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緊密な提携関係を求めて 製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題 エコノミスト・インテリジェンス・ユニット報告書 協賛:アジレント・テクノロジー

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット報告書 …...Kiran Mazumdar-Shaw CEO, Biocon John Watson President of Strategic Partnering, Chief Commercial Officer,Covance

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット報告書協賛:アジレント・テクノロジー

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

1Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

本報告書について 2

聞き取り調査対象者 3

エグゼクティブ・サマリー  4

調査について 4

はじめに:CROの急成長と、変化しつつあるチャレンジ 6

二分化が進む市場とその戦略的意味合い 8

破壊的なイノベーション:CROは変化の担い手か? 9

新たな関係を最大限に活用する方策 12

進化を担う情報技術 13

終りに 15

付録:調査結果 17

目次

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

2 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 「緊密な提携関係を求めて:製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題」

は、製薬・バイオテクノロジー企業の創薬および開発(D&D)プロセスを変革する上で、

開発業務受託機関(CRO)が果たす役割の重要性について検証する報告書である。

 本報告書のアンケート調査、分析、執筆はエコノミスト・インテリジェンス・ユニット

(EIU)によって行われており、記載された調査結果や見解は、必ずしも協賛企業の考

え方を反映するものではない。本報告書は、PaulKielstraによって執筆され、編集は

GildaStahl、レイアウトはMikeKennyが担当した。報告書の作成に際して行われた

アンケート調査や聞き取り調査に、貴重なお時間とご意見を頂戴した皆様に、この場を

借りてつつしんで御礼を申し上げます。

                2012年1月

本報告書について

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

3Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

Karin Wingstrand Vice-presidentandHeadofClinicalDevelopment,AstraZeneca

Kiran Mazumdar-Shaw CEO,Biocon

John Watson PresidentofStrategicPartnering,ChiefCommercialOfficer,Covance

Dr. Jason Hwang ExecutiveDirectorofHealthcare,InnosightInstitute

Tycho Peterson Industryanalyst,JPMorgan

Richard Connell HeadofExternalResearchSolutionsCoE,Pfizer

John Ratliff President,ChiefOperatingOfficer,Quintiles

Dr. Ajit Nair President,IndiaSIROClinpharm

Dr. Robert AhlbrandtSeniorVice-president,Globaldevelopmentoperationsfor

thePharmaceuticalDevelopmentDivision,TakedaInternational

聞き取り調査への参加者

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

4 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 過去数年の間、創薬と開発(D&D)プログラムの投資収益率(ROI)は目に見えて減少しつつある。その結

果、製薬・バイオテクノロジー企業は自らが持つ最も価値ある資産、つまり知的財産を創造するために、ビジ

ネスの中核部分で計算されたリスクをとっている。過去10年、開発業務受託機関(CRO)*へのアウトソーシ

ングは、同業界全体が行うD&Dの40%以上を占めるまでに成長を遂げてきた。今では製薬企業の半分以

上が、主にCROをつうじて第1相、第2相および第3相の治験を行っている。

 CROはもはや(D&Dの)末端で行われるアウトソーシングの手段ではない。これまで強力な垂直構造を

特徴としてきた製薬・バイオテクノロジー業界に、既存の枠組みからの根本的なシフトが生じつつあるのだ。

製薬企業やバイオテクノロジー企業は、こういった変化へ対応するため、未だに実証・確立がされていないビ

ジネスモデルの活用を試みている。より低価格でさらに質の高いイノベーションを生みだすこのアプローチ

を有効に活用するためには、単なるコスト削減以上に戦略的なビジョンが必要となる。

 アジレント・テクノロジーの協賛の下、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が作成した報告書「緊

密な提携関係を求めて:製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題」は、ライフサイエンス業界に

属する企業のシニアエグゼクティブ251名を対象としたアンケート調査と、企業リーダーや業界エキスパー

トへの詳細にわたる聞き取り調査に基づいている。その主要な論点は以下のとおりである。

●CROとのグローバルな提携関係にバイオテクノロジー・製薬企業が関心を高めることにより、CRO市場の

重要な部分が変革を余儀なくされている。同業界は、D&Dの投資収益率改善を求め、グローバル規模で

CROとの提携を拡大している。この傾向を反映するように、過去2年間で22件の大型提携が行われた。

 今回実施した調査によると、製薬・バイオテクノロジー企業とCROの関係は、都度契約という形態が依然

として主流だ。しかし両者がより好ましい関係だと考えているのは、地域別あるいは疾患別のグローバル

な提携やパートナーシップだ。ただ、小規模の製薬・バイオテクノロジー企業(ここでは年商1億米ドル未満

エグゼクティブ・サマリー

2011年9月にEIUが実施した調査には、ライフサ

イエンス業界に所属する合計251名のシニアエグ

ゼクティブが参加した。その業種別内訳は、44%が

製薬企業、22%がバイオテクノロジー企業、15%

がCRO、そして業界内の他業種関係者が19%と

なっている。役職については、51%がCレベル役員

(CEO・COOなど)で、残りはシニアマネジメント・レ

ベルの地位についている。また、回答者の地域別内

訳は、35%が北米、28%がアジア太平洋地域、27

%が西ヨーロッパ、その他が中東・アフリカ・ラテンア

メリカおよび東ヨーロッパとなっている。調査対象

者の48%は年商5億ドル以上の企業、26%が年商

20億ドル以上の企業に所属している。

調査について

*開発業務受託機関:製薬・バイオテクノロジー業界で広範にわたる研究サービスを提供する企業

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

5Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

と定義)は、そういった関係を実現するための事業規模を欠いていることが多い。こうした企業は、各国で

事業を展開するCROと一定の距離を置いた関係を継続することが望ましいと考えている。製薬とバイオ

テクノロジーの統合サービスを提供するクインタイルズ社でCOO(最高執行責任者)をつとめるジョン・ラ

トリフ氏によると、こうした「異なる2タイプのクライアントには、2種類のサービスが必要だ」という。

●CROとその潜在顧客である製薬・バイオテクノロジー企業は、それぞれが異なったパートナーシップのあり

方を求めている。例えば両者の間には、市場の将来的方向性について大きな認識のずれが認められた。パ

ートナーとしての魅力を高め、両者のパートナーシップが生みだす潜在的市場で成功を収めるため、CRO

の多くはD&Dの各分野(特に初期段階)を広くカバーするべくサービス拡充を進めている。例えば今回の

調査では、CROに所属する調査対象者の48%がアッセイ開発サービスを、64%がスクリーニング・サービ

スを開始または拡大したいと回答している。しかし、ライフサイエンス業界に属する他の企業は、治験などす

でにサービスを利用している分野でCROの活用を拡大したいと考えていることが明らかとなった。この結

果を見ても、同業界でどのようなビジネスモデルが主流となるかは依然として不透明なようだ。

●CROは今後も統合・再編を繰り返し、多目的パートナーとしてサービスを提供する企業、あるいはニッチ

に特化した企業という二分化が進むだろう。CRO業界は依然として細分化されており、さらに再編が行

われる余地は大きい。今回の調査では、CROに所属する回答者の74%が、バイオテクノロジー・製薬企業

との提携が増加しつつある現在の傾向によって短期的な業界再編が促進されると回答した。さらに回答

者の41%は、潜在的パートナーとしての価値を向上するために、今後3年間サービス範囲の拡大を行う

考えを明らかにしている。またサービスの二分化に関し、少数の特定分野(29%)あるいは単一のニッチ

分野(12%)に事業を集中すると回答したCRO関係者の割合が、先の回答と同様の割合(41%)だった

ことは興味深い。

●CROと製薬・バイオテクノロジー企業は、両者が持つ広い意味での利益にかなったパートナーシップや

提携関係を実現するためにさらなる努力を行う必要がある。現在、業界では提携関係やパートナーシップ

の性格について再定義を促す動きが見られる。CROはこの機会をとらえ、安価な労働力の源泉としてで

はなく、価値あるサービスを提供するパートナーとしての存在をバイオテクノロジー・製薬企業にアピー

ルするべきだろう。世界規模でビジネスを展開する米系CROコバンス社で戦略的提携担当社長兼CCO(

最高商務責任者)をつとめるジョン・ワトソン氏は、「CRO企業の再編は、短期的に大きな価値を生みだす

だろう。より広い範囲で価値あるサービスを提案できるかどうかは、業界関係者次第だ」と語っている。今

回聞き取り調査を行った複数の製薬業界関係者によると、製薬企業には新しいアイディアを受け入れる

用意があるという。しかし製薬企業は、CROが提供するサービスの活用を、単なるコスト削減のためでは

なく、戦略見直しの機会として捉える必要があるだろう。

"CROと顧客(製薬・

バイオテクノロジー

企業)との間には、市

場の将来的方向性

について大きな認識

のずれがある"

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

6 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 開発業務受託機関(CRO)は、創薬プロセスの中で欠かすことのできない存在だ。製薬業界の年次報告書

「ContractResearchAnnual2011」によると、CROサービスの市場規模は2010年をつうじて280

億米ドルに拡大した。これは製薬業界が同年、D&Dに支出した約680億米ドルの40%超に相当する。

 しかし、CROが同業界でこういった地位を獲得したのはごく最近のことだ。CROサービスの市場規模

は、2000年時点で52億米ドル、1993年にはわずか16億米ドルにすぎなかった。この間、製薬およびバ

イオテクノロジー企業自らが行ったD&Dの支出額も、よりゆるやかながら拡大している。タフツ創薬研究セ

ンター(TCSDD)によると、CROに対する支出は過去10年、平均年率13.4%というペースで伸び続け、世

界全体のD&D支出も9.1%増加した。

 CRO市場は、今後も成長を続ける可能性が高い。そして、その理由はシンプルなものだ。インドに拠点を

おくバイオテクノロジー企業 バイオコン社でCEOをつとめるキラン・マズムダル・ショウ氏によると、同業

界では生産性の欠如が「R&D投資の収益性に対する深刻な不安」をもたらしているという。2011年9月

に、ライフサイエンス業界を対象としてEIUが実施した調査の対象者も、この意見に同意している。CROに

所属しない回答者の71%が、今後3年間に企業のCRO活用は増加すると答えており、減少を予測したのは

わずか7%だった。

 CRO業界が成長する現在も、製薬・バイオテクノロジー企業とCROの関係は変化を遂げつつある。これま

で同業界では、特定の作業を都度契約という形でCROに委託することが多かった。CROと一定の距離を置

くこのような関係には、柔軟性を確保できるというメリットがある一方で、マイナス面も存在する。例えばサ

ービスを発注する企業は、治験戦略の策定支援など、提供されるサービスの形を決めるにあたってCROの

専門的ノウハウを活用できないことがある。また依頼企業は、創薬の過程でCROが得る化合物についての

特定知識から直接恩恵を受けることができない可能性もある。

 製薬・バイオテクノロジー企業(特に大企業)が、提携や戦略的パートナーシップという形でCROとの密接

な関係を求めるケースが増えているのはこういった理由からだ。委託企業によって全世界で提供される製

品全て、あるいは特定の疾病・地域を対象に、CROが幅広くD&Dサービスを提供するという形態も見られ

るようになっている。こうした関係を構築するために、依頼企業は継続的にCROへ業務を委託し、CROは専

門的知識(場合によっては幅広いD&Dの分野で)への依頼企業によるアクセスを随時可能にするなど、両

者のより密接な協力関係が必要となるだろう。過去2年間で、13の製薬企業が22のCROとこうした契約を

締結している。ファイザーによるアイコン社やパレクセル社との契約、サノフィ社とコバンス社の契約などは

その一例だ。

 こうした契約に関しては、大手製薬企業のケースに注目が集まることが多い。しかし、コバンス社で戦略的

提携担当社長および最高商務責任者をつとめるジョン・ワトソン氏によると、大手競合企業に市場から締め

はじめに:CROの急成長と、変化しつつあるチャレンジ

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

7Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

出されないよう提携という選択をとる中規模の製薬企業が今後増加することが予想されるという。また、「

高品質サービスを提供可能な、安定性と財務的健全性の高いCROの数には限りがある」と同氏は指摘して

いる。

 財務的健全性の高いCROの数が限られる一方で、同業界は熾烈な競争圧力にさらされている。世界中を

カバーするCRO企業名録“goBalto”は、現在1122社を掲載しているが、実際の総数はさらに多いかもし

れない。CRO業界は、トップ10社が市場シェアの75%を占めるという寡占状態にある。しかし市場が断片

化されていることで、過剰能力による利幅減少にあえぐ大規模企業の利益にも影響を及んでいる。2009

年にJPモルガンが行った推計によると、特定の前臨床分野での過剰設備能力は20-25%に達している。

また同時期から、特に毒物学の分野で大規模な施設閉鎖と価格下落が見られるという。

 JPモルガンの産業アナリスト、ティコ・ピーターソン氏は、「(CRO業界では)さらに統合が進む可能性が

高い」と予想しており、「同業界は依然として細分化されたままだ」と考えている。現在CRO業界ではM&A

の数が増加傾向にあり、2010年7月にはINCリサーチ社によるケンドル社の2億3200万ドル規模の買収

が行われている。(これは、最近行われた中で最も大規模な案件だ。)しかし、ソーシャルイノベーション・シン

クタンクのイノサイト研究所でヘルスケア担当執行役員をつとめるジェイソン・ハン博士は、同業界の統合

が困難だと考えている。市場参入の敷居は低く、古い企業が消えるとすぐに新たな企業が参入するからだ。

"(CRO業界では)さ

らに統合が進む可能

性が高い。同業界は

依然として細分化さ

れたままだ"

ティコ・ピーターソン

(JPモルガン 

 産業アナリスト)

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

8 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 CRO業界は進化を遂げつつあり、大見出しを飾る世界的な提携はその一面に過ぎない。グローバル規模

の提携という戦略は、むしろ大手製薬・バイオテクノロジー企業に適した選択肢といえる。今回の調査では、

大手顧客・小規模顧客との関係でますます二分化が進んでいると回答したCRO関係者が66%に上った。イ

ンドに拠点を置く多国籍CRO企業SIROクリンファームでグローバル事業担当プレジデントをつとめるアジ

ト・ナイール氏は、「CRO業界には2つの大きな市場がある。大手製薬企業は優先的関係を好む一方で、中

小の製薬・バイオテクノロジー企業は費用効率が良く、個別企業のニーズにあったサービスを提供するパー

トナーとの協力関係を求めている」と指摘している。 

 小規模のバイオテクノロジー・製薬企業(年間収益1億ドル未満)は、両サイドにとってうま味のある幅広い

提携をするだけの事業規模を欠いている。大きなリソース上の制約に直面する小規模プレーヤーは、大企業

(年間収益20億ドル以上)よりも(38%)、CROを選択する際の主な基準として低コストを挙げる傾向が見

られた(47%)。一方、世界的なサービス展開については、逆の結果となった。世界的なサービス展開をCRO

選択の重要な基準として挙げる大企業が47%に上る一方、小企業ではその割合が27%にとどまっている。

 だが小規模の製薬・バイオテクノロジー企業(その多くは仮想企業と思われる)を顧客としたCRO市場の

サイズも依然として大きい。バイオコン社のマズムダル・ショウ氏によると、同社の傘下にある2つのCRO(

シンジーン社とクリニジーン社)は大企業・小企業両方の異なるニーズを満たす“ハイブリッド”モデルの構築

を目指しているという。しかし、利幅の高いD&Dを安定して受注することができる世界規模のパートナーシ

ップは、CROにとってより大きな収益源だ。今回の調査結果によると、世界規模のパートナーシップに高い

関心を示すCRO関係者の割合は、製薬・バイオテクノロジー企業関係者(26%)よりも多かった。一定の距

離を置いた協力関係がより望ましいとしたCROは、わずか9%にとどまっている。

 CROは、増加するパートナーシップの機会を活用するため、幅広い分野でのパートナーシップを視野に入

れて事業を拡大するか、1つあるいは複数のニッチ分野に集中するかという、戦略的意思決定を迫られてい

る。JPモルガンのピーターソン氏は「今後CRO市場の二分化が進む」と予測している。同氏によると、「ハイ

エンドで世界の広範な地域をカバーする少数の大規模CRO、そしてローエンドで(腫瘍学などの)ニッチ分

野のサービスを提供するCROは、成功を収める可能性が高い。しかしユニークな競争上の強みがなく、適度

な広さのサービス分野や事業規模も持たない中間クラスのCROは、今後困難に直面することが予想され

る」という。ハイエンド・ローエンドどちらのアプローチをとっても収益性を確保することは可能だ。TCSDD(

タフツ創薬研究センター)が最近実施した調査によると、ニッチサービスを提供する小規模CROは過去5年

間、他のタイプのCROよりも高い平均成長率を実現しているという。

 今後とるべき戦略についての直接的な質問に対し、CRO関係者の回答は大きく2つに分かれた。今回の

調査では、今後3年の戦略としてサービス範囲の拡大と答えた調査対象者が41%、また少数の分野に特化

二分化が進む市場とその戦略的意味合い

"大手製薬企業は優

先的関係を好む一

方で、中小の製薬・バ

イオテクノロジー企

業は費用効率が良

く、個別企業のニー

ズにあったサービス

を提供するパートナ

ーとの協力関係を求

めている"

アジト・ナイール

(SIROクリンファーム

グローバル事業担当

プレジデント)

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

9Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

知的財産を重視するライフサイエンス業界、特に

大手製薬企業は、これまで長い間、D&Dに対する

統合的アプローチを好む傾向が見られた。アウト

ソーシングへの急速な移行を進めることで、CRO

を(パートナーではなく)将来的な競合企業に成

長させる機会を与えてしまう恐れはないのだろう

か?

 たしかにその可能性は存在する。今回の調査で

は、近い将来に大規模CROが既存の製薬ビジネ

スにおけるライバルとして十分な能力を持つよう

になるという考えを明らかにした回答者が45%

に上り、この見方に否定的な回答者の割合(37%

)を上回った。さらに、製薬・バイオテクノロジー企

業に属する回答者の40%が、潜在的な競合企業

の能力開発を許すことはアウトソーシングの重大

なリスクだという見方を示した。一方、こうしたリス

クが重要でないとした回答者は、わずか16%にと

どまっている。

 しかし、科学技術ベースのビジネス分野で重要

機能のアウトソースを行うのは、ライフサイエンス

業界が初めてではない。例えばPC産業からは重

要な教訓を学べるだろう。ジェイソン・ウォン氏、

クレイトン・クリステンセン氏とジェローム・グロ

スマン氏は、その共著である「The Innovator’s

Prescription(イノベーターの処方箋)」で、“サプ

ライチェーンの混乱(supplychaindisruption)”

と呼ばれる変化を経験した他のテクノロジー産業

と、ライフサイエンス業界に生じつつある変化の

類似性を検証している。こうした産業分野では、(

例えば大手製薬企業のように)高度に統合された

生産過程を持つ企業が、アウトソースを行う分野

を拡大するという現象が見られる。一旦こうした企

業活動が商品化されると、企業内でその機能を維

持するよりも、アウトソースした場合の経済的メリ

破壊的なイノベーション:CROは変化の担い手か?

ットが大きくなるからだ。

 だがアウトソースにはリスクも付き物だ。例え

ば、企業が多くの機能をアウトソースしてしまえ

ば、自らの競合相手を生みだすことになりかねな

い。上述の「イノベーターの処方箋」では、PCメー

カーのデル(Dell)が台湾メーカーASUSTek社

にアウトソースする業務範囲を拡大した例につい

て挙げられている。ASUSTek社はこの過程で同

社の技術やノウハウを吸収して自社製品を作りは

じめ、ついには同社に対抗する競合企業となった。

 同書の著者は、CROがライフサイエンス産業

の“サプライチェーンの混乱”を招きかねない潜在

的要因だと考えている。D&Dのバリューチェーン

(価値連鎖)全体で総合的な能力を身につけると

ともに(そして既存業務の利幅が減少するにつれ

て)、より利益率の高い分野へビジネスを移行す

るCROが現れ、そしてついにはバイオテクノロジ

ー・製薬企業の競合相手になるというのが彼らの

見方だ。

 ただ、こういったシナリオの実現可能性について

は疑問の余地がある。今回の調査で、独自の医薬

品を製造・販売する計画があると回答したCRO関

係者は18%にすぎなかった。また、計画があると

した回答者のほぼ全てが、年間5億ドル以下の収

益を持つ企業に属していた。この結果を見ると、同

業界で生じつつある変化は、大規模なCROが著し

く成長を遂げて(既存の顧客である)製薬・バイオ

テクノロジー企業のサプライチェーンを崩壊させ

るという性質のものではなさそうだ。むしろ、小規

模CROがバイオテクノロジー企業に変容する過

程だと解釈することができるかもしれない。

 一方、CROは規模が大きくなるほど、こうしたシ

フトに関心がなくなるようだ。だが、JPモルガンの

ピーターソン氏は、そのような動きが「大きなリス

クが伴う」ものだと考えている。「インドを拠点と

するCRO数社が、ジェネリック製薬企業へと転換

を図ったことがある。だが橋を焼き落としてしまえ

ば、後戻りすることもできない」と同氏は警告して

いる。(CROの)コバンス社で戦略的提携担当社

長 兼 最高商務責任者をつとめるジョン・ワトソン

によると、同社のD&D機能は大手製薬企業とほ

ぼ同じ規模だという。しかし、コバンス社は一貫して

「クライアントと競合するのは株主にとって得策

ではない。競合企業が失敗した例をいくつも見て

きた」という立場をとっている。

 今回聞き取り調査を行ったハン博士も、同様の

立場をとっている。同氏によると著書の中で主張

したような立場をとりつつも、「そのような“サプラ

イチェーンの混乱”が同業界で起こるには時期尚

早だ」という。「過去10年間に生じた統合の波は、

同業界に“混乱”が生じる条件が整いつつあること

を示している。だが、現行のビジネスモデルの下

では依然として企業の統合が進行中で、業界には

まだ多くの製薬企業が乱立している」と同氏は指

摘している。しかしその一方で、製薬企業が(提携

あるいは別の形で)利幅の低い業務をCROに委

託するケースが増加しているのも事実だ。ハン氏

によると、これは「R&D(研究開発)が明確に商品

化された形」で、「既存の製薬企業がコスト圧力を

転嫁し続ければ、CROはより高い利幅を求めてビ

ジネスモデルの転換を図ることが予想される」と

いう。

 “サプライチェーンの混乱”が同業界に生じる可

能性が依然として残るのは、ライフサイエンス業

界がそれを意図しているからではない。他業界の

変容の過程を見れば、同業界も例外ではないから

だ。ハン氏によると、CROは利幅が持続不可能な

ほど圧縮された場合、いかに対応するべきかを検

討する必要があるという。また同氏は、ライフサイ

エンス企業が(現在ではなく)将来的に競争力の

中核となる業務を社内に保持するべきだと考え

ている。

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

10 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴社では D&D の各段階を主にどの方法で実施していますか?それぞれの分野につき 社内・CRO・その他 の中から1つを選択してください(回答者の割合:%)

(29%)あるいは単一のニッチ分野に集中する(12%)という回答も合計41%と同じだった。だが詳しく

見ると、特定分野へ事業を集中するとした企業は、既存分野でのサービス提供能力を削減する意図を持っ

ていないことがわかる。既存のD&Dサービス提供分野で規模の縮小を行う予定だと回答した調査対象者

はわずか14%にとどまった。一方、残りの86%はサービス提供範囲を拡大すると回答しており、そのうち

31%は新規分野に参入する意向を示している。この結果からも、多くのCROがパートナーとしての魅力を

増すためのサービス拡充を重視していることが見てとれる。

 だが、パートナーシップの実現に向けたシフトには課題がつきものだ。SIROクリンファームのナイール氏

によると、(1〜2社の例外を除けば)CROビジネスのほとんどは創薬と臨床開発という2つの分野に分ける

ことができるという。「この2つの分野では、異なったタイプのスキル」と異なったタイプの資本投資が求めら

れる。「1企業が研究室から患者までの全領域をカバーできれば、(競争上の)大きなメリットになる」というの

が同氏の考えだ。しかし、パートナーシップを求めることは、リスクの増加にもつながる。クインタイルズ社の

ラトリフ氏は、「(パートナーシップという関係を結べば、CROは)製薬企業が行う創薬プロセスの中で中心

的な役割を担うだろう。つまりCROは、クライアントの製品ポートフォリオの中核を握ることになる。CROが

失敗すれば、我々全員がダメージを被る恐れがある」と指摘している。

 一方、マズムダル・ショウ氏が指摘するのは、同業界が未だに有効性が実証されていないアプローチに将

来を賭けているという根本的な問題だ。「CROは、バリューチェーン(価値連鎖)の中で、サービスプロバイ

ダーから製品開発企業へと転換を図ってきた。一方、製薬企業はリスクとコストを軽減するためCROとの提

携を求めたが、依然として商品化の権利を保持している。これは、一見すると素晴らしいビジネスモデルに

見える。だが、コストとパフォーマンス効率の両面でどれだけ長く効果を発揮できるのか疑問の余地がある」

と同氏は指摘している。

社内 CRO その他

ターゲットの発見

ターゲットの検証

アッセイ開発

スクリーニング

リード最適化

前臨床試験

第 1 相および第 2 相試験

第 3 相試験

D&D 全般

出典:エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによるアンケート調査

68 1 22

62 18 20

63 18 18

59 20 21

61 19 20

34 47 19

26 55 18

59 2120

55 22 24

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

11Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 新たなビジネスモデルの問題は、有効性が実証されていないことだけではない。今回の調査では、CROと

その顧客がパートナーシップに対して全く異なった期待を持っていることが明らかになった。CRO業界は、よ

り密接なパートナーシップを求め、D&Dの全領域で能力の拡充を図っている。しかしライフサイエンス産業

に属する他企業の回答者は、異なった思惑を抱いているようだ。他企業関係者の多くが、CROのさらなる活

用を進めると答える一方、「大幅に」利用を拡大するとした関係者はわずか37%にとどまった。また利用拡

大を考えているのは、前臨床や第1相から第3相試験など、すでにCROのサービスを頻繁に活用している

分野だ。

 たしかに、D&Dプロセスの始めから終りまでをカバーするパートナーシップも見られるようになっている。

だが製薬・バイオテクノロジー企業は、創薬ではなく開発分野での協力関係をCROに求めることの方が多

い。今回の調査結果からも、こうした企業が既存のD&D戦略からのシフトを考えていないことが明らかとな

っている。創薬・開発プロセスを再構築するためにCROを利用すると回答した調査対象者はわずか11%に

とどまっている。また、創薬分野でCROをさらに活用したいと回答した企業は、他の企業と比べ財務実績が

良くない傾向が見られた。この結果からも、成功を収めている企業はパートナーシップ拡大の必要性をそれ

ほど感じていないことが見てとれる。

 提携の拡大というトレンドは、サプライヤーの統合が進んでいることの反映にすぎず、CROの能力拡充は

見当違いな行動なのだろうか?その可能性は否定できない。しかし、バイオテクノロジー・製薬企業が自ら選

択したアプローチのもたらす影響を十分に理解していないこともあり得る。イノサイト研究所のハン博士に

よると、多くの業界でサプライヤーについて論ずる際、企業は「彼らが既存のビジネスモデルを根本的に変

えつつあるという認識を持たない」傾向があるという。CROとその顧客はどのような提携が双方にとって望

ましいのか模索を続けており、主流となる形態については依然として定かでない部分も多い。

D&D の各分野について、 今後 3 年以内に、 貴社の業務の遂行方法に変化が起こると思いますか?それぞれの分野につき 社内・CRO・その他 の中から1つを選択してください(回答者の割合:%)

ターゲットの発見

ターゲット検証

アッセイ開発

スクリーニング

リード最適化

前臨床試験

第 1 相および第 2 相試験

第 3 相試験

D&D 全般

出典:エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによるアンケート調査

大部分を社内で実施

大部分を CROが実施

大部分をその他の方法で実施

変化なし

33 15 8 43

30 19 5 45

31 20 7 42

37

39

39

39

38

39

8

9

7

7

9

11

39

39

21

36

19

1935

33

17

14

13

29

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

12 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 パートナーシップという関係がさらに一般化して進化を遂げる現在、企業はこの変化へどのように対応する

べきだろうか?CROの顧客となる企業に求められる最初のステップは、提携関係を大規模なアウトソーシン

グではなく、戦略的な機会と捉えることだ。例えばアストラゼネカは、かつてなら創薬に関わることのなかった

IT(情報技術)専門家とデータ管理分野でのパートナーシップを結んでいる。ファイザーの外部研究ソリュー

ションズCoE統括責任者をつとめるリチャード・コンネル氏も同様の見方を示している。同氏によると、CRO

を単なるコスト節減という観点から捉える会社もあるが、「顧客である製薬企業がアウトソースする業務を軸

として作業フローを変革しなければ、アウトソースから十分なメリットを得ることはできない」という。

 ライフサイエンス業界は、提携関係をサプライチェーンの単純化と混同するというリスクを冒しているよ

うだ。今回の調査でも、大手製薬企業はCROを価値あるパートナーではなく、安い労働力の提供先と見な

すことがあると回答した調査対象者が57%に上った。クインタイルズ社のラトリフ氏は、「“戦略的パートナ

ーシップ”という言葉が必要以上に使われすぎだ」と警鐘を鳴らしている。同氏によると、「CROを単なるアウ

トソース先として使いたがる顧客も依然として少なくない」という。コバンス社のワトソン氏は「提携・パート

ナーシップと、サプライヤーの統合は全く意味合いが異なる。サービスの調達という観点で行われ、価格を

重視する後者は、CROと顧客の双方にとって必ずしも望ましい関係ではない。なぜなら、コスト以外の面に

焦点を当てることで得られる付加価値を生み出すことができないからだ」と指摘する。

 サプライヤーとの関係を戦略的に追求するには、少なくとも経営チームの関心を引くことが必要だ。武田

薬品インターナショナルの医薬品開発部門でグローバル開発事業担当上級副社長をつとめるロバート・ア

ールブラント氏によると、これまで同社は「(社内あるいはCROの)シニアマネジメント・レベルで、CROとの

関係を十分にコントロールしてこなかった」という。しかし現在、同氏はパートナーシップの統括責任者とい

う役割を与えられている。顧客企業がCROとのパートナーシップを十分に活用するためには、アウトソーシ

ング実施後に不要となる機能の廃止を視野に入れ、社内D&Dプロセスの再構築方法を検討する必要があ

る。ファイザーのコンネル氏は、「ワークフローの全てを再構築せずに、価値の流れの中核をなす企業活動

をアウトソースすれば、余剰コスト以外に何も生み出さない既存活動がプロセス全体に残ってしまう。変革

を望むならば、もっと戦略的視野を持つべきだ」と指摘している。 

 社内の変革は、企業戦略に沿った形で行う必要がある。だが製薬・バイオテクノロジー企業は、有用な分野

でCROとの関係をさらに進化させるべきだ。これまでファイザーでは、大量の化学品の合成をCROにアウ

トソースする際、試験のために膨大な数の化合物を供給先からCROに輸送させていた。しかし、CROが自

前でその化合物の試験を実施でき、試験結果のデータを直ちに送ることができると判明してからは、同社に

そのプロセスを委ねることになったという。(またこれにより、かなりのコスト削減が実現できた。)

 CROがライフサイエンス企業の中核部分で役割を果たすようになりつつある現在、提携関係を結ぶ企業

新たな関係を最大限に活用する方策

"顧客である製薬企

業がアウトソースす

る業務を軸として作

業フローを変革しな

ければ、アウトソース

から十分なメリット

を得ることはできな

いだろう"

リチャード・コンネル

(ファイザー 外部研究ソリ

ューションズCOE 統括責

任者)

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

13Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

 委託研究は情報集約型のビジネスだ。コバンス

社で戦略的提携担当プレジデント兼CCO(最高商

務責任者)をつとめるジョン・ワトソン氏は、「結局

のところ、情報を生成しクライアントに提供するの

が当社の業務だ。つまり我々の最終製品はデータ

だ」と語る。

 今回行われた調査の結果によると、データを活

用するためのテクノロジーに対する投資は、今後

3年間で増加する可能性が高い。CRO関係者の

65%は分析能力の改善に、62%はデータ管理

能力の向上にリソースを投入すると回答してい

る。右の表が示すとおり、CRO業界では、ITの様々

な分野で能力拡充に向けた投資が過去3年間よ

りも増加傾向になることが予想される。

 このトレンドは、クライアントの要求に応える必

要性が高まっていることの反映でもある。前出の

アールブラント博士によると、武田薬品インター

ナショナルは、CROとのデータ・インターフェース

分野で、「透明性の向上とシームレスなデータ交

換を追求している。一部は実行済みだが、今後も

重点分野として取り組むつもりだ」という。今回の

調査では、ライフサイエンス業界に属するCRO以

外の企業関係者もITへの投資を行っており、CRO

に対しても同様の投資を求めていることが明らか

になっている。 

 熾烈な競争に直面するCROも、様々な方法で

競合他社との差別化を図るためにITへの投資を

進化を担う情報技術

実施している。差別化に向けた方策の1つは、より

迅速で正確なサービスを提供し、顧客とのより円

滑なコミュニケーションを図ることだ。例えばクイ

ンタイルズ社は、自社と顧客両方にリアルタイム

で情報を提供するデータファクトリーやクライア

ント・ダッシュボードなど、様々なハードウェアとソフ

トウェアに大幅な投資を行っている。同社でプレ

ジデント兼COO(最高執行責任者)をつとめるジョ

ン・ラトリフ氏は、「過去5年間、当社は1つのミッシ

ョンを視野に入れてIT投資を行ってきた。インフ

ラやアプリケーションにとどまらず、データと分析

性をベースとして(他のCROとの)差別化を図れ

る分野に資金を投入するようにしている。この点

を念頭に置くことは重要だ」と語る。

 新規サービスへの事業拡大、特に臨床試験デ

ータの管理を目的としてIT投資を行うCROもあ

る。だがCROは、この市場分野で予想以上の競争

に直面する可能性がある。医薬業界での経験が

少ないIT企業も、市場に進出しつつあるからだ。し

かし、インド系CROのSIROクリンファームで社長

をつとめるアジト・ナイール氏によると、同社は「デ

ータサービス分野でのビジネスにきわめて楽観

的な見通しを持っている」という。「CROである当

社は、臨床分野で強みを持っている。IT企業が一

般的なデータの視点からサービスを行うのに対し

て、当社は臨床データの視点からサービスを提供

することができる」と同氏は語る。

同士の相性が良いことも重要だ。アストラゼネカで副社長兼臨床開発統括責任者をつとめるカリン・ウィン

グストランド氏によると、「企業同士が関係を結ぶとき、(CROの技術能力に加えて)パートナーとの企業文化

面の相性を評価することは重要である。もし相性が良くない場合は、プロセスや品質、コスト改善面で十分な

効果を得ることが難しい」という。今回の調査結果でも、この点は証明されているようだ。不満足なCRO-顧

客の関係で当事者となった経験を持つ調査対象者は、文化的障壁を主な原因の1つに挙げている。 

 企業間の関係が形成された後は、それを維持するための努力が必要になる。ファイザーでは、アストラゼ

過去 3 年間、 貴社は以下のどの分野で投資を拡大しましたか?

今後 3 年間、 貴社は以下のどの分野で投資を拡大する予定ですか?

(CRO 企業の回答者に占める割合:%)

出典:エコノミスト・インテリジェンス・ユニット   によるアンケート調査

データおよび情報管理を向上するテクノロジー

分析能力を改善するテクノロジー

優秀な科学研究者の確保

薬剤候補のスクリーニングを迅速化するテクノロジー

パートナーシップ管理に関するスタッフのトレーニング

より幅広い情報へのアクセス

開発過程に、 より多くのポイントでデータを自動捕捉するためのテクノロジー

より多くの仮想 D&D 組織を作るためのネットワーク能力

企業内および企業間でのデータ共有の簡素化

開発過程で行われる意思決定を自動化するテクノロジー

より効率的に分析またはマイニングを行うため、様々なデータを統合するテクノロジー

3562

4365

2462

3057

2454

2460

2243

1654

1954

1941

1946

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

14 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

ネカと同じように社内で提携管理を担う専門職を任命した。アストラゼネカのウィングストランド氏は、提携の

「ハードウェア」面だけでなく、スタッフの経験そして両サイドの関係者が敬意をもって平等に扱われている

かといった点にも注意を払う必要があると指摘している。同氏によると、「CROは、サービス提供者の視点

から離れる必要がある。一方、当社はバイヤーの視点から離れることが課題だ」という。

 一方、CROが直面する課題はまた別のものだ。CROはクライアントがまだ必要と感じていないサービス

を見つけて売り込む必要がある。「好機を見極める能力のあるCROには、事業拡大の機会がある」というの

がファイザーのコンネル氏の見方だ。

 またCROは、クライアントが自社のどこに魅力を感じたのかを考える必要がある。つまり、社内で実施す

るより安いコストで、的確かつ迅速なサービスを提供する点だ。今回の調査結果によると、潜在顧客がCRO

に求める主な資質は、有能なスタッフ(49%)、サービスを安価に提供できる能力(44%)、そしてスピード

(42%)だ。順位は多少異なるものの、CRO関係者も似たような見方を示している。競合企業との差別化を

実現する主な要因として挙げられたのは、低コスト(49%)、経験あるスタッフ(43%)そしてスピード(31%

)などの資質だった。

 一方、低コストを維持する能力が、将来的に差別化要因になると回答したCRO関係者は、わずか20%に

とどまっている。それに代わり重要な要因として1位・2位に挙げられたのは、創薬の特定分野での専門的知

識(34%)、そして経験豊富なスタッフ(29%)だ。しかし、CROはコストが主な要因にならないと考えてい

るわけではない。SIROクリンファームのナイール博士は、「将来的にみれば、低コストが重要となるのは間

違いない。大手製薬企業は、人員削減を進めており、誰かが業務を代行する必要が生じるだろう。CROは、

低コストでその業務を行うことを期待されている」という見方を明らかにしている。

 しかし、提携関係がすでに進んでいる場合には、初期段階の低コストよりも継続的にイノベーションを生

み出す能力が重要となってくる。クインタイルズ社のラトリフ氏によると、契約が成立して「2年もたてば、イ

ノベーションを実現する能力が求められるようになる。変革を進め、早期に約定を得て、成功の確率を高め

ることができなければ、失敗したも同然だ」という。こうした要求に応えるためには、有能な人材が必要不可

欠だ。コバンス社とクインタイルズ社は、将来に備えるために重要な数少ない方策の1つとして、D&Dの領

域全般で多くの専門家を雇うことを挙げている。だが、こうした取り組みを行っているのは両社だけではな

い。今回の調査では、優秀な科学研究者を確保するために大規模の投資を行うと回答したCRO関係者の割

合が62%に上った。これは、過去3年間を対象に同様の質問を行った場合の24%という数字から見ると大

幅な増加だ。

 CROは、提携関係を管理することの重要性も認めている。今後3年間にパートナーシップ管理のスタッフ

向けトレーニングを提供するための投資を行うと回答したCRO関係者は54%に上った。同様の投資を過

去3年間に行ったとする回答者が24%だったことを考えれば大幅な上昇といえるだろう。今回の調査では、

当事者間の不十分なコミュニケーションが特に大きな課題だと答えた回答者も多く見られた。不満足なク

"CROは、サービス

提供者の視点から離

れる必要がある。一

方、当社はバイヤー

の視点から離れるこ

とが課題だ"

カリン・ウィングストランド

(アストラゼネカ 副社長

 兼臨床開発統括責任者)

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

15Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

ライアント-CRO関係を経験した関係者の40%は、コミュニケーションが最大の問題だと回答している。ま

た聞き取り調査の対象者からは、治験で問題が生じた際にCROがパートナーへの報告を怠るという不満の

声が頻繁に聞かれた。

 コバンス社では、パートナーシップ全体を統括するためにシニアエグゼクティブのグループを正式に設け

るなど、提携管理に包括的なアプローチを用いている。同社の詳細にわたる提携モデルは、人的資源から

事業運営までの多くの分野をカバーしており、全ての領域でパートナーとの意思疎通を図ることを目指して

いる。同社はまた、顧客が大規模なアウトソーシングを活用するのに必要な社内変革に対する支援を行うた

め、変革管理の専門家を用意している。しかし、同社のワトソン氏によると、こうした取り組みは依然としてプ

ロセスの途上にあるという。「CRO業界は、こうした(関係管理)ツールの構築に向けた取り組みに関しては、

まだなじみの薄い段階にある。我々CROや製薬企業にとっても新しい分野だ」と同氏は語る。 

 バイオテクノロジー・製薬企業は、創薬D&Dの将来に向けて大きな賭けをしている。すでにCROは、D&D

の大部分をカバーするサービスを提供しており、その範囲は今後も拡大することが予想される。製薬業界で

も、統合された企業内D&Dからの移行という歴史的シフトが生じているが、単なるアウトソーシングを進め

るだけでは不十分だ。CROとその顧客は、両者にとって最もメリットの大きいパートナーシップのあり方を

模索する必要がある。

 変革はすでに始まっている。単純な個別報酬モデルに取って代わり、提携関係の拡大傾向が見られること

はその反映だろう。だがCROと製薬・バイオテクノロジー企業は、こうした変化がどこに行き着くのか、そして

どこに行くべきなのかという点について意見を異にしている。

 これについて自動車産業の失敗例が示す教訓は重要だ。自動車メーカーが、サプライヤーを価値あるパ

ートナーと見なす様々な取り組みと、生き残りさえ困難になるような一方的コスト削減という両極端なアプ

ローチを同時にとってきたことはよく知られている。これは究極的に自己破滅を招きかねないようなアプロ

ーチだ。自動車業界に関して行われた研究の多くは、サプライヤーとの信頼関係を築けば、それが低コスト

やコミュニケーション・イノベーションの向上に繋がるという見解を示している。

 これは、バイオテクノロジー・製薬企業にとっても重要な教訓だ。これらの企業がサプライヤー(つまり

CRO)へ優先的に求めるのは、業界が抱える2つの課題(つまりコスト削減とイノベーション力の向上)のど

ちらなのかを決める必要があるからだ。ライフサイエンス企業は、その他にも数々の戦略的課題に直面して

終りに

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

16 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

いる。例えば、大規模のアウトソーシングを行う際に社内に保持すべき中核能力を選別し、(不必要となる既

存業務を整理するために)他の部門で組織の再編を進める必要がある。また、企業にとってきわめて重要で

センシティブなD&Dという事業領域に部外者を関与させるには、企業文化という意味で相性のよいパート

ナーを探すなど、継続的な関係管理を行わなければならない。 

 一方、CROにとっての課題は、自社の強みを発揮できる形で提携関係を結ぶことだ。価値の高い新たな

サービスを提供する能力をCROが持つかどうかを、顧客が明確に理解しているとは限らない。CROは、顧客

が提携関係を望む根本的な理由という原点に立ち返り、継続的に改善され、高品質かつ低コストのサービス

を提供し続ける必要がある。またそれと同時に、自社がサービスを提供し、提携関係のメリットを顧客にアピ

ールできるような新規分野を特定しなければならない。提携やパートナーシップは、売上高拡大に理想的な

機会を提供するだろう。しかし、その機会を捉えることができるかどうかはCRO次第だ。

 ライフサイエンス業界で提携やパートナーシップを拡大することは、CROとその顧客の双方にとって大き

な賭けだ。増加の一途をたどる提携関係が、商品化されたD&D領域で行われるコスト重視のアウトソーシ

ングという形にとどまれば、製薬・バイオテクノロジー企業が抱えるイノベーションの問題は解消されない可

能性が高い。そしてコストは下がる一方だ。またこうしたシナリオが現実のものとなれば、利幅の圧縮により

苦境に立たされるCROは、競合企業への転換を図らざるを得なくなるだろう。しかし、意義あるパートナーシ

ップを構築することができれば、これとは対照的な結果が期待できる。先細りが懸念される創薬パイプライ

ンの拡充を行うために必要とされる変革を実現できる可能性は少なくないのだ。

緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

17Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

付録:調査結果

調査結果の数値は、小数点以下の四捨五入や複数回答により、合計値が必ずしも100%になっていない場合があります。

貴方は業界の他企業と比べ、 次の各分野で所属企業をどのように評価しますか?それぞれにつき答えを 1 つ選択してください(回答者の割合:%)

投下資本に対する収益

創薬と開発(D&D)の効率(投資額と新たに開発された分子の数の比率)

成功を収めるパートナーシップを実現する能力

革新的な製品を生み出す能力

革新的な D&D プロセスを生み出す能力

最新技術を効果的に導入し活用する能力

18 31 28 5 3 15

13 23 24 11 3 26

15 41 29 7 3 6

26 30 23 8 2 11

19 26 26 9 3 17

18 38 28 8 3 5

貴方の所属企業が関わる CRO と製薬・バイオテクノロジー企業の関係の中で最大規模のものについてお聞きします。 両者の関係は実際どのような形をとっていますか?(回答者の割合:%)

貴方の所属企業が関わる CRO と製薬・バイオテクノロジー企業の関係の中で最大規模のものについてお聞きします。 両者の関係はどのような形が望ましいと思いますか?(回答者の割合:%)

一定の距離を置いたビジネス関係(必要に応じ、 特定の業務をその都度アウトソースする)

グローバル規模の提携

非独占的パートナーシップ

特定の疾病領域や地域に関する独占的パートナーシップ

ジョイント・ベンチャー

同じ企業グループのメンバー

他社と上記のような関係は持っていない

21

17

17

16

10

7

13

グローバル規模の提携

特定の疾病領域や地域に関する独占的パートナーシップ

一定の距離を置いたビジネス関係(必要に応じ、特定の業務をその都度アウトソースする)

非独占的パートナーシップ

ジョイント・ベンチャー

同じ企業グループのメンバー

他社と上記のような関係は持っていない

27

17

16

16

8

6

10

貴方は下記の記述にどの程度同意しますか?それぞれ1つずつ選択してください(回答者の割合:%)

強く同意する 同意する どちらともいえない

同意できない 全く同意できない

最大規模の CRO は、 近い将来に既存の製薬・バイオテクノロジー企業の競合相手となるのに十分なレベルまで競争力を強化しつつある

大規模製薬企業は CRO を、 状況にかかわりなくアプローチを行う価値あるパートナーというよりも、 困難な時期に安価なサービスを提供する存在と考えることが多い

製薬・バイオテクノロジー企業の“仮想“組織は、 依然として実体よりも過大評価されている

保有するデータや分析結果の量という意味で既存の大規模製薬企業が持っていた競争上のメリットは、 テクノロジーコストの低下によって失われつつある

価格という基準以外で、 中規模 CRO と大規模 CRO を区別するのは難しい

11 34 18 31 6

7 37 32 18 6

10 43 27 17 2

6 26 25 36 8

41227498

平均をかなり上回る

平均を上回る

平均を下回る

平均をかなり下回る

わからない平均的

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

18 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

過去 3 年間、 貴社は以下のどの分野で投資を拡大しましたか?(CRO 企業の回答者に占める割合:%)

データおよび情報管理を向上するテクノロジー 

分析能力を向上するテクノロジー

優秀な科学研究者の確保

薬剤候補のスクリーニングを迅速化するテクノロジー

パートナーシップ管理に関するスタッフのトレーニング

より幅広い情報へのアクセス

開発過程に、 より多くのポイントでデータを自動捕捉するためのテクノロジー

より多くの仮想 D&D 組織を作るためのネットワーク能力

企業内および企業間でのデータ共有の簡素化

開発過程で行われる意思決定を自動化するテクノロジー

より効率的に分析またはマイニングを行うため、 様々なデータを統合するテクノロジー

48

44

40

37

33

32

32

32

31

25

22

過去 3 年間に、 貴社は以下のどの分野で投資を縮小しましたか?(CRO 企業の回答者に占める割合:%)

パートナーシップ管理に関するスタッフのトレーニング

より多くの仮想 D&D 組織を作るためのネットワーク能力

薬剤候補のスクリーニングを迅速化するテクノロジー

開発過程に、 より多くのポイントでデータを自動捕捉するためのテクノロジー

優秀な科学研究者の確保

データおよび情報管理を向上するテクノロジー

分析能力を向上するテクノロジー

より幅広い情報へのアクセス

より効率的に分析またはマイニングを行うため、 様々なデータを統合するテクノロジー

開発過程で行われる意思決定を自動化するテクノロジー

企業内および企業間でのデータ共有の簡素化

17

16

16

16

16

15

15

14

14

14

12

今後 3 年間、 貴社は以下のどの分野で投資を拡大する予定ですか?(CRO 企業の回答者に占める割合:%)

データおよび情報管理を向上するテクノロジー

分析能力を向上するテクノロジー

優秀な科学研究者の確保

より幅広い情報へのアクセス

薬剤候補のスクリーニングを迅速化するテクノロジー

より効率的に分析またはマイニングを行うため、 様々なデータを統合するテクノロジー

企業内および企業間でのデータ共有の簡素化

パートナーシップ管理に関するスタッフのトレーニング

より多くの仮想 D&D 組織を作るためのネットワーク能力

開発過程に、 より多くのポイントでデータを自動捕捉するためのテクノロジー

開発過程で行われる意思決定を自動化するテクノロジー

55

53

53

49

47

47

45

45

45

43

41

今後 3 年間、 貴社は以下のどの分野で投資を縮小する予定ですか? (CRO 企業の回答者に占める割合:%)

より多くの仮想 D&D 組織を作るためのネットワーク能力

開発過程で行われる意思決定を自動化するテクノロジー

薬剤候補のスクリーニングを迅速化するテクノロジー

パートナーシップ管理に関するスタッフのトレーニング

優秀な科学研究者の確保

より幅広い情報へのアクセス

より効率的に分析またはマイニングを行うため、 様々なデータを統合するテクノロジー

分析能力を向上するテクノロジー

開発過程に、 より多くのポイントでデータを自動捕捉するためのテクノロジー

企業内および企業間でのデータ共有の簡素化

データおよび情報管理を向上するテクノロジー9

10

11

11

11

12

13

14

14

14

14

Page 20: エコノミスト・インテリジェンス・ユニット報告書 …...Kiran Mazumdar-Shaw CEO, Biocon John Watson President of Strategic Partnering, Chief Commercial Officer,Covance

緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

19Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴方の所属企業は過去 3 年間に、 製薬・バイオテクノロジー企業と CRO 間の不満足な関係を経験したことがありますか?(回答者の割合:%)

製薬・バイオテクノロジー企業と CRO 間の関係が不満足なものになった最大の原因は? 3つまで選択してください(回答者の割合:%)

製薬・バイオテクノロジー企業と CRO 間のパートナーシップを成功に導く最大の課題となる要因はどれですか? 3つまで選択してください(回答者の割合:%)

バイオテクノロジー・製薬企業が、 パートナーシップを形成する CRO の地理的条件を考える際に、次の要因はどの程度重要ですか? 1 〜 5 までの 5 段階評価(1 =とても重要だ 5 =重要でない)でお答えください(回答者の割合:%)

1=とても重要である

2 3 4 5=重要でない

わからない

49

33

18

46

29

25

22

19

18

13

10

23

コミュニケーション不足

パートナー企業の片方あるいは両方が過大な期待を抱いている

パートナー企業の片方あるいは両方が、 必要な情報共有/協力を妨げるような企業文化を持っている

パートナーシップを維持するためのスキルが不足している

パートナー企業の片方あるいは両方の技術能力が不足している

テクノロジーの互換性がない

パートナーシップの合意条件が明確でない

パートナー企業の片方あるいは両方が、 パートナーシップの形成によって必要となる内部変革を管理できない

他企業とパートナーシップ関係を結んでいない

はい

いいえ

わからない

コミュニケーション不足

パートナー企業の片方あるいは両方が、 必要な情報共有/協力を妨げるような企業文化を持っている

パートナー企業の片方あるいは両方の技術能力が不足している

パートナーシップを維持するためのスキルが不足している

パートナーシップの合意条件が明確でない

テクノロジーの互換性がない

パートナー企業の片方あるいは両方が、 パートナーシップの形成によって必要となる内部変革を管理できない

パートナー企業の片方あるいは両方が過大な期待を抱いている

40

35

32

28

24

22

18

17

CRO の世界的なビジネス展開規模

CRO の拠点が、 製薬・バイオテクノロジー企業に近接する

コストの安い国に CRO の拠点がある

22 31 20 7 11 8

15 21 28 15 15 6

81913281517

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

20 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴方の企業は今後 3 年間にどの分野でサービスを提供・拡大・削減する予定ですか?それぞれについて回答を1つお選びください。

(回答者の割合:%)

提供を開始する

拡大する 削減する 変化はない/すでに提供している

変化はない/提供していない

貴社では D&D の各段階を主にどの方法で実施していますか?それぞれの分野につき 社内・CRO・その他 の中から1つを選択してください。

(回答者の割合:%)

D&D の各分野について、 今後 3 年以内に、 貴社の業務の遂行方法に変化が起こると思いますか?それぞれの分野につき 社内・CRO・その他 の中から1つを選択してください。

(回答者の割合:%)

ターゲットの発見

ターゲットの検証

アッセイ開発

スクリーニング

リード最適化

前臨床試験

第 1 相および第 2 相試験

第 3 相試験

D&D 全般

9 26 6 29 29

41 3 18 38

39 6 18 279

9 55 3 12 21

15 41 3 9 32

9 44 21 26

9

11

6

46

49

50

6

6 17

23

21

17

17

24

社内 CRO その他

ターゲットの発見

ターゲットの検証

アッセイ開発

スクリーニング

リード最適化 

前臨床試験

第 1 相および第 2 相試験

第 3 相試験

D&D 全般 

大部分を社内で実施

大部分をCRO が実施

大部分をその他の方法で実施

ターゲットの発見

ターゲットの検証

アッセイ開発

スクリーニング

リード最適化 

前臨床試験

第 1 相および第 2 相試験

第 3 相試験

D&D 全般 

68 11 22

62 18 20

63 18 18

59 20 21

61 19 20

34 47 19

26 55 18

20 59 21

55 22 24

33 15 8 43

30 19 5 45

31 20 7 42

35 19 8 37

17 36 7 39

33 19 9 39

14 39 7 39

13 39 9 38

29 21 11 39

変化なし

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

21Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴社の今後 3 年間の戦略として最も適当なものはどれですか?(回答者の割合:%)

パートナーシップをつうじて独自の医薬品を開発・製造・販売する

貴社の今後3年間の CRO 活用戦略として最も適当なものはどれですか?(回答者の割合:%)

D&Dプロセス再構築への取り組みの一環として、CRO の活用を拡大する

製薬・バイオテクノロジー企業へアピールを行うためには、競合企業との差別化を図ることが重要です。 貴社ではどのような点を強みとして活用しますか?3つまで選択してください(回答者の割合:%)

業務を委託する CRO を選択する際に最も重要となるのはどのような資質ですか?3つまで選択してください

(回答者の割合:%)

より魅力的な研究パートナーになるため、サービスの範囲を拡大する

特に専門とするいくつかの分野に集中する

専門とする単一分野でトップレベルのサービス提供企業の 1 つになる

18

41

29

12

CRO の活用を拡大するが、 D & D のモデルは基本的に変更しない

CRO の活用はある程度拡大する

CRO の活用頻度は変わらない

CRO の活用頻度はある程度減少する

より多くの研究を社内で行うため、 CRO の活用頻度は著しく減少する

11

26

34

22

4

2

現在 今後 3 年間

低コストで業務を行う能力

世界的なビジネス展開規模 

研究・請負業務を完了するスピード

提供するサービスの範囲

経験豊富で有能なスタッフ

特定創薬分野での専門的知識/ノウハウ

リスク共有を積極的に行う

専門的・最先端テクノロジーへのアクセスを提供

質の高いデータや高度なデータ統合能力へのアクセスを提供

ターゲットとなる集団や条件に集中する能力

311

2014

2320

99

3426

2943

2011

3120

2923

4920

経験豊富で有能なスタッフ

低コストで業務を行う能力

研究・請負業務を完了するスピード

世界的なビジネス展開規模

特定創薬分野での専門的知識/ノウハウ

提供するサービスの範囲

専門的・最先端テクノロジーへのアクセスを提供

リスク共有を積極的に行う

質の高いデータや高度なデータ統合能力へのアクセスを提供

ターゲットとなる集団や条件に集中する能力

49

44

42

35

34

20

16

15

14

7

Page 23: エコノミスト・インテリジェンス・ユニット報告書 …...Kiran Mazumdar-Shaw CEO, Biocon John Watson President of Strategic Partnering, Chief Commercial Officer,Covance

緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

22 Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴方は下記の記述にどの程度同意しますか?それぞれ1つずつ選択してください(回答者の割合:%)

強く同意する

貴社が CRO の活用を拡大するにあたり、 下記のリスクはどの程度重要ですか?1〜5までの 5 段階(1 =とても重要だ 5 =重要でない)で評価して下さい(回答者の割合:%)

貴社が属する主な産業はどれですか?(回答者の割合:%)

貴方が拠点とする国はどこですか?(回答者の割合:%)

同意する 同意でも不同意でもない 

同意できない 全く同意できない

市場参入が容易で、 小規模の CRO が数多く存在するため、 CRO 業界では短期・中期的に再編が進む可能性が高い

大規模製薬企業が、 分散的にアウトソースを行うのではなく、 パートナーシップを望むことで、 短期的に見て CRO 業界の再編が進む可能性が高い

製薬企業からのビジネスが近年急速に増加したため、 当社は機会を活用しきれないでいる

過去数年ビジネスが好調だったため、 CRO 業界でのビジネスモデル革新の気運は後退してしまった

競争が激化する CRO 市場で当社が提供するサービスを差別化するための方策を探ることは、 大きな課題となりつつあり、 ビジネスの成功にとってきわめて重要だ

当社では、 大・小規模の製薬企業・バイオテクノロジー企業と異なったタイプの関係を持つ機会が増えている14

6

6

6

6

11

51

60 11

20 11

14 9

3

21 26 44 3

60 2311

111469

232343

1=とても重要である

2 3 4 5=重要でない

わからない

CRO が提供するサービスの質に満足できない

自社の知的財産が外部に流出する

アウトソースによって、 必要とされる自社の業務遂行能力が失われる

CRO がアウトソースによって競合企業となりうるような能力を身につける可能性がある

企業文化の摩擦など、 パートナーシップ管理にまつわる問題

創薬プロセスや、 コスト、 スケジュールに対する厳格なコントロールを失う

36

34

2213

11 29

9 28

14 34

21

27

34

27

33

28

26

22

19

17

18

13

10

12

7

6

11

15

11

11

製薬

バイオテクノロジー

他のライフサイエンス産業

CRO

ジェネリック製薬0

44

22

19

15

米国

インド

ドイツ

カナダ・中国・フランス・英国 

シンガポール

スイス・ナイジェリア

マレーシア・スペイン・フィリピン・サウジアラビア・南アフリカ

オーストラリア・イタリア・フィンランド・ハンガリー・パキスタン

29

12

8

5

4

3

2

1

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緊密な提携関係を求めて製薬企業とCROの新たな関係がもたらす機会と課題

付録調査結果

23Ⓒ エコノミスト・インテリジェンス・ユニット 2012

貴方が拠点とする地域はどこですか?(回答者の割合:%)

貴社の世界全体の年間収益(米ドル)をお答えください(回答者の割合:%)

貴方の役職として最もよくあてはまるものはどれですか?(回答者の割合:%)

貴方の主な役割は次のうちどれですか ? 3つまでお選び下さい(回答者の割合:%)

北米

アジア・太平洋

西ヨーロッパ

中東・アフリカ

ラテンアメリカ

東ヨーロッパ

35

28

27

8

1

1

1 億ドル以下

1 億ドル以上 5 億ドル未満

36

5 億ドル以上 10 億ドル未満

10 億ドル以上20 億ドル未満

20 億ドル以上50 億ドル未満

50 億ドル以上

16

16

6

8

18

取締役

CEO /社長/マネージングディレクター

CFO /財務担当役員 / 管理担当役員

CIO /技術担当ディレクター

その他の C レベル役員

上席副社長 (SVP)/ 副社長 (VP)/ ディレクター

事業責任者

部門責任者

マネージャー

その他

3

27

8

4

9

17

6

6

17

4

戦略・営業開発

総合管理

マーケティング・セールス

D&D

オペレーション

財務

データ管理

IT

カスタマーサービス

人事

サプライチェーン管理

リスク管理

製造

法務

調達

その他

48

47

22

17

15

14

9

8

4

4

4

3

3

2

2

4

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エコノミスト・インテリジェンス・ユニットとアジレント・テク

ノロジーは、本報告書に記載された情報の正確を期すためにあら

ゆる努力を行っていますが、 第三者が本報告書の情報、見解、調

査結果に依拠することによって生じる損害に関して一切の責任を

負わないものとします。

カバーページイラスト/DanPage

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