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22 建築設備士・2012・5 FLASH 空調 衛生 電気 みなとみらいグランドセントラルタワー はじめに 本物件は,横浜みなとみらい21中央地区42街区の開発 として,2007年2月に横浜市の公募により選出され,そ れから約2年の設計期間,2年半の施工期間を経て, 2011年9月竣工となった(写真-1)。 42街区は,みなとみらい21地区のほぼ中央に位置し, 街づくり基本協定におけるビジネスゾーンとインターナ ショナルゾーンの結節点にあたる。高層部はハイクラス オフィスとして,低層部は地域に賑いと憩いを提供する 商業施設として,地域の中核となる施設を目指した。 1.建物概要 みなとみらいグランドセントラルタワー 神奈川県横浜市西区みなとみらい4丁目 6番2(42街区) MM42開発特定目的会社(丸紅㈱出資) 設計・監理 ㈱東畑建築事務所東京事務所 構造設計協力 鹿島建設㈱ 設備設計協力 ㈱森村設計 事務所・店舗・駐車場 商業地域 12,929.99m 2 114,441.56m 2 地上S造,地下SRC造,基礎RC造 地下2階,地上26階,塔屋1階 鹿島建設㈱横浜支店 調 高砂熱学工業㈱ 斎久工業㈱ ㈱きんでん 2.施設概要・建築計画 高層部には業務施設,低層部には商業施設,地下に駐 車場・設備室を配置した計画となっている(図-1図-2)。 高層部の事務室は,奥行き約20m,1フロア2,700m 2 を超える無柱空間となっている(写真-2図-3)。 天井高さ2.8m,OAフロア100mmを確保し,3.6m×3.6m モジュールのグリッド天井により,自由なレイアウトと ゆとりある執務空間を実現している。 商業施設は,オフィスエントランスを取り囲むように L字型に配置された屋内歩行者空間(ガレリア・インナ ーモール)とモール形式の店舗という構成となっている。 ガレリアは地区施設(みなとみらい21地区のペデストリア ンネットワークの一部)として整備されており,吹抜けと トップライトによる開放的な空間となっている(写真-3)。 敷地は,横浜美術館やグランモール公園に隣接し,地 区内でも特に緑や水に囲まれた立地となっている。これ を生かすように敷地前面に4,000m 2 に及ぶ緑地帯や水景 を設けることで地域との連続性を持たせるとともに,ヒ ートアイランド対策にも寄与している(写真-4)。また, 川 田 義 登 YOSHITO KAWADA (㈱森村設計 環境部 サブマネージャー) 長 田 拓 也 TAKUYA NAGATA (㈱森村設計 環境部 主任技師) 長 田 太 宗 TAKAMUNE NAGATA (㈱森村設計 環境部 技師) 福 林   香 KAORI FUKUBAYASHI (㈱東畑建築事務所 設計部 部長) 岡 本   茂 SHIGERU OKAMOTO (㈱東畑建築事務所 環境計画室 部長) 前 田 弘 幸 HIROYUKI MAEDA (㈱東畑建築事務所 設備部 技術参与) 荒 井 邦 宏 KUNIHIRO ARAI (㈱東畑建築事務所 設計部 主管) 写真-1 建物外観

みなとみらいグランドセントラルタワー«£工3.pdf22 建築設備士・2012・5 ③ FLASH 空調衛生電気 みなとみらいグランドセントラルタワー

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22  建築設備士・2012・5

③ FLASH 空調 衛生 電気

みなとみらいグランドセントラルタワー

はじめに

本物件は,横浜みなとみらい21中央地区42街区の開発

として,2007年2月に横浜市の公募により選出され,そ

れから約2年の設計期間,2年半の施工期間を経て,

2011年9月竣工となった(写真-1)。

42街区は,みなとみらい21地区のほぼ中央に位置し,

街づくり基本協定におけるビジネスゾーンとインターナ

ショナルゾーンの結節点にあたる。高層部はハイクラス

オフィスとして,低層部は地域に賑いと憩いを提供する

商業施設として,地域の中核となる施設を目指した。

1.建物概要

建 物 名 称 みなとみらいグランドセントラルタワー

所 在 地  神奈川県横浜市西区みなとみらい4丁目

6番2(42街区)

事 業 主 MM42開発特定目的会社(丸紅㈱出資)

設計・監理 ㈱東畑建築事務所東京事務所

構造設計協力 鹿島建設㈱

設備設計協力 ㈱森村設計

建 物 用 途 事務所・店舗・駐車場

用 途 地 域 商業地域

敷 地 面 積 12,929.99m2

延 床 面 積 114,441.56m2

構 造 地上S造,地下SRC造,基礎RC造

規 模 地下2階,地上26階,塔屋1階

総 合 施 工 鹿島建設㈱横浜支店

空 調 設 備 高砂熱学工業㈱

衛 生 設 備 斎久工業㈱

電 気 設 備 ㈱きんでん

2.施設概要・建築計画

高層部には業務施設,低層部には商業施設,地下に駐

車場・設備室を配置した計画となっている(図-1,図-2)。

高層部の事務室は,奥行き約20m,1フロア2,700m2

を超える無柱空間となっている(写真-2,図-3)。

天井高さ2.8m,OAフロア100mmを確保し,3.6m×3.6m

モジュールのグリッド天井により,自由なレイアウトと

ゆとりある執務空間を実現している。

商業施設は,オフィスエントランスを取り囲むように

L字型に配置された屋内歩行者空間(ガレリア・インナ

ーモール)とモール形式の店舗という構成となっている。

ガレリアは地区施設(みなとみらい21地区のペデストリア

ンネットワークの一部)として整備されており,吹抜けと

トップライトによる開放的な空間となっている(写真-3)。

敷地は,横浜美術館やグランモール公園に隣接し,地

区内でも特に緑や水に囲まれた立地となっている。これ

を生かすように敷地前面に4,000m2に及ぶ緑地帯や水景

を設けることで地域との連続性を持たせるとともに,ヒ

ートアイランド対策にも寄与している(写真-4)。また,

川 田 義 登YOSHITO KAWADA

(㈱森村設計 環境部 サブマネージャー)

長 田 拓 也TAKUYA NAGATA

(㈱森村設計 環境部 主任技師)

長 田 太 宗TAKAMUNE NAGATA(㈱森村設計 環境部 技師)

福 林   香KAORI FUKUBAYASHI

(㈱東畑建築事務所 設計部 部長)

岡 本   茂SHIGERU OKAMOTO

(㈱東畑建築事務所 環境計画室 部長)

前 田 弘 幸HIROYUKI MAEDA

(㈱東畑建築事務所 設備部 技術参与)

荒 井 邦 宏KUNIHIRO ARAI

(㈱東畑建築事務所 設計部 主管)

写真-1 建物外観

2012・5・建築設備士  23

建物をセットバックさせることで隣接するマンションへ

の見合いを低減させるなど,周辺地域にも配慮している。

構造的には,オイルダンパなどを用いた制震システムによ

り地震や風による揺れを軽減し,安全性・居住性を高めている。

3.設備計画概要

ハイクラスオフィスとして,テナントからの様々な要

望に対応できるように設備計画を行うとともに,環境や

居住性に配慮した計画を目指した。

3.1 空調設備計画

1)熱源設備

みなとみらい21地区では,みなとみらい熱供給㈱によ

る地域冷暖房(以下,DHC)が整備されており,本建

物でも冷水・蒸気を受け入れる計画とした(写真-5)。

低層部分の商業施設についてはDHCからの直送(ブ

リードイン)方式とし,更なる搬送動力の低減を図って

いる(図-4)。

暖房については,DHCからの蒸気と建物内の温水を

熱交換し,低層・高層の2系統としている(図-5)。

2)空調・換気設備

事務室部分の空調は,空調機による単一ダクトVAV

図-1 建物配置構成

図-2 断面構成

写真-2 事務室内観

図-3 基準階平面図

写真-3 ガレリア

写真-4 外構の水景と緑地

写真-5 熱源機械室

24  建築設備士・2012・5

方式で,テナント区画に合わせて1フロア6台の空調機

を設置している。空調機は,2系統型の空調機を採用し,

インテリアとペリメータで冷房・暖房の切り替えを可能

とした(図-6)。

また,外部からの熱負荷低減としてペリメータには,

ライトシェルフと簡易エアフローウィンドウ(以下,

AFW)方式を併用している。

通常のAFW方式では,サッシが2重となりイニシャ

ルコストが割高になることや,ガラスの清掃など運用面

でも不利になることから,本計画では高気密ブラインド

による簡易AFW方式を採用し,機能を維持しつつコス

ト縮減を実現した。さらに,夏期は熱による上昇気流,

冬期にはコールドドラフトによる下降気流が発生するこ

とを考慮し,季節により吸込方向を切替えられるシステ

ムとした(図-7)。これにより効率的に排熱を行うこ

とが可能となり,ペリメータ負荷の削減だけでなく室内

の温熱環境改善にも寄与している。なお,天井チャンバ

ーと床下チャンバーを利用しているため,意図しない部

分からの漏気が懸念された。そこで,現場の一画にモッ

クアップを作成し,実際とほぼ同じ施工状況で問題なく

性能が発揮されるか事前検証を行った。

事務所テナントでは,多様な要望に応えるため,テナ

ント工事で①DHCの冷水・温水による増強(30W/m2ま

での冷水・温水バルブを用意),②空冷ヒートポンプパ

ッケージによる増強(30W/m2までの室外機設置スペー

ス用意),③冷却塔と水冷パッケージによる増強(全貸

床面積の7%×550W/m2までの冷却塔設置スペースと

冷却水配管用意)の3段階の空調増強を可能としている。

図-4 冷熱源システムフロー図 図-5 温熱源システムフロー図

図-6 事務室空調フロー図

2012・5・建築設備士  25

また,テナント区画内に喫煙コーナーやパントリーなど

が増設可能なように,1テナントあたり750m3/hの増設

換気も可能とした。

低層部分の商業テナントは,スケルトン渡しのため,

冷水・温水の配管だけを用意している。飲食店対応のテ

ナントについては,必要換気量分の給気ダクトのほか,

脱臭装置と厨房排気ファンを本工事で用意した。

3.2 衛生設備計画

1)衛生器具設備

全館の便所でシステムトイレを採用しており,床下配

管をなくして更新性に優れた計画となっている。また,

各便所の水栓やフラッシュバルブはすべて節水型を採用

している。

2)給水設備

給水設備は,上水・雑用水の2系統で計画している。

上水は,低層系統は受水槽+加圧給水ポンプ方式,高

層系統は高架水槽方式(一部加圧給水ポンプ)となって

おり,断水時や低層系統の加圧給水ポンプ故障時などに

は,高架水槽からのバックアップを可能としている(図

-8)。

雑用水の水源には,雨水を利用している。高層屋上か

ら雨水を集水し,降雨初期と満水時にはセグメントボー

ルバルブを開として直接放流に切り替える(図-9)。

雑用水は,低層共用部の便所洗浄水や水景施設の補給水,

植栽灌水などに使用している。

3)給湯設備

給湯設備は,局所給湯方式として,シャワー室や各便

所に電気貯槽式温水器を設置している。

4)排水・通気設備

みなとみらい21地区は雨水分流地域となっていること

から,屋内・屋外とも雨水分流方式,汚水・雑排水合流

で排水を行っている。商業テナントの厨房排水について

は,床上にグリーストラップをテナント工事で設置し,

雑排水系統に合流している。

5)都市ガス設備

東京ガス㈱より低圧ガスを商業テナント厨房用に引き

込んでいる。各テナント用PS内にプラグ止めとして,

テナント工事によりガスメータ以降の設置を行う計画と

している。

図-7 簡易エアフローウィンドウ

図-8 上水給水概略系統図

26  建築設備士・2012・5

3.3 電気設備計画

1)特高受変電設備

電力引込は信頼性の高い22kV,3回線スポットネッ

トワーク(以下,SNW)方式とした。特高電気室は地

下2階に設け主変圧器はモールド過負荷時風冷タイプと

し,6,000kVA×3台22kV/6.6kVを設置した(写真-6)。

年次点検等の保守時の停電範囲を最小にするため,

SNW母線はループ形式とし,テイクオフフィーダはA

系,B系とし各サブ変へは各々2系統の高圧給電として

いる(図-10)。

2)高圧受変電設備

地下2階と26階,建物の上下に2ヵ所の高圧電気室を

設けている。保守時の停電範囲を最小にするため,各々

の電気室に重要負荷幹線の年次点検切換盤を設けている。

・地下2階高圧電気室SS-1

変圧器容量 モールドタイプ 10,350kVA(最大単機

容量750kVA)

・26階高圧電気室SS-2

変圧器容量 モールドタイプ 6,800kVA(最大単機

容量500kVA)

3)非常用発電機設備

地下2階発電機室にビル用の発電機3,500kVAを1台

設け,停電時に防災負荷・保安負荷へ電力を供給する。

・発電機:3φ3W 50Hz 6.6kV 3,500kVA

・機関:ガスタービンエンジン 3,089kW

・備蓄燃料タンク:72時間対応

テナント用の発電機には,以下のスペース・設備を用

意している。

・ 地下2階:ガスタービン1,000kVA×2台(スペース

対応)

・屋上:ディーゼル250kVA×8台(スペース対応)

・備蓄燃料タンク:48時間対応(本工事設置)

図-9 雑用水給水概略系統図

写真-6 特高電気室

図-10 受変電設備単線結線

2012・5・建築設備士  27

4)蓄電池設備

非常照明,受変電制御兼用の蓄電池を各高圧電気室に

設けている。

・SS-1 MSEX 1,000Ah×1セット

・SS-2 MSEX 600Ah×1セット

5)幹線設備

CVTケーブル主体のケーブルラック配線とし,EPS

は将来増設および更新に充分対応できるスペースとした。

また,大型機器へは400V配電としている。

配電電気方式

・電灯コンセント:1φ3W 200V/100V

・動力 PAC系 :3φ3W 200V

・動力 大型機器:3φ3W 400V

6)電灯設備

照明器具は蛍光灯主体で計画し,外構・外観照明は

LEDを主体としている。事務所部分は初期照度補正,昼

光センサー制御を採用し,共用部分は照明制御によるス

ケジュール発停と人感センサーを併用し省エネを図って

いる。

事務室は600グリッドFHP45W×2灯下面ルーバー器

具を採用している。照明は机上面照度750 lxで設定し,

セキュリティ連動により消灯する。

電灯盤のOAコンセント回路には全てSPDを設置して

いる。

7)情報通信設備

地下2階にMDF室を2室設け,そのうち1室をテナ

ント専用使用可能としている。

MDF室より情報通信専用シャフトを経由し,各階テ

ナント端子盤まで電話通信用メタルケーブルおよび情報

通信用光ケーブルSM-8Cを敷設している。

光ケーブルは工場分岐ケーブルを採用している。

8)その他主要設備

・電力監視設備:電力計測計量,各電気故障警報

・構内交換設備:電話機・PHS子機・PHSアンテナ

・放送設備:非常一般兼用,AMP 2,120W

・防犯設備:カードリーダー,空調照明連動

3.4 防災設備計画

本建物は,全館避難安全検証の大臣認定(ルートC)

を取得している。以下に示すような項目について適用を

緩和した計画により,自由度の高い建築計画,コスト縮

減などを実現している。

1)高層階の面積区画

2)吹抜け部分の竪穴区画

3)事務所-商業の異種用途区画

4)防煙区画の面積

5)機械排煙風量

機械排煙設備については,事務室部分の排煙風量を仕

様規定の1m2当たり1.0m3/minから0.3m3/minまで緩和

している。機械排煙の系統は,地下自走式駐車場2系統

(消防排煙),低層商業・管理諸室2系統(一部消防排煙),

高層事務室1系統,附室2系統の計7系統としている。

また,事務室・基準階廊下・エレベーターホール・附室

はいずれも天井チャンバー方式としており,デザイン性

に配慮した計画となっている(写真-7)。

消防法上の防火対象物としては,十六項(イ)の複合

用途(三項飲食店,四項物販店,十三項駐車場,十五項

事務所)となっている。消火設備は,消火器(全館),

屋内消火栓設備(全館,補助散水栓の代替),スプリン

クラー設備(全館),放水型スプリンクラー設備(事務

所エントランス・商業吹抜け部),泡消火設備(地下自

走式駐車場),不活性ガス消火設備(機械式駐車場・電

気諸室,窒素ガスを使用),移動式粉末消火設備(スロ

ープ車路部分)のほか,連結送水管,消防用水(消防水

利兼用)を設置している。

なお,事務所テナント部分のスプリンクラー設備につ

いては,テナント工事により湿式予作動型への変更も可

能としている。

3.5 中央監視設備計画

本建物では,中央監視設備とビルエネルギーマネジメ

ントシステム(BEMS)を導入している。昨今の省エネ

法改正による事業所ごとのエネルギー使用量把握に対応

するため,テナントエネルギー集計用PCを設け,課金

だけでなくエネルギー使用量も把握できるよう対応して

いる。

基幹をBACnetによるオープン方式としており,中央

監視やセキュリティ監視,防災設備監視,エレベーター

監視などと連携を取っている。

4.環境負荷低減・その他の取組み

本建物では,ライトシェルフや簡易AFWなどのほか,

DHC導入による敷地内での空調エネルギー使用量の低

減,雨水利用による水資源の有効利用など,さまざまな

省エネルギーや環境負荷低減への取組みを行っている。

4.1 ライトシェルフの効果検証

カーテンウォールに設置したライトシェルフが室内光

写真-7 事務室廊下

28  建築設備士・2012・5

環境に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,工

事期間中に実建物を用いた測定を行った。

1)測定方法

オフィス階として標準的なレイアウトにあたる3階南

東窓面を対象とし,一部の窓のライトシェルフを取り外

してライトシェルフなしの状態を模擬し,ライトシェル

フありの窓面と同時に照度および輝度の測定を行った

(図-11)。

2)測定結果

晴天日の2010年9月29日の照度および輝度の測定結果

を図-12および図-13に示す。照度の測定結果から,

窓から5.4m地点で,ライトシェルフありの方が,なし

に比べて100 lx程度,9.0m地点で50 lx程度明るい傾向が

見られた。南東窓面をもつ空間での測定であるため,14

時以降は直射光が入射せず,昼光照度の差はほとんど見

られなかった。

また,輝度分布を基に明るさ尺度値1)および光の不足

感の指標値2)を算出した。ライトシェルフありの方は,

天井面の輝度が高く,床面の明るさ尺度値が7を超える

部分(明るい部分)が大きくなっていた。光の不足感の

指標値は,ライトシェルフありの条件で0.28,なしの条

件は0.70で,ライトシェルフありの方が小さく,光の不

足感を感じにくいことが示唆された。

3)まとめ

ライトシェルフの設置により,室内照度および明るさ

感が向上する効果が認められた。ライトシェルフおよび

照明の昼光センサー制御の組合せによる省エネルギー効

果が期待される。

なお,本計測および評価は,鹿島建設技術研究所の協

力を得て実施した。

4.2 その他の取組み

太陽光発電パネル(7.5kW)を設置し(写真-8),

エントランスやエレベーター内の情報表示パネルに発電

量などを表示し,利用者への見える化を通して省エネ意

識の向上を図っている(写真-9)。

地下1階には,急速充電器(50kWタイプ×2台)を

設置し,今後増加が見込まれる電気自動車への対応も行

図-11 ライトシェルフあり(左)となし(右)

図-12 室内の水平面(FL+750mm)における昼光照度

図-13 室内の輝度分布(左:ライトシェルフあり,右:なし)

写真-8 太陽光発電パネル

写真-9 情報表示設備

2012・5・建築設備士  29

っている。

建築的は,ほぼ全てのガラスにLow-Eガラスを採用し

て,眺望を確保しながら熱負荷を低減している。低層部

分では,壁面・屋上の緑化によりヒートアイランドや熱

負荷の低減に寄与している。

本物件は,このような環境配慮や品質の高さが評価さ

れ,横浜市による建築物環境配慮制度(CASBEE横浜)

において,BEE値3.2でSランク認証を取得している(図

-14)。評価された主な項目として,前述の項目以外に,

制震装置採用による建物耐久性の向上や,夜間のライト

アップやパブリックアートによるまちなみ・景観への配

慮などがある。

おわりに

本物件は,経済産業省「次世代エネルギー・社会シス

テム実証事業(地域)」として採択された横浜市と民間

企業の連携による実証プロジェクト「横浜スマートシテ

ィプロジェクト(YSCP)」において,ビル群管理セン

ター(統合BEMS)の開発と実証に参加している。導入

したBEMSとビル群管理センターとの間で情報をやりと

りしながら,CO2の大幅な削減と再生可能エネルギーの

飛躍的導入に向けた新しい都市づくりの可能性を見出し

て行きたい。

最後に,企画段階から長期にわたりご指導・ご協力い

ただきました事業者の皆様ならびに施工者の皆様には,

この誌面をお借りして心より御礼申し上げます。

参考文献

1)中村芳樹:ウェーブレットを用いた輝度画像と明る

さ画像の双方向変換,照明学会誌 Vol.90,No.2,

pp.97-101,2006.2

2)鈴尾暁ほか:オフィス照明環境における光の不足感

と輝度分布の関係,日本建築学会学術講演梗概集D-

1,pp.490-491,2010.9

(平成23年11月16日 原稿受理)

□建築概要項目 概要

建築名称 みなとみらいグランドセントラルタワー建築主 MM42開発特定目的会社建設場所 神奈川県横浜市西区みなとみらい4-6-2

地域・地区商業地域,防火地域,みなとみらい21中央地区地区計画,都市再生緊急整備地域内,最低限第一種高度地区

建築用途 事務所,店舗,駐車場防火対象物 消防法 施行令 別表第一16項イ敷地面積 12930m2

建築面積 7733m2

延床面積 114442m2

高さ(最高部) SGL+123.60m階 数 地下2階 地上26階 塔屋1階構 造 鉄骨造 一部鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造工 期 2009年1月-2011年9月その他 駐車台数450台,エレベーター27台設計者 ㈱東畑建築事務所 (設備協力)㈱森村設計監理者 ㈱東畑建築事務所 (設備協力)㈱森村設計発注方式 一括施工者 鹿島建設㈱ 横浜支店

建築工事 鹿島建設㈱ 横浜支店電気工事 ㈱きんでん空調工事 高砂熱学工業㈱衛生工事 斎久工業㈱

□電気設備概要項目 概要受変電設備

電力引込 22kV 3回線SNW受変電形式 屋内キュービクルタイプ変圧器容量 特高主変 6,000kVA×3台変圧器形式 モールドタイプ過負荷時風冷式

発電設備

非常用発電設備発電機形式 ガスタービンキュービクルタイプ発電機容量 3500kVA燃料 A重油常用・非常用の別

非常用

計画運転可能時間

72時間

その他 地下と屋上にテナント用スペースを用意直流電源設備

定格容量特高操作用100Ah 操作用非常照明用1000Ah×1台 600Ah×1台

蓄電池形式 MSE型幹 線・動力設備

動力負荷 3φ3W400V 3φ3W200V電灯コンセント負荷

1φ3W200V/100V

図-14 CASBEE横浜スコア

30  建築設備士・2012・5

配線方式 ケーブル配線その他 重要負荷へは年次点検盤より供給

照明設備

照度 事務室 750 lxに設定共用廊下 150~200 lx

照明制御 スケジュール発停 防犯連動その他 初期照度補正 昼光センサー制御

中央監視設備

監視点数 7600点監視項目 電気故障警報 計量 計測

情報通信設備

電話設備交換機方式 デジタル電子交換機回線数 局線(10回線)内線(74回線)その他 電話機×24台 PHS子機×50台

情報用配線設備

回線数MDFより各テナントへ光ケーブルSM-8C敷設 149系統

拡声設備アンプ容量 2,040Wその他 非常用リモコン1台 業務用リモコン1台

自火報・防排煙制御設備

主受信機 複合GR型 4600回線

感知器 アナログ式 自動試験機能付

避 雷・接地設備

避雷方式 突針および棟上げ導体接地方式・性能

構造体接地方式

その他 急速充電設備 50kWタイプ×2台情報表示設備 ELVホール(1F B1F) ELVかご内ITV設備 カメラ×173台 モニター40型×1台 19型×17台セキュリティ設備

非接触式ICカード

太陽光発電設備

系統連系 7.5kW

無線通信補助設備

地下階に設置

□空調設備概要項目 概要熱源設備

熱源方式 地域冷暖房利用 冷水・蒸気受入高層系統プレート式熱交換器(冷水-冷水)2,350kW 4台高層系統シェル&チューブ型熱交換器(蒸気-温水)1,820kW 4台低層系統シェル&チューブ型熱交換器(蒸気-温水)860kW 2台

空調設備

空調方式 基準階事務室系統 単一ダクトVAV方式基準階共用部系統 FCU+OHU方式商業共用部系統 AHU方式

配管方式 冷水・温水4管式

主要空調機器

基準階事務室 2系統型コンパクト空調機 138台商業共用部 コンパクト空調機 8台

換気設備

換気方式 事務室系統 1種換気商業系統 1種換気

その他 自走式駐車場系統 3種換気排煙設備

排煙方式 機械排煙方式 商業共用部 自然排煙方式その他 基準階事務室の排煙風量はルートCにより30%まで減免

中央監視設備

監視点数 約16,000点

監視項目事務室空調機運転時間積算,事務室パイロットフロア冷水・温水瞬時流量,商業使用熱量積算他

その他 BACnet,BEMS自動制御設備

制御方式 DDC方式

その他外気温・日射負荷により簡易エアフローウィンドウ吸い込み方向切り替え

その他 基準階事務室ペリメータに簡易エアフローウィンドウ方式採用低層冷水系統にDHC直送(ブリードイン)方式採用

□衛生設備概要項目 概要給水設備

水源 上水・雨水系統 上水系統・雑用水系統給水方式 加圧給水方式,高置水槽方式受水槽概要 FRP製238m3

高置水槽概要

FRP製34m3

給湯設備

給湯方式 電気利用 局所給湯方式

排水設備

排水方式 建屋内:汚水雑排水 合流式建屋外:汚水雑排水 合流式一部ポンプアップ排水

その他建屋内外とも雨水分流方式,厨房排水系統にはグリーストラップ設置(テナント工事)

衛生器具設備

主な特記仕様

節水型器具,全館システムトイレ

ガス設備

ガス種別・圧力

都市ガス低圧

その他 商業厨房用消火設備

設置設備 屋内消火栓・スプリンクラー(一般型・放水型)・泡消火・連結送水管・消防用水(水利兼用)設備電気諸室・機械式駐車場不活性ガス(窒素)消火設備

その他 商業・自走式駐車場は消防排煙その他 雨水再利用設備(低層便所洗浄水,植栽潅水,水景補給水)

水景設備

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇