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2 寒地土木研究所月報 №775 2017年12月 報 文 本研究では、融雪期にポットホールが発生する可能性が高い道路上の箇所を、赤外線カメラで非破 壊診断する技術の研究を行っている。供用中の道路上の赤外線計測結果とポットホール発生箇所の対 応を調べた結果、ポットホール発生箇所の赤外線画像は、周辺部に比べて局部的な温度低下などの違 いがみられることが確認された。また、舗装内部の調査の結果、赤外線画像上の異常部位では混合物 層内部に水分の含浸や混合物の砂利化、層間空隙などの変状が認められた。 《キーワード:赤外線カメラ、ポットホール、点検診断、非破壊》 In this study, an examination was conducted towards the development of a nondestructive diagnostic technique for detecting potential locations of pothole occurrence in the snowmelt season using an infrared camera. Correspondence between infrared measurements on an actual road and locations of pothole occurrence on that road were examined. It was found that infrared images of pothole locations had locally lower temperatures than those of the surrounding area. The pavement interior was examined, and damage such as water seepage, stripping of the asphalt mixture, and interlayer de-bonding was found inside the mixture layers at portions of the pavement where the infrared images showed anomalies. 《Key Words : infrared camera, pothole, diagnostic technique, nondestructive》 ポットホール発生箇所の 赤外線による事前検知技術に関する基礎検討 Examination of a Technique for Detecting Locations of Possible Pothole Occurrence Using Infrared Imaging 丸山 記美雄  星 卓見  木村 孝司 MARUYAMA Kimio, HOSHI Takumi and KIMURA Takashi

ポットホール発生箇所の 赤外線による事前検知技術に関する ...Examination of a Technique for Detecting Locations of Possible Pothole Occurrence Using Infrared

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Page 1: ポットホール発生箇所の 赤外線による事前検知技術に関する ...Examination of a Technique for Detecting Locations of Possible Pothole Occurrence Using Infrared

2 寒地土木研究所月報 №775 2017年12月

報 文

本研究では、融雪期にポットホールが発生する可能性が高い道路上の箇所を、赤外線カメラで非破壊診断する技術の研究を行っている。供用中の道路上の赤外線計測結果とポットホール発生箇所の対応を調べた結果、ポットホール発生箇所の赤外線画像は、周辺部に比べて局部的な温度低下などの違いがみられることが確認された。また、舗装内部の調査の結果、赤外線画像上の異常部位では混合物層内部に水分の含浸や混合物の砂利化、層間空隙などの変状が認められた。

《キーワード:赤外線カメラ、ポットホール、点検診断、非破壊》

In this study, an examination was conducted towards the development of a nondestructive diagnostic technique for detecting potential locations of pothole occurrence in the snowmelt season using an infrared camera. Correspondence between infrared measurements on an actual road and locations of pothole occurrence on that road were examined. It was found that infrared images of pothole locations had locally lower temperatures than those of the surrounding area. The pavement interior was examined, and damage such as water seepage, stripping of the asphalt mixture, and interlayer de-bonding was found inside the mixture layers at portions of the pavement where the infrared images showed anomalies.

《Key Words : infrared camera, pothole, diagnostic technique, nondestructive》

ポットホール発生箇所の赤外線による事前検知技術に関する基礎検討

Examination of a Technique for Detecting Locations of Possible Pothole Occurrence Using Infrared Imaging

丸山 記美雄  星 卓見  木村 孝司

MARUYAMA Kimio, HOSHI Takumi and KIMURA Takashi

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寒地土木研究所月報 №775 2017年12月 3

1.はじめに

近年、北海道内の舗装道路では融雪期にポットホールの発生が目立つようになっている。ポットホールへの対応としては、発生の都度、穴埋めなどの事後的な対応が行われているのが現状であるが、ポットホールが発生する危険性の高い部分を、発生前の早い段階で検知できれば、予防的な処置や事前の補修を施すことにより融雪期のポットホールの発生を減らすことができると考えられる。

しかし、ポットホールの発生を事前に検知する技術は未確立で、研究が必要な段階にある。筆者らの既往研究によれば、融雪期に発生するポットホールは、ひび割れが元々存在しかつ水の影響を受けやすいところに高い確率で発生することがわかっている1)。水の影響を受けやすい部分は周囲と温度が異なると推測されることから、赤外線カメラによりポットホール発生箇所の事前検知が可能であると考えられる。ちなみに、赤外線カメラを用いた舗装体内部のはく離やブリスタリング等の損傷検知2),3),4)や、鋼床版のUリブ滞水を検知するための研究5)はこれまでも行われてきており、舗装のポットホールにおいても前兆検知の可能性が指摘されている6),7)。しかし、融雪期に発生するタイプのポットホールを事前に検知するといった視点での研究事例はなく、さらにポットホール発生を事前に検知するために必須の技術となる広範囲のスクリーニング調査技術についても研究の余地がある。

そこで本研究は、ポットホールに代表される融雪期に顕著に見られる損傷箇所を、赤外線カメラにより事前に検知する技術を開発することを最終目的とした。本報告では、近年開発が進んできた、赤外線によるリアルタイム計測技術を活用することとした。この技術を用いると交通規制を行わずに調査車両を法定速度で走行させて計測することができる8)。これにより得られたアスファルト舗装の温度分布画像を基に、融雪期のポットホール損傷の元となる部位表面の温度変状を検知する技術に関する基礎的な検討を行ったのでその結果を報告する。

2.赤外線による熱計測の原理

赤外線計測は、物体の表面から放射される赤外線の強度を赤外線センサで計測し、その結果を温度分布に換算して画像化する技術である9)。土木分野では、構造物における素材の違いや損傷の有無など物質の状態

に応じた赤外線放射量を感知し、外観から見えない内部の状態を把握することに利用される。

構造物内部に含水、滞水、空隙等の異常が発生した場合、健全部と異常部では熱容量に相違が発生する。熱容量の相違は温度の相違となり、内部から表面上に伝わる温度にも相違が発生する。そのため、異常が発生した箇所では、健全部に比べて表面温度が異なってくる。

例えば図-1に示すように、アスファルト舗装内部で含水や滞水している場合、加熱過程であれば周囲よりも低温となり、一旦加熱された後の冷却過程であれば周囲よりも高温となる。一方、アスファルト舗装内部で空隙が発生した場合は、昼間の太陽光による路面の加熱過程であれば、表面側から下層への熱の伝導が空隙によって遮られるため、空隙の直上は周囲よりも高温となる。逆に夕方以降の気温降下に伴う冷却過程であれば、下層から空隙直上部への熱流入が遮られるため、周囲よりも低温となる。すなわち滞水と空隙では一般に熱平衡状態の場合を除き、温度の相対的な表出状態が逆になる。

そのため、先述したとおり、ひび割れと水の供給がポットホール発生の主因であることと、ポットホールがアスファルト混合物層の路面に近い浅い部分に発生しやすいといったことから、ポットホール発生前の段階から表面付近に熱的な異常が現れやすいと推測される。具体的には、水分を多く含んだ状態のひび割れ周辺部を赤外線により温度変状箇所として抽出できれば、ポットホール発生箇所の事前検知に有用な情報となると考えられる。

空隙・剥離 滞水 健全

高温 低温 中温

空隙・剥離 滞水 健全

高温 低温 中温

図-1 健全部や滞水部の赤外線画像の傾向

(路面の加熱過程時)

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4 寒地土木研究所月報 №775 2017年12月

3.調査の方法

調査は第一次調査と第二次調査の2回実施している。第一次調査の目的は、赤外線カメラ画像の異常箇所とポットホール発生箇所との関係を把握することである。第二次調査の目的は、赤外線カメラで把握された異常箇所の内部に水分の含浸やはく離(混合物の砂利化)、空隙などの実際の異常が見られるかを現地で確認する事である。以下に、各々の調査方法を述べる。

3. 1 第一次調査の方法

第一次調査では秋期(平成24年12月上旬)に、札幌市近郊のアスファルト舗装区間(延長5km)における赤外線サーモグラフィカメラによる路面測定(撮影)を行った。赤外線サーモグラフィカメラは写真-1に示す車両に搭載し、測定は通常の走行速度(60km/h以下)で車線規制は行わずに走行している状態で実施した。赤外線計測にあわせて、同じ範囲を可視画像でも撮影し、路面および道路周辺の状況を把握した。こうして得たアスファルト舗装面の温度分布画像から、内部の含水や滞水に起因する温度変状箇所を抽出した。計測時の各種条件は以下のとおりである。

 計測時間帯:10時~14時 気象条件:晴れ、前日夜から早朝まで      若干の降雪あり 計測時の路面状態:ほぼ乾燥状態 走行速度:法定速度内で実施(60km/h以内)

また、同調査ではさらに、上記の秋期調査区間において、一冬経過した平成25年3月中旬に目視調査を行い融雪期のポットホール発生位置を特定し、秋期調査で得た赤外線画像上の温度変状の分布等と比較し対応関係を整理した。

3. 2 第二次調査の方法

第二次調査は、一次調査の実施区間と同じ区間、および別の区間2.5kmにおいて、秋期(平成26年10月)に写真-1に示す車両にて一次調査と同様の測定を降雨後6時間から50時間までの間に5回実施した。得られた赤外線画像から、アスファルト混合物層内部に滞水やはく離もしくは空隙が発生していると推測される明確な画像異常箇所を計13箇所、また、比較のために健全箇所を2箇所抽出した。またさらに一冬経過した後に、異常箇所および健全箇所として抽出した位置を無水ボーリングによりコア採取し、コアの状態と孔壁の状態を目視観察および写真撮影して赤外線画像との整合性を確認した。コア採取状況の一例を写真-2に示す。コア採取を行った位置は、写真-2の上段に示した赤外線画像および可視画像に赤丸で示しているが、この箇所では約5cm~20cmの深さに水分の含浸や混合物のはく離(砂利化)が見られた。

4.調査結果

4. 1 第一次調査の結果

4. 1. 1 温度分布画像異常箇所の状況

赤外線計測時の舗装表面はほぼ乾燥状態であったが、前日までの雨や早朝までの降雪に伴う水分の影響で、多くの箇所で含水や滞水を示す温度の低下が確認された。一例として、ある測定箇所の可視画像と赤外線画像を写真-3に示す。可視画像では水分の存在は識別できず、ひび割れが識別できる以外は特段の変状は見られないが、赤外線画像では路側側タイヤ走行

赤外線サーモグラフィカメラ可視画像カメラ

写真-1 赤外線カメラを搭載した調査車両

写真-2 赤外線画像異常箇所におけるコア採取状況

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寒地土木研究所月報 №775 2017年12月 5

位置に発生したひび割れ周辺が紫色で表示されており温度が部分的に低くなっていることが確認できる。これはひび割れ周辺のアスファルト混合物の温度が含水や滞水により低くなっているためと推測される。同一の箇所を3月に目視調査した際の写真を写真-4に示すが、ポットホールが発生していたことが分かる。写真

-3、写真-4において緑色で示した枠はほぼ同じ範囲を示しているが、融雪期にポットホールが発生した位置は、秋期の赤外線計測時に温度低下がはっきりと記録されていたことが分かる。ひび割れ部付近の混合物は水の影響を比較的受けやすく、ポットホールの発生に繋がる危険性があるが、そのような部分は赤外線画像でその周囲と違いがあることが確認できた。

4. 1. 2 ポットホール発生箇所の赤外線画像

表-1に、融雪期にポットホールが発生していた23箇所について、その状況と秋に撮影した赤外線画像および可視画像を比較した結果を示した。ポットホールの発生が確認された箇所ほぼ全てでその周囲に比べて温度が低下していることが確認できた。温度低下が確認された箇所では含水状態や水分が滞留しやすい状態となっており、この水分が凍結・融解を繰り返すことによりポットホールの発生を引き起こすものと推察される。融雪期にポットホールが発生する危険性の高い箇所を、発生前の段階で検知できる可能性が確認できた。

(可視画像)

(赤外線画像)

赤外線画像内:(低温)濃い青←紫←橙→黄→白(高温)

写真-3 同一箇所の路面調査時画像(平成24年12月)

写真-4 写真-3と同一箇所の目視調査時状況

(平成25年3月、ポットホールが発生し穴埋めされている)

表-1 ポットホール発生箇所の赤外線画像確認結果

No 秋期の路面状況 3月の目視調査時の路面状況

秋期の赤外線画像

温度低下有無1 損傷なし ポットホール 有2 ひび割れ ポットホール 有3 ひび割れ ポットホール 有4 パッチ ポットホール 有5 ひび割れ ひび割れ、ポットホール 有

6 ひび割れ ひび割れ、パッチ、一部ポットホール 有

7 ひび割れ ひび割れ、一部ポットホール 有8 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有9 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有10 ひび割れ ひび割れ、ポットホール 有

11 ひび割れ、パッチ ひび割れ、パッチ、ポットホール 有

12 パッチ パッチ、ポットホール 有13 ひび割れ ひび割れ、ポットホール 有14 ひび割れ、パッチ ひび割れ、ポットホール 有15 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有16 ひび割れ ポットホール 有17 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有18 ひび割れ、パッチ ひび割れ、パッチ 有19 ポットホール ポットホール 有20 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有21 ひび割れ、ポットホール ひび割れ、ポットホール 有22 ひび割れ ひび割れ、ポットホール 無23 ひび割れ ひび割れ、ポットホール 有

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6 寒地土木研究所月報 №775 2017年12月

4. 1. 3  赤外線画像の温度変状とポットホール発

生箇所

図-2に、赤外線計測を行った5km区間を100m区間ごとに区分し、さらに道路横断方向に3分割した矩形範囲を設定し,各々の範囲に水の存在に起因すると思われる温度低下の頻度を青色の濃さで着色し示した。青色の濃さは、各々の矩形範囲において10m毎に撮影した温度分布画像から識別された低下温度に応じ4段階に分け表示した。これをみると上下線とも幅広く温度低下箇所が見られ、特に、車道部の路側に近い側に多く温度低下箇所が見られた。可視画像をみると路側側のタイヤ走行位置にはひび割れが多く発生しており、温度低下は、ひび割れ周辺が水の影響を受けて含水や滞水していたためと考えられる。またさらに図-

2には、融雪期後の調査でポットホールの発生を確認した23箇所を緑色で囲って示してある。ポットホールが発生した箇所は、概ね秋の調査段階で水分の影響を受けて温度低下が記録されていた区間であることが確認できる。ただし、秋の段階で温度低下が見られた区間のうちでポットホールの発生に至らなかった区間も多く存在していることも留意すべき点である。

4. 2 第二次調査の結果

4. 2. 1 赤外線画像で検知される異常信号の検証

可視画像や目視でひび割れが発生しており、かつ赤外線画像によってもひび割れ周辺部の温度が低く、内

部に水分の含浸・滞水が疑われる箇所において採取したコアの一例を写真-5に示す。下段写真赤丸の位置で無水コアを採取した。採取したコア(写真上部)を観察すると表層および基層の一部混合物が水分を含んでおり、路面から5cm下の深さで層間の付着が悪化していることが確認できる。

こうした可視画像および赤外線画像に現れる変状を異常信号と呼ぶこととし、同様の異常信号が見られる箇所のうち8箇所でコア採取を行った。そしてそのうち7か所で混合物層内部の比較的浅い層(路面から3~10cm程度の深さの層)に水分を含んでいることが確認された。また、混合物層の内部に写真-2の下段に示したようなはく離(砂利化)を生じているコアも3か所で確認された。

路肩

路肩

路肩

路肩

滞水集計結果

路肩 AB

→ CD

高温変状結果← A

B 高温の熱変状を確認路肩

なし

7 10枚中7~10枚の画像で滞水を確認

0 なし10枚中1~3枚の画像で滞水を確認10枚中4~6枚の画像で滞水を確認4

1

0

1000m

0

0

4

4

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0

0

0

800m

0

0

600m 700m200m

0

0

1

1

6

300m 400m 500m0m 100m

0

0

0

0

0

0

1

11

1600m 1700m 1800m 1900m

0

3

2000m1200m 1300m 1400m 1500m900m 1100m

5

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0

0

0

0

3

10

0

0

0

0

0

0

1

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0

0

0

0

0

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2

2

2

1

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8

0

0

0

0

0

10

0

0

0

0

0

5

0

0

0

0

0

8

0

0

0

0

0

8

0

0

2

0

0

6

3

2

1

1

2

7

7

3

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4

1

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8

3

6

3

1

10

4

4

6

4

2

10

5

2

10

3

1

10

7

2

10

1

3

10

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

5000m 4900m 4800m 4700m 4600m 4500m 4400m 4300m 4200m 4100m 4000m 3900m 3800m 3700m 3600m 3500m 3400m 3300m 3200m 3100m 3000m

2000m 2100m 2200m 2300m 2400m 2500m 2600m 2700m 2800m 2900m 3000m 3100m 3200m 3300m 3400m 3500m 3600m 3700m 3800m 3900m 4000m

7 6 6 8 7 10 8 3 4 4 5 8 10 10 10 10 10 10 10 10

0 0 1 2 7 0 0 2 0 4 5 0 0 1 1 6 4 5 0 0

2 5 2 6 8 0 0 0 0 4 5 0 0 0 1 4 5 2 0 0

2 0 2 3 7 8 1 1 1 4 5 0 0 0 0 0 1 0 0 0

1 0 0 3 5 6 1 0 1 4 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0

10 6 10 10 7 5 4 2 5 9 10 9 1 7 8 10 10 10 10 10

3000m 2900m 2800m 2700m 2600m 2500m 2400m 2300m 1200m 1100m1800m 1700m 1600m 1500m

4800m

1400m 1300m2200m 2100m 2000m 1900m

4900m 5000m

1000m

4000m 4100m 4200m 4300m 4400m 4500m 4600m 4700m

10 10 10 10 10 1010 10 10 10

0 0 0 0 2 00 0 0 1

5 0 1 4 6 76 1 10 9

0 0 0 2 0 10 0 0 0

0 1 4 4 0 15 9 4 4

10 10 10 10 10 910 10 10 10

900m 800m 700m 200m 100m 0m600m 500m 400m 300m1000m

35.0kp

橋梁区間

1),2) 3),4)

5)~8)

7)

9),10)

11)

12)

13)~16)

17)

18) 19),20) 21)

22)

23)

ポットホール発生位置

低温変状集計結果

10 枚中 1~3 枚の画像で低温変状を確認

10 枚中 4~6 枚の画像で低温変状を確認

10 枚中 7~10 枚の画像で低温変状を確認

路肩

路肩

路肩

路肩

滞水集計結果

路肩 AB

→ CD

高温変状結果← A

B 高温の熱変状を確認路肩

なし

7 10枚中7~10枚の画像で滞水を確認

0 なし10枚中1~3枚の画像で滞水を確認10枚中4~6枚の画像で滞水を確認4

1

0

1000m

0

0

4

4

71

0

0

0

800m

0

0

600m 700m200m

0

0

1

1

6

300m 400m 500m0m 100m

0

0

0

0

0

0

1

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1600m 1700m 1800m 1900m

0

3

2000m1200m 1300m 1400m 1500m900m 1100m

5

8

0

0

0

0

3

10

0

0

0

0

0

0

1

7

0

0

0

0

0

10

2

2

2

1

1

8

0

0

0

0

0

10

0

0

0

0

0

5

0

0

0

0

0

8

0

0

0

0

0

8

0

0

2

0

0

6

3

2

1

1

2

7

7

3

9

4

1

10

8

3

6

3

1

10

4

4

6

4

2

10

5

2

10

3

1

10

7

2

10

1

3

10

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

下り 第1車線

中央線

上り 第1車線

5000m 4900m 4800m 4700m 4600m 4500m 4400m 4300m 4200m 4100m 4000m 3900m 3800m 3700m 3600m 3500m 3400m 3300m 3200m 3100m 3000m

2000m 2100m 2200m 2300m 2400m 2500m 2600m 2700m 2800m 2900m 3000m 3100m 3200m 3300m 3400m 3500m 3600m 3700m 3800m 3900m 4000m

7 6 6 8 7 10 8 3 4 4 5 8 10 10 10 10 10 10 10 10

0 0 1 2 7 0 0 2 0 4 5 0 0 1 1 6 4 5 0 0

2 5 2 6 8 0 0 0 0 4 5 0 0 0 1 4 5 2 0 0

2 0 2 3 7 8 1 1 1 4 5 0 0 0 0 0 1 0 0 0

1 0 0 3 5 6 1 0 1 4 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0

10 6 10 10 7 5 4 2 5 9 10 9 1 7 8 10 10 10 10 10

3000m 2900m 2800m 2700m 2600m 2500m 2400m 2300m 1200m 1100m1800m 1700m 1600m 1500m

4800m

1400m 1300m2200m 2100m 2000m 1900m

4900m 5000m

1000m

4000m 4100m 4200m 4300m 4400m 4500m 4600m 4700m

10 10 10 10 10 1010 10 10 10

0 0 0 0 2 00 0 0 1

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10 10 10 10 10 910 10 10 10

900m 800m 700m 200m 100m 0m600m 500m 400m 300m1000m

35.0kp

橋梁区間

1),2) 3),4)

5)~8)

7)

9),10)

11)

12)

13)~16)

17)

18) 19),20) 21)

22)

23)

ポットホール発生位置

低温変状集計結果

10 枚中 1~3 枚の画像で低温変状を確認 10 枚中 4~6 枚の画像で低温変状を確認

10 枚中 7~10枚の画像で低温変状を確認

高温の温度変状を確認

図-2 赤外線調査区間の温度変状箇所の整理結果

写真-5 ひび割れ部滞水を示す異常信号と採取コア

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寒地土木研究所月報 №775 2017年12月 7

4. 2. 2 異常信号の検証(誤判別事例)

可視画像や目視で同じようなひび割れに見える場合でも、赤外線画像で見ると異なって見えることがある。一例を写真-6に示す。写真中の左側わだち部のひび割れの周辺部は温度が低くなっていて内部に水分の滞水が疑われるが、その近傍にある右側わだち部のひび割れの周辺部は特に温度の変状は見られず水分の滞水がないと判断できるといった具合である。写真-

6の上下段には、各々のひび割れ箇所から採取したコアの写真を示した。滞水信号が見られる左側わだち部から採取したコアには水分の含浸が明らかに認められるが、滞水なしと判断した右側わだち部から採取したコアには、表面から5cm~15cm程度の深さの間にわずかな水分の含浸が見られるものの総体的には乾燥した健全な状態であることが確認できた。表面からは同じようなひび割れに見える場合でも、内部状態が異なることを赤外線画像で察知できる可能性を示した例である。

一方で、画像では、ひび割れ部であっても周辺部の温度低下が見られず滞水がないと判別した別箇所のコア採取結果を示す(写真-7)。この箇所で採取したコアの内部は、表層3cmと基層の間の層間の付着が悪化し、また約10cm以深で水分の含浸や混合物層の砂利化が認められ、画像判別とは異なる結果となった。

赤外線画像を用いたひび割れ部の滞水有無の判別によるひび割れの程度評価や損傷の発生予測の可能性が示されたが、誤った判別をすることもあった。今後様々な条件の下で調査を実施し誤りを排除、修正できる技術を開発する必要があると考えられる。

4. 2. 3 層間空隙を示す異常信号

アスファルト混合物層の層間に空隙がある場合、赤外線画像においては、昇温時には周辺部よりも局部的に温度が高くなる。そのような箇所で無水コア採取を行った結果の一例を写真-8、9に示す。

写真-8に示した赤外線画像においては、タイヤ走行位置の脇に連続した白いスポット状(斑点状)の高温部分が確認できる。写真-9には両輪のタイヤ走行位置の中間部にスポット状の高温部分が確認できる。この斑点状部分の中心でコア採取した結果を写真-8、9の上段に示したが、表面から5cm程度の深さ、表層混合物と基層混合物の層間に空隙が認められた。ただし、層間空隙部分は水分を含んでおらず、乾燥している点が特徴である。つまり、層間空隙があり、かつ、空隙部分に水分が浸入してきていない場合には、このような高温の斑点状の異常信号として表れると考えられる。

写真-6 ひび割れ部の滞水の有無と異常信号

写真-7 異常信号がないケース(誤判別)

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8 寒地土木研究所月報 №775 2017年12月

4. 2. 4 健全信号箇所の状況

赤外線画像において、健全であると判断された箇所でコア採取を行った結果の一例を写真-10に示す。写

真-9に示した層間空隙を示す異常信号の箇所から1m程度離れた箇所でコア採取したものであるが、約8~12cm程度の深さに水分の含浸がわずかにみられたものの、全体的には乾燥しており層間の空隙などがない健全な状態である。一定の条件で撮影された赤外線画像で温度変状が認められない箇所の内部は、このような健全な状態であると考えられる。

4. 2. 5 赤外線画像と採取コアの整合性

赤外線画像から推定された異常と、コア採取調査による内部状態の整合性判定結果を表-2に示す。

ひび割れ部滞水を示す異常信号箇所においては、コアを採取した8箇所のうち、7箇所で内部の比較的浅い層に明らかな水分の含浸が確認され、その整合率は約88%であった。層間空隙を示す異常信号箇所では、3箇所のうちすべてで表面から5cm程度の部分に層間空隙が見られ、空隙内部は乾燥した状態であり、整合率は100%であった。

本検討では、赤外線画像で明らかな異常が見られる部分についてのみ内部の状態を調査としたという面はあるが、赤外線画像から推定される変状と内部の状態は高い確率で整合しており、赤外線カメラによる舗装診断の有用性が認められたと判断してよいだろう。

道路のアスファルト混合物層は数センチ~35cm程度の深さがあり、このうちポットホールの発生につながるのは、表層に近い部分の変状であることから、赤外線カメラによってポットホールの発生の危険性を事前診断することは一定程度可能であり、将来的に有用な点検診断技術になりうると考えられる。

写真-8 層間空隙を示す異常信号と採取コア(その1)

写真-9 層間空隙を示す異常信号と採取コア(その2)

写真-10 健全信号箇所と採取コア

表-2 赤外線信号と採取コアの整合性集計表

分類 コア採取実施件数(件)

整合件数(件)

整合率(%)

a)ひび割れ部   滞水を示す異常信号箇所 8 7 87.5

b)ひび割れ部  滞水無しを示す信号箇所 2 1 50

c)層間空隙を示す異常信号箇所 3 3 100d)健全信号箇所 2 2 100

合計 15 13 86.7

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5.まとめ

本研究から得られた結果は以下の様にまとめられる。(1) 舗装に生じたひび割れの周辺部の水分の含浸,は

く離(砂利化)および層間空隙の存在によって温度変状が生じており、その温度変状を通常走行中の車両に搭載した赤外線カメラで検出できることを確認した。

(2) 融雪期にポットホールが発生する箇所は、秋の段階で温度変状が記録されており、ポットホール発生の事前検知の可能性が示された。一方で、秋の段階で温度変状が見られてもポットホールの発生に至らない箇所も多く存在していることなどから、赤外線画像の評価手法の改善や複数年に亘るポットホール発生現象の追跡など検知の確実性を高める取り組みが今後必要と考えている。

謝辞:本調査には国土交通省北海道開発局ならびに札幌開発建設部の関係者にご協力をいただきました。記して謝意を表します。

参考文献

1) 丸山記美雄・安倍隆二・熊谷政行:融雪期の舗装損傷発生条件に関する一検討、土木学会北海道支部平成25年度論文報告集(第70号)、2014.

2) 坪川将丈・水上純一:熱赤外線画像による空港舗装の層間剥離検出方法に関する研究、土木学会舗装工学論文集、第12巻、pp.17-24、2007.

3) 早野公敏・前川亮太・鈴木哲夫・橋爪秀夫:連続式赤外線撮影による空港アスファルト舗装の層間剥離探査の試み、地盤工学ジャーナル Vol.3、No.1、pp.13-23、2008.

4) 永田明・塚本成昭・青木康素・内間満明・黒須秀明:赤外線計測法による舗装調査の検証、土木学会第65回年次学術講演会、V-064、2010.

5) 内間満明・黒須秀明・前田近邦・田畑晶子・山上哲示・塚本成昭:熱赤外線計測法による鋼床版のUリブ滞水診断、土木学会第64回年次学術講演会、V-340、2009.

6) 黒須秀明・内間満明・前田近邦・山上哲示・塚本成昭:赤外線検査法(その1)-舗装の走行観測診断-、土木学会第66回年次学術講演会、V-419、2011.

7) 内間満明・黒須秀明・前田近邦・山上哲示・塚本成昭:赤外線検査法(その3)-損傷の検出と分類-、土木学会第66回年次学術講演会、V-421、2011.

8) 塚本成昭・山上哲示・内間満明・黒須秀明・前田近邦・閑上直浩:赤外線による舗装の点検手法、舗装、Vol.46-7、pp.17-22、2011.

9) 財団法人土研センター:土木コンクリート構造物のはく落防止用赤外線サーモグラフィによる変状調査マニュアル、2005.

丸山 記美雄MARUYAMA Kimio

寒地土木研究所寒地保全技術研究グループ寒地道路保全チーム総括主任研究員博士(工学)技術士(建設)

星 卓見HOSHI Takumi

北海道開発局稚内開発建設部道路整備保全課上席道路整備保全専門官(前 寒地土木研究所 寒地保全技術研究グループ 寒地道路保全チーム 主任研究員)

木村 孝司KIMURA Takashi

寒地土木研究所寒地保全技術研究グループ寒地道路保全チーム上席研究員