スマート・ベニューの考え方 （スタジアム・アリーナの視点から）

地域企画部

桂田 隆行

2017年10月23日（月）

資料5

1

目次

1.DBJのスポーツ関連業務への主な取り組み

2.スマート・ベニュー概念について

3.国内スマート・ベニュー事例

4.米国におけるスタジアム・アリーナファイナンスからの示唆

2

DBJのスポーツ関連業務への主な取り組み

Section 1

3

① 個別プロジェクトへの投融資

② 自治体・官公庁等からの受託調査

④ 外部有識者等との勉強会や シンポジウムの開催

③ 自主調査

⑤ その他（各種委員会への参画）

投融資

情報発信

官民とのネットワーク

スポーツ関連業務への取り組み

4

当行作成 スポーツ・オリンピック関連既刊レポートのご紹介

スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー®」 ～地域の交流空間としての多機能複合型施設～ （2013年8月） アジアから見たスポーツツーリズムの可能性 ～アジア８地域・訪日外国人旅行者の意識調査より～ （2014年6月） 欧米スタジアム・アリーナにおける「スマート・ベニュー®」事例 （2014年7月） スポーツツーリズムの展開 ～地域資源を活用した観光地域づくりの一例～ （2015年2月）

東京オリンピック・パラリンピック前後のインフラ整備・都市開発の計画・構想の動向はじめ社会経済情勢の変化と、産業・地域の発展・成長に向けた方策に関する調査報告 （2015年3月）

2020年を契機とした国内スポーツ産業の発展可能性および企業によるスポーツ支援 ～スポーツを通じた国内経済・地域活性化～ （2015年5月） 企業による障害者スポーツ支援に関する共同調査～インクルーシブな社会の実現を促す企業活動～ －公益財団日本財団との共同調査－ （2016年3月）

ラグビーワールドカップ2019開催による経済波及効果および開催都市の取り組みについて －経済波及効果推計 2,330億円－ （2016年5月）

5

スマート・ベニュー概念について

Section 2

6

スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニューⓇ」

<出所>株式会社日本政策投資銀行 スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー®」 ～地域の交流空間としての多機能複合型施設～ （2013年8月） http://www.dbj.jp/ja/topics/dbj_news/2013/html/0000013322.html

7

街づくりの中核を担う「スマート・ベニューⓇ」：定義

「周辺のエリアマネジメントを含む、複合的な機能を組み合わせた サステナブルな交流施設」を「スマート・べニューⓇ」と位置付け。

・単機能型 ・行政主導（公設公営等）

・郊外立地 ・低収益性

・多機能型（商業施設複合等）

・民間活力導入 ・街なか立地 ・収益性改善

＋周辺エリアの マネジメント

＊ 「スマート・ベニュー」は株式会社日本政策投資銀行の登録商標（商標登録第5665393号）です。

スマート・ベニュー化

（写真左）米国カリフォルニア州 ロサンゼルスのステイプルズセンター （写真右）米国オハイオ州コロンバスのネイションワイドアリーナ

8

スタジアム・アリーナ等が地域にもたらす価値

地域住民 地域企業

地域社会の雇用 ・所得増加

地域社会におけ る購買行動

ビジター

街なかスタジアム ・アリーナ等

税金 資金

コミュニティ形成 （交流空間）

都市機能の補完 (防災、運動施設)

が、行政や施設整備主体に対して

を払い

が建設され、それが を誘発し、彼らの

が

につながる

が建設され、それが

として、利用される

【機能的価値の創出】 【経済的価値の創出】

を誘発し

9

官民連携スキームによる「スマート･ベニューⓇ」の実現

公共としての財政負担の軽減

民間としての収益性の最大化

（整備費・維持管理費等）

（利用収入・その他収入等）

相互補完 相互補完 収益モデル設計 ノウハウの提供

コンテンツとの連携 ・ ・ ・

政府・自治体 民間企業

制度/手法の整備 街づくりへの活用 都市機能補完

・ ・ ・

官民連携（ＰＰＰ）スキームが求められている

官民連携型「スマート・ベニュー」

10

官側のアリーナ整備コンセプト（例）

施設名 開場 整備コンセプト 高崎アリーナ 2017年

スポーツ活動の発展だけでなく、新しい高崎を全国にアピールし、スポーツを通じて全国から高崎に人が集まり、市全体の発展・情報発信につながるような都市の装置となります。

（「高崎市新体育館基本計画（案）」より）

中野区役所・サンプラザ地区再整備

2025年

（予定）

これまで果たしてきた役割や積み重ねてきたブランド性を生かしながら、世界を視野に入れた集客と発信を可能とする大規模な集客交流施設へと再整備していく。（「区役所・サンプラザ再整備実施方針」より）

横浜文化体育館

再整備

2024年

（予定）

横浜の新たなスポーツ振興の拠点とするとともに、特にメインアリーナ施設においては、コンサートなどの様々な興行利用を積極的に図ることにより、関内駅周辺地区の賑わい創出の核とすることを目的とする。（「横浜文化体育館再整備事業実施方針」より）

11

官民パートナーシップの均衡点（ベストミックス）と 事業方式・資金調達手法

（出所：スポーツ庁・経済産業省「スタジアム・アリーナ整備に係る資金調達手法・民間資金活用プロセスガイド」）

12

スタジアム・アリーナ整備の類型 ～機能性と収益性による分類～

多機能

単機能

収益性（高）

収益性（低）

アリーナ （Bリーグ） 体育館

（従来型）

サッカー スタジアム （Jリーグ）

屋外野球場 （プロ野球）

民設民営 コンセッション PFI（混合型）

PFI （サービス購入型）

指定管理者制度 公設公営 負担付寄附

アリーナ （ライブ）

ドーム （プロ野球）

利用料収入以外の収入源の獲得

（命名権、飲食物販収入など）

スポーツイベント以外の多様な

利用料収入の収益源獲得

（ライブ、展示会など）

スポーツイベントでの

利用料収入の単価アップ

施設単体ではなく地域全体での

総合採算を目指す グラウンド

（従来型）

13

国内スマート・ベニュー事例

Section 3

14

スマート・ベニュー事例：アオーレ長岡①

・建設費：１３１億円（全体） 地方債約５０億円＋長岡市都市整備基金 取崩約５０億円＋国庫補助金約３０億円等

西棟 東棟

アリーナ

地下駐車場 ナカドマ

施設概要

設備・スキームの特徴

1. 所 在 地

2. 竣 工 年

3. 所 有 者

4. 施 設 規 模

新潟県長岡市大手通１丁目４番地１０（長岡駅と屋根付きデッキにて直結）

２０１２年４月

長岡市

市役所とアリーナ・交流ホールの複合施設

アリーナ部分は固定席 2,172席 ／ 最大収容人数 5,000人

敷地面積 14,938.81㎡ ／延床面積 35,485.44㎡

：

：

：

：

1. 委 託 運 営

2. 複 合 施 設

3. 建 設 資 金

有識者および地元商店街メンバー等で構成されるNPO法人ながおか未来創造ネットワークに運営委託

元来の厚生会館の機能に追加し、市役所、スポーツ施設、一般開放イベント会場などの機能

を追加したことにより、幅広い年代層の交流の場として中心市街地活性化に貢献

建設費は合併特例債、国庫補助金で調達した他、市都市整備基金の取り崩しにて捻出

：

：

：

15

①アオーレ長岡外観

④地域イベント（コンベンション） ③バスケットボール興行

②ナカドマ：吹きぬけの交流スペース

スマート・ベニュー事例：アオーレ長岡②

16

スマート・ベニュー事例：アオーレ長岡③

17

スマート・ベニュー事例：ミクニワールドスタジアム北九州①

施設概要

設備・スキームの特徴

1. 所 在 地

2. 竣 工 年

3. 所 有 者

4. 施 設 規 模

福岡県北九州市小倉北区浅野３丁目（小倉駅から直線距離500㍍、徒歩約7分）

２０１７年１月（供用開始は同年３月）

建物は北九州市、底地は民有地（５０年間の借地契約）

15,300席（将来的に20,000席以上に拡張可能） 敷地面積 27,304.55㎡ ／ 建築面積11,722.99㎡ ／ 延床面積 26,398.18㎡

：

：

：

：

1. 街なかスタジアム

2. PFI事業（BTO方式）

3. 市 民 向 け 説 明 会

賑わいを生む施設配置 ／ 立地条件を活かしたスタジアム ／ スポーツ振興及び周辺地域を含めたにぎわいの創出

通常の公設公営方式に比べ、全体コストの削減が図れる見込み。 代表企業は㈱九電工、構成企業は㈱奥村組等、協力企業は美津濃㈱、㈱梓設計。 収入予測は年間0.5億円、支出予測は年間1.5億円。

事業内容の検討状況、施設規模や事業の必要性等の説明、 2016年1月末現在で175回開催。

：

：

：

・設計・建設費：約９９億円 市債約６９億円＋totoくじ助成金３０億円

<出典>北九州市HPおよび提供資料(事業計画H28.1.15)

18 <出所>北九州市HPおよび提供資料(事業計画H28.1.15)

スマート・ベニュー事例：ミクニワールドスタジアム北九州②

19

スマート・ベニュー事例：横浜アリーナ①

施設概要

設備・スキームの特徴

1. 所 在 地

2. 竣 工 年

3. 所 有 者

4. 施 設 規 模

横浜市港北区新横浜3丁目10番地（新横浜駅から徒歩５分）

１９８９年４月開業 横浜市 17,000人（最大収容人員） 敷地面積 26,691㎡ ／建築面積 20,373㎡ ／ 延床面積 45,800㎡

：

：

：

：

1. 無 償 譲 渡

2. 新 横 浜 都 心 の 中 核 施 設

3. 多 目 的 ア リ ー ナ

株式会社横浜アリーナが施設を建設後、横浜市に無償譲渡し、市より45年間の専用利用権を得ている。

１９８１年の横浜市の総合計画「よこはま２１世紀プラン」に基づく横浜第二都心「新横浜」の中核施設として建設。昭和60年に教育文化施設としての都市計画決定を受けた。

コンサート、スポーツ、集会 等に対応した多目的アリーナ。コンサートの利用が大半。（2014/12期：売上高22億円、当期純利益4億円。2014年の稼働日数160日のうち、130日がショーコンサート。スポーツイベントは2日。）

：

：

：

・建設費：１６０億円 出資金や長期借入金による調達

出所：横浜アリーナHP

20 出所：横浜アリーナHP

スマート・ベニュー事例：横浜アリーナ②

21

スマート・ベニュー事例：ゼビオアリーナ仙台①

施設概要

設備・スキームの特徴

1. 所 在 地

2. 竣 工 年

3. 所 有 者

4. 施 設 規 模

宮城県仙台市太白区あすと長町１丁目４番地１０ （仙台駅より鉄道利用で約５分、長町駅前）

２０１２年１０月

建物はゼビオホールディングス（株）、 底地は仙台市（両者間で２０年間の定期借地契約を締結）

スポーツ利用時 4,000人 ／ 音楽コンサート・コンベンション利用時 6,000人 敷地面積 7,930㎡ ／ 延床面積 約10,000㎡

：

：

：

：

1. 民設共営

2. エンタメ性の高いアリーナ

3. ローコスト建設/オペレーション

１００％民間出資での建設だが、運営は地元スポーツチーム、地元マスコミ、地元企業等を含む１３社による有限責任事業組合（LLP）が担う「民設共営」モデル

アメリカの最新鋭の映像装置、VIPルームの完備など観るための 設備の充実

公共施設の約１/２の費用で建設し、自立した運営を目指す

：

：

： ・建設費：３０億円～４０億円程度 一括発注ではなく、内装も含めた 細部への注文により適正化

22

①アリーナ外観：広告が目立つ黒い外壁 ②アリーナ内観：多目的使用のためのフロア

④バスケットボール興行：リボンLEDと大型ビジョン完備 ③特別室（VIPルーム）

＜出所＞ゼビオアリーナ仙台ＨＰ

スマート・ベニュー事例：ゼビオアリーナ仙台②

23

米国におけるスタジアム・アリーナファイナンスからの示唆

Section 4

24

米国におけるスタジアム・アリーナファイナンスの変遷

Public Sector 中心

Public Private Partnership

Private Sector 中心

施設単体の開発 収益化を

目標としない

施設周辺の インフラ整備や複合開発

エリア全体での 収益化を目指す

施設の高度化 運用の多様化

施設単体での収益化を目指す

エリア再開発と連動したスタジアム開発の実現

運営の高度化・多様化での 単体での収益化の可能性

ファイナンスの形態 開発の特徴 収益化の目標 ステージ移行の ポイント

第１フェーズ

第２フェーズ

第３フェーズ

※米国でも大富豪による投資によって実現する場合がほとんど。

※競合となる他のエンターテインメント産業との差別化が必要となり、複合開発が行われるようになった。

25

米国におけるスタジアム・アリーナファイナンスのステイクホルダー

米国におけるスタジアム・アリーナの主なステイクホルダー（一例）

州・群・市の政府

スポーツチーム･大学

民間事業者 （運営者）

民間事業者 （スポンサー）

公営企業

民間事業者 （デベロッパー）

金融機関･投資家 • 直接的な支援 • 土地に関する支援 • 税制優遇（TIFなどを含む） • 事業の信用補完 • 周辺インフラの整備 等

• 出融資 • 金融スキームの構築 （レベニュー債などを含む）

• 事業のアレンジメント 等

• フランチャイズ利用 • 周辺開発への関与 • コミュニティ開発への関与 等

• 施設運営を通じた事業収益の最大化 等

• 命名権、VIPルームなどCOIに対する長期契約

• 建設資金の寄附 等

• 米国では、スタジアム・アリーナ開発の中核をなす場合が多い。

• （土地所有が公営企業の場合は）土地に関する支援 等

26

お問い合わせ先

ご質問等ございましたら、下記連絡先までお問い合わせください。

＜連絡先＞株式会社日本政策投資銀行

著作権（C）Development Bank of Japan Inc. 2017 当資料は、株式会社日本政策投資銀行（DBJ）により作成されたものです。 当資料に記載された内容は、現時点において一般に認識されている経済・社会等の情勢及び当行が合理的と判断した一定の前提に基づき作成されておりますが、当行はその正確性・確実性を保証するものではありません。また、ここに記載されている内容は、経営環境の変化等の事由により、予告なしに変更される可能性があります。 当行の承諾なしに、本資料（添付資料を含む）の全部または一部を引用または複製することを禁じます。

桂田 隆行 Tel:03-3244-1173 Email：tkkatsu@dbj.jp