスプリ370号)
川浦康至(編)(1993) 『メディアコミュニケーション』 至文堂(現代のエスプリ306号)
川崎賢一 他(1994) 『メディアコミュニケーション─情報交流の社会学─』 富士通経営研修所
紀籐正樹(1997)『電脳犯罪対策虎の巻—ネットワークの新ルール』 KKベストセラーズ
児島和人(1998) メディア・コミュニケーション論の生成 竹内郁郎・児島和人・橋元良明(編著)『メディア・コミュ
ニケーション論』(北樹出版),12-32.
後藤将之(1999) 『コミュニケーション論』 中央公論新社(中公新書1470)
境 忠広(1990) 集団間コミュニケーション大坊郁夫・安藤清志・池田謙一(編)『社会心理学パースペクティブ2—人
と人とを結ぶとき』(誠信書房),169-191.
ジョインソン,A.N.(著) 三浦麻子・畦地真太郎・田中敦(訳)(2001)『インターネットにおける行動と心理』北大路
書房
末永俊郎(編)(1987)『社会心理学研究入門』東京大学出版会 〈図 8-1,解説 8-2 等〉
大坊郁夫(1986)対人行動としてのコミュニケーション対人行動学研究会(編)『対人行動の心理学』誠信書房
竹内郁郎・児島和人・橋元良明 (1998) 『メディア・コミュニケーション論』 北樹出版
田崎篤郎・船津衛(編著) (1997) 『社会情報論の展開』 北樹出版
ダック,S.(著) 和田実(訳)(2000)『コミュニケーションと人間関係』 ナカニシヤ出版(Duck,S.1998Human
relationships,ThirdEdition.London:SagePublications)
チェマーズ,M.M.(著)白樫三四郎(訳編)(1999)『リーダーシップの統合理論』 北大路書房
チャルディーニ,R.B.(著),社会行動研究会(訳)(2007)『影響力の武器[第二版]─なぜ、人は動かされるのか』誠
信書房
中野収 (1997) 『メディア人間—コミュニケーション革命の構造』 勁草書房
中森強(編)(1998)『コミュニケーション論』東京書籍(新現代図書館学講座15)
水野 博介(1988)「コミュニケーションの効果と機能」(81-121 頁)および「マス・コミュニケーションの影響」(123-161
頁) 林進(編)『コミュニケーション論』有斐閣(有斐閣Sシリーズ)
原岡一馬(編)(1990)『人間とコミュニケーション』ナカニシヤ出版 〈表 6-1,図 6-1,図 7-3,表 7-1 等〉
広瀬幸雄(編著)(1997)『シミュレーション世界の社会心理学:ゲームで解く葛藤と共存』ナカニシヤ出版〈図 5.1
等〉
深田博己 (1999)『コミュニケーション心理学—心理学的コミュニケーション論への招待—』北大路書房
ブラウン,R.(著)黒川正流・橋口捷久・坂田桐子(訳)(1993)『グループ・プロセス』北大路書房
松尾 太加志 (1999)『コミュニケーションの心理学:認知心理学・社会心理学・認知工学からのアプローチ』ナカニ
シヤ出版
宮田加久子(1993)『電子メディア社会』誠信書房
3 コミュニケーションの心理学 第 2講
対人コミュニケーション論 I
様々なコミュニケーション論の内容のうち、対人コミュニケーション研究のいくつかの領域を紹介する。
まずシャノンとウィーバーの工学的な情報伝達のモデルを紹介した後、人間のコミュニケーションを前提と
したいくつかの研究をチャネルとメディアの区別に留意して紹介する。
・シャノンとウィーバーのコミュニケーション・モデル
岡本(1997)図 6-1 参照 →資 料
・その問題点
相互行為性、チャネルとメディアの区別1
・ニューカムの A-B-Xモデル: 魅力・態度・コミュニケーション
岡本(1997)図 6-2 参照
・対人コミュニケーションのチャネル
- ベイトソンのダブルバインド理論
- アーガイルとディーンの親密性平衡モデル
- パターソンの親密性覚醒モデル
・対人コミュニケーションのメディア
- 電話
図 6-4、6-5
モーリーらの研究
- パソコン通信
1 チャネル(channel)という用語は電気通信的モデルではメディア(media)と互換的に使われることがある。チャネルは通信経路、メディアは通信媒体であり、例えば糸電話を考えるとそれはチャネルでもありメディアでもある。テレビ放送などではメディアとしての電波の周波数帯を区分してチャネル1,チャネル2・・・というように使われる。しかし人間のコミュニケーションを扱う場合、これらは次のように区別するとよいのではないか。すなわちメディアはメッセージ伝達に使われる手紙(紙と鉛筆)、電話(電気信号)、パソコン通信(電子信号?)といった伝達手段を指し、チャネルはメッセージ作成、解読・解釈に際して用いられる文字、音声の高低・調子・間、表情、身振り、姿勢、対人距離などの「入出力」手段(経路)を指すという区別である。こう区別すると、同じ例えばテレビ電話というメディアを使っても、音声の高低・調子、表情、姿勢といった複数のチャネルがメッセージ伝達に使いうるし、同様に同じ音声の高低・調子といったチャネルが、有線電話、携帯電話、衛星携帯電話といった複数のメディアによって実現しうることになる。
4 コミュニケーションの心理学 第 3講
対人コミュニケーション論Ⅱ
(放送大学ビデオ教材 社会心理学⑨〔対人行動Ⅲ〕)
5 コミュニケーションの心理学 第 4講
対人コミュニケーション論Ⅲ
(欺瞞のコミュニケーション —うその社会心理学—)
1.はじめに
・「うそ」とは
2.「うそ」の種類
・隠蔽
・偽装
・その他
3.人はなぜ「うそ」をつくのか
・利益
・自己顕示
4.「うそ」を見破る方法 →資料
・漏洩を見つける
・欺瞞の手がかりを探す
・気をつけなければならないこと
5.「うそ」以外のうそ
・記憶のうそ、誤った信念、集団のうそ、文学的虚構
参考文献
エクマン,P.著 工藤力訳(1992)暴かれる嘘—虚偽を見破る対人学 誠信書房
エクマン,P.著 菅靖彦訳(2006)顔は口ほどに嘘をつく 河出書房新社
相場均(1965) うその心理学 講談社現代新書
椎名健(1996) 人はなぜ嘘をつくのか-だます心理・だまされる心理 ごま書房
ペック,M.S.著 森英明訳(1996) 平気でうそをつく人たち 草思社
ギロビッチ,T.著 守一雄・守秀子訳(1993)人間この信じやすきもの—迷信・誤信はどうして生まれるの
か 新曜社
箱田裕司・仁平義明 編(2006)『嘘とだましの心理学』有斐閣
コートル,J.著石山鈴子 訳 1997 『記憶は嘘をつく』講談社 など
6 コミュニケーションの心理学 第 5講
対人コミュニケーション論Ⅳ
1. 小集団内のコミュニケーション
・規範からの逸脱とコミュニケーション
cf.Schachter(1951)→資料
・集団内の役割、時間経過によるコミュニケーション内容の違い・変化
相互作用過程分析 cf.伊藤(1997)、末永(1987)解説 8-2
・コミュニケーションネットワーク
cf.Leavitt(1951)
2. 説得的コミュニケーション
・送り手の要因
送り手の信憑性 cf.Hovland&Weiss(1951)
など
・メッセージ呈示のやり方
一面呈示と両面呈示 cf.Hovland,Lumsdain&Sheffield(1949)
など
・受け手の要因
自尊心など
7 コミュニケーションの心理学 第 6講
記号論的コミュニケーション論
(「コミュニケーション」の一般論としての記号論的コミュニケーション論)
1. 記号論とコミュニケーション 池上(1984)より
図
・コミュニケーションにおける記号の役割
意味作用
・「コード」の役割
・「理想的な」伝達
発信者が記号化した伝達内容と受信者が解読した伝達内容とが完全に一致していて、
余分も不足もないという場合
条件1 経路がつながっていること(ノイズがない)
条件2 発信者と受信者に伝達を成り立たせる意志があること
(記号化する意志、解読する意志)
条件3 コードが厳密に用いられること(記号表現、記号内容、対応)
・「人間的な」伝達
統辞論、意味論、実用論
文脈(コンテクスト)
・解読に値するか否か
・「コード」の補整
・コード依存型コミュニケーション
・文脈依存型コミュニケーション
2. 動物のコミュニケーション(野生の驚異「意志の伝達〈コミュニケーション〉」)
8 コミュニケーションの心理学 第 7講
マス・コミュニケーション論Ⅰ
1. マス・コミュニケーションとは
新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、映画などのマス・メディアを通じて、大量の斉一的メ
ッセージが、不特定多数の受け手に伝達されるコミュニケーション現象。(『新社会学辞
典』有斐閣 1993 年より)
主なマス・メディアの歴史的形成
新聞
1454 年、グーテンベルク(Gutenberg,J.)による活版印刷術の発明。
『42行聖書』(別図参照)
1609 年 ドイツ『Relation』、1622 年英国『WeeklyNews』
ラジオ
1895 年、マルコーニ(Marconi,G.)の無線電信実験。
1920 年、ピッツバーグで世界最初のラジオ放送開始。
1925 年、日本でラジオ放送が始まる。
テレビ
1897 年、ブラウン管の発明(Braun,K.F.)
1936 年、英国で最初のテレビ放送実用化。
1953 年、日本で最初のテレビ放送開始。
マス・コミュニケーションの特徴
①送り手は専門的な組織集団を構成し、分業的共同作業によってメッセージを生
産・伝達している。
②メッセージ内容は誰にでも受け取られ理解されるように、公開的・一般的性質
をもっている。
③メッセージの伝達機会が原則的に定期化されている。
④送り手と受け手の役割が固定化され、フィードバック過程が極度に限定的であ
る。(出典:同上)
2. マス・コミュニケーション研究の系譜
2-1.接触率・接触行動調査
中森(1998)表 4-2、図 4-1、図 4-2、図 4-3、図 4-4、表 4-3
視聴率予測 飽戸(1992)表 3・1→資料
9
http://www.apple.co.jp/creative/ama/0202/gutenberg/index.html より
http://www.gutenbergdigital.de/gudi/eframes/bibelsei/htmm/hie_m01.htmより
10 コミュニケーションの心理学 第 8講
マス・コミュニケーション論 II
(2. マス・コミュニケーション研究の系譜)
2-2.マス・コミュニケーションの効果研究
2-2-1.商品宣伝、政治宣伝の効果
・W.J.マクガイヤ(McGuire,1973)のモデル
①コミュニケーション刺激の提示、
②刺激への注目、
③理解、
④承伏、
⑤記憶、
⑥外的行動
R.K.マートン(Merton,1946)『大衆説得』
ラジオ放送での戦時国債キャンペーン 内容分析
2-2-2.コミュニケーションの二段階の流れ
・水野(1988)図 4-1→資料
・大統領選挙における投票行動の研究
〔『ピープルズ・チョイス—アメリカ人と大統領選挙』(Lazarsfeldetal.,1944)〕
1940 年、オハイオ州エリー郡、合計6回のパネル調査
→マス・コミュニケーションはさほど大きな効果を及ぼしていなかった
(飽戸,1992 表 3・6) 補強効果
・対人コミュニケーションとオピニオン・リーダーの役割
〔『パーソナル・インフルエンス』(Katz&Lazarsfeld,1955)〕
図 3・7(飽戸,1992) 領域ごとに影響度が異なる
表 3・10、3・11(同上)オピニオン・リーダーは領域ごとに異なる
2-3.結果としての影響
2-3-1.暴力場面、性的場面の影響
社会的学習理論(Bandura,1971)
図 3-4(水野,1988) 観察学習(モデリング)
2-3-2.社会的感染(Phillips,1974 など)
図5(チャルディーニ,1991)
11 2-3-3.その他
議題設定効果、
涵養効果、
沈黙の螺旋、
プライミング効果
2-4.利用と満足研究
用具的コミュニケーションと自己完結的コミュニケーション
受け手がどのように「利用」しどのような「満足」を得ていたか
12 コミュニケーションの心理学 第 9講
電子コミュニケーション論 I
1. 電子コミュニケーションとはCMC(computer-mediatedcommunication) コンピュータを介したコミュニケーション
:電子メール、チャット、電子掲示板、ウェブ日記などによる
2. 電子コミュニケーション論の背景2-1. 技術的・制度的背景
柿本(1997a)表2
2-2. インターネットの普及状況 柿本(1997a)図2、総務省(2007)情報通信白書平成 19年版 PDF 版
2-3. 情報行動の変化と現状 ニフティサーブ利用者 インターネット前史としてのパソコン通信
柿本(1997a)表4 利用行動:電子掲示板と電子メール
総務省(2003) 平成 14年通信利用動向調査報告書世帯編
図表 4-19インターネットの用途:電子メール,情報検索,電子掲示板・チャット
図表 4-21年代別用途:↑全年代で1位↑15-29 と 60-で 5,6 位
→電子コミュニケーションは一貫して増大、今では(日本では)大衆化・一般化
3. 電子コミュニケーション論へのさまざまな接近法3-1.チャット・電子掲示板の研究 :実態把握
松村(2002〜) 2ちゃんねる研究 議論の発散傾向と深化傾向 :ログの分析
三浦・篠原(2002) 話題の輻輳と発話パターン :条件統制型実験室実験
ほかに笠木・大坊(2003),佐々木・大渕(2002)など :対面コミュニケーションとの比較
Joinston(2001),古くは Keisleretal.(1984)など
3-2.日記コミュニケーション研究 :独自のコミュニケーション現象
川浦(2000)など
3-3.電子ブレーンストーミングの研究 :集団意思決定研究への応用
Gallupeetal.(1991)など
13 コミュニケーションの心理学 第 10・11講
電子コミュニケーション論Ⅱ・Ⅲ
(3.電子コミュニケーション論へのさまざまな接近法)
3-4.異文化間電子コミュニケーション研究 :集団間関係研究への応用
柿本(1997a)実践研究
理論的背景 :接触仮説(Allport,1958)
フレーミング現象(Keisleretal.,1985 など)
調査 1996 年 6月-7 月 日本 3+11 米国 6(+12)
1 ヵ月間の印象・態度の変化
結果 図 6
考察 :電子的友情(村田,1996)
CMC での対人印象の薄さ(笠木・大坊,2003)
異文化間電子コミュニケーションの位置づけ(柿本,1999)
「文脈」としてのチャネルの限定性
「文脈」としての文化の制約
空間性(の無化)と実体性(の減少)
3-5.SIDE モデルからの研究 :電子的な社会的影響の特徴
Reicheretal.(1995)SocialIdentitymodelofDEindividuationphenomena
没個性化*は,個人的アイデンティティのレベルで制御ができなくなる状態なのであって,社会的
アイデンティティのレベルで制御ができないこととは別である。社会的アイデンティティが顕著な条
件下では,匿名性は集団への同一視を高め,結果として集団規範などの影響力を強めることがある。
つまり社会的アイデンティティのレベルでは制御されうる。
*Deindividuationの訳語。匿名性が高い状況などで,個人が集団の中に埋没してしまうがために自己制御できなるなること。暴動などの
集合行動を説明する概念。
Spearsetal.(1990)など
電子コミュニケーション事態では,匿名性が高いがゆえにかえって(その場で局所的に形成された)
社会的アイデンティティの顕著さ(salience)が高まり……。
Postmesetal.(2001)
方法:あるジレンマ問題†について 3人または 4人集団で電子会議システムを用いて討議する。事
前に集団凝集性と集団アイデンティティを高めた。
†ある病院で患者数の増大に対し,運営効率化で対処するか,患者との触れあい・治療の質を優先するか
条件:2(効率規範 vs.向社会性規範)x2(匿名性高写真なしvs.低写真あり)
結果:匿名性高条件で規範に沿った行動,低条件では規範による有意差なし
(Fig.1,Fig.2)
しかし,
Douglas&McGarty(2001):内集団成員にとって識別可能な(観察されうる)状況では,匿名性の低い(識
別可能な)ほうが集団規範に沿った発言。戦略的なものか。→Douglas&McGarty(2002)でも再現
14 (3.電子コミュニケーション論へのさまざまな接近法)
3-6.電子コミュニケーションの病理:インターネット中毒
Krautetal.(1998):人間関係の希薄化(「インターネットパラドックス」)基礎・法則追求志向
アメリカ合衆国ピッツバーグ地域
1995-96 年時点での未経験者対象
コンピュータを配付し無料でインターネット接続,事前に講習
人間関係と精神的健康(小林,2000,表 11-1 参照)
↓
家族とのコミュニケーション時間の減少、近隣の人との交流の減少
孤独感と抑うつ傾向の増大
cf.LaRose,etal.(2001)
Kraut,etal.(2002)
Young(1998):新種の中毒 臨床・実践志向
ヤング著『インターネット中毒まじめな警告です』毎日新聞社 1998 年
インターネット中毒尺度(小林,2000,表 11-2)
事例
岡田(1998):「はまる」心理 問題提起
インターネット中毒:現実社会の生活を忘れてインターネットにはまりこんでしまう状態。
Internetaddiction
└─アルコールやアヘンなどの化学物質の摂取によって生じる身体依存、摂取への抑えがたい欲望、社会的害などの症状。
まだ十分研究がされていない現象
「中毒が進むとしだいに現実生活よりも、ネット上の生活の方がリアリティを持つようになってくる。食事も必要最低
限のジャンクフードで済ませるようになり、ネット外の生活を「オフラインの世界」と呼んで、ネット世界をベースに
したものごとの感じ方が当然になってくる」(Hertz,J.C.大森望・柳下毅一郎訳『インターネット中毒者の告白』草思社1996年)
・インターネット依存者と非依存者のインターネット利用の違い(表1)
ネット上での新しい人間関係 vs. 情報収集や既存の人間関係の維持
・インターネット依存の程度と生活上の支障
(表2生活上の支障との関連)
・「はまる」心理
執着性格
・ネット社会のリアリティ
-豊かな自閉
-現実社会を排したリアリティ
カスタマイズ可能性 cf.池田・柴内(1997)
・日本の現状 —研究の貧困
本人が問題意識を持たない 少数例である
cf. 電子メール送受信:週1、2日以下が全体の87% 利用しない学生が4割。
WWW69%が見ない。ネットニュース87%が読まない。
54%がチェックリスト3点以下 7点以上 0.6%(川浦、1997)
心理臨床家とコンピュータの相性
15 3-7.インターネットを使った調査の特徴
柿本(1997b)より
・コミュニケーション形式としての質問紙調査
科学的資料収集のための方法
調査者と回答者のコミュニケーション
・インターネットを用いた調査の特徴
柿本敏克 1997 通常質問紙と電子調査票でみた米国短大生の日本人イメージ
平成 8年度山形県立米沢女子短期大学共同研究報告書『インターネットを使った調査の有効性』所収(2-11 頁)
通常質問紙による集合調査とインターネットのWWW上に作成した電子調査票による調査の結果を比較
した
匿名性と社会的望ましさ
調査結果の信頼性
その他未知の要因
3-8.「ネット議論の極端化」としての Web ナショナリズム
(参考資料:2015 年度社会情報学シンポジウム報告原稿など)
16 コミュニケーションの心理学 第 12講
ブラウン(1993),チェマーズ(1999)他
リーダーシップ研究Ⅰ
1 集団とリーダーシップ
・集団の構造(役割と地位)
・集団の機能とリーダーシップ
2 リーダーシップの理論 →資料
・リーダーシップ特性論
Stogdill,R.M.リーダーの個人特性
・リーダーシップ行動理論
Lewin,K. リーダーシップ行動と社会的風土
オハイオ研究 配慮と構造づくり
三隅二不二 PM リーダーシップ研究
・リーダーシップ状況理論
Fiedler,F.E.LPC 尺度(高 LPC と低 LPC)
リーダー・成員関係,課題構造,リーダー地位勢力
・その後の研究動向
カリスマ的リーダーシップ論
変革型リーダーシップ論
17 コミュニケーションの心理学 第 13・14講
リーダーシップ研究Ⅱ・Ⅲ
各論