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1 / 20 2016 年度 スリランカ・シンガポールにおける 日本車の中古車輸入実態の視察研究 2016 11 26 一般社団法人日本自動車販売協会連合会 業務部 部長 取扱注意

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2016年度

スリランカ・シンガポールにおける

日本車の中古車輸入実態の視察研究

2016 年 11 月 26 日

一般社団法人日本自動車販売協会連合会

業務部 部長 泉 水 俊 明

取扱注意

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注 1)輸出抹消台数を中古車輸出台数とみなす

注 2)輸出総数に対する中古車比率=中古車輸出台数/(新車輸出台数+輸出抹消台数)*100

中古車販売に対する輸出比率=輸出抹消台数/(中古車登録台数+輸出抹消台数)*100

1.中古車の海外輸出に着目した背景

少子高齢化や価値観の変化、クルマが必需である社会とそうでない社会、特に公共

交通機関が充実しクルマがなくても不便さを感じない都市部の若者など、クルマは保有

するものではなく使いたいときに使用するものということが常識化している一定の層も

出現しており、これまでの常識だけでは自動車販売を捉えることは難しくなっている。

こうした社会的要因から、我が国の自動車市場、とりわけ新車市場の将来を見通すと

徐々に縮小していくことが容易に想像できる。中にはクルマが欲しいが維持費を含めた

経済的な理由などから需要に結びつかない状況等、市場拡大には大きな壁が控えている。

この状況に対抗する術はないものかと考えたとき、一つのヒントとして、国内市場に

ある古い自動車を海外に輸出することで、その空いた市場は新車の需要を発生するので

はないかと見込んだ。

これまで、明確に「中古車輸出」をターゲットに研究したことはなく、今回初めての

トライアルとして、日本からの中古車輸出が比較的安定的に行われているスリランカ、

シンガポールへの視察研究を実施した。

2.中古車輸出の状況

中古車輸出市場は無視できない存在

図表2-1.新車・中古車別 輸出台数と輸出比率の推移

126

143152

92 92 93

110

128142 144

93

17.417.9 18.4

20.4

16.017.2

18.6

21.5

24.1 23.9 24.2

20.0

23.8

26.1

18.6

19.019.7

21.5

24.8

27.4 27.826.8

0

5

10

15

20

25

30

0

50

100

150

200

250

300

中古車(万台) 輸出台数 輸出総数に対する中古車比率 中古車販売に占める輸出比率

万台 %

資料)自工会、自販連

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図表2-2.新車需要(登録車)台数に対する輸出抹消台数比率の推移

33.9

41.4

47.0

31.5

28.5

34.6

32.4

39.3

43.1

45.6

37.9

0

10

20

30

40

50

新車需要に対する輸出抹消台数比率

資料)自販連

注)新車需要をほぼ代替需要とみなすと、これが中古車販売の母体と想定

図表2-3.中古車輸出台数の推移(通関ベース)

60

71

83

94

114

130 135

68

84 86

100

116

128

125

119 116113

121

114

104

50

124

102

117 116

110

98

0

20

40

60

80

100

120

140

0

50

100

150

200

02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15

万台

前年比

資料)財務省「貿易統計」

注)通関実績には 20万円以下は計上されないため、輸出抹消台数ベースとは異なる

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中古車輸出市場は各国の税制、規制の変更に伴い短期間に市場動向が変化しやすい

図表2-4.主要国別中古車輸出の推移(通関ベース)

15年

順位 国  名 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

2016

/1-6

1  MYANMAR - - - 2,842 6,703 7,653 19,625 120,836 134,681 160,437 141,066 68,291

2  U.A.E. 113,823 116,981 - 98,204 89,966  86,625  80,712 87,793 98,831 112,827 136,212 81,172

3  NEW ZEALAND 132,645 96,227 101,238 59,090 57,427 68,952 68,091 61,465 91,322 110,333 118,427 60,873

4  KENYA  18,322 24,187 42,347 40,546 44,699 50,749 39,248 44,659 61,396 67,059 77,473 22,765

5  CHILE  47,491 60,559 96,844 123,944 51,066 79,430 69,473 61,701 78,000 73,364 64,658 40,761

6  SRI LANKA  17,550 25,786 14,230  6,052  2,183 27,029 38,496 11,274 18,209 34,243 59,322 11,223

7  PAKISTAN  11,780 37,512 21,576  8,089 6,593 9,509 37,880 64,644 28,785 38,228 49,485 24,928

8  RUSSIA 268,685 389,921 478,878 563,369 53,180 105,478 110,791 142,412 167,822  128,312 49,144 18,794

9  SOUTH AFRICA  31,415 31,049 38,715 47,797 55,304 66,575 67,458 59,789 62,275 53,540 46,475 20,836

10  TANZANIA 6,055  6,981 12,972  16,359 17,609  20,979 18,714 22,949 30,912 37,343 42,738 21,066

11  PHILIPPINES  21,497 22,920 -  19,939 25,721  24,296  18,327 23,666 25,228 27,870 33,984 16,869

12  MONGOLIA 7,206 13,486 17,802  26,256  6,285  19,639  35,983 30,172 34,919  35,367  31,684 15,548

13  GEORGIA - - -  3,937 5,575  8,888  6,199 8,440  18,217 38,759 29,519 14,837

14  BANGLADESH 10,564 14,288 18,496 29,256 37,011 29,155  16,028  7,077 13,033 19,770 29,195 17,961

15  UGANDA 8,415 10,896 16,761  22,682  17,637  22,429 23,791 24,837 27,695  27,217  22,616 9,558

16  MALAYSIA  17,544 12,337 18,423  21,622 21,744  23,611  21,791  23,370  27,837  27,312  22,541 12,199

17  MOZAMBIQUE 1,757 2,690 6,057  6,973  5,094  5,307  7,900 10,886 16,503 23,214 20,973 5,749

18  TRINIDAD and TOBAGO - - - 7,690 3,358 4,996 5,559 10,939 15,310  14,599 19,268 4,485

19  SINGAPORE  11,498 19,028 24,669  26,078  5,396  4,202  3,272  2,635 -  4,684 17,481 13,492

20  JAMAICA 9,494 10,331 10,735  7,658  4,069  4,218  5,989  11,271 10,801 10,347  16,803 10,362

21  SURINAM           - - - 16,020 14,597 11,855 9,317 12,315 13,723 12,606 14,445 3,012

22  ZAMBIA - 2,935 3,460  5,478 2,691  4,752  9,815  18,077  22,739 20,800 13,461 3,012

23  BOTSWANA - 2,436 4,339 4,887 3,380 4,565 10,256  12,381 7,477  10,336  12,018 5,050

24  HONG KONG - 8,666 7,998  7,479  8,686 12,411 10,781  9,679 8,216 9,727 11,143 4,191

25  THAILAND 4,146 9,399 9,640 12,812 17,941   16,142  13,529 9,177  8,293 9,285 11,130 2,936

図表2-5.2015 年の市場マップ

参考)自販連で今年度視察を行ったスリランカ、シンガポールは、ピンからキリでいうところのピンの上位国に偏った地域

資料)フジヤマトレーディング「中古車輸出業界概要」

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3.スリランカ、シンガポール中古車事情視察

1)スリランカ、シンガポールの中古車市場の現状

◆6 年前の内戦終結後、自動車市場が拡大する中 2015 年の日本からのスリランカ

への中古車輸出台数は、1500cc 以下の環境対応車への税制優遇による軽自動車の

輸入増加もあり、5.9 万台(前年比 406.3%)と激増。

中古車輸出全体としても 125.4 万台と拡大傾向が続いていた。

◆スリランカでは政策ベースで市場がよく変化し、2015 年の関税引き上げにより

車両価格が高騰したことで、2016 年に入り中古車輸入は失速気味になっている。

ただし依然としてHV、高年式車、いわゆる新古車を中心に日本車の人気は高い。

◆輸入車は、登録 3 年以内の右ハンドル車に規制されており、高年式車が中心の

ため、車両販売価格は高価格となっている。

◆シンガポールでは、政府による自動車保有抑制策から自動車購入に係る費用が

高額なうえ、中古車の場合には更に 1 万シンガポール・ドル(約 80 万円弱)が追加

徴収される。

◆シンガポールの特徴として、輸出元国で新車新規登録後 14 日以内に抹消登録

された自動車をシンガポールに 3 か月以内に輸入(港に着く)された車は新車として

登録できるため、いわゆる新古車ニーズが高く、これにより日本からの輸入台数が

増加している。

◆近年、新車登録後 10 年に近い車が増加しており、中古車部品の需要ニーズが

高まっており、また並行輸入業者を中心に整備の必要性に迫られている。

順位 国名 輸出台数(台) 前年比(%) FOB平均価格(円) 順位 国名 輸出台数(台) 前年比(%) FOB平均価格(円)

1 ミャンマー 13,150 91.8 465,000 1 UAE 10,696 119.4 301,403

2 ニュージーランド 10,333 118.8 497,799 2 ミャンマー 10,279 78.2 471,864

3 UAE 8,995 91.6 302,052 3 ニュージーランド 10,252 99.2 427,554

4 ケニア 7,108 126.7 671,455 4 チリ 7,832 117.5 215,591

5 チリ 6,665 96.1 250,991 5 パキスタン 4,610 120.3 824,259

6 ロシア 5,416 41.1 567,389 6 ケニア 4,278 60.2 785,265

7 スリランカ 4,439 234.6 1,613,809 7 ロシア 4,135 76.3 445,486

8 パキスタン 3,831 102.2 909,759 8 タンザニア 3,131 86.5 348,729

9 タンザニア 3,619 124.2 358,655 9 南アフリカ 2,990 86.9 155,945

10 南アフリカ 3,442 86.6 216,940 10 モンゴル 2,981 89.2 364,667

17 スリランカ 1,291 29.1 1,497,736

18 シンガポール 1,251 229.1 2,238,025

2015年5月 2016年5月

図表3-1-1.輸出先国別中古車輸出実績 TOP10

資料)国際自動車流通協議会

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2)スリランカ、シンガポールの中古車市場の見通し

(1) スリランカ

◆現在は下降気味であるものの、まだ市場拡大の余地はあり、HV、高機能安全車

の需要が見込まれる。ただし人口約 2,000 万人と市場規模に限度がある。

◆HVの急増による中古車のアフターサービス、部品供給ニーズは拡大。

今後、これらのビジネスチャンスが拡大するのではないか。

◆物流コスト、人件費の安さ、ITに強い国ということから、今後、第三国への

輸出拠点として有望といえる。

(2)シンガポール

◆いわゆる総量規制により台数が調整されており、自動車市場は限定的。

さらに、輸入中古車には追加課税があり、中古車の輸出先市場としては厳しい。

◆自動車販売とアフターサービスが分離しており、また今後 10 年超えの車両が増加

するため、アフターサービスのノウハウ提供や部品供給ニーズが高い。

3)スリランカ、シンガポールにおける自動車を取り巻く状況

(1)スリランカの中古車事情

①スリランカの国の概況

◇人口 2,096 万人、面積 65.610 ㎢(北海道の約 8 割)、国民の 7 割が仏教徒。

◇25 年以上に渡る内戦が 2009 年に終結。

経済復興が進み、近年、コロンボ市を中心に都市開発が活発化。高級ホテル、

マンション、商業施設の建設ラッシュに沸き、観光客も急増している。

◇2015 年 1 月に新政権が誕生し、2 大政党による連立政権。

外交は中国依存体質を見直し、全方位外交へ転換した。

◇現政権は政策が頻繁に変わり、関税も数回変更された。

連立政権のため旗振り役が多く、何かするにも複数の担当者に話をする必要

があり、担当者が適任か吟味することが重要になる。

図表3-1-2.コロンボを中心に近代化が進む

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②スリランカの経済の概況

◇一人当たりGDPは$3,768、インド、バングラデシュを上回りインドネシア

とほぼ同等。

一般的に$3,000 が必需品以上のモノを購入する境目と言われている。

例えば紙オムツが売れるラインが$3,000。$3,000 超えでモータリゼーション

が起こるとも言われる。

◇経済成長率は 2011 年 8.4%、2012 年 9.1%と高い水準を示していたが、近年

5%弱に鈍化している。

◇失業率はここ数年 4%台で推移、安定的である。

◇貿易赤字が大きく(2015 年▲84億 3 千万ドル)、財政は苦しい。

図表3-1-3.各国主要指標の比較

図表3-1-4.スリランカの財政赤字額の推移

資料)スリランカ財務省

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③スリランカの自動車市場の現状

◇2015 年のスリランカの中古車市場は、いわゆる新古車、高年式の最新安全装備車、

HVが増加。

同年 1 月に 1500cc 以下のHVがエコカー減税の適用となったため、スズキの

S-EneCharge搭載のワゴンRは手頃な価格と最新装備を兼ね備えたコンパクトカー

として注目された。

スリランカの並行ディーラーでは、いわゆる新古車を新車として販売している。

◇中古自動車の輸入条件は、新車登録 3 年以内の右ハンドル車両のみだが、新政権

が貿易赤字の解消と都市交通整備のため自動車車両を制限したい意向から輸入税率

と物品税率を引き上げ、車両価格が高騰。

このため、2016 年に入り中古車輸入が失速しはじめた。

◇関税の引き上げにより輸入中古車の価格が高騰したため、並行業者も中古車から

新車取り扱いに移行しつつあり、税制の適正化が一番の課題として、政府関係者と

協議している。

◇スリランカにおける財政は自動車関連の税収が全体の 40%以上を占めており、

引き下げるのは難しく、財務大臣も「この先 2 年間は関税の方向性を変える予定は

ない」と言及している。

◇自動車は、メーカー系ディーラー12 社と 2 つある輸入組合に加盟する販社が販売

しており、メーカー系と輸入組合 2 団体の販売比率は 38:62。

両者間で販売競争になっている。

◇今回視察した輸入販社の月間販売台数は約 60 台、6~7 割を日本から仕入れる。

日本、UK、UAEが仕入れ先のトップ 3 で、HVは 8 割以上が日本車である。

◇輸入販社では、日本の検査ステッカー(JAAI等)を貼りっぱなしで展示・販売し

ていたが、検査会社によって車の価値(販売価格)も変わり、キチンとした会社の検査

を受けていることの証として貼ったままで販売している。

日本のステッカーがステータス、信頼の証になっている。

◇HV車等のメンテナンスはメーカー系ディーラーへ持ち込む。

◇市中、特に郊外に小さく古ぼけた整備工場やパーツ店が点在している。

◇整備工場は、日本のような公的な資格要件はなく、整備工も義務教育終了後、

職業訓練校に入りそこを卒業した若者が働いている。

スリランカでは、安い賃金を強みに若い理系大卒エリート層が欧州などからの

アウトソーシングでアプリ制作(アプリ天国とも言われる)などに取り組んでいる

ほかは、職業が多様でないため、整備工は多い。

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図表3-1-5.日本からスリランカへの中古車輸出台数の推移

6,052 2,183

27,029

38,496

11,274

18,200 14,599

59,322

7,913

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016/

1-4月

(単位:台)

資料)一般財団法人 日本自動車査定協会

図表3-1-6.スリランカの月別新車登録台数(2015 年)

6,663

5,070

6,807 5,948

6,738

8,469

10,452 9,802

15,017

11,679 10,894

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11月

(単位:台)

資料)JETROコロンボ事務所

図表3-1-7.スリランカの輸入税体系 例:CIF=10万ルピー、関税 30%の物品を輸入する際の総額費用

税 税率 金額(単位:ルピー)

CIF - 100,000

関税 30% 30,000

PAL(港湾空港開発税) 7.5% 7,500

VAT(付加価値税) 15% 30,589

物品税 37% 56,425

NBT(国家推進税) 2% 4,079

課税額合計 - 128,593

税込総額 - 228,593

資料 JETRO

図表3-1-8.スリランカの関税増加率 2016年 5月に関税改正による関税額の増加率

車種 関税増加率

1000cc以下クラス

ワゴンR 124.9%

1000cc以上1500cc以下クラス

グレース

アクア

ヴェゼル

1500cc以上2000cc以下クラス

アクセラ

アコード

X-TRALL

プリウス

ヴォクシー

2000cc以上クラス

ハリアー

プラド200.0%

114.3%

228.5%

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④スリランカの自動車の購買特徴

◇スリランカでは日本車の人気が高く、特に市中では最新の日本車が往来。

*プリウス、リーフ、ワゴンRなどが目立つ。

◇日本車というか、日本製に対する品質の高さ、信頼性が厚いことから日本車は人気。

特に、MADE IN JAPAN 車にプレミア感が付き、例えば同車種でもタイ製ではなく

日本製が好まれ、日本語表示のままのナビやスイッチ類が更に信頼性を高める。

◇日本のユーザーは自動車を綺麗に使い、メンテナンスもキチンとしているから

という理由から、日本の中古車は高価格で取り引きされる。

◇エコカー減税導入もあり、2015 年の中古車輸入はHV車の人気が高く、プリウス、

アクア、アクシオ、フィット、グレイス、ワゴンR等が人気。

2015 年は電気自動車も注目を集め、日産リーフの人気も高く、充電設備が税制に

左右されるなど、その影響の大きさが窺える。

◇2015 年 12 月に 1500 ㏄以上の自動車に対する関税が大幅に引き上げられたため、

ハイエースや電気自動車の輸入がストップ。

一方、台数は減っているもののアクア、プリウス、アクシオの輸入は続いており、

ワゴンR、エクストレイルも入ってきている。

◇スリランカ人は走行距離よりもスイッチ類のカッコ良さなどが上回り、キーレス、

ステアリングボタンの多さ等への指向が高く、日本車の人気に拍車が掛かっている。

*一説では、欧州車よりも日本車の内装、意匠が好まれるとのこと。

◇都市在住で購買力のある層の自家用車の購入意欲は高いが、自動車ローンに

対する規制が厳格化。

中古車のオートローン貸し出し制限も従来は車体価格の 9 割までとされていたが

7 割に減額され、ローン購買意欲への影響が懸念される。

◇輸入販社でのローン販売比率は 80~90%、金利は 10~12%(ヒアリングから)。

図表3-1-9.コロンボ市内の様子

多くのバス、三輪タクシーが往来し、庶民の足となっているが、道路整備が遅れており、市中或いは

幹線道路沿いで常に渋滞が発生。交通マナーも悪く、隊列駐車が日常化している。

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三輪タクシーはUBER同様にスマホで予約 古いバスや荷台に乗り込む人たち

OSAKAという店名 …東京、大阪が多い 街外れにはバラックのような居住区が多い

図表3-1-10.スリランカの整備工場、部品商

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⑤スリランカへの中古車輸出の展望

◇2010 年以降、自動車市場は拡大を続けているが普及率はまだ低く、拡大の余地が

大きいうえ、今後、中間層の拡大により需要の伸びが期待される。

◇市場拡大、最新の自動車が増えたことに伴い、今後アフターサービスへのニーズ

が本格化するものと見込まれる。

まだ外資企業の参入が少ない状況でビジネスチャンスであるのかもしれないが、

整備、部品等の法規制が未整備であることは不安材料。

◇スリランカ人は外向き志向が強く、英語が通じて手先が器用、穏やかな気質、

チームワークや会社への帰属意識が強いなど質が高いのに人件費が安い。

図表3-1-11.販売店に展示される最新の中古日本車

図表3-1-12.所得階層(2012 年)

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図表3-1-13.スリランカの写真

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(2)シンガポールの中古車事情

①シンガポールの国の概況

◇人口 554 万人(2015 年)、外国人比率が 29.5%と高いのが特徴。

外国人のうち 18 万人は駐在員。

◇月収S$20,000以上の富裕層は人口の 10%、月収S$10,000~20,000未満が 38%

を占め、総体的に所得が底上げされている(S$1 は約 78 円)。

◇低賃金ワーカーは 100 万人とみられる(フィリピン系 22 万人、インド系 20 万人、

バングラデシュ系 20 万人等)。

◇2015 年以降、高齢化が急激に進展し、2030 年の 65 歳以上人口比率が 24.5%の

見通し。少子高齢化で縮小する人口を外国人移民で補完する方針で、永住権、市民権を

年間 5 万人発行。

②シンガポールの経済の概況

◇1 人当り GDP は$52,888(2015 年)と日本のおよそ 1.6 倍。

◇ここ数年の経済成長率は年平均 3~6%で推移。

アジアの金融ハブ。資金調達や資産管理拠点として 700 社以上の金融機関がひし

めいている。

◇石油化学産業、IT、観光産業も盛んで、近年バイオ関連、航空関連産業の成長

が著しい。

◇貿易黒字国、無借金で信用格付けは AAA。GDP のおよそ 2 倍の運用資金を持つ

(推計 60 兆円)。

図表3-2-1.一人当たり GDP の推移

図表3-2-2.実質 GDP の推移

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③シンガポールの自動車市場の現状

◇自動車保有台数は 602,311 台(2015 年)、前年比▲2.3%。

1000cc~1600cc が 53.3%、~2000cc が 27.0%、~3000cc が 15.5%。

◇1 人当り保有台数は約 0.32 台(自家用車では約 0.09 台)。

*日本の 1 人当たり含軽乗用車保有台数は約 0.48 台(2015 年度)。

◇新車登録台数は 57,589 台(2015 年)、前年比 199.1%。

TOP5 は、TOYOTA-21.1%、HONDA-13.8%、NISSAN-9.7%、Benz-9.4%、

MAZDA-9.2%で、セダンが 44.8%と半数近くを占め、SUV が 26.7%。

◇乗用車の中古車登録台数は 71,752 台(2015 年)。

◇日本からの中古車輸出台数は 2015 年に 17,454 台、前年比 372.6%増と伸長。

◇自動車の並行輸入は市場の約 10%。

◇輸入規制は、新車登録 3 年未満の右ハンドル車のみ。

◇輸出元国での新車新規登録から 14 日以内に抹消登録され、登録抹消日から 3 か月

以内にシンガポールに到着した車両は新車として登録が可能。

この要件から、日本のいわゆる新古車が新車として販売されており、昨年の日本

からの中古車輸出の伸長の大部分が新古車(後述する COE の発行枚数の増加に伴う

買い替え需要の隆盛から新古車ニーズが拡大)。

◇中古車には S$10,000 の追加課税が課せられ価格が高くなるため、輸入業者も

新古車以外の中古車輸入には消極的。

◇輸入ディーラーは自動車を売るだけでメンテナンスは扱っていない。

部品の調達は、国内で似た部品を調達している。

◇登録後 10 年に近い車が増加。中古車部品、サービスの需要ニーズが高まっている。

図表3-2-3.日本からシンガポールへの中古車輸出台数の推移

26,078

5,396 4,202

3,272 2,635 2,201

4,684

17,454

9,551

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016/

1-4月

(単位:台)

資料)一般財団法人 日本自動車査定協会

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図表3-2-4.排気量別保有台数の推移

図表3-2-5.メーカー国別新車販売台数の推移(乗用車)

(台) 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015日本 84,564 79,804 73,567 39,245 15,952 6,571 6,385 5,617 11,805 34,797米国 5,387 4,419 2,905 3,003 2,221 945 892 584 604 747欧州 9,965 11,936 12,574 14,069 17,358 16,879 16,930 13,742 13,332 16,563その他 17,146 10,551 8,302 12,545 6,471 3,875 3,692 2,529 3,191 5,482

合計 117,062 106,710 97,348 68,862 42,002 28,270 27,899 22,472 28,932 57,589

図表3-2-6.メーカー国別新車販売台数シェアの推移(乗用車)

72 75 76

57

38

23 23 25

41

60

5 4 3

4

5

3 3 3

2

1

911 13

20

41

60 61 61

46

29

15 10 918 15 14 13 11 11 10

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

日本 米国 欧州 その他(単位:%)

資料)陸運庁(LTA)から作成

資料)陸運庁(LTA)から作成

資料)陸運庁(LTA)から作成 注)タクシー、課税免除車を除く

8 8 7 7 6 6 6 6

312 325 331 330 335 335 331 321

138 147 153 158 162 165 164 163

8084 88 92 95

95 95 931213 15 17

19 19 20 19550 577

595604 618 621

617602

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015年

3001以上

~3000cc

~2000cc

~1600cc

1000cc以下

(単位:千台)

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④シンガポールの自動車所有、利用に関する特殊性

◆車両取得権利(COE:Certificate of Entitlement)制度

◇政府は 1990 年以降、自動車の車両数の増加を抑えるため、「車両割当制度(Vehicle

Quota System)」を導入。

自動車を購入する際に自動車所有権証書(COE: Certificate of Entitlement)の

取得を義務付け。

◇政府は道路の整備状況等を勘案し、望ましい新車登録台数の増加率を決定し、

それに応じた COE の新規発行数を制限することで、国内の自動車総量を規制。

2008 年発表の長期交通計画「陸上輸送マスタープラン 2008」で道路の混雑緩和

のため、2009 年度から自動車登録台数の伸び率を年 3%から 1.5%に抑制。

2012年 8月から年 1%、2013年 2月~2015年 1月には年 0.5%へとさらに抑制。

◇COE の有効期限は 10 年間、期限を過ぎると再取得が必要。

毎月 2 回行う入札によって決定される。

◇COE 価格は概ね車両本体価格並みと高額だが、COE の発行枚数抑止により急騰

し続けてきた。

COE 価格の高騰で、2014 年の新車販売台数は 2008 年と比べて約 30%に縮小。

◇COE 以外にも輸入税(本体価格の 20%)、登録料 S$140、追加登録料(本体価格の

100~180%)等を含めると、車両の購入総額は最低でも本体価格の 3 倍以上になる。

◇COE の発行枚数は登録抹消台数を基に算出されているため、期限が切れる COE

の増加に伴い新規発行も増える。

2012 年をピークに COE 価格は低下傾向にあり、今後、買い替え需要の増加が

見込まれる。

図表3-2-7.シンガポールの自動車所有に関わる費用体系

資料)陸運庁(LTA)から作成

項目1600cc以上のS$75,000の

中古車両を購入する場合

車両取得権利 直近で1600cc以上:S$51,010、1600cc以下:S$47,889 S$51,010

登録料 S$140 S$140

OMV ARF Rate

First  S$20,000 100% 100%×S$20,000=S$20,000

Next  S$30,000 140% 140%×S$30,000=S$42,000

Above S$50,000 180% 180%×S$25,000=S$45,000

合計:S$107,000

輸入税 車両価格の20% S$15,000

中古車追加料 S$10,000 S$10,000

合計 S$393,150

追加登録料

費用

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注)S$1:約 78円

図表3-2-8.COE 価格の推移

資料)CEICから作成

(単位:S$)

8016

12048

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

140001600cc以下 1600cc以上(単位:枚)

図表3-2-9.COE の発行枚数の推移

資料)陸運庁(LTA)から作成

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⑤シンガポールの自動車の購買特徴

◇2015 年のシンガポール自動車市場の日本メーカーシェアは 67%、ドイツ車の

シェアは 19.5%。

市中では日本車も多いが、ベンツ、BMW、ポルシェ等の高級車も多い。

◇政府の環境規制は、現状ユーロ 4 から 2017 年 9 月以降はユーロ 5 になる。

HVを主とする環境車が主流。また、安全仕様車導入の方向性。

◇2013 年から自動車購入の頭金に対する法規制が厳格化。

頭金 50%以上、ローン期間 5 年までに規制されたが、2016 年 5 月から、1600cc

以上の頭金が 40%以上、1600cc 以下で 30%以上、ローン期間は 7 年までに改正。

こうした法規制は頻繁に変わる。

◇シンガポールのガソリン代は約 160 円/ℓと高く、ガソリン代の安いマレーシア

(約 80 円/ℓ)に行ってガソリンを給油する人が多かったが、数年前に規制ができ、

3/4 以上ガソリンが入った自動車でなければマレーシアに入国できなくなった。

⑥シンガポールへの中古車輸出の展望と課題

◇自動車販売とアフターサービスが分離しており、今後 10 年超えの車両が増加する

ため、アフターサービスのノウハウ提供や部品供給ニーズは高い。

◇税・法規制で自動車の総量が規制・調整されており、自動車市場は限定的。

自動車保有に際し、多種の税金が課せられ車両取得費用が高額なうえ、中古車に

はさらに追加徴収が課せられるため、中古車を受け入れる側のニーズは、いわゆる

新古車に絞られている。

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【ご参考】ERP(Electric Road Pricing)システム

◇政府により制限区域内へ流入する自動車の増加を抑え、渋滞の緩和を図るため、1998 年

から電子式道路料金徴収システム(ERP)を導入。

制限区域内に乗り入れる車両から自動的に料金を徴収するシステムで、課金地点に料金

徴収装置を設置。全ての自動車に日本の ETC に似た情報を受信する車載器 IU(In-vehicle

Unit)の設置を義務付け、デポジットされたキャッシュカードを挿入する仕組み。

◇制限区域内の車両通行量によって料金を変更。

通行量が多いときには料金が高く、逆に通行量が少ないときには通行料が安くなる仕組み。

◇並行輸入協会によると、2020 年には自動車の通過地点、目的地に応じて料金を徴収する

新システムを導入予定。

4.中古車事情視察を終えて

◆ポイント1《輸出先国の日本の中古車へのニーズ》

◇日本製品には絶大な信頼性があり、「MADE IN JAPAN」、「USED IN JAPAN」

の日本製自動車の評価は格別。

*同じ日本車でも海外生産は望まれない。

◇日本人が使用していた中古車は使い方が綺麗で、メンテナンスも良く好まれる。

◇日本語そのものがカッコイイとされ、ナビなども日本語表記が信頼の証となる。

◇海外輸出モデルにはない、日本独自モデルに対する憧れ、希少性に対する希求。

ネットの普及により、最新モデル、最新装備品を求める。

◆ポイント2《輸出先国の中古車メンテナンス》

◇最新の中古日本車の増加により、最新のメンテナンスの必要性が今後高まる。

*現在は、独立系サービス工場がメンテナンスを請け負っている

◇HV等最新の自動車のメンテナンスは、日本の輸出業者から中古部品、スキャナー、

指導書等を送って対応しているが、今後は、部品・サービスの充実により、ブランドの

信頼力がますます強化されるのではないだろうか。

以 上

ERP ERP 車載器 IU