7
リハビリテーション科としての転倒防止策 高橋 昌美 美馬 佐々木加奈子 東棋孝次 西詳美 真鍋 言主 重行 小田 宮陽子 富永 徳島赤十字病院 リハビリテーション科 今回リハビリテーション科は病院内の転落、転倒患者数を減少させるという目的で院内の転落、転倒の状況を調査検 討した。その結果、病院内の転倒には急激な環境変化、目新しい器具、不慣れな状況が線底にある病院に特有な転倒が かなりあることがわかった 。 さらに転落と転倒とは発生状況が異なるためIli L 落や転倒に対する防止策については別々の アプローチが必要である 。転倒患者への リハビ リテーション 的な対応策に関して現在考えられる方法を列挙し 、その具 体的内容を解説した 。 キーワード :病院内での転倒患者、 ilii 倒患者へのリハビリテーション的取り組み、転倒防止策 平成 13 1 月から 10 月までのアクシデン ト、 インシ デント レポー トの集計結果をもとに転落、転倒の年齢、 発生時刻、運動、意識、精神障害の有無、発生場所、 動機、直接動作、付帯状況、原因の各項目について比 較検討を行った。 ただレポー トは非公開を原則としているためかなり 限 られた報告内容となっている 。 また転落、転倒の定 義は一応東京消防庁 より出 されているものを参考にし ているが 2 )、その分類や原因分析における病態把握不 足や説明不足等の振り分け等についてはある程度現場 誤内服誤外周 の判断に任している 。 はじめに 当院でも リスク管理の重要性より平成11 4 月に リ スク管理委員会が設置され、その後月 I 回の割合で リ スクマネ ージャ ー会議が開催されている。平成 13 年度 のアクシデント 、インシデントレポー トの集計結果から 転倒は第 l 位であるが、さらに転落を合わせると全体 29% を占めており非常に多いことがわかる(図 1 )。 最近では高齢者の転倒が大腿骨頚部骨折を起こし寝 たきりの原因 となる ことよ り、各関連部署 よ り I l ! i 倒に 関する疫学、要因、対策、予防策の報告が多くみられ るようになった 1) 。ただこれらの報告の大部分は正常 な高齢者における一般的な状況下での転倒であり、あ 食事関連 5% 10% 手術処置関連 5% 予知しない 合併症 6% 8% 1 平成13 1 月から 10 月の事故種類別分類 110 リハヒリテーション科としての転倒防 止策 る疾患や障害を持った患者の家庭と異なった病院内と いう特殊な環境下で起こる転倒 と全く同じに論じるわ けにはいかないだろう 。 転倒は各種の要因が複雑に絡み合っ て発生すること が知 られているが、今回我々は少 しでも病院内での転 落、転倒患者数を減らしたいとの目 的で院内の転落、 転倒の状況を調査把握し、 リハビリテ ーション科とし て行わなければならない防止、予防策について検討を 行った。 研究方法 TokushimaRedCrossHospital Medical Journal

リハビリテーション科としての転倒防止策 · 2019. 11. 18. · かなりあることがわかった。さらに転落と転倒とは発生状況が異なるためIliL落や転倒に対する防止策については別々の

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Page 1: リハビリテーション科としての転倒防止策 · 2019. 11. 18. · かなりあることがわかった。さらに転落と転倒とは発生状況が異なるためIliL落や転倒に対する防止策については別々の

リハビリテーション科としての転倒防止策

高橋 昌美 美馬

佐々木加奈子

豊 東棋孝次

川西詳美 真鍋 言主

重行 小田

四宮陽子

富永 実

徳島赤十字病院 リハビリテーション科

要 旨

今回リハビリテーション科は病院内の転落、転倒患者数を減少させるという目的で院内の転落、転倒の状況を調査検

討した。その結果、病院内の転倒には急激な環境変化、目新しい器具、不慣れな状況が線底にある病院に特有な転倒が

かなりあることがわかった。さらに転落と転倒とは発生状況が異なるためIliL落や転倒に対する防止策については別 の々

アプローチが必要である。転倒患者への リハビ リテーション的な対応策に関して現在考えられる方法を列挙し、その具

体的内容を解説した。

キーワード :病院内での転倒患者、 ilii倒患者へのリハビリテーション的取り組み、転倒防止策

平成13年 1月から10月までのアクシデント、 インシ

デント レポー トの集計結果をもとに転落、転倒の年齢、

発生時刻、運動、意識、精神障害の有無、発生場所、

動機、直接動作、付帯状況、原因の各項目について比

較検討を行った。

ただレポー トは非公開を原則としているためかなり

限られた報告内容となっている。また転落、転倒の定

義は一応東京消防庁より出されているものを参考にし

ているが2)、その分類や原因分析における病態把握不

足や説明不足等の振り分け等についてはある程度現場

誤内服誤外周 の判断に任している。

はじめに

当院でも リスク管理の重要性より平成11年4月に リ

スク管理委員会が設置され、その後月 I回の割合で リ

スクマネージャ ー会議が開催されている。平成13年度

のアクシデント 、インシデントレポー トの集計結果から

転倒は第 l位であるが、さらに転落を合わせると全体

の29%を占めており非常に多いことがわかる(図 1)。

最近では高齢者の転倒が大腿骨頚部骨折を起こし寝

たきりの原因 となる ことより、各関連部署よりIl!i倒に

関する疫学、要因、対策、予防策の報告が多くみられ

るようになった 1)。ただこれらの報告の大部分は正常

な高齢者における一般的な状況下での転倒であり、あ

食事関連

5%

10%

手術処置関連

5%

予知しない合併症

6%

8% 8~も

図1 平成13年 1月から 10月の事故種類別分類

110 リハヒリテーション科としての転倒防止策

る疾患や障害を持った患者の家庭と異なった病院内と

いう特殊な環境下で起こる転倒 と全く同じに論じるわ

けにはいかないだろう 。

転倒は各種の要因が複雑に絡み合っ て発生すること

が知られているが、今回我々は少 しでも病院内での転

落、転倒患者数を減らしたいとの目 的で院内の転落、

転倒の状況を調査把握し、 リハビリテーション科とし

て行わなければならない防止、予防策について検討を

行った。

研究方法

Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal

Page 2: リハビリテーション科としての転倒防止策 · 2019. 11. 18. · かなりあることがわかった。さらに転落と転倒とは発生状況が異なるためIliL落や転倒に対する防止策については別々の

結 果

1 )年齢

転落、転倒した患者の年齢分布を図 2に示す。入院

患者の高齢化に伴い70歳以上の高齢者に多いが、転落

患者の方が転倒患者よりやや年齢が高い傾向がみ られ

た。

25

20

15

援を十

10

3500

3000

2500

m∞説

〈1500

1000

500

。lに てゴ ー 二二 , 工 Ii'," ',' ,',. ・白 1. 1 '.1ι 目白 l"'-&' 0

o 1 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 才 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥¥¥¥

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図2 転落・転倒患者年齢分布

2 )発生時刻

発生時刻については転落は夜間を 1=1コ心に発生してい

るが、転倒は昼間、夜間を問わず一日中割とまんべん

なく発生しており 、特徴的な傾向はない (図3)。

10

9

8

7

6

撃5

4

3

2

o o 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 時時時時時時時時時時時時時時時時時時時時時時時時

図 3 転落 ・転倒発生時刻の比較

3 )運動、 意識、精神障害

入院加療が必要な患者でかつ高齢者が多いことより

両者とも運動障害を合併 している率が高い。また転落

患者には意識障害を、転倒患者には痴呆や夜間せん妄

等の精神障害を合併している率が高いのが特徴的であ

る(図4、 5)。

4 )発生場所、動機、直接動作、付帯状況

以上の調査項目からまとめると、転落については ト

VOL.8 NO.l MARCH 2003

あり

80%

運動障害 意識障害

図4 転落患者の運動・意識障害

あり79%

運動障害

なし43%

精神障害

図5 転倒患者の運動 ・精神障害

あり68%

あり57%

イレに行こうと してベ ッドから柵なくあるいは外しま

たは越えて転落する場合が圧倒的に多いが ( [~I 6、

7)、転倒については各種の動作中に様々な原因で起

こっているようだ。発生場所、動機から検討すると転

落と同様にトイレ目的動作中でのベッドサイドの転倒

が約半数を占めているが、 他の日常生活動作での転倒

も多い (図8)。 さらに直接動作、付帯状況か ら検討

すると履物(ス リッパ等)が滑る、足が滑る、足がも

つれる等の一般的転倒時にみられる不注意以外にも車

椅子、歩行器、杖、スタンド、オーバーテー ブル、ポー

タブルトイレ等の利用時に支えを失ったり 、動いた

り、補助具につまずいて転倒する場合が割と多い (図

9 )。 これらの転倒については病院内への環境変化、

普段使用しない器具の利用、使用方法が正確にわから

ず自分勝手に利用しているという特殊な状況が想定さ

れる。

5 )原因

原因に関しては両者とも 同じよう に病態把握不足、

説明指導不足が大半を占めている。病態の把慢も非常

に大切だが、その 日の状態によ って刻 と々変化する可

能性があり対応はかなりま!tしい。一方、説明指導不足

については事前に ト分、丁寧に説明してあげることで

解決でき、その点確実な減少策と考えられる (図10)。

リハビリテーション科としての転倒防止策 111

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その他6%

環境不備

7%

設備整備

不備

7%

病状等

観察確認

不足

8% ベッドから

83~も

ストレッ

チャ

130,も

b

添の不柚引

きと携

転倒転落動機発生場所

転落・転倒患者の原因図10転落患者の発生場所 ・動機図6

付帯状況直接動作 察考

今回当院での転落、転倒の発生状況を分析し、大ま

かに以下の傾向が認められた。

1. 転落、転倒患者はやはり高齢者に多く、患者の状

態の内で運動障害や意識、精神障害を合併している

率が高かった。

2.病院内は家庭より整備された環境と思われがちだ

が、急激な環境変化、 目新しい器具、不慣れな状況

が根底にある。

3.転落と転倒についてはやや発生状況が異なる。

3に関してはもう少し具体的に述べる。転落につい

ては意識障害を伴っていたり、眠斉IJを服用し周囲の状

況把握ができていない状態で、夜間 トイレに行こうと

してベッドより転落するケースが非常に多くみられ

た。転倒については転落と同様に痴呆や夜間せん妄等

の精神症状を伴ってベッドサイドで転倒する場合以外

にも 、日常生活動作中の不注意による一般的な転倒及

び車椅子、歩行器、杖、スタン ド、オーパーテーブル

等の病院に特有な器具を用いた際の転倒が比較的多く

みられた。

以上の分析結果より転落、転倒の防止、予防策につ

いては転落と転倒を一概に論ずるよりは別々の観点か

らのアプローチが必要と思われる。

まず転落については意識障害や眠剤を服用し本人の

自覚が乏しいため事前の転落、転倒に関する諸注意は

あまり大きな意味を持たない。 したがって対策として

は入院時に患者の状態をアセスメントし、その結果で

転落、転倒の危険度が高いと判定された患者には夜間

を中心に管理を徹底する方法が有効で、ある。これに関

しては当院でも脳タト科病中東を中心に午責*illI的に研究され

ており 、2病棟 5階の大杉博美氏の「アセスメン トス

付帯状況

歩行器 8

歩行杖 4

車椅子 2

スヲン ド 4

ポ ヲブルトイレ 16

段差 2

床廊下水漏れ 2

備品設備 2

患者様荷物 4

動機

転落患者の直接動作・付帯状況

転倒患者の発生場所・動機

直接動作

その{也9%

16, 14 I リーー一一一一一一一→

12 If-------------jやー{ト一一一一ーーーーー一-l

10 1- 日ト寸ト一一一一ーーー一一一→

桜山 L一一一I司一一一一一-----iJ----j!-II-fl-ー」社 日~一一一一一一一-w一, ',につ「一一「6 Hト一一寸ア斗ト一一一一一一一一-1'トー-l'H ,H ト 「アー→

~ ~R8H 匝~=dHJ;rlRJ~_~H~ベベ座立主主主 ト 卜 か足足歩履術術Y ツ位位えええイイががが行物助助ド ド 保 保 失 がのレレむつも時が 具具かへ持持い動手にで時まつ足滑 等 転ら上でで きが坐立 ずれがるが 倒降 が き き 滑るち く る す つ つりるずず り時上 ベま まる時 が るずず時 る く き

車椅子など

階段踏み外し

ベyドから

不穆動作

寝返り

立位保持できず

座位保持できず

柵が動き

身を乗り出す

ベyドから上がる時

86420B6420

訴註

身の回り

行為

14%

発生場所

図 8

図7

トイレ

6%

他病室内

10%

Tokllshima Red Cross Hospital Medical JOllrnal

転倒患者の直接動作・付帯状況

112リハビリテーシ ョン科としての転倒防止策

図 9

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コアシートを用いた効果的な転倒転落防止への取 り組

み」に詳しく報告されているので是非参照してほし

U 、310ーブJmi倒については各種の状況が想定されるので対

処法は多岐にわたると思われるが、以上の!lIi倒に関す

る分析結果よりリハビリ テーショ ン科として行うべき

転倒防止策について検討を加えた。

1 )患者の状態や生活状況の把握

入院前の生活状況や活動度、転倒の既往歴、歩行の

様態、歩行補助具や眼鏡の使用等を事前に確認する

が、本人よりの聴取が不確定な時は家族よりも情報を

収集する。

2 )転倒防止用パンフレットを用いての説明 4)

パンフ レットの内容は服装、身の回りの環境、車椅

子移動の注意点、歩行補助具の使用法について入院時

に十分に説明しておくが、転倒の危険が高く 、本人だ

けでは不十分と判断した場合は家族や付き添いの方も

含めて説明を行う 。

①服装について

眼鏡、パジャマ、靴等の必要物品を訓練前のオリエ

ンテーション時に前も って伝えておく 。服装としては

軽く 、動きやすく 、体に合ったものを一般的な注意事

項とし、原則としてスリッパの使用はやめてもらい靴

をできるだけ履くように勧める (図11-1)。

②身の回りの環境について

ベッド周囲の活動範囲にはできるだけ余分なものは

置かず整理整頓に努める。床の水濡れについては特に

気をつけ、夜間動作時には明りを付けあわてず、にゆっ

くりと行動する ことを心がけるよう に指導する。

病院内のオーバーテーブルや点滴台はキャスターが

付いて不安定なので立つ際の支持としては用いず、そ

の他のしっかりしたものにつかまるように指導する

(区111-2 )。

③車椅子への移乗動作について

車椅子に移乗する時の注意としてはまず車椅子を

ベッドのそばに置き 、ブレーキを しっかりかけ動かな

いことを確認する。次にベッドより移る際には安定し

たものにつかまりながらしっかり立ち上がり、良い方

の足を]14"に回転し、おし りから座るように指導する (図

11-3)。④歩行補助具の使用法について

歩行補助具についても よく利用 される歩行器と松葉

杖を取り上げ¥注意点やポイン トについて指導する。

VOL. 8 NO. 1 MARCH 2003

歩行器は自分に合ったものを選び、正しい方法で

ゆっくり押しながら歩くことを基本にする。またキャ

スタ ー付 きの歩行器は歩行開始時に君、に進むこと があ

り、よく転倒の原因になるので十分注意するように指

導する (図11-4)。

杖についても同様に適切なサイズを選択し、正しい

使用法、正しい歩行方法を説明する。ただ高齢者の場合

は手と足のバランスがうまく調整できないため、正し

い歩行方法よりその患者に合った歩行方法に適宜変更

する柔軟さが必要である。一人で歩行するには危険が

高いと判断した場合には、訓練外にも誰かに付き添っ

てもらい監視を続けることも大切である(図11-5)。

3 )リハビリテーション訓練内での対応策

高齢者で、転倒の可能性が高いと判断された患者に対

してはリハビリテーション内に転倒防止に関連する訓

練内容をできるだけ取り入れる。

①高齢者の転倒に関しては平衡機能の低下が大きく関

与しているので、坐位開始時よりバランス練習を積極

的に導入する。

②転倒に関係する筋肉、特に下肢の抗重力筋の強化に

ポイントを置く 。

服装についてのお願い

入院さず吐 3柿f安全に活紛や溜'闘をしてを沿うた剛ここのよう'l!!I厳にf~?て砧示止をすすめてい志す.ご省力をお跡Wし宮す.

eat.t十字病院リハ日リテーンヨンp

図11-1 転倒防止用パンフレ ッ卜

リハビリテーション科としての!伝倒防止策 113

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身の回りの環境について

路島..+字綱侠リハヒ~JTーノヨン科

図11-2 転倒防止用パンフレ ッ卜

車椅子に移るときの注意

'"精子をベッドのそItlこ聾きベッ何こ移る時は

おしり治も座るよう足、〆ましょう

億島..+字病院リハビリテーン膏ノ科

図11-3 転倒防止用パンフレ ッ卜

114リハビリ テーション科としての転倒防止策

歩行器で歩くときの注意

徳島律十字病院リハリピテーシヨン科

図11-4 転倒防止用パンフレ ット

杖で歩くときの注意

めわてはいように

ゆヲ〈り歩eましょう

e、r

徳島第十2病院リハピサテーション料

図11-5 転倒防止用パンフレ ット

Tokushima Red Cross I-Iospital Medical Journal

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① トイレ目的動作中での転倒が多いためトイレ移乗動

作練習を含めた全般的な ADL訓練を病棟で行う 。

4 )病棟との連携

①患者のベッ ド周囲の環境を訓練場所としてだけでな

く生活の場として認識し、ベッド相Iltの有無、設置場所

やベ ッドの高さを足底が床に接地できる程度にするな

どのアトソてイスを行っていく 。

②病棟内での日常生活動作には看護師が探く患者に係

わっており 、また患者の病状やその日の状態に関する

情報にも熟知しているため、看護師との連係を密に図

りチームワークの中で転倒防止に努めることが重要で、

ある。

5 )使用器具の管理、環境面への配慮

①使用器具については使用法の指導はもちろん安全で

あるかの定期点検(杖先ゴム、ブレーキ、空気圧等)、

不備な部分の交換や簡単な修理を行う 。また転倒しに

くい新製品 (杖、自助具)に関する情報も収集する。

②入院時に車椅子用トイレ、洗面所の設置場所等に関

する院内環境情報の周知や滑りにくい床面への変更、

手すりの設置、車椅子用 トイレの増設等の環境整備に

もかかわっていく 。

6 )各部署への啓蒙活動

リハビ リテーション科として現在行っている諸活動

を各部署に十分知っていただくように努力し、理解を

促す。具体的には高齢者で転倒の可能性が高いと予想

された患者については処方築の提出をお願いする。

以上これらの地道な根気強い対策が今後の転落、転

倒の減少に少しでも貢献できることを期待すると同時

に、さらなる研究が必要であると考えている。

おわりに

1 )平成13年度のアクシデン ト、 インシデン トレポー

トの集計結果より転落と転倒の件数を合わせると実

に29%を占めていた。

2 )転落、転倒に関してその発生状況を調査すると、

転倒患者の内には病院特有の転倒がかなり含まれて

いることが判った。

3 )院内の転倒患者に対してリハビリテーション科と

して行うべき具体的な転倒防止策について検討を加

えた。

文 献

1 )良野行生 編 :高齢者の転倒とその対策.医歯薬

出版株式会社,東京, 1999

2 )武藤芳照,太田美穂,黒柳律雄,他:高齢者の転

倒 -骨折の病態とその予防.整形外科 53 : 343-

349, 2002

3 )大杉博美,松本美智代 :アセスメン トスコアシー

卜を用いた効果的な転倒転落防止への取り組み.

平成14年度徳島赤十字病院看護研究, 2002

4 )千田益生,徳永順子,井上 一 :訓練室 -病棟で

の転倒事故予防.J Clin Rehabilitation 10: 969-

973, 2001

Fall Prevention by the Rehabilitation Department

Masami TAKAHASHI. Yutaka MIMA. Koji HIGASHINE. Shigeyuki TOMINAGA

Minoru ODA. Kanako SASAKI. Yoshimi KA W ANISHI. Makoto MAN ABE. Yoko SHINOMIY A

Division of Rehabilitation. Tokushima Red Cross Hospital

The Rehabilitation D巴partmentinvestigated the frequency of patient falls in our hospital to reduce the

number of patients who fall down viol巴ntly01' fall from an elevat巴dspot in the hospital. As a result, it was

found that same patient falls in the hospital were specifically induced by rapid environmental changes. novel

apparatuses. and unfamiliar situations in the hospital. Furtherlllore. since the situations wh巴re patients fell

down violently differed frolll those where patients fell frolll an elevated spot. different approaches are required

to prevent patient falls in the hospital. This study enulllerates current rehabilitative approaches to the

preven tion of patient falls in th巴 hospital.and describes them in detail.

VOL. 8 NO. 1 MARCH 2003 リハビリテーション科としての転倒防止策 115

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Key words: patient falls in the hospital. rehabilitative approaches to patient falls. fall prevention

Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal 8 : 110-116, 2003

116 リハビ リテー ション科としての転倒防止策 Tokushima R巴dCross Hospital Medical Journal